説明

ガスバリア性合成樹脂管及び冷暖房用パネル

【課題】 ガスバリア性と耐久性を向上させる。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂からなる内層1と、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層2と、ポリオレフィン系樹脂からなる外層3とを共押出成形して一体化することにより、中間層2のエチレン−ビニルアルコール共重合体が高いガスバリア性を有するため、内層1からの臭いや味や着色料などが透過せず、管内外面へ透過する酸素濃度も極めて低いと共に、エチレン−ビニルアルコール共重合体は水溶性にもかかわらず、ポリオレフィン系樹脂である内層1と外層3で内外面が覆われているため、管内に水を通しても溶けることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道などの外部給水口から自動販売機などの飲料機器へ給水したり、シロップタンクからシロップをサーバーへ供給するために、例えばカップ式自動販売機、ディスペンサなどの飲料用導管として用いたり、給水源や給湯源に通ずる飲料水用導管として用いたり、屋内の冷房や暖房を輻射熱により行う冷暖房用パネルの熱交換パイプとして用いるガスバリア性(気体透過遮断性)に優れた合成樹脂管、及び、それを使用した冷暖房用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガスバリア性合成樹脂管として、ポリエチレンからなる内層の外側に、ポリエチレンと相溶性があって柔軟性があるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる中間層(外層)を積層し、この外周に高密度ポリエチレンからなる最外層を積層することにより、EVAの臭いや味及び酸素が透過せず、しかも可撓性の高いホースがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−97771号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来のガスバリア性合成樹脂管では、管内を流れる流体が、例えば濃縮されたシロップなどのように臭いや味が強い場合や着色料が濃い場合、管内に残留したまま時間が経過すると、そのシロップに含まれる臭いや味や着色料が合成樹脂管の内面から外面に移ってしまい、この合成樹脂管に接近して配置される別の管内を流れる飲料へ臭いや味や着色料が移って、味覚・臭覚などが変化してしまうという問題があった。
特に、近年においては、異なるシロップなどが流れる合成樹脂管を複数本束ねて使用することが多く、これら合成樹脂管を流れるシロップなどからの臭いや味の移りによる味覚・臭覚の改善要求が年々高くなっている。
更に、合成樹脂管の内面に残留したシロップなどの飲料は、合成樹脂管を透過した酸素により劣化し易くなると共に、バクテリアの発生原因となるため、衛生上からも問題が残っていた。
また、このような飲料用導管として用いられる場合と異なり、冷暖房用パネルの熱交換パイプとして用いる場合には、飲料用導管に比べて使用年数が遙かに長くなると共に定期的なメンテナンスが困難であるが、この熱交換パイプを循環する熱交換流体(熱交換媒体)に空気中の酸素が溶けると、該熱交換パイプに接続される金属製バルブや金属製配管などが錆び易くなり、それが原因となって耐久性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明のうち第一の発明は、ガスバリア性と耐久性を向上させることを目的としたものである。
第二、第三の発明は、第一の発明の目的に加えて、内層と中間層と外層との接着性を向上させることを目的としたものである。
第四の発明は、第一の発明、第二の発明または第三の発明の目的に加えて、湾曲部の曲げ半径が小さくても管内を流れる流体の流量を確保することを目的としたものである。
第五の発明は、熱交換パイプ内を通る熱交換流体に空気中の酸素が溶けることを長期に亘って防止することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち第一の発明は、ポリオレフィン系樹脂からなる内層と、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層と、ポリオレフィン系樹脂からなる外層とを共押出成形して一体化したことを特徴とするものである。
