説明

ガス噴射装置及びこれを用いた基板処理装置

本発明は、ガス噴射装置及び該ガス噴射装置を採用した基板処理装置に関する。本発明に係るガス噴射装置は、チャンバーの内部に回転自在に設けられて複数の基板を支持する基板支持部の上部に設けられ、基板支持部の中心点を基準として円周方向に沿って配設されて基板に工程ガスを吹き付ける複数のガス噴射ユニットを備えるものであって、複数のガス噴射ユニットのうちの少なくとも一つのガス噴射ユニットは、工程ガスが導入される導入口が形成されているトッププレートと、トッププレートとの間に基板支持部の半径方向に沿ってガス拡散空間を形成するように、トッププレートの下部に配設され、導入口を介して流入して前記ガス拡散空間に拡散された工程ガスが基板に向かって吹き付けられるように、ガス拡散空間の下側に多数のガス噴射孔が形成されている噴射プレートと、ガス拡散空間を基板支持部の半径方向に沿って互いに隔離された複数の空間に仕切るように、トッププレートと噴射プレートとの間に設けられる隔壁と、を備え、隔離された空間ごとに前記工程ガスが独立して流入するように、導入口は複数設けられて隔離された空間ごとに配設されるところに特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス噴射装置及びこれを用いた基板処理装置に係り、特に、基板支持部に複数枚の基板が載置されて回転しつつ薄膜蒸着などの工程が行われるような基板処理装置と該基板処理装置に用いられるガス噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のスケールが次第に縮小されるに伴い、極薄膜への要求が益々高まりつつあり、しかも、コンタクト孔の孔径が狭まるに伴い、段差塗布性(ステップカバレッジ)に関する問題も益々深刻化しつつある。これに伴う種々の問題を克服し得る蒸着法として、原子層蒸着(atomic layer deposition;ALD)法が用いられている。一般に、原子層蒸着法とは、基板にそれぞれの原料ガスを独立して供給して、原料ガスの表面飽和によって薄膜が成膜されるようにする方法のことをいう。
【0003】
以下、原子層薄膜蒸着法の原理を概説する。第1の原料ガスがチャンバー内に供給されると、基板の表面との反応によって単原子層が基板の表面に化学的に吸着される。しかしながら、基板の表面が第1の原料ガスによって飽和されると、単原子層以上の第1の原料ガスは同じリガンド同士の非反応性によって化学的な吸着状態を形成することができず、物理的な吸着状態にあることとなる。パージ(purge)ガスが供給されると、この物理的な吸着状態の第1の原料ガスはパージガスによって除去される。最初の単原子層の上に第2の原料ガスが供給されると、第1の原料ガスと第2の原料ガスのリガンド相互間の置換反応によって2番目の層が成長し、最初の層と反応できなかった第2の原料ガスは物理的な吸着状態にあってパージガスによって除去される。なお、この2番目の層の表面は第1の原料ガスと反応し得る状態にある。上記の過程が1サイクルをなし、複数のサイクルの繰り返しによって薄膜が蒸着されるのである。
【0004】
上記の原子層蒸着法を行うための従来の基板処理装置が図1及び図2に示してある。
【0005】
図1は、従来のガス噴射装置の概略的な分解斜視図であり、図2は、図1のガス噴射装置が採用された従来の基板処理装置の概略断面図である。
【0006】
図1及び図2を参照すると、従来の基板処理装置9は、内部に空間部が形成されているチャンバー1と、チャンバー1の内部に回転自在に設けられて複数枚の基板sが載置される基板支持部2と、を備える。チャンバー1の上部には、基板sに向かってガスを供給するガス噴射装置3が設けられる。
【0007】
ガス噴射装置3は複数のガス噴射ユニット4から構成されるが、ガス噴射ユニット4は、円周方向に沿って所定角度置きに配設される。ガス噴射装置3の構成を詳述すれば、円板状のリードプレート5が上部に配設され、複数の噴射プレート6がリードプレート5の下部に取り付けられる。リードプレート5には、中心点を基準として複数のガス注入孔7が形成されており、各ガス注入孔7を介して各ガス噴射ユニット4にガスを供給する。ガス注入孔7を介して注入されたガスは、噴射プレート6とリードプレート5との間において拡散されて、噴射プレート6に一列状に配設されたガス噴射孔8を介して基板sに供給される。
【0008】
