説明

クロック生成回路およびその使用方法

【課題】基準信号の周波数を逓倍又は分周したクロック信号を生成するクロック生成回路において、一つの基準信号から任意周波数のクロック信号を発生可能とする。
【解決手段】クロック生成回路1は、リング状に連結したm個の遅延素子DUからなるパルス遅延回路10と、各遅延素子DUから順次出力される通過信号P1〜Pmに基づき、基準信号CKIの周期を遅延素子DUでの遅延時間を単位として表した周期データDTを生成する周期測定部20と、除数又は乗数として使用される設定値MNを格納する設定値レジスタ50と、周期データDTに、設定値MNを乗・除してクロック信号の出力周期を表す制御データCDを生成する制御部30と、制御データCDと通過信号P1〜Pmとに基づき、基準信号CKIを分周又は逓倍したクロック信号CKOを出力する出力部40とを備え、実数で表された設定値MNを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準信号の周波数を逓倍又は分周したクロック信号を生成するクロック生成回路およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水晶発振子などを用いて生成された周波数の安定した基準信号に基づき、その基準信号の周期を、基準信号より十分に高い周波数を有する高速クロック信号でカウントし、そのカウント値に基づいて、基準信号の周期を逓倍又は分周したクロック信号を得る位相同期回路(PLL)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この位相同期回路101は、図8に示すように、リング状に連結したm個の遅延素子DUからなり、パルス信号を順次遅延して周回させるパルス遅延回路110と、このパルス遅延回路110を構成する各遅延素子DUから順次出力される通過信号P1〜Pmに基づき、基準信号CKIの立ち上がりから次の立ち上がりまでの位相差を2進デジタル値に変換してなる周期データDTを生成する周期測定部120と、周期測定部120にて得られた周期データDTから予め設定された設定値MNを乗・除してクロック信号の出力周期を表す制御データCDを生成する制御部130と、制御部130から出力される制御データCDと、パルス遅延回路110から順次出力される通過信号P1〜Pmとに基づき、基準信号CKIを逓倍したクロック信号CKOを出力する出力部140とを備えている。
【特許文献1】特開平7−183800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、位相同期回路101では、図9に示すように、クロック信号CKO位相を基準信号CKIの位相に合わせる(即ち、両信号CKI,CKOのうち周波数の低い方の立ち上がりエッジでの位相差Tdef(k)を0にする:但し、k=1,2,…)必要があるため、クロック信号CKOの周波数は基準信号CKIの周波数の整数倍または整数分の1(即ち、設定値MNが整数)でなければならない。
【0005】
つまり、基準信号CKIの周波数は、クロック信号CKOの周波数に合わせて設定する必要があり、設計上の制約を受けるという問題があった。
特に、位相同期回路101を用いて周波数の異なる複数のクロック信号CKOを生成する必要がある場合には、クロック信号CKOの全ての周波数に対して整数倍または整数分の1となるように基準信号CKIの周波数を設定しなければならず、そのような周波数が存在しない時には、クロック信号CKOの周波数毎に、異なった基準信号CKIを用意しなければならないという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するために、基準信号の周波数を逓倍又は分周したクロック信号を生成するクロック生成回路において、一つの基準信号から任意周波数のクロック信号を発生可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた発明は、複数の遅延素子をリング状に接続してなり、パルス信号を遅延させながら伝送するパルス遅延回路と、予め設定された基準信号を入力し、該基準信号の1周期の間に、前記パルス遅延回路にて前記パルス信号が通過した遅延素子の段数を検出して符号化することにより、前記遅延素子の平均遅延時間を単位として、前記基準信号の周期を表した周期データを生成する周期測定部と、逓倍数又は分周数を表す設定値を除数又は乗数とし、前記周期データを被除数又は被乗数とした演算を実行することにより、前記基準信号の周波数を前記設定値で逓倍又は分周することで得られる信号の周期を表した制御データを生成する制御部と、前記パルス遅延回路を構成する各遅延素子からの出力である通過信号に基づいて、前記制御データに示された周期を有するクロック信号を生成する出力部とを備えたクロック生成回路を前提とするものである。
