説明

キャブ用保護部材、キャブおよび作業機械

【課題】側方荷重に対してキャブ本体を確実に保護できるとともに、取付けが容易で、かつ、省スペース化が可能なキャブ用保護部材を提供する。
【解決手段】機械本体に取付ける支持部57,58を、キャブ本体11の各リアピラー24,25のそれぞれの後部に沿って配設する。支持部57,58の上端部から、キャブ本体11の天井部20を覆う板状の覆い部61を前方へ突設する。覆い部61の両側部から、天井部20の両側部の各サイド部26,27を覆うガード部62を突設する。側方荷重に対してキャブ本体11を確実に保護できるとともに、支持部57,58を機械本体に取付けるだけで取付けできるので、取付けが容易になり、かつ、支持部57,58などがキャブ本体11の側方に突出することがなく、省スペース化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置の側方にて機械本体に搭載される箱形のキャブ本体を保護するキャブ用保護部材、これを有するキャブおよびこれを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば油圧ショベルなどの作業機械の機械本体にて、作業装置の側方に搭載されるこの種のキャブは、箱形のキャブ本体を備え、このキャブ本体は、床面部の前部両側から立上がる左右のフロントピラーの下部間にフロントクロス部材が設けられているとともに上部間にフロントヘッダが設けられており、これらフロントピラー、フロントクロス部材およびフロントヘッダにより、前側面部に前窓が開口形成されている。
【0003】
また、各フロントピラーの上端部は、後方へと屈曲されて左右のサイド部を形成し、これらサイド部の後端部が床面部の後部両側から立上がる左右のリアピラーの上端部に連結され、各フロントピラーの後部にルーフパネルが一体に設けられて、フロントヘッダの後部とルーフパネルの前部との間にてキャブ本体の天井部前側に天窓が開口形成されている。
【0004】
ところで、油圧ショベルなどは、やむを得ず不整地、傾斜地などで作業をすることがあり、このような場所での作業の際には、何らかのアクシデントにより油圧ショベルが転倒するおそれがある。そして、このような転倒に対してオペレータを保護するために、油圧ショベルなどのキャブを保護、あるいは補強したり、キャブの剛性を向上したりすることが必要である。
【0005】
そこで、キャブ本体を保護するためにキャブ用保護部材を取付けた構成が知られている。
【0006】
例えば、このようなキャブ用保護部材としては、天井部の上側を覆う四角形板状の覆い部の四隅から下方へと柱状の支持部がそれぞれ延設された枠状に形成され、これら支持部の下端部を、キャブ本体の左右両側にて、それぞれ機械本体に固定された基台に対して、前側と後側とでボルトおよびボスなどで連結されているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−233151号公報(第3−4頁、図2および図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のキャブ用保護部材では、4本の支持部のそれぞれを基台に連結しなければならず、取付けが容易でないという問題点を有している。
【0008】
また、上述のキャブ用保護部材は、側方荷重に対してキャブ本体を保護するために、キャブ本体の側方に支持部を位置させているので、キャブ本体の側方にスペースが必要になるという問題もある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、側方荷重に対してキャブ本体を確実に保護できるとともに、取付けが容易で、かつ、省スペース化が可能なキャブ用保護部材、これを有するキャブおよびこれを備えた作業機械を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、左右一対のリアピラーを有する後側面部と、この後側面部の上部に設けられ前部に上側窓部を有する天井部とを備え、作業装置の側方にて機械本体に搭載される箱形のキャブ本体を保護するキャブ用保護部材であって、キャブ本体の各リアピラーのそれぞれの後部の少なくとも一部に沿って配設され、機械本体に取付けられる支持部と、この支持部の上端部から前方へ突設され、キャブ本体の天井部の少なくとも上側窓部の後側を覆う板状の覆い部と、この覆い部の両側部から突設され、天井部の両側部のそれぞれの少なくとも一部を覆うガード部とを具備したものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のキャブ用保護部材において、覆い部およびガード部が、天井部の前端部まで延設されているものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のキャブ用保護部材において、ガード部が、作業装置の反対側からの側方荷重により作業装置に当接する位置まで延設されているものである。