基板支持部2は、チャンバー1内において回転しつつ、各ガス噴射ユニット4からのガスを順次に供給されて薄膜蒸着が行われる。例えば、工程が始まるタイミングで第1の原料ガスを供給され、パージガス、第2の原料ガス、パージガスをこの順に供給されることにより薄膜蒸着が行われる。
【0009】
しかしながら、上記の構成を有するガス噴射装置3が採用された基板処理装置9では、薄膜の蒸着均一度が一定に保証できないという不都合がある。すなわち、基板sの全領域に亘って薄膜が一様に蒸着されるためには、基板sの全領域に亘ってガスが均一に行き渡る必要があるが、上記の構成を有するガス噴射装置3を用いると、基板sの全領域のうち、基板支持部2の中心側に置かれた個所には多量のガスが供給されるのに対し、基板支持部2の周縁側に置かれた個所には相対的に少量のガスが供給されてしまうという不都合がある。
【0010】
ガスが基板sの全領域に亘って均一に行き渡るためには、ガス注入孔7を介して流入したガスがガス噴射プレート6とリードフレート5との間の空間cに一様に拡散された後にガス噴射孔8を介して排出される必要があるが、図2に矢印にて示すように、ガス注入孔7を介して注入されたガスは空間cの全体に拡散できず、基板支持部2の中心側に配設されたガス噴射孔8を介して偏って排出される。
【0011】
図2に示す基板処理装置9は、ポンピング流路Pが周縁部に配設される、いわゆるサイドポンピング方式を採用しているため、ガス注入孔7はガス噴射装置3の中央側に配設されざるを得ない状況下で、チャンバー1の内部とガス噴射装置3の内側との間の圧力差に起因してガスがガス噴射装置3の内部において十分に拡散されることができない。
【0012】
加えて、基板支持部2が回転しつつ工程が行われるため、基板支持部2の外側部分は、中心側部分に比べて、同じ時間内に長距離を回転するが、たとえガスが全領域に亘って一様に供給されるとしても、同じ時間内にガスに露出される量が減少せざるを得ない。
【0013】
この理由から、1枚の基板s内において、全体の基板支持部2の周縁側に配設された部分と、中心側に配設された部分とが異なる厚さに蒸着されてしまうという問題点が回避できなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、基板の全領域に亘ってガスが均一に行き渡るように構造が改善されたガス噴射装置及びこれを用いた基板処理装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係るガス噴射装置は、チャンバーの内部に回転自在に設けられて複数枚の基板を支持する基板支持部の上部に設けられ、前記基板支持部の中心点を基準として円周方向に沿って配設されて前記基板に工程ガスを吹き付ける複数のガス噴射ユニットを備えるものであって、前記複数のガス噴射ユニットのうちの少なくとも一つのガス噴射ユニットは、工程ガスが導入される導入口が形成されているトッププレートと、前記トッププレートとの間に前記基板支持部の半径方向に沿ってガス拡散空間を形成するように、前記トッププレートの下部に配設され、前記導入口を通じて流入して前記ガス拡散空間に拡散された工程ガスが前記基板に向かって吹き付けられるように、前記ガス拡散空間の下側に多数のガス噴射孔が形成されている噴射プレートと、前記ガス拡散空間を前記基板支持部の半径方向に沿って互いに隔離された複数の空間に仕切るように、前記トッププレートと噴射プレートとの間に設けられる隔壁と、を備え、前記隔離された空間ごとに前記工程ガスが独立して流入するように、前記導入口は複数設けられて前記隔離された空間ごとに配設されるところに特徴がある。
【0016】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る基板処理装置は、基板に対する所定の処理を行うように内部に空間が形成されるチャンバーと、前記チャンバーの内部に回転自在に設けられ、前記複数枚の基板が載置される基板支持部と、前記基板支持部の上部に設けられて前記基板に向かってガスを吹き付ける上記のガス噴射装置と、を備えるところに特徴がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるガス噴射装置とこれを採用した基板処理装置は、ガス噴射ユニットの内部のガス拡散空間を基板支持部の半径方向に沿って仕切って互いに隔離させ、各隔離された空間に工程ガスを独立して供給することにより、基板の全領域に亘ってガスを一様に行き渡らせて、基板上の薄膜蒸着の均一度が高められるというメリットがある。
【0018】
