説明

オピオイド組み合わせウェーハ

疾患または外傷は通常疼痛を伴い、疼痛自体が現在疾患と見なされており、独立した症状として発生することが多くなってきている。本発明は、親水性ポリマーをベースとし、水性環境において迅速に溶解または崩壊し、身体開口部または体腔中に配置した際に活性剤の組み合わせを放出し、好ましくは経口投与される、疼痛治療のためのウェーハ状の製剤に関し、該製剤は、オピオイドおよび第2の物質からなる活性剤の組み合わせを含み、ここで第2の活性剤は、非ステロイド系抗リウマチ薬(NSAR)および抗うつ薬である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性環境中で迅速に溶解または崩壊し、活性剤の組み合わせを身体開口部または体腔中に放出し、好ましくは経口的に投与可能であり、少なくとも1種の活性剤がオピオイド誘導体である、疼痛治療のためのシート状投与形態に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患または外傷は、通常疼痛を伴い、疼痛自体は現在、疾患と見なされており、独立した症状として発生することが多くなっている。医学的文献において、疼痛は、すでに発生しているかもしくは切迫した外傷と関連するか、またはそのように知覚される、不快な感覚的または感情的な経験として定義される。
【0003】
したがって、疼痛はまた、独立した症状として、明確な原因を伴わずに発生し得る(特発性疼痛)。特発性疼痛のこの形態は、例外ではなく、むしろ通例である。したがって、例えば、背部痛の全症例の80%においては病理学的な原因を見出すことができず、例えば「椎間板」は、全症例の10%において背部痛に関与するに過ぎない。
【0004】
「頭痛」に関しても、いわゆる「一次性頭痛」が最も頻繁な形態であり、これは、その症状として疾患に起因し得ず、立証可能な病理学的変化を伴わずに発生する頭痛を意味する。
【0005】
さらに、慢性の疼痛障害があり、6ヶ月より長期にわたり継続し、原因となる苦痛を処置することが困難であるかもしくは処置不能である場合、または疼痛の原因を見出すことができない場合には、疼痛は「慢性」であると定義される。
慢性疼痛は、原則として、疼痛患者の心理に対して強い影響を有し、これによりしばしば抑うつがもたらされ、患者の生活の質が著しく低下する。
【0006】
さらに、研究結果により、疼痛状態は身体により学習され得ることが示されている。繰り返して発生する疼痛により、より強度な、かつより長期の疼痛の感覚がもたらされる。なぜならば、頻繁な疼痛により疼痛閾値が低下するからである。他方、鎮痛剤の長期投与は、しばしば期待される永久的な効果を示さず、疼痛状態の処置には、しばしば患者が最適に処置されることを確実にするために、より多くの投与量またはより強力な活性剤が必要である。
【0007】
ドイツでは、疼痛はしばしば不適切に処置されており、これは特に、癌に起因する疼痛で苦しんでいる患者に、または術後痛の場合において、該当する。上記の理由は、麻薬の法律により課される制限、および、当該法律が適用されるが極めて有効である鎮痛剤に対する医師の側の慎重さにあり得る。別の原因は、多くの患者が、複数の薬物、特定の群の活性剤、または高い投与量を服用することを拒絶することにあり得る。これは、特にオピオイド活性剤を投与する場合に、望まない薬物効果(UDE)またはこれに関連する依存症の恐れに関連する。
【0008】
これに関して、高い投与量を伴う長期治療においては、実際に病理学的損傷および依存症が生じ、薬物治療の中断または変更、および場合によっては中止が必要であることを考慮すべきである。
【0009】
慢性の疼痛に加えて、急性の疼痛もまた処置が必要である。ここで、焦点は疼痛からの長期間の解放ではなく、より重要なことは、作用の迅速な開始およびそれに関連する疼痛の軽減を達成することである。
【0010】
すでに説明したように、疼痛は、罹患する個人の生活の質の著しい低下の構成要素となる。
したがって、本発明の目的は、疼痛の治療において効果的に利用することができ、迅速に作用するが、同時に、低い投与量の活性剤しか必要としない投与形態を提供することにあった。さらに、投与形態は、良好なコンプライアンスを有するべきである。即ち、患者への投与は、可能な限り単純であるべきであり、患者に、例えば投与形態の大きさなどの理由により薬物治療を受けることをためらわせるべきではない。さらに、既知の投与形態、特に錠剤の欠点は、回避されるべきである。
【0011】
前述のように、急性の疼痛の状態には、迅速かつ効果的な治療が必要である。したがって、投与形態は、活性剤の迅速な放出、および作用の迅速な開始を確実にするのに適しているべきである。この理由により、投与形態の崩壊および活性剤の放出は、適用の部位において、例えば経口で投与可能な投与形態の場合においては口腔において、すでに起きているべきである。
