説明

グラブバケットの油圧制御回路

【課題】 簡単な構造で作動油の発熱や昇温などを確実に抑制して連続作業を可能にするグラブバケットの油圧制御回路を提供する。
【解決手段】 バケット開閉用の油圧シリンダ15を駆動する油圧ポンプ19の吐出管5に連結され、圧油を油圧シリンダ15のヘッド側室15aとロッド側室15bに切換供給し、油圧ポンプ19がデッドヘッド圧に達したときに、油圧ポンプ5の吐出圧力が設定圧力まで昇圧したことを検出する圧力スイッチ16から出力された信号を受けて計時を開始するタイマ20から出力された信号を受けて、第1の方向切換弁11Aとともに、自動的に中立状態に切り換わる第2の方向切換弁11Cとを中立状態に切り換えることにより、油圧ポンプ19の吐出油を最小吐出圧かつ最少吐出量で循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブバケットの油圧制御回路に関し、特に、作動油の発熱や昇温などを確実に抑制するグラブバケットの油圧制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
このグラブバケットは、油圧力でバケットを開閉し、索式バケットに比べて軽量で、あらゆるバラ物を確実に、しかも、大量に掴むことができるため、多くの清掃工場や、都市ゴミ焼却用の天井クレーンなどの型式に使用されている。
図6は、従来例に係るグラブバケットの油圧制御回路である。図6に示すように、可変容量型ピストンポンプ(油圧ポンプ)230は内部に組み込まれた斜板の角度により容量が可変される。この油圧ポンプ230は、電動機232により一定回転で駆動されて、圧油をチェックバルブ234および方向切換弁236を介してグラブバケット駆動用油圧シリンダ222,224に供給する。方向切換弁236のソレノイドSol.aが励磁されて、位置236aに切り換わると、シリンダ222,224は伸張して、グラブバケット210は閉じられる。また、ソレノイドSol.bが励磁されて、位置236bに切り換わると、シリンダ222,224は短縮して、グラブバケット210は開かれる。なお、図6に示すグラブバケット210は、シリンダ222,224が短縮して、グラブバケット210が開かれている状態にある。
また、方向切換弁236が中立位置236cに接続されると、シリンダ222,224への圧油の供給は停止され、シリンダ222,224の動作は停止される。ここでは、方向切換弁236にセンターバイパス形を用いているので、中立位置236cでは、圧油は流路237を通って油タンク239へ戻される。
【0003】
可変容量型ピストンポンプ230の吐出圧Pとそのときの吐出量Qについて説明する。P1圧力設定器238は、吐出圧P1を設定するもので、可変容量型ピストンポンプ230内に組み込まれたものである。P2圧力設定器(外部コンペンセータ)240は、吐出圧P2を設定するものである。シリンダ242は、可変容量型ピストンポンプ230内の容量可変用斜板の角度を可変制御するものである。シリンダ244は、P1圧力設定器238により制御されて、伸張したときロッド243を介してシリンダ242を作動させ、短縮したときロッド243を介してシリンダ242から圧油を抜き取ってシリンダ242を制御し、可変容量型ピストンポンプ230内の容量可変用斜板の角度を可変制御するものである。
例えば、吐出圧PをP1=14.0MPa、P2=17.5MPa、吐出量QをQ1=116L/min(全吐出量)、Q2=40L/min、Q3=4L/minとした場合、可変容量ポンプ230の吐出圧Pが、0<P<P1の小さな値のときは、吐出量QをQ=Q1(全吐出量)とし、吐出圧PがP1<P<P2のときは、吐出量QをQ=Q2とし、吐出圧PがP2のときは、吐出量QをQ=Q3として、吐出圧Pが大きくなるにしたがって吐出量Qを減少させるようにしている。このように、P1圧力設定器238とP2圧力設定器(外部コンペンセータ)240によって、容量可変用斜板の角度が可変制御され、吐出量Qは2圧力2流量で制御される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭61−55090号公報(第2〜第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、清掃工場のゴミを投入・攪拌する際に使用されるグラブバケット210は、24時間365日を稼働するうえ、掴みの過程で2〜3回の掴み直し(追い掴み)を自動的に行なっており、油圧回路における作動油の発熱や昇温という問題があった。
