説明

オゾン水処理方法

【課題】 添加物を使用することなく安全なオゾン水処理方法を提供する。
【解決手段】 含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて被処理物を処理するオゾン水処理工程と、を含めてなる。上記範囲の粒径のオゾン気泡であればオゾン水の水面に浮上しづらいので脱気量が極めて少ない。したがって、オゾンの溶解度・濃度を高く維持できる。使用するオゾン水は添加物を用いないので安全である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オゾン水を用いて、たとえば、水や半導体ウェハーのような被処理物を処理するためのオゾン水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾン水処理方法を示すものとして、たとえば、特許文献1及び特許文献2に記載したものがある。特許文献1が示すオゾン水処理方法(以下、「第1のオゾン処理方法」という)は水の浄化に係る方法であり、特許文献2が示すオゾン水処理方法(以下、「第2のオゾン水処理方法」という)は半導体ウェハーの洗浄に係る方法である。上記例に限らず、オゾン水による処理が、浄化、消毒、殺菌、洗浄、脱色、脱臭等に効果があることはよく知られている。しかしながら、特許文献1や特許文献2は、第1のオゾン水処理方法及び第2のオゾン水処理方法に使用するオゾン水の性状について何ら具体的な記載を含まない。第1のオゾン水処理方法に使用されるオゾン水はオゾン発生器で発生させたオゾン(オゾンガス)をエゼクタを介して被処理水に混入されるようになっているが、本願発明者が行った実験によればエゼクタを用いたオゾン水生成方法により生成したオゾン水ではオゾン溶解度を高めることができない。このため、オゾン水から大量のオゾンが脱気してしまい、求めるオゾン処理効果を得られない。オゾン溶解度を高めることができない理由は、溶解させたオゾン気泡の粒径が概ね1μm(マイクロメートル)以上であるため、オゾン気泡が被処理水から浮力を受けて水面まで浮上してしまう点にある。オゾン気泡を水面まで浮上させづらくするためには、溶解させたオゾン気泡の粒径を概ね1000nm(ナノメートル)以下、好ましくは、500nm以下に抑えるとよい。特許文献3には、直径が10〜50μmのオゾン気泡を含む水溶液に、鉄、マンガン、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムイオン、その他ミネラル類のイオン等の電解質を混入し、混入した水溶液に水中放電を行うことによって50〜500nmのナノバブルを得ることができる旨が記載されている。上記ナノバブルを含む水溶液のことを、以下において「従来のオゾン水」という。
【特許文献1】特開2001−314870号公報(段落0028、図1参照)
【特許文献2】特開2006−49453号公報(段落0034参照)
【特許文献3】特開2005−246293号公報(段落0016〜0025、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来のオゾン水は、電解質のような添加物を含むものであるから、その処理対象となる被処理物は上記電解質によって影響を受けないものでなくてはならない。たとえば、飲料水のオゾン水処理を考える。飲料水にオゾン水処理を施す場合に、上記した従来のオゾン水を混入すれば、消毒殺菌効果は得られるであろうが提供する飲料水には電解質が混入されていることになる。鉄やマンガン等の電解質が必ずしも人体に悪影響を与えるとは限らないかもしれないが、そのような不純物或いは添加物が混入した飲料水は、飲料水に適さないことに説明を要しないであろう。さらに、従来のオゾン水は、まず直径10〜50μmのオゾン気泡を含む水溶液を生成し、電解質を加えてから水中放電を行う必要があるから、オゾン水生成のために手間がかかり、その設備も複雑大型化せざるを得ないという欠点もある。つまり、電解質を含む点と、生成に手間がかかる点と、設備の複雑大型化を免れない点と、により従来のオゾン水を用いてオゾン水処理を行うとしても、その対象となる被処理物は極めて限定されたものとならざるを得ない。これでは、使い勝手のよいオゾン処理方法とは言えない。本発明が解決しようとする課題は、従来のオゾン水の欠点である使い勝手の悪さを克服したオゾン水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた発明者は、水にオゾンを混合させてオゾン水を生成するに当たり、500nm以下の直径のオゾン気泡を含むオゾン水を得ることができた。本発明は、上記オゾン水を用いてオゾン水処理を行おうとするものである。発明の詳しい構成については、項を改めて説明する。なお、何れかの請求項記載の発明を説明するに当たって行う用語の定義等は、その性質上可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用があるものとする。なお、本願において「原料水」とは、オゾン溶解前の原水(地下水、水道水、河川水、雨水等)と、原水にオゾンを溶解させて生成したオゾン水と、の双方を含む概念であって、原水とオゾン水とは、オゾン水生成過程の各々に応じて適宜使い分けられるものとする。
【0005】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項1の処理方法」という)は、含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて被処理物を処理するオゾン水処理工程と、を含めてなるものである。
【0006】
請求項1の処理方法によれば、被処理物を効率よくオゾン水処理することができる。オゾン水処理の内容は、被処理物の種類や性質等によって異なる。たとえば、被処理物に注入したり、散布したり、浴びせたり、浸漬させたり、する処理方法が挙げられる。オゾン水処理を行うことによって、たとえば、被処理物が水であれば消毒効果が、同じく半導体ウェハーであれば洗浄効果が、それぞれもたらされる。上記効果以外にも、たとえば、消毒、殺菌、洗浄、脱色、脱臭等の効果が、オゾン水処理によって得られる場合もある。ここで、オゾン水生成工程で生成されるオゾン水は、それが含むオゾン気泡の粒径Rが1000nm以下であるから、オゾン溶解度が極めて高く、この結果、脱気するオゾンが全くないか、あっても極めて少ない。すなわち、1000nm以下の粒径のオゾン気泡は、それらが含まれる水から受ける浮力が極めて小さい。このため、オゾン気泡はそのすべて又はほとんどが水面まで上昇せずに水中に滞留する。換言すれば1000nmを超える粒径のオゾン気泡は受けた浮力の作用によって脱気しやすいと考えられるので、発明者は上記オゾン気泡を本件発明から除外した。オゾン(オゾンガス)が脱気しない(脱気しづらい)からオゾン溶解度が高く、オゾン濃度を高く維持することができる。高いオゾン濃度を維持することができるということは、低い濃度のオゾン水に比べ同じ処理を行うために生成すべきオゾン水の量を少なくすることができることを意味する。すなわち、オゾン水を生成する装置やプラント等の規模を、濃度を高めた分だけ小型化することができる。また、オゾンが人体等とって有害であることが知られているところ、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらいということは、有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。人畜を直接オゾン水処理することも可能である。さらに、オゾン水処理に従事する作業員の安全確保にも大きく貢献する。さらに、オゾン水からオゾン水生成に当たって電解質等の添加物を使用しないので、生成したオゾン水は、溶解させたオゾンを除き原水が含む以上の含有物を含まない。このため、添加物による悪影響を考慮する必要がなく、あらゆる被処理物に対して適用可能である。
【0007】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項2の処理方法」という)は、含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦500nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて被処理物を処理するオゾン水処理工程と、を含めてなるものである。
【0008】