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のキャブ用保護部材において、覆い部が、天井部に固定されているものである。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載のキャブ用保護部材において、キャブ本体の各リアピラー間の上部にて後側面部に形成された後側窓部の下縁部に沿って設けられ、支持部間を連結する連結部を具備したものである。
【0015】
請求項6記載の発明は、左右一対のリアピラーを有する後側面部と、この後側面部の上部に設けられ前部に上側窓部を有する天井部とを備え、作業装置の側方にて機械本体に搭載される箱形のキャブ本体と、このキャブ本体を保護する請求項1乃至4のいずれか記載のキャブ用保護部材とを具備したキャブである。
【0016】
請求項7記載の発明は、左右一対のリアピラーおよびこれらリアピラー間の上部に後側窓部を有する後側面部と、この後側面部の上部に設けられ前部に上側窓部を有する天井部とを備え、作業装置の側方にて機械本体に搭載される箱形のキャブ本体と、このキャブ本体を保護する請求項5記載のキャブ用保護部材とを具備したキャブである。
【0017】
請求項8記載の発明は、機械本体と、この機械本体に作動可能に設けられた作業装置と、この作業装置の側方にて機械本体に搭載された請求項6または7記載のキャブとを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、機械本体に取付けられる支持部を、キャブ本体の各リアピラーのそれぞれの後部の少なくとも一部に沿って配設し、この支持部の上端部から、キャブ本体の天井部の少なくとも上側窓部の後側を覆う板状の覆い部を前方へ突設し、かつ、この覆い部の両側部から、天井部の両側部のそれぞれの少なくとも一部を覆うガード部を突設することで、側方荷重に対してキャブ本体を確実に保護できるとともに、支持部を機械本体に取付けるだけで取付けできるので、取付けが容易になり、かつ、支持部などがキャブ本体の側方に突出することがなく、省スペース化できる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、覆い部およびガード部を天井部の前端部まで延設することで、側方荷重に対してキャブ本体をより確実に保護できる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、ガード部を、作業装置の反対側からの側方荷重により作業装置に当接する位置まで延設することで、側方荷重が加わった際のガード部の作業装置への当接により側方荷重を作業装置によっても受けることが可能になり、側方荷重に対してキャブ本体をより確実に保護できる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、覆い部をキャブ本体の天井部に固定することで、キャブ本体を補強でき、側方荷重に対してキャブ本体をより確実に保護できる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、キャブ本体の各リアピラー間の上部にて後側面部に形成された後側窓部の下縁部に沿う連結部により支持部間を連結することで、支持部および連結部で後側窓部を遮ることがなく、オペレータの後方視界を遮ることがないとともに、支持部の強度を連結部により向上して、側方荷重に対してキャブ本体をより確実に保護できる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、キャブ用保護部材によりキャブ本体を側方荷重に対して確実に保護できることで、信頼性を向上できる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、後側窓部を遮らないキャブ用保護部材によりキャブ本体を側方荷重に対して確実に保護できることで、オペレータの後方視界を確保できるとともに、信頼性を向上できる。
【0025】