【0012】
さらに、慢性の疼痛を有する患者についても摂取を容易にするために、投与形態を単純かつ直接的な方式で適用することが可能であるべきである。
疼痛治療において活性剤を投与するために用いられる一般的な投与形態は、錠剤、カプセル、坐剤または注射である。
注射は、迅速に効果を奏するが、適用するのが困難であり、実用的に人前で用いることができない。同一のことが、坐剤にも該当する。
【0013】
錠剤およびカプセルは、容易に服用することができるが、これらの作用の開始は原則として遅く、活性剤は胃腸管を介して吸収される際に「初回通過効果」の影響を受けるため、錠剤またはカプセル中において活性剤の初期濃度が高いことが必要である。
さらに、原則として、投与形態を飲み込むためにいくらかの液体が必要であり、これは常に直ちに得られるわけではない。さらに、疼痛により嚥下および咀嚼がより困難になり得、したがって発泡錠、サッキング錠(sucking tablet)またはチュアブル錠の適用さえもしばしば困難となる。
【0014】
さらに、活性剤を口腔中に放出するバッカル錠または舌下錠を用いることが知られており、したがって、活性剤を口腔粘膜を介して直接吸収することができる。
このような錠剤の欠点は、しばしば不快な口内の感触、および、圧縮された形態に起因して錠剤が低速でしか崩壊しないこと、およびこの結果として活性剤の放出が遅いことである。
【0015】
「ウェーハ」と呼ぶシート状のウェーハ状の投与形態は、既知のバッカル錠および舌下錠に対する代替であること、および活性剤の経粘膜的投与のための特に有利な投与形態であることが知られている。
【0016】
疼痛状態を処置するために、しばしば、患者が最適な疼痛治療を受けるのを確実にするために、種々の活性剤を用いることが必要である。所望の効果を達成するために摂取スケジュールに従った厳密な摂取を必要とするのはは、まさに、この活性剤の組み合わせである。この理由により、1つの医薬形態中に可能な活性剤を組み合わせることが望ましい。なぜならば、これにより、患者にとって摂取がより容易になり、誤った適用の危険性が最小限になるからである。
【発明の概要】
【0017】
この目的は、口腔において崩壊する親水性ポリマーフィルム製のシート状投与形態により達成され、これらのウェーハは、少なくとも2種の活性剤を含み、それらのうちの一方は、オピオイドの群から選択され、第2のものは、非ステロイド系抗リウマチ薬(NSAR)の群から、または抗うつ薬の群から選択されることが、見出された。
【0018】
本発明の投与形態における活性剤の組み合わせにより、患者にとって、両方の活性剤を服用することがより容易になる。口腔粘膜を介しての活性剤の吸収により、他の経口の投与形態と比較して、例えば嚥下において困難を有する患者または錠剤を服用するのを拒否する患者にも経口経路を介して薬物を投与することができる、という利点が付与される。さらに、患者は、両方の活性剤のために1種の薬物のみを服用すればよいため、投薬過誤の危険が低下する。これにより、コンプライアンスおよび治療成績が、改善される。
【0019】
さらに、粘膜を介しての活性剤の直接的な吸収の結果、作用の開始が起きるまでの時間が著しく短縮され、したがって、患者は極めて短い時間内に症状が緩和されたことを知覚する。
【0020】
特に、疼痛治療のための1つの鎮痛薬中に活性剤が組み合わせられ、1の活性剤がオピオイドであるという事実により、格別の利点を達成することが可能になる。したがって、例えば、迅速に作用し強力な短い半減期を有する鎮痛薬と、それより作用が遅く効力が低い長い半減期を有する鎮痛薬とを組み合わせて、患者に迅速に、かつ長期間にわたり救済をもたらすことができる。
【0021】
さらに、単一の活性剤の組み合わせは、作用機序が異なり相乗効果を有する活性剤を含んでいてもよく、したがって、疼痛を解消するにあたっての異なる生理学的活性の結果、単一成分の組成物を用いる場合よりも少量の活性剤を投与することができる。
【0022】
同様に、鎮痛薬(1種または2種以上)と、他の活性剤、例えば抗うつ薬とを投与することが可能である。この組み合わせは、しばしば慢性の疼痛で苦しんでいる患者にとって有利である。なぜならば、上記ですでに説明したように、精神状態および生活の喜びが、これらの患者においてはしばしば損なわれるからである。疼痛に対する感受性は、劣悪な感情的状態にある患者においては、良好な気分にある患者におけるよりも明確に高いことが見出された。このように、気分を明るくするための抗うつ薬と鎮痛薬との相互作用によって、同様に、より低い投与量の鎮痛薬を用いることが可能になり、これにより耐性の改善および低いUDEが可能になる。