請求項2の処理方法によれば、被処理物を効率よくオゾン水処理することができる。オゾン水処理の内容は、被処理物の種類や性質等によって異なる。たとえば、被処理物に注入したり、散布したり、浴びせたり、浸漬させたり、する処理方法が挙げられる。オゾン水処理を行うことによって、たとえば、被処理物が水であれば消毒効果が、同じく半導体ウェハーであれば洗浄効果が、それぞれもたらされる。上記効果以外にも、たとえば、消毒、殺菌、洗浄、脱色、脱臭等の効果が、オゾン水処理によって得られる場合もある。ここで、オゾン水生成工程で生成されるオゾン水は、それが含むオゾン気泡の粒径Rが500nm以下であるから、オゾン溶解度が極めて高く、この結果、脱気するオゾンが全くないか、あっても極めて少ない。すなわち、500nm以下の粒径のオゾン気泡は、それらが含まれる水から受ける浮力が極めて小さい。このため、オゾン気泡はそのすべて又はほとんどが水面まで上昇せずに水中に滞留する。粒径500nm以下のオゾン気泡は、粒径500nmを超え1000nm以下のオゾン気泡に比べてより滞留しやすい、すなわち、より脱気しづらい。その一方、粒径をより小さくするためにはその分だけ一般に手間や時間(たとえば、溶解回数や溶解時間)がかかるので、用途に応じて使い分けるとよい。オゾン(オゾンガス)が脱気しない(脱気しづらい)からオゾン溶解度が高く、オゾン濃度を高く維持することができる。高いオゾン濃度を維持することができるということは、低い濃度のオゾン水に比べ同じ処理を行うために生成すべきオゾン水の量を少なくすることができることを意味する。すなわち、オゾン水を生成する装置やプラント等の規模を、濃度を高めた分だけ小型化することができる。また、オゾンが人体等とって有害であることが知られているところ、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらいということは、有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。人畜を直接オゾン水処理することも可能である。さらに、オゾン水処理に従事する作業員の安全確保にも大きく貢献する。さらに、オゾン水からオゾン水生成に当たって電解質等の添加物を使用しないので、生成したオゾン水は、溶解させたオゾンを除き原水が含む以上の含有物を含まない。このため、添加物による悪影響を考慮する必要がなく、あらゆる被処理物に対して適用可能である。
【0009】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項3の処理方法」という)は、含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて被処理物を処理するオゾン水処理工程と、を含めてなるものである。
【0010】
請求項3の処理方法によれば、被処理物を効率よくオゾン水処理することができる。オゾン水処理の内容は、被処理物の種類や性質等によって異なる。たとえば、被処理物に注入したり、散布したり、浴びせたり、浸漬させたり、する処理方法が挙げられる。オゾン水処理を行うことによって、たとえば、被処理物が水であれば消毒効果が、同じく半導体ウェハーであれば洗浄効果が、それぞれもたらされる。上記効果以外にも、たとえば、消毒、殺菌、洗浄、脱色、脱臭等の効果が、オゾン水処理によって得られる場合もある。ここで、オゾン水生成工程で生成されるオゾン水は、それが含むオゾン気泡の粒径Rが50nm未満であるから、オゾン溶解度が極めて高く、この結果、脱気するオゾンが全くないか、あっても極めて少ない。すなわち、50nm以下の粒径のオゾン気泡は、それらが含まれる水から受ける浮力が極めて小さい。このため、オゾン気泡はそのすべて又はほとんどが水面まで上昇せずに水中に滞留する。粒径50nm以下のオゾン気泡は、粒径50nmを超え1000nm以下のオゾン気泡に比べてより滞留しやすい、すなわち、より脱気しづらい。その一方、粒径をより小さくするためにはその分だけ一般に手間や時間(たとえば、溶解回数や溶解時間)がかかるので、用途に応じて使い分けるとよい。オゾン(オゾンガス)が脱気しないからオゾン溶解度が高く、オゾン濃度を高く維持することができる。高いオゾン濃度を維持することができるということは、低い濃度のオゾン水に比べ同じ処理を行うために生成すべきオゾン水の量を少なくすることができることを意味する。すなわち、オゾン水を生成する装置やプラント等の規模を、濃度を高めた分だけ小型化することができる。また、オゾンが人体等とって有害であることが知られているところ、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらいということは、有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。人畜を直接オゾン水処理することも可能である。さらに、オゾン水処理に従事する作業員の安全確保にも大きく貢献する。さらに、オゾン水からオゾン水生成に当たって電解質等の添加物を使用しないので、生成したオゾン水は、溶解させたオゾンを除き原水が含む以上の含有物を含まない。このため、添加物による悪影響を考慮する必要がなく、あらゆる被処理物に対して適用可能である。
【0011】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項4の処理方法」という)では、請求項1乃至3いずれかの処理方法のオゾン水生成工程における好ましい態様として、小径路を有するベンチュリ管に原料水を通過させ、かつ、ベンチュリ管にオゾンを供給するとともに、当該ベンチュリ管の少なくとも小径路に磁力を作用させることを行う。ベンチュリ管はエジェクタ(エゼクタ)と呼ばれることもある。
【0012】
請求項4の処理方法によれば、請求項1乃至3いずれかの処理方法の作用効果を前提として、オゾンを供給するベンチュリ管の少なくとも小径路に磁力を作用させることが、含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nm(500nm,50nm)であるオゾン水生成を極めて容易にする。ベンチュリ管を通過する原料水の圧力は、小径路に近づくにつれて一気に増加し、小径路通過後に一気に減少する。圧力減少する際のベンチュリ管内部は真空又は真空に近い負圧状態となり、この負圧状態によって供給されたオゾンが原料水内に吸引される。吸引されたオゾンは、上記圧力変化と、小径路通過に伴う被処理水の流れの変化等が複雑に絡み合い、一気に攪拌混合される。この一連の作用が、磁力の作用と相まってオゾン水生成を容易にする要因の一つと考えられる。小径路に磁力を作用させることによってオゾン気泡の粒径を1000nm(500nm,50nm)以下にすることができることについての因果関係は発明者において現在解明中であるが、この点は、後述する実験結果において明らかになる。オゾン水生成のために必要な構造は、極めて単純であるから小型化も容易である。
【0013】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項5の処理方法」という)では、請求項4の処理方法における好ましい態様として、前記ベンチュリ管を通過した原料水(オゾン水)を循環させ、オゾンを供給しながら前記ベンチュリ管を少なくとも1回再通過させることを行う。
【0014】
請求項5の処理方法によれば、請求項4の処理方法の作用効果を前提として、原料水の循環によって原料水(オゾン水)に対するオゾン注入を繰り返して行うことができる。繰り返してオゾン注入を行えば、オゾン注入を一旦終えた原料水(オゾン水)に再度オゾン注入することによって、前者よりも後者のほうがオゾン溶解度並びにオゾン濃度を高めることが可能になる。循環させる回数は、求めるオゾン溶解度やオゾン濃度に応じて装置使用者が決定するとよい。
【0015】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項6の処理方法」という)では、請求項4の処理方法における好ましい態様として、前記循環させた原料水を貯留タンクに一旦貯留することを行う。
【0016】
請求項6の処理方法によれば、請求項4の処理方法の作用効果を前提として、原料水(オゾン水)を一旦、貯留タンクに貯留することができ、この貯留によって原料水(オゾン水)を安定状態に置き、これによって、原料水(オゾン水)に対するオゾン溶解を熟成類似の作用によって促進させることができる。
【0017】
(請求項7記載の発明の特徴)
請求項7記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項7の処理方法」という)では、請求項6の処理方法における好ましい態様として、前記貯留タンクに貯留した原料水を、一旦取り出して5〜15℃の範囲に保持することを行う。
【0018】
請求項7の処理方法によれば、請求項6の処理方法の作用効果を前提として、温度保持を行うことによって、原料水(オゾン水)の温度を上記範囲に保持することができる。オゾン水生成に使用する原料水は長い配管内を搬送される場合が多く、そのような場合に搬送される原料水は天候の影響を受けやすい。特に、夏季における水温上昇が著しい。また、原料水(オゾン水)を循環させるためには循環のためのエネルギーが必要であり、そのようなエネルギー源として、たとえば、ポンプがある。上記したエネルギー源は、一般に発熱を伴いその熱が原料水(オゾン水)の温度を高める場合がある。オゾン溶解は水温の影響を受け、水温が高くなると溶解度の低下が見られる。そこで、原料水(オゾン水)の温度を所定範囲に保つことによって、オゾン溶解を促進させる。他方、たとえば、寒冷地において原料水(オゾン水)が凍結する恐れがある場合は、ヒーター装置を設けて原料水(オゾン水)被処理水を加温するように構成してもよい。原料水(オゾン水)の冷却又は加温を不要とするのであれば、温度保持構造自体を省略してもよいし、設けてある温度保持構造の運転を停止してもよい。
【0019】
(請求項8記載の発明の特徴)
請求項8記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項8の処理方法」という)では、請求項4乃至7いずれかの処理方法における好ましい態様として、オゾンを供給した後の原料水を溶解促進槽に一旦貯留してオゾン溶解を促進することを行う。
