説明

カード用コネクタ

【課題】ハウジングの強度を確保しながら、コネクタ自体の薄型化に対応すること。
【解決手段】スライダ6には、係合ピン9と係合してスライダ6を所定位置にロックするカム溝8が形成されている。カム溝8は、係合ピン9が初期に位置する初期位置と、スライダ6を所定位置にロックするロック位置とを有する。初期位置は、ロック位置よりもカード挿入方向側に配置されると共に、カム溝8の内底面における高さがロック位置よりも高い位置に形成されている。ハウジング2の底面におけるスライダ6と対向する位置の一部には開口部205が形成されている。カードの装着開始時には、スライダ6における係合ピン9の初期位置に対応するハウジング2との対向面が開口部205に対向配置される一方、装着完了時には、スライダ6における係合ピン9の初期位置に対応するハウジング2との対向面がハウジング2の底面に対向配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関し、特に、携帯電話機等の電子機器においてチップカードやICメモリカード等のカードを基板に電気的に接続するためのカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、チップカードやICメモリカード等のカードを基板に電気的に接続するためのカード用コネクタが組み込まれる携帯電話機等の電子機器は、小型化される傾向にあり、これに伴って小型で薄型のカード用コネクタが要望されている。このような要望に対応するため、プッシュイン・プッシュアウト機構を構成するカム要素のカム溝底面における位置高低差をステップ状の一段にしたもの(例えば、特許文献1参照)や、ハウジングの底面に開口部を形成し、スライダに設けられたカム溝の最深部を含む領域に対応する下方突出部を収容するもの(例えば、特許文献2参照)が提案されている。このように改良された形状を有するカム溝と、底面に開口部を形成したハウジングとを組み合わせることにより、より薄型化されたカード用コネクタを実現することが期待できる。
【特許文献1】特開2008−91298号公報
【特許文献2】特開2006−179462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したように組み合わせたカード用コネクタにおいては、ハウジングの底面に、スライダに設けられた下方突出部の移動領域の全体に開口部を形成する必要があることから、ハウジング自体の強度が不足するという問題がある。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みて為されたものであり、ハウジングの強度を確保しながら、コネクタ自体の薄型化に対応することができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカード用コネクタは、カードを装着可能なハウジングと、前記カードと共に移動するスライダ及び当該スライダを所定の位置にロックするロック機構を有し、前記ハウジングに装着された前記カードを排出可能な排出機構と、前記カードの接触部と接触可能なコンタクト端子とを備えたカード用コネクタであって、前記ロック機構は、前記スライダに設けられたカム溝と、当該カム溝と係合する係合部材とからなり、前記カム溝は、前記係合部材が初期に位置する初期位置と、前記スライダを所定の位置にロックするロック位置とを有し、前記初期位置は、前記ロック位置よりもカード挿入方向側に配置されると共に、前記カム溝の内底面における高さが前記ロック位置よりも高い位置に形成され、前記ハウジングの底面における前記スライダと対向する位置の一部には開口部が形成され、前記カードの装着開始時には、前記係合部材は前記初期位置に配置されると共に、前記スライダにおける前記初期位置に対応する前記ハウジングとの対向面が前記開口部に対向配置され、前記カードの挿入に伴う前記スライダのカード挿入方向への移動に応じて、前記係合部材は前記初期位置から前記ロック位置に案内され、前記カードの装着完了時には、前記係合部材は前記ロック位置に配置されると共に、前記スライダにおける前記初期位置に対応する前記ハウジングとの対向面が前記ハウジングの底面に対向配置されることを特徴とする。
【0006】