請求項8記載の発明によれば、キャブ用保護部材によりキャブ本体を側方荷重に対して確実に保護したキャブを備えることで、作業可能な領域を拡げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図5を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図5に作業機械としての油圧ショベル1を示し、この油圧ショベル1は、下部走行体2の上部に旋回部3を介して上部旋回体4が旋回可能に設けられた機械本体5を有し、上部旋回体4の前側上部左側に、オペレータの運転空間を囲むキャブ6が搭載されているとともに、上部旋回体4の前部中央に、作業装置7が作動可能に突設されている。
【0028】
そして、キャブ6は、図1乃至図4に示されるように、箱形のキャブ本体11と、このキャブ本体11を保護する着脱可能なキャブ用保護部材12とを有している。
【0029】
キャブ本体11は、上部旋回体4(図5)の旋回フレーム上に、図示されないマウント部材を介して搭載される前後に長い略四角形状の床面部15と、この床面部15の左右両側部から上方に立上がる左側面部16および右側面部17と、床面部15の前後両端部から上方に立上がる前側面部18および後側面部19と、これら側面部16,17,18,19の上部に設けられた天井部20とを備えている。
【0030】
そして、このキャブ本体11は、床面部15の四隅にそれぞれ設けられた柱状体としての左フロントピラー22、右フロントピラー23、リアピラーとしての左リアピラー24および右リアピラー25を備えている。さらに、左フロントピラー22の上端部は、左リアピラー24の上端部へと屈曲されて左サイド部26を形成し、右フロントピラー23の上端部は、右リアピラー25の上端部へと屈曲されて右サイド部27を形成し、両フロントピラー22,23の上端部間は、フロントヘッダ28により連結され、両リアピラー24,25の上端部間は、リアヘッダ29により連結され、また、両フロントピラー22,23の下端部間は、フロントクロス部材30により連結され、両リアピラー24,25の下端部間は、リアクロス部材31により連結されている。
【0031】
床面部15上には、図示しないが、オペレータが座るシートおよびオペレータが操作するコンソールなどが適宜配設されている。また、この床面部15には、コンソールなどと接続される各種配線および配管などがキャブ本体11の外部下側へと導出される図示されない孔部などが設けられている。
【0032】
左側面部16は、図3に示されるように、左フロントピラー22と左サイド部26と左リアピラー24とにより区画され、これら左フロントピラー22と左リアピラー24との間に、上端部が左サイド部26に連結された柱状体としてのドア取付用ピラー32が配設され、このドア取付用ピラー32と左フロントピラー22との間に、オペレータがキャブ本体11内に対して乗降する際に開閉されるドア33が設けられているとともに、ドア取付用ピラー32と左リアピラー24との間に、左サイドパネル34が一体に設けられている。そして、左サイドパネル34の上部には、ドア33の後方に隣接する左窓35が開口形成されている。この左窓35は、図示されない透光性部材により閉塞されている。
【0033】
右側面部17には、図1および図2に示されるように、右フロントピラー23と右サイド部27と右リアピラー25とにより区画され、右フロントピラー23と右リアピラー25との下部間に右サイドパネル36が一体に設けられ、この右サイドパネル36の上部に、右窓37が開口形成されている。この右窓37は、図示されない透光性部材により閉塞されている。
【0034】
前側面部18は、両フロントピラー22,23とフロントヘッダ28とフロントクロス部材30とにより区画されて全体に前窓41が開口形成され、この前窓41は、図示されない透光性部材により閉塞されている。
【0035】
後側面部19は、両リアピラー24,25とリアヘッダ29とにより区画され、両リアピラー24,25の下部間かつリアクロス部材31の上部に、例えば1枚板で形成されたリアパネル43が一体に設けられ、このリアパネル43の上部に後側窓部としての後窓44が開口形成されている。この後窓44は、四角形状に形成され、図示されない透光性部材により開閉可能となっている。
【0036】
ここで、フロントクロス部材30および各パネル34,36,43の下端部の内側には、取付部材としての鋼材であるハット部材Hが溶接され、これらハット部材Hが床面部15に図示されないボルトなどを介して固定されることで、各側面部16,17,18,19が床面部15と一体的となっている。
【0037】
天井部20は、図1乃至図3に示されるように、両ヘッダ28,29と両サイド部26,27とにより区画され、後側に、例えば1枚板で形成されたルーフパネル47が嵌合されているとともに、このルーフパネル47の前方に上側窓部としての天窓48が開口形成されている。この天窓48は、四角形状に形成され、図示されない扉体により開閉可能となっている。
