ガラス基板の製造方法及び電子部品の製造方法
【課題】ガラスからなるベース基板2に複数の貫通電極8、9を高位置精度で形成することができるパッケージ1の製造方法を提供する。
【解決手段】板状ガラス30に複数の貫通孔13aを形成し、2枚の基台1a、1bに複数の貫通孔13bを形成する。次に、2枚の基台1a、1bの間に板状ガラス30を挟持し、基台の複数の貫通孔13bと板状ガラス30の複数の貫通孔13aとの位置合わせを行い、導体から成るワイヤーを貫通させて2枚の基台1a、1bの間にワイヤー2を張る。次に、板状ガラス30をその軟化点よりも高い温度に加熱して、基台間のワイヤー2をガラスに埋め込み、ガラスを冷却し、ワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成する。次に、このインゴットをスライスしてガラス基板11を形成し、このガラス板11を研磨し、表面と裏面にワイヤーを露出させて貫通電極10とする研削工程とを備える。
【解決手段】板状ガラス30に複数の貫通孔13aを形成し、2枚の基台1a、1bに複数の貫通孔13bを形成する。次に、2枚の基台1a、1bの間に板状ガラス30を挟持し、基台の複数の貫通孔13bと板状ガラス30の複数の貫通孔13aとの位置合わせを行い、導体から成るワイヤーを貫通させて2枚の基台1a、1bの間にワイヤー2を張る。次に、板状ガラス30をその軟化点よりも高い温度に加熱して、基台間のワイヤー2をガラスに埋め込み、ガラスを冷却し、ワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成する。次に、このインゴットをスライスしてガラス基板11を形成し、このガラス板11を研磨し、表面と裏面にワイヤーを露出させて貫通電極10とする研削工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板に複数の貫通電極を形成するガラス基板の製造方法及びこれを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器の時刻源やタイミング源に水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。圧電振動子には様々なものが知られているが、その一つとして表面実装型の圧電振動子が知られている。この圧電振動子として、圧電振動片が形成された圧電基板をベース基板とリッド基板で上下から挟みこんで接合した3層構造タイプのものが知られている。圧電振動片はベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されている。
【0003】
また、最近では、2層構造タイプの圧電振動子が開発されている。このタイプは、ベース基板とリッド基板を直接接合した2層構造タイプのパッケージからなり、ベース基板とリッド基板の間に構成されるキャビティ内に圧電振動片が収納されている。2層構造タイプの圧電素子は3層構造タイプに比べて薄型化を図ることができるなどの点において優れている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には2層構造タイプの水晶振動子パッケージが記載されている。ベース基板やリッド基板のパッケージ材料としてガラスを使用している。ガラスを使用するので、セラミックスを使用した場合と比べて成形が容易であり、製造コストを下げることができる。また、ガラスは熱伝導率が小さいので断熱性に優れ、内部の圧電振動子を温度変化から保護することができる。
【0005】
特許文献3には、上記と同様の2層構造タイプの水晶振動子パッケージが記載されている。この場合も、ベース基板にガラスを用い、このベース基板に金属材料を用いた貫通電極を形成する方法が記載されている。ガラスに貫通電極を形成する際に、まずガラス板に貫通孔を形成している。図17は、ガラス板131に金属ピン115からなる貫通電極を形成する方法を表している(特許文献3の図3)。図17(a)はガラス板131に貫通孔119を形成する方法を示す。ガラス板131をダイ126の底部に設置する。ダイ126にはヒータ125が設置され、ガラス板131を加熱することができる。ダイ126の上部にはパンチ129からなる穴開け機が設置されている。パンチ129のガラス板131側には孔開けピン128が設置され、また、パンチ129にもヒータ127が設置されている。そして、ガラス板131を所定の温度に加熱した後に、パンチ129を下げて貫通孔119を形成する。
【0006】
図17(b)はガラス板131の貫通孔119に金属ピン115を打ち込む方法を示している。貫通孔119を形成したガラス板131を台135に設置し、ガラスフリット吹き付け機133により貫通孔119にガラスフリット132を吹き付け、金属ピン打ち込み機134により金属ピン115を貫通孔119に打ち込む。
【0007】
図18は、プレス成型工程を表している(特許文献3の図4)。図18(a)に示されるように、金属ピン115を貫通孔119に打ち込んだガラス板131をプレス下型136とプレス上型137の間に設置する。プレス上型137には間仕切り凸条138、ピン頭収納凹部139や凹部形成用凸条141が形成されている。この型を電気炉に投入して、プレス上型137をプレス下型136に押圧しながら温度1000℃以上に加熱する。その結果、図18(b)に示されるように、プレス上型137の表面の凹凸がガラス板131に転写され、分割用溝142や凹部116がガラス板131に形成される。同時にシール性が確保された金属ピン115からなる貫通電極がガラス板131に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【特許文献2】特開2002−121037号公報
【特許文献3】特開2003−209198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ガラス板131を加熱して貫通孔119を形成し、その後ガラス板131を冷却すると、ガラス板131は内部応力により歪み、平坦性が低下した。また、ガラス板131にプレス上型137の表面形状を転写した後に冷却すると、転写時のガラスの流動や、冷却時の熱の不均一性により、金属ピン115が傾く、また、金属ピン115の位置ずれが発生する、或いは内部応力によりガラス板131が複雑に歪んだ。更に、研削して反りを修正しようとすると、研削量が多くなって加工に長時間要する、あるいは所期形状の取り個数が減少した。また、凹部116の底面に露出した金属ピン115が傾斜して貫通電極の位置ずれが発生した。また、凹部116を囲む側壁上面の平坦性が悪いと、この上面に接合する蓋の気密性が確保できなくなり、電子部品の信頼性が低下する、という課題があった。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、貫通電極を高位置精度で設置した平坦性に優れたガラス基板を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるガラス基板の製造方法は、板状ガラスに複数の貫通孔を形成するガラス貫通孔形成工程と、2枚の基台に複数の貫通孔を形成する基台貫通孔形成工程と、前記2枚の基台の間に前記板状ガラスを挟持し、前記基台の複数の貫通孔と前記板状ガラスの複数の貫通孔との位置合わせを行い、前記複数の貫通孔に導体から成るワイヤーを貫通させて前記2枚の基台の間にワイヤーを張るワイヤー張り工程と、前記板状ガラスをその軟化点よりも高い温度に加熱して、前記基台間のワイヤーを前記ガラスに埋め込むワイヤー埋め込み工程と、前記ガラスを冷却し、ワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成するインゴット形成工程と、前記インゴットをスライスしてガラス板を形成する切断工程と、前記ガラス板を研磨し、表面と裏面にワイヤーを露出させて貫通電極とする研磨工程とを備える。
【0012】
また、前記ガラス貫通孔形成工程は、板状ガラスに凹部を形成する凹部形成工程と、当該凹部が形成された表面とは反対側の裏面を研削して前記凹部を裏面側に貫通させる研削工程と、を備えることとした。
【0013】
また、前記ワイヤー埋め込み工程は、前記板状ガラスに圧縮応力を加える工程であることとした。
【0014】
また、前記ワイヤー張り工程は、前記基台に形成した複数の貫通孔が前記板状ガラスに形成した単独の貫通孔に対応し、前記板状ガラスの単独の貫通孔に複数のワイヤーを貫通させて前記2枚の基台の間にワイヤーを張ることとした。
【0015】
また、前記取り出し工程において、前記ガラス基板の歪点よりも50℃高い温度までの冷却速度よりも、歪点よりも50℃高い温度から歪点よりも50℃低い温度までの冷却速度を遅くすることとした。
【0016】
また、前記ワイヤーの熱膨張率は前記ガラスと同程度であることとした。
【0017】
本発明による電子部品の製造方法は、上記ずれかに記載のガラス基板の製造方法に基づいてガラス基板を形成し、前記ガラス基板に電極を形成してベース基板とするベース基板形成工程と、前記ベース基板に電子部品を実装する実装工程と、前記電子部品を実装したベース基板にリッド基板を接合する接合工程を備える。
【0018】
【発明の効果】
【0019】