上記カード用コネクタによれば、スライダに設けられたカム溝の内底面における初期位置の高さをロック位置よりも高い位置に形成したことから、例えば、カム溝の初期位置とロック位置とを同一の高さに形成する場合に比べて、スライダにおける厚さ方向の寸法が大きくなる部分を減少させることができる。一方、スライダにおけるカム溝の初期位置に対応するハウジングとの対向面を、カードの装着開始時にはハウジングの開口部に対向配置させると共に、カードの装着完了時にはハウジングの底面と対向配置させたことから、ハウジングに開口部を形成してスライダの一部を収容する場合においても、ハウジングに形成される開口部の面積を小さくすることができるので、ハウジングの強度を確保しながら、コネクタ自体の薄型化に対応することが可能となる。
【0007】
上記カード用コネクタにおいては、前記初期位置の高さを有する前記カム溝の内底面が当該カム溝の往路と復路に跨って連続して形成されていることが好ましい。この場合には、カム溝の内底面において高さの高い部分を増加させることができるので、スライダにおける厚さ方向の寸法が大きくなる部分を更に減少させることが可能となる。
【0008】
また、上記カード用コネクタにおいては、前記初期位置から前記ロック位置までの経路において、前記カム溝の復路との連結点が形成されると共に、前記連結点よりも前記ロック位置近傍の位置まで前記カード挿入方向に沿って直線状に前記カム溝の往路が形成されていることが好ましい。この場合には、連結点からロック位置近傍の位置までカード挿入方向に沿って直線状にカム溝の往路が形成されていることから、係合部材が連結点から誤ってカム溝の復路に入り込むことを簡単な構成で効果的に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スライダに設けられたカム溝の内底面における初期位置の高さをロック位置よりも高い位置に形成したことから、例えば、カム溝の初期位置とロック位置とを同一の高さに形成する場合に比べて、スライダにおける厚さ方向の寸法が大きくなる部分を減少させることができる。一方、スライダにおけるカム溝の初期位置に対応するハウジングとの対向面を、カードの装着開始時にはハウジングの開口部に対向配置させると共に、カードの装着完了時にはハウジングの底面と対向配置させたことから、ハウジングに開口部を形成してスライダの一部を収容する場合においても、ハウジングに形成される開口部の面積を小さくすることができるので、ハウジングの強度を確保しながら、コネクタ自体の薄型化に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るカード用コネクタ(以下、単に「コネクタ」という)1の外観を示す斜視図である。図2及び図3は、本実施の形態に係るコネクタ1の分解斜視図及び上面図である。なお、図3においては、説明の便宜上、コネクタ1が有するカバー部材3を省略している。以下においては、適宜、コネクタ1における図1〜図3に示す紙面上方側を「コネクタ1の後方側」又は単に「後方側」と呼び、同図に示す紙面下方側を「コネクタ1の前方側」又は単に「前方側」と呼ぶものとする。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係るコネクタ1は、合成樹脂材料などの絶縁材料を成形して形成されるハウジング2と、金属薄板材料に打ち抜き加工及び折り曲げ加工などを施して形成されるカバー部材3とを備えている。ハウジング2は、概して平板形状を有しており、カバー部材3は、ハウジング2の上方側に取り付けられた状態でハウジング2との間に一定の空間を形成する形状を有している。このカバー部材3がハウジング2に取り付けられることで、コネクタ1の前方側にカード挿入口が形成されると共に、ハウジング2内にカード4が装着可能な空間(カード装着空間)が形成される。
【0012】
ハウジング2は、図2及び図3に示すように、コネクタ1の底面部を構成するベース部201と、コネクタ1の右方側の側端部において、このベース部201から上方側に垂直に立設された側壁部202とを有している。ベース部201には、コネクタ1の前後に2つの開口部203a、bが形成されている。これらの開口部203a、bに対応する位置に、コネクタ1に装着されたカード4の接触部に接触する複数のコンタクト端子204がコネクタ1の左右方向に並設されている。コンタクト端子204は、その両端部を除く所定部位をベース部201にインサート成形等により埋設されている。コンタクト端子204の前方側端部204aは、開口部203aから露出すると共に、僅かに下方側に折り曲げられ、不図示の基板の導体に半田接続可能に構成されている。一方、コンタクト端子204の後方側端部204bは、開口部203bから露出すると共に上方側に持ち上げられ、その端部近傍がカード4の接触部に弾性的に接触するように構成されている。