【0023】
活性剤を組み合わせる場合においてさえも、医薬の一貫した摂取および良好なコンプライアンスは、最適な有効性を確実にするための必要条件である。
これらの活性剤の組み合わせをシート状投与形態(ウェーハ)において投与することにより、容易な摂取のみならず、活性剤成分の互いに対する正確な適合も可能になり、したがって摂取を忘れたり、または1種の活性剤のみを二重に摂取することによる誤った投薬、およびこれによる不適切な疼痛治療は生じない。
【0024】
活性剤の経粘膜的投与の他の利点は、胃腸経路の迂回、およびしたがって経口投与の後の「初回通過」効果の回避、即ち最初の肝臓通過の間の活性剤の顕著な部分の代謝の回避にあり、したがって活性剤は、高い程度で有効に利用される。
【0025】
さらに、口腔粘膜を介しての直接的な吸収により、長期間の使用において、または高い投与量において、胃粘膜を刺激する、および/または不耐性もしくはさらには重篤なUDEをもたらし得る活性剤さえも、これらの望ましくない効果を伴わずに適用することができるという利点が付与される。
【0026】
さらに、初回通過効果による活性剤の損失は発生せず、したがって対応して活性剤の投与量を減らすことができ、これにより同様に、患者の負担の解消および、比較的低いUDEの結果として福利の改善がもたらされる。
【0027】
さらに、互いに対する活性剤の比率を変化させることにより、それぞれの必要性に対する投与量を適合させることが可能である。したがって、例えば慢性炎症性疾患の場合において、NSARの活性剤含量を高くすることができ、他方疼痛の軽減のためのオピオイドの含量を可能な限り低く保持する。他方、急性の強度の疼痛を軽減するために、オピオイド含量を高くして、一方、NSAR含量をより低くしてもよい。同様に、オピオイド含量は抗うつ薬の含量と相関し得、したがって、焦点は、気分を明るくする効果にあっても、疼痛処置にあってもよい。患者の健康の状態が変化する場合には、当該患者を、異なる活性剤の組み合わせを有する投与形態により容易に安定化することができる。
【0028】
ウェーハの製造は単純で低コストであるので、異なる活性剤濃度を有する多種の医薬を提供することが可能である。
したがって、ウェーハを積層物で構成する場合には、例えば、活性剤含有層の厚さのみを変化させるか、または活性剤の濃度を変化させることが可能である。
他方、活性剤の含量は異なるが、同一の活性剤比率を有する医薬を、単に投与形態の表面を種々の大きさに切断することにより、製造することができる。
【0029】
さらに、これらの平坦な形状のために、活性剤の組み合わせを含むウェーハを、本発明において、例えば財布中に容易に携帯することができ、旅行時においても即座に利用可能である。これらは、服用するのが容易であり、慢性疼痛の治療および突然発生する疼痛の発作、例えば片頭痛発作の場合の両方において迅速に効果を奏する。
【0030】
親水性水溶性および/または膨潤性ポリマーフィルム用のベースポリマーとして適する水溶性または膨潤性ポリマーは、デキストラン、デンプンおよびデンプン誘導体、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースまたはプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えばWalocel)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロースを含む多糖類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレングリコール類、ポリアクリル酸類、ポリアクリレート類、ポリビニルピロリドン、アルギネート類、ペクチン類、ゼラチン、アルギン酸、コラーゲン、キトサン、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン天然ガム、トラガカント、高分散二酸化ケイ素、ベントナイト、並びに前述の親水性ポリマーの誘導体、またはこれらのポリマーの2種もしくは3種以上の組み合わせを含む群のポリマーである。代替として、ポリマーフィルムは、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー製であってもよい。
【0031】
本発明の投与形態中のポリマーの比率は、当該投与形態の乾燥質量に対して、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは15〜75重量%である。