【0020】
請求項8の生成装置によれば、請求項4乃至7いずれかの処理方法の作用効果を前提として、溶解促進槽の働きによって原料水(オゾン水)に対するオゾン溶解が促進される。溶解促進槽に貯留された原料水(オゾン水)は、その貯留によって安定状態に置かれる。安定状態に置かれた原料水(オゾン水)は、それに対するオゾン溶解が熟成類似の作用によって促進される。
【0021】
(請求項9記載の発明の特徴)
請求項9記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項9の処理方法」という)では、請求項8の処理方法における好ましい態様として、前記溶解促進槽の頂部には、貯留してある原料水(オゾン水)被処理水から脱気したオゾンを排出する。
【0022】
請求項9の処理方法によれば、請求項8の処理方法の作用効果を前提として、原料水(オゾン水)を循環する過程において原料水(オゾン水)に溶解しなかったオゾンを外部へ排出することができる。未溶解のオゾンを排出することによって、原料水(オゾン水)が含むオゾンは溶解度の高いものとなる。したがって、真にオゾン溶解度の高いオゾン水が生成される。
【0023】
(請求項10記載の発明の特徴)
請求項10記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項10の処理方法」という)は、請求項1乃至3いずれかの処理方法におけるオゾン水生成工程の好ましい態様として、磁界中において、原料水の水圧を圧力頂点に至るまで増圧させ当該圧力頂点に至った直後に減圧させるとともに当該圧力頂点に至った原料水にオゾンを供給する工程を含めてなるものである。
【0024】
請求項10の処理方法によれば、請求項1乃至3いずれかの処理方法の作用効果を前提として、磁石の磁力を原料水とオゾンとを混合させる過程において作用させることになる。すなわち、原料水だけでなく、原料水に溶解したオゾン及び原料水に溶解していないオゾンにも磁力作用が及ぶ。オゾン混合するときの原料水は、大小さまざまな大きさのオゾン気泡を含み、その流れはきわめて不規則な乱流である。したがって、原料水やオゾンに作用する磁力の方向はきわめて不規則であり、かつ、不安定である。不規則かつ不安定な磁力作用が、高溶解度をもった高濃度オゾン水の生成に効果的であることは後述する実験結果により明らかである。ただ、高溶解度・高濃度オゾン水と磁力との間の因果関係は現在解明中である。
【0025】
(請求項11記載の発明の特徴)
請求項11記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項11の処理方法」という)は、請求項1乃至10いずれかの処理方法のオゾン水処理工程における好ましい態様として、被処理物である水又は温水に前記オゾン水を注入するオゾン水注入工程を含めてなるものである。
【0026】
請求項11の処理方法によれば、請求項1乃至10いずれかの処理方法の作用効果を前提として、水又は温水の浄化或いは殺菌消毒を効率よく行うことができる。処理後の水は、電解質等の添加物を含まないので、ろ過等の処理と組み合わせることによって安全な飲料水を得ることができる。現行の浄水場におけるオゾン処理は、たとえば、30メートル程度の処理塔に貯留した水にオゾンを放出する方法が採られているが、この方法は巨大な設備を必要としオゾンの処理効率も非常に低い、という問題点を抱えているが、請求項9の処理方法によれば高溶解度・高濃度のオゾン水を使用した処理なので極めて効率よくオゾン水処理を行うことができる。
【0027】
(請求項12記載の発明の特徴)
請求項12記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項12の処理方法」という)では、請求項11の処理方法における好ましい態様として、前記オゾン水注入工程では、オゾン水注入を水又は温水とともに攪拌しながら行う。
【0028】
請求項12の処理方法によれば、請求項11の処理方法の作用効果を前提として、攪拌によって原料水とオゾン水とが効率よく接触するので、オゾン水処理が効率的に行われる。オゾン水処理が効率的に行われるため、その分だけ、処理量を多くすること、又は、同じ処理量を処理するための設備を小型化することができる。
【0029】
(請求項13記載の発明の特徴)
請求項13記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項13の処理方法」という)は、請求項12の処理方法における好ましい態様として、前記オゾン水注入工程を、エジェクター又はスタティックミキサーを通過させた水に前記オゾン水を注入させることによって行う。
【0030】
請求項13の処理方法によれば、請求項12の処理方法の作用効果を前提として、エジェクター又はスタティックミキサーによってオゾン水の注入攪拌を行うことによって、小型のかつ単純な構造ながら上記注入攪拌を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、電解質を含めずに、また、生成に手間をかけることなく生成したオゾン水によって被処理物をオゾン水処理することができる。処理設備の複雑大型化も必要ない。これらのことから、オゾン処理の対象となる被処理物が限定されず、極めて使い勝手のよいオゾン水処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
各図を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、オゾン水処理装置を備える水浄化装置の概略構成図である。図2は、オゾン水生成装置を備えるオゾン水処理装置の概略構成図である。図3は、図2に示すオゾン水処理装置を構成する部材及び構造の相関図である。図4は、図2に示す原水細分化構造の縦断面図である。図5は、第1渦流ポンプの縦断面図である。図6は、第2渦流ポンプの縦断面図である。図7は、エジェクターの縦断面図である。図8は、スタティックミキサーの縦断面図である。図9は、サイクロンの縦断面図である。図10は、オゾン水生成装置の第1変形例を示す概略構成図である。図11は、渦流ポンプの変形例を示す縦断面図である。図12は、エジェクターの変形例を示す縦断面図である。図13は、オゾン水生成装置の第2変形例を示す概略構成図である。図14は、気液混合構造の正面図である。図15は、図14に示す気液混合構造の左側面図である。図16は、図15に示す気液混合構造のX−X断面図である。図17は、一部を省略した気液混合構造の平面図である。図18は、溶解促進槽の縦断面図である。図19は、比較実験を行うためのオゾン水生成装置の概略構成図である。図20は、図1に示す水浄化装置に適用したオゾン水生成装置の概略構成図である。
【0033】
(オゾン水処理装置の概略構造)
図1を参照しながら、本実施形態におけるオゾン水処理方法を実施するためのオゾン水処理装置について説明する。オゾン水処理装置303は、オゾン水生成装置305、オゾン水処理構造307と、から概ね構成してある。符号309は、オゾン水生成装置305の後段に配した水処理槽を示している。オゾン水生成装置305は、オゾン水処理を行うためのオゾン水を生成するための装置である。また、オゾン水処理構造307は、オゾン水生成装置305から供給されたオゾン水により被処理物である水を処理するための装置である。水処理槽309は、オゾン水処理を終えた水を、たとえば、ろ過処理するためのものである。オゾン水処理装置303と水処理槽309により、飲料水を浄化するための水浄化装置301が構成されている。ここで、項を改め、上記部材の各々の構成を説明する。まず、オゾン水生成装置305に適用可能なオゾン水生成装置ついて説明する。
【0034】
(オゾン水生成装置の使用例)
図1及び2に基づいて、オゾン水生成装置の使用例について説明する。符号1は、オゾン水生成装置を備えたオゾン水処理装置(消毒装置)を示している。すなわち、オゾン水処理装置1は、取水バルブ3と、取水バルブから取水した原水(被処理水)からオゾン水を生成するためのオゾン水生成装置5と、オゾン水生成装置が生成したオゾン水を取り出して散布するための加圧ポンプ7及びノズル9と、から概略構成してある。取水バルブ3は、電磁バルブであって、原水となる水道水又は井戸水の供給源に接続してある。オゾン水生成装置5は、被処理水にオゾンを溶解させて所定濃度のオゾン水を生成するためのものであり、本実施形態では後述する原水細分化構造11とオゾン溶解構造13により構成してある。加圧ポンプ7は、生成したオゾン水を所定圧力にまで加圧するポンプである。加圧ポンプ7によって加圧されたオゾン水の散布は、ノズル9(ノズル群9)を介して行う。ノズル9は、説明の便宜のために単数として扱うが、複数であってもよいし、複数である場合に互いに形状や孔径等が異なっていてもよい。オゾン水処理装置1は、オゾン水散布を行おうとする場所や施設(たとえば、豚舎や鶏舎等の畜舎)に設置して使用するのが一般的であるが、たとえば、これを車両に搭載して移動可能に構成することもできる。
【0035】
(原水細分化構造)