【0008】
そして、請求項1に記載のクロック生成回路の使用方法では、設定値として実数を用いることを特徴とする。
このようにクロック生成回路を使用することにより、クロック信号の周期を規定する制御データを、周期データの整数倍または整数分の1に限らず、任意の値に設定することが可能となるため、任意周波数のクロック信号を発生させることができる。
【0009】
その結果、周波数の異なる複数種類のクロックを発生させる必要のある装置を低コスト化することができる。
次に、請求項2に記載のクロック生成回路は、逓倍数又は分周数を表す実数の設定値を格納するレジスタを備え、制御部は、そのレジスタに設定された設定値に基づいて制御データを生成することを特徴とする。
【0010】
つまり、本発明のクロック生成回路は、請求項1記載の方法を実現するものであり、これと同様の効果を得ることができる。
ところで、本発明のクロック生成回路が生成可能なクロック信号の周波数範囲は、基準信号の周波数、遅延素子の遅延時間、周期データや制御データのデータサイズによって制限を受ける。
【0011】
そこで本発明のクロック生成回路では、請求項3に記載のように、予め用意された周波数の異なる複数の基準信号のいずれかを択一的に前記周期測定部に供給するセレクタを備えていてもよい。
【0012】
この場合、セレクタによって基準信号の周波数を切り替えることにより、生成可能なクロック信号の周波数範囲を拡大することができる。
また、請求項4に記載のように、制御部が、整数で表された制御データを生成するように構成されている場合、出力部は、制御データを選択値として、通過信号群の中から選択値に対応する通過信号のタイミングを選択することにより、クロック信号のクロック境界を表す境界タイミング信号を生成する境界タイミング生成回路を備え、その境界タイミング生成回路が生成した前記境界タイミング信号に従って、クロック信号を生成するように構成すればよい。
【0013】
ところで、設定値を実数にすると、周期データを設定値で乗・除した演算結果は、整数値になるとは限らない。従って、演算部分の整数部だけを制御データとしてクロック信号の周波数を制御すると、切り捨てられた小数部に応じた周波数誤差が蓄積されることになる。
【0014】
そこで、請求項5に記載のように、制御部が、実数で表された制御データを生成するように構成した場合、出力部は、調整回路によって、制御データの小数部により決まる一定の割合で、整数部の値、又は前記整数部の値に1を加えた値のいずれかを選択値として生成し、その選択値により境界タイミング生成回路が境界タイミング信号を生成するように構成してもよい。
【0015】
このように構成された本発明のクロック生成回路によれば、演算結果(制御データ)の小数部の値までクロック信号の周波数に反映されるため、より周波数精度の高いクロック信号を生成することができる。
【0016】
なお、請求項6に記載のように、パルス遅延回路が、遅延素子をm(=2P :pは正整数)個備えている場合、境界タイミング生成回路は、例えば、選択値のデータサイズをa(但し、a>p)ビットとして、上位(a−p)ビットで示される周回数だけ、パルス信号が周回したことを検出する周回検出回路と、その検出した直後に現れる選択値の下位pビットに対応した通過信号のタイミングを選択するタイミング選択回路とにより構成すればよい。
【0017】
また、請求項7に記載のように、符号化回路は、パルス遅延回路を周回するパルス信号の周回数をカウントする周期カウンタと、周期カウンタの出力をラッチするラッチ回路と、基準信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジで遅延素子の出力をラッチし、パルス遅延回路内でのパルス信号の位置を二進データに符号化するラッチ符号化回路とを備え、ラッチ回路の出力を周期データの上位ビット、ラッチ符号化回路の出力を周期データの下位ビットとして出力してもよい。
【0018】
このような周回検出回路(請求項6)や周期カウンタ(請求項7)を設けることにより、パルス遅延回路をより少ない段数で構成することができ、本発明のクロック生成回路を小型化できると共に、より広い周波数範囲の基準信号やクロック信号に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1は、クロック生成回路1の全体構成を示すブロック図である。
【0020】
<全体構成>