本発明の活性剤の組み合わせは、オピオイドの群からの少なくとも1種の活性剤およびNSARまたは抗うつ薬の群からの1種の活性剤を含み、これにより、これらの3種の活性剤群の各々からの少なくとも1種の活性剤が、活性剤の組み合わせ中に含まれることもまた、可能である。
【0032】
オピオイドの群からの活性剤は、モルヒネ、ブプレノルフィン、ヒドロモルホン、ナルブフィン、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、チリジン、オキシコドン、ペチジン、レボメタドン(levomethadone)、ピリトラミド、ナルブフィンおよびペンタゾシンおよびこれらの化合物の薬理学的に許容し得る塩、および前述の化合物の2種または3種以上の組み合わせを含む群から選択される。
好ましくは、モルヒネ、ヒドロモルホン、ブプレノルフィン、オキシコドン、ナルブフィンおよびスフェンタニルを、鎮痛活性剤として用いる。
【0033】
NSARは、アセチルサリチル酸、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アセメタシン、ジクロフェナク、インドメタシン、ロナゾラク、メフェナム酸、ニフルミン酸、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸、ピロキシカム、テノキシカムおよびメロキシカムおよび薬理学的に許容し得る塩およびこれらの活性剤の組み合わせを含む群から選択され得る。
好ましくは、ジクロフェナク、ピロキシカム、テノキシカムおよびメロキシカムを、鎮痛および抗炎症活性剤として用いる。
【0034】
抗うつ薬は、フェノチアジン系化合物、アザフェノチアジン系化合物、チオキサンテン、ブチロフェノン系化合物、ジフェニルブチルピペリジン類、イミノジベンジル誘導体、イミノスチルベン誘導体、ジベンゾシクロヘプタジエン誘導体、ジベンゾジアゼピン誘導体、ジベンゾキセピン誘導体、ベンゾジアゼピン類、インドール誘導体、フェニルエチルアミン誘導体およびヒペリシン誘導体を含む群から選択され得、活性剤は、クロルプロマジン、ペルフェナジン、スルピリド、クロザピン、リスペリドン、レセルピン、ロラゼパム、ミルタザピン、マプロチリン、ミアンセリン、トラニルシプロミン、モクロベミド、オキシトリプタン、ビロキサジン、レボキセチン、メプロバメート、ヒドロキシジン、ブスピロン、カフェイン、フェネチリン、メチルフェニデート、プロリンタン、フェンフルラミン、メクロフェノキサート、ニセルゴリン、ピラセタム、ピリチノール、並びにこれらの活性剤の薬学的に許容し得る塩を含む群から選択される。
【0035】
1つの特定の態様において、抗うつ薬は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、例えばフルオキセチンまたはパロキセチンである。
好ましくは、トラニルシプロミン、レボキセチン、ロラゼパム、ミルタザピン、フルオキセチンおよびパロキセチンを、抗うつ薬として用いる。
【0036】
物理化学的特性を改善する、例えば脆性または脆化を低減するために、保湿剤、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールエステルなどを、フィルムに加えてもよい。
【0037】
他の態様において、フィルムおよび活性剤を安定化させるために、酸化防止剤、例えばビタミンC(アスコルビン酸)、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE(酢酸トコフェロール)、ヒドロキシ安息香酸誘導体を、ウェーハに加えてもよい。さらに、酸性および塩基性イオン交換体を、安定剤として用いてもよい。
【0038】
他の態様において、他の成分、例えば染料、顔料、香味剤、天然および/または合成の香味物質、甘味料、緩衝系を、フィルムに加えてもよい。特に、香味剤および香味物質は、活性剤のしばしば劣悪な特有の味覚または臭気を遮蔽し、かつ/または投与形態に良好な風味を付与することができ、したがって、患者の薬剤を服用することに対する受け入れ易さが顕著に改善される。
【0039】
緩衝系を加えることは、一方でフィルムおよび活性剤を外側の影響に対して貯蔵の間安定化する役割を果たし;他方で、投与形態のpHを、これにより生理学的に許容し得るpH値に調整することができ、したがって粘膜の刺激が回避される。緩衝系を用いることにより、酸性または塩基性の活性剤のマトリックス中での溶解性を改善することも可能である。
【0040】
本発明の投与形態は、薄くなるように、例えばウェーハの形態に構成される。投与形態の厚さは、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.5〜1mmである。投与形態の厚さについての下限は、約50μmである。投与形態の表面積は、0.09cm〜12cm、好ましくは1cm〜8cm、より好ましくは3cm〜6cmである。