第二の発明は、第一の発明の構成に、前記内層及び外層のポリオレフィン系樹脂に変性エラストマーを添加した構成を加えたことを特徴とする。
第三の発明は、第一の発明の構成に、前記内層と中間層と外層との間に、変性ポリオレフィン又は変性エラストマーからなる接着層を夫々積層した構成を加えたことを特徴とする。
第四の発明は、第一の発明、第二の発明または第三の発明の構成に、前記内層、中間層及び外層が少なくとも一体化された管本体の湾曲部を蛇腹状に形成した構成を加えたことを特徴とする。
第五の発明は、第一の発明、第二の発明、第三の発明または第四の発明のガスバリア性合成樹脂管を熱交換パイプとして使用したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち第一の発明は、ポリオレフィン系樹脂からなる内層と、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層と、ポリオレフィン系樹脂からなる外層とを共押出成形して一体化することにより、中間層のエチレン−ビニルアルコール共重合体が高いガスバリア性を有するため、内層からの臭いや味や着色料などが透過せず、管内外面へ透過する酸素濃度も極めて低いと共に、エチレン−ビニルアルコール共重合体は水溶性にもかかわらず、ポリオレフィン系樹脂である内層と外層で内外面が覆われているため、管内に水を通しても溶けることはない。
従って、ガスバリア性と耐久性を向上させることができる。
その結果、管内に濃縮されたシロップが残留したまま時間が経過すると、その臭いや味や着色料が移って味覚・臭覚が変化し易い従来のものに比べ、管内に残留した飲料からの臭いや味や着色料などの移りによる飲料の味覚・臭覚変化と酸化劣化やバクテリアの発生を防止することができる。
更に、異なるシロップなどが流れる合成樹脂管を複数本束ねて使用しても、これら合成樹脂管を流れるシロップからの移り香による味覚・臭覚の変化を防止できると共に、管内で発生した飲料の酸化劣化やバクテリアによる食中毒などの病気発生を確実に抑制できる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の効果に加えて、内層及び外層のポリオレフィン系樹脂に変性エラストマーを添加することにより、変性エラストマーが内層及び外層のポリオレフィン系樹脂により希釈され、相溶性が低い中間層のエチレン−ビニルアルコール共重合体との親和性が高くなる。
従って、内層と中間層と外層との接着性を向上させることができる。
その結果、共押出成形のみで満足できる接着強度を得ることができ、使用中に各層の間が剥離せず、長期に亘って使用できる。
【0009】
第三の発明は、第一の発明の効果に加えて、内層と中間層と外層との間に、変性ポリオレフィン又は変性エラストマーからなる接着層を夫々積層することにより、中間層のエチレン−ビニルアルコール共重合体の内外に、変性ポリオレフィン又は変性エラストマーからなる接着層を挟んで、内層及び外層のポリオレフィン系樹脂が夫々積層されるため、交互に接着可能になる。
従って、内層と中間層と外層との接着性を向上させることができる。
その結果、共押出成形のみで満足できる接着強度を得ることができ、使用中に各層の間が剥離せず、長期に亘って使用できる。
【0010】
第四の発明は、第一の発明、第二の発明または第三の発明の効果に加えて、少なくとも内層、中間層及び外層が一体化された管本体の湾曲部を蛇腹状に形成することにより、湾曲部の曲げ半径を小さくしても、その一箇所から折れたり、断面形状が扁平状になり潰れ難くなる。
従って、湾曲部の曲げ半径が小さくても管内を流れる流体の流量を確保することができる。
その結果、管本体の部分的な折れを防ぐために湾曲部の曲げ半径を大きくする必要がないため、コンパクトな配管が可能となる。
【0011】
第五の発明は、第一の発明、第二の発明、第三または第四のガスバリア性合成樹脂管を熱交換パイプとして使用することにより、熱交換パイプに対する酸素の透過性が極めて低くなる。
従って、熱交換パイプ内を通る熱交換流体に空気中の酸素が溶けることを長期に亘って防止することができる。