図1及び3に基づいて説明する。原水細分化構造11は、取水バルブ3から取り入れた原水のクラスターを細分化して細分化原水を生成するためのものである。原水細分化構造11は、原水Gが流れる配管4の外周に配管4と同心円上に固定した金属製ケーシング11aと、パッキン11bと、ケーシング11a内に封入した磁石11c,11cと、から構成してある。磁石11c,11cは、原水に磁力を作用させるためのものである。磁石11c,11cの磁力は、たとえば、1〜1.5T(10,000〜15,000ガウス)程度のものが好適である。原水Gのような水はクラスターGcを形成することが知られているが、原水細分化構造11は、エネルギーを与えることによって原水のクラスターGcを細分化してクラスターGsとする機能を有している。図3に示すクラスターGc,Gsは、あくまでも説明のために示す概念図であり必ずしも同図に示すように細分化されるわけではなく、その測定方法も確立させているわけではないが、原水細分化構造11を設けることにより、表1及び2に示すように濃度到達時間の短縮及びオゾンの半減時間延長が可能であることは現象的に明らかであり、このことから、加圧散布の際にオゾン水からオゾンが脱気したり分解したりする速度を有効に抑制することがわかる。磁石11cの代わりに遠赤外線効果を作用しうる炭素チップ群や微細振動を与え得る超音波発生装置等を用いることもできる。なお、原水細分化構造11を設ける位置は取水バルブ3の上流側でも下流側でもよい。さらに、配管4は、遠赤外線や磁力等の透過を妨げない材質、たとえば、塩化ビニール等で構成すべきことはいうまでもない。なお、原水細分化構造11、すなわち、磁石は、これを、後述するように渦流ポンプ、エジェクター、スタティックミキサーの上流及び/又は下流側に適宜設けることもできる。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
(オゾン溶解構造)
図3及び4を参照する。オゾン溶解構造13は、貯留タンク15と、オゾン供給構造(オゾン供給装置)19と、循環構造21と、により構成してある。貯留タンク15は、取水バルブ3を介して注入した原水及び/又はオゾン水を貯留するためのタンクであって、たとえば、3トン程度の貯留量を備えている。オゾン供給構造19は、オゾンを生成供給するための装置であるが、必要なオゾン量を供給可能なものであればオゾン発生原理等に何ら制限はない。循環構造21は、貯留タンク15から取り出した被処理水、すなわち、細分化原水及び/又はオゾン水をオゾン溶解後に貯留タンク15に戻すためのものであり、後述する複数の部材や構造によって構成してある。
【0039】
(循環構造)
図1、2及び4乃至7を参照しながら説明する。循環構造21は、第1渦流ポンプ31、エジェクター35、第1スタティックミキサー41、第2渦流ポンプ31´、第2スタティックミキサー51、サイクロン55、オゾン水帰還管61及びオゾン帰還管65と、上記各部材を連結する配管群によって構成してある。上記した構成のうち、オゾン帰還管65を除いたものは貯留タンク15から取り出した細分化原水及び/又はオゾン水にオゾンを溶解させ再び貯留タンク15に戻す循環経路であって、オゾン帰還管65はサイクロン55から取り出した余剰オゾンを第2渦流ポンプ31´に戻す循環経路である。以下、各構成要素について説明する。なお、原水のクラスターを細分化することはオゾン溶解の観点から好ましいことであることは前述したとおりである。他方で、このクラスターの細分化は、原水だけでなくオゾン水に対しても有効なオゾン溶解手段である。このため、循環構造21を構成する各部材や装置の適宜な箇所に、前述した磁石11cと同一若しくは類似の磁石を設け循環するオゾン水に磁力を作用させるようにするとよい。
【0040】
(渦流ポンプ)
図1及び4に基づいて、第1渦流ポンプについて説明する。第1渦流ポンプ31は、厚手円盤状のポンプ本体32と、ポンプ本体32の一部としてポンプ本体32から突き出る吸入部32a及び吐出部32bと、ポンプ本体32内で回転するインペラ33と、から概ね構成してある。吸入部32aは配管16を介して貯留タンク15に、吐出部32bは逆止弁71及び配管70を介してエジェクター35に、それぞれ接続してある。ポンプ本体32内には環状の昇圧通路32dが形成してあり、昇圧通路32dには吸入部32a内の吸入路32e及び吐出部32b内の吐出路32fを連通させてある。インペラ33は、インペラ本体33aと、インペラ本体33aの外周部から放射方向に延びる複数の羽根片33b,・・と、各羽根片33b,33b間に開口する羽根溝33c,・・と、を備えている。インペラ33は、インペラ本体33aの中心に設けた回転軸33dに接続したモーター(図示を省略)によってポンプ本体32内で回転されるようになっている。インペラ33の回転は、各羽根片33bと各羽根溝33cを昇圧通路32d内で回転させ、このとき、昇圧通路32d内に吸入路32eを介して吸入した原水(オゾン水)を攪拌しながら圧送して吐出路32fから吐出する。各羽根片33bは回転によって各羽根溝33c内にある原水(オゾン水)を攪拌してオゾン溶解を促進しながら圧送する。つまり、第1渦流ポンプ31は、オゾン溶解を促進するための混合促進構造としての機能と圧送構造としての機能を兼ね備えている。
【0041】
なお、図5に示す第2渦流ポンプ31´は、基本的に第1渦流ポンプ31と同じ構造を有しており、異なるのは、第1渦流ポンプ31が有していないオゾン帰還部34を有している点だけである。すなわち、第2渦流ポンプ31´の吸入部32aにはオゾン帰還部34を設けてあり、オゾン帰還部34内の帰還路34aを吸入路32eに連通させてある。なお、オゾン帰還部34以外の部材は上述したように異なる点がないので、これらの部材については図4に示す符号と同じ符号を図5において使用するにとめ、それらについての説明を省略する。第2渦流ポンプ31´の吸入部32aは配管42を介して第1スタティックミキサー41に、同じく吐出部32bは配管46を介して第2スタティックミキサー51に、それぞれ配管を介して接続してある。オゾン帰還部34には、オゾン帰還管65の一端を接続してある。
【0042】
(エジェクター)
図1及び6を参照する。エジェクター35は、細分化原水(オゾン水)にオゾンを溶解させるための気液混合構造であって、小径路38を有するベンチュリ管36と、小径路38近傍にオゾン供給のためのオゾン供給パイプ37と、から概ね構成してある。ベンチュリ管36の入路36a内に圧送された細分化原水(オゾン水)には、小径路38内の細径路36cを通過するときに生じる負圧によって、オゾン供給パイプ37内の供給路37aから吸引されたオゾンが混入してオゾン溶解が行われるようになっている。小径路38内の細径路36cを通過したオゾン水は出路36bから外部に圧送される。なお、オゾンは、オゾン供給パイプ37に接続されたオゾン供給構造19(図1参照)から配管20と配管20に設けたバルブ23及び逆止弁22を介して供給されるようになっている。
【0043】
(スタティックミキサー)
図1及び7に基づいて説明する。第1スタティックミキサー41と第2スタティックミキサー51は同じ構造に構成してあるので、ここでは、第1スタティックミキサー41の構造について説明する。第1スタティックミキサー41は、円筒状の流管41aと、流管41a内に設置した邪魔板群41bと、によって構成してある。圧送されてきた、細分化原水(オゾン水)を機械的にせん断して併せて送られてきたオゾンの溶解を促進するための混合促進構造である。第1スタティックミキサー41へのオゾン水圧送は第1渦流ポンプ31によって行われ、第2スタティックミキサー51へのオゾン水圧送は第2渦流ポンプ31´によって行われる。第2スタティックミキサー51の吐出側は、配管52を介してサイクロン55に接続してある。
【0044】
(サイクロン)
図1及び8を参照する。サイクロン55は、円筒状であって密閉されたサイクロン本体56と、サイクロン本体56上部に接続した気液分離装置57と、から構成してある。サイクロン本体56は、第2スタティックミキサー51から配管52を介して圧送されてきたオゾン水を内部で回転流動させることによってサイクロン効果を生じさせオゾンとの溶解を促進可能に構成してある。つまり、気液分離装置57はオゾン水から脱気したオゾンを排出するための脱気構造として、サイクロン55は、オゾン溶解を促進するための溶解促進槽として、それぞれ機能する。オゾン水内のオゾンは回転しながら上昇し、オゾン水から脱気した余剰オゾンは、サイクロン本体56の上部空間56aに抜け気液分離装置57を介してオゾン帰還管65に送られる。オゾン帰還管65内のオゾンは第2渦流ポンプ31´の負圧によって吸引され再びオゾン水に混入させられる。
【0045】
(加圧ポンプとノズル)
加圧ポンプ7及びノズル9(ノズル群9)に細霧させるときのオゾン水の平均粒径は、40〜200μm未満又は200〜1000μmの範囲で使用目的等に応じて適宜設定するとよい。散布するオゾン水の圧力を上記した0.2〜0.8MPaの範囲に設定する必要があることから、そのような圧力範囲内で細霧するためには平均粒径にも一定の限界があるという理由もあるが、ノズルから散布したオゾン水を効率よく家畜又は畜舎に行き渡らせ、さらに、子豚等に風邪を引かせたりする恐れが少ないからである。貯留タンク15から配管17を介して取り出されたオゾン水は、吸込み口から加圧ポンプ7に吸いこまれ、そこで加圧され吐出し口から送水ライン103に圧送され、さらに、電磁弁104を介して散布ライン105に圧送されるようになっている。このようにして散布ライン105の一方側から圧送されたオゾン水は、前述したように、その一部がノズル9から散布され、散布残りの余剰オゾン水は、散布ライン105の他方側に連通する戻しライン107を介して貯留タンク15に戻せるようになっている。電磁弁104は、散布ライン105へのオゾン水の送水を阻止するための弁であるが、送水及びその遮断は加圧ポンプ7の稼動及びその停止のみによっても制御可能であるから省略も可能である。
