ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラム
【課題】ソフトブレークダウンの判定条件を一意に決定することを可能にする、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法を提供する。
【解決手段】MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価する際に、MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する工程S1と、その後、決定したワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する工程S2と、決定した検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う工程S3とを行う。
【解決手段】MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価する際に、MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する工程S1と、その後、決定したワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する工程S2と、決定した検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う工程S3とを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOS型半導体素子における、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置、並びに、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来から、MOS型半導体素子において、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を推定するために、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の判定試験が行われている。
【0003】
MOS型半導体素子からなる集積回路における、このゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の判定試験方法は、以下に説明する通りである。
絶縁破壊寿命試験に用いる試験素子(TEG:test element group)の選び方には、明確な決まりが無い。
大まかなトレンドを述べると、かつては大面積のMOS構造素子(キャパシタもしくはトランジスタ)を用いていたものが、ゲート絶縁膜の薄膜化によって、小面積化が進んできた。小面積化が必要となる原因は、ゲート絶縁膜の薄膜化によって単位面積当たりのゲートリーク電流が増加するからである。
下記非特許文献1において、試験素子の面積を示す一例として1.7〜4.3nmのゲート絶縁膜を扱っており、面積が10μm2〜40000μm2の範囲の試験素子を用いている。そして、その試験素子を使用して、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown;経時性絶縁破壊)試験を行っている。
【0004】
TDDB試験の温度、即ちTDDB試験中のMOS型半導体素子の温度は、寿命を見積もりたい温度とする。通常は、試験温度が高いほど絶縁破壊寿命は短くなるので、集積回路の動作保証上限温度、典型的には80℃〜150℃辺りに設定することがほとんどである。
TDDB試験の電圧は、試験に供するゲート絶縁膜の絶縁破壊が現実的に測定可能な時間範囲において複数点(3点以上)設定するのが普通である。電圧を複数点設定する理由は、寿命の電圧依存性を取得するためである。取得した電圧依存性を用いて、実使用電圧における寿命を外挿によって求める。
また、現実的に測定可能な時間範囲というのを具体的に述べると、典型的には1秒から長くても数十時間程度である。
【0005】
絶縁破壊試験では、MOS型半導体素子のゲート電圧に所定の電圧を印加して、絶縁性を評価するために予め決めておいた通りの時間間隔でゲート電流を測定する。
なお、ゲート絶縁膜の薄膜化が進んだ現在では、ゲート電流の測定はストレス電圧よりも低い電圧で行うことが多い。具体的には、例えばストレス印加を4Vで行う場合でも、ゲート電流の測定は1Vや1.5Vで行う。これは、低電圧において流れるゲート電流をモニタする方が、ストレス電圧でモニタするよりも感度が高いからである。このことは広く知られている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0006】
上述のような試験方法によると、例えば図11に示すようなデータを取得することができる。ただし、近年の先端CMOS−LSIで用いられているような極薄ゲート絶縁膜の場合は、絶縁性の喪失が徐々に生じるので、一目瞭然で絶縁破壊点を特定するのが難しいことが広く知られている。例えば、図11において、複数本示す矢印のうち、どの点を絶縁破壊の発生と判定するかは、一意には決められない。
【0007】
このように不明瞭な絶縁性喪失の最初の予兆は、ソフトブレークダウン(SBD:soft breakdown)と呼ばれる。そして、ソフトブレークダウンに至るまでの時間、即ちソフトブレークダウン寿命の分布パラメータ(破壊する割合が63.2%に達する63.2%寿命とワイブル傾き)は、絶縁破壊寿命を定量化する上で非常に重要なパラメータである。
従って、この不明瞭なソフトブレークダウンをどう検知するかは、絶縁破壊寿命を見積もる上で極めて重要である。
【0008】
ソフトブレークダウンを検知する従来の方法は、大きく分けて2種類ある。それぞれの方法を、以下に説明する。
【0009】
従来の方法の一つは、下記非特許文献3に開示されている方法である。これは、時系列で隣接するゲート電流値の差分に注目し、この差分が所定の閾値よりも大きくなった瞬間をソフトブレークダウンとして検知する方法である。
【0010】
従来の方法のもう一つは、下記非特許文献4や下記特許文献1に開示されている、電流ノイズを用いる方法である。これは、ソフトブレークダウン後にゲート電流値が安定しなくなる、即ち、電流が顕著に増減してノイズ上に記録される現象を用いる方法である。
【0011】
ところで、2nm以下の極薄ゲート酸化膜のTDDBを取り扱う上で、進行性破壊(PBD:progressive breakdown)という概念が受け入れられつつある(例えば、非特許文献5や非特許文献6を参照)。
【0012】
このPBDという概念について、以下、詳細に説明する。
集積回路の動作不良を引き起こすほどに極薄ゲート酸化膜が絶縁性を喪失する、ハードブレークダウン(HBD:hard breakdown)に至る過程は、2段階に分けて理解することが可能である。即ち、絶縁破壊の最初の兆候の発現である前出のソフトブレークダウン(SBD)と、さらにこのSBDに続く破壊箇所が成長して導電度が増加する現象(前述したPBD)の2段階である。
【0013】
そして、前記非特許文献5や前記非特許文献6に明らかにされている通り、SBDとPBDという2つの事象は、それぞれ独立した事象であるので、回路動作不良を引き起こすHBDは、SBDとPBDの分布パラメータから算出することが可能である。
SBDに至る時間、即ちSBD寿命は、Weibull(ワイブル)分布に従うことが広く知られているが、PBDに要する時間、即ちPBD時間も、Weibull(ワイブル)分布に従うと見なせると考えられている(非特許文献6を参照)。
従って、HBDは、上記の分布パラメータで表すことができ、時間0〜tの間にHBDが発生する確率(累積確率と呼ばれる)FHBDは、次式で表される。
【0014】