その結果、熱交換パイプに接続される金属製バルブや金属製配管などの金属部品が錆び難くなって耐久性が著しく向上し、長期に亘ってメンテナンス無しで使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のガスバリア性合成樹脂管Aの実施形態は、図1及び図2に示す如く、ポリオレフィン系樹脂を主成分とした内層1と、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下EVOHという)を主成分とした中間層2と、ポリオレフィン系樹脂を主成分とした外層3とを、共押出成形により積層し一体化して管本体A1が形成されるものである。
【0013】
上記内層1及び外層3のポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンが好適であり、その具体例としては直鎖状低密度ポリエチレン(以下LLDPEという)や低密度ポリエチレン(LDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などを使用する。
上記中間層2のEVOHとしては、エチレン含有量が2〜60モル%、ケン化度が85モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物などが用いられる。
【0014】
更に、上記中間層2のEVOHは、内層1及び外層3のポリオレフィン系樹脂と相溶性が低く共押出成形しても満足できる接着強度が得られ難いため、その一例として、変性エラストマーを、内層1及び外層3の主成分であるポリオレフィン系樹脂とに夫々添加することで、これらポリオレフィン系樹脂により希釈され、EVOHとの親和性を高くして、中間層2と内層1及び外層3との相溶性・接着性を改善する。
【0015】
また、他の例としては、内層1と中間層2と外層3との間に、変性ポリオレフィン又は変性エラストマーからなる接着層4,5を夫々積層することにより、中間層2のEVOHと内層1及び外層3のポリオレフィン系樹脂との接着性を高める。
【0016】
上記接着層4,5の変性ポリオレフィンに用いるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレンやポリプロピレンなどが好適である。
【0017】
上記内層1、外層3及び接着層4,5の変性エラストマーに用いるエラストマーとしては、常温でゴム弾性を示す高分子物質であって、室温で2倍以上に伸び、外力を取り除くと瞬間的に元の形に戻る高分子物質が用いられる。
取り扱い性および成形の容易性から熱可塑性であることが好ましい。
【0018】
本発明における変性ポリオレフィン又は変性エラストマーとは、水酸基と反応し得る官能基をポリオレフィン又はエラストマーに導入したものである。
水酸基と反応し得る官能基としては、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基、イソシアネート基、エステル結合、ウレタン結合およびアミド結合からなる群より選ばれる、少なくとも1種の官能基が好適である。
中間層2と内層1及び外層3との接着性、或いは中間層2と接着層4及び接着層5との接着性を大きく改善するためには、水酸基と反応し得る官能基として、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基からなる群より選ばれる、少なくとも1種の官能基が好適に用いられる。
【0019】
更に、必要に応じて内層1の内側に、該内層1のポリオレフィン系樹脂と相溶性が高くて良好な材料からなるガスバリア層(図示せず)を共押出成形により積層したり、上記外層3の外側にも該外層3のポリオレフィン系樹脂と相溶性が良好な材料からなるガスバリア層(図示せず)を共押出成形により積層するか、又は例えばアルミ蒸着などの後処理を行うことで、更にガスバリア性を向上させることも可能である。
【0020】
また、これら内層1と中間層2と外層3との間、接着層4,5との間及び最内層や最外層との間などには、例えばポリエステルやナイロンやアラミドなどの合成樹脂製補強糸又は補強繊維又はモノフィラメント(monofilament:単繊維)か、若しくは例えばステンレスなどの補強材(図示せず)が、螺旋状(コイル状)又は網状に巻き付けられることにより、補強層(図示せず)を積層することも可能である。
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
この実施例1は、図1に示す如く、前記内層1及び外層3の主成分である例えばLLDPEなどのポリエチレンと、前記変性エラストマーとして用いる株式会社クラレ製「シナーバインド」IK−750とを適宜比率でドライブレンド(溶融させずに添加物を単に混合)し、これらと中間層2の主成分であるEVOHとを、押出機に投入して共押出成形することにより、多層構造のガスバリア性合成樹脂管Aの管本体A1が連続して製造される場合を示したものである。