【0013】
また、ベース部201における右方側の位置であって、後述するカード排出機構5が配置される部分は、板厚が薄くされた薄厚部分201aが形成されている。この薄厚部分201aの所定位置には、後述するスライド部材6の下方突出部63が配置される矩形状の開口部205が穿設されている。また、ベース部201には、側壁部202の後端部に連続する後壁部206が設けられている。後壁部206の内壁には、後述する付勢ばね7の一端を係止する係止片207がコネクタ1の前方側に延出するように形成されている。また、後壁部206の上面には、後述する係合ピン9の後端部を回動可能に保持する保持孔208が形成されている。
【0014】
ベース部201に形成された薄厚部分201aの上方には、カード装着空間の所定位置に装着されたカード4を排出する排出機構5が配設されている。排出機構5は、カード4の挿入及び排出動作に伴ってスライド移動するスライダ6と、このスライダ6をカード4の排出方向(コネクタ1の前方側)に付勢する付勢ばね7と、付勢ばね7の付勢力に抗してスライダ6を所定のロック位置にロックするロック機構とから構成される。そして、このロック機構は、スライダ6の上面に形成されたカム溝8と、このカム溝8と係合する係合部材としての係合ピン9とから構成される。
【0015】
スライダ6は、一端が係止片207に係止された付勢ばね7の他端を係止した状態でベース部201の薄厚部分201aに配設される。このスライダ6の上面に形成されたカム溝8には、一端が保持孔208に保持された係合ピン9の他端が係合する。排出機構5においては、付勢ばね7の付勢力によりカード4の排出方向に付勢されるスライダ6の移動を係合ピン9で規制するものとなっている。なお、カバー部材3における係合ピン9に対応する位置には、図1及び図2に示すように、押圧片31が形成されている。この押圧片31は、カバー部材3がハウジング2に取り付けられた状態において係合ピン9をスライダ6側に押圧し、係合ピン9が適切にカム溝8に係合するように構成されている。
【0016】
本実施の形態に係るコネクタ1においては、ハウジング2のベース部201の上方に配設配置されるスライダ6の一部を、ベース部201に形成した開口部205に収容することでコネクタ1の薄型化に寄与している。ここで、本実施の形態に係るコネクタ1が有するハウジング2のベース部201に形成される開口部205、並びに、この開口部205に一部が収容されるスライダ6の構成について説明する。図4は、本実施の形態に係るコネクタ1が有するハウジング2の上面図である。図5(a)〜(c)は、本実施の形態に係るコネクタ1が有するスライダ6の上面図、側面図及び下面図である。図6は、本実施の形態に係るコネクタ1が有するスライダ6に形成されるカム溝8の展開図である。
【0017】
図4に示すように、開口部205は、開口部203a、bの右方側であって、開口部203aの後方側端部近傍から、開口部203bの後方側端部よりも僅かに前方側の位置まで形成されている。この開口部205の前方側部分及び後方側部分には、ベース部201の薄厚部分201aが配置されている。この場合において、開口部205の前方側部分及び後方側部分に配置されるベース部201の薄厚部分201aは、略同一の長さを有している。すなわち、開口部205は、ベース部201の前後方向における略中央位置に形成されている。このようにベース部201における略中央位置に開口部205を形成し、その前方側及び後方側部分に一定以上の長さのベース部201の薄厚部分201aを残存させることにより、ハウジング2の強度を確保している。
【0018】
スライダ6は、合成樹脂材料などの絶縁材料を成形して形成されるものであり、図5(a)に示す左方側側面にハウジング2のカード装着空間に挿入されたカード4を受ける受け部61が設けられると共に、同図に示す右方側の側面に付勢ばね7の前方側端部を係止する係止片62が設けられている。上述したカム溝8は、スライダ6における後方側部分の上面に形成されている。スライダ6の下面には、カム溝8における前方側部分に対応する位置に下方突出部63が設けられている。この下方突出部63は、カム溝8の形成に伴って薄厚化するスライダ6を補強するための部分である。
【0019】