【数1】
【0015】
時間tにおけるHBDの発生確率密度fHBDは、FHBDの時間微分であり、次のように表される。
【0016】
【数2】
【0017】
ここで、fSBD(t)及びfPBD(t)は、それぞれSBD及びPBDの確率密度関数であり、Weibull(ワイブル)分布に従うならば、次式のように表せる。
【0018】
【数3】
【0019】
ここで、βSBD、βPBD、t63SBD、t63PBDはWeibull(ワイブル)形状パラメータと呼ばれる値であり、βはWeibull(ワイブル)プロットの傾きを表すものでWeibull(ワイブル)傾きと呼ばれる。t63は、不良率が63.2%となる時間であり、Weibull(ワイブル)分布を記述する際に広く使われるパラメータである。
【0020】
従って、SBDとPBDのワイブル形状パラメータから、HBDの分布を数値計算することができる。SBD,PBD,HBDのそれぞれの故障時間と後述するWeibit(ワイビット)との関係の一例を、図12に示す。
図12からわかるように、HBD分布の低確率側の傾きは、βSBD+βPBDになっており、このことは、詳細な説明は省略するが、解析的に理解可能である。
このことによって、特に低確率側のHBD寿命が、SBD寿命よりも大幅に長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2004−214235号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Nicollian et al.,International electron devices meeting 2000(technical digest),p.545-549
【非特許文献2】Pompl et al.,IEEE International reliability physics symposium 2000 proceedings,p.40-47
【非特許文献3】Kaczer et al.,International electron device meeting 2004 Technical digest,p.713-716
【非特許文献4】Suehle et al.,International reliability physics symposium 2000 proceedings,p.33-39
【非特許文献5】E. Y. Wu et al.,internationalreliability physics symposium 2006 proceedings,p.54-62
【非特許文献6】A. Kerberet al.,international reliability physics symposium 2007 proceedings,p.217-220
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述した従来の技術の問題点は、ソフトブレークダウンの判定にある。ソフトブレークダウンが不明瞭でなく、これを判定する決定的な方法が存在しない。
【0024】
前記非特許文献3に開示されている方法においては、閾値をどう設定すればよいかについて、決定的なガイドラインが無い、という致命的な問題がある。
前記非特許文献3では、閾値を変化させた場合のソフトブレークダウン寿命をワイブル分布で表した場合のワイブル傾きの値を調べていて、ワイブル傾きの値が2程度と大きい場合には、ソフトブレークダウンを見過ごしていて、閾値が高すぎるとしている。そして、閾値を小さくしていって、ワイブルスロープの値が大体一定になる範囲の閾値が、適正であると結論付けている。
しかしながら、冗長性が大きく残る指針と言わざるを得ず、データを扱う人の感覚に左右される。
【0025】
また、前記非特許文献4や前記特許文献1に開示されている方法を、本発明の発明者らが酸化膜換算膜厚(EOT:equivalent oxide thickness)が1.2nmと非常に薄いゲート絶縁膜の場合に適用を試みた。
すると、文献中に開示されているほどの明確なノイズ量の変化は認められず、この膜厚のゲート絶縁膜には、適用することができなかった。
前記非特許文献4では、膜厚2.0nm以上の酸化膜を取り扱っており、さらに薄い1.2nmといった場合には、適用が難しい可能性が高い。
【0026】
従来は、ソフトブレークダウンの判定方法を決めて、これを用いてデータを統計的処理にかけることによって、ソフトブレークダウンのワイブル分布パラメータを求めていたので、一意にこのパラメータを決定することができなかった。
【0027】
上述した問題の解決のために、本発明においては、ソフトブレークダウンの判定条件を一意に決定することを可能にする、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法、評価装置、並びに、評価を実行するためのプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法は、MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価する評価方法である。そして、MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する工程と、その後、決定したワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する工程とを含む。さらに、決定した検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う工程を含む。
【0029】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置は、MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価するための評価装置である。そして、MOS型素子に対して電気的なストレスを与えるために、MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部と、ゲート絶縁膜を介して流れるリーク電流を測定する電流測定部と、MOS型素子を含む試験素子を室温以下の温度に保持する温度保持部とを含む。
【0030】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムは、評価の手順をコンピュータに実行させるものである。評価の手順は、MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する手順と、その後、決定したワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する手順とを含む。さらにまた、決定した検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う手順を含む。
【0031】
上述の本発明の絶縁破壊寿命の評価方法によれば、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定して、このワイブル傾きからソフトブレークダウンの検知条件を決定する。これにより、ソフトブレークダウンの検知条件を、ぶれることなく、一意にかつ論理的に決定することができる。
そして、この決定した検知条件を使用して絶縁破壊試験を行うことにより、ソフトブレークダウンを見逃すことなく検知することができる。
【0032】
上述の本発明の絶縁破壊寿命の評価装置の構成によれば、MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部と、ゲート絶縁膜を介して流れるリーク電流を測定する電流測定部とによって、MOS型素子に電気的ストレスを与えて、リーク電流を測定することができる。このようにして、絶縁破壊試験を行うことが可能になる。