また、作動油が発熱・昇温した場合に、アラームの鳴動や作動を停止する機能が組み込まれており、外気温が高い場合など作動油が昇温して作動が停止され、連続作業ができずに油温が下がるまで運転を待機したり、別な装置と入れ替えたりするなど、大変な作業を要していた。そのため、対策が望まれていた。
また、油圧回路は、2圧力2流量で制御されているため構造が複雑であり、簡単な構成の油圧制御回路が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、前記課題を解決するために創案したものであり、簡単な構造で作動油の発熱や昇温を確実に抑制して連続作業を可能にするグラブバケットの油圧制御回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明のうち請求項1に記載の発明は、バケット開閉用の油圧シリンダと、この油圧シリンダを駆動する油圧ポンプと、この油圧ポンプの吐出管に連結され、圧油を前記油圧シリンダのヘッド側室とロッド側室に切換供給し、前記油圧シリンダの作動方向を切り換える第1の方向切換弁とを有し、前記油圧ポンプの吐出圧力がデッドヘッド圧力に達することによって前記油圧ポンプの吐出量が最少吐出量となる油圧制御回路であって、前記第1の方向切換弁と前記油圧ポンプとの間の前記吐出管に設けられ、前記油圧ポンプの吐出圧力が設定圧力まで昇圧したことを検出する圧力スイッチと、前記圧力スイッチから出力された信号を受けて計時を開始するタイマと、前記タイマの設定時間に出力される信号によって中立状態に切り換わってPTポートがブロックされる前記第1の方向切換弁と、前記圧力スイッチと前記油圧ポンプとの間の前記吐出管に設けられ、前記タイマの設定時間に出力された信号を受けて中立状態に切り換わる第2の方向切換弁とを備え、前記第1の方向切換弁および前記第2の方向切換弁を中立状態に切り換えることにより、前記第2の方向切換弁がPTポート間を連通して、前記油圧ポンプから吐出された圧油を油タンクとの間で最少吐出量かつ最小吐出圧で循環させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のグラブバケットの油圧制御回路であって、前記タイマの設定時間が、1秒〜8秒であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のグラブバケットの油圧制御回路であって、前記第2の方向切換弁が、中立状態ではPTポート間のみ連通する構造のタンデムセンタ方式の方向切換弁であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のグラブバケットの油圧制御回路であって、前記第2の方向切換弁が、AポートおよびBポートを閉じたオープンセンタ方式の方向切換弁であることを特徴とする。
なお、中立状態とは、必ずしも方向切換弁の中立位置とは限らず、吐出油が抵抗無く(抵抗の低い状態で)循環すれば、他の切り換え位置を用いて切り換えるようにしても構わない。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明は特許請求の範囲に記載したような構成にしたので次のような優れた効果が奏される。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、圧力スイッチから出力された信号を受けて計時を開始するタイマによって設定された時間に、第1、第2の方向切換弁が同時に中立状態に切り換わることによって無負荷回路を構成して、油圧ポンプの吐出油を油タンクとの間で最小吐出圧かつ最少吐出量で循環させ、作動油の発熱や昇温を確実に抑制して連続作業を可能にする。これにより、バケットが追い掴み運転を多用するような場合であっても、油圧制御回路の連続運転が可能となり、気温が上昇する夏場でも、若しくは、高い気温の雰囲気中においても、油圧式のグラブバケットの連続運転が確実にできる。