本発明のガラス基板の製造方法は、板状ガラスに複数の貫通孔を形成するガラス貫通孔形成工程と、2枚の基台に複数の貫通孔を形成する基台貫通孔形成工程と、2枚の基台の間に板状ガラスを挟持し、基台の複数の貫通孔と板状ガラスの複数の貫通孔との位置合わせを行い、複数の貫通孔に導体から成るワイヤーを貫通させて2枚の基台の間にワイヤーを張るワイヤー張り工程と、板状ガラスをその軟化点よりも高い温度に加熱して、基台間のワイヤーをガラスに埋め込むワイヤー埋め込み工程と、ガラスを冷却し、ワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成するインゴット形成工程と、このインゴットをスライスしてガラス板を形成する切断工程と、このガラス板を研磨し、表面と裏面にワイヤーを露出させて貫通電極とする研磨工程と、を備えている。これにより、ガラスの流動によって印加されるワイヤーへの圧力が小さいので、ワイヤーの位置を高精度で制御することができるとともに、ガラスインゴットを冷却後にスライスするので、反りがなく気密性の高い貫通電極付きのガラス基板を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を表す工程図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ガラス貫通孔形成工程を表す。
【図3】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、上下基台間に板状ガラスを挟持し、ワイヤーを通した状態を表す。
【図4】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、装着したワイヤーに張力を付与した状態を表す。
【図5】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤーを張った板状ガラスを容器に収納した状態を表す。
【図6】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、形成したインゴットを切断した状態を表す。
【図7】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ガラス基板の状態を表す。
【図8】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であるあり、ガラス貫通孔形成工程を表す。
【図9】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程を表す。
【図10】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程を表す。
【図11】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程を表す。
【図12】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程を表す。
【図13】本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法を表す工程図である。
【図14】本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法を表し、圧電振動片を実装した状態を示す断面模式図である。
【図15】本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法を表し、完成した圧電振動子の断面模式図である。
【図16】本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法により製造した圧電振動子を組み込んだ発信器の上面図である。
【図17】従来公知のガラス板に貫通孔を形成し、ピンを打ち込む方法を表す。
【図18】従来公知のプレス成型方法によりガラス板を成型する状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る貫通電極付きガラス基板の製造方法を表す工程図であり、本発明の基本的構成を表す。まず、ガラス貫通孔形成工程S1において、板状ガラスに複数の貫通孔を形成する。また、基台貫通孔形成工程S2において、2枚の基台に複数の貫通孔を形成する。ガラスとして、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等を使用することができる。基台の材料として、カーボンやセラミックスの耐熱性材料を使用する。ガラスに対し切削加工、サンドブラスト、或いは型成形等により貫通孔を形成することができる。また、基台に対し切削加工により、またグリーンシートを型成形して貫通孔を形成し、これを焼成して貫通孔とすることができる。
【0022】
次に、ワイヤー張り工程S3において、貫通孔を形成した2枚の基台の間に貫通孔を形成した板状ガラスを挟持し、基台の貫通孔と板状ガラスの貫通孔とを位置合わせして、これらの貫通孔に導体から成るワイヤーを貫通させて2枚の基台間にワイヤーを張る。例えば、ワイヤーの一端に台座を設けこの台座を一方の基台に係止させ、ワイヤーの他端に係止部を設けこの係止部を他方の基台に係止させて、2つの基台を離間させるように応力を加えてワイヤーに張力を付与することができる。ワイヤーはNi−Fe合金、例えば42アロイやコバールを使用することができる。これらの合金を使用すれば熱膨張係数をガラスに近似させることができ、熱変化に対してガラスとワイヤー間の界面劣化を低減させることができる。
【0023】
次に、ワイヤー埋め込み工程S4において、板状ガラスをその軟化点よりも高い温度に加熱して流動させ、基台間のワイヤーをガラスに埋め込む。基台間に複数の板状ガラスを積層した場合は、板状ガラス同士を融着させる。この場合、例えば900℃以上の温度に加熱する。次に、インゴット形成工程S5において、ガラスを冷却してワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成する。次に、切断工程S6において、ワイヤーソー等のスライサーを用いてガラスインゴットを輪切りに切断する。次に、研削工程S7において、スライスしたガラス板の両面を研削及び研磨してガラス板の両面にワイヤーの断面を露出させ、貫通電極付きガラス基板とする。
【0024】
このように、貫通孔を設けた板状ガラスの貫通孔にワイヤーを通した状態でガラスを軟化・流動させたので、ワイヤーをガラスに短時間で埋め込むことができる。また、ガラスインゴットを冷却した後に切断するので反りのない貫通電極付きガラス基板を得ることができる。また、板状ガラスを多層にすれば大きなガラスインゴットを短時間で製造し多数のガラス基板を同時に形成することができる。
【0025】
なお、ガラス貫通孔形成工程S1は、板状ガラスに例えば成形型を用いて凹部を形成する凹部形成工程と、当該凹部が形成された表面とは反対側の裏面を研削して凹部を裏面側に貫通させる研削工程を備えることができる。この方法によれば、多数の貫通孔を同時に形成することができるので、多数個取り用の貫通電極付きガラス基板を製造するのに好適である。
【0026】
また、ワイヤー埋め込み工程S4において、板状ガラスに圧縮応力を加えることにより軟化したガラスの流動を促進することができる。また、ワイヤー埋め込み工程S4を真空中で行うことができる。特に、2枚の基板間に板状ガラスを多数積層した場合に、ガラス内部に気泡が取り込まれることを防止すことができる。
【0027】
また、ワイヤー張り工程S3は、基台に形成した複数の貫通孔を板状ガラスに形成した単独の貫通孔に対応させ、板状ガラスの単独の貫通孔に複数のワイヤーを貫通させて張ることができる。これにより、ガラスに形成する貫通孔の数を減らし、基台と板状ガラス間の位置合わせや、ワイヤーの貫通作業が容易となる。
【0028】
また、インゴット形成工程S5において、ガラス基板の歪点よりも50℃高い温度までの冷却速度よりも、歪点よりも50℃高い温度から歪点よりも50℃低い温度までの冷却速度を遅くすることができる。これにより、ガラス基板に残留する歪みが低減し、ワイヤーとガラス基板との間に生じる間隙やクラックの発生を防止し、気密性の高い貫通電極を形成することができる。また、ワイヤーの熱膨張率をガラスと同程度にすれば、熱膨張差による残留応力を低減し、貫通電極とガラス間に間隙やクラックの発生を防止することができる。以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
(第一実施形態)
図2〜図7は本発明の第一実施形態を説明するための図である。図2は板状ガラスに複数の貫通孔を形成するガラス貫通孔形成工程S1の一例を表す説明図である。図3は上基台1aと下基台1bの間に複数の板状ガラスを積層し、貫通孔にワイヤー2を装着した状態を表し、図4は装着したワイヤー2に張力を付与する様子を表し、いずれもワイヤー張り工程S3を説明するための図である。
【0030】