【0046】
(オゾン水生成装置の作用)
図1を参照する。取水バルブ3を介して取り入れられた水道水(原水、被処理水)は、原水細分化構造11を介して貯留タンク15内に注入される。このとき、注入された水道水のクラスターが原水細分化構造11の遠赤外線作用によって細分化され、水道水は、細分化原水となっている。第1渦流ポンプ31によって貯留タンク15から取り出された細分化原水は、第1渦流ポンプによって気液混合構造として機能するエジェクター35に圧送される。エジェクター35の中にはオゾン供給構造19によってオゾンが供給され、細分化原水(被処理水)へのオゾン溶解が行われる。エジェクター35を通過したオゾン水は、第1スタティックミキサー41によってオゾン溶解が促進されるとともに、第2渦流ポンプ31´によって第2スタティックミキサー51に圧送される。第2スタティックミキサー51によってさらにオゾン溶解が促進されたオゾン水は、サイクロン55内に注入される。サイクロン55内のオゾン水は回転流動しサイクロン効果によってオゾン溶解がさらに促進される。サイクロン55から取り出されたオゾン水はオゾン水帰還管61を介して貯留タンク15に戻される。この時点で、貯留タンク15に注入された細分化原水がオゾン水となる。上記工程は、貯留タンク15に貯留されているオゾン水(被処理水)のオゾン濃度が所望濃度になるまで繰り返して行われる。所望濃度に達したオゾン水は、貯留タンク15から取り出され加圧ポンプ7によって圧送されノズル群9から散布される。散布後に残ったオゾン水はフィルター109を介して貯留タンク15に戻され、前述したように再利用に供される。
【0047】
ここで、第1渦流ポンプ31と第2渦流ポンプ31´とは、相互に加圧を補助し合って混合する。すなわち、第1渦流ポンプ31と第2渦流ポンプ31´とは基本的に同じ構造・能力を備えているが、加圧補助し合うことによって第1渦流ポンプ31の吐出側よりも第2渦流ポンプ31´の吐出側の方が若干高圧になる(サイクロン55と気液分離装置57を経て第2渦流ポンプ31´に戻るオゾン帰還管65は同圧になる)が、第2渦流ポンプ31´の負圧によって余剰オゾンは第2渦流ポンプ31´に帰還させられる。つまり、余剰オゾンの発生は極めて僅かなものとなり、これによって、オゾン供給構造19の負担を小さくすることができる。
【0048】
(オゾン水生成装置の第1変形例)
図9乃至11を参照しながら、前述したオゾン水生成装置の第1変形例を備えるオゾン水処理装置1Aについて説明する。オゾン水処理装置1Aは、オゾン水処理装置1と基本的に共通する構成を有しており、両者が主として異なるのは、オゾン水処理装置1に係るオゾン水生成装置5(オゾン溶解構造13)が有していない温度保持装置(温度保持構造)63をオゾン水処理装置1Aに係るオゾン水生成装置5A(オゾン溶解構造13A)が有している点、両者が有するサイクロン55と、溶解促進槽206の形状が異なる点、第2渦流ポンプ31´が有しない磁石32mを第2渦流ポンプ31´Aが有している点、さらに、エジェクター35が有していない磁石36mをエジェクター35Aが有する点である。なお、図示は省略するが、スタティックミキサー51に磁石を設けたものを採用することもできる。スタティックミキサーに磁石を設ける理由は、後述するようにオゾン溶解度を高めるためである。なお、溶解促進槽206は、後述する第2変形例の説明の中で説明する溶解促進槽206と同じ構造を有している。したがって、溶解促進槽206の構造は、第2変形例の説明の中で行う。
【0049】
図10に基づいて、本変形例に係る第2渦流ポンプ31´Aが、本実施形態に係る第2渦流ポンプ31´と異なる点について説明する。両者共通する点については、第2渦流ポンプ31´に用いた符号と同じ符号を図10において使用するに止め、それらの点についての説明は省略する。すなわち、第2渦流ポンプ31´Aが有するポンプ本体32の外側には、上述したように複数の磁石32m,・・をインペラ33の回転方向に沿わせた所定間隔を介して取り付けてある。各磁石32mは、ポンプ本体32内にあるオゾン水に磁力を作用させることによってクラスター細分化を図り、これによって、オゾン溶解度を高めるためのものである。したがって、ポンプ本体32は、各磁石32mの磁力が透過可能な材質(たとえば、磁力が透過可能なステンレス等の金属や合成樹脂)によって構成してある。なお、後述するように、第1渦流ポンプ31に、第2渦流ポンプ31´Aと同様に磁石を設けることが、高溶解度をもった高濃度オゾン水を生成する上で好ましい。
【0050】
図11に基づいて、本変形例に係るエジェクター35Aが、本実施形態に係る本実施形態に係るエジェクター35と異なる点について説明する。両者共通する点については、エジェクター35に用いた符号と同じ符号を図11において使用するに止め、それらの点についての説明は省略する。すなわち、エジェクター35Aのベンチュリ管36の外側には、前述したように複数の磁石36m,・・を長さ方向に沿わせた所定間隔を介して取り付けてある。各磁石36mは、ベンチュリ管36内にあるオゾン水に磁力を作用させることによってクラスター細分化を図り、これによって、オゾン溶解度を高めるためのものである。したがって、ベンチュリ管36は、各磁石36mの磁力が透過可能な材質(たとえば、磁力が透過可能なステンレス等の金属や合成樹脂)によって構成してある。なお、気液混合を行う装置として、エジェクターの代わりに膜モジュールの中に中空糸状のオゾンガスが透過可能な透過膜を束ね、この透過膜の内側に水を通過させてオゾンと混合させる溶解膜方式の装置(図示を省略)を使用することができる。そして、この溶解膜方式の装置に、磁石を設けて水のクラスター細分化を図ることも可能である。
【0051】
(オゾン水生成装置の第2変形例)
図12を参照しながら、オゾン水生成装置の第2変形例について説明する。第2変形例に係るオゾン水生成装置201は、貯留タンク202と、オゾンを生成して供給するためのオゾン供給構造203と、貯留タンク202から取り出した被処理水を貯留タンク202に戻すための循環構造204と、循環構造204の途中に設けた気液混合構造205及び溶解促進槽206と、貯留タンク202に付設した温度保持構造207と、から概ね構成してある。以下の説明は、説明の都合上、貯留タンク202、温度保持構造207、オゾン供給構造203、気液混合構造205、溶解促進槽206を行った後、最後に循環構造204について行う。
【0052】
(貯留タンク周辺の構造)
図12に示すように、貯留タンク202には取水バルブ202vを介して被処理水としての原水を注入可能に構成してある。貯留タンク202は取水した原水、及び、後述する循環構造204を介して循環させた被処理水(オゾン水)を貯留するためのものである。貯留タンク202に貯留された被処理水は、温度保持構造207によって、たとえば、5〜15℃の範囲に保持されるようになっている。上記範囲に温度設定したのは、オゾン溶解を効率よく行い、かつ、溶解させたオゾンを容易に脱気させないために適当であるからである。温度保持構造207は、貯留タンク202から被処理水を取り出すためのポンプ211と、取り出した被処理水を冷却するための冷却機212と、から概ね構成してあり、貯留タンク202とポンプ211、ポンプ211と冷却機212、冷却機212と貯留タンク202の間は被処理水を通過させる配管213によって連結してある。上記構成によって、貯留タンク202に貯留された被処理水(原水及び/又はオゾン水)は、ポンプ211の働きによって貯留タンク202から取り出され、冷却機212に送られる。冷却機212は送られてきた被処理水を所定範囲の温度に冷却して貯留タンク202に戻す。ポンプ211は、図外にある温度計によって計測された貯留タンク202内の被処理水の温度が所定範囲を超え冷却の必要があるときにのみ作動するようになっている。貯留タンク202を設けた理由は、被処理水を一旦貯留することによって上記冷却を可能にするとともに、被処理水を安定状態に置き、これによって、被処理水に対するオゾン溶解を熟成類似の作用によって促進させるためである。なお、たとえば、寒冷地等において被処理水が凍結する恐れがある場合は、上記冷却機の代わりに、又は、上記冷却機とともにヒーター装置を用いて被処理水を加温するように構成することもできる。
【0053】
(オゾン供給構造)
オゾン供給構造203は、オゾンを生成供給するための装置である。必要なオゾン量を供給可能なものであれば、オゾン供給構造203が作用するオゾン発生原理等に何ら制限はない。オゾン供給構造203によって生成されたオゾンは、オゾン供給管217の途中に設けた電磁バルブ218と逆止弁219を介して気液混合構造205に供給されるようになっている。
【0054】
(気液混合構造)