【0038】
各フロントピラー22,23は、Aピラーとも呼ばれるものであり、ドア取付用ピラー32は、Bピラーとも呼ばれるものであり、また、各リアピラー24,25は、Cピラーとも呼ばれるものであり、これらピラー22,23,24,25,32は、それぞれ鋼板により形成された異型鋼管である。
【0039】
各サイド部26,27は、天井部20の両側部をなすもので、略水平状に形成されている。
【0040】
一方、キャブ用保護部材12は、図4に示されるように、キャブ6に側方荷重Fが加わった際に想像線Cに示されるようなキャブ本体11の変形を防止するもので、鋼鉄などの金属によりプレス成形され、図1に示されるように、一対の支持部57,58と、これら支持部57,58間を連結する連結部59と、支持部57,58の上部から前方へと延設された四角形板状の覆い部61と、この覆い部61の両側部から下方に突設されたガード部62とを備え、キャブ本体11の側面視の後部上側に対応して、側面視で逆L字のキャノピ状に屈曲形成されている。
【0041】
支持部57,58は、それぞれキャブ本体11の上下寸法よりも若干長い角柱状に設けられ、下端部がキャブ本体11の後部にて機械本体5(図5)に固定され、各リアピラー24,25の後部に沿って上下方向に配設されている。
【0042】
連結部59は、支持部57,58の上下方向の略中間部にて左右方向に設けられている。したがって、キャブ用保護部材12の後部は、両支持部57,58と、連結部59と、覆い部61の後部とで四角形状の開口部65の周囲を区画し、キャブ用保護部材12を取付けた状態で連結部59が後窓44の下縁部に沿って位置して、開口部65が後窓44に対向してこの後窓44に連通する。
【0043】
覆い部61は、支持部57,58に対して略水平に設けられ、天井部20の幅寸法よりも大きい幅寸法を有し、かつ、前端部が天井部20の前端部よりも前側まで延設されている。この結果、覆い部61は、キャブ本体11の天井部20の平面視形状よりも大きく形成され、キャブ用保護部材12を取付けた状態でキャブ本体11の天井部20の上方に位置し、天井部20の全体を覆っている。また、覆い部61の前端部には、前方に向けて下方に傾斜した傾斜板67がガード部62,62間に一体に設けられている。
【0044】
ガード部62は、覆い部61の両側部全体、かつ、支持部57,58の上端部に亘って連続したリブ状に形成され、覆い部61を補強している。したがって、ガード部62は、天井部20の前端部まで延設されている。また、このガード部62の前端部は、傾斜板67の傾斜形状に対応して上側が前側下方へ傾斜するとともに、この傾斜板67の下端部よりも下部は、後側へと傾斜している。すなわち、ガード部62の前端部は、上下方向の略中心域で前方へと突出している。そして、このガード部62は、キャブ用保護部材12を取付けた状態で天井部20の両側部である各サイド部26,27の側方に位置し、これらサイド部26,27の上部を覆うものである。
【0045】
さらに、ガード部62,62の後端部間には、覆い部61の後縁部全体から下方へと略垂直に突設された後部ガード部69が一体に設けられている。
【0046】
次に、上記第1の実施の形態の作用効果を説明する。
【0047】
油圧ショベル1(図5)にて、やむを得ず不整地、傾斜地などで作業をする場合には、キャブ用保護部材12を取付ける。
【0048】
このとき、支持部57,58の下端部を、各リアピラー24,25の後方にて機械本体5(図5)に固定することで、覆い部61が天井部20の上方を覆うとともに、ガード部62が各サイド部26,27の両側部を覆ってキャブ用保護部材12が取付けられる。
【0049】
すなわち、キャブ本体11の後側面部19は、リアパネル43が1枚板で形成されているとともに後窓44が開口形成されることにより、この後窓44の周囲、特に各リアピラー24,25の上側の強度を確保することが容易でなく、また、キャブ本体11の天井部20は、ルーフパネル47が1枚板で形成されているとともに天窓48が開口形成されることにより、各サイド部26,27の強度を確保することが容易でないので、上記のようにキャブ用保護部材12を構成して取付けると、キャブ本体11に加わるべき側方荷重Fをキャブ用保護部材12のガード部62で受けることができ、この受けた側方荷重Fを、ガード部62から支持部57,58を介して、強度が大きい機械本体5(図5)および各リアピラー24,25へと効果的に分散して、側方荷重Fに対してキャブ本体11を確実に保護できる。
【0050】
また、キャブ用保護部材12は、支持部57,58を機械本体5に取付けるだけで取付けできるので、容易に取付けでき、かつ、支持部57,58などがキャブ本体11の側方に突出することがなく、省スペース化できる。
