説明

ガスタービンエンジンロータ、ガスタービンエンジンおよびガスタービンエンジンファン調整方法

【課題】ファンブレードの外形状を変えることなく、ガスタービンエンジンのファンブレードを調整する方法を提供する。
【解決手段】ブレード22のシェル10およびコア18は、第1および第2の剛性をそれぞれ有する。第1および第2の剛性の関係を変えることにより、ブレード22全体の剛性が調節される。コア18を含有するキャビティ14は、シェル10に組み込まれ、これにより、同じ外形状で、異なった剛性を有するブレードを形成することができ、かつブレードの外形状に影響を及ぼすことなく、キャビティ14のサイズ変更が可能となる。コア18を備えたブレード22およびコアを備えていないブレード22が交互に配設されることが好ましい。同一の外形状を有するブレード22によって、従来の異なった外形状による望ましくない空力特性が改善され、複数のブレードの剛性を変更することによって、振動を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンのファンに関し、特に、非一体型の振動(non−integral vibration)を減少させるようにガスタービンエンジンのファンを調整(tuning)することに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンのデザイン、特にロータおよびファンのブレードのデザインにおける1つの目標は、フラッタおよびフロー励振(flow−shedding)により生じる非一体型の振動を最小限にすることである。ガスタービンエンジンのファンを調整することにより、ガスタービンエンジンにおける非一体型の振動が減少することが分かっている。
【0003】
ガスタービンエンジンのファンを調整する周知の方法の1つとしては、ブレードのエッジから材料を取り除くことにより、個々のファンブレードの固有振動数を変動させる方法が挙げられる。この方法は、通常、「クリッピング」と呼ばれている。ブレードのエッジから材料を取り除くことにより、ブレードの固有振動数が変化し、これにより、ファンの非一体型の振動が減少する。この方法では、通常、ブレードの製造後にブレードのエッジが修正される。
【0004】
ガスタービンエンジンのファンを調整する他の方法では、複数のファンブレードは、同じロータ上において種々の厚さを有する。通常、この方法においては、複数のファンブレードは、異なった外形状を備えており、ロータ上に交互に配設される。したがって、「厚い」ブレードおよび「薄い」ブレードがそれぞれ製造され、利用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の「クリッピング」および「厚い/薄いブレード」の方法では、望ましくない空力的な結果が生じてしまう。ロータ上のファンブレードは、全体的な外形状が同じであることが望ましい。
【0006】
したがって、ファンブレードの外形状を変えることなく、ガスタービンエンジンのファンを調整することが望ましい。また、前記調整方法が現在のガスタービンエンジンファンの製造工程に組み込まれることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
タービンブレードは、それぞれが所定の剛性を有するブレードシェルおよびブレードコアを備える。ブレードシェルやブレードコアの剛性を調節することにより、ブレードの固有振動数が変化する。ブレードの固有振動数に加えて、前記の調節により、重量などの他の調整可能な特性が修正され得る。
【0008】
ブレードコアは、通常、ブレードシェル内に埋め込まれる。したがって、タービンブレードの外形状に影響を及ぼすことなく、ブレードコアのサイズを修正することができる。さらに、タービンブレードの外形状を変えることなく、ブレードコアを排除することができる。したがって、複数のファンブレードを備えるタービンロータディスクは、種々のサイズのブレードコアを有するファンブレードを備えていてもよい。また、タービンロータディスクは、ブレードコアを備えていない1つまたは複数のファンブレードを備えていてもよい。
【0009】
金属マトリックス複合材料(MMC:metal matrix composite)をブレードコアとして用いてもよい。ブレード内のMMC材料の領域は、現在のタービンブレード製造技術に容易に導入され得る。ガスタービンエンジンのファンを調整するようにMMC材料のサイズを調節することができる。同様に、ガスタービンエンジンのファンを調整するようにMMC材料の剛性を調節することができる。好ましくは、MMC材料は、タービンロータディスク上に交互に配設されるブレード内に含有される。
【0010】