【0041】
他の態様において、本発明のウェーハは、崩壊剤またはウィッキング剤(wicking agent)、例えば重炭酸塩−酸混合物またはアエロジル(aerosil)を含み、これは、液体との接触により活性化され、適用後のウェーハの崩壊を促進し、これによりまた活性剤の放出を促進する。
【0042】
1つの好ましい態様において、ウェーハは、発泡体として存在し、したがって活性剤の放出は、拡大された表面のために尚一層迅速に行われる。この態様において、発泡体の空洞は、液体形態での活性剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0043】
粘膜を介しての活性剤の吸収を改善するために、透過促進剤、例えば脂肪族アルコール類、脂肪酸類、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、脂肪族アルコールエステル類および脂肪酸エステル類の群からの物質、特にモノラウリル酸ソルビタンまたは長鎖脂肪酸のメチル、エチルもしくはイソプロピルアルコールとのエステル、または脂肪族アルコールの酢酸もしくは乳酸とのエステル、またはDMSO(ジメチルスルホキシド)およびオレイン酸ジエタノールアミンなどの物質を、同様にフィルム中に包含させてもよい。これらの物質の構成成分の量は、各々の場合において活性剤マトリックスの合計重量に対して0.1〜25重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0044】
さらに、ウェーハの組成物は、活性剤の放出を遅延させる化合物を含んでいてもよい(例えばマイクロカプセル封入)。
他の態様において、ウェーハは、粘膜付着特性を有し、したがって完全に溶解するまで粘膜に付着する。
【0045】
好ましい態様において、活性剤の少なくとも1種は、イオン交換体に結合し、したがって親水性ポリマーは、口腔において迅速に崩壊し、他方、活性剤の放出は、遅延されるか、または例えば胃腸管中でpHが変化した際に生じる。このようにして、作用および吸収の機序が異なる活性剤を、1つの投与形態において投与することができる。即ち、放出された活性剤の少なくとも1種は、例えば粘膜を介して適用の部位において吸収されるか、またはこれはより遠方に輸送され、別の位置において吸収される。
【0046】
ウェーハはまた、異なる層を有する積層物として構成されてもよく、活性剤は、空間的に分離しており、これらの組成の点で互いに異なっている別個の層中に包含される。このようにして、ウェーハの種々の層の崩壊時間が互いに異なる場合には、活性剤を、異なる作用の部位において、しかしまた遅延を伴って放出させることができる。
【0047】
同様に、活性剤を、異なる速度で崩壊する層内に配置し、したがって製剤が全体的に遅延効果を示すようにしてもよい。
さらなる態様において、粘膜に対する投与形態の付着を促進し、直接的な接触を確立することにより粘膜を介する活性剤吸収を容易にするために、外層の1つは、粘膜付着性であって投与形態もよい。
【0048】
本発明の投与形態の水性媒体中での崩壊は、好ましくは、1秒〜5分の範囲内で、より好ましくは5秒〜1分の範囲内で、最も好ましくは10秒〜30秒の範囲内で起こる。
本発明の投与形態は、有利なことに、口腔中に薬物を投与するのに、または直腸内、膣内もしくは鼻腔内投与に適する。これらを、ヒト医学および獣医学の両方において用いることができる。
【0049】
本発明はさらに、疼痛処置のための経口の投与形態を製造するための、本発明の活性剤の組み合わせの1種の投与形態使用に関し、前記投与形態は、好ましくはウェーハとして処方される。
さらに、本発明は、疼痛を罹患しているヒトの治療的処置のための方法であって、上記の活性剤の組み合わせの投与を、活性剤の少なくとも部分的な経粘膜吸収を伴う経口適用可能な投与形態により行う、前記方法に関する。
【0050】
最後に、本発明はまた、シート状投与形態の製造方法であって、以下の段階:
−少なくとも1種のポリマーおよび上記の活性剤のうち少なくとも2種を含む溶液を調製する段階;
−当該溶液を、被覆基材上に塗布(spread-coating)する段階、ならびに
−乾燥して溶媒を除去することにより、塗布した溶液を固化させる段階
を含む、前記方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマーをベースとし、水分との接触により迅速に崩壊し、身体開口部または体腔において少なくとも1種の活性剤を放出する、疼痛治療のためのシート状医薬製剤であって、投与形態が、オピオイドと非ステロイド系抗リウマチ薬(NSAR)および抗うつ薬を含む群からの第2の物質との活性剤の組み合わせを含むことを特徴とする、前記医薬製剤。