また、1圧力1流量制御の油圧制御回路としたことにより、構造が簡単で、小さなグラブバケットにも取り付けることができ、しかも、発熱を考慮してオイルタンクおよび形状寸法を大きくする必要がなくコンパクトにできる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、タイマの設定時間を、1秒〜8秒に設定したことにより、作動油の発熱や昇温を確実に抑制して連続作業を可能にする。
すなわち、ポンプの吐出圧力が圧力スイッチの設定圧に達したら所定時間経過後に電磁式の方向切換弁が中立状態に切り換えられ、ポンプ吐出油は油タンクとの間で1.5MPa程度の最小吐出圧かつ最少吐出量で循環されるので、ポンプ吐出口から方向切換弁に至る管路には最小吐出圧が作用する。このため、例えば、ポンプからのリークや、方向切換弁のスプールなどからのリークを少なくすることができ、このリークに伴う発熱を防止することができ、より一層の作動油の発熱低減を図ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、第2の方向切換弁を、中立状態ではPTポート間のみ連通する構造のタンデムセンタ方式の方向切換弁としたことにより、第1、第2の方向切換弁が同時に中立状態に切り換わることによって無負荷回路を構成して、油圧ポンプの吐出油を油タンクとの間で最小吐出圧かつ最少吐出量で循環させ、作動油の発熱や昇温を確実に抑制して連続作業を可能にする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、第2の方向切換弁を、AポートおよびBポートを閉じたオープンセンタ方式の方向切換弁としたことにより、第1、第2の方向切換弁が同時に中立状態に切り換わることによって無負荷回路を構成して、油圧ポンプの吐出油を油タンクとの間で最小吐出圧かつ最少吐出量で循環させ、作動油の発熱や昇温を確実に抑制して連続作業を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るグラブバケットの正面図、図2は、このグラブバケットの右側面図、図3は、本実施形態に係るグラブバケットに適用される油圧制御を示す油圧制御回路図、図4は、図3の油圧制御回路に適用される可変吐出量(可変容量)型の油圧ポンプの作動原理を示す油圧回路図である。
なお、ここで言う方向切換弁11A、方向切換弁11Cは、それぞれ特許請求の範囲に記載の第1の方向切換弁、第2の方向切換弁に相当する。
【0016】
本発明に適用されるグラブバケットの全体構造について図1、図2を参照して説明する。
グラブバケット30は、図2に示すように、ガーダ31の下部に支持固定された軸31aに、上部を回動自在に枢支されて取り付けられた左右一対のバケット32,32(図1参照)と、このバケット32の軸31aよりも上方で、バケット32の上端部において左右のバケット32,32(図1参照)の間に両端をピンにより回動自在に枢支されて掛け渡たされたバケット開閉用の油圧シリンダ15,15と、ガーダ31の上部に設置された油圧ポンプユニット3から主要部が構成されている。
【0017】
油タンク1は、油圧ポンプ19の下方に設けられている。連結リンク33は、左右のバケット32,32(図1参照)の間にあって、連結リンク33の両端がピンで回動自在に枢支されて取り付けられ、一対のバケット32,32を縦中心線に対して対称に開閉させる。爪32a,32aは、バケット32の底部に設けられており、バケット32が閉じたときに、爪32a,32aが互いに噛み合わされている。
バッファ34は、バケット32の両側面に取り付けられたタイヤなどの弾性体で構成され、グラブバケット30が壁などに衝突したときでも衝撃を吸収可能に設けられている。
【0018】
吊下材35は、ガーダ31に固着されて設けられている。この吊下材35に取り付けられた図示しない吊下金具を介してワイヤロープがクレーンに連結されている。これによって、グラブバケット30は、吊り上げられ、または、吊り下げられる。
キャブタイヤケーブル37は、可変容量(可変吐出量)型の油圧ポンプ19を駆動する電動機4、油圧ポンプユニット3に内蔵されている方向切換弁へ電気を供給するためのものである。
油圧ポンプユニット3は、外部から掴み物としてのごみなどが侵入しないように周囲をパネル6で囲まれている。プロテクター(カバー)36は、油圧ポンプユニット3などを周囲から保護する。