したがって、本発明により、ファンブレードの外形状を変えることなくファンブレードを調整する方法が提供される。さらに、本発明の方法は、現在のブレード製造技術に容易に導入され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照すると、ガスタービンエンジン38の断面図が図示されている。ロータディスク30により、中心軸42を中心に複数のブレード22が回転する。複数のブレード22が回転することにより、ガスタービンエンジン38を通流する空気が移動するとともに、ガスタービンエンジン38に対してフラッタおよびフロー励振(flow−shedding)などの非一体型の振動(non−integral vibration)が生じる場合がある。非一体型の振動は、前記複数のブレード22の1つまたは複数ブレードの剛性を変更することにより制御され得る。ガスタービンエンジン38のファン部を開示しているが、タービン部46などのガスタービンエンジン38の他の部分に本発明を組み込んでもよい。また、ガスタービンエンジン38は、圧縮機44および燃焼器48を備える。
【0012】
図2では、異なった剛性の材料で調整されたブレード22が図示されている。ブレード22は、キャビティ14を画定するブレードシェル部10を備え、該キャビティ14は、ブレードコア部18を含有する。ブレードシェル部10は、第1の剛性を有し、ブレードコア部18は、第2の剛性を有する。第1の剛性と第2の剛性との間の関係を変えることにより、ブレード22全体の剛性が調節される。単一のキャビティ14について述べているが、キャビティ14がブレードシェル部10内に第2のキャビティ50を備えていてもよいことを理解されたい。
【0013】
図2では、さらに取付構造34が図示されている。取付構造34は、ブレード22をロータディスク30に固定するように機能する。望ましくは、取付構造34により、ロータからブレード22を取り外すことが容易になる。通常、ブレードシェル部10により、取付構造34から延びるエアフォイルが画定される。
【0014】
次に図3および図4を参照すると、ブレード22内のキャビティ14が図示されている。図3では、図2の線3−3に沿ったブレード22の断面図が図示されており、図4では、図2の線4−4に沿ったブレード22の断面図が図示されている。キャビティ14は、ブレードシェル部10によりブレード22内に画定される。ブレードシェル部10のサイズを変更することにより、キャビティ14のサイズが変わり、これにより、種々のサイズのブレードコア部18に適応することができる。ブレードシェル部10およびブレードコア部18のサイズを変更することにより、設計者がブレード22の全体の剛性および特性を調節することが可能となる。
【0015】
図示されているように、ブレードコア部18を含有するキャビティ14は、通常、ブレードシェル部10内に組み込まれる。キャビティ14を組み込むことにより、同じ外形状で、異なった剛性を有するブレード22を形成することができる。例えば、キャビティ14がブレードシェル部10内に組み込まれているため、キャビティ14を備えるブレード22は、キャビティ14を備えていないブレード22と同様の外形状を維持することが可能となる。さらに、キャビティ14がブレードシェル部10内に組み込まれたままであれば、ブレード22の外形状に影響を及ぼすことなく、キャビティ14のサイズを変更することができる。したがって、複数のブレード22がロータディスク30上に配設されるが、図5に図示されているように、ブレード22は、ブレードコア部18を備えていても、備えていなくてもよい。ロータディスクに配設された複数のブレード22が、ブレードコア部18を埋め込んだブレード22、およびブレードコア部18を備えていないブレード22から交互に配列されることが好ましい。ブレード22が同一の外形状を有することにより、望ましくない空力特性を有する従来の異なった外形状が改善される。
【0016】
ブレード22は、通常、拡散接合により形成される。つまり、半分に分割された2つのブレード22(ブレードのハーフ)を極度の温度下および圧力下で接合する。金属マトリックス複合材料(MMC)26は、極度の温度および圧力に耐え得る。ブレード22のハーフが互いに接合される際に、金属マトリックス複合材料26は、2つのブレードハーフの間に挟まれる。
【0017】
ブレード22は、Ti−6−4から製造されてもよく、金属マトリックス複合材料26は、炭化ケイ素繊維の添加物を備えたTi−6−4であってもよい。炭化ケイ素繊維の添加物の量および向きを変更することにより、金属マトリックス複合材料26の剛性が変わる。本発明では、他の多くの適切な材料を用いてもよい。さらに、剛性は、幾何学形状などを変えることにより変化し得る。2つの異なった剛性を有するブレードを交互に配列することについて開示したが、異なった剛性を有するブレードの他の配列であってもよい。
【0018】
本発明の好ましい実施形態が開示されたが、当業者であれば、ある種の変更形態が本発明の範囲内にあることを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ガスタービンエンジンの断面図。
【図2】ガスタービンエンジンのファンブレードの斜視図。
【図3】図2の線3−3に沿ったファンブレードの断面図。
【図4】図2の線4−4に沿ったファンブレードの断面図。
【図5】本発明の一実施例によるロータおよびブレードの斜視図。
【符号の説明】
【0020】
10…ブレードシェル部
14…キャビティ
18…ブレードコア部
22…ブレード
26…金属マトリックス複合材料
30…ロータディスク
34…取付構造
38…ガスタービンエンジン
42…中心軸
44…圧縮機
48…燃焼器