図1に示すように、クロック生成回路1は、リング状に連結したm(m=2p ,pは正整数,本実施形態ではp=4)個の遅延素子DUからなり、パルス信号を順次遅延して周回させるパルス遅延回路10と、このパルス遅延回路10を構成する各遅延素子DUから順次出力される通過信号P1〜Pmに基づき、基準信号CKIの立ち上がりから次の立ち上がりまでの位相差を2進デジタル値に変換してなる周期データDTを生成する周期測定部20と、除数又は乗数として使用される設定値MNを格納する設定値レジスタ50と、周期測定部20にて得られた周期データDTに、設定値レジスタ50に格納された設定値MNを乗・除してクロック信号の出力周期を表す制御データCDを生成する制御部30と、制御部30から出力される制御データCDと、パルス遅延回路10から順次出力される通過信号P1〜Pmとに基づき、基準信号CKIを分周又は逓倍したクロック信号CKOを出力する出力部40とを備えている。
【0021】
<パルス遅延回路>
パルス遅延回路10を構成する各遅延素子DUは、CMOSインバータゲート回路を1又は複数段(本実施形態では2段)接続することで構成されている。
【0022】
但し、図1に示すパルス遅延回路10は、遅延素子DUの接続状態を模式的に示したものであり、実際には、パルス遅延回路10を起動する(パルス信号の周回を開始させる)ための構成や、パルス信号の周回を継続させるための構成を有しているが、公知技術(例えば、特許文献1参照)であるため、ここでは説明を省略する。
【0023】
<周期測定部>
周期測定部20は、図2に示すように、通過信号Pmによって、パルス遅延回路10を周回するパルス信号の周回数をカウントする周期カウンタ21と、基準信号CKIの立ち上がりタイミングで周期カウンタ21の出力をラッチするラッチ回路23と、基準信号CKIの立ち上がりタイミングで通過信号P1〜Pmをラッチし、そのラッチした結果に従って、パルス信号の位置をpビットの二進データに符号化するラッチ符号化回路25と、を備え、ラッチ回路23がラッチした値を周期データDTの上位ビット、ラッチ符号化回路25で符号化されたpビットの値を周期データDTの下位ビットとして出力するように構成されている。
【0024】
つまり、周期測定部20は、パルス遅延回路10を構成する遅延素子DUの平均遅延時間を単位として、基準信号CKIの周期を整数値で表した周期データDTを出力する。
<制御部>
制御部30は、設定値レジスタ50に格納された設定値MNを除数、周期測定部20からの周期データDTを被除数とした演算を実行する除算器31と、設定値レジスタ50に格納された設定値MNを乗数、周期測定部20からの周期データDTを被乗数とした演算を実行する乗算器33と、演算選択信号CSに従って、除算器31の演算結果または乗算器33の演算結果のいずれか一方を、制御データCDとして出力部40に供給するセレクタ35とからなる。
【0025】
但し、設定値レジスタ50は、実数を記憶するように構成され、また、除算器31及び乗算器33は、整数部がa(a>p)ビット、小数部がb(b=10〜12程度)ビットとなる実数の演算結果を出力するように構成されている。
【0026】
<出力部>
出力部40は、図4に示すように、制御データCDを格納する制御値レジスタ41と、制御値レジスタ41の格納値に従って、後述するプリセット値C1、及びパルス選択値C2を生成する出力制御回路43と、出力制御回路43が生成するプリセット値C1が繰り返しプリセットとされ、通過信号Pmに従ってダウンカウントを行うダウンカウンタ45と、ダウンカウンタ45がカウントアウトすると、出力制御回路43にて生成されたパルス選択値C2に従って、通過信号P1〜Pmのずれかをクロック信号CKOのクロック境界のタイミングを表す境界タイミング信号Pxとして選択するパルスセレクタ47と、パルスセレクタ47で選択された境界タイミング信号Pxのタイミングでパルス信号を発生させることにより、クロック信号CKOを生成するパルス生成回路49とを備えている。
【0027】
<<制御値レジスタ>>
制御値レジスタ41は、制御データCDの整数部の上位(a−p)ビットからなる整数部上位データCDHを格納するCDHレジスタ411と、制御データCDの整数部の下位pビットからなる整数部下位データCDMを格納するCDMレジスタ413と、制御データCDの小数部からなる小数部データCDLを格納するCDLレジスタ415とで構成されている。
【0028】
<<出力制御回路>>