【0022】
更に、上記内層1の影響によって、成形後に飲料の味覚、即ち移り香を含む臭いや味が変化するのを避けるため、上記内層1の内側に、LLDPEなどからなる最内層(図示せず)を、共押出成形により積層することも可能である。
【0023】
また、上記外層3の外側には、補強材(図示せず)がホース軸方向へ巻回された補強層(図示せず)を積層し、この補強層の外側に該外層3のポリエチレンと相溶性が良好な材料からなる最外層(図示せず)を積層することも可能である。
【0024】
次に、斯かるガスバリア性合成樹脂管Aの作用効果について説明する。
上述した内層1、中間層2及び外層3からなる管本体A1は、中間層2のEVOHを挟んで、LLDPEなどのポリエチレンに変性エラストマーを添加した内層1の混合材料と外層3の混合材料とが共押出成形されるため、変性エラストマーが内層1や外層3のポリエチレンにより希釈され、ポリエチレンと相溶性が低いEVOHとの親和性が高くなる。
【0025】
それにより中間層2と内層1及び外層3との相溶性・接着性が改善されて、これら三層の接着性を向上させて、使用中に層間剥離が発生しない。
中間層2のEVOHが高いガスバリア性を有するため、内層1からの臭いや味や着色料などが移らず、管本体A1の内外面へ透過する酸素濃度も極めて低いため、管本体A1の内部に残留した飲料の酸化劣化やバクテリアの発生を防止できると共に、EVOHは水溶性にもかかわらず、ポリエチレンである内層1と外層3で内外面が覆われているため、管内に水を通しても溶けることはない。
【0026】
必要に応じて、内層1の内側にLLDPEなどからなる最内層(図示せず)を積層した場合には、飲料と内層1とを最内層により隔離し、内層1の影響による成形後の飲料の味覚の変化、即ち移り香を含む臭いや味の変化を防ぐことができる。
【0027】
更に、外層3の外側には、補強材(図示せず)を巻回した補強層(図示せず)と、該外層3の材料と相溶性が良好な材料からなる最外層(図示せず)とを積層した場合には、外層3と最外層との間に補強層が保持され、この補強層で内層1、中間層2及び外層3の拡径が阻止されて耐圧性が向上する。
【実施例2】
【0028】
この実施例2は、図2に示す如く、前記内層1及び外層3の材料に対する変性エラストマーの添加に代えて、内層1と中間層2と外層3との間に、前記変性ポリオレフィンとして三井化学株式会社製「アドマー」からなる接着層4,5が夫々配置されるように、押出機で共押出成形することにより、多層構造のガスバリア性合成樹脂管Aの管本体A1を連続して製造した構成が、前記図1に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1に示した実施例1と同じものである。
【0029】
従って、図2に示す実施例2は、その管本体A1が共押出成形により、中間層2のEVOHの内外に、変性ポリオレフィンからなる接着層4,5を挟んで、内層1及び外層3のポリエチレンが夫々積層されるため、相互に接着可能となり、上述した実施例1と同様な作用効果が得られる。
【0030】
また、その他の実施例として、前記内層1と中間層2と外層3との間に、LLDPEなどのポリエチレンに前記変性エラストマーとして株式会社クラレ製「シナーバインド」IK−750を適宜比率でドライブレンドしたものからなる接着層4,5が夫々配置されるように、押出機で共押出成形することにより多層構造ホースとすることも可能である。
【0031】
この場合も、共押出成形により、中間層2のEVOHの内外に、変性エラストマーが添加されたポリエチレンからなる接着層4,5を挟んで、内層1及び外層3のポリエチレンが夫々積層されるため、相互に接着可能となり、上述した実施例1と同様な作用効果が得られる。
【実施例3】
【0032】
この実施例3は、図3〜図7に示す如く、上述した実施例1又は実施例2で示したガスバリア性合成樹脂管Aを、室内の天井に取り付けられる冷暖房用パネルBの熱交換パイプCとして使用すると共に、その管本体A1の湾曲部A2として、該管本体A1の一部のみ又は略全体が蛇腹状に形成される場合を示すものである。
【0033】
上記冷暖房用パネルBは、板状の輻射パネルB1が設けられ、この輻射パネルB1は、例えばアルミニウムや鉄などの金属、石膏ボード、コンクリートなどで成形され、屋内の天井面へ向け複数の吸音孔B2が貫通して形成されている。