図12乃至16を参照しながら気液混合構造205の詳細について説明する。気液混合構造205は、ベンチュリ管231と、オゾン供給パイプ239と、磁気回路243と、により概ね構成してある。ベンチュリ管231は、上流側(図15の向かって右側)から送られた被処理水を下流側(図15の向かって左側)へ通過させるためのパイプ状の外観を有している(図13参照)。ベンチュリ管231を長手方向に貫く中空部は、上流側から下流側に向かって上流側大経路232、絞り傾斜路233、小径路234、開放傾斜路235及び下流側大経路236の順に連通している。上流側大経路232は、軸線方向に対して50度前後の急角度をもって絞り方向に傾斜する絞り傾斜路233を介して小径路234に繋げられ、その後、開放傾斜路235によって同じく軸線方向に対して30度前後の緩やかな角度を持って開放される。開放傾斜路235は、上流側大経路232と同じ外径の下流側大経路236に繋がっている。他方、小径路234には、そこにオゾン供給パイプ239の開口端を臨ませてある。オゾン供給パイプ239の供給端にはオゾン供給構造203と連通するオゾン供給管217が接続してある。小径路234の中、又は、その近傍は、被処理水の圧力変化によって真空又は真空に近い状態になるため、開口端に及んだオゾンは吸引され乱流化した被処理水内に散気される。なお、符号240は、ベンチュリ管231とオゾン供給パイプ239との間を補強するためのリブを示している。
【0055】
ベンチュリ管231には、磁気回路243をネジ(図示を省略)固定してある。磁気回路243は、ベンチュリ管231を挟んで対向する一方の磁石片245及び他方の磁石片246と、一方の磁石片245と他方の磁石片246とを連結するとともに、ベンチュリ管231への磁石片取り付けの機能を有する断面U字状(図14参照)の連結部材248と、により構成してある。磁石片245と磁石片246とは、小径路234(図14では破線で示す。図16併せて参照)及び/又はその近傍(特に、下流側)をその磁力線(磁界)が最も多く通過するように配するとよい。ただ、実際には、小径路234のみに磁力線を集中させることは技術的困難を伴うことから、小径路234及び小径路234の近傍の双方に磁力線を通過させることになろう。被処理水とオゾンの双方に磁力を作用させることによって、被処理水に対して最も効率よくオゾンを溶解させることができると考えられるからである。磁石片245及び磁石片246は、7,000ガウス前後の磁力を持つネオジュウム磁石によって構成してある。磁力は強いほうがオゾン溶解効果が高いと思われるが、少なくとも3,000ガウス以上のものが望まれる。ここで、7,000ガウスの磁石を採用したのは、その調達容易性と経済性にある。7,000ガウス以上の磁力を持つ磁石(天然磁石、電磁石等)の採用を妨げる趣旨ではない。連結部材248は、磁束漏れを抑制して磁力作用が被処理水等にできるだけ集中するように、磁力透磁率(μ)の大きい部材(たとえば、鉄)によって構成してある。
【0056】
(気液混合構造の作用効果)
以上の構成により、上流側大経路232を通過した被処理水は、絞り傾斜路233を通過するときに圧縮されて水圧が急激に高まり、同時に通過速度も急激に上昇する。高圧・高速のピークは、小径路234に達したときである。小径路234を通過した被処理水は、開放傾斜路235の中で急激に減圧・減速し、後続する被処理水との衝突の衝撃等を受け乱流化する。その後、被処理水は下流側大経路236を抜け、気液混合構造205の外へ出る。散気されたオゾンは、被処理水の乱流に巻き込まれ大小様々な大きさの気泡となり攪拌作用を受ける。小径路234及び少なくともその下流を流れる被処理水(オゾン)には、上記攪拌作用とともに磁気回路243の働きによる磁力作用を受ける。すなわち、被処理水の水圧を圧力頂点(ピーク)に至るまで増圧させ当該圧力頂点に至った直後に減圧させるとともに当該圧力頂点に至った被処理水にオゾンを供給する、ことを磁界の中で行うことになる。攪拌作用と磁界の磁力作用が相乗効果を生み、その結果、被処理水にオゾンが溶解し高溶解度を持った高濃度オゾン水が生成される。
【0057】
(溶解促進槽)
図12及び17を参照しながら、溶解促進槽206について説明する。溶解促進槽206は、天板253と底板254とによって上下端を密閉した円筒状の外壁255によって、その外観を構成してある。天板253の下面には、その下面から垂下する円筒状の内壁256を設けてある。内壁256に囲まれた空間が、被処理水を貯留するための貯留室258となる。内壁256の外径は外壁255の外径よりも小さく設定してあり、これによって、内壁256と外壁255との間に所定幅の壁間通路259が形成される。他方、内壁256の下端は、底板254まで届かず、底板254との間に所定幅の間隙を形成する。この間隙は、下端連通路257として機能する。すなわち、内壁256が囲む貯留室258は、下端連通路257を介して壁間通路259と連通している。他方、内壁256の天板253の近傍には複数の連通孔256h,256h,・・を貫通させてあり、貯留室258と壁間通路259とは各連通孔256hを介しても連通している。底板254の上面略中央には、細長の揚水管261を起立させてある。揚水管261の中空部下端は、底板254を貫通する入水孔254hと連通し、中空部上端は、揚水管261上端に形成した多数の小孔261h,・・を介して貯留室258と連通している。揚水管261の上端は、内壁256が有する連通孔256hの位置よりも僅か下に位置させてある。外壁255の高さ方向上から略4分の1付近には、排水孔255hを貫通させてある。つまり、壁間通路259は、排水孔255hを介して外部と連通している。
【0058】
天板253の略中央には、揚水孔253hを貫通させてある。揚水孔253hは、天板253の外部に配した気液分離装置265の内部に連通している。気液分離装置265は、揚水孔253hを介して貯留室258から押し上げられる被処理水と、この被処理水から脱気するオゾンとを分離排出するための脱気構造として機能する。気液分離装置265によって分離されたオゾンは、オゾン分解装置267によって分解して無害化した後に装置外部に放出するようになっている。被処理水に対するオゾン溶解度はきわめて高く、したがって、脱気するオゾンは極めて少ないが、より安全性を高めるためにオゾン分解装置267等を設けてある。揚水管261によって貯留室258内に送り込まれた被処理水は、後続する被処理水に押されて下降する。下端に達した被処理水は下端連通路257を折り返して壁間通路259内を上昇し、排水孔255hを介して外部に排水される。また、一部の被処理水は気液分離装置265内に押し上げられる。この間、熟成類似の作用によってオゾンが被処理水に溶解して高溶解度のオゾン水を生成する。他方、溶解し切れなかったり、一旦は溶解したが脱気したオゾンがある場合に、そのオゾンは気液分離装置265内に上昇しそこで分離される。したがって、被処理水から溶解しきれないオゾンは、そのほとんどを排除することができる。この結果、溶解促進槽206を通過した被処理水のオゾン溶解度は、飛躍的に高くなっている。
【0059】
(循環構造)
図12を参照しながら、循環構造について説明する。循環構造204は、気液混合構造205を通過した被処理水(既に原水からオゾン水になっている)を循環させて再度、気液混合構造205を通過させる機能を有している。再度、気液混合構造205を通過させるのは、既にオゾンを溶解させた被処理水に再度オゾンを注入することによって、オゾンの溶解度と濃度をさらに高めるためである。循環構造204は、ポンプ271を駆動源とし、貯留タンク202と溶解促進槽206を主要な構成要素とする。すなわち、ポンプ271は、貯留タンク202から配管270を介して取り出した被処理水を逆止弁272及び配管273を介して気液混合構造205に圧送する。圧送によって気液混合構造205を通過した被処理水は、配管274及び溶解促進槽206を抜け配管275を介して貯留タンク202に戻される。循環構造204は、上記した工程を必要に応じて繰り返して実施可能に構成してある。循環させる回数は、生成しようとするオゾン水のオゾン溶解度やオゾン濃度等を得るために自由に設定することができる。なお、符号276は、配管275の途中に設けたバルブを示している。バルブ276は、その開閉によって気液混合構造205の小径路234(図15参照)を通過させる被処理水の水圧を制御することを主目的として設けてある。
【0060】
(実験例)
図12及び18を参照しながら、実験例について説明する。ここで、示す実験例は、背景技術の欄において説明した磁石の使用方法と本発明に係る磁石の使用方法の違いによって、オゾンの溶解度や濃度に著しい差が生じることを主として示すためのものである。本実験例では、本件発明に係る装置として図12に示すオゾン生成装置(以下、「本件装置」という)を使用し、比較対象となる装置として図18に示すオゾン生成装置(以下、「比較装置」という)を使用した。比較装置には、本件装置の構造と基本的に同じ構造を備えさせてあるが、磁気回路243の取付位置のみを異ならせてある。このため、図18では磁気回路を除き図12で使用する符号と同じ符号を使用し、図18に示す磁気回路には気液混合構造205の上流側にあるものに符号243aを、下流側にあるものに符号243bを、それぞれ付してある。整理すると、図12に示す本件装置は、磁気回路243と一体となった気液混合構造205を備え、図18に示す比較装置は、気液混合構造205の上流側配管に磁気回路243aを、同じく下流側配管に磁気回路243bを、それぞれ同時に又は選択的に取り付け取り外しできるように構成してある。なお、気液混合構造205として、米国マジェーインジェクター社(MAZZEI INJECTOR CORPORATION)製のモデル384を、磁気回路には7000ガウスのものを、それぞれ使用した。