【0019】
このような構成により、図1に示すように、バケット32,32の開口は、方向切換弁が切り換わると、油圧シリンダ15のシリンダロッドが収縮し、左のバケット32に設けられた油圧シリンダ15の左端部のピンP1は軸31aを中心に円弧を描きながらピンP2に移動する。また、同様に右のバケット32に設けられた油圧シリンダ15の右端部のピンP3は、軸31aを中心に円弧を描きながらピン4に移動する。そして、左右一対のバケット32,32が、軸31a,31aを回動中心として縦中心線に対して対称に回動されて開閉される。
グラブバケット30では、バケット32,32が全閉状態を実線で示し、全開状態を2点鎖線で示している。そして、バケット32,32が完全に閉じられた状態では、左右のバケットの先端に設けられている爪32a,32aが噛み合わされている。
【0020】
次に、グラブバケット30に適用されるバケット32を開閉制御する油圧制御回路100の構成を図3に基づいて詳細に説明する。
図3に示すように、本実施形態の油圧制御回路100において、油圧ポンプ19として可変吐出量型(容量可変型)の油圧ポンプが適用されている。以下、可変吐出量型の油圧ポンプを、油圧ポンプと称す。
方向切換弁11として、方向切換弁(第1の方向切換弁)11Aと、方向切換弁11Aのパイロット切換弁(方向切換弁)11Bとからなる電磁切換弁を適用している。
また、油圧制御回路100には、バケット開閉用の油圧シリンダ15が接続され、この油圧シリンダ15は、油圧ポンプ19の吐出管5に連結されている。この吐出管5には、方向切換弁11が設けられており、この方向切換弁11は、油圧ポンプ19から吐出された圧油を油圧シリンダ15のヘッド側室15aとロッド側室15bに切換供給するように構成されている。
また、本実施形態では、メインの方向切換弁11AのPポートから油圧ポンプ19の吐出管5に通じるPポートラインには、逆止弁(チェック弁)18が介装されており、圧油の逆流を防止している。
【0021】
方向切換弁(第1の方向切換弁)11Aと油圧ポンプ19との間の吐出管5には、油圧ポンプ19の吐出圧力が設定圧力まで昇圧したことを検出する圧力スイッチ16と、この圧力スイッチ16から出力された信号を受けて計時を開始するタイマ20とが設けられている。
また、圧力スイッチ16と油圧ポンプ19との間の吐出管5には、方向切換弁(第1の方向切換弁)11Aとともに、タイマ20の設定時間に出力された信号を受けて中立状態に切り換わる第2の方向切換弁11Cとが設けられている。他に、油圧ポンプ19のドレン管17、タンクライン10に介装されたリターンフィルタ21が設けられ、吐出圧力油は、油タンク1へ循環する。
【0022】
油圧ポンプ19の吐出管5からは管路7が分岐され、管路7は末端をパイロット切換弁11BのPポートに接続されている。また、逆止弁18と方向切換弁11との間の吐出管5には、管路7の分岐点より上流位置において、圧力スイッチ16が設けられている。
この圧力スイッチ16は、油圧ポンプ19の吐出圧力が設定圧力(18MPa)まで昇圧したことを検出するためのものである。この圧力スイッチ16には、圧力スイッチ16が18MPaを検出したときに出力する信号を受けて計時を開始するタイマ20が接続されている。このタイマ20は、計時を開始して2秒後(1〜8秒に設定可能)に信号を出力するように設定されている。
【0023】
次に、油圧制御回路100の動作を図3に基づいて詳細に説明する。
図3に示すように、油圧ポンプ19の吐出圧力がデッドヘッド圧力に達したときに、油圧ポンプ5の吐出圧力が設定圧力まで昇圧したことを検出する圧力スイッチ16から出力された信号を受けて、タイマ20が計時を開始する。タイマ20から出力された信号を受けて、方向切換弁11A,11B,11Cは同時に中立状態に切り換わる。方向切換弁11BのPポートがブロックされ、AポートおよびBポートはTポートに接続され、Tポートは油タンク1に接続されている。方向切換弁11Aが中立状態に切り換わることによって、方向切換弁11AのPTポートがブロックされる。方向切換弁11Cは、AポートおよびBポートを閉じたオープンセンタ方式の状態に切り換えられる。また、方向切換弁11Cにタンデムセンタ方式の方向切換弁を用いた場合には、中立状態では圧油はPTポート間でリターンする。