まず、ガラス貫通孔形成工程S1において、板状ガラスに複数の貫通電極を形成するための貫通孔を穿設する。ガラスとしてソーダ石灰ガラスを使用した。貫通孔はサンドブラストやドリル研削により形成することができる。図2は、成形型を用いて貫通孔を形成する方法を表す。まず、図2(a)に示すように板状ガラス30を準備する(ガラス準備工程)。次に、図2(b)に示すように、下型31に板状ガラス30を設置し、板状ガラス30の上に加圧用の上型32を載置する(凹部形成工程)。下型31の表面は貫通孔形成用の凸部を備えている。この凸部は、離型性を向上させるために側面が傾斜する円錐台の形状とした。板状ガラス30をその軟化点以上の温度に加熱し、同時に上型32を下方に加圧する。ここで、上下型32、31はカーボン材料を使用した。カーボン材料はガラス材料に対する離型性に優れ、かつガラス材料から放出される気泡を吸収し、ガラスに残留する気孔の気孔率を低減させることができるからである。
【0031】
次に、冷却し上下型32、31から板状ガラス30を取り出す(凹部形成工程)。図2(c)に示すように、板状ガラス30には下型31の表面形状が転写されて凹部33が形成される。次に、図2(d)に示すように、凹部33とは反対側の裏面を研削して貫通孔13aを形成する(研削工程)。貫通孔13aの縦断面は円錐台の形状を有している。図2(e)は、多数の貫通孔13aを形成した板状ガラス30からなるガラスウエハーの外観図である。
【0032】
次に、基台貫通孔形成工程S2において、上基台1aと下基台1bに複数の貫通孔を形成する。複数の貫通孔は板状ガラス30に形成した貫通孔13aと同じ位置に形成した。上下基台1a、1bはカーボンを用いた。上下基台1a、1bは板状ガラス30に形成した貫通孔13aと同じ位置に貫通孔を有する。図3に示すように、上基台1aと下基台1bの間に複数の板状ガラス30を積層して挟持し、導体から成るワイヤー2を貫通させ、上基台1aの上面及び下基台1bの下面においてワイヤー2を係止した。
【0033】
そして、図4に示すように、複数のワイヤー2は、上基台1aの上面においてワイヤー2の一端に設置した台座2aにより上基台1aに係止し、下基台1bの裏面においてワイヤー2の他端に設置した係止部14により下基台1bに係止している。そして、複数のワイヤー2を張った上下基台1a、1bの両端又は四方に上張力付加部材3a及び下張力付加部材3bを取り付け、バネ部材4により上下間を引き離すように応力Tを加える。これにより、上下基台1a、1b間の複数のワイヤー2に張力を付与することができる。上張力付加部材3a及び下張力付加部材3bにカーボン材料やセラミックス材料を使用することができる。ワイヤー2はFe−Ni合金、例えば42アロイやコバールを使用することができる。これらの合金を使用すれば熱膨張係数をガラスと近似させることができ、熱変化に対してガラスとワイヤー間の界面の劣化を低減させることができる。ワイヤー2の直径は0.05mm〜1mmであり、ワイヤー2間の最短距離を0.5mm〜2mmとし、上基台1a及び下基台1bの直径を1インチ〜4インチとした。上下基台1a、1bはカーボンを使用した。なお、上下基台1a、1bは四角形であっても多角形であってもよい。
【0034】
図5は、容器6に上下基台1a、1bや上下張力付加部材3a、3bを投入した状態を表したワイヤー埋め込み工程S4の説明図である。ワイヤー2、上下基台1a、1b及び上下張力付加部材3a、3bを耐熱性の容器6に収納する。次に、容器6ごとガラスの軟化点以上、例えば900℃以上に加熱してガラスを軟化させ、流動させて複数の板状ガラス30同志やワイヤー2とガラスとを溶着する。
【0035】
容器6内に更にガラス5を投入して上下張力付加部材3a、3bや上下基台1a、1bの周囲をガラス5で満たし、蓋7に圧力Pを加えてガラス5の流動を促進させることができる。また、容器6内にガラス5を投入することに代えて、容器6内を真空に引いて、板状ガラス30間や板状ガラス30に形成した貫通孔13aに残留する空気がガラス内に取り込まれることを防止することができる。なお、図5において、耐熱性の容器6を使用することに代えて、上下基台により耐熱性の容器及びその蓋を構成し、上下基台間に板状ガラス30を挟持し複数のワイヤーを張って熱処理を施すようにしてもよい。これにより、ガラスや容器の消費量を削減することができる。
【0036】
図6はインゴット形成工程S5及び切断工程S6を説明するための図である。容器6及びガラス5を冷却し、容器6から上下張力付加部材3a、3b及び上下基台1a、1bを取り出し、上下張力付加部材3a、3bを除去してガラスインゴットを得る。ダイシングソーやワイヤーソーを用いてガラスインゴット8を輪切りにし、ガラス板9を得る。ガラスインゴット8を冷却した後に切断するので切断後のガラス板9は反りが小さい。次に研削工程S7においてガラス板9の両面を研削及び研磨して貫通電極10が埋め込まれたガラス基板11を得る。貫通電極10の表面とガラス5の表面を面一にした平坦性の良好なガラス基板11を形成することができる。
【0037】
なお、インゴット形成工程S5において、ガラス基板の歪点よりも50℃高い温度までの冷却速度よりも、歪点よりも50℃高い温度から歪点よりも50℃低い温度までの冷却速度を遅くすることができる。これにより、ガラス基板に残留する歪みが低減し、ワイヤー2とガラス板9との間に生じる間隙やクラックの発生を防止し、気密性の高い貫通電極を形成することができる。
【0038】
図7(a)はガラス基板11の縦断面模式図であり、(b)はガラス基板11の上面模式図である。貫通電極10とガラス5とは融着しているので密閉性が優れている。ガラス基板11の表面の反りが少ないので短時間で研削及び研磨することができ、更にガラスの研削量も少ない。図7(b)に示すように、2個の貫通電極10を有し切断ライン12により区画される単位セルを多数同時に形成する。
【0039】
なお、上記第一実施形態においては、上下基台1a、1bに形成した貫通孔13bと板状ガラス30に形成した貫通孔13aとを1対1に対応させてワイヤー2を通したが、本発明はこれに限定されない。図8は、上下基台1a、1bの間に複数の板状ガラス30を積層挟持し、各貫通孔13にワイヤー2を通し、上下基台1a、1bにワイヤー2を係止した状態を表している。各板状ガラス30に形成した1つの貫通孔13aが上基台1a及び下基台1bのそれぞれに形成した2つの貫通孔13bが対応する。従って、上下基台1a、1bに形成した各貫通孔13bにワイヤー2を通すことにより、各板状ガラス30に形成した1つの貫通孔13aに2本のワイヤー2が通っている。この状態で板状ガラス30を軟化させてガラスを流動させることにより、気密性の高い貫通電極10を形成することができる。なお、ワイヤー2の一端に貫通孔13bの径よりも大きな径の台座2aを設け、他端に貫通孔13bの径よりも大きな径の係止部14を設けてワイヤー2に張力を付与することが可能なように構成した。また、板状ガラス30の貫通孔13aは更に多数のワイヤー2を通すように拡大させることができる。
【0040】
(第二実施形態)
図9〜図12は、本発明の第二実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程S3を具体的に表している。まず、基台貫通孔形成工程S2において、平板状の上基台1aと凹形状の下基台1bに貫通孔13bを形成した。基台貫通孔形成工程S2及びワイヤー張り工程S3以外の工程は第一実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0041】
図9は、多数の貫通孔13bを形成した平板状の上基台1aと凹形状の下基台1bの間に、多数の貫通孔13aを形成した複数の板状ガラス30を積層した状態を表す。下基台1bの円筒上面には円筒の形状が同じ円筒体34を設置して板状ガラス30及び上基台1aのガイドとする。円筒体34は上基台1aよりも十分高くなるように設置する。上下基台1a、1bに形成した貫通孔13bと板状ガラス30に形成した貫通孔13aの位置合わせを行って固定する。上下基台1a、1b及び円筒体34としてカーボン材料やセラミックス材料を使用することができる。貫通孔13bはドリル研削等を用いて穿設することができる。また、予めグリーンシートに貫通孔を形成し、これを焼結して貫通孔付き基台とすることができる。なお、上下基台1a、1bを円盤又は円筒状としているがこれに限定されず、矩形状としてもよい。
【0042】
図10は、上下基台1a、1bの間に複数の板状ガラス30を積層挟持し、ワイヤー2を装着するワイヤー装着工程を表す。まず、ワイヤー2よりも大きな直径の台座2aを一端に設け、他端を針状に尖らせたワイヤー2を準備する。台座2aは上下基台1a、1bに設けた貫通孔13の直径よりも大きく、ワイヤー2は貫通孔13の直径よりわずかに小さく形成する。次に、上記台座2aを設けた多数のワイヤー2を先端が尖った方向を下向きにして円筒体34内の上基台1a上に垂直に投入する。そして、下基台1aを図示しない振動発生機に載置して上下左右に振動を与える。これにより、上基台1aの多数の貫通孔13b及びこれらに位置合わせされた板状ガラス30の多数の貫通孔13aにワイヤー2を短時間で挿着することができる。
【0043】
図11は、下基台1bの下面側に突出したワイヤー2の先端に係止部14を形成した係止部形成工程を表す。台座2aの直径は貫通孔13よりも大きいので、落下ストッパーとして機能する。そして、下基台1bの下面から突出したワイヤー2の先端部を溶融し貫通孔13bの径よりも大きな径の係止部14を形成する。これにより、上基台1aと下基台1bを広げる方向に応力Tを加えて多数のワイヤー2に張力を付与することができる。なお、係止部14は下基台1bに係止できればよいので、ワイヤー2の先端を溶融することに代えて、下基台1bから下面側に突出したワイヤー2を束ねる、あるいは折り曲げて下基台1bの内側に抜けないようにしてもよい。