また、本発明によれば、基板支持部が回転することを考慮し、ガス拡散空間の隔離された空間のうち、基板支持部の中心側に配設された空間よりも、外側に配設された空間を通じて相対的に多量の工程ガスを吹き付けることにより、実質的には基板の全領域に亘ってガスが均一に行き渡るというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、従来のガス噴射装置の概略的な分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すガス噴射装置が採用された基板処理装置の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の好適な実施の形態によるガス噴射装置の概略的な一部分解斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すガス噴射装置が採用された基板処理装置の概略断面図である。
【図5】図5は、図3に示すガス噴射装置を下方から眺めた平面図である。
【図6】図6は、ガス噴射ユニットの他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によれば、前記隔離された空間ごとに配設された導入口に連結されているガス流入ラインには独立して流量調節装置が設けられて、各空間ごとに流入するガスの流量が独立して制御されることが好ましい。
【0021】
また、本発明によれば、前記ガス噴射ユニットは、原料ガスを吹き付ける複数の原料ガス噴射ユニットと、前記原料ガスをパージするためのパージガスを吹き付ける複数のパージガス噴射ユニットと、を備えることが好ましく、前記原料ガス噴射ユニットとパージガス噴射ユニットのうち、互いに隣設されて互いに同じガスを吹き付ける2以上の噴射ユニット同士でグループを作ってガス噴射ブロックを形成することがさらに好ましい。
【0022】
さらに、本発明によれば、前記複数のガス噴射ユニット同士の間には、ガスを選択的に吹き付けるか、あるいは、吹き付けないバッファ噴射ユニットが介装されることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明によれば、前記複数の原料ガス噴射ユニットと複数のパージガス噴射ユニットのうちの少なくとも2つの噴射ユニットは、異なる大きさの面積に形成されることが好ましい。
【0024】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施の形態によるガス噴射装置及び該ガス噴射装置が採用された基板処理装置をさらに詳しく説明する。
【0025】
図3は、本発明の好適な実施の形態によるガス噴射装置の概略的な一部分解斜視図であり、図4は、図3に示すガス噴射装置が採用された基板処理装置の概略断面図であり、図5は、図3に示すガス噴射装置を下方から眺めた平面図である。
【0026】
図3から図5を参照すると、本発明の好適な実施の形態によるガス噴射装置が採用された基板処理装置100は、チャンバー10と、基板支持部20及びガス噴射装置90を備える。
【0027】
チャンバー10は、例えば、蒸着工程など基板に対する所定の処理が行われる空間を提供するものであり、後述するガス噴射装置90がチャンバー10の上部に取り付けられることにより、チャンバー10の内側には空間部11が形成される。チャンバー10の内側の空間部11は、一般に、真空雰囲気にする必要があるため、ガスの排気のための排気システムが設けられる。すなわち、チャンバー10の下部には環状の溝部14が形成され、溝部14の上部にはバッフル12が冠着されることにより、溝部14及びバッフル12によって囲まれた排気路が形成される。この排気路の両側には、それぞれ外部のポンプ(図示せず)と連結されるポンピング流路pが設けられる。バッフル12には吸入口13が形成されており、空間部11のガスは吸入口13を介して排気流路に流入した後、ポンピング流路pを介して排気される。
【0028】
また、チャンバー10の底面には、後述する基板支持部20の回転軸22が嵌入する貫通孔15が形成されている。基板sは、チャンバー10の側壁に設けられたゲート弁(図示せず)を介してチャンバー10の内外部に流入出する。
【0029】