すなわち、油圧ポンプ19の吐出圧力がデッドヘッド圧力に達することによって、圧力スイッチ16が作動し、タイマ20が計時を開始する。タイマ20から出力される信号によって、方向切換弁(第1の方向切換弁)11Aが中立状態となりP,Tポートがブロックされ、同時に、タイマ20から出力される信号によって、方向切換弁(第2の方向切換弁)11Cも中立状態となる。
このように、油圧制御回路100において、第1の方向切換弁11Aおよび第2の方向切換弁11Cを中立状態に切り換えることにより、第2の方向切換弁11CがPTポート間のみ連通する無負荷回路を構成して、吐出圧は自動的に低くなる。すなわち、配管抵抗分だけの、ほぼ無負荷回路が構成され、油圧ポンプ19から吐出された圧油を油タンク1との間で最少吐出量かつ最小吐出圧で循環させる。
【0024】
図4は、図3に記載の油圧ポンプを示す拡大油圧回路図である。
ここで、図4に基づいて本発明の油圧制御回路に適用される可変吐出量型の油圧ポンプ19について説明する。
油圧ポンプ19は、プランジャポンプである油圧ポンプ本体19aと、可変吐出量を可能にするための制御ピストン25、吐出圧を制御するリリーフバルブ26、方向切換弁27などによる吐出量制御機構19bとから構成されている。
可変吐出量型の油圧ポンプ本体19aは、アキシャル型固定斜板式のピストンポンプ(プランジャポンプ)を用いた。油圧ポンプ本体19aは、良く知られた油圧ポンプ本体であり、その構造図示は省略する。このプランジャポンプ(ピストンポンプ)は、駆動軸の回転でシリンダブロックが回転し、斜板の角度に応じてシリンダ内のプランジャ(ピストン)を往復運動させ、油の吸い込みと吐き出しを行なう構造で、シリンダブロックが軸とともに回転する。プランジャがシリンダブロックの中心線と平行に往復運動する形式のポンプで、斜板はカムの働きをする。プランジャと斜板(カムプレート)とが、ある角度を形成していて、駆動軸と一体となったシリンダブロックが回転運動すると、プランジャが斜板に沿って往復運動をして、ポンプとして作用する。この斜板の角度を調節することで、吐出量が可変される。そして、駆動軸を電動機により回転駆動すると、各々のピストンがシリンダブロックのシリンダ内で摺動して往復動し、油の吸い込み、吐き出しを行なう。このとき、斜板の傾斜角を変えることにより、ピストンの移動距離(ストローク)が変わり吐出量を増減することができる。すなわち、斜板の傾斜角を大きくするとピストンのストロークが大きくなり吐出量を大きくすることができ、逆に斜板の傾斜角を小さくすれば吐出量を小さくすることができる。斜板の傾斜角と駆動軸の軸線とを直交させれば、吐出量はほぼゼロとすることができる。
【0025】
また、アキシャル形斜軸式(コネクチングロッド式)のピストンポンプ(プランジャポンプ)を用いても良い。この斜軸式は、駆動軸に対して傾斜したシリンダブロックが駆動軸とともに回転することによってピストンがシリンダ穴に対して往復運動し、ポンプ作用が行なわれる。
【0026】
図4に示すように、吐出量制御機構19bは、制御ピストン25を備えており、この制御ピストン25は、油圧ポンプ19内部に摺動自在に設けられ、油圧ポンプ19の吐出量を制御する斜板(図略)の傾斜角を変え得るように構成されている。
【0027】
例えば、バケット32(図1、図2参照)が閉じる途中や開く途中など、ポンプ吐出圧が所定の設定圧力以下の場合は、ポンプ吐出側の圧油は管路22を通って制御ピストン25の小径側25bにのみ作用し、油圧ポンプ19は、シリンダブロックが最大傾斜角位置に保持され、最大吐出量に保たれる。
一方、バケット32が閉じ切ったときや開き切ったときなど、ポンプ吐出圧が設定圧力以上になると、制御ピストン25の大径側25aにも管路22を通してパイロット圧が作用し、斜板の傾斜角が減少し、吐出量が減少させられる。ここで設定圧力とは、制御ピストン25に備えられたスプリングによって決まるもので、適宜、調節可能である。
【0028】
このように、油圧ポンプ本体19aと吐出量制御機構19bとで構成された可変容量型の油圧ポンプ19は、一定圧力保持制御特性を有しており、可変容量型の油圧ポンプ19は、斜板の最大傾斜角度に応じた最大油量を油圧回路に送り込む。
