説明

キャリア付き極薄銅箔の製造方法、及び該製造方法で製造された極薄銅箔、該極薄銅箔を使用したプリント配線板、多層プリント配線板、チップオンフィルム用配線基板

【課題】5μm以下の極薄銅箔で、ピンホール数が少なくかつ表面粗さの小さいキャリア付き極薄銅箔とその製造方法を提供し、更に、かかるキャリア付き極薄銅箔を使用したファインパターン用途のプリント配線板、多層プリント配線板、チップオンフィルム用配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理し、該研磨箔の研磨面を電気化学的に処理を施して表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層、極薄銅箔を順に積層することを特徴とするキャリア付き極薄銅箔の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャリア付き極薄銅箔の製造方法並びに該製造方法で製造されたキャリア付き極薄銅箔に関するもので、特に高密度極微細配線(ファインパターン)用途のプリント配線板、多層プリント配線板、チップオンフィルム用配線基板に適したキャリア付き極薄銅箔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、次のようにして製造される。
まず、ガラス・エポキシ樹脂やガラス・ポリイミド樹脂などから成る電気絶縁性の基板の表面に、表面回路形成用の薄い銅箔を置いたのち、加熱・加圧して銅張積層板を製造する。
ついで、この銅張積層板に、スルーホールの穿設、スルーホールめっきを順次行ったのち、該銅張積層板表面の銅箔にエッチング処理を行って所望の線幅と所望の線間ピッチを備えた配線パターンを形成し、最後に、ソルダレジストの形成やその他の仕上げ処理が行われる。
【0003】
この銅張積層板に用いる銅箔は、基板に熱圧着する側の表面を粗化面とし、この粗化面で該基材に対するアンカー効果を発揮させ、これにより、該基板と銅箔との接合強度を高めてプリント配線板としての信頼性を確保している。さらに最近では、銅箔の粗化面をあらかじめエポキシ樹脂のような接着用樹脂で被覆し、該接着用樹脂を半硬化状態(Bステージ)の絶縁樹脂層にした樹脂付き銅箔を表面回路形成用の銅箔として用い、その絶縁樹脂層の側を基材に熱圧着してプリント配線板、特にビルドアップ配線板を製造することが行われている。ビルドアップ配線板とは、多層プリント配線板の一種で、絶縁基板上に1層ずつ絶縁層、導体パターンの順に形成し、レーザー法やフォト法により開口した穴(ビア)にめっきを施し、層間を導通させながら配線層を積み上げた配線板をいう。
この配線板は、各種電子部品の高度集積化に対応して、ビアが微細化できることより、配線パターンも高密度化することが可能であるため、微細な線幅や線間ピッチの配線から成る配線パターン、いわゆるファインパターンのプリント配線板の要求が高まってきており、例えば、半導体パッケージに使用されるプリント配線板の場合は、線幅や線間ピッチがそれぞれ30μm前後という高密度極微細配線を有するプリント配線板の提供が要求されている。
【0004】
このようなファインパターンプリント配線板用の銅箔として、厚い銅箔を用いると、基材表面に至るまでのエッチング時間が長くなり、その結果、形成される配線パターンにおける側壁の垂直性が崩れ、形成する配線パターンの配線線幅が狭い場合には断線に結びつくこともある。従って、ファインパターン用途に使われる銅箔としては、厚さ9μm以下の銅箔が要望される。
しかし、このような薄い銅箔(以下、極薄銅箔と云うことがある)は機械的強度が弱く、プリント配線板の製造時に皺や折れ目が発生しやすく、銅箔切れを起こすこともあるため、ファインパターン用途に使われる極薄銅箔としては、キャリアとしての金属箔(以下、「キャリア箔」という)の片面に剥離層を介して極薄銅箔層を直接電着させたキャリア付き極薄銅箔が使用される。
現在、キャリア付き銅箔の極薄銅箔は厚さ5μm程度のものが最も多く使用されており、更に薄箔化が求められている。
【0005】
ところで近年、配線板において高密度化が進んでいるのがパソコン、携帯電話やプラズマディスプレー装置(PDA)等の表示部である液晶ディスプレイを駆動するIC実装基板である。IC実装基板はICが直接基板フィルム上に載せられるところからチップオンフィルム(COF)とも呼ばれている。
COF実装では銅箔による配線パターンを形成したフィルムを透過する光によってIC位置を検出する。しかし、従来のキャリア付き極薄銅箔を使用したフィルムの視認性(光によるIC位置検出能力)はあまり良くない。その原因は、キャリア付き極薄銅箔の表面粗さが粗いことにある。光を透過させるフィルム部は、銅箔で形成される回路部以外の不要な銅箔部がエッチング除去された部分であり、銅箔をフィルムに貼り付けた時に銅箔表面の凹凸がフィルム面上に転写されて残り、フィルム表面の凹凸が大きくなり、光が通過する際、その凹凸のため直進できる光の量が少なくなり視認性が悪くなるためである。即ち、貼り付ける銅箔表面の粗さが粗いと視認性を悪くすることになる。
【0006】
キャリア付き極薄銅箔は、キャリア箔の片面に、剥離層と電気銅めっき層がこの順序で形成されたものであり、該電気銅めっき層の最外層表面が粗化面に仕上げられている。電気銅めっき層が回路基板用銅箔として用いられるが、キャリア箔の表面粗さの状態が、電気銅めっき層のピンホール数またはCOFにおける視認性に非常に大きく影響する。そのため、従来より電解銅箔をキャリア箔として使用する場合は、粗さの小さい光沢面側(電解ドラム側)を使用することにより、ピンホール数を極力減少させ表面粗さを小さくしている(特許文献1参照)。しかし、電解銅箔の光沢面の粗さは電解ドラムの表面粗さに依存するため、表面粗さの管理を電解ドラムの表面を管理することにより実施してきているが、管理水準には限界があり、また管理していくためには維持管理費が増加するため高価となり、通常製品においてそこまでの費用をかけられないのが現実である。
【0007】
また、キャリア箔に圧延材を使用する場合は、電解銅箔と比較すると圧延材は表面粗さが小さいため電解銅箔をキャリア箔として使用する場合より視認性に優れるものの、圧延材の現行材料費は電解銅箔より高価であること、表面に圧延スジが残ることがあること等でユーザーの仕様を十分満足するキャリア箔を提供することは極めて困難であった。