【請求項2】
オピオイドが、モルヒネ、ブプレノルフィン、ヒドロモルホン、ナルブフィン、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、チリジン、オキシコドン、ペチジン、レボメタドン、ピリトラミドおよびペンタゾシン、ならびにこれらの化合物の薬理学的に許容し得る塩および前述の化合物の2種または3種以上の組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
NSARが、アセチルサリチル酸、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アセメタシン、ジクロフェナク、インドメタシン、ロナゾラク、メフェナム酸、ニフルミン酸、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸、ピロキシカム、テノキシカムおよびメロキシカム、ならびにこれらの活性剤の薬理学的に許容し得る塩および組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
抗うつ薬が、フェノチアジン系化合物、アザフェノチアジン系化合物、チオキサンテン系化合物、ブチロフェノン系化合物、ジフェニルブチルピペリジン類、イミノジベンジル誘導体、イミノスチルベン誘導体、ジベンゾシクロヘプタジエン誘導体、ジベンゾジアゼピン誘導体、ジベンゾキセピン誘導体、ベンゾジアゼピン類、インドール誘導体、フェニルエチルアミン誘導体およびヒペリシン誘導体、ならびにこれらの化合物の薬学的に許容し得る塩または誘導体を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項5】
抗うつ薬の活性剤が、クロルプロマジン、ペルフェナジン、スルピリド、クロザピン、リスペリドン、レセルピン、ロラゼパム、ミルタザピン、マプロチリン、ミアンセリン、トラニルシプロミン、モクロベミド、オキシトリプタン、ビロキサジン、レボキセチン、メプロバメート、ヒドロキシジン、ブスピロン、カフェイン、フェネチリン、メチルフェニデート、プロリンタン、フェンフルラミン、メクロフェノキサート、ニセルゴリン、ピラセタム、ピリチノール、ならびにこれらの活性剤の薬理学的に許容し得る塩を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項6】
抗うつ薬が、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、例えばフルオキセチンおよびパロキセチンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項7】
親水性ポリマーが、デキストラン、デンプンおよびデンプン誘導体、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースまたはプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えばWalocel)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロースを含む多糖類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレングリコール類、ポリアクリル酸類、ポリアクリレート類、ポリビニルピロリドン、アルギネート類、ペクチン類、ゼラチン、アルギン酸、コラーゲン、キトサン、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン天然ガム、トラガカント、高分散二酸化ケイ素、ベントナイト、ならびに前述の親水性ポリマーの誘導体またはこれらのポリマーの2種もしくは3種以上の組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項8】
ポリマーフィルムが、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー製であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項9】
グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールおよびポリグリセロールエステルを含む群から選択された保湿剤を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項10】