【0034】
輻射パネルB1の裏面B3には、熱交換パイプCが後述する受け具Dを介して設けられている。
この熱交換パイプCは、輻射パネルB1の一方向の幅を横切る直線部C1と、輻射パネルB1の端部に達する前に湾曲しながら折り返す曲線部C2が交互に設けられ、連続して蛇行している。
【0035】
この熱交換パイプCの曲線部C2の一例としては、図3に示す如く、前記ガスバリア性合成樹脂管Aの管本体A1に形成した蛇腹状の湾曲部A2を略U字形に湾曲させることで形成される。
その他の例としては、図4に示す如く、適宜間隔毎に配置された複数の蛇腹状の湾曲部A2を、夫々の曲げ半径が小さくなるように湾曲させることで、該曲線部C2を略コの字形や略多角形状などに形成することも可能である。
このような蛇腹部分は、前記ガスバリア性合成樹脂管Aの管本体A1の成形と同時に行うか、又は該管本体A1の成形後に従来公知の加工方法で成形される。
【0036】
なお、図3及び図4に示す如く、上記熱交換パイプCの端部C3を夫々蛇腹状に形成することも可能であり、これら端部C3を曲げることで、熱交換パイプCを輻射パネルB1内に収納できると共に、端部C3同士の接続や他のパイプとの接続が容易になって施工性が向上する。
【0037】
輻射パネルB1の裏面B3には、熱交換パイプCの直線部C1を保持する受け具Dが取り付けられており、この受け具Dは、例えばアルミニウムなどの金属で押出成形された長尺部材であり、上記熱交換パイプCの直線部C1に沿って取り付けられ、その長手方向の断面形状が一定である。
この受け具Dには、図5及び図6に示す如く、上記輻射パネルB1の裏面B3に重ねられる板体である均熱板D1が設けられ、該均熱板D1の中心には、上記熱交換パイプCの直線部C1を保持する保持部D2が設けられている。
【0038】
この保持部D2には、均熱板D1から立設されてその先端側を開口した略半円状の曲面部D3が形成され、該曲面部D3の内周面を、上記熱交換パイプCの外周面に密着する内径に形成して、熱交換パイプCの側面を両側から弾発的に挟持するようにしている。
更に、この曲面部D3の先端には、外側に広がるウィング部D4が必要に応じて一体に形成されている。
【0039】
上記受け具Dが取り付けられる輻射パネル1の裏面B3には、接着性を確保するためのプライマー処理が施され、その裏面B3に、例えば熱可塑性樹脂のホットメルト接着剤や両面テープで接着されている。
また、上記受け具Dの裏面は、輻射パネルB1の表側から上記吸音孔B2を介して見え難くなるように、黒色などに塗られている。
【0040】
ここで、上記熱交換パイプCを受け具Dへ取り付ける方法について説明する。
先ず、前記輻射パネルB1の裏面Bに設けられた受け具Dの一対のウィング部D4の間に熱交換パイプCを押し付けて、曲面部D3及び直線部C1を弾性変形させ、受け具Dの曲面部D3の間に弾発的に係止させる。
この際、熱交換パイプCを、受け具Dの曲面部D3へ押し込む専用の治具を用いても良い。
【0041】
更に、前記輻射パネルB1には、不燃シートE1が敷設されており、また該輻射パネルB1の裏面B3に取り付けられた熱交換パイプC及び受け具Dを覆うように断熱材E2が設けられる。
【0042】
図示例では、図5に示す如く、上記不燃シートE1を輻射パネルB1の裏面B3の上記受け具D以外の部分に敷設している。
その他の例として、上記不燃シートE1が、上記受け具Dと熱交換パイプCを含む輻射パネルB1の裏面B3全体に敷設されたり、図5に示す断熱材E2の輻射パネルB1側に貼着するなど、輻射パネルB1の不燃性を確保できれば、適宜位置に取り付けることが可能である。
【0043】
上記不燃シートE1は、例えばセラミックシートやグラスウールシート、その他の不燃性のシート状のものなどであり、図6に示す如く、前記受け具Dの均熱板D1の両側縁部裏面に形成された切り欠き部D5に差し込まれて、該不燃シートE1の縁部が保持されている。
【0044】
上記断熱材E2は、図5に示す如く、板状に形成してその端縁部を、前記輻射パネルB1の端縁沿いに形成された押し返し部B4に亘り係止することで保持することが好ましい。
【0045】
次に、冷暖房用パネルBの使用方法について図7に基づいて説明する。
室内の天井に複数枚の冷暖房用パネルBを、夫々の輻射パネルB1の裏面B3が屋根裏側となるように並べて取り付け、熱交換パイプCの端部C3同士を例えば継手などの連結部材Fで接続する。