【0061】
(濃度比較実験)
表3及び4を参照しながら、濃度比較実験について説明する。表3は、オゾン水のオゾン濃度と濃度上昇時間との関係を示している。表4は、表3に示すオゾン水のオゾン濃度が生成装置の運転停止後にゼロになるまでに要する時間を示している。ゼロになるまでの時間が長ければ長いほどオゾン溶解度が高いことを示す。表3及び4において、記号「□」は本件装置を用いて生成したオゾン水(以下、「本件オゾン水」という)を、記号「×」は比較装置から磁気回路のみを取り外した気液混合構造を用いて生成したオゾン水(以下、「磁気なしオゾン水」という)を、記号「△」は比較装置において気液混合構造205と磁気回路243aとにより生成したオゾン水(以下、「上流側磁気オゾン水」という)を、記号「○」は比較装置において気液混合構造205と磁気回路243bとにより生成したオゾン水(以下、「下流側磁気オゾン水」という)を、そして、記号「◇」は比較装置において気液混合構造205と磁気回路243a及び磁気回路243bの双方とにより生成したオゾン水(以下、「両側磁気オゾン水」という)を、それぞれ示している。被処理水の温度は5℃、周囲湿度は36〜43%、周囲温度は17℃であった。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
表3が示すように、生成装置運転開始後の生成時間35分で本件オゾン水はオゾン濃度20ppmに到達したが、同条件下において、磁気なしオゾン水はオゾン濃度8ppm前後、下流側磁気オゾン水はオゾン濃度11ppm前後、上流側磁気オゾン水はオゾン濃度12ppm前後、両側磁気オゾン水はオゾン濃度13ppm前後までしか上昇しなかった。このことから、まず、磁気回路を設けることにより設けない場合に比べてオゾン濃度を高められること、次に、同じ磁気回路を設けるとしても気液混合構造と一体化させた場合と気液混合構造以外の箇所に設けた場合とでは前者の方が後者よりも少なくとも7ppm高いオゾン水を生成可能であること、が分かった。つまり、オゾン濃度について本件オゾン水は、両側磁気オゾン水に比べて略54%((20−13)/13×100)高い、という結果を得た。
【0065】
表4が示すように、オゾン濃度20ppmに達した本件オゾン水のオゾン濃度がゼロになるまでに32時間以上要したのに対し、比較対象となるオゾン水のうち最も長くかかった両側磁気オゾン水のオゾン濃度は13ppmからゼロになるまでの時間は略3.5時間しか要しなかった。したがって、本件オゾン水は両側磁気オゾン水に比べて10倍近い時間オゾンを含有していたことになる。換言すると、両側磁気オゾン水に比べて本件オゾン水は、同じ時間をかけて同量のオゾンを注入し溶解させたオゾンを10倍近い時間保持していたことになる。本件オゾン水のオゾン溶解度の高さを端的に示している。
【0066】
(オゾン気泡の粒径測定実験)
表5及び6を参照しながら、本件オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径測定実験について説明する。表5及び6は、本件オゾン水に含まれるオゾン気泡の粒径分布を示す(左側縦軸参照)。本測定実験では、オゾン濃度とオゾン濃度保持時間との関係から4種類の本件オゾン水を測定対象とした。まず、オゾン濃度を3ppmと14ppmの2種類とし、次に、各濃度それぞれ当該濃度に達した直後のオゾン水(以下、各々「3ppm直後オゾン水」「14ppm直後オゾン水」という)と、当該濃度に達した後その濃度を15分間維持させたオゾン水(以下、各々「3ppm維持オゾン水」「14ppm維持オゾン水」という)と、に分けた。つまり、「3ppm直後オゾン水」「3ppm維持オゾン水」「14ppm直後オゾン水」「14ppm維持オゾン水」の4種類が、本測定実験に係る測定対象である。ここで、本測定実験に使用した本件オゾン水の原水には、水道水を0.05μm(50nm)の微粒子絶対濾過の逆浸透膜で濾過して得た純水を用いた。本実験で純水を得るために使用した装置は、セナー株式会社製超純水装置(型名:Model・UHP)である。水道水には50nm以上の不純物(たとえば、鉄分やマグネシウム)が含まれているため、濾過してない原水から生成したオゾン水を測定対象としても、そこに含まれる不純物を測定してしまい測定誤差が生じかねないので、濾過によって予め不純物を取り除いておくことによってオゾンの気泡粒径の正しい測定ができるようにするためである。水道水以外の原水、たとえば、井戸水や河川水についても同じことがいえる。オゾン気泡の粒径測定に使用した測定器は、動的光散乱式粒径分布測定装置(株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd):型式LB500))である。原水から不純物を濾過せずともオゾン気泡の粒径を正しく測定できる手段があれば、その手段を用いて測定可能であることはいうまでもない。
【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
まず、表5に基づいて、3ppm直後オゾン水と3ppm維持オゾン水について考察する。表5右端のグラフが3ppm直後オゾン水を示し、同じく左端のグラフが3ppm維持オゾン水を示している。3ppm直後オゾン水は、1.3μm(1300nm)〜6.0μm(6000nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。他方、3ppm維持オゾン水は、0.0034nm(3.40nm)〜0.0050μm(5.00nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。
【0070】
次に、表6に基づいて14ppm直後オゾン水と14ppm維持オゾン水について考察する。表6右端のグラフが14ppm直後オゾン水を示し、同じく左端のグラフが14ppm維持オゾン水を示している。14ppm直後オゾン水は、2.3μm(2300nm)〜6.0μm(6000nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。他方、14ppm維持オゾン水は、0.0034nm(3.40nm)〜0.0058μm(5.80nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。
【0071】
上記実験から明らかになった第1の点は、同じ濃度を持ったオゾン水であっても、当該濃度に達した直後のオゾン水(直後オゾン水)と当該濃度を所定時間維持したオゾン水(維持オゾン水)とでは含有されるオゾン気泡の粒径(以下、「気泡粒径」という)が異なるということである。3ppmオゾン水の場合、直後オゾン水の気泡粒径最小値は、維持オゾン水の気泡粒径最大値の、260倍(1300/5.0)の大きさを持っている。同様に14ppmオゾン水の場合は、約400倍(2300/5.8)の大きさを持っている。つまり、当該濃度を所定時間維持すること、すなわち、被処理水であるオゾン水を循環させることによって気泡粒径を小さくすることができるということである。気泡粒径が1000nm以下であること、好ましくは500nm以下であること、さらに好ましくは気泡粒径50nm未満のオゾン気泡であればより安定して水溶液中に浮遊させることができる。本願発明に係るオゾン水処理方法によれば、生成されるオゾン気泡の粒径Rが、50nm未満(0<R<50nm)のオゾン気泡を含有するオゾン水、すなわち、溶解度の高いオゾン水を得られることが分かった。含有するオゾン気泡が50nm〜1000nmのオゾン水は、上記した含有するオゾン気泡の粒径50nm未満のオゾン水を生成する過程で得ることができる。すなわち、循環させることなく生成したオゾン水や循環させる時間を短くしたオゾン水は、循環させて生成したオゾン水や循環時間の長いオゾン水に比べて、より粒径が大きいから、必要な粒径に併せて循環の有無や循環時間を調整するとよい。また、これら以外にも、循環系の水圧やベンチュリ管に作用させる磁石の強弱、供給オゾンの濃度や供給量、その他、生成する際の雰囲気等により変動することが考えられる。これが、実験から明らかになった第2の点である。なお、本実験によれば、オゾン気泡の粒径Rの実測最低値は3.4nmであり、それ以下の値は計測されていない。計測されないのは測定装置の測定能力の限界に起因すると思われる。他方、オゾン気泡の粒径Rは、濃度達成直後に比べ濃度維持後の方が小さくなっていることから、粒径小型化の延長線上には限りなくゼロに近い粒径Rを持ったオゾン気泡が存在しうることが容易に想像できる。
【0072】
(pH測定実験)