ここで、カム溝8の構成について説明する。図5(a)に示すように、カム溝8の中央領域には、概してハート形状を有するハート型カム81が設けられている。カム溝8は、ハート型カム81の周囲でループ状に形成されるものであり、ハート型カム81の左方側に配置される第1ガイド溝82、右方側に配置される第2ガイド溝83、並びに、第1及び第2ガイド溝82、83の前方側端部に連結され、前記カードがロックされる時に係合ピン9の前端部が位置する停止部を有する凹み溝84で構成されている。この場合において、第1ガイド溝82は、カム溝8の往路の一部を構成する一方、第2ガイド溝83は、カム溝8の復路の一部を構成する。また、カム溝8においては、後述する係合ピン9の初期位置からロック位置までの経路においてカム溝8の復路との連結点が形成され、第2ガイド溝83の後方側端部が第1ガイド溝82に連結されている。また、カム溝8の往路は、上記連結点よりもロック位置近傍の位置までカード4の挿入方向に沿って直線状に形成されている。
【0020】
これらの第1ガイド溝82、第2ガイド溝83及び凹み溝84の内底面は、平面部と斜面部とで構成されている。図6に示すように、第1ガイド溝82におけるA、凹み溝84におけるB、D、E及びG、第2ガイド溝83におけるHは平面部を構成する。一方、凹み溝84におけるC及びF、第2ガイド溝83におけるIは斜面部を構成する。特に、カム溝8の内底面を構成する平面部は、高い部分(A、D及びG)と低い部分(B、E及びH)とで構成され、斜面部(C、F及びI)は、全て低い部分から高い部分へ案内するための傾斜面で構成されている。なお、平面部間における高い部分から低い部分に連結される位置(例えば、AとBとの位置)には段差が設けられている。
【0021】
このようなカム溝8に係合する係合ピン9の前端部は、カード4の挿入動作に伴って初期位置(図5(a)に示す網掛け部分)から第1ガイド溝82に沿って案内され、凹み溝84の停止部(Eの位置)に配置された状態でロック状態とされる(すなわち、凹み溝84の停止部における停止位置がロック位置とされる)。また、ロック状態からのカード4の排出動作に伴って凹み溝84の停止部から出て、第2ガイド溝83に沿って案内される。すなわち、係合ピン9の一端は、図5(a)及び図6に示すA〜Iの順にカム溝8上を案内され、再びAに復帰することとなる。なお、カム溝8内における係合ピン9の逆方向への移動は、上述した平面部間に設けられた段差により規制されている。
【0022】
特に、カム溝8においては、係合ピン9の初期位置を含む第1ガイド溝82の部分(すなわち、Aの部分)が、カム溝8の内底面における高い部分に設けられている。また、この第1ガイド溝82に連結される第2ガイド溝83の部分は、係合ピン9の初期位置と同様に、カム溝8における高い部分に設けられている。一方、カム溝8の内底面における低い部分は、凹み溝84の近傍、すなわち、カム溝8の前方側部分に集中して設けられている。
【0023】
スライダ6においては、このようなカム溝8の内底面における低い部分(すなわち、B、E及びH)に対応する位置に限定して下方突出部63を設け、当該部分の補強を図っている。この場合、下方突出部63は、図5(b)、(c)に示すように、スライダ6の中央部近傍のみに設けられている。すなわち、カム溝8における係合ピン9の初期位置に対応する下面には、下方突出部63は設けられておらず、平面形状部分とされている。なお、下方突出部63における前方側の中央部分には、凹部63aが形成されている。
【0024】
ここで、本実施の形態に係るコネクタ1が有するハウジング2のベース部201に形成される開口部205の形状、並びに、スライダ6の形状と比較するために従来のコネクタが有するハウジング2のベース部201に形成される開口部205、並びに、この開口部205に一部が収容されるスライダ6の構成について説明する。図7は、従来のコネクタが有するハウジング2の上面図である。図8(a)〜(c)は、従来のコネクタが有するスライダ6の上面図、側面図及び下面図である。図9は、従来のコネクタが有するスライダ6に形成されるカム溝8の展開図である。なお、図7〜図9においては、説明の便宜上、本実施の形態に係るコネクタ1(図4〜図6)と同一の符号を用いるものとする。
【0025】
図7に示すように、従来のハウジング2のベース部201における開口部205は、開口部203a、bの右方側であって、開口部203aの後方側端部近傍から、後壁部206の近傍の位置まで形成されている。なお、この開口部205においては、図7に示す左方側部分が右方側部分よりも後方側に延出した延出部205aを有している。延出部205aは、後述する従来のスライダ6の下方突出部63の形状に対応するために設けられている。このように、従来のハウジング2においては、ベース部201の右方側部分において、中央部分よりも前方側の位置から後方側の略全面に開口部205が形成されている。図4に示す本実施の形態に係るハウジング2と比較すると、ベース部201が残存する領域が狭くその強度が不足することとなる。