【特許文献1】特開2000−269637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、キャリア付き極薄銅箔はそのキャリア箔の表面粗さに、極薄銅箔のピンホール数、表面粗さ(フィルムの視認性)が依存することが解明されており、極薄銅箔の厚さが薄ければ薄いほど依存度が大きくなることは分かっている。しかし、現行の製品加工コストを変えずに、かつユーザー仕様を十分満足するような表面粗さの小さいキャリア箔を使用したキャリア付き極薄銅箔の製造方法が開発されていないのが現状である。
【0009】
本発明は、かかる現状に鑑み、5μm以下の極薄銅箔においてもピンホール数が少なくかつ表面粗さの小さいキャリア付き極薄銅箔を、現行の製品加工コストを変えずに、かつユーザー仕様を十分満足する製品として製造するために、電解もしくは圧延で製造された銅または銅合金からなるキャリア銅箔の表面を機械的研磨、化学的研磨、電気化学的溶解或いは平滑めっき処理方法を単独で、或いは2つまたはそれ以上を組み合わせた工程にて平滑化し、かかる平滑化したキャリア箔を使用し、ピンホール数の少ない、表面粗さの小さいキャリア付き極薄銅箔とその製造方法を提供し、更に、かかるキャリア付き極薄銅箔を使用したファインパターン用途のプリント配線板、多層プリント配線板、チップオンフィルム用配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも片面の平均表面粗度が機械的研磨、化学的研磨、電気化学的溶解或いは平滑めっき処理方法を単独で、或いは2つまたはそれ以上を組み合わせてRz:0.01〜2.0μmに平滑化し、該平滑化されたキャリア銅箔の表面に剥離層、極薄銅箔を順に積層してなるキャリア付き極薄銅箔の製造方法であり、該製造方法で製造されたキャリア付き極薄銅箔である。
【0011】
キャリア箔の表面粗さがRz:2.0μm以上では、極薄銅箔の表面粗さも2μm以上となり、例えば、この極薄銅箔を使用してCOF実装する場合、極薄銅箔による配線パターン形成の際にフィルムに銅箔の表面凹凸が転写されてフィルムの凹凸が粗くなり、その結果、透過度は0に近いものになる。また、Rz:0.01μm以下の表面粗さは、技術上安定して箔を製造することが難しく、高価となるため現実性に欠けることから、キャリア箔の平滑化させる面の平均表面粗度はRz:0.01〜2.0μmとすることが好ましい。
【0012】
前記剥離層は、Cr、Ni,Co,Fe、Mo、Ti、W、Pまたは/及びこれらの合金層またはこれらの水和酸化物で形成し、又は有機被膜で形成する。
【0013】
本発明のキャリア付き極薄銅箔の製造方法は、銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理して該表面の平均表面粗度がRz:0.01〜10μm範囲内に平滑処理し、該研磨箔の研磨面を電気化学的に処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層・極薄銅箔を順に積層することを特徴とする 。
【0014】
また、本発明のキャリア付き極薄銅箔の製造方法は、銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理して該表面の平均表面粗度がRz:0.01〜10μm範囲内に平滑処理し、該研磨箔の研磨面を化学研磨し、前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層・極薄銅箔を順に積層することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のキャリア付き極薄銅箔の製造方法は、銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理して該表面の平均表面粗度をRz:0.01〜10μmの範囲内に平滑処理し、平均表面粗度がRz:0.01〜10μmの範囲内にある銅箔表面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層・極薄銅箔を順に積層することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のキャリア付き極薄銅箔の製造方法は、銅箔の少なくとも片面を化学研磨し、該表面の平均表面粗度をRz:0.01〜10μmの範囲内に平滑処理し、平均表面粗度がRz:0.01〜10μmの範囲内にある銅箔表面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層・極薄銅箔を順に積層することを特徴とする。
【0017】
また、本発明のキャリア付き極薄銅箔の製造方法は、銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理した該表面を更に化学研磨し、該表面の平均表面粗度をRz:0.01〜10μmの範囲内に平滑処理し、平均表面粗度がRz:0.01〜10μmの範囲内にある銅箔表面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層・極薄銅箔を順に積層することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のキャリア付き極薄銅箔の製造方法は、銅箔の少なくとも片面を電気化学的に処理を施し、該表面の平均表面粗度をRz:0.01〜10μmの範囲内に平滑化し、平均表面粗度がRz:0.01〜10μmの範囲内にある銅箔表面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層・極薄銅箔を順に積層することを特徴とする。
【0019】
また、本発明のキャリア付き極薄銅箔の製造方法は、銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理した該表面を更に電気化学的に処理を施し、該表面の平均表面粗度をRz:0.01〜10μmの範囲内に平滑化し、平均表面粗度がRz:0.01〜10μmの範囲内にある銅箔表面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層・極薄銅箔を順に積層することを特徴とする。