【0044】
図12は、ワイヤー2に張力を付与する張力付与工程を表す。まず、円筒体34を取り除いて張力付加部材3を設置する。即ち、張力付加部材3は、上基台1aの外周部を固定し、下基台1bの円筒上端部を収納可能に形成されている。この収納部24にバネ部材4を組み込んで下基台1bと上基台1aを離間する方向に付勢する。なお、張力付加部材3の上基台1a近傍の側面に開口部を形成し、上基台1a、下基台1b及び張力付加部材3により作られる内部空間に溶融ガラスを充填可能に構成する、或いは、内部空間を真空引き可能に構成することができる。これにより、ガラス内部に気泡が混入することを防止することができる。
【0045】
(第三実施形態)
図13は、本発明の第三実施形態に係る電子部品の製造方法を表す工程図である。ガラス基板に実装する電子部品として圧電振動子を用いた例を示す。図14は、貫通電極10が形成されたガラス基板11に圧電振動片18を実装した状態を表す断面模式図であり、図15は完成した圧電振動子20の断面模式図である。本第三実施形態はベース基板形成工程S40、リッド基板形成工程S20、及び圧電振動片作成工程S30を備えている。以下、順に説明する。
【0046】
まず、ガラス材料等準備工程S0において、ガラス基板11を形成するためのガラスと貫通電極10を形成するためのワイヤー2等を準備する。ガラス貫通孔形成工程S1において、板状ガラスに複数の貫通孔13aを形成する。また、基台貫通孔形成工程S2において、2枚の基台1a、1bに複数の貫通孔13bを形成する。次に、ワイヤー張り工程S3において、上基台1aと下基台1bの間に板状ガラス30を積層挟持し、上下基台1a、1bの複数の貫通孔13bと板状ガラス30の複数の貫通孔13aとの位置合わせを行い、複数の貫通孔13に導体からなるワイヤー2を貫通させて上下基台1a、1bの間にワイヤー2を張る。次に、ワイヤー埋め込み工程S4において、板状ガラス30をその軟化点以上の温度に加熱して、上下基台1a、1b間のワイヤー2を板状ガラス30に埋め込む。次に、インゴット形成工程S5において、ガラスを冷却してワイヤー2が埋め込まれたガラスインゴット8を取り出す。次に、切断工程S6において、上記ガラスインゴット8を輪切りにしてガラス板9を形成する。次に、研削工程S7において、切り出したガラス板9の両面を研磨してその表面と裏面にワイヤー2を露出させて貫通電極10とする。以上がガラス基板形成工程S41である。
【0047】
次に、接合膜形成工程S42において、ガラス基板11の周囲となる領域に陽極接合を行うための接合膜を堆積する。接合膜としてアルミニュウム膜を堆積した。次に、引回し電極形成工程S43において、一方の貫通電極10の上面からガラス基板11の外周部に沿って引回し電極16を形成してベース基板23とする。引回し電極16、16’は、スパッタリング法によりAu/Cr膜を堆積し、フォトリソグラフィ及びエッチング処理によりパターニングして形成した。引回し電極16、16’は、スパッタリング法に代えて、印刷法等により形成することができる。以上がベース基板形成工程S40である。
【0048】
次に、リッド基板形成工程S20を説明する。リッド基板19はベース基板23と接合したときの熱膨張差を縮小させるためにベース基板23と同じ材料を使用することが好ましい。ベース基板23としてソーダ石灰ガラスを使用したときは、リッド基板19も同じソーダ石灰ガラスを使用する。まず、研磨、洗浄、エッチング工程S21において、ガラス基板を研磨し、ガラス基板をエッチング処理して最表面の加工変質層を除去し、洗浄する。
【0049】
次に、凹部形成工程S22において、型成形により凹部22を形成する。凹部22は凸部を有する受型と凹部を有する加圧型の間にガラス基板を挟持し、ガラスの軟化点以上に加熱し押圧して成型する。成形用型は、カーボン材料から形成するのが好ましい。ガラスに対する離型性、気泡の吸収性が優れているからである。次に、研磨工程S23において、ベース基板23に接合する接合面を平坦面に研磨する。これにより、ベース基板23と接合したときの密閉性を向上させることができる。
【0050】
次に、圧電振動片作成工程S30において、水晶板からなる圧電振動片18を準備する。圧電振動片18の両表面には互いに電気的に分離した図示しない励振電極を形成し、圧電振動片18の一端の表面に形成した端子電極に電気的に接続しておく。次に、実装工程S11において、ベース基板23の貫通電極10と引回し電極16’の端部に又は圧電振動片18の端子電極に導電性接着材17、例えば金バンプを形成する。この導電性接着材17により圧電振動片18を片持ち梁状に実装する。これにより、圧電振動片18の両面に形成した励振電極は互いに電気的に分離して2つの貫通電極10に導通する。
【0051】
次に、周波数調整工程S12において、圧電振動片18の振動周波数を所定の周波数に調整する。次に、重ね合せ工程S13において、ベース基板23の上にリッド基板19を設置し接合材21を介して重ね合わせる。次に、接合工程S14において、重ね合わせたベース基板23とリッド基板19を加熱し、ベース基板23とリッド基板19間に高電圧を印加して陽極接合する。次に、外部電極形成工程S15において、ベース基板23の外面に貫通電極10のそれぞれに電気的に接続する外部電極15を形成する。次に、切断工程S16において、切断ラインに沿って分離切断して、個々の圧電振動子20を得る。
【0052】
このように、上下基台1a、1b間に板状ガラス30を挟持して複数のワイヤー2を張り、ガラスの軟化点以上の温度に加熱して板状ガラス30同士又は板状ガラス30とワイヤー2とを融着させ、冷却してガラスインゴット8を形成し、このガラスインゴット8をスライスし、研磨して作製したガラス基板11は、気密性の優れた高位置精度の貫通電極10を形成することができるとともに平坦性が優れているので、ベース基板23とリッド基板19間の気密性を保持することができる。これにより信頼性の高い圧電振動子20を提供することができる。なお、上記実施形態において、外部電極形成工程S15において形成する外部電極15をガラス基板形成工程S40において先に形成しておいてもよい。また、周波数調整工程S12は切断工程S16の後に行ってもよい。
【0053】
図16は、上記第三実施形態において説明した製造方法により製造した圧電振動子20を組み込んだ発振器40の上面模式図である。図15に示すように、発振器40は、基板43、この基板上に設置した圧電振動子20、集積回路41及び電子部品42を備えている。圧電振動子20は、外部電極6、7に与えられる駆動信号に基づいて一定周波数の信号を生成し、集積回路41及び電子部品42は、圧電振動子20から供給される一定周波数の信号を処理して、クロック信号等の基準信号を生成する。本発明による圧電振動子20は、高信頼性でかつ小型に形成することができるので、発振器40の全体を一層コンパクトに構成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1a 上基台
1b 下基台
2 ワイヤー
3 張力付加部材
4 バネ部材
5 ガラス
6 容器
7 蓋
8 ガラスインゴット
9 ガラス板
10 貫通電極
11 ガラス基板
12 切断ライン
18 圧電振動片
19 リッド基板
20 圧電振動子
30 板状ガラス
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板に複数の貫通電極を形成するガラス基板の製造方法及びこれを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器の時刻源やタイミング源に水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。圧電振動子には様々なものが知られているが、その一つとして表面実装型の圧電振動子が知られている。この圧電振動子として、圧電振動片が形成された圧電基板をベース基板とリッド基板で上下から挟みこんで接合した3層構造タイプのものが知られている。圧電振動片はベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されている。
【0003】
また、最近では、2層構造タイプの圧電振動子が開発されている。このタイプは、ベース基板とリッド基板を直接接合した2層構造タイプのパッケージからなり、ベース基板とリッド基板の間に構成されるキャビティ内に圧電振動片が収納されている。2層構造タイプの圧電素子は3層構造タイプに比べて薄型化を図ることができるなどの点において優れている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には2層構造タイプの水晶振動子パッケージが記載されている。ベース基板やリッド基板のパッケージ材料としてガラスを使用している。ガラスを使用するので、セラミックスを使用した場合と比べて成形が容易であり、製造コストを下げることができる。また、ガラスは熱伝導率が小さいので断熱性に優れ、内部の圧電振動子を温度変化から保護することができる。
【0005】