ビタミンC(アスコルビン酸)、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE(酢酸トコフェロール)、ヒドロキシ安息香酸誘導体を含む群から選択された酸化防止剤を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項11】
製剤の活性剤が、味覚遮蔽のための酸性または塩基性イオン交換体に結合していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項12】
染料および/または顔料を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項13】
天然および/または合成香味物質を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項14】
崩壊剤またはウィッキング剤を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項15】
製剤のpH値が、緩衝系により調整されていることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項16】
親水性ポリマーが、口腔中に適用された後に5分未満で、好ましくは3分未満で、より好ましくは1分未満で、最も好ましくは30秒未満で崩壊することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項17】
親水性ポリマーは口腔中で迅速に崩壊するが、活性剤は、イオン交換体に結合し続け、該イオン交換体は、前記活性剤を胃腸管においてのみ放出することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項18】
活性剤が、互いに空間的に分離され組成に関して互いに異なる別個の層中に含まれていることを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項19】
製剤が発泡体として存在し、活性剤の少なくとも1種が前記発泡体の空洞内で液体形態で存在することを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項20】
2種の活性剤の組み合わせ、好ましくは
a)オピオイドとNSARとの組み合わせ、
b)オピオイドと抗うつ薬との組み合わせ
を含むことを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の投与形態の、薬学的活性剤のヒトまたは動物への直腸内、膣内または鼻腔内投与のための使用。
【請求項22】
オピオイドとNSARとの活性剤の組み合わせの、疼痛障害を処置するための請求項1〜20のいずれかに記載の経口投与形態を製造するための使用。
【請求項23】
オピオイドと抗うつ薬との活性剤の組み合わせの、疼痛障害を処置するための請求項1〜20のいずれかに記載の経口投与形態を製造するための使用。
【請求項24】
医薬製品がウェーハとして処方されていることを特徴とする、請求項21に記載の使用。
【請求項25】
慢性疼痛を罹患しているヒトの治療的疼痛処置のための方法であって、オピオイドとNSARとの活性剤の組み合わせの投与を、経粘膜吸収を伴う経口で適用可能な投与形態により行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項26】
慢性疼痛を罹患しているヒトの治療的疼痛処置のための方法であって、オピオイドと抗うつ薬との活性剤の組み合わせの投与を、経粘膜吸収を伴う経口で適用可能な投与形態により行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項27】
請求項1〜20のいずれかに記載のシート状投与形態の製造方法であって、
−少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも2種の活性剤を含む溶液を調製すること、−該溶液を被覆基材上に塗布すること、ならびに、
−乾燥して溶媒を除去することにより、塗布した溶液を固化させること
を特徴とする、前記方法。

【公表番号】特表2009−539897(P2009−539897A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514666(P2009−514666)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004954
【国際公開番号】WO2007/144085
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】