また、MOS型素子を含む試験素子を室温以下の温度に保持する温度保持部を含むので、室温以下の温度で絶縁破壊試験を行うことができる。これにより、温度保持部を利用して室温以下の温度で絶縁破壊試験を行って、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0033】
上述の本発明の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムによれば、本発明の絶縁破壊寿命の評価方法をコンピュータに実行させることができ、短い時間で精度良く、絶縁破壊寿命を評価することができる。
【発明の効果】
【0034】
上述の本発明によれば、ゲート絶縁膜の絶縁破壊を取り扱う上での基礎となる、ソフトブレークダウンの検知条件を、一意にかつ論理的に決定することができ、絶縁破壊試験の際に、ソフトブレークダウンを見逃すことなく検知することができる。
従って、本発明により、絶縁破壊寿命を適切に判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】電流変化量の閾値を変化させて、SBD寿命分布のワイブル傾きがどう変化するかを示す図である。
【図2】SBDのt63がPBDのt63の140倍である場合に、HBD分布をモンテカルロシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図3】モンテカルロシミュレーションで求めた、ゲート面積の標準偏差と実測したワイブル傾きの減少量との関係を示す図である。
【図4】SBD寿命及びPBD時間と温度との関係を示す図である。
【図5】SBD寿命及びPBD時間とゲート電圧との関係を示す図である。
【図6】実測値により求めたHBD寿命分布を示す図である。
【図7】本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法による評価の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例におけるゲート面積とHBDのワイブル傾きとの関係を示す図である。
【図9】電流変化量の閾値を変化させたときの、SBD寿命分布のワイブル傾きの変化を示す図である。
【図10】金属ゲート電極と薄いhigh−kのゲート絶縁膜とを組み合わせた場合の、絶縁破壊試験で得られるデータを示す図である。
【図11】絶縁破壊試験で得られるデータを示した図である。
【図12】SBD,PBD,HBDのそれぞれの故障時間とWeibit(ワイビット)との関係の一例を示す図である。
【図13】本発明の評価装置の一実施の形態の概略構成図(ブロック図)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.本発明の概要
2.実施の形態(実施例)
【0037】
<1.本発明の概要>
本発明では、従来の、ソフトブレークダウン検知基準決定→ワイブル分布パラメータ決定という手順とは、全く逆の手段を採用する。
【0038】
まず、前記非特許文献3を基にして、ソフトブレークダウンの判定条件をどうするべきかを説明する。
SBD判定条件、即ち電流変化量の閾値を変化させて、SBD寿命分布のワイブル傾きがどう変化するかを調べた例を、図1に示す。
この図1の結果からもわかるように、前述した通り、一意にはSBD判定条件を決定できない。
【0039】
そこで、本発明では、従来の方法とは逆の発想として、ソフトブレークダウンの判定基準を決定する前に、まずSBDのワイブル傾きを求めることにした。
判定条件に神経質になることなく、SBDのワイブル傾きを決定するためには、tPBD≪tSBDとなれば良い。例えば、SBDのt63(t63SBD)がPBDのt63(t63PBD)の140倍であるような場合のHBD分布を、モンテカルロシミュレーションで求めた結果を、図2に示す。具体的な計算パラメータは次の通りである。SBDについては、t63SBDが140秒、ワイブル傾きが1.11である。PBDについては、t63PBDが1秒、ワイブル傾きが0.84である。
図2より、ワイブルプロットの縦軸(不良率をFとして、ln(-ln(1-F))、Weibitと呼ばれる)が2〜−2の範囲では、HBD分布とSBD分布がほとんど重なっている。
つまり、判定基準に迷う余地無く、決定可能なHBD寿命分布を求めて、Weibit(ワイビット)が−2以上の領域のデータからワイブル傾きを求めれば、それをSBD寿命分布のワイブル傾きと見なしてよい。
【0040】
ここで、発明者の検討により、tPBD≪tSBDであるような状態を実現するためには、(1)ゲート面積を小さくすること、(2)温度を下げること、(3)電圧を下げること、の3点が有効であることがわかった。
【0041】
(1)のゲート面積については、ゲート面積を小さくすると、tSBDが長くなる一方で、tPBDはほぼ一定であることから、有効である。
【0042】
ただし、TDDB評価に小面積の試験素子を用いる場合には、ゲート面積のばらつきが測定結果に及ぼす影響が懸念される。具体的には、ゲート面積がばらつくことによって、TDDB寿命のばらつきが助長されて、実測データから求めるSBD寿命分布のワイブル傾きが小さくなることが予想される。
そこで、モンテカルロシミュレーションによって、TDDBテスト素子のゲート面積のばらつきの影響を見積もった。見積もりの結果として、ゲート面積の標準偏差と実測したワイブル傾きの減少量との関係を、図3に示す。
図3より、ゲート面積の加工ばらつき(標準偏差)が中央値の35%に達した場合でも、実測ワイブル傾きへの影響は5%以下に抑えられることがわかる。
【0043】
ここで、例えば45nmノード等といった、最先端プロセスにおける加工ばらつきの、実測ワイブル傾きへの影響を簡単に見積もってみる。安定して加工可能な、即ち集積回路内で使用することができるゲート寸法は、ゲート長が40nm、ゲート幅が80nm等となる。
これらの加工ばらつきを、それぞれ標準偏差で5%以下に抑えるのは、それほど難しくない。言い替えれば、ゲート面積の加工ばらつきをσで10%以下に抑えるのは難しくないので、ワイブル傾きの値への影響は0.5%以下と無視可能なレベルになる。
従って、SBD分布のワイブル傾きを正確に求めるために加工可能な最小寸法を用いても、加工ばらつきは問題にならないので、加工可能な範囲で最もゲート面積が小さいMOSトランジスタを、試験素子として用意すべきである。
【0044】
(2)の温度については、tSBDとtPBDの温度依存性が異なっており、低温の方がtSBD÷tPBDが大きくなることに因る。
SBD寿命及びPBD時間と温度との関係を、図4に示す。図4の横軸は1000/絶対温度であり、右に行くほど低温になる。
図4に示すように、SBD寿命とPBD時間の温度依存性は大きく異なるので、試験温度を下げることは効果が大きい。
通常のTDDB試験は、集積回路の高温動作を想定して高温で行うのが普通である。これに対して、SBDのワイブル傾き及びSBD判定基準を決定するためには、通常のTDDB試験の温度(第1の温度)と比較して充分に低い第2の温度で、TDDB試験を実施するのが有効である。特に、室温、或いは室温よりも低い温度でTDDB験を実施すれば、さらに有効であると言える。
【0045】
(3)の電圧については、tSBDとtPBDの電圧依存性が異なっており、低電圧の方がtSBD÷tPBDが大きくなることに因る。
SBD寿命及びPBD時間と、ゲート電圧との関係を、図5に示す。
ただし、図5に示すように、SBD寿命及びPBD時間の電圧依存性の差は大きくないので、可能な範囲で試験電圧を下げればよい。ここで言う可能な範囲とは、現実的な期間内にTDDB試験を終了可能という意味であり、現実的な期間と言えば数日から長くても数週間であると考えられる。