特許文献3には、上記と同様の2層構造タイプの水晶振動子パッケージが記載されている。この場合も、ベース基板にガラスを用い、このベース基板に金属材料を用いた貫通電極を形成する方法が記載されている。ガラスに貫通電極を形成する際に、まずガラス板に貫通孔を形成している。図17は、ガラス板131に金属ピン115からなる貫通電極を形成する方法を表している(特許文献3の図3)。図17(a)はガラス板131に貫通孔119を形成する方法を示す。ガラス板131をダイ126の底部に設置する。ダイ126にはヒータ125が設置され、ガラス板131を加熱することができる。ダイ126の上部にはパンチ129からなる穴開け機が設置されている。パンチ129のガラス板131側には孔開けピン128が設置され、また、パンチ129にもヒータ127が設置されている。そして、ガラス板131を所定の温度に加熱した後に、パンチ129を下げて貫通孔119を形成する。
【0006】
図17(b)はガラス板131の貫通孔119に金属ピン115を打ち込む方法を示している。貫通孔119を形成したガラス板131を台135に設置し、ガラスフリット吹き付け機133により貫通孔119にガラスフリット132を吹き付け、金属ピン打ち込み機134により金属ピン115を貫通孔119に打ち込む。
【0007】
図18は、プレス成型工程を表している(特許文献3の図4)。図18(a)に示されるように、金属ピン115を貫通孔119に打ち込んだガラス板131をプレス下型136とプレス上型137の間に設置する。プレス上型137には間仕切り凸条138、ピン頭収納凹部139や凹部形成用凸条141が形成されている。この型を電気炉に投入して、プレス上型137をプレス下型136に押圧しながら温度1000℃以上に加熱する。その結果、図18(b)に示されるように、プレス上型137の表面の凹凸がガラス板131に転写され、分割用溝142や凹部116がガラス板131に形成される。同時にシール性が確保された金属ピン115からなる貫通電極がガラス板131に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【特許文献2】特開2002−121037号公報
【特許文献3】特開2003−209198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ガラス板131を加熱して貫通孔119を形成し、その後ガラス板131を冷却すると、ガラス板131は内部応力により歪み、平坦性が低下した。また、ガラス板131にプレス上型137の表面形状を転写した後に冷却すると、転写時のガラスの流動や、冷却時の熱の不均一性により、金属ピン115が傾く、また、金属ピン115の位置ずれが発生する、或いは内部応力によりガラス板131が複雑に歪んだ。更に、研削して反りを修正しようとすると、研削量が多くなって加工に長時間要する、あるいは所期形状の取り個数が減少した。また、凹部116の底面に露出した金属ピン115が傾斜して貫通電極の位置ずれが発生した。また、凹部116を囲む側壁上面の平坦性が悪いと、この上面に接合する蓋の気密性が確保できなくなり、電子部品の信頼性が低下する、という課題があった。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、貫通電極を高位置精度で設置した平坦性に優れたガラス基板を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるガラス基板の製造方法は、板状ガラスに複数の貫通孔を形成するガラス貫通孔形成工程と、2枚の基台に複数の貫通孔を形成する基台貫通孔形成工程と、前記2枚の基台の間に前記板状ガラスを挟持し、前記基台の複数の貫通孔と前記板状ガラスの複数の貫通孔との位置合わせを行い、前記複数の貫通孔に導体から成るワイヤーを貫通させて前記2枚の基台の間にワイヤーを張るワイヤー張り工程と、前記板状ガラスをその軟化点よりも高い温度に加熱して、前記基台間のワイヤーを前記ガラスに埋め込むワイヤー埋め込み工程と、前記ガラスを冷却し、ワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成するインゴット形成工程と、前記インゴットをスライスしてガラス板を形成する切断工程と、前記ガラス板を研磨し、表面と裏面にワイヤーを露出させて貫通電極とする研磨工程とを備える。
【0012】
また、前記ガラス貫通孔形成工程は、板状ガラスに凹部を形成する凹部形成工程と、当該凹部が形成された表面とは反対側の裏面を研削して前記凹部を裏面側に貫通させる研削工程と、を備えることとした。
【0013】
また、前記ワイヤー埋め込み工程は、前記板状ガラスに圧縮応力を加える工程であることとした。
【0014】
また、前記ワイヤー張り工程は、前記基台に形成した複数の貫通孔が前記板状ガラスに形成した単独の貫通孔に対応し、前記板状ガラスの単独の貫通孔に複数のワイヤーを貫通させて前記2枚の基台の間にワイヤーを張ることとした。
【0015】
また、前記取り出し工程において、前記ガラス基板の歪点よりも50℃高い温度までの冷却速度よりも、歪点よりも50℃高い温度から歪点よりも50℃低い温度までの冷却速度を遅くすることとした。
【0016】
また、前記ワイヤーの熱膨張率は前記ガラスと同程度であることとした。
【0017】
本発明による電子部品の製造方法は、上記ずれかに記載のガラス基板の製造方法に基づいてガラス基板を形成し、前記ガラス基板に電極を形成してベース基板とするベース基板形成工程と、前記ベース基板に電子部品を実装する実装工程と、前記電子部品を実装したベース基板にリッド基板を接合する接合工程を備える。
【0018】
【発明の効果】
【0019】
本発明のガラス基板の製造方法は、板状ガラスに複数の貫通孔を形成するガラス貫通孔形成工程と、2枚の基台に複数の貫通孔を形成する基台貫通孔形成工程と、2枚の基台の間に板状ガラスを挟持し、基台の複数の貫通孔と板状ガラスの複数の貫通孔との位置合わせを行い、複数の貫通孔に導体から成るワイヤーを貫通させて2枚の基台の間にワイヤーを張るワイヤー張り工程と、板状ガラスをその軟化点よりも高い温度に加熱して、基台間のワイヤーをガラスに埋め込むワイヤー埋め込み工程と、ガラスを冷却し、ワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成するインゴット形成工程と、このインゴットをスライスしてガラス板を形成する切断工程と、このガラス板を研磨し、表面と裏面にワイヤーを露出させて貫通電極とする研磨工程と、を備えている。これにより、ガラスの流動によって印加されるワイヤーへの圧力が小さいので、ワイヤーの位置を高精度で制御することができるとともに、ガラスインゴットを冷却後にスライスするので、反りがなく気密性の高い貫通電極付きのガラス基板を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を表す工程図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ガラス貫通孔形成工程を表す。
【図3】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、上下基台間に板状ガラスを挟持し、ワイヤーを通した状態を表す。
【図4】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、装着したワイヤーに張力を付与した状態を表す。
【図5】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤーを張った板状ガラスを容器に収納した状態を表す。
【図6】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、形成したインゴットを切断した状態を表す。
【図7】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ガラス基板の状態を表す。
【図8】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であるあり、ガラス貫通孔形成工程を表す。
【図9】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程を表す。
【図10】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程を表す。
【図11】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程を表す。
【図12】本発明の実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程を表す。
【図13】本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法を表す工程図である。
【図14】本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法を表し、圧電振動片を実装した状態を示す断面模式図である。
【図15】本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法を表し、完成した圧電振動子の断面模式図である。
【図16】本発明の実施形態に係る電子部品の製造方法により製造した圧電振動子を組み込んだ発信器の上面図である。
【図17】従来公知のガラス板に貫通孔を形成し、ピンを打ち込む方法を表す。