【0020】
更に、本発明はかかるキャリア付き極薄銅箔を使用し、高密度極微細配線を施したファ
インパターン用途のプリント配線板、多層プリント配線板、チップオンフィルム用配線板である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるキャリア付き極薄銅箔の製造方法では、予めキャリア箔の表面を平滑化することで、ピンホール数が少なくかつ視認性が良好な製品を提供できる。
また、本発明は、従来、キャリア付き銅箔のキャリ箔表面の粗さで左右されていた極薄銅箔のピンホール数及び視認性をキャリア箔の表面を平滑化することでピンホール数が少なく、かつ視認性の良いキャリア付き極薄銅箔とすることができ、ユーザーニーズを満足し、製造コストにおいても通常製品の銅(合金)箔を採用できるため従来とほとんどかわらない価格で提供することができる等、優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
一般にキャリア箔としては、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、チタン合金箔、銅箔、銅合金箔等が使用可能であるが、コストの点から、電解銅箔、電解銅合金箔、圧延銅箔または圧延銅合金箔が好ましい。また、その厚みは7〜200μmの厚さの箔を使用することが好ましい。
キャリア箔の厚みについては、厚さが7μm以下の薄い銅箔を採用すると、この銅箔の機械的強度が弱いためにプリント配線板等の製造時に皺や折れ目が発生しやすく、銅箔切れを起こす危険性があり、7μm以下の箔はキャリア箔としての役割を果たすことが難しい。またキャリア箔の厚さが200μm以上になると製品に対しての単位コイル当たりの重量(コイル単重)が増すことで生産性に大きく影響するとともに設備上もより大きな張力を要求され、設備が大がかりとなって好ましくなく、適度の厚さは7〜200μmである。
【0023】
キャリア箔としては、少なくとも片面の表面粗さがRz:0.01〜10μmの銅箔、銅合金箔を採用する(アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、チタン合金箔等も使用しうるが、本発明では上述したように銅箔を採用する)。なお、表面粗さRz:10μm以上の銅箔についても予め機械的研磨を施すことで、平滑化することができる。また、表面粗さがRz:10μm以下の銅箔においても、より粗さの均一性の向上を目的として機械的研磨、化学的研磨、電気化学的溶解を施し、平滑化することも効果的である。
【0024】
前記特許文献1に開示されているように平均表面粗度Rzが0.01μm未満であれば平滑化する必要性がなく、直ちに剥離層、極薄銅箔を積層できるが、Rz:10μm以上になると化学的研磨・電気化学的溶解法で平滑化・平滑めっきによる平滑化するには非常に長い処理時間を必要とし、生産性が悪く、非現実的である。そこで、化学研磨・電気化学的溶解法・平滑めっきにて平滑化する場合には、本発明では予め機械的研磨でRz:10μm以下にまで前処理し、次いで化学研磨・電気化学的溶解法・平滑めっきで平滑化し、処理時間を短縮して生産性を向上させることが好ましい。
【0025】
特に平滑性処理前のキャリア箔としてはRz:0.5〜5.0μmの範囲であることが望ましい。特に電解銅箔をキャリア箔の元箔として使用する場合には、表面粗さのバラツキが非常に大きく、処理の均一性を失う可能性があるため機械的研磨を行ない、均一性を持たせるとよい。このときの機械的研磨の最終的な粗さは、後処理の処理時間を考慮してRz:10μm以下、好ましくはRz:0.5〜5.0μmの範囲の銅箔とすることが好ましい。
【0026】
キャリア箔を化学的に研磨する場合は、処理液を硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等が入った酸性のもの、又はシアン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピロリン酸等が入ったアルカリ性のものを使用することが好ましい。処理時間を短くするため、浴種によって異なるが、浴温は10℃〜70℃が好ましい。温度が70℃以上では水分の蒸発が激しく液管理を行なう上で好ましくなく、また10℃以下では、溶解速度が遅くなるため生産性が悪くなる。
処理時間を短くする方法として、ポンプ、エアー、攪拌機等にて液を攪拌することが望ましい。また、硫酸浴などの酸浴には過酸化水素などを入れ溶解速度を増加させることも好ましい。
【0027】
キャリア箔の表面を電気化学的に溶解する場合は、銅箔を陽極(アノード)として処理
液が満たされた電解槽に通す。処理槽内には表面を平滑にしようとしている側の銅箔面の対面に導電性をもつ材質の板(カソード)をセットする。カソードとなる板の材質としては、電解液である酸、アルカリ性に溶解しずらい白金、チタン、SUS等を使用することが好ましい。また、処理液は、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等が入った酸性のもの、又はシアン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピロリン酸等が入ったアルカリ性のものを使用することが好ましい。
【0028】
電気化学的に溶解する電解槽内では、アノードである銅箔、銅合金箔表面に凹凸があるため、凸部に溶解電流が流れ易く、優先的に凸部の方が溶解され平滑化を可能にさせる。表面状態、材質、浴種によって電流密度、処理時間の条件は変わるが、電流密度の範囲は、1〜100A/dmの範囲で流すと良い。電流密度が、1A/dm以下では生産性がないばかりか凹凸部に流れる電流差があまりないことから平滑化の効果がなく、また100A/dm以上では電流効率が悪くなり、高い電流を流した効果はあまり得られないからである。特に、平滑性を得るためには、電流効率を考慮しつつ高電流密度で処理時間は短めにする方が凸部と凹部とに流れる電流の差が大きくなるため平滑化に好ましい。このようなことからパルス電流などを使用するとより効果的である。