例えば、ワイブル傾きを±5%の精度及び95.4%の確度で決定するためには、概ね2600個の試験素子を破壊してTDDB試験を行う必要があることが、本発明の発明者のモンテカルロシミュレーションからわかっている。2600個の試験素子に対して順番にTDDB試験を実施して、例えば100時間以内に試験を終了するためには、1個の試験素子当たり約2.3分で終わるような電圧に設定する必要がある。
【0046】
ここで、ウェハ内の複数の試験素子に同時に針当てして、同時に試験可能であるようなシステムや評価装置を構築すれば、より低い電圧で試験することが可能になる。
例えば、40素子のTDDB試験を同時に実施することが可能であれば、各素子のTDDB試験に約1.5時間(=100時間÷(2600÷40))を要する程度にまで電圧を下げることができる。
【0047】
実際の例として、例えば膜厚1.2nmのSiONゲート絶縁膜のpMOSにおけるTDDB寿命を、ゲート長40nmゲート幅200nmの試験素子を用いて、ストレスゲート電圧が−3.1Vかつ25℃という条件において測定した。この測定により求めたHBD寿命分布を、図6に示す。
図6より、ワイビットが−3程度以上の範囲において直線に乗っており、ワイビットが−3以下になると、徐々にその直線から下に離れていく結果になっている。そして、図2に示した、tPBD≪tSBDの場合のHBD寿命分布のモンテカルロシミュレーション結果と、類似した形であることがわかる。
即ち、図6に示したHBD寿命分布のワイビットが大きい領域(例えば−2以上)は、ほぼSBD寿命分布に重なっているとみなすことができ、その領域のデータからSBDのワイブル傾きを決定できることがわかる。
【0048】
なお、ゲート絶縁膜の膜厚が薄くなると、tPBD≪tSBDという状態を実現することが、より困難になる。このことは、文献に報告されている(例えば、Pompl et al.,Microelectronics Reliability,Vol.46,2006,p.1603-1607を参照)。
従って、ゲート絶縁膜が1.2nmよりも薄い場合には、試験素子のゲート面積をもっと小さくしたり、試験温度を室温以下に下げたりする必要がある。
【0049】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法においては、MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する。
さらにその後、決定したワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する。この検知条件は、例えば、リーク電流の変化量の閾値である。
そして、決定したソフトブレークダウンの検知条件を使用して、所定の温度で絶縁破壊試験を行う。
【0050】
ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定して、このワイブル傾きからソフトブレークダウンの検知条件を決定することにより、ソフトブレークダウンの検知条件を、ぶれることなく、一意にかつ論理的に決定することができる。
そして、この決定した検知条件を使用して絶縁破壊試験を行うことにより、ソフトブレークダウンを見逃すことなく検知することができる。
【0051】
本発明の評価方法において、ゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する具体的な手法、手順等については、前述した説明に沿って実行することができる。
【0052】
本発明の評価方法において、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する際には、ゲート面積の小さい試験素子を使用することが好ましい。
より好ましくは、ゲート長とゲート幅が対象となる集積回路内で使われる最小寸法に実質的に等しいような、MOS型素子を試験素子として使用する。
集積回路内で使われる最小寸法に実質的に等しいMOS型素子を試験素子として使用して、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定することにより、寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0053】
本発明の評価方法において、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する際には、所定のTDDB試験温度、即ち、TDDB寿命を見積もる温度条件よりも低い温度で絶縁破壊試験を行うことが好ましい。より好ましくは、所定のTDDB試験温度(例えば、前述した80〜150℃)よりも充分に低い温度、即ち例えば、室温程度や室温以下の温度とする。
このように、TDDB試験温度よりも低い温度で絶縁破壊試験を行って、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定することにより、寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0054】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法は、従来の評価方法で使用されている評価装置と同様の構成の評価装置を使用して実行することが可能である。
評価装置は、MOS型素子に対して電気的なストレスを与えるために、MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部と、ゲート絶縁膜を介して流れるリーク電流を測定する電流測定部とを、少なくとも備えて構成する。
電圧供給部としては、電源や配線、MOS型素子に電気的に接続する端子等が、考えられる。
電流測定部としては、電流計、配線、MOS型素子に電気的に接続する端子等が、考えられる。
また、必要に応じて、MOS型素子を含む試験素子や、試験素子を含む基板等を固定する機構や、評価装置の動作を制御する制御部や、測定したリーク電流のデータを処理する処理部等をさらに備えた評価装置としてもよい。
【0055】
ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する際に、前述したように室温以下の温度で絶縁破壊試験を行う場合には、MOS型素子を含む試験素子を室温以下に保持する温度保持部をさらに含む構成の評価装置を使用することが望ましい。
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置は、前述した電圧供給部及び電流測定部に加えて、このような温度保持部をさらに含む構成である。これにより、温度保持部を利用して室温以下の温度で絶縁破壊試験を行って、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0056】
さらに、本発明の評価装置において、電圧供給部が、基板上に形成された複数個の試験素子に対して、同時に電気的なストレスを与えることが可能な構成であり、電流測定部が、複数個の試験素子に対して測定が可能な構成としてもよい。
このような構成とすることにより、複数個の試験素子のリーク電流を測定することができるので、より短い時間で複数個の試験素子に対して絶縁破壊試験を行うことが可能になる。また、前述したように、より低い電圧で試験することが可能になる。
【0057】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムは、以下の手順をコンピュータに実行させるものである。
(1)MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する手順。
(2)その後、決定した前記ワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する手順。
(3)決定した検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う手順。