【図18】従来公知のプレス成型方法によりガラス板を成型する状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る貫通電極付きガラス基板の製造方法を表す工程図であり、本発明の基本的構成を表す。まず、ガラス貫通孔形成工程S1において、板状ガラスに複数の貫通孔を形成する。また、基台貫通孔形成工程S2において、2枚の基台に複数の貫通孔を形成する。ガラスとして、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等を使用することができる。基台の材料として、カーボンやセラミックスの耐熱性材料を使用する。ガラスに対し切削加工、サンドブラスト、或いは型成形等により貫通孔を形成することができる。また、基台に対し切削加工により、またグリーンシートを型成形して貫通孔を形成し、これを焼成して貫通孔とすることができる。
【0022】
次に、ワイヤー張り工程S3において、貫通孔を形成した2枚の基台の間に貫通孔を形成した板状ガラスを挟持し、基台の貫通孔と板状ガラスの貫通孔とを位置合わせして、これらの貫通孔に導体から成るワイヤーを貫通させて2枚の基台間にワイヤーを張る。例えば、ワイヤーの一端に台座を設けこの台座を一方の基台に係止させ、ワイヤーの他端に係止部を設けこの係止部を他方の基台に係止させて、2つの基台を離間させるように応力を加えてワイヤーに張力を付与することができる。ワイヤーはNi−Fe合金、例えば42アロイやコバールを使用することができる。これらの合金を使用すれば熱膨張係数をガラスに近似させることができ、熱変化に対してガラスとワイヤー間の界面劣化を低減させることができる。
【0023】
次に、ワイヤー埋め込み工程S4において、板状ガラスをその軟化点よりも高い温度に加熱して流動させ、基台間のワイヤーをガラスに埋め込む。基台間に複数の板状ガラスを積層した場合は、板状ガラス同士を融着させる。この場合、例えば900℃以上の温度に加熱する。次に、インゴット形成工程S5において、ガラスを冷却してワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成する。次に、切断工程S6において、ワイヤーソー等のスライサーを用いてガラスインゴットを輪切りに切断する。次に、研削工程S7において、スライスしたガラス板の両面を研削及び研磨してガラス板の両面にワイヤーの断面を露出させ、貫通電極付きガラス基板とする。
【0024】
このように、貫通孔を設けた板状ガラスの貫通孔にワイヤーを通した状態でガラスを軟化・流動させたので、ワイヤーをガラスに短時間で埋め込むことができる。また、ガラスインゴットを冷却した後に切断するので反りのない貫通電極付きガラス基板を得ることができる。また、板状ガラスを多層にすれば大きなガラスインゴットを短時間で製造し多数のガラス基板を同時に形成することができる。
【0025】
なお、ガラス貫通孔形成工程S1は、板状ガラスに例えば成形型を用いて凹部を形成する凹部形成工程と、当該凹部が形成された表面とは反対側の裏面を研削して凹部を裏面側に貫通させる研削工程を備えることができる。この方法によれば、多数の貫通孔を同時に形成することができるので、多数個取り用の貫通電極付きガラス基板を製造するのに好適である。
【0026】
また、ワイヤー埋め込み工程S4において、板状ガラスに圧縮応力を加えることにより軟化したガラスの流動を促進することができる。また、ワイヤー埋め込み工程S4を真空中で行うことができる。特に、2枚の基板間に板状ガラスを多数積層した場合に、ガラス内部に気泡が取り込まれることを防止すことができる。
【0027】
また、ワイヤー張り工程S3は、基台に形成した複数の貫通孔を板状ガラスに形成した単独の貫通孔に対応させ、板状ガラスの単独の貫通孔に複数のワイヤーを貫通させて張ることができる。これにより、ガラスに形成する貫通孔の数を減らし、基台と板状ガラス間の位置合わせや、ワイヤーの貫通作業が容易となる。
【0028】
また、インゴット形成工程S5において、ガラス基板の歪点よりも50℃高い温度までの冷却速度よりも、歪点よりも50℃高い温度から歪点よりも50℃低い温度までの冷却速度を遅くすることができる。これにより、ガラス基板に残留する歪みが低減し、ワイヤーとガラス基板との間に生じる間隙やクラックの発生を防止し、気密性の高い貫通電極を形成することができる。また、ワイヤーの熱膨張率をガラスと同程度にすれば、熱膨張差による残留応力を低減し、貫通電極とガラス間に間隙やクラックの発生を防止することができる。以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
(第一実施形態)
図2〜図7は本発明の第一実施形態を説明するための図である。図2は板状ガラスに複数の貫通孔を形成するガラス貫通孔形成工程S1の一例を表す説明図である。図3は上基台1aと下基台1bの間に複数の板状ガラスを積層し、貫通孔にワイヤー2を装着した状態を表し、図4は装着したワイヤー2に張力を付与する様子を表し、いずれもワイヤー張り工程S3を説明するための図である。
【0030】
まず、ガラス貫通孔形成工程S1において、板状ガラスに複数の貫通電極を形成するための貫通孔を穿設する。ガラスとしてソーダ石灰ガラスを使用した。貫通孔はサンドブラストやドリル研削により形成することができる。図2は、成形型を用いて貫通孔を形成する方法を表す。まず、図2(a)に示すように板状ガラス30を準備する(ガラス準備工程)。次に、図2(b)に示すように、下型31に板状ガラス30を設置し、板状ガラス30の上に加圧用の上型32を載置する(凹部形成工程)。下型31の表面は貫通孔形成用の凸部を備えている。この凸部は、離型性を向上させるために側面が傾斜する円錐台の形状とした。板状ガラス30をその軟化点以上の温度に加熱し、同時に上型32を下方に加圧する。ここで、上下型32、31はカーボン材料を使用した。カーボン材料はガラス材料に対する離型性に優れ、かつガラス材料から放出される気泡を吸収し、ガラスに残留する気孔の気孔率を低減させることができるからである。
【0031】
次に、冷却し上下型32、31から板状ガラス30を取り出す(凹部形成工程)。図2(c)に示すように、板状ガラス30には下型31の表面形状が転写されて凹部33が形成される。次に、図2(d)に示すように、凹部33とは反対側の裏面を研削して貫通孔13aを形成する(研削工程)。貫通孔13aの縦断面は円錐台の形状を有している。図2(e)は、多数の貫通孔13aを形成した板状ガラス30からなるガラスウエハーの外観図である。
【0032】
次に、基台貫通孔形成工程S2において、上基台1aと下基台1bに複数の貫通孔を形成する。複数の貫通孔は板状ガラス30に形成した貫通孔13aと同じ位置に形成した。上下基台1a、1bはカーボンを用いた。上下基台1a、1bは板状ガラス30に形成した貫通孔13aと同じ位置に貫通孔を有する。図3に示すように、上基台1aと下基台1bの間に複数の板状ガラス30を積層して挟持し、導体から成るワイヤー2を貫通させ、上基台1aの上面及び下基台1bの下面においてワイヤー2を係止した。
【0033】
そして、図4に示すように、複数のワイヤー2は、上基台1aの上面においてワイヤー2の一端に設置した台座2aにより上基台1aに係止し、下基台1bの裏面においてワイヤー2の他端に設置した係止部14により下基台1bに係止している。そして、複数のワイヤー2を張った上下基台1a、1bの両端又は四方に上張力付加部材3a及び下張力付加部材3bを取り付け、バネ部材4により上下間を引き離すように応力Tを加える。これにより、上下基台1a、1b間の複数のワイヤー2に張力を付与することができる。上張力付加部材3a及び下張力付加部材3bにカーボン材料やセラミックス材料を使用することができる。ワイヤー2はFe−Ni合金、例えば42アロイやコバールを使用することができる。これらの合金を使用すれば熱膨張係数をガラスと近似させることができ、熱変化に対してガラスとワイヤー間の界面の劣化を低減させることができる。ワイヤー2の直径は0.05mm〜1mmであり、ワイヤー2間の最短距離を0.5mm〜2mmとし、上基台1a及び下基台1bの直径を1インチ〜4インチとした。上下基台1a、1bはカーボンを使用した。なお、上下基台1a、1bは四角形であっても多角形であってもよい。
【0034】
図5は、容器6に上下基台1a、1bや上下張力付加部材3a、3bを投入した状態を表したワイヤー埋め込み工程S4の説明図である。ワイヤー2、上下基台1a、1b及び上下張力付加部材3a、3bを耐熱性の容器6に収納する。次に、容器6ごとガラスの軟化点以上、例えば900℃以上に加熱してガラスを軟化させ、流動させて複数の板状ガラス30同志やワイヤー2とガラスとを溶着する。
【0035】
容器6内に更にガラス5を投入して上下張力付加部材3a、3bや上下基台1a、1bの周囲をガラス5で満たし、蓋7に圧力Pを加えてガラス5の流動を促進させることができる。また、容器6内にガラス5を投入することに代えて、容器6内を真空に引いて、板状ガラス30間や板状ガラス30に形成した貫通孔13aに残留する空気がガラス内に取り込まれることを防止することができる。なお、図5において、耐熱性の容器6を使用することに代えて、上下基台により耐熱性の容器及びその蓋を構成し、上下基台間に板状ガラス30を挟持し複数のワイヤーを張って熱処理を施すようにしてもよい。これにより、ガラスや容器の消費量を削減することができる。