【0029】
表面の平滑化として上記のように化学的に研磨し、或いは電気化学的に溶解する方法の他に、金属を付着させ平滑性をあげる方法がある。この方法は、前記した電解また圧延にて製造した箔の凹凸表面に、硫酸銅めっき浴、シアン化銅めっき浴、ほうフッ化銅めっき浴、ピロリン酸銅めっき浴、スルファミン酸銅めっき浴により平滑性のあるめっき被膜を形成させるめっき条件にて平滑性めっき被膜を形成する。平滑性のあるめっき被膜を形成させるためにめっき浴に添加剤を入れたアルカリ又は酸性のめっき浴を使用し、表面の凹凸を無くす方法も使用可能である。銅箔表面を平滑化させる添加剤含有めっき浴としては、一般に光沢めっき浴として文献で紹介しているか又は市販されている浴(例えば硫酸銅めっき浴、ピロ燐酸銅めっき浴、シアン化銅めっき浴、スルファミン酸銅めっき浴等に光沢剤を加えためっき浴)を使用することができ、付着させる金属は銀、スズ、ニッケル、亜鉛等光沢めっき浴として知られている金属浴を使用することができる。めっき浴の各成分組成、濃度、温度、添加剤の量については、各浴種によってさまざまであるが、電流密度的に0.1A/dm以上で使用できるめっき液が好ましい。
【0030】
また金属付着量は、元箔および目標とする表面粗さによって変わるが、0.01μm以上のめっき厚を付着させる必要がある。付着量が0.01μm以下では目的とする効果がでないためである。金属を付着させた銅箔の断面を観察すると、元箔と、結晶粒の大きさ、形状が違う粒の2層の形でめっきされていることが確認される。また、表面粗さを小さくするため、表面に付着させる結晶粒の大きさは、20μm以下が好ましい。また、上記方法にて研磨、溶解または/及びめっきを行った銅箔の平均表面粗さは、Rz:0.1〜2.0(μm)であり、特に視認性及びファインパターン用に対しては銅箔の平均表面粗さがRz:0.1〜1.0μm程度であることが好ましい。
【0031】
平滑化した表面をもつキャリア箔上に設ける剥離層は、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pまたは/及びこれらの合金層またはこれらの水和酸化物からなる層、または有機被膜であることが好ましい。
クロム合金としては、ニッケル−クロム、コバルト−クロム、クロム−タングステン、クロム−銅、クロム−鉄、クロム−チタンが挙げられる。
三元系合金めっきとしては、ニッケル−鉄−クロム、ニッケル−クロム−モリブデン、ニッケル−クロム−タングステン、ニッケル−クロム−銅、ニッケル−クロム−リン、コバルト−鉄−クロム、コバルト−クロム−モリブデン、コバルト−クロム−タングステン、コバルト−クロム−銅、コバルト−クロム−リン等があげられる。
また、有機皮膜としてはベントリアゾール等が好ましい。
【0032】
これらの剥離層を形成する金属及びそれらの水和酸化物は電気めっきにより形成することが好ましい。なお、キャリア付き極薄銅箔を絶縁基材に加熱プレス後の剥離性の安定化を図る上で、剥離層の下地にニッケル・鉄またはこれらの合金層を用いると良い。キャリア箔を剥離する際の剥離強度は、これらの金属の付着量により影響される。即ち、剥離層が厚いと(めっき付着量が多いと)キャリア箔表面を、剥離材を構成する金属(以下単に剥離材金属という)が完全に覆った状態になり、剥離強度は剥離材金属表面とこの後に積層される極薄銅箔との結合面が、引き剥がす力になると考えられる。これに対して、剥離層の厚さが薄い(めっき付着量が少ない)場合には、キャリア箔表面が剥離材金属で完全に覆われておらず、剥離強度は、僅かに露出しているキャリア箔及び剥離材金属とこの上に付着させる極薄銅箔との結合力が、引き剥がす力になると考えられる。従って、剥離層を形成する金属めっきの付着量によりキャリア箔と極薄銅箔との剥離強度は変化するが、ある程度剥離層を厚く形成(付着)すると剥離強度はそれ以上変化しなくなり、実験によると、剥離層を形成する金属の付着量としては、100mg/dm以上にめっき付着量を多くしても剥離強度は変化しない結果が得られている。
【0033】
剥離材金属のみで剥離層を形成することによりキャリア箔と極薄銅箔との高温剥離は容易になるが、さらにその金属表層に水和酸化物が存在するとさらに剥離性を向上させることが可能となる。
また、剥離層に有機被膜を使用する場合は、有機被膜としては、一般的に銅の防錆として市販されているBTA・シランなどが好ましい。その有機被膜の厚みは、1Å〜1000Åが好ましい。有機被膜厚が1Å以下では、薄すぎるため剥離層としての役割を果たさず、また、1000Å以上では剥離層上に形成する銅めっき層(極薄銅箔)がうまく形成されないためである。
【0034】
剥離層の上に、硫酸銅めっき浴、シアン化銅めっき浴、ほうフッ化銅めっき浴、ピロリン酸銅めっき浴、スルファミン酸銅めっき浴などを使用し、極薄銅箔を形成する。
この時、剥離層の表層に水和酸化物が存在すると、極薄銅箔形成条件(めっき液中でのディップ時間・電流値・めっき液切り・水洗状態・剥離層金属めっき直後のめっき液pH等)が表層に存在する水和酸化物に密接に関係し、この水和酸化物層の残存状態が、高温剥離性に大きく影響すると思われる。剥離層上への極薄銅箔のめっきは、剥離層を安定に存在させるためにはpH3〜12の間にある銅めっき浴を使用することが特に好ましい。このめっき浴を使用することで剥離層の剥離性を損なわずにめっきを行うことができ、剥離性もより安定性を増す。しかし、剥離層上への極薄銅箔のめっきは、その剥離性ゆえに、均一なめっきを行うことが非常に難しく、極薄銅箔層のピンホールの数が多くなる。この対策としては、ストライク銅めっきを行うとよい。ストライク銅めっきを施すことで剥離層上に均一なめっきを施すことができ、極薄銅箔層のピンホールの数は著しく減少する。
【0035】
