説明

ガス検出器の製造方法

【課題】ガス検出素子のリード線と基台のステーとの接続部に絶縁皮膜を形成すること
【解決手段】リード線5を介してガス感応部42に通電してジュール熱により昇温させてガスを検出するガス検出素子4と、リード線5を介してガス感応部42に通電するとともにガス検出素子4を固定する導電性のステー3を備えた基台2とからなるガス検出器の製造方法において、ガス検出器1を高分子蒸気を含有する環境に収容して高分子の薄膜10を形成する工程と、リード線5を介してガス感応部42に通電してガス感応部42を高分子の薄膜が気化、または分解する程度に加熱する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス感応部を昇温させてガスを検出するガス検出器の製造方法、より詳細には接続部の防水加工に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス検出器は、外力による破損などを防止するため通常、接続用のステーが設けられた容器に収容するとともに、ガス検出素子のリード線をステーに溶着して構成されている。
リード線とステーとは通常異なる金属材料により構成されているため、結露などによる水分が接続部に付着すると電食が生じて故障を引き起こす原因になる。
このため、接続部に塗料等を塗布して絶縁皮膜を形成することも考えられるが、容器が微小であるため、ガス検出素子を避けて接続部だけに塗布することは極めて困難な作業を伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところはガス検出素子のリード線と基台のステーとの接続部に絶縁皮膜を形成することができるガス検出器の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を達成するための本発明においては、リード線を介してガス感応部に通電してジュール熱により昇温させてガスを検出するガス検出素子と、前記リード線を介して前記ガス感応部に通電するとともにガス検出素子を固定する導電性のステーを備えた基台とからなるガス検出器の製造方法において、前記ガス検出器を高分子蒸気を含有する環境に収容して高分子の薄膜を形成する工程と、前記リード線を介して前記ガス感応部に通電して前記ガス感応部を前記高分子の薄膜が気化、または分解する程度に加熱する工程とを備える。
【発明の効果】
【0005】
リード線とステーとの接続部を含む領域には蒸着により緻密な高分子の薄い膜が形成されて外気と確実に遮断される一方、ジュール熱によりガス感応部の高分子の膜だけが選択的に除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1(A)は、本発明が対象とするガス検出器1で、絶縁性の基台2の底部を貫通するように形成された複数の導電性ステー3、3にガス感応部に通電してジュール熱により昇温させてガスを検出するガス検出素子4のリード線5、5が溶着や半田付けにより伝導関係を形成するように固定してされている。
【0007】
このようなガス検出素子4としては、通電により発熱する白金抵抗線により構成された熱伝導型ガス検出素子や、接触燃焼式ガス検出素子が挙げられる。
【0008】
なお、接触燃焼式ガス検出素子は、図1(B)に示したように耐熱性、耐食性を有する抵抗線をコイル状に整形したヒータ41の外周に、所定組成の酸化触媒粉末と絶縁粉末とを水等の液で泥状に混練した泥状物を滴下して球状に付着させ、自然乾燥により固化させた後に焼結してガス感応部42を作り付けて所定温度で焼成して構成されている。
【0009】
ガス感応部42を構成する泥状物は、例えば酸化触媒粉末、及び絶縁粉末は、粉砕等の行程を経て微粉末状に加工されたPt、Pd、PtO、PdOから選ばれた1種、または複数種が用いられ、酸化触媒粉末が30wt%以上、好ましくは40wt%以上となるようにアルミナ、酸化珪素などの耐熱性絶縁粉末に混練して調製されている。
【0010】
このガス検出器1を高分子蒸着装置の作業室に収容して高分子、このましくは分子量の低い単純な高分子材料、例えばポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンを蒸気として飛散させると、図2(A)に示したようにガス検出器4を構成している部材の露出面に高分子の薄い膜10が均質、かつ強固に形成される。
【0011】
もとより蒸着により形成された高分子の薄い膜10は、浸漬や塗布により形成された皮膜に比較してステーホールやブローホールなどの欠陥が極めて少ないため、ステー3、3とリード線5、5との接続部6は高分子の薄い膜10により外気から完全に遮断された状態となっている。
【0012】
高分子の膜厚が所定値に到達した段階でガス検出器1を取り出し、ステー3、3を介してガス検出素子1に給電すると、ガス検出素子1を構成するヒータ41が発熱する。このとき、ガス感応部42の温度が高分子を気化、または分解し、かつガス感応部42を損傷しない程度の温度まで加熱する。
【0013】
これによりガス検出素子1、より詳細にはヒータ及びこれの表面のガス感応部42等の発熱部の高分子の薄い膜が気化して霧散する一方、ガス検出素子のリード線5、5とステー3、3との接続部6等を含む他の領域の温度は、高分子の軟化温度よりも低いため、高分子の膜10は残存する。
【0014】
これにより、熱伝導型ガス検出素子を構成するヒータ等のガス感応部42は、高分子を蒸着する以前と同等の状態となる一方、ガス検出素子のリード線5とステー3との接続部6に形成されている高分子の薄い膜10は残存する。
【0015】
なお、上述の実施例においては、ヒータ41の通電によりガス感応部42の高分子を気化させているが、通電による発熱だけでなくガス感応部42にレーザ光を照射して加熱するようにしてもよい。
【0016】
また、上述の実施例ではガス検出器を対象として説明したが、周囲の温度を検出するために、ガス検出器とともにブリッジに組み込まれるヒータで構成される補償素子に対しても同様の処理を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図(A)、(B)は、それぞれ本発明の製造方法の対象となるガス検出器、及びガス検出素子の一実施例を示す図である
【図2】図(A)、(B)は、それぞれ本発明の製造方法の過程を、ガス感応部及びリード線とステーとの領域を拡大して模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ガス検出器1 2 絶縁性の基台 3 導電性ステー 4 ガス検出素子 5 リード線 41 ヒータ 42 ガス感応部 10 高分子の薄い膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード線を介してガス感応部に通電してジュール熱により昇温させてガスを検出するガス検出素子と、前記リード線を介して前記ガス感応部に通電するとともにガス検出素子を固定する導電性のステーを備えた基台とからなるガス検出器の製造方法において、
前記ガス検出器を高分子蒸気を含有する環境に収容して高分子の薄膜を形成する工程と、前記リード線を介して前記ガス感応部に通電して前記ガス感応部を前記高分子の薄膜が気化、または分解する程度に加熱する工程とからなるガス検出器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−168535(P2009−168535A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5129(P2008−5129)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】