【0036】
図6はインゴット形成工程S5及び切断工程S6を説明するための図である。容器6及びガラス5を冷却し、容器6から上下張力付加部材3a、3b及び上下基台1a、1bを取り出し、上下張力付加部材3a、3bを除去してガラスインゴットを得る。ダイシングソーやワイヤーソーを用いてガラスインゴット8を輪切りにし、ガラス板9を得る。ガラスインゴット8を冷却した後に切断するので切断後のガラス板9は反りが小さい。次に研削工程S7においてガラス板9の両面を研削及び研磨して貫通電極10が埋め込まれたガラス基板11を得る。貫通電極10の表面とガラス5の表面を面一にした平坦性の良好なガラス基板11を形成することができる。
【0037】
なお、インゴット形成工程S5において、ガラス基板の歪点よりも50℃高い温度までの冷却速度よりも、歪点よりも50℃高い温度から歪点よりも50℃低い温度までの冷却速度を遅くすることができる。これにより、ガラス基板に残留する歪みが低減し、ワイヤー2とガラス板9との間に生じる間隙やクラックの発生を防止し、気密性の高い貫通電極を形成することができる。
【0038】
図7(a)はガラス基板11の縦断面模式図であり、(b)はガラス基板11の上面模式図である。貫通電極10とガラス5とは融着しているので密閉性が優れている。ガラス基板11の表面の反りが少ないので短時間で研削及び研磨することができ、更にガラスの研削量も少ない。図7(b)に示すように、2個の貫通電極10を有し切断ライン12により区画される単位セルを多数同時に形成する。
【0039】
なお、上記第一実施形態においては、上下基台1a、1bに形成した貫通孔13bと板状ガラス30に形成した貫通孔13aとを1対1に対応させてワイヤー2を通したが、本発明はこれに限定されない。図8は、上下基台1a、1bの間に複数の板状ガラス30を積層挟持し、各貫通孔13にワイヤー2を通し、上下基台1a、1bにワイヤー2を係止した状態を表している。各板状ガラス30に形成した1つの貫通孔13aが上基台1a及び下基台1bのそれぞれに形成した2つの貫通孔13bが対応する。従って、上下基台1a、1bに形成した各貫通孔13bにワイヤー2を通すことにより、各板状ガラス30に形成した1つの貫通孔13aに2本のワイヤー2が通っている。この状態で板状ガラス30を軟化させてガラスを流動させることにより、気密性の高い貫通電極10を形成することができる。なお、ワイヤー2の一端に貫通孔13bの径よりも大きな径の台座2aを設け、他端に貫通孔13bの径よりも大きな径の係止部14を設けてワイヤー2に張力を付与することが可能なように構成した。また、板状ガラス30の貫通孔13aは更に多数のワイヤー2を通すように拡大させることができる。
【0040】
(第二実施形態)
図9〜図12は、本発明の第二実施形態に係るガラス基板の製造方法を説明するための図であり、ワイヤー張り工程S3を具体的に表している。まず、基台貫通孔形成工程S2において、平板状の上基台1aと凹形状の下基台1bに貫通孔13bを形成した。基台貫通孔形成工程S2及びワイヤー張り工程S3以外の工程は第一実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0041】
図9は、多数の貫通孔13bを形成した平板状の上基台1aと凹形状の下基台1bの間に、多数の貫通孔13aを形成した複数の板状ガラス30を積層した状態を表す。下基台1bの円筒上面には円筒の形状が同じ円筒体34を設置して板状ガラス30及び上基台1aのガイドとする。円筒体34は上基台1aよりも十分高くなるように設置する。上下基台1a、1bに形成した貫通孔13bと板状ガラス30に形成した貫通孔13aの位置合わせを行って固定する。上下基台1a、1b及び円筒体34としてカーボン材料やセラミックス材料を使用することができる。貫通孔13bはドリル研削等を用いて穿設することができる。また、予めグリーンシートに貫通孔を形成し、これを焼結して貫通孔付き基台とすることができる。なお、上下基台1a、1bを円盤又は円筒状としているがこれに限定されず、矩形状としてもよい。
【0042】
図10は、上下基台1a、1bの間に複数の板状ガラス30を積層挟持し、ワイヤー2を装着するワイヤー装着工程を表す。まず、ワイヤー2よりも大きな直径の台座2aを一端に設け、他端を針状に尖らせたワイヤー2を準備する。台座2aは上下基台1a、1bに設けた貫通孔13の直径よりも大きく、ワイヤー2は貫通孔13の直径よりわずかに小さく形成する。次に、上記台座2aを設けた多数のワイヤー2を先端が尖った方向を下向きにして円筒体34内の上基台1a上に垂直に投入する。そして、下基台1aを図示しない振動発生機に載置して上下左右に振動を与える。これにより、上基台1aの多数の貫通孔13b及びこれらに位置合わせされた板状ガラス30の多数の貫通孔13aにワイヤー2を短時間で挿着することができる。
【0043】
図11は、下基台1bの下面側に突出したワイヤー2の先端に係止部14を形成した係止部形成工程を表す。台座2aの直径は貫通孔13よりも大きいので、落下ストッパーとして機能する。そして、下基台1bの下面から突出したワイヤー2の先端部を溶融し貫通孔13bの径よりも大きな径の係止部14を形成する。これにより、上基台1aと下基台1bを広げる方向に応力Tを加えて多数のワイヤー2に張力を付与することができる。なお、係止部14は下基台1bに係止できればよいので、ワイヤー2の先端を溶融することに代えて、下基台1bから下面側に突出したワイヤー2を束ねる、あるいは折り曲げて下基台1bの内側に抜けないようにしてもよい。
【0044】
図12は、ワイヤー2に張力を付与する張力付与工程を表す。まず、円筒体34を取り除いて張力付加部材3を設置する。即ち、張力付加部材3は、上基台1aの外周部を固定し、下基台1bの円筒上端部を収納可能に形成されている。この収納部24にバネ部材4を組み込んで下基台1bと上基台1aを離間する方向に付勢する。なお、張力付加部材3の上基台1a近傍の側面に開口部を形成し、上基台1a、下基台1b及び張力付加部材3により作られる内部空間に溶融ガラスを充填可能に構成する、或いは、内部空間を真空引き可能に構成することができる。これにより、ガラス内部に気泡が混入することを防止することができる。
【0045】
(第三実施形態)
図13は、本発明の第三実施形態に係る電子部品の製造方法を表す工程図である。ガラス基板に実装する電子部品として圧電振動子を用いた例を示す。図14は、貫通電極10が形成されたガラス基板11に圧電振動片18を実装した状態を表す断面模式図であり、図15は完成した圧電振動子20の断面模式図である。本第三実施形態はベース基板形成工程S40、リッド基板形成工程S20、及び圧電振動片作成工程S30を備えている。以下、順に説明する。
【0046】
まず、ガラス材料等準備工程S0において、ガラス基板11を形成するためのガラスと貫通電極10を形成するためのワイヤー2等を準備する。ガラス貫通孔形成工程S1において、板状ガラスに複数の貫通孔13aを形成する。また、基台貫通孔形成工程S2において、2枚の基台1a、1bに複数の貫通孔13bを形成する。次に、ワイヤー張り工程S3において、上基台1aと下基台1bの間に板状ガラス30を積層挟持し、上下基台1a、1bの複数の貫通孔13bと板状ガラス30の複数の貫通孔13aとの位置合わせを行い、複数の貫通孔13に導体からなるワイヤー2を貫通させて上下基台1a、1bの間にワイヤー2を張る。次に、ワイヤー埋め込み工程S4において、板状ガラス30をその軟化点以上の温度に加熱して、上下基台1a、1b間のワイヤー2を板状ガラス30に埋め込む。次に、インゴット形成工程S5において、ガラスを冷却してワイヤー2が埋め込まれたガラスインゴット8を取り出す。次に、切断工程S6において、上記ガラスインゴット8を輪切りにしてガラス板9を形成する。次に、研削工程S7において、切り出したガラス板9の両面を研磨してその表面と裏面にワイヤー2を露出させて貫通電極10とする。以上がガラス基板形成工程S41である。
【0047】
次に、接合膜形成工程S42において、ガラス基板11の周囲となる領域に陽極接合を行うための接合膜を堆積する。接合膜としてアルミニュウム膜を堆積した。次に、引回し電極形成工程S43において、一方の貫通電極10の上面からガラス基板11の外周部に沿って引回し電極16を形成してベース基板23とする。引回し電極16、16’は、スパッタリング法によりAu/Cr膜を堆積し、フォトリソグラフィ及びエッチング処理によりパターニングして形成した。引回し電極16、16’は、スパッタリング法に代えて、印刷法等により形成することができる。以上がベース基板形成工程S40である。
【0048】
次に、リッド基板形成工程S20を説明する。リッド基板19はベース基板23と接合したときの熱膨張差を縮小させるためにベース基板23と同じ材料を使用することが好ましい。ベース基板23としてソーダ石灰ガラスを使用したときは、リッド基板19も同じソーダ石灰ガラスを使用する。まず、研磨、洗浄、エッチング工程S21において、ガラス基板を研磨し、ガラス基板をエッチング処理して最表面の加工変質層を除去し、洗浄する。
【0049】