【0026】
また、従来のスライダ6においても、図8(a)に示すように、カム溝8の中央領域にはハート型カム81が設けられると共に、その周囲にループ状に第1ガイド溝82、第2ガイド溝83及び凹み溝84が配置されている。これらの第1ガイド溝82、第2ガイド溝83及び凹み溝84の内底面は、本実施の形態におけるカム溝8と同様に、平面部(高い部分及び低い部分)と、斜面部(低い部分から高い部分へ案内する傾斜面)とで構成されるものの、その平面部及び斜面部の配置において相違する。
【0027】
すなわち、従来のカム溝8においては、図9に示すように、第1ガイド溝82におけるA及びA´´、凹み溝84におけるB、D、E及びG、第2ガイド溝83におけるH及びI´は平面部を構成する。一方、第1ガイド溝82におけるA´、凹み溝84におけるC及びF、第2ガイド溝83におけるIは斜面部を構成する。なお、第1ガイド溝82におけるA´´と凹み溝84におけるBとの間、凹み溝84におけるDとEとの間、凹み溝84におけるGと第2ガイド溝83におけるHとの間、並びに、第2ガイド溝83におけるI´と第1ガイド溝82におけるAとの間には段差が設けられている。
【0028】
そして、従来のスライダ6においても、カム溝8の内底面における低い部分(すなわち、A、B、E及びH)に対応する位置にして下方突出部63を設け、当該部分の補強を図っている。この場合、カム溝8における低い部分は、図9に示すように、カム溝8の全体に配置されていることから、下方突出部63は、図8(b)、(c)に示すように、スライダ6の中央部近傍から後方側の略全面に設けられている。図8(c)に示すように、カム溝8における係合ピン9の初期位置に対応する下面にも下方突出部63が設けられていることから、下方突出部63においては、図8(c)に示す右方側部分が左方側部分よりも後方側に延出した延出部63bを有している。カード4の挿入動作に伴うスライダ6のスライド移動に応じて、この延出部63bは、ハウジング2の開口部205の延出部205aに収容されることとなる。
【0029】
次に、本実施の形態に係るコネクタ1に対するカード4の挿抜動作について説明する。図10及び図11は、それぞれ本実施の形態に係るコネクタ1に対してカード4を挿入する過程の上面図及び下面図である。図12及び図13は、それぞれ本実施の形態に係るコネクタ1において、カード4がロックされた状態の上面図及び下面図である。図14及び図15は、それぞれ本実施の形態に係るコネクタ1において、ロック状態とされたカード4を更に押し込んだ状態の上面図及び下面図である。なお、図10〜図15においては、説明の便宜上、コネクタ1が有するカバー部材3を省略している。
【0030】
ハウジング2のカード装着空間にカード4を押し込むと、図10に示すように、カード4の右方側側面がスライダ6の受け部61に接触した状態とされる。この場合において、スライダ6は、付勢ばね7の付勢力によりカード4の排出方向に付勢された状態となっており、係合ピン9は、カム溝8の第1ガイド溝82における初期位置に配置されている。このように係合ピン9の前端部がカム溝8の第1ガイド溝82の初期位置で係合している場合において、スライダ6の下方突出部63は、図11に示すように、開口部205の前方側端部に配置された状態となっている。また、カム溝8の第1ガイド溝82における係合ピン9の初期位置に対応するハウジング2との対向面は、開口部205に対向配置されている。
【0031】
図10及び図11に示す状態からカード4を押し込むと、付勢ばね7の付勢力に抗してスライダ6が後方側に移動する。この場合、係合ピン9の前端部は、カム溝8の第1ガイド溝82内を案内される。そして、最後方側まで押し込まれた後、カード4を押していた手を離すと、付勢ばね7の付勢力によりスライダ6が前方側に押し戻される。この場合、係合ピン9の前端部は、カム溝8の第1ガイド溝82から凹み溝84に案内され、図12に示すように、その停止部に停止された状態(ロック状態)とされる。このように係合ピン9の前端部がカム溝8の凹み溝84の停止部に停止されている場合において、スライダ6の下方突出部63は、図13に示すように、開口部205の前方側端部よりも僅かに後方側の位置に配置された状態となっている。また、カム溝8の第1ガイド溝82における係合ピン9の初期位置に対応するハウジング2との対向面は、開口部205よりも後方側の位置に対向配置されている。なお、このとき、コンタクト端子204bの先端部近傍は、カード4の接触部41に弾接した状態とされる。