次に、ポンプ吐出圧、すなわち、バケット開閉用の油圧シリンダ15(図1参照)の作動圧力が、圧力スイッチ16の設定圧力PS(ここでは、18MPaに設定している)を越えると、この圧力スイッチ16から信号が出力され、タイマ20は、計時を開始し、計時を開始して2秒後(1〜8秒に設定可能)に信号を出力する。タイマ20から出力される信号によって、方向切換弁11A,11B,11Cは同時に中立状態に切り換えられる。
【0029】
本実施形態では圧力スイッチ16が18MPaの設定圧力に達した2秒後に方向切換弁11CのP−Tポートを通して無負荷回路が形成されるため、ポンプ吐出口から方向切換弁11Cに至る管路には最小吐出圧が作用する。このため、例えば、油圧ポンプ19の内部リーク(漏れ)や方向切換弁11Aのスプールなどからのリークが少なくなり、このリークに伴う発熱が防止され、より一層の作動油の発熱低減効果を得ることができる。さらに、圧力および流量が1段階の1圧力1流量の油圧制御回路であるため、シンプルな構成にできる。
また、方向切換弁11Cは、中立状態ではAポートおよびBポートを閉じたオープンセンタ方式の方向切換弁であり(中立状態では常にPTポート間でリターンする構造のタンデムセンタ方式の方向切換弁であっても良い)、圧油との摩擦による損失がない無負荷回路が構成され、熱エネルギーに変換されることもない。これにより、油圧ポンプ19から吐出された吐出圧力油は、油タンク1へ最小吐出圧(約1.5MPa)かつ最少吐出量で循環する。
【0030】
このように、例えば、グラブバケットが荷を掴んで閉じ切ったときや、荷を放つときのグラブバケットが開き切ったときなど、グラブバケットに負荷が増大する。このとき、ポンプ吐出圧が圧力スイッチの設定圧力を越えると、タイマが作動した時点で油圧ポンプは、無負荷回路によって最小吐出圧かつ最少吐出量となるため、ポンプの所要動力を節約して最小とすることができる。このため、リリーフ弁などの圧力制御弁を備えた回路のように圧油をリリーフ作動させるようなことはなく、油温の上昇を大きく削減させることができる。その結果、ポンプ駆動用の原動機が電動機である場合には、発熱・昇温や消費電力を大きく抑制することができ、原動機がディーゼルエンジンなどのエンジンである場合には燃料消費量を抑制することができる。
従って、たとえ油圧ポンプユニット、すなわち、油圧制御回路が密閉構造とされているような場合であっても、あるいは、油圧式グラブバケットが追い掴み運転を多用するような場合であっても、油圧制御回路の連続運転が可能となり、気温が上昇する夏場でも、若しくは、高い気温の雰囲気中においても、油圧式のグラブバケットの連続運転が確実にできる。
【0031】
このように、本実施形態の油圧制御回路100は、圧力スイッチ16で吐出圧を制御する可変容量型の油圧ポンプ19を採用し、バケット32の開閉動作において、無負荷回路を構成させることにより、従来の固定(定吐出容量)ポンプと圧力制御弁としてのリリーフ弁を採用した油圧回路に比べて、および、可変吐出量型のポンプをデッドヘッドさせただけの油圧回路に比べて、確実に温度上昇を抑制することができる。このため、閉じ切り時や開き切り時の作動油の発生熱量を大幅に削減させることができる。その結果、油温を10℃下げることができた。このような油圧制御回路を用いたグラブバケットを適用する分野では、連続運転中の油温を10℃低くすることは、大変なことであり、極めて大きな効果を得ることができた。
【0032】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図5は、第2実施形態に係るグラブバケットに適用される油圧制御を示す油圧回路図である。
なお、第2の実施形態に係るグラブバケットが、第1の実施形態に係るグラブバケットの構成と同一な箇所は、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図5に示すように、方向切換弁11AのPポートは圧力スイッチ16の下流側で吐出管5に接続され、Tポートは油タンク1に接続されている。Aポートは、油圧シリンダ15のヘッド側室15aに接続され、Bポートは、カウンタバランス弁24を介して油圧シリンダ15のロッド側室15bに接続されている。
方向切換弁11CのPポートは圧力スイッチ16の上流側で吐出管5に接続され、Tポートは油タンク1に接続されている。Aポート、Bポートは、方向切換弁11Aのパイロット圧を制御するように各々電磁弁側に接続されている。