50…第2のキャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のグループのブレードと、
シェル部およびコア部を有する第2のグループのブレードと、
を取付けたロータを備え、
前記第2のグループのブレードが、前記第1のグループのブレードと異なった剛性を有することを特徴とするガスタービンエンジンのロータ。
【請求項2】
前記コア部が、前記シェル部内に埋め込まれることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンロータ。
【請求項3】
前記コア部の剛性を調節することにより、前記第2のグループのブレードが調整されることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンロータ。
【請求項4】
前記シェル部のサイズおよび前記コア部のサイズを調節することにより、前記第2のグループのブレードが調整されることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンロータ。
【請求項5】
複数のコア部をさらに備え、前記複数のコア部が複数の剛性を有することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンロータ。
【請求項6】
前記ブレードコア部が、複合材料からなることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンロータ。
【請求項7】
前記複合材料が、金属マトリックス複合材料であることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンロータ。
【請求項8】
前記第2のグループのブレードが、前記第1のグループのブレードの間に交互に配設されることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンロータ。
【請求項9】
前記ロータおよび前記ブレードが、ガスタービンエンジンのファン部の一部を形成することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンロータ。
【請求項10】
前記第1のグループのブレードが、シェル部およびコア部を備えることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジンロータ。
【請求項11】
ファン部と、
圧縮機と、
燃焼器と、
タービンと、
を備え、
前記ファンおよび前記タービンの少なくとも一方が、複数のブレードを有するロータを備え、前記複数のブレードが、1つまたは複数のブレード内に第1の剛性を有する材料および第2の剛性を有する材料を備え、前記第2の剛性を変えることにより、前記複数のブレードの前記1つまたは複数のブレードが調整されることを特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項12】
第2の剛性を有する前記材料が、前記複数のブレードの交互に並ぶブレード内に配設されることを特徴とする請求項11に記載のガスタービンエンジン。
【請求項13】
前記複数のブレードの外形状が、実質的に同一であることを特徴とする請求項11に記載のガスタービンエンジン。
【請求項14】
第2の剛性を有する前記材料が、金属マトリックス複合材料であることを特徴とする請求項11に記載のガスタービンエンジン。
【請求項15】
第2の剛性を有する前記材料が、第1の剛性を有する前記材料に組み込まれることを特徴とする請求項11に記載のガスタービンエンジン。
【請求項16】
第2の剛性を有する前記材料が、複合材料からなることを特徴とする請求項11に記載のガスタービンエンジン。
【請求項17】
第2の剛性を有する前記材料が、金属マトリックス複合材料からなることを特徴とする請求項16に記載のガスタービンエンジン。
【請求項18】
前記ロータおよび前記ブレードが、前記ファンの一部であることを特徴とする請求項11に記載のガスタービンエンジン。
【請求項19】
ガスタービンエンジンのファンを調整する方法であって、
(a)第1の剛性を有する第1のファンブレードをロータに取付けるステップと、
(b)第2の剛性を有する第2のファンブレードを前記ロータに取付けるステップと、
(c)前記第1のファンブレードおよび前記第2のファンブレードを選択的に取付けて選択された剛性のブレードを備えたガスタービンエンジンファンを形成するように、前記(a)および(b)のステップを繰り返すステップと、
を含むガスタービンエンジンファン調整方法。
【請求項20】
前記第1の剛性を変更するステップをさらに含み、前記第1の剛性を変更することにより、前記第1のファンブレードの振動特性が変わることを特徴とする請求項19に記載のガスタービンエンジンファン調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−46608(P2007−46608A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214059(P2006−214059)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】