【0032】
ロック状態とされたカード4をハウジング2のカード装着空間から抜き取る際には、図12及び図13に示す状態からカード4を更に後方側に押し込む。12及び図13に示す状態からカード4を押し込むと、カード4の移動に伴ってスライダ6が後方側に移動する。この場合、係合ピン9の前端部は、カム溝8の凹み溝84を案内される。そして、最後方側まで押し込まれると、図14に示すように、凹み溝84から第2ガイド溝83に案内され、第2ガイド溝83の前方側端部に配置された状態とされる。このように係合ピン9の前端部がカム溝8の第2ガイド溝83の前方側端部の位置に配置されている場合において、スライダ6の下方突出部63は、図15に示すように、開口部205の後方側端部に配置された状態となっている。この状態から、カード4を押していた手を離すと、付勢ばね7の付勢力によりスライダ6が図12に示す位置まで前方側に押し戻される。図12に示す状態からユーザは、カード4を抜き取ることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態に係るコネクタ1においては、スライダ6に設けられたカム溝8の内底面における初期位置の高さをロック位置よりも高い位置に形成していることから、例えば、カム溝8の初期位置とロック位置とを同一の高さに形成する場合(図9参照)に比べて、スライダ6における厚さ方向の寸法が大きくなる部分を減少させることができる。一方、スライダ6におけるカム溝8の初期位置に対応するハウジング2との対向面を、カード4の装着開始時にはハウジング2の開口部に対向配置させると共に、カード4の装着完了時にはハウジング2の底面(ベース部201)と対向配置させていることから、ハウジング2に開口部205を形成してスライダ6の一部(下方突出部63)を収容する場合においても、ハウジング2に形成される開口部205の面積を小さくすることができるので、ハウジング2の強度を確保しながら、コネクタ1自体の薄型化に対応することが可能となる。
【0034】
特に、本実施の形態に係るコネクタ1が有するスライダ6においては、カム溝8の内底面における高さが高い部分を、カム溝8の往路(第1ガイド溝82)と復路(第2ガイド溝83)とに跨って連続して形成されていることから、カム溝8の内底面において高さの高い部分を増加させることができるので、スライダ6における厚さ方向の寸法が大きくなる部分を更に減少させることが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態に係るコネクタ1においては、カム溝8の初期位置からロック位置までの経路において、カム溝8の復路との連結点が形成されると共に、この連結点よりもロック位置近傍の位置までカード4の挿入方向に沿って直線状にカム溝8の往路(第1ガイド溝82)を形成している。これにより、係合ピン9が連結点から誤ってカム溝8の復路(第2ガイド溝83)に入り込むことを簡単な構成で効果的に防止することが可能となる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0037】
例えば、上記実施の形態においては、スライダ6の後方側に係合ピン9が配置され、スライダ6に設けられたカム溝8における係合ピン9の初期位置がロック位置よりも後方側(カード挿入方向側)に形成される場合について説明しているが、スライダ6及び係合ピン9の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、スライダ6の前方側に係合ピン9が配置され、カム溝8における係合ピン9の初期位置がロック位置よりも前方側(カード排出方向側)に形成される構成にも適用することが可能である。この場合にも、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコネクタの外観を示す斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るコネクタの分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係るコネクタの上面図である。