【0034】
次に、油圧制御回路200の動作を図5に基づいて詳細に説明する。
図5に示すように、油圧ポンプ19の吐出圧力がデッドヘッド圧力に達したときに、油圧ポンプ19の吐出圧力が設定圧力まで昇圧したことを検出する圧力スイッチ16から出力された信号を受けて、タイマ20が計時を開始する。タイマ20から出力された信号を受けて、方向切換弁11A,11Cは同時に中立状態に切り換わる。方向切換弁11Aが中立状態に切り換わることによって、方向切換弁11AのPTポートがブロックされる。方向切換弁11Cは、中立状態でオープンセンタ方式に切り換えられ、吐出管5から方向切換弁11CのPポートへ流入した圧油は、Tポートを経由して油タンク1へ循環する。すなわち、油圧ポンプ19の吐出圧力がデッドヘッド圧力に達することによって、圧力スイッチ16が作動し、タイマ20が計時を開始する。タイマ20から出力される信号によって、方向切換弁(第1の方向切換弁)11Aが中立状態となりP,Tポートがブロックされ、同時に、タイマ20から出力される信号によって、方向切換弁(第2の方向切換弁)11Cも中立状態となる。
このように、油圧制御回路200において、第1の方向切換弁11Aおよび第2の方向切換弁11Cを中立状態に切り換えることにより、第2の方向切換弁11CがPTポート間のみ連通するほぼ無負荷回路を構成して、吐出圧は自動的に低くなる。すなわち、配管抵抗分だけの、ほぼ無負荷回路が構成され、油圧ポンプ19から吐出された圧油を油タンク1との間で最少吐出量かつ最小吐出圧で循環させる。
【0035】
また、以上の実施形態では、バケット形式は図1、2に示されるものについて説明したが、本発明はこれに限らずあらゆる形式のバケットを備えた油圧式グラブバケットに適用することができる。
【0036】
また、以上の実施形態では、荷(掴み物)としては都市ごみなどのごみについて説明したが、これに限られるものでなく、燃焼灰、ヘドロなど、その他種々の掴み物に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係るグラブバケットの正面図である。
【図2】本実施形態に係るグラブバケットの右側面図である。
【図3】第1の実施形態に係るグラブバケットに適用される油圧制御を示す油圧制御回路図である。
【図4】図3の油圧制御回路に適用される可変吐出量(可変容量)型の油圧ポンプの作動原理を示す油圧回路図である。
【図5】第2の実施形態に係るグラブバケットに適用される油圧制御を示す油圧制御回路図である。
【図6】従来例に係るグラブバケットに適用される油圧回路図である。
【符号の説明】
【0038】
1 油タンク
2 吸油管
3 油圧ポンプユニット
4 電動機
5 吐出管
6 パネル
7,12,22 管路
10 タンクライン
11,27 方向切換弁
11A 方向切換弁(第1の方向切換弁)
11B 方向切換弁(パイロット切換弁)
11C 方向切換弁(第2の方向切換弁)
15 油圧シリンダ
16 圧力スイッチ
17 ドレン管
18 チェック弁
19 油圧ポンプ
19a 油圧ポンプ本体
19b 吐出量制御機構
20 タイマ
21 リターンフィルタ
24 カウンタバランス弁
25 制御ピストン
25a 大径側
25b 小径側
26 リリーフバルブ
28 注油口付エアブリーザ
30 グラブバケット
31 ガーダ
31a 軸
32 バケット
32a 爪
33 連結リンク
34 バッファ
35 吊下材
36 プロテクトカバー
37 キャブタイヤケーブル
38 サイド軸受
100,200 油圧制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケット開閉用の油圧シリンダと、
この油圧シリンダを駆動する油圧ポンプと、
この油圧ポンプの吐出管に連結され、圧油を前記油圧シリンダのヘッド側室とロッド側室に切換供給し、前記油圧シリンダの作動方向を切り換える第1の方向切換弁と
を有し、前記油圧ポンプの吐出圧力がデッドヘッド圧力に達することによって前記油圧ポンプの吐出量が最少吐出量となる油圧制御回路であって、
前記第1の方向切換弁と前記油圧ポンプとの間の前記吐出管に設けられ、前記油圧ポンプの吐出圧力が設定圧力まで昇圧したことを検出する圧力スイッチと、