【0051】
さらに、ガード部62を覆い部61の両側部からリブ状に突設することで、ガード部62により覆い部61を補強できる。また、覆い部61の前端部にてガード部62,62間に傾斜板67を一体に設けるとともに、覆い部61の後端部にてガード部62,62間に後部ガード部69を一体に設けることで、これら傾斜板67と後部ガード部69とが横桟として作用する。この結果、ガード部62、傾斜板67および後部ガード部69のそれぞれにより、キャブ用保護部材12自体の強度をより向上できる。
【0052】
そして、覆い部61およびガード部62を天井部20の前端部まで延設することで、天井部20の側部全体をガード部62で覆うことができ、側方荷重Fに対してキャブ本体11をより確実に保護できる。
【0053】
また、後窓44の下縁部に沿う連結部59により支持部57,58間を連結することで、支持部57,58および連結部59で後窓44を遮ることがなく、オペレータの後方視界を遮ることがないとともに、連結部59が支持部57,58に対して横桟として作用することで支持部57,58の強度を向上でき、側方荷重Fに対してキャブ本体11をより確実に保護できる。
【0054】
さらに、キャブ用保護部材12は、取付けた状態でキャブ本体11に接触していないので、キャブ本体11の上部旋回体4(図5)への荷重が変わることがないため、キャブ用保護部材12を取付けた場合に、キャブ本体11を上部旋回体4(図5)の旋回フレームに対して支持するマウント部材の各種特性などを変更する必要がなく、製造コストを抑制できる。
【0055】
そして、このようにキャブ本体11を確実に保護できることで、このキャブ6の信頼性を向上でき、さらには、このキャブ6を油圧ショベル1に搭載することで、例えば何らかのアクシデントにより油圧ショベル1(図5)が例えばキャブ6側を下側として万一転倒(横転)し、キャブ6の左側から図5に示される側方荷重Fが加わった場合などでも、オペレータを確実に保護でき、作業可能な領域を広げることができる。
【0056】
また、キャブ用保護部材12を着脱可能とすることにより、必要なときにのみキャブ用保護部材12を取付けて使用でき、キャブ本体11の側方荷重Fに対する保護強度を選択できる。
【0057】
次に、図6乃至図8に基づき、第2の実施の形態を説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、覆い部61が天井部20に固定されているものである。
【0059】
すなわち、各リアピラー24,25および各サイド部26,27のそれぞれの上部には、複数、例えば4つずつのボス71,72がそれぞれ突設され、これらボス71,72のそれぞれには、キャブ用保護部材12の取付けの際に、覆い部61の両側縁部に沿ってそれぞれ穿設された複数の挿入孔74,75に挿入されたボルト77,78がそれぞれ螺着されることで、覆い部61が天井部20に固定されている。
【0060】
そして、このように覆い部61を天井部20に固定することで、キャブ用保護部材12によりキャブ本体11を直接補強でき、側方荷重F(図4)に対してキャブ本体11をより確実に保護できるとともに、覆い部61をボルト77,78により天井部20に取付けることで、覆い部61の取付けが容易になり、製造性を向上でき、かつ、製造コストを抑制できる。
【0061】
なお、上記各実施の形態において、覆い部61は、少なくとも天井部20の天窓48の後部までを覆うように構成すればよく、このように構成した場合には、覆い部61が天窓48を覆わないので、オペレータの上方視界をキャブ用保護部材12が遮ることがない。
【0062】
次に、図9および図10に基づき、第3の実施の形態を説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
この第3の実施の形態では、覆い部61とガード部62,62とのそれぞれが、キャブ本体11の天井部20(図1)の前端部よりさらに前方に延設され、作業装置7の反対側すなわち左側からの側方荷重Fにより作業装置7と干渉する位置まで設けられている。
【0064】
そして、ガード部62,62の前端部は、キャブ本体11の各フロントピラー22,23の上端部の屈曲形状に対応して下方へと屈曲された屈曲部79となっている。
【0065】
この結果、側方荷重Fが加わった際には、矢印Dに示すように、キャブ用保護部材12の前端部が各支持部57,58側を軸として作業装置7側へと回動し、ガード部62の屈曲部79が作業装置7へ当接することで、側方荷重Fを作業装置7によっても受けることが可能になり、側方荷重Fをキャブ用保護部材12全体で効果的に受けることができ、側方荷重Fに対してキャブ本体11をより確実に保護できる。