【図4】上記実施の形態に係るコネクタが有するハウジングの上面図である。
【図5】上記実施の形態に係るコネクタが有するスライダの上面図(a)、側面図(b)及び下面図(c)である。
【図6】上記実施の形態に係るコネクタが有するスライダに形成されるカム溝の展開図である。
【図7】従来のコネクタが有するハウジングの上面図である。
【図8】従来のコネクタが有するスライダの上面図(a)、側面図(b)及び下面図(c)である。
【図9】従来のコネクタが有するスライダに形成されるカム溝の展開図である。
【図10】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードを挿入する過程の上面図である。
【図11】上記実施の形態に係るコネクタに対してカードを挿入する過程の下面図である。
【図12】上記実施の形態に係るコネクタにおいて、カードがロックされた状態の上面図である。
【図13】上記実施の形態に係るコネクタにおいて、カードがロックされた状態の下面図である。
【図14】上記実施の形態に係るコネクタにおいて、ロック状態とされたカードを更に押し込んだ状態の上面図である。
【図15】上記実施の形態に係るコネクタにおいて、ロック状態とされたカードを更に押し込んだ状態の下面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 カード用コネクタ(コネクタ)
2 ハウジング
201 ベース部
201a 薄厚部分
202 側壁部
203a、b 開口部
204a、b コンタクト端子
205 開口部
206 後壁部
207 係止片
208 保持孔
3 カバー部材
31 押圧片
4 カード
5 排出機構
6 スライダ
61 受け部
62 係止片
63 下方突出部
7 付勢ばね
8 カム溝
81 ハート型カム
82 第1ガイド溝
83 第2ガイド溝
84 凹み溝
9 係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを装着可能なハウジングと、前記カードと共に移動するスライダ及び当該スライダを所定の位置にロックするロック機構を有し、前記ハウジングに装着された前記カードを排出可能な排出機構と、前記カードの接触部と接触可能なコンタクト端子とを備えたカード用コネクタであって、
前記ロック機構は、前記スライダに設けられたカム溝と、当該カム溝と係合する係合部材とからなり、
前記カム溝は、前記係合部材が初期に位置する初期位置と、前記スライダを所定の位置にロックするロック位置とを有し、
前記初期位置は、前記ロック位置よりもカード挿入方向側に配置されると共に、前記カム溝の内底面における高さが前記ロック位置よりも高い位置に形成され、
前記ハウジングの底面における前記スライダと対向する位置の一部には開口部が形成され、
前記カードの装着開始時には、前記係合部材は前記初期位置に配置されると共に、前記スライダにおける前記初期位置に対応する前記ハウジングとの対向面が前記開口部に対向配置され、
前記カードの挿入に伴う前記スライダのカード挿入方向への移動に応じて、前記係合部材は前記初期位置から前記ロック位置に案内され、
前記カードの装着完了時には、前記係合部材は前記ロック位置に配置されると共に、前記スライダにおける前記初期位置に対応する前記ハウジングとの対向面が前記ハウジングの底面に対向配置されることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記初期位置の高さを有する前記カム溝の内底面が当該カム溝の往路と復路に跨って連続して形成されていることを特徴とする請求項1記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記初期位置から前記ロック位置までの経路において、前記カム溝の復路との連結点が形成されると共に、前記連結点よりも前記ロック位置近傍の位置まで前記カード挿入方向に沿って直線状に前記カム溝の往路が形成されていることを特徴する請求項1又は請求項2記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−40327(P2010−40327A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201862(P2008−201862)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】