なお、上記4種類のオゾン水、すなわち、「3ppm直後オゾン水」「3ppm維持オゾン水」「14ppm直後オゾン水」及び「14ppm維持オゾン水」についてpH測定実験を行った。その結果は、表5及び6に線グラフで示してある(右側縦軸参照)。いずれのオゾン水についても、オゾン溶解の前後においてpH7.3前後を示した。すなわち、オゾン溶解は原水のpHにほとんど変化を与えないことがわかった。井戸水や水道水は概ね中性(pH6.5〜7.5)を示すことから、気液混合方式によって生成した本件オゾン水は、pHを調整するための添加物を添加しなくても中性を示すことがわかった。もっとも、原水がアルカリ性である場合は、オゾン溶解がオゾン水のpHを変化させないことからアルカリ性のオゾン水が生成される場合もあり得よう。
【0073】
上記実験結果を総括する。上記実験対象となった本件オゾン水は、何ら添加物を加えることなく原水にオゾンを混合させるという気液混合によって生成されたものである。さらに、オゾン溶解度が高いため常圧下においても容易にオゾンが脱気しない。したがって、無添加とオゾン脱気がない点で、たとえば、家畜や人体に散布しても安全である。また、オゾン濃度を極めて高くすることができるので、本件オゾン水を使用すれば、効率のよい洗浄・殺菌効果等を得ることができる。
【0074】
図20に基づいて説明する。オゾン水生成装置305は、オゾン発生装置305a、磁石付きベンチュリ管305b、温度保持装置305c、貯留タンク305dを含めて構成してあり、貯留タンク305dから配管305eを介してオゾン水処理構造307へオゾン水を供給可能に構成してある。オゾン水処理構造307は、配管307aを介して供給される水をスタティックミキサー307b内でオゾン水と攪拌混入(オゾン水処理)するように構成してある。スタティックミキサー307bを通過した処理後水は、後段の水処理槽309に送られるようにしてある。スタティックミキサーの代わりにベンチュリ管(エジェクター)を用いることができるし、タンク内に貯留した水にオゾン水を混入するオゾン水処理もある。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】オゾン水処理装置を備える水浄化装置の概略構成図である。
【図2】オゾン水生成装置を備えるオゾン水処理装置の概略構成図である。
【図3】図2に示すオゾン水処理装置を構成する部材及び構造の相関図である。
【図4】図2に示す原水細分化構造の縦断面図である。
【図5】第1渦流ポンプの縦断面図である。
【図6】第2渦流ポンプの縦断面図である。
【図7】エジェクターの縦断面図である。
【図8】スタティックミキサーの縦断面図である。
【図9】サイクロンの縦断面図である。
【図10】オゾン水生成装置の第1変形例を示す概略構成図である。
【図11】渦流ポンプの変形例を示す縦断面図である。
【図12】エジェクターの変形例を示す縦断面図である。
【図13】オゾン水生成装置の第2変形例を示す概略構成図である。
【図14】気液混合構造の正面図である。
【図15】図14に示す気液混合構造の左側面図である。
【図16】図15に示す気液混合構造のX−X断面図である。
【図17】一部を省略した気液混合構造の平面図である。
【図18】溶解促進槽の縦断面図である。
【図19】比較実験を行うためのオゾン水生成装置の概略構成図である。
【図20】図1に示す水浄化装置に適用したオゾン水生成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0076】
1 オゾン水処理装置
1A オゾン水処理装置
3 取水バルブ
4 配管
5 オゾン水生成装置
7 加圧ポンプ
9 ノズル(ノズル群)
11 原水細分化構造
11a ケーシング
11b パッキン
11c 磁石(炭素チップ群、超音波発生装置)
13 オゾン溶解構造
15 貯留タンク
16 配管
17 配管
19 オゾン供給構造(オゾン供給装置)
20 配管
21 循環構造
22 逆止弁
23 バルブ
31 第1渦流ポンプ
31´ 第2渦流ポンプ
31´A 渦流ポンプ
32 ポンプ本体
32a 吸入部
32b 吐出部
32d 昇圧通路
32e 吸入路
32f 吐出路
32m 磁石
33 インペラ
33a インペラ本体
33b 羽根片
33c 羽根溝
33d 回転軸
34 オゾン帰還部
34a 帰還路
35 エジェクター
35A エジェクター
36 ベンチュリ管
36a 入路
36b 出路
36c 細径路
36m 磁石
37 オゾン供給パイプ
37a 供給路
38 小径路
41 スタティックミキサー
41a 流管
41b 邪魔板群
42 配管
46 配管
51 スタティックミキサー
52 配管
55 サイクロン
56 サイクロン本体
56a 上部空間
57 気液分離装置
61 オゾン水帰還管
63 温度保持装置
65 オゾン帰還管
70 配管
71 逆止弁
103 送水ライン
104 電磁弁
105 散布ライン
107 戻しライン
109 フィルター
201 オゾン水生成装置
202 貯留タンク
203 オゾン供給構造
204 循環構造
205 気液混合構造
206 溶解促進槽
207 温度保持構造
231 ベンチュリ管
232 上流側大径路
233 絞り傾斜路
234 小径路
235 開放傾斜路
236 下流側大径路
239 オゾン供給パイプ
243 磁気回路
245 一方の磁石片
246 他方の磁石片
265 気液分離装置
267 オゾン分解装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦1000nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、
当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて被処理物を処理するオゾン水処理工程と、を含めてなる
ことを特徴とするオゾン水処理方法。
【請求項2】
含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦500nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、
当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて被処理物を処理するオゾン水処理工程と、を含めてなる
ことを特徴とするオゾン水処理方法。
【請求項3】
含有オゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmであるオゾン水を、添加物を含めない気液混合方法によって生成するオゾン水生成工程と、
当該オゾン水生成工程において生成したオゾン水を用いて被処理物を処理するオゾン水処理工程と、を含めてなる
ことを特徴とするオゾン水処理方法。
【請求項4】
前記オゾン水生成工程では、小径路を有するベンチュリ管に原料水を通過させ、かつ、ベンチュリ管にオゾンを供給するとともに、当該ベンチュリ管の少なくとも小径路に磁力を作用させる
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のオゾン水処理方法。
【請求項5】
前記ベンチュリ管を通過した原料水を循環させ、オゾンを供給しながら前記ベンチュリ管を少なくとも1回再通過させる
ことを特徴とする請求項4記載のオゾン水処理方法。
【請求項6】
前記循環させた原料水を貯留タンクに一旦貯留する
ことを特徴とする請求項4記載のオゾン水処理方法。
【請求項7】
前記貯留タンクに貯留した原料水を、一旦取り出して5〜15℃の範囲に保持する
ことを特徴とする請求項6記載のオゾン水処理方法。
【請求項8】
オゾンを供給した後の原料水を溶解促進槽に一旦貯留してオゾン溶解を促進する
ことを特徴とする請求項4乃至7いずれか記載のオゾン水処理方法。
【請求項9】
前記溶解促進槽に貯留した原料水から脱気したオゾンを、当該溶解促進槽外部へ排出する
ことを特徴とする請求項8記載のオゾン水処理方法。
【請求項10】
前記オゾン水生成工程では、磁界中において、原料水の水圧を圧力頂点に至るまで増圧させ当該圧力頂点に至った直後に減圧させるとともに当該圧力頂点に至った原料水にオゾンを供給する工程を含めてなる
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のオゾン水処理方法。
【請求項11】
前記オゾン水処理工程では、被処理物である水又は温水に前記オゾン水を注入するオゾン水注入工程を含めてなる
ことを特徴とする請求項1乃至10いずれか記載のオゾン水処理方法。
【請求項12】
前記オゾン水注入工程では、オゾン水注入を水又は温水とともに攪拌しながら行う
ことを特徴とする請求項11記載のオゾン水処理方法。
【請求項13】
前記オゾン水注入工程を、エジェクター又はスタティックミキサーを通過させた水に前記オゾン水を注入させることによって行う
ことを特徴とする請求項12記載のオゾン水処理方法。

【公開番号】特開2007−326101(P2007−326101A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163028(P2007−163028)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【分割の表示】特願2006−316253(P2006−316253)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(503428747)
【出願人】(503428471)
【Fターム(参考)】