即ち、本発明のプログラムは、前述した本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法を、コンピュータに実行させるものである。
本発明の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムによれば、本発明の絶縁破壊寿命の評価方法をコンピュータに実行させることができる。そして、短い時間で精度良く、絶縁破壊寿命を評価することができる。
【0058】
ここで、本発明によるゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法のフローチャートを、図7に示す。
まず、ステップS1において、ゲート絶縁膜のSBD(ソフトブレークダウン)に至る寿命分布のワイブル傾きを決定する。
次に、ステップS2において、決定したSBD(ソフトブレークダウン)に至る寿命分布のワイブル傾きから、SBD(ソフトブレークダウン)の検知条件を決定する。
次に、ステップS3において、決定したSBD(ソフトブレークダウン)の検知条件を使用して、所定の温度で絶縁破壊試験を行う。
このようにして、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価を行うことができる。
また、本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムは、図7に示すフローチャートの処理をコンピュータに実行させる。
【0059】
本発明において、MOS型素子としては、pMOS及びnMOSのいずれにも適用することが可能である。
【0060】
<2.実施の形態(実施例)>
次に、本発明の具体的な実施の形態(実施例)を説明する。
【0061】
本実施の形態(実施例)では、pMOSトランジスタにおいて、ゲート電極をポリシリコンにより形成し、ゲート絶縁膜を膜厚1.2nmのSiON膜により形成する。
【0062】
本実施の形態のpMOSトランジスタのゲート絶縁膜のTDDB寿命を求める手順の例を、以下に説明する。
【0063】
まず、SBD寿命のワイブル傾きを決定するために、種々のゲート面積の試験素子に対してTDDB試験を実施して、HBD寿命のワイブル傾きを求めた。その結果として、ゲート面積とワイブル傾きとの関係を、図8に示す。
なお、試験条件の詳細は、SBDのワイブル傾きをできるだけ正確に見積もれるように決定しており、試験温度を25℃とし、ワイブル傾きを求めるために用いるデータをワイビットが−2以上の領域とした。
こうした条件下で、十分に小さい面積におけるHBDのワイブル傾きは、SBDのそれと一致すると考えた。
【0064】
HBDのワイブル傾きの実測結果を、図8に●印で表している。同時に、95.4%信頼区間をエラーバーで示す。なお、95.4%信頼区間は、モンテカルロシミュレーションから決定しており、主にはTDDB試験で破壊した素子の数に依る。また、図8中の○印は、モンテカルロシミュレーションで求めたHBDのワイブル傾きであるが、これは図8のデータ点から求めたSBD寿命分布のワイブル傾きの真値をもとにして、絶縁破壊現象をモデリングした結果であり、事後検証である。
【0065】
ゲート面積が0.008m2及び0.01m2の2点の結果から、SBDの真のワイブル傾きは1.1と決定することができた。このうち、0.01m2についてのHBD寿命分布は、図6に示したものであり、tPBD≪tSBDの場合のHBD分布として妥当であることは、既に説明した通りである。
【0066】
次に、SBDを検知する判定条件の決定を行う。
ゲート長40nm、ゲート幅0.5mの試験素子を521個もの多数用いて、105℃においてストレスゲート電圧が−3.2VのTDDB試験を実施して、種々のSBD判定条件に対するSBD寿命のワイブル傾きを求めた。その結果を、図9に示す。なお、この図9に示すデータは、既に示した図1と同じデータではあるが、説明のために異なる図として再掲している。
ここで、SBD寿命分布のワイブル傾きの真値は、既に1.1と求まっているので、図9より、SBDを検知するゲート電流変化の閾値は6nA、と求めることができる。
なお、この6nAというゲート電流変化の閾値が意味するところは、SBDに伴うゲート電流の増加量が6nAだと見なせるということであるので、他のゲート面積の試験素子に対しても適用可能である。
【0067】
こうして決定したSBD判定基準を用いて、前記非特許文献5や前記非特許文献6に開示されている既知の方法でSBDやPBDといった現象をモデリングする。これにより、ゲート酸化膜の絶縁破壊による、集積回路の故障に至る寿命、即ちHBD寿命を見積もることが可能になる。
【0068】
上述の本実施の形態(実施例)によれば、所定の温度(105℃)でのTDDB試験に先立って、25℃でのTDDB試験を行って、SBD寿命分布のワイブル傾きを求めて、このワイブル傾きから、SBDを検知するゲート電流変化の閾値を求めている。これにより、SBDを検知するゲート電流変化の閾値、即ちSBDの検知条件を、ぶれることなく、一意にかつ論理的に決定することができる。
そして、この決定したSBDの検知条件を使用してTDDB試験を行っている。これにより、SBDを見逃すことなく検知することができる。
【0069】
また、試験温度を室温程度の25℃とし、ゲート面積が0.008m2及び0.01m2と、面積が小さい試験素子を使用して、SBD寿命のワイブル傾きを求めたことにより、寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することができる。
【0070】
上述した実施例では、約1.2nmの極薄SiONゲート絶縁膜とポリSiゲート電極を有するpMOSトランジスタに本発明を適用していた。
本発明は、pMOSトランジスタに限らず、nMOSトランジスタにも同様に適用することができる。
【0071】
なお、nMOSトランジスタの場合には、pMOSトランジスタに比べて、PBD時間が短い傾向が見られた。
即ち、本発明の発明者の検討した範囲では、pMOSでtPBD≪tSBDが満たされる、SBD寿命のワイブル傾きを決定できるような、試験素子及び温度条件であれば、同時にnMOSでもtPBD≪tSBDが満たされるという結果が得られた。これにより、nMOSトランジスタにおいても、SBD寿命のワイブル傾きを決定することが可能である。
【0072】
また、上述した実施例では、ゲート絶縁膜にSiON膜を使用していたが、SiO2膜やSiN膜等、その他のゲート絶縁膜を使用したMOS型素子にも、同様に本発明を適用することが可能である。
【0073】
さらにまた、最先端MOS製品への量産適用がすでに始まっている高誘電率ゲート絶縁膜(high−kゲート絶縁膜)や、金属ゲート電極の場合に、本発明の技術が有効かどうかについては、一般論として結論を示すことはできない。これらの新技術を用いた場合のゲート絶縁破壊の機構がすべて明らかになっているわけではなく、また破壊機構が製造方法によって変わる可能性もあるためである。
【0074】
金属ゲート電極を用いた場合には、いわゆるPBD的な挙動は示さずに、一瞬にして見間違えようの無い絶縁破壊が生じる。このことは、文献に報告されている(例えば、Kauerauf et al.,IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS,VOL.26,No.10,OCTOBER 2005,p.773を参照)。
この場合には、本発明の技術は不要であるとも考えられる。
【0075】
しかしながら、本発明の発明者が検討したところ、金属ゲート電極を用いたとしても、酸化膜換算膜厚で0.9nmという極めて薄いhigh−kのゲート絶縁膜と組み合わせた場合には、そのような鮮明な絶縁破壊は生じないことがわかった。