基板支持部20は、基板sを支持するためのものであり、支持プレート21と、回転軸22と、を備える。支持プレート21は、円板状に平らに形成されてチャンバー10内に平行に設けられ、回転軸22は垂直に配設されて支持プレート21の下部に設けられる。回転軸22は、チャンバー10の貫通孔15を介して外部に伸びてモーター(図示せず)などの駆動手段と連結されて、支持プレート21を回転・昇降させる。回転軸22と貫通孔13との間を介してチャンバー10の内部の真空が解放されることを防ぐために、回転軸22は、蛇腹(図示せず)によって取り囲まれている。
【0030】
支持プレート21の上部には、円周方向に沿って複数の基板載置部23が形成される。この基板載置部23は凹んでいるため、支持プレート21が回転しても基板sが離脱せず、支持プレート21の上部に基板sをしっかりと支持する役割を果たす。なお、支持プレート21の下側にはヒーター(図示せず)が埋設されて、基板sを所定の工程温度まで加熱する。
【0031】
ガス噴射装置90は、基板支持部20に載置された複数枚の基板sに原料ガス、反応ガス、パージガスなどの工程ガスを吹き付けるためのものであり、チャンバー10の上部に取り付けられる。
【0032】
この実施の形態におけるガス噴射装置90は、複数のガス噴射ユニットm、r1〜r3、p1〜p4を備えてなり、これらのガス噴射ユニットm、r1〜r3、p1〜p4は扇子状を呈して基板支持部20の中心点を基準として円周方向に沿って配設される。各ガス噴射ユニットm、r1〜r3、p1〜p4は、トッププレート50及び噴射プレート70を備える。トッププレート50は、所定の厚さの四角板状に広く形成され、各ガス噴射ユニットm、r1〜r3、p1〜p4の噴射プレート70がトッププレート50の下部に取り付けられる。
【0033】
すなわち、各ガス噴射ユニットm、r1〜r3、p1〜p4は、トッププレート50の周り方向に沿ってトッププレート50の一部分ずつを占めた状態でトッププレート50を共有する。トッププレート50の中央部には、ガス噴射ユニットm、r1〜r3、p1〜p4に見合う数の複数の導入口51が形成される。導入口51は、トッププレート50の中心点を基準として円周方向に沿って配設され、各導入口51には外部のガス供給源(図示せず)が連結される。
【0034】
但し、トッププレートは、上述のように一体に形成されて、各ガス噴射ユニットの噴射プレートがトッププレートの一部分ずつを占めて取り付けられてもよいが、ガス噴射ユニットごとに別設されてもよい。すなわち、図示はしないが、他の実施の形態においては、チャンバーの上部にフレームが取り付けられ、このフレームに円周方向に沿って複数のトッププレートが取り付けられ、噴射プレートは各トッププレートの下部に取り付けられてもよい。本発明の特許請求の範囲におけるトッププレートは、このように全てのガス噴射ユニットに対して一体に形成される形態及び複数設けられる形態をいずれも含む概念として用いられる。この実施の形態においては、トッププレートが一体に形成されている場合を例に取って説明する。
【0035】
図3に示すように、噴射プレート70の上部には溝部が凹設される。この溝部は、基板支持部20の半径方向に沿って長く配設される。噴射プレート70がトッププレート50に押し付けられると、トッププレート50の下面と噴射プレート70の溝部によって囲まれたガス拡散空間が基板支持部20の半径方向に沿って形成される。なお、各噴射プレート70には前記溝部の下側に一列状に多数のガス噴射孔72が貫設され、このガス噴射孔72は、ガス噴射ユニットの内側とチャンバー10の空間部11とを互いに連通させる。
【0036】
一方、本発明においては、上記のガス拡散空間を基板支持部20の半径方向に沿って互いに隔離された複数の空間71a、71b、71cに仕切るように、隔壁79が設けられる。この隔壁79が設けられることにより、複数の空間71a、71b、71cは互いに連通されることなく隔離される。
【0037】
また、トッププレート50には、各ガス噴射ユニットに見合う数の導入口51が形成されると説明したが、より正確には、各ガス噴射ユニットの各隔離された空間71a、71b、71cに見合う数の導入口51が形成される。すなわち、図5を参照すると、参照番号mのガス噴射ユニット及び参照番号r1、r2、r3のガス噴射ユニットの内部には、それぞれ3つの隔離された空間が配設されるとしたとき、トッププレート50には、各噴射ユニットm、r1、r2、r3ごとに3本ずつの導入口51a、51b、51cが形成される。
【0038】
但し、全てのガス噴射ユニットの内部が隔離された複数の空間に仕切られていなくてもよいが、薄膜蒸着の原料となるソースガス及びこのソースガスと反応する反応ガスが吹き付けられるガス噴射ユニットの場合、複数の空間に仕切られることが好ましい。