ストライク銅めっきで付着させる銅めっき厚は0.001〜1μmが好ましく浴種によってその条件はいろいろ存在するが、電流密度としては、0.1A/dm〜20A/dm、めっき時間としては0.1秒〜300秒が好ましい。電流密度が0.1A/dm以下では、剥離層上にめっきを均一にのせることが難しく、また、20A/dm以上ではめっき液の金属濃度を薄めているストライク銅めっきでは、焼けめっきが発生し、均一な極薄銅箔層(銅めっき層)を得られないためである。また、めっき時間については、0.1秒以下では、十分なめっき層を得るためには短く、300秒以上では生産性が悪く、また処理槽の長さを考えると設備費もかかり好ましくない。ストライク銅めっきは剥離層上にピロリン酸銅めっき浴で剥離層の剥離性を損なわないように0.001μm以上の銅めっき層をつけ、その後、硫酸銅めっき浴、ほうフッ化銅めっき浴、ピロリン酸銅めっき浴、スルファミン酸銅めっき浴シアン化銅めっき浴で銅めっきを行い極薄銅箔とする。
なお、ストライクめっき浴としてはシアン化銅めっきも使用可能である
【0036】
また、極薄銅箔表面の樹脂密着性を得るため極薄銅箔表面に粗化処理を行い、粗化処理面の平均表面粗度をRz:0.2〜3.0(μm)にすると良い。粗化処理は、表面粗さRz:0.2(μm)以下では、密着性にあまり影響を与えないため粗化を行ってもほとんど意味がなく、粗さが3(μm)あれば、充分な密着性を得られることからそれ以上の粗化は必要ないと考えられる。
【0037】
本発明は、上記キャリア付き極薄銅箔をファインパターン用途のプリント配線板、多層プリント配線板、チップオンフィルム用配線板製造用に使用することにより、基板に高密度極微細配線を施すことができる。また、視認性が改善されるため、IC等の電子機器の製造を効率化することができる。
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
1.キャリア箔の平滑化
Rz:2.1μmの電解銅箔(厚さ:35μm)を陽極にして、硫酸濃度50g/lの電解液の中で、電流密度25A/dmになる電流を20秒間流し表面を溶解して平滑化し、Rz:0.65μmの平滑表面を得た。この平滑化表面を有する電解銅箔をキャリア銅箔とした。
2.剥離層の形成
平滑化したキャリア銅箔の平滑化表面に、クロムの電気めっきを連続的に行い、付着量0.50mg/dmのクロムめっき剥離層を形成した。この表層には、水和酸化物膜が形成されている。
3.極薄銅箔の形成
次いで、このクロムめっき剥離層の上に、
Cu・3HO : 85g/l
: 350g/l
NHOH(28%) : 5ml/l
pH : 8.5
浴温 : 50℃
のめっき浴を使用し、電流密度5A/dmでめっきを行い3μm厚さの極薄銅箔を形成させ、キャリア付き極薄銅箔とした。
次いで、公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅箔上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行い、次に、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン:2.0g/lの水溶液に5秒間浸漬したのち取り出し、温度100℃の温風で乾燥してシランカッ
プリング剤処理(後処理)を行い、キャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0040】
(実施例2)
1.キャリア箔の平滑化
Rz:1.7μmの銅箔(厚さ:55μm)を機械研磨して平均表面粗さRz:1.2μmに均一化した後、この箔を陽極にして、ピロリン酸濃度:100g/lの電解液の中で、電流密度:22A/dmになる電流を50秒間流し表面を溶解させRz:0.55μmの平滑表面銅箔(キャリア銅箔)とした。
2.剥離層の形成
このキャリア銅箔の平滑化面に、クロムの電気めっきを連続的に行い、付着量0.50mg/dmのクロムめっき剥離層を形成した。この表層には、水和酸化物膜が形成されている。
3.極薄銅箔の形成
このクロムめっき層の上に、
Cu・3HO : 30g/l
: 300g/l
pH : 8
電流密度 : 1.5A/dm
の条件で、30秒間ストライク銅めっきを施し、その後
Cu・3HO : 85g/l
: 350g/l
NHOH(28%) : 5ml/l
pH : 8.5
電流密度 : 4A/dm
の条件で、3μmの厚さに極薄銅層を電気めっきした。
次いで、公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅箔上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行いキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0041】
(実施例3)
1.キャリア箔の平滑化
Rz:1.5μmの電解銅箔(厚さ:35μm)を、硫酸濃度100g/l、過酸化水素溶液5%を入れた溶解液の中で、120秒間浸漬させ、平滑化しRz:1.2μmの平滑表面を得た。この平滑化表面を有する電解銅箔をキャリア銅箔とした。
2.剥離層の形成
平滑化したキャリア銅箔の平滑化表面に、Ni−Moの電気めっきを連続的に行い、付着量0.30mg/dmのNi−Moめっき剥離層を形成した。
3.極薄箔の形成
次いで、Ni−Mo剥離層の上に、
Cu・3HO : 85g/l
: 350g/l
NHOH(28%) :5ml/l
pH : 8.5
浴温 : 50℃
のめっき浴を使用し、電流密度5A/dmでめっきを行い5μm厚さの極薄銅箔を形成させ、キャリア付き極薄銅箔とした。
次いで、公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施し、防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅箔層上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行ないキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0042】
(実施例4)
1.キャリア箔の平滑化
Rz:1.7μmの銅箔(厚さ:55μm)を機械研磨して平均表面粗さRz:1.2μmに均一化した後、塩酸:60g/l 温度:50℃の溶解液の中に、50秒間浸漬し、表面を溶解させRz:1.0μmの平滑表面銅箔(キャリア銅箔)とした。
2.剥離層の形成
このキャリア銅箔の平滑化面に、クロムの電気めっきを連続的に行い、付着量0.50mg/dmのクロムめっき剥離層を形成した。この表層には、水和酸化物膜が形成されている。
3.極薄銅箔の形成