この場合の絶縁破壊試験で得られるデータを、図10に示す。
図10に示すように、一意にはSBD判定を行えないような、極薄SiONゲート絶縁膜とポリシリコンゲート電極とを用いた場合と、類似したデータが得られている。この場合には、本発明の技術が有用であると考えられる。
【0076】
続いて、本発明の評価装置の具体的な実施の形態を説明する。
本発明の評価装置の一実施の形態の概略構成図(ブロック図)を、図13に示す。
図13に示す評価装置は、試験ウェハ10の温度を保持する温度保持部(ウエハステージ)11と、リーク電流を測定する電流測定部13と、電流測定部13を制御する制御・測定装置14とを備えている。電流測定部13は、その先端に測定用のプローブ12が設けられ、その内部に電流計15と可変電源16とを備えている。
試験ウェハ10には、図示しないが、MOS型素子が形成されている。
また、この評価装置は、試験ウェハ10のMOS型素子に対して電気的なストレスを与えるために、MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部を備えて構成される。この電圧供給部は、電流測定部13に設けられたプローブ12及び可変電源16と、試験ウェハ10のMOS型素子に電気的に接続された電極等により構成される。
制御・測定装置14は、測定のための命令を電流測定部13に与える。そして、電流測定部13によって測定されたデータが、電流測定部13から制御・演算装置14に送られて演算される。この制御・演算装置14を、本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムが実行されるように、構成しても良い。
温度保持部(ウエハステージ)11は、MOS型素子を含む試験ウェハ10を、室温以下の温度に保持できるように、冷却機構等を備えて構成される。この冷却機構の具体的な構成は、特に限定されるものではなく、従来から知られている構成を使用することができる。
図13に示す評価装置の構成によれば、電流測定部13と電圧供給部(プローブ12、可変電源16、試験ウェハ10側の電極等)とによって、試験ウェハ10のMOS型素子に電気的ストレスを与えて、リーク電流を測定することができる。このようにして、絶縁破壊試験を行うことができる。また、冷却機構を備えた温度保持部11により、室温以下の温度で絶縁破壊試験を行うことができる。これにより、室温以下の温度で絶縁破壊試験を行って、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0077】
なお、図13に示した評価装置において、さらに電圧供給部が試験ウェハ10の基板上に形成された複数個の試験素子(MOS型素子を含む)に対して、同時に電気的なストレスを与えることが可能な構成としてもよい。そして、このとき、電流測定部13を複数個の試験素子に対して測定が可能な構成とする。例えば、プローブ12や電流計15等を複数個設ける。このような構成とすることにより、複数個の試験素子のリーク電流を測定することができるので、より短い時間で複数個の試験素子に対して絶縁破壊試験を行うことが可能になる。また、より低い電圧で試験することが可能になる。
【0078】
本発明は、上述の実施の形態(実施例)に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【符号の説明】
【0079】
10 試験ウェハ、11 温度保持部(ウェハステージ)、12 プローブ、13 電流測定部、14 制御・演算装置、15 電流計、16 可変電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOS型半導体素子における、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置、並びに、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来から、MOS型半導体素子において、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を推定するために、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の判定試験が行われている。
【0003】
MOS型半導体素子からなる集積回路における、このゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の判定試験方法は、以下に説明する通りである。
絶縁破壊寿命試験に用いる試験素子(TEG:test element group)の選び方には、明確な決まりが無い。
大まかなトレンドを述べると、かつては大面積のMOS構造素子(キャパシタもしくはトランジスタ)を用いていたものが、ゲート絶縁膜の薄膜化によって、小面積化が進んできた。小面積化が必要となる原因は、ゲート絶縁膜の薄膜化によって単位面積当たりのゲートリーク電流が増加するからである。
下記非特許文献1において、試験素子の面積を示す一例として1.7〜4.3nmのゲート絶縁膜を扱っており、面積が10μm2〜40000μm2の範囲の試験素子を用いている。そして、その試験素子を使用して、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown;経時性絶縁破壊)試験を行っている。
【0004】
TDDB試験の温度、即ちTDDB試験中のMOS型半導体素子の温度は、寿命を見積もりたい温度とする。通常は、試験温度が高いほど絶縁破壊寿命は短くなるので、集積回路の動作保証上限温度、典型的には80℃〜150℃辺りに設定することがほとんどである。
TDDB試験の電圧は、試験に供するゲート絶縁膜の絶縁破壊が現実的に測定可能な時間範囲において複数点(3点以上)設定するのが普通である。電圧を複数点設定する理由は、寿命の電圧依存性を取得するためである。取得した電圧依存性を用いて、実使用電圧における寿命を外挿によって求める。
また、現実的に測定可能な時間範囲というのを具体的に述べると、典型的には1秒から長くても数十時間程度である。
【0005】
絶縁破壊試験では、MOS型半導体素子のゲート電圧に所定の電圧を印加して、絶縁性を評価するために予め決めておいた通りの時間間隔でゲート電流を測定する。
なお、ゲート絶縁膜の薄膜化が進んだ現在では、ゲート電流の測定はストレス電圧よりも低い電圧で行うことが多い。具体的には、例えばストレス印加を4Vで行う場合でも、ゲート電流の測定は1Vや1.5Vで行う。これは、低電圧において流れるゲート電流をモニタする方が、ストレス電圧でモニタするよりも感度が高いからである。このことは広く知られている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0006】
上述のような試験方法によると、例えば図11に示すようなデータを取得することができる。ただし、近年の先端CMOS−LSIで用いられているような極薄ゲート絶縁膜の場合は、絶縁性の喪失が徐々に生じるので、一目瞭然で絶縁破壊点を特定するのが難しいことが広く知られている。例えば、図11において、複数本示す矢印のうち、どの点を絶縁破壊の発生と判定するかは、一意には決められない。
【0007】
このように不明瞭な絶縁性喪失の最初の予兆は、ソフトブレークダウン(SBD:soft breakdown)と呼ばれる。そして、ソフトブレークダウンに至るまでの時間、即ちソフトブレークダウン寿命の分布パラメータ(破壊する割合が63.2%に達する63.2%寿命とワイブル傾き)は、絶縁破壊寿命を定量化する上で非常に重要なパラメータである。
従って、この不明瞭なソフトブレークダウンをどう検知するかは、絶縁破壊寿命を見積もる上で極めて重要である。
【0008】
ソフトブレークダウンを検知する従来の方法は、大きく分けて2種類ある。それぞれの方法を、以下に説明する。
【0009】