【0039】
すなわち、薄膜蒸着工程においてトッププレート50の導入口51を介して流入した工程ガスは、ガス拡散空間に拡散された後、噴射プレート70のガス噴射孔72を介して基板sに吹き付けられるが、薄膜蒸着の均一度を高めるためには、基板sの全領域に亘って工程ガス、特に、ソースガスと反応ガスとが一様に吹き付けられることが好ましい。しかしながら、従来の技術の欄で問題点として述べたように、既存の装置には、トッププレートと噴射プレートとの間にガス拡散空間が一体に形成されているため、導入口を介して流入した工程ガスは、ガス拡散空間に十分に拡散できなかったままで基板支持部の中心側に形成されているガス噴射孔を介して偏って吹き付けられるため、基板支持部の周縁側に配設されているガス噴射孔を介しては相対的に少量のガスが吹き付けられざるを得ず、これに起因して、基板sの全領域に亘ってガスが一様に供給されないという問題点があった。
【0040】
本発明においては、このような問題点を解決するために、ガス拡散空間を隔離された複数の空間71a、71b、71cに仕切り、各独立した空間71a、71b、71cごとに導入口51a、51b、51cを形成して工程ガスを供給することにより、基板支持部20の周縁側に形成されているガス噴射孔72を介しても十分な量の工程ガスが供給されるようにしている。
【0041】
また、それぞれの隔離された空間71a、71b、71cの導入口51a、51b、51cと連結されたガス流入ラインlには、流量調節装置MFC−1〜MFC−3が設けられる。各流量調節装置によって各隔離された空間71a、71b、71cに流入する工程ガスの量が独立して制御される。
【0042】
特に、この実施の形態においては、基板支持部20の中央側に配設された空間71aに比べて、周縁側に配設された空間71cに相対的に多量の工程ガスを供給する。基板支持部20が回転することを考慮したとき、基板支持部20の中心側と周縁側に配設された空間に同量のガスを供給すれば、実質的には基板sの全領域のうち、基板支持部20の周縁側に配設された部分には相対的に少量のガスを供給するという結果を招いてしまうためである。すなわち、基板支持部20が回転し続けるため、基板の全領域に亘って同じ時間内に同量のガスを供給するとしても、基板sの全領域のうち、基板支持部20の周縁側に配設された部分は、中央側に配設された部分よりも同じ時間内での移動距離(回転量)が長いため、基板支持部20の周縁側に配設された部分のガスとの接触量は相対的に減少せざるを得ないためである。このため、基板支持部20の周縁側に配設された空間71cに相対的に多量の工程ガスを供給することにより、実質的には基板sの全領域に亘ってガスが均等に供給される。
【0043】
上述したように、ガス噴射ユニットの内部のガス拡散空間を基板支持部20の半径方向に沿って隔離された複数の空間に仕切った後、各空間ごとに工程ガスを供給することにより、従来の装置とは異なり、基板の全領域に亘ってガスが一様に供給されて薄膜蒸着の均一度が高められる。
【0044】
図5を参照すると、上記の構成を有するガス噴射ユニットは、ソースガスを吹き付けるソースガス噴射ユニットmと、反応ガスを吹き付ける反応ガス噴射ユニットr1、r2、r3及びパージガスを吹き付けるパージガス噴射ユニットp1〜p4に分けられる。但し、ガス噴射ユニットの実質的な構成は同様であるため、このような区分は、各ガス噴射ユニットに導入されるガスによって決定される。すなわち、行いたい工程によって各ガス噴射ユニットへの導入ガスを変えることにより、複数のガス噴射ユニットを種々に組み合わせて変えることができる。
【0045】
例えば、この実施の形態においては、参照番号mのソースガス噴射ユニットは、ジルコニウム(Zr)などの金属をはじめとするガスを基板支持部20の上に供給し、参照番号r1〜r3の反応ガス噴射ユニットは、ソースガスと反応する、例えば、オゾン(O3)などの反応ガスを基板支持部20の上に供給する。説明の都合上、ソースガスと反応ガスを分離して説明したが、本発明の特許請求の範囲に記載の原料ガスは、ソースガスと反応ガスをいずれも含む意味として用いられる。
【0046】
ソースガス噴射ユニットmと反応ガス噴射ユニットr1〜r3との間には、パージガス噴射ユニットp1〜p2、p3〜p4が配設される。このパージガス噴射ユニットは、窒素またはアルゴンなどの非反応性ガスを吹き付けて基板の上に化学的に吸着されていないソースガスと反応ガスを物理的に除去する。
【0047】