出力制御回路43は、キャリーCYの入力がない場合は、CDHレジスタ411に格納された整数部上位データCDHをそのままプリセット値C1とし、キャリーCYの入力がある場合は、整数部上位データCDHに1を加えた値をプリセット値C1としてダウンカウンタ45に供給するプリセット値設定部431と、パルスセレクタ47に供給するpビットのパルス選択値C2を格納する選択値レジスタ433と、調整フラグFがセットされていない場合は、選択値レジスタ433に格納されたパルス選択値C2にCDMレジスタ413に格納された整数部下位データCDMを加算した値を更新値とし、調整フラグFがセットされている場合は、上述の更新値に更に1を加えた更新値として、その更新値により選択値レジスタ433に格納されたパルス選択値C2を更新すると共に、更新値が2p 以上となった場合に、キャリーCYを発生させる選択値設定部435と、CDLレジスタ415に格納されている小数部データCDLによって特定される割合で、調整フラグFをセットする調整フラグ設定部437とからなる。
【0029】
なお、選択値設定部435及び調整フラグ設定部437は、パルスセレクタ47が境界タイミング信号Pxを選択する毎にパルス選択値C2の更新や、調整フラグFの設定を行うように構成されている。
【0030】
例えば、制御データCDが2325.58であった場合、小数部データCDLは0.58であるため、出力制御回路43が生成するクロック信号CKOの各クロックの周期は、その58%で遅延素子DUの遅延時間の2326段分、42%で遅延素子DUの遅延時間の2325段分となる。
【0031】
なお、このように所定の割合でクロックの周期を切り替えて発生させる回路は、例えば特開平07−283722号等に記載されている公知技術である。
<動作>
ここで、図5は、設定値MNが4.3、演算選択信号SCが除算(即ち、基準信号CKIの逓倍)に設定された場合の基準信号CKIとクロック信号CKOとの関係を示し、図6は、設定値MNが4.3、演算選択信号SCが乗算(即ち、基準信号CKIの分周)に設定された場合の基準信号CKIとクロック信号CKOとの関係を示すタイミング図である。
【0032】
図5の場合、例えば、基準信号CKIの周期が10μs、遅延素子DUの遅延時間(即ち、時間分解能)が1nsとすると、周期データDTは10000、制御データCDは、約2325.58(DT/MN=10000/4.3)となる。
【0033】
つまり、基準信号CKIの1周期(1×Ti)が、クロック信号CKOが4.3周期(4.3×To)分に相当する。
具体的には、基準信号CKI,クロック信号CKOのうち周波数が低い方(この場合は基準信号CKI)のk(k=1,2,3)番目の立ち上がりエッジでの位相差Tdef(k)、は、以下のような値となる。
【0034】
Tdef(1)=DT−CD×4≒700ns
Tdef(2)=2×DT−CD×8≒1400ns
Tdef(3)=3×DT−CD×12≒2100ns
このように、基準信号CKIとクロック信号CKOとではクロックエッジが一致せず、基準信号CKIと非同期かつ逓倍されたクロック信号CKOが生成されることになる。
【0035】
図6の場合、基準信号CKIの4.3周期(4.3×Ti)が、クロック信号CKOの1周期(1×To)分に相当するため、両信号CKI,CKOのうち周波数が低い方(この場合はクロック信号CKO)のk(k=1,2,3)番目の立ち上がりエッジでの両信号間の位相差Tdef(k)は0とはならず(即ち、クロックエッジが一致せず)、基準信号CKIと非同期かつ分周されたクロック信号CKOが生成されることになる。
【0036】
<効果>
以上説明したように、クロック生成回路1では、基準信号CKIの周期を表す周期データDTから、クロック信号CKOの周期を表す制御データCDを、除算または乗算によって算出する際に、除数または乗数となる設定値MNとして実数を用いることができるように構成されている。
【0037】
従って、クロック生成回路1によれば、制御データCDを、周期データDTの整数倍または整数分の1に限らず、任意の値に設定することができ、ひいては、任意周波数のクロック信号CKOを発生させることができる。
【0038】
また、クロック生成回路1では、実数で表された制御データCDを使用し、制御データの整数部CDH,CDMで表される値により、クロック信号CKOの周期を規定し、その1周期の時間を、制御データCDの小数部を表す小数部データCDLにより決まる一定の割合で遅延素子DUの1段分の遅延時間だけ増加させるように構成されている。
【0039】
このようにクロック生成回路1によれば、制御データCDの小数部の値(即ち、遅延素子DUの遅延時間より短い時間)までクロック信号CKOの周波数に反映されるため、周波数精度の高いクロック信号CKOを生成することができる。
【0040】
更に、クロック生成回路1では、周期測定部20に周期カウンタ21を備え、出力部40にダウンカウンタ45を備えているため、パルス遅延回路10を構成する遅延素子DUの数を必要最小限に抑えることができ、当該回路を小型化できると共に、広い周波数範囲の基準信号CKIやクロック信号CKOに対応することができる。
【0041】