従来の方法の一つは、下記非特許文献3に開示されている方法である。これは、時系列で隣接するゲート電流値の差分に注目し、この差分が所定の閾値よりも大きくなった瞬間をソフトブレークダウンとして検知する方法である。
【0010】
従来の方法のもう一つは、下記非特許文献4や下記特許文献1に開示されている、電流ノイズを用いる方法である。これは、ソフトブレークダウン後にゲート電流値が安定しなくなる、即ち、電流が顕著に増減してノイズ上に記録される現象を用いる方法である。
【0011】
ところで、2nm以下の極薄ゲート酸化膜のTDDBを取り扱う上で、進行性破壊(PBD:progressive breakdown)という概念が受け入れられつつある(例えば、非特許文献5や非特許文献6を参照)。
【0012】
このPBDという概念について、以下、詳細に説明する。
集積回路の動作不良を引き起こすほどに極薄ゲート酸化膜が絶縁性を喪失する、ハードブレークダウン(HBD:hard breakdown)に至る過程は、2段階に分けて理解することが可能である。即ち、絶縁破壊の最初の兆候の発現である前出のソフトブレークダウン(SBD)と、さらにこのSBDに続く破壊箇所が成長して導電度が増加する現象(前述したPBD)の2段階である。
【0013】
そして、前記非特許文献5や前記非特許文献6に明らかにされている通り、SBDとPBDという2つの事象は、それぞれ独立した事象であるので、回路動作不良を引き起こすHBDは、SBDとPBDの分布パラメータから算出することが可能である。
SBDに至る時間、即ちSBD寿命は、Weibull(ワイブル)分布に従うことが広く知られているが、PBDに要する時間、即ちPBD時間も、Weibull(ワイブル)分布に従うと見なせると考えられている(非特許文献6を参照)。
従って、HBDは、上記の分布パラメータで表すことができ、時間0〜tの間にHBDが発生する確率(累積確率と呼ばれる)FHBDは、次式で表される。
【0014】
【数1】
【0015】
時間tにおけるHBDの発生確率密度fHBDは、FHBDの時間微分であり、次のように表される。
【0016】
【数2】
【0017】
ここで、fSBD(t)及びfPBD(t)は、それぞれSBD及びPBDの確率密度関数であり、Weibull(ワイブル)分布に従うならば、次式のように表せる。
【0018】
【数3】
【0019】
ここで、βSBD、βPBD、t63SBD、t63PBDはWeibull(ワイブル)形状パラメータと呼ばれる値であり、βはWeibull(ワイブル)プロットの傾きを表すものでWeibull(ワイブル)傾きと呼ばれる。t63は、不良率が63.2%となる時間であり、Weibull(ワイブル)分布を記述する際に広く使われるパラメータである。
【0020】
従って、SBDとPBDのワイブル形状パラメータから、HBDの分布を数値計算することができる。SBD,PBD,HBDのそれぞれの故障時間と後述するWeibit(ワイビット)との関係の一例を、図12に示す。
図12からわかるように、HBD分布の低確率側の傾きは、βSBD+βPBDになっており、このことは、詳細な説明は省略するが、解析的に理解可能である。
このことによって、特に低確率側のHBD寿命が、SBD寿命よりも大幅に長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2004−214235号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Nicollian et al.,International electron devices meeting 2000(technical digest),p.545-549
【非特許文献2】Pompl et al.,IEEE International reliability physics symposium 2000 proceedings,p.40-47
【非特許文献3】Kaczer et al.,International electron device meeting 2004 Technical digest,p.713-716
【非特許文献4】Suehle et al.,International reliability physics symposium 2000 proceedings,p.33-39
【非特許文献5】E. Y. Wu et al.,internationalreliability physics symposium 2006 proceedings,p.54-62
【非特許文献6】A. Kerberet al.,international reliability physics symposium 2007 proceedings,p.217-220
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述した従来の技術の問題点は、ソフトブレークダウンの判定にある。ソフトブレークダウンが不明瞭でなく、これを判定する決定的な方法が存在しない。
【0024】
前記非特許文献3に開示されている方法においては、閾値をどう設定すればよいかについて、決定的なガイドラインが無い、という致命的な問題がある。
前記非特許文献3では、閾値を変化させた場合のソフトブレークダウン寿命をワイブル分布で表した場合のワイブル傾きの値を調べていて、ワイブル傾きの値が2程度と大きい場合には、ソフトブレークダウンを見過ごしていて、閾値が高すぎるとしている。そして、閾値を小さくしていって、ワイブルスロープの値が大体一定になる範囲の閾値が、適正であると結論付けている。
しかしながら、冗長性が大きく残る指針と言わざるを得ず、データを扱う人の感覚に左右される。
【0025】
また、前記非特許文献4や前記特許文献1に開示されている方法を、本発明の発明者らが酸化膜換算膜厚(EOT:equivalent oxide thickness)が1.2nmと非常に薄いゲート絶縁膜の場合に適用を試みた。
すると、文献中に開示されているほどの明確なノイズ量の変化は認められず、この膜厚のゲート絶縁膜には、適用することができなかった。
前記非特許文献4では、膜厚2.0nm以上の酸化膜を取り扱っており、さらに薄い1.2nmといった場合には、適用が難しい可能性が高い。
【0026】
従来は、ソフトブレークダウンの判定方法を決めて、これを用いてデータを統計的処理にかけることによって、ソフトブレークダウンのワイブル分布パラメータを求めていたので、一意にこのパラメータを決定することができなかった。
【0027】
上述した問題の解決のために、本発明においては、ソフトブレークダウンの判定条件を一意に決定することを可能にする、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法、評価装置、並びに、評価を実行するためのプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法は、MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価する評価方法である。そして、MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する工程と、その後、決定したワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する工程とを含む。さらに、決定した検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う工程を含む。