そして、複数枚の冷暖房用パネルBを接続した熱交換パイプCの一方の端部C3を、供給側メインパイプG1に接続すると共に、他方の端部C3を戻り側メインパイプG2に接続し、これら供給側メインパイプG1と戻り側メインパイプG2は、例えば温水器などの熱源Hに接続されている。
【0046】
この熱源Hは、冷暖房用パネルBの熱交換パイプCに、所望の温度の熱交換用流体として例えば水を供給している。
上記熱源Hから供給側メインパイプG1に供給された所定温度の熱交換用流体は、熱交換パイプCの一方の端部から供給され、連結部材Fで連結された複数の熱交換パイプCを通過して他方の端部から戻り側メインパイプG2に流れるが、この通過過程において輻射パネルB1との間で熱交換が行われ、その後は熱源Hに戻って、再び所望の温度に調整されてから、供給側メインパイプG1に供給される。
【0047】
従って、このような構造の冷暖房用パネルBは、構造が簡単で不燃性があるため、確実に熱交換も行うことができ、しかも上記受け具Dは、熱伝導性が高い金属で作られているため、上記熱交換パイプCと輻射パネルB1の間で受け具Dを介して熱交換が行われ、熱効率が良好である。
更に、上記熱交換パイプCに水などの熱交換用流体を通すと、熱交換用流体の温度と圧力で熱交換パイプCの径が僅かに太くなり、受け具Dの曲面部D3に熱交換パイプCが密着して、より熱効率が上昇する。
それに加えて、上記均熱板D1が熱交換パイプCに沿って長く設けられ、広い面積で輻射パネルB1に接着されるため、この点からも熱効率が向上する。
【0048】
また、上記冷暖房用パネルBは、輻射パネルB1の受け具D以外の部分は不燃シートE1で覆われているため、不燃性が向上し、火災のときに熱交換パイプCに引火したりすることを防止できると共に、該熱交換パイプCに安価な合成樹脂を使用しても、確実に不燃性を確保することができる。
【0049】
そして、上記熱交換パイプCは、保持部D2の弾性力で取り付けられ保持されるため、特別な係止装置が不要で簡単な構造であると共に、熱交換パイプCの取り付けや取り外しが簡単であり、取り付ける時には保持部D2のウィング部D4の間に押圧するだけの簡単な操作で行うことができ、保持部D2のウィング部D4にガイドされて曲面部D3内側へ簡単に押し込むことができ、しかもウィング部D4にガイドされることにより、保持部D2に無理な力がかかって破損することが無く、安全である。
【0050】
更に、上記熱交換パイプCのガスバリア性合成樹脂管Aは硬いため、その湾曲部A2で折れたり楕円に潰れ易く、該熱交換パイプCが折れたり潰れれば、熱交換流体が止まったり所望の流量が得られなくなる虞があり、また上記湾曲部A2の曲げ半径を大きくすると、一定面積に蛇行させる熱交換パイプCが短くなって熱交換する熱量つまり熱効率が悪くなる。
【0051】
そこで、この実施例では、上記湾曲部A2として管本体A1の一部のみ又は略全体を蛇腹状に形成したため、該湾曲部A2の曲げ半径を小さくしても、その一箇所から折れたり、断面形状が扁平状になり潰れ難くなるので、湾曲部A2の曲げ半径が小さくても管内を流れる流体の流量を確保できる。
それにより、一定面積の冷暖房用パネルBに敷設する熱交換パイプCを長くできて熱効率の向上を図ることができる。
【0052】
一方、上述した受け具Dに代えて図8に示すような受け具D′を採用することも可能であり、それ以外の構成は図3〜図7に示した実施例3と同じものである。
この受け具D′は、その均熱板D1′の形状が前記熱交換パイプCの直線部C1に連続して曲線部C2まで達し、この曲線部C2に対向する該均熱板D1′の端部D1″と保持部D2無しで接している。
【0053】
即ち、上記保持部D2は、熱交換パイプCの直線部C1が位置する部分にのみ設けられ、直線部C1のみを保持している。
上記均熱板D1′の長手方向の端部D1″は、熱交換パイプCの直線部C1に連続した曲線部C2に接しており、この均熱板D1′の端部D1″付近は、保持部D2が取り除かれて曲線部C2は該均熱板D1′の端部D1″に載せられているだけとなっている。
【0054】
上記曲線部C2の中心部分では、該均熱板D1′の端部D1″から外れて不燃シートE1の上を通過し、隣接する受け具D′の均熱板D1′の端部D1″に再び載り、直線部C1となって保持部D2に保持される。
【0055】
なお、上記保持部D2は、熱交換パイプCの曲線部C2が曲がる側のみ除去されたものでも良く、この場合も上記と同様の効果を有する。
また、保持部D2を除去せずに乗り越えるようにして曲線部C2が隣接する均熱板D1′の保持部D2につながるようにしても良い。