また、クロック生成回路1によれば、基準信号CKIの測定と、クロック信号CKOの生成とで、同じパルス遅延回路10を構成する遅延素子DUの遅延時間を単位として行っているため、安定した動作が可能となる。
【0042】
また、このように構成されたクロック生成回路1は、例えば、搬送波周波数の4倍の周波数でサンプリングした結果を用いてI信号とQ信号とを生成する検波回路(例えば、特開2005−102129号公報参照)に好適に用いることができる。つまり、このようなクロック生成回路1を利用した検波回路を用いれば、周波数の異なる複数の通信システムで使用可能な通信装置を簡単かつ低コストで構成することができる。
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
【0043】
<構成>
図7は、本実施形態のクロック生成回路1aの全体構成を示すブロック図である。
なお、クロック生成回路1a、第1実施形態のクロック生成回路1とは構成の一部が異なるだけであるため、同一の構成については同一符号を付して説明を省略し、構成の異なる部分を中心に説明する。
【0044】
クロック生成回路1aは、互いに周波数の異なる複数の基準信号CKI_1〜CKI_n(nは正整数)の中から、選択信号SELに従って、いずれか一つを選択して基準信号CKIとして周期測定部20に供給するセレクタを備えている。
【0045】
<効果>
このように構成されたクロック生成回路1aによれば、セレクタ60によって基準信号CKIの周波数を切り替えることにより、生成可能なクロック信号CKOの周波数範囲を拡大することができる。
[他の実施形態]
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、制御データCDが整数部上位データCDH,整数部下位データCDM,小数部データCDLで構成されているが、整数部上位データCDHと小数部データCDLは、その一方、又は両方が省略されていてもよい。
【0047】
そして、整数部上位データCDHが省略されている場合は、CDHレジスタ411,プリセット値設定部431,ダウンカウンタ45を省略することができ、また、小数部データCDLが省略されている場合は、CDLレジスタ415及び調整フラグ設定部437を省略することができるため、回路構成をより簡易なものとすることができる。
【0048】
また、周期測定部20に設けられている周期カウンタ21及びラッチ回路23は、周期データDTがmを超えることがないように使用される場合は、これを省略してもよい。
また、制御部30は、除算器31と乗算器33とを備え、これを切り替えて使用するように構成されているが、いずれか一方だけを備えるように構成してもよい。
【0049】
そして、除算器31だけを備える構成で乗数をXとした乗算を行う場合、及び、乗算器33だけを備える構成で除数をXとした除算を行う場合は、設定値MNを1/Xに設定して使用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態のクロック生成回路の全体構成を示すブロック図。
【図2】周期測定部の構成を示すブロック図。
【図3】制御部の構成を示すブロック図。
【図4】出力部の構成を示すブロック図。
【図5】逓倍時の基準信号とクロック信号との関係を示すタイミング図。
【図6】分周時の基準信号とクロック信号との関係を示すタイミング図。
【図7】第2実施形態のクロック生成回路の全体構成を示すブロック図。
【図8】従来のクロック生成回路の構成を示すブロック図。
【図9】従来回路における基準信号とクロック信号との関係を示すタイミング図。
【符号の説明】
【0051】
1,1a…クロック生成回路 10…パルス遅延回路 20…周期測定部 21…周期カウンタ 23…ラッチ回路 25…ラッチ符号化回路 30…制御部 31…除算器 33…乗算器 35,60…セレクタ 40…出力部 41…制御値レジスタ 43…出力制御回路 45…ダウンカウンタ 47…パルスセレクタ 49…パルス生成回路 50…設定値レジスタ 411…CDHレジスタ 413…CDMレジスタ 415…CDLレジスタ 431…プリセット値設定部 433…選択値レジスタ 435…選択値設定部 437…調整フラグ設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の遅延素子をリング状に接続してなり、パルス信号を遅延させながら伝送するパルス遅延回路と、
予め設定された基準信号を入力し、該基準信号の1周期の間に、前記パルス遅延回路にて前記パルス信号が通過した遅延素子の段数を検出して符号化することにより、前記遅延素子の平均遅延時間を単位として、前記基準信号の周期を表した周期データを生成する周期測定部と、