次に、凹部形成工程S22において、型成形により凹部22を形成する。凹部22は凸部を有する受型と凹部を有する加圧型の間にガラス基板を挟持し、ガラスの軟化点以上に加熱し押圧して成型する。成形用型は、カーボン材料から形成するのが好ましい。ガラスに対する離型性、気泡の吸収性が優れているからである。次に、研磨工程S23において、ベース基板23に接合する接合面を平坦面に研磨する。これにより、ベース基板23と接合したときの密閉性を向上させることができる。
【0050】
次に、圧電振動片作成工程S30において、水晶板からなる圧電振動片18を準備する。圧電振動片18の両表面には互いに電気的に分離した図示しない励振電極を形成し、圧電振動片18の一端の表面に形成した端子電極に電気的に接続しておく。次に、実装工程S11において、ベース基板23の貫通電極10と引回し電極16’の端部に又は圧電振動片18の端子電極に導電性接着材17、例えば金バンプを形成する。この導電性接着材17により圧電振動片18を片持ち梁状に実装する。これにより、圧電振動片18の両面に形成した励振電極は互いに電気的に分離して2つの貫通電極10に導通する。
【0051】
次に、周波数調整工程S12において、圧電振動片18の振動周波数を所定の周波数に調整する。次に、重ね合せ工程S13において、ベース基板23の上にリッド基板19を設置し接合材21を介して重ね合わせる。次に、接合工程S14において、重ね合わせたベース基板23とリッド基板19を加熱し、ベース基板23とリッド基板19間に高電圧を印加して陽極接合する。次に、外部電極形成工程S15において、ベース基板23の外面に貫通電極10のそれぞれに電気的に接続する外部電極15を形成する。次に、切断工程S16において、切断ラインに沿って分離切断して、個々の圧電振動子20を得る。
【0052】
このように、上下基台1a、1b間に板状ガラス30を挟持して複数のワイヤー2を張り、ガラスの軟化点以上の温度に加熱して板状ガラス30同士又は板状ガラス30とワイヤー2とを融着させ、冷却してガラスインゴット8を形成し、このガラスインゴット8をスライスし、研磨して作製したガラス基板11は、気密性の優れた高位置精度の貫通電極10を形成することができるとともに平坦性が優れているので、ベース基板23とリッド基板19間の気密性を保持することができる。これにより信頼性の高い圧電振動子20を提供することができる。なお、上記実施形態において、外部電極形成工程S15において形成する外部電極15をガラス基板形成工程S40において先に形成しておいてもよい。また、周波数調整工程S12は切断工程S16の後に行ってもよい。
【0053】
図16は、上記第三実施形態において説明した製造方法により製造した圧電振動子20を組み込んだ発振器40の上面模式図である。図15に示すように、発振器40は、基板43、この基板上に設置した圧電振動子20、集積回路41及び電子部品42を備えている。圧電振動子20は、外部電極6、7に与えられる駆動信号に基づいて一定周波数の信号を生成し、集積回路41及び電子部品42は、圧電振動子20から供給される一定周波数の信号を処理して、クロック信号等の基準信号を生成する。本発明による圧電振動子20は、高信頼性でかつ小型に形成することができるので、発振器40の全体を一層コンパクトに構成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1a 上基台
1b 下基台
2 ワイヤー
3 張力付加部材
4 バネ部材
5 ガラス
6 容器
7 蓋
8 ガラスインゴット
9 ガラス板
10 貫通電極
11 ガラス基板
12 切断ライン
18 圧電振動片
19 リッド基板
20 圧電振動子
30 板状ガラス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ガラスに複数の貫通孔を形成するガラス貫通孔形成工程と、
2枚の基台に複数の貫通孔を形成する基台貫通孔形成工程と、
前記2枚の基台の間に前記板状ガラスを挟持し、前記基台の複数の貫通孔と前記板状ガラスの複数の貫通孔との位置合わせを行い、前記複数の貫通孔に導体から成るワイヤーを貫通させて前記2枚の基台の間にワイヤーを張るワイヤー張り工程と、
前記板状ガラスをその軟化点よりも高い温度に加熱して、前記基台間のワイヤーを前記ガラスに埋め込むワイヤー埋め込み工程と、
前記ガラスを冷却し、ワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成するインゴット形成工程と、
前記インゴットをスライスしてガラス板を形成する切断工程と、
前記ガラス板を研磨し、表面と裏面にワイヤーを露出させて貫通電極とする研磨工程と、を備える貫通電極付きのガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス貫通孔形成工程は、板状ガラスに凹部を形成する凹部形成工程と、
当該凹部が形成された表面とは反対側の裏面を研削して前記凹部を裏面側に貫通させる研削工程と、を備える請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記ワイヤー埋め込み工程は、前記板状ガラスに圧縮応力を加える工程である請求項1又は2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記ワイヤー張り工程は、前記基台に形成した複数の貫通孔が前記板状ガラスに形成した単独の貫通孔に対応し、前記板状ガラスの単独の貫通孔に複数のワイヤーを貫通させて前記2枚の基台の間にワイヤーを張る請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記取り出し工程において、
前記ガラス基板の歪点よりも50℃高い温度までの冷却速度よりも、歪点よりも50℃高い温度から歪点よりも50℃低い温度までの冷却速度を遅くする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記ワイヤーの熱膨張率は前記ガラスと同程度であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法に基づいてガラス基板を形成し、前記ガラス基板に電極を形成してベース基板とするベース基板形成工程と、
前記ベース基板に電子部品を実装する実装工程と、
前記電子部品を実装したベース基板にリッド基板を接合する接合工程を備える電子部品の製造方法。
【請求項1】
板状ガラスに複数の貫通孔を形成するガラス貫通孔形成工程と、
2枚の基台に複数の貫通孔を形成する基台貫通孔形成工程と、
前記2枚の基台の間に前記板状ガラスを挟持し、前記基台の複数の貫通孔と前記板状ガラスの複数の貫通孔との位置合わせを行い、前記複数の貫通孔に導体から成るワイヤーを貫通させて前記2枚の基台の間にワイヤーを張るワイヤー張り工程と、
前記板状ガラスをその軟化点よりも高い温度に加熱して、前記基台間のワイヤーを前記ガラスに埋め込むワイヤー埋め込み工程と、
前記ガラスを冷却し、ワイヤーが埋め込まれたガラスインゴットを形成するインゴット形成工程と、
前記インゴットをスライスしてガラス板を形成する切断工程と、
前記ガラス板を研磨し、表面と裏面にワイヤーを露出させて貫通電極とする研磨工程と、を備える貫通電極付きのガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス貫通孔形成工程は、板状ガラスに凹部を形成する凹部形成工程と、
当該凹部が形成された表面とは反対側の裏面を研削して前記凹部を裏面側に貫通させる研削工程と、を備える請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記ワイヤー埋め込み工程は、前記板状ガラスに圧縮応力を加える工程である請求項1又は2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記ワイヤー張り工程は、前記基台に形成した複数の貫通孔が前記板状ガラスに形成した単独の貫通孔に対応し、前記板状ガラスの単独の貫通孔に複数のワイヤーを貫通させて前記2枚の基台の間にワイヤーを張る請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記取り出し工程において、
前記ガラス基板の歪点よりも50℃高い温度までの冷却速度よりも、歪点よりも50℃高い温度から歪点よりも50℃低い温度までの冷却速度を遅くする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記ワイヤーの熱膨張率は前記ガラスと同程度であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法に基づいてガラス基板を形成し、前記ガラス基板に電極を形成してベース基板とするベース基板形成工程と、
前記ベース基板に電子部品を実装する実装工程と、
前記電子部品を実装したベース基板にリッド基板を接合する接合工程を備える電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−19108(P2012−19108A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156173(P2010−156173)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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