このクロムめっき層の上に、
Cu・3HO : 30g/l
: 300g/l
pH : 8
電流密度 : 1.5A/dm
の条件で、30秒間ストライク銅めっきを施し、その後
Cu・3HO : 85g/l
: 350g/l
NHOH(28%) : 5ml/l
pH : 8.5
電流密度 : 4A/dm
の条件で、3μmの厚さに極薄銅箔を電気めっきした。
次いで、公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。粗化処理を施した極薄銅層上に、公知の方法により、クロメート処理を行いキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0043】
(実施例5)
1.キャリア箔の平滑化
Rz:1.9μmの電解銅箔(厚さ:30μm)を陰極にして、銅濃度:50g/l、
硫酸濃度:100g/l、添加剤を微量加えた光沢銅めっき浴を使用し電流密度5A/dmになる電流を1.5分流し、表面の凹部を埋め尽くす形でめっきを行いRz:0.5μmに平滑化した。
2.剥離層の形成
平滑化したキャリア銅箔の平滑化面に、Ni−Coの電気めっきを行ない、付着量1.0mg/dmのNi−Coの剥離層を形成し、その極表層を酸化させた。
3.極薄銅箔の形成
次いで、このNi−Co層の上に、
Cu・3HO : 30g/l
: 300g/l
pH : 8
電流密度 : 1.5A/dm
の条件で、60秒間ストライク銅めっきを施し、その後
Cu・3HO : 85g/l
: 350g/l
NHOH(28%) : 5ml/l
pH : 8.5
電流密度 : 4A/dm
の条件で、3μmの厚さの極薄銅箔を電気めっきで形成した。
更に、公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅箔上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行いキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0044】
(実施例6)
1.キャリア箔の平滑化
Rz:10μmの電解銅箔(厚さ:35μm)を機械研磨で粗さRz:1.3μmの均一表面とし、
シアン化第一銅 : 65g/l
遊離シアン化ナトリウム : 25g/l
に添加剤を微量加えた光沢銅めっき浴を使用し
電流密度 : 34/dm
の電流を3分流し、表面の凹部を埋め尽くす形でめっきを行いRz:0.45μmに平滑化した。
2、剥離層の形成
平滑化したキャリア銅箔の平滑化面に、クロムの電気めっきを連続的に行い、付着量0.50mg/dmのクロムめっき剥離層を形成した。この表層には、水和酸化物膜が形成されている。
3、極薄銅箔の形成
このクロムめっき層の上に、
Cu・3HO : 30g/l
: 300g/l
pH : 8
電流密度 : 1.5A/dm
の条件で、60秒間ストライク銅めっきを施し、更に、
Cu・3HO : 30g/l
: 300g/l
pH : 8
電流密度 : 4A/dm
の条件で厚さ1μmのめっきを施した後
Cu濃度 : 50g/l
: 100g/l
電流密度 : 20A/dm
の条件で、3μmの厚さの極薄銅箔になるように電気めっきを施した。
その後公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅層上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行いキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0045】
(実施例7)
1.キャリア箔の平滑化
Rz:1.3μmの銅箔(厚さ:33μm)を、硫酸:60g/l、温度:50℃の溶解液の中に、110秒間浸漬し、表面を溶解させRz:1.1μmの平滑表面銅箔を、陰極にして、銅濃度:60g/l、硫酸濃度:100g/l、添加剤を微量加えた光沢銅めっき浴を使用し電流密度6A/dmになる電流を1.2分流し、表面の凹部を埋め尽くす形でめっきを行いRz:0.5μmに平滑化した。
2.剥離層の形成
平滑化したキャリア銅箔の平滑化面に、ベントリアゾールを塗布し(有機被膜)、剥離層を形成した。
3.極薄銅箔の形成
次いで、この有機被膜の上に、
Cu・3HO : 30g/l
: 300g/l
pH : 8
電流密度 : 1.5A/dm
の条件で、60秒間ストライク銅めっきを施し、その後
Cu・3HO : 85g/l
: 350g/l
NHOH(28%) : 5ml/l
pH : 8.5
電流密度 : 4A/dm
の条件で、3μmの厚さの極薄銅箔を電気めっきで形成した。
更に、公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅層上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行いキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0046】
(実施例8)
1.キャリア箔の平滑化
Rz:2.5μmの銅箔(厚さ:55μm)を機械研磨して平均表面粗さRz:1.3μmに均一化した後、硝酸:30g/l、温度:40℃の溶解液の中に、30秒間浸漬し、表面を溶解させRz:1.1μmの平滑表面銅箔を陰極にして、銅濃度:30g/l、硫酸濃度:100g/l、添加剤を微量加えた光沢銅めっき浴を使用し電流密度7A/dmになる電流を1.0分流し、表面の凹部を埋め尽くす形でめっきを行いRz:0.6μmに平滑化した。
2.剥離層の形成
平滑化したキャリア銅箔の平滑化表面に、Cr−Coの電気めっきを連続的に行い、付着量2.0mg/dmのめっき剥離層を形成した。
3.極薄銅箔の形成
次いで、このCr−Coの上に、
Cu・3HO : 85g/l
: 350g/l
NHOH(28%) : 5ml/l
pH : 8.5
電流密度 : 6A/dm
の条件で、3μmの厚さの極薄銅箔を電気めっきで形成した。
更に、公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅層上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行いキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0047】