また、この実施の形態においては、ソースガス噴射ユニットmと反応ガス噴射ユニットr1〜r3との間においてガスが混合されないように、ガス噴射ユニットの中央には中央パージガス噴射ユニット80がさらに配設される。この中央パージガス噴射ユニット80にはトッププレート50の中央部にガス流入口52が形成され、ガス流入口52の下部には多数の噴射孔81が形成されて、パージガスを基板支持部20の中央側に吹き付ける。パージガスが吹き付けられつつエアカーテンを形成することにより、ソースガスと反応ガスは基板支持部20の中央において互いに混合されることが防がれる。
【0048】
一方、この実施の形態においては、互いに同じガスを吹き付けるガス噴射ユニットは互いに隣設されてグループを作ってガス噴射ブロックを形成する。図5を参照すると、3つの反応ガス噴射ユニットr1、r2、r3は互いに隣設されて反応ガス噴射ブロックRBを形成し、反応ガス噴射ブロックRBの両側にはそれぞれ2つ(p1〜p2、p3〜p4)のパージガス噴射ユニット同士でグループを作ってパージガス噴射ブロックPBを形成する。
【0049】
また、図示はしないが、実施の形態によっては、ガス噴射ユニットの面積が互いに異なっていてもよい。例えば、この実施の形態においては2つのパージガス噴射ユニット同士でパージガス噴射ブロックPBを形成しており、他の実施の形態においては、パージガス噴射ブロックPBに見合う面積のパージガス噴射ユニットが配設されていてもよい。
【0050】
さらに、本発明の一実施の形態においては、原料ガス噴射ユニットとパージガス噴射ユニットとの間にバッファ噴射ユニットdが介装される。バッファ噴射ユニットdは、原料ガス噴射ユニットとパージガス噴射ユニットとを互いに離間させるためのものであり、バッファ噴射ユニットdには別途の工程ガスが導入されない。但し、バッファ噴射ユニットdの構造は他のガス噴射ユニットのそれと同様であるため、必要に応じて選択的に工程ガスを流入させることはできる。
【0051】
この実施の形態においては、ソースガス噴射ユニットmとパージガス噴射ユニットp1、p3との間にそれぞれ2つのバッファ噴射ユニットdが介装されて、ソースガスとパージガスが互いに移り越えることを防ぐ。
【0052】
上記の構成を有する実施の形態においては、各ガス噴射ユニットからそれぞれの工程ガスが吹き付けられる間に、基板支持部20が回転すれば、基板支持部20に載置されている複数枚の基板sはソースガス、パージガス、反応ガス及びパージガスにこの順に露出され、基板sの上面にはソースガスと反応ガスがリガンド相互間の置換反応によって層を形成しつつ薄膜が蒸着される。この実施の形態においては、各ガス噴射ユニットの内部のガス拡散空間を基板支持部20の半径方向に沿って互いに隔離された複数の空間に仕切り、それぞれの隔離された空間に独立して工程ガスを導入することにより、各ガス噴射ユニットから基板sの全領域に亘ってガスが一様に供給されるので、基板sの全領域に亘って薄膜が均一に蒸着される。
【0053】
以上、ガス噴射ユニットの内部に隔離された空間が3つであると説明・図示したが、隔離された空間が必ず3つである必要はなく、図6の(a)に示すように4つの独立した空間73に仕切ってもよく、図6の(b)に示すように2つの独立した空間74に仕切ってもよいなど種々の形態が存在し得る。
【0054】
本発明は添付図面に示す一実施の形態に基づいて説明されたが、これは単なる例示的なものに過ぎず、当該の技術分野において通常の知識を持った者であれば、これより種々の変形及び均等な他の実施の形態が可能であるということが理解できるであろう。よって、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲によってのみ定められるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーの内部に回転自在に設けられて複数の基板を支持する基板支持部の上部に設けられ、前記基板支持部の中心点を基準として円周方向に沿って配設されて前記基板に工程ガスを吹き付ける複数のガス噴射ユニットを備えるガス噴射装置において、
前記複数のガス噴射ユニットは、
工程ガスが導入される導入口が形成されているトッププレートと、
前記トッププレートとの間に前記基板支持部の半径方向に沿ってガス拡散空間を形成するように、前記トッププレートの下部に配設され、前記導入口を介して流入して前記ガス拡散空間に拡散された工程ガスが前記基板に向かって吹き付けられるように、前記ガス拡散空間の下側に多数のガス噴射孔が形成されている噴射プレートと、を備え、