前記圧力スイッチから出力された信号を受けて計時を開始するタイマと、
前記タイマの設定時間に出力される信号によって中立状態に切り換わってPTポートがブロックされる前記第1の方向切換弁と、
前記圧力スイッチと前記油圧ポンプとの間の前記吐出管に設けられ、前記タイマの設定時間に出力された信号を受けて中立状態に切り換わる第2の方向切換弁と
を備え、
前記第1の方向切換弁および前記第2の方向切換弁を中立状態に切り換えることにより、前記第2の方向切換弁がPTポート間を連通して、前記油圧ポンプから吐出された圧油を油タンクとの間で最少吐出量かつ最小吐出圧で循環させることを特徴とするグラブバケットの油圧制御回路。
【請求項2】
前記タイマの設定時間が、1秒〜8秒であることを特徴とする請求項1に記載のグラブバケットの油圧制御回路。
【請求項3】
前記第2の方向切換弁が、中立状態ではPTポート間のみ連通する構造のタンデムセンタ方式の方向切換弁であることを特徴とする請求項1に記載のグラブバケットの油圧制御回路。
【請求項4】
前記第2の方向切換弁が、AポートおよびBポートを閉じたオープンセンタ方式の方向切換弁であることを特徴とする請求項1に記載のグラブバケットの油圧制御回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケット開閉用の油圧シリンダ(15)と、
この油圧シリンダ(15)を駆動する油圧ポンプ(19)と、
この油圧ポンプ(19)の吐出管(5)に連結され、圧油を前記油圧シリンダ(15)のヘッド側室(15a)とロッド側室(15b)に切換供給し、前記油圧シリンダ(15)の作動方向を切り換える第1の方向切換弁(11A)と、
前記第1の方向切換弁(11A)と前記油圧ポンプ(19)との間の前記吐出管(5)に設けられ、前記油圧ポンプ(19)の吐出圧力が設定圧力まで昇圧したことを検出する圧力スイッチ(16)と、
前記圧力スイッチ(16)から出力された信号を受けて計時を開始するタイマ(20)と、
前記タイマ(20)の設定時間に出力される信号によって中立状態に切り換わってPTポートがブロックされる前記第1の方向切換弁(11A)と、
を有し、前記油圧ポンプ(19)の吐出圧力がデッドヘッド圧力に達することによって前記油圧ポンプ(19)の吐出量が最少吐出量となる油圧制御回路(100)において、
前記圧力スイッチ(16)と前記油圧ポンプ(19)との間の前記吐出管(5)に設けられ、前記タイマ(20)の設定時間に出力された信号を受けて中立状態に切り換わる第2の方向切換弁(11C)とを備え、
前記第1の方向切換弁(11A)および前記第2の方向切換弁(11C)を中立状態に切り換えることにより、前記第2の方向切換弁(11C)がPTポート間を連通して、前記油圧ポンプ(19)から吐出された圧油を油タンク(1)との間で最少吐出量かつ最小吐出圧で循環させることを特徴とするグラブバケットの油圧制御回路(100)
【請求項2】
前記タイマ(20)の設定時間が、1秒〜8秒であることを特徴とする請求項1に記載のグラブバケット(30)の油圧制御回路(100)
【請求項3】
前記第2の方向切換弁(11C)が、中立状態ではPTポート間のみ連通する構造のタンデムセンタ方式の方向切換弁であることを特徴とする請求項1に記載のグラブバケット(30)の油圧制御回路(100)
【請求項4】
前記第2の方向切換弁(11C)が、AポートおよびBポートを閉じたオープンセンタ方式の方向切換弁であることを特徴とする請求項1に記載のグラブバケット(30)の油圧制御回路(100)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−240816(P2006−240816A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58328(P2005−58328)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【特許番号】特許第3792709号(P3792709)
【特許公報発行日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000154598)株式会社福島製作所 (3)
【Fターム(参考)】