この場合、保持部D2の除去工数を削減することができる。
【0056】
従って、図8に示した受け具D′を採用した冷暖房用パネルBは、上述した受け具Dと同様の使用方法で同様の作用効果が得られ、更に加えて、熱交換パイプCの曲線部C2と輻射パネルB1の間にも均熱板D1′の端部D1″が位置しているため、均熱板D1′の面積が広くなり、より熱効率が向上するという利点がある。
【0057】
尚、前示実施例では、本発明のガスバリア性合成樹脂管Aを、室内の天井に取り付けられる冷暖房用パネルBの熱交換パイプCとして使用し、この冷暖房用パネルBが室内の天井に取り付けられる場合を図示したが、これに限定されず、冷暖房用パネルBを床面や側壁に設置するだけでなく、冷暖房用パネルBの熱交換パイプC以外に、カップ式自動販売機やディスペンサなどの飲料用導管として使用したり、給水源や給湯源に通ずる飲料水用導管として使用しても良い。
更に、前記管本体A1の一部のみが蛇腹状に形成される場合を図示したが、これに限定されず、管本体A1の略全体を蛇腹状に形成しても良い。
また、前記熱交換パイプCの配置や蛇行や湾曲させる回数も図示例に限定されず、変更可能であり、前記輻射パネルB1の形状や大きさ、吸音孔B2の間隔なども適宜選択可能であり、該輻射パネルB1や不燃シートE1の素材や厚みは、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のガスバリア性合成樹脂管の一実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図2】本発明のガスバリア性合成樹脂管の他の実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図3】本発明のガスバリア性合成樹脂管を冷暖房用パネルの熱交換パイプとして使用した場合を示す平面図である。
【図4】熱交換パイプの曲線部の変形例を示す平面図である。
【図5】図3の(5)−(5)線に沿える縦断側面図である。
【図6】図5の一部を部分拡大した縦断側面図である。
【図7】冷暖房用パネルの使用方法を示す概略の平面図である。
【図8】受け具の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0059】
A ガスバリア性合成樹脂管 A1 管本体
A2 湾曲部 1 内層
2 中間層 3 外層
4,5 接着層 B 冷暖房用パネル
B1 輻射パネル B2 吸音孔
B3 裏面 B4 押し返し部
C 熱交換パイプ C1 直線部
C2 曲線部 C3 端部
D,D′ 受け具 D1,D1′ 均熱板
D1″ 端部 D2 保持部
D3 曲面部 D4 ウィング部
D5 切り欠き部 E1 不燃シート
E2 断熱材 F 連結部材
G1 供給側メインパイプ G2 戻り側メインパイプ
H 熱源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂からなる内層(1)と、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層(2)と、ポリオレフィン系樹脂からなる外層(3)とを共押出成形して一体化したことを特徴とするガスバリア性合成樹脂管。
【請求項2】
前記内層(1)及び外層(3)のポリオレフィン系樹脂に変性エラストマーを添加した請求項1記載のガスバリア性合成樹脂管。
【請求項3】
前記内層(1)と中間層(2)と外層(3)との間に、変性ポリオレフィン又は変性エラストマーからなる接着層(4,5)を夫々積層した請求項1記載のガスバリア性合成樹脂管。
【請求項4】
前記内層(1)、中間層(2)及び外層(3)が少なくとも一体化された管本体(A1)の湾曲部(A2)を蛇腹状に形成した請求項1、2または3記載のガスバリア性合成樹脂管。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のガスバリア性合成樹脂管(A)を熱交換パイプ(C)として使用したことを特徴とする冷暖房用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−92095(P2009−92095A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260989(P2007−260989)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】