実施例9
1.キャリア箔の平滑化
Rz:1.9μmの電解銅箔(厚さ:35μm)を陽極にして、硫酸濃度50g/lの電解液の中で、電流密度15A/dmとなる電流を10秒間流し表面を溶解、平滑化しRz:1.2μmの平滑表面を得た。この平滑化表面を有する電解銅箔を陰極にして、硫酸ニッケル:220g/l、塩化ニッケル:40g/l、ホウ酸:15g/l、添加剤を微量加えた光沢Niめっき浴を使用し電流密度3A/dmになる電流を2.5分流し、表面の凹部を埋め尽くす形でめっきを行い平滑化したRz:0.65μmの銅箔(キャリア銅箔)とした。
2.剥離層の形成
平滑化したキャリア銅箔の平滑化面に、クロムの電気めっきを連続的に行い、付着量0.50mg/dmのクロムめっき剥離層を形成した。この表層には、水和酸化物膜が形成されている。
3.極薄銅箔の形成
クロムめっき層の上に、
Cu・3HO : 30g/l
: 250g/l
pH : 8
電流密度 : 1.5A/dm
の条件で、60秒間ストライク銅めっきを施し、その後
Cu濃度 : 30g/l
SO : 100g/l
電流密度 : 10A/dm
の条件で、3μmの厚さの極薄銅箔を電気めっきで形成した。
更に、公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅層上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行いキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0048】
実施例10
1.キャリア箔の平滑化
Rz:3.5μmの銅箔(厚さ:55μm)を機械研磨した電解銅箔を陽極にして、
ピロリン酸濃度 : 80g/l
電流密度 : 20A/dm
になる電流を60秒間流し表面を溶解させRz:0.85μmの平滑化表面とした。
次いで、
銅濃度 : 50g/l
硫酸濃度 : 90g/l
に添加剤を微量加えた光沢銅めっき浴を使用し電流密度3A/dmになる電流を1.0分流し、表面の凹部を埋め尽くす形でめっきを行いRz:0.45μmのキャリア箔とした。
2.剥離層の形成
該キャリア銅箔の平滑化面に、ニッケル−クロム合金の電気めっきを連続的に行い、付着量1.50mg/dmのニッケル−クロム合金めっき剥離層を形成した。
3.極薄銅箔の形成
このニッケル−クロム合金めっき層の上に、
Cu・3HO : 30g/l
: 300g/l
pH : 8
電流密度 : 1.5A/dm
の条件で、60秒間ストライク銅めっきを施し、更に、
Cu濃度 : 50g/l
: 100g/l
電流密度 : 20A/dm
の条件で、3.0μmの厚さの極薄銅箔になるように電気めっきした。
最後に公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅層上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行いキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0049】
比較例1
1.キャリア箔
キャリア箔の表面粗さRz:3.2μmの銅箔をキャリア箔とする。
2.剥離層の形成
前記キャリア銅箔に、クロムの電気めっきを連続的に行い、付着量1.5mg/dmのクロムめっき剥離層を形成した。表層の水和酸化物が形成されている。
3.極薄銅箔の形成
このクロムめっき層の上に、
Cu・3HO : 30g/l
: 300g/l
pH : 8
電流密度 : 1.5A/dm
の条件で、60秒間ストライク銅めっきを施し、更に、
Cu・3HO : 30g/l
: 300g/l
pH : 8
電流密度 : 4A/dm
の条件で厚さ1μmめっき後
Cu濃度 : 50g/l
: 100g/l
電流密度 : 20A/dm
の条件で、3μmの厚さの極薄銅箔になるように電気めっきを行なった。
更に、公知の方法により、銅の粒子を付着させる粗化処理を施した。防錆処理および表面処理として、粗化処理を施した極薄銅層上に、公知の方法により、亜鉛めっきおよびクロメート処理を行いキャリア箔付き極薄銅箔を得た。
【0050】
ピンホール、視認性確認の評価用サンプルの作成
上記実施例及び比較例で作成したキャリア付き極薄銅箔のピンホール数およびキャリアピールの評価用サンプルを下記のように作成し評価を行った。
(1)ピンホール測定用並びにキャリアピール測定用片面銅張積層板の作成
キャリア箔付き極薄銅箔(実施例1〜10、比較例1)を縦250mm、横250mmに切断したのち、極薄銅箔側の面を、熱圧着後に厚さ1mmとなる枚数のガラス繊維エポキシプレプリグシート(FR−4)の上におき、全体を2枚の平滑なステンレス鋼板で挟み、温度170℃、圧力50kg/cmで60分間熱圧着し、キャリア箔付きのFR−4片面銅張積層板を作成した。
【0051】
(2)視認性確認フィルムの作製
キャリア箔付き極薄銅箔(実施例1〜10、比較例1)を、縦250mm、横250mmに切断したのち、その粗化面の側の面を厚さ50μmのポリイミドシート(宇部興産製UPILEX−VT)の上に置き、全体を2枚の平滑なステンレス鋼板で挟み、20torrの真空プレスにより、温度330℃、圧力2kg/cmで10分間熱圧着し、その後、温度330℃、50kg/cmで5分間熱圧着して、キャリア箔付きのポリイミドキャリアピール用片面銅張積層板を製造したものを引き剥がし視認性確認用のサンプルとした。
【0052】
フィルム特性評価
(1)ピンホール測定:
上記(1)の方法で作成した縦250mm、横250mmの片面銅張積層板を、暗室内で樹脂基材側から光を当て、透過してくる光により、ピンホールの個数を数えた。評価結果を表1に示す。
【0053】
(2)キャリアピール測定
上記(1)の方法により作製したキャリア銅箔付きの片面銅張積層板から試料を切りだし、JISC6511に規定する方法に準拠して、測定試料幅10mmで電気銅めっき極薄銅箔からキャリア銅箔を引き剥がし、ピール強度をn数3で測定した。評価結果を表1に示す。
【0054】
(3)視認性の確認:
銅箔を引き剥がしたフィルムから裏面をみて透過度を測定し、その結果を%で表1に示す。なお、透過度は%の大きいほど透明度が高い測定結果である。
【0055】
【表1】

【0056】
評価結果
(1)ピンホール:
比較例1には多くのピンホールが見られるのに対し、実施例のサンプルは数が少なく、実用に支障のない程度であることが確認できた。
(2)キャリアピール
キャリピールにおいては比較例1以下か同等の値を示すことが確認できた。
(3)視認性(透過度)
比較例1はキャリア箔に平滑化処理を施さなかったために、キャリア箔の表面粗さがフィルムに転写され、透過度は極めて悪かった。実施例ではキャリア箔の表面粗度を平滑化したことにより、透過度は70%以上を示し、視認性は実用に供するのに十分であった。
【0057】
上記実施例では、キャリア箔として電解銅箔を使用したが、キャリア箔としては電解銅合金箔、圧延銅(合金)箔を使用しても同様な効果が得られる。
また、極薄銅箔の成形方法として硫酸銅めっき浴、ピロりん酸銅めっき浴、シアン化銅めっき浴、で行ったが、ほうフッ化銅めっき浴で実施しても、詳細は省略するが、同様な効果が得られた。
【0058】
本発明によるキャリア付き極薄銅箔の製造方法では、キャリア箔の表面を平滑化することで、ピンホール数が少なくかつ視認性に良好なものを製造できる。また、剥離層上のめっきはその剥離性ゆえに均一なめっきは困難とされるが、ストライク銅めっきを利用することで均一な銅めっきができ、ピンホールの少ないキャリア付き極薄銅箔を製造、提供することができる。
また、本発明は、従来、キャリア付き銅箔のキャリ箔の粗さに依存していた極薄銅箔のピンホール数及び視認性をキャリア箔の表面を平滑化することでピンホール数の少ないかつ視認性の良いキャリア付極薄銅箔とすることができる。また、製造コストにおいても従来とほとんどかわらない価格で提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理し、該研磨箔の研磨面を電気化学的に処理を施して表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層、極薄銅箔を順に積層することを特徴とするキャリア付き極薄銅箔の製造方法。
【請求項2】
銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理し、該研磨箔の研磨面を化学研磨して表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層、極薄銅箔を順に積層することを特徴とするキャリア付き極薄銅箔の製造方法。
【請求項3】
銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理し、該銅箔の研磨処理面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層、極薄銅箔を順に積層することを特徴とするキャリア付き極薄銅箔の製造方法。
【請求項4】
銅箔の少なくとも片面を化学研磨し、該銅箔の研磨面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層、極薄銅箔を順に積層することを特徴とするキャリア付き極薄銅箔の製造方法。
【請求項5】
銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理した該表面を更に化学研磨し、該銅箔の研磨処理面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層、極薄銅箔を順に積層することを特徴とするキャリア付き極薄銅箔の製造方法。
【請求項6】
銅箔の少なくとも片面を電気化学的に処理を施し、該銅箔の処理面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層、極薄銅箔を順に積層することを特徴とするキャリア付き極薄銅箔の製造方法。
【請求項7】
銅箔の少なくとも片面を機械的に研磨処理した該表面を更に電気化学的に処理を施し、該銅箔の処理面にCuめっき処理又はNiを含むめっき処理による平滑化処理を施して前記表面をRz:0.01〜2.0μmの平滑面としたキャリア銅箔の前記平滑面に、剥離層、極薄銅箔を順に積層することを特徴とするキャリア付き極薄銅箔の製造方法。
【請求項8】
前記剥離層が、Cr、Ni,Co,Fe、Mo、Ti、W、Pまたは/及びこれらの合金層またはこれらの水和酸化物層であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のキャリア付き極薄銅箔の製造方法。
【請求項9】
前記剥離層が、有機被膜であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のキャリア付き銅箔の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のキャリア付き極薄銅箔の製造方法により製造されたキャリア付き極薄銅箔。
【請求項11】
請求項10に記載のキャリア付き極薄銅箔により高密度極微細配線を施したことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項12】
請求項10に記載のキャリア付き極薄銅箔により高密度極微細配線を施したことを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項13】
請求項10に記載のキャリア付き極薄銅箔により高密度極微細配線を施したことを特徴とするチップオンフィルム用配線板。

【公開番号】特開2007−186797(P2007−186797A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34262(P2007−34262)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【分割の表示】特願2003−308820(P2003−308820)の分割
【原出願日】平成15年9月1日(2003.9.1)
【出願人】(591056710)古河サーキットフォイル株式会社 (43)
【Fターム(参考)】