【0066】
なお、上記各実施の形態において、キャブ用保護部材12は、キャブ本体11に取外しできないように予め取付けておいてもよい。
【0067】
また、上記キャブ6は、油圧ショベル1以外の任意の作業機械に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係るキャブの第1の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】同上キャブを示す斜視図である。
【図3】同上キャブを示す側面図である。
【図4】同上キャブを示す正面図である。
【図5】同上キャブを備えた作業機械を示す側面図である。
【図6】本発明に係るキャブの第2の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図7】同上キャブを示す斜視図である。
【図8】同上キャブを示す側面図である。
【図9】本発明に係るキャブの第3の実施の形態を示す側面図である。
【図10】同上キャブを備えた作業機械の要部を背面側から示す斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
1 作業機械としての油圧ショベル
5 機械本体
6 キャブ
7 作業装置
11 キャブ本体
12 キャブ用保護部材
19 後側面部
20 天井部
24 リアピラーとしての左リアピラー
25 リアピラーとしての右リアピラー
44 後側窓部としての後窓
48 上側窓部としての天窓
57,58 支持部
59 連結部
61 覆い部
62 ガード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のリアピラーを有する後側面部と、この後側面部の上部に設けられ前部に上側窓部を有する天井部とを備え、作業装置の側方にて機械本体に搭載される箱形のキャブ本体を保護するキャブ用保護部材であって、
キャブ本体の各リアピラーのそれぞれの後部の少なくとも一部に沿って配設され、機械本体に取付けられる支持部と、
この支持部の上端部から前方へ突設され、キャブ本体の天井部の少なくとも上側窓部の後側を覆う板状の覆い部と、
この覆い部の両側部から突設され、天井部の両側部のそれぞれの少なくとも一部を覆うガード部と
を具備したことを特徴とするキャブ用保護部材。
【請求項2】
覆い部およびガード部は、天井部の前端部まで延設されている
ことを特徴とする請求項1記載のキャブ用保護部材。
【請求項3】
ガード部は、作業装置の反対側からの側方荷重により作業装置に当接する位置まで延設されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のキャブ用保護部材。
【請求項4】
覆い部は、天井部に固定されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のキャブ用保護部材。
【請求項5】
キャブ本体の各リアピラー間の上部にて後側面部に形成された後側窓部の下縁部に沿って設けられ、支持部間を連結する連結部を具備した
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のキャブ用保護部材。
【請求項6】
左右一対のリアピラーを有する後側面部と、この後側面部の上部に設けられ前部に上側窓部を有する天井部とを備え、作業装置の側方にて機械本体に搭載される箱形のキャブ本体と、
このキャブ本体を保護する請求項1乃至4のいずれか記載のキャブ用保護部材と
を具備したことを特徴とするキャブ。
【請求項7】
左右一対のリアピラーおよびこれらリアピラー間の上部に後側窓部を有する後側面部と、この後側面部の上部に設けられ前部に上側窓部を有する天井部とを備え、作業装置の側方にて機械本体に搭載される箱形のキャブ本体と、
このキャブ本体を保護する請求項5記載のキャブ用保護部材と
を具備したことを特徴とするキャブ。
【請求項8】
機械本体と、
この機械本体に作動可能に設けられた作業装置と、
この作業装置の側方にて機械本体に搭載された請求項6または7記載のキャブと
を具備したことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−69724(P2007−69724A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258535(P2005−258535)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】