前記複数のガス噴射ユニットのうちの少なくとも一つのガス噴射ユニットは、前記ガス拡散空間を、前記基板支持部の半径方向に沿って互いに隔離された複数の空間に仕切るように、前記トッププレートと噴射プレートとの間に設けられる隔壁を備え、前記隔離された空間ごとに前記工程ガスが独立して流入するように、前記導入口は複数設けられて前記隔離された空間ごとに配設されることを特徴とするガス噴射装置。
【請求項2】
前記隔離された空間ごとに配設された導入口に接続されているガス流入ラインには、独立して流量調節装置が設けられて、各空間ごとに流入するガスの流量が独立して制御されることを特徴とする請求項1に記載のガス噴射装置。
【請求項3】
前記ガス拡散空間から隔離されている空間のうち、前記基板支持部の中心側に配設された空間よりは、周縁側に配設された空間の方に相対的に多量の工程ガスが流入することを特徴とする請求項1に記載のガス噴射装置。
【請求項4】
前記ガス噴射ユニットは、原料ガスを吹き付ける複数の原料ガス噴射ユニットと、前記原料ガスをパージするためのパージガスを吹き付ける複数のパージガス噴射ユニットと、を備えることを特徴とする請求項1に記載のガス噴射装置。
【請求項5】
前記原料ガス噴射ユニットとパージガス噴射ユニットのうち、互いに隣設されて同じガスを吹き付ける2以上の噴射ユニット同士でグループを作ってガス噴射ブロックを形成することを特徴とする請求項4に記載のガス噴射装置。
【請求項6】
前記原料ガス噴射ユニットは、ソースガスを吹き付ける噴射ユニットと、前記ソースガスと反応する反応ガスを吹き付ける噴射ユニットと、を備え、ソースガスを吹き付ける複数の噴射ユニットまたは反応ガスを吹き付ける複数の噴射ユニット同士でグループを作ってガス噴射ブロックを形成することを特徴とする請求項5に記載のガス噴射装置。
【請求項7】
前記複数の原料ガス噴射ユニットと複数のパージガス噴射ユニットのうちの少なくとも一つの噴射ユニットは、異なる大きさの面積に形成されることを特徴とする請求項4に記載のガス噴射装置。
【請求項8】
前記複数のガス噴射ユニット同士の間には、ガスを選択的に吹き付けるか、あるいは、吹き付けないバッファ噴射ユニットが介装されることを特徴とする請求項1に記載のガス噴射装置。
【請求項9】
前記トッププレートの中央に設けられてパージガスを吹き付ける中央パージガス噴射ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のガス噴射装置。
【請求項10】
前記トッププレートは一体に形成され、前記それぞれのガス噴射ユニットの噴射プレートは、前記基板支持部の中心を基準として円周方向に沿って配設されて前記トッププレートの一部を占めて前記トッププレートの下部にそれぞれ取り付けられる場合、あるいは、前記トッププレートが各ガス噴射ユニットごとに独立して複数設けられ、それぞれのトッププレートは前記基板支持部の中心を基準として円周方向に沿って配設されて前記チャンバーの上側に取り付けられるフレームにそれぞれ固定される場合から選ばれるいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載のガス噴射装置。
【請求項11】
基板に対する所定の処理を行うように内部に空間が形成されるチャンバーと、
前記チャンバーの内部に回転自在に設けられ、前記複数の基板が載置される基板支持部と、
前記基板支持部の上部に設けられて前記基板に向かってガスを吹き付ける請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のガス噴射装置と、を備えることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【公表番号】特表2013−503971(P2013−503971A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527814(P2012−527814)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005630
【国際公開番号】WO2011/027987
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512051952)ウォニック アイピーエス カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】