逓倍数又は分周数を表す設定値を除数又は乗数とし、前記周期データを被除数又は被乗数とした演算を実行することにより、前記基準信号の周波数を前記設定値で逓倍又は分周することで得られる信号の周期を表した制御データを生成する制御部と、
前記パルス遅延回路を構成する各遅延素子からの出力である通過信号に基づいて、前記制御データに示された周期を有するクロック信号を生成する出力部と、
を備えたクロック生成回路の使用方法であって、
前記設定値として実数を用いることを特徴とするクロック生成回路の使用方法。
【請求項2】
複数の遅延素子をリング状に接続してなり、パルス信号を遅延させながら伝送するパルス遅延回路と、
予め用意された基準信号を入力し、該基準信号の1周期の間に、前記パルス遅延回路にて前記パルス信号が通過した遅延素子の段数を検出して符号化することにより、前記遅延素子の平均遅延時間を単位として、前記基準信号の周期を表した周期データを生成する周期測定部と、
逓倍数又は分周数を表す実数の設定値を格納するレジスタと、
前記レジスタに格納された設定値を除数又は乗数とし、前記周期データを被除数又は被乗数とした演算を実行することにより、前記基準信号の周波数を前記設定値で逓倍又は分周することで得られる信号の周期を表した制御データを生成する制御部と、
前記パルス遅延回路を構成する各遅延素子からの出力である通過信号に基づいて、前記制御データに示された周期を有するクロック信号を生成する出力部と、
を備えることを特徴とするクロック生成回路。
【請求項3】
予め用意された周波数の異なる複数の基準信号のいずれかを択一的に前記周期測定部に供給するセレクタを備えることを特徴とする請求項2に記載のクロック生成回路。
【請求項4】
前記制御部は、整数で表された前記制御データを生成し、
前記出力部は、
前記制御データを選択値として、前記通過信号群の中から前記選択値に対応する通過信号のタイミングを選択することにより、前記クロック信号のクロック境界を表す境界タイミング信号を生成する境界タイミング生成回路を備え、該境界タイミング生成回路が生成した前記境界タイミング信号に従って、前記クロック信号を生成することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のクロック生成回路。
【請求項5】
前記制御部は、実数で表された前記制御データを生成し、
前記出力部は、
前記制御データの小数部により決まる一定の割合で、前記整数部の値、又は前記整数部の値に1を加えた値のいずれかを選択値として生成する調整回路と、
前記通過信号群の中から前記選択値に対応する通過信号のタイミングを選択することにより、前記クロック信号のクロック境界を表す境界タイミング信号を生成する境界タイミング生成回路と、
を備え、該境界タイミング生成回路が生成した前記境界タイミング信号に従って、前記クロック信号を生成することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のクロック生成回路。
【請求項6】
前記パルス遅延回路は、前記遅延素子をm(=2P :pは正整数)個備え、
前記境界タイミング生成回路は、
前記選択値のデータサイズをa(但し、a>p)ビットとして、上位(a−p)ビットで示される周回数だけ、前記パルス信号が周回したことを検出する周回検出回路と、
前記周回検出回路にて検出された直後に現れる前記選択値の下位pビットに対応した前記通過信号のタイミングを選択するタイミング選択回路と、
を備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のクロック生成回路。
【請求項7】
前記符号化回路は、
前記パルス遅延回路を周回するパルス信号の周回数をカウントする周期カウンタと、
前記周期カウンタの出力をラッチするラッチ回路と、
前記基準信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジで前記遅延素子の出力をラッチし、前記パルス遅延回路内でのパルス信号の位置を二進データに符号化するラッチ符号化回路と、
を備え、前記ラッチ回路の出力を前記周期データの上位ビット、前記ラッチ符号化回路の出力を前記周期データの下位ビットとして出力することを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載のクロック生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−152886(P2009−152886A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329107(P2007−329107)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】