【0029】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置は、MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価するための評価装置である。そして、MOS型素子に対して電気的なストレスを与えるために、MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部と、ゲート絶縁膜を介して流れるリーク電流を測定する電流測定部と、MOS型素子を含む試験素子を室温以下の温度に保持する温度保持部とを含む。
【0030】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムは、評価の手順をコンピュータに実行させるものである。評価の手順は、MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する手順と、その後、決定したワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する手順とを含む。さらにまた、決定した検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う手順を含む。
【0031】
上述の本発明の絶縁破壊寿命の評価方法によれば、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定して、このワイブル傾きからソフトブレークダウンの検知条件を決定する。これにより、ソフトブレークダウンの検知条件を、ぶれることなく、一意にかつ論理的に決定することができる。
そして、この決定した検知条件を使用して絶縁破壊試験を行うことにより、ソフトブレークダウンを見逃すことなく検知することができる。
【0032】
上述の本発明の絶縁破壊寿命の評価装置の構成によれば、MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部と、ゲート絶縁膜を介して流れるリーク電流を測定する電流測定部とによって、MOS型素子に電気的ストレスを与えて、リーク電流を測定することができる。このようにして、絶縁破壊試験を行うことが可能になる。
また、MOS型素子を含む試験素子を室温以下の温度に保持する温度保持部を含むので、室温以下の温度で絶縁破壊試験を行うことができる。これにより、温度保持部を利用して室温以下の温度で絶縁破壊試験を行って、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0033】
上述の本発明の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムによれば、本発明の絶縁破壊寿命の評価方法をコンピュータに実行させることができ、短い時間で精度良く、絶縁破壊寿命を評価することができる。
【発明の効果】
【0034】
上述の本発明によれば、ゲート絶縁膜の絶縁破壊を取り扱う上での基礎となる、ソフトブレークダウンの検知条件を、一意にかつ論理的に決定することができ、絶縁破壊試験の際に、ソフトブレークダウンを見逃すことなく検知することができる。
従って、本発明により、絶縁破壊寿命を適切に判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】電流変化量の閾値を変化させて、SBD寿命分布のワイブル傾きがどう変化するかを示す図である。
【図2】SBDのt63がPBDのt63の140倍である場合に、HBD分布をモンテカルロシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図3】モンテカルロシミュレーションで求めた、ゲート面積の標準偏差と実測したワイブル傾きの減少量との関係を示す図である。
【図4】SBD寿命及びPBD時間と温度との関係を示す図である。
【図5】SBD寿命及びPBD時間とゲート電圧との関係を示す図である。
【図6】実測値により求めたHBD寿命分布を示す図である。
【図7】本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法による評価の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例におけるゲート面積とHBDのワイブル傾きとの関係を示す図である。
【図9】電流変化量の閾値を変化させたときの、SBD寿命分布のワイブル傾きの変化を示す図である。
【図10】金属ゲート電極と薄いhigh−kのゲート絶縁膜とを組み合わせた場合の、絶縁破壊試験で得られるデータを示す図である。
【図11】絶縁破壊試験で得られるデータを示した図である。
【図12】SBD,PBD,HBDのそれぞれの故障時間とWeibit(ワイビット)との関係の一例を示す図である。
【図13】本発明の評価装置の一実施の形態の概略構成図(ブロック図)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.本発明の概要
2.実施の形態(実施例)
【0037】
<1.本発明の概要>
本発明では、従来の、ソフトブレークダウン検知基準決定→ワイブル分布パラメータ決定という手順とは、全く逆の手段を採用する。
【0038】
まず、前記非特許文献3を基にして、ソフトブレークダウンの判定条件をどうするべきかを説明する。
SBD判定条件、即ち電流変化量の閾値を変化させて、SBD寿命分布のワイブル傾きがどう変化するかを調べた例を、図1に示す。
この図1の結果からもわかるように、前述した通り、一意にはSBD判定条件を決定できない。
【0039】
そこで、本発明では、従来の方法とは逆の発想として、ソフトブレークダウンの判定基準を決定する前に、まずSBDのワイブル傾きを求めることにした。
判定条件に神経質になることなく、SBDのワイブル傾きを決定するためには、tPBD≪tSBDとなれば良い。例えば、SBDのt63(t63SBD)がPBDのt63(t63PBD)の140倍であるような場合のHBD分布を、モンテカルロシミュレーションで求めた結果を、図2に示す。具体的な計算パラメータは次の通りである。SBDについては、t63SBDが140秒、ワイブル傾きが1.11である。PBDについては、t63PBDが1秒、ワイブル傾きが0.84である。
図2より、ワイブルプロットの縦軸(不良率をFとして、ln(-ln(1-F))、Weibitと呼ばれる)が2〜−2の範囲では、HBD分布とSBD分布がほとんど重なっている。
つまり、判定基準に迷う余地無く、決定可能なHBD寿命分布を求めて、Weibit(ワイビット)が−2以上の領域のデータからワイブル傾きを求めれば、それをSBD寿命分布のワイブル傾きと見なしてよい。
【0040】
ここで、発明者の検討により、tPBD≪tSBDであるような状態を実現するためには、(1)ゲート面積を小さくすること、(2)温度を下げること、(3)電圧を下げること、の3点が有効であることがわかった。
【0041】
(1)のゲート面積については、ゲート面積を小さくすると、tSBDが長くなる一方で、tPBDはほぼ一定であることから、有効である。
【0042】
ただし、TDDB評価に小面積の試験素子を用いる場合には、ゲート面積のばらつきが測定結果に及ぼす影響が懸念される。具体的には、ゲート面積がばらつくことによって、TDDB寿命のばらつきが助長されて、実測データから求めるSBD寿命分布のワイブル傾きが小さくなることが予想される。
そこで、モンテカルロシミュレーションによって、TDDBテスト素子のゲート面積のばらつきの影響を見積もった。見積もりの結果として、ゲート面積の標準偏差と実測したワイブル傾きの減少量との関係を、図3に示す。
図3より、ゲート面積の加工ばらつき(標準偏差)が中央値の35%に達した場合でも、実測ワイブル傾きへの影響は5%以下に抑えられることがわかる。
【0043】
ここで、例えば45nmノード等といった、最先端プロセスにおける加工ばらつきの、実測ワイブル傾きへの影響を簡単に見積もってみる。安定して加工可能な、即ち集積回路内で使用することができるゲート寸法は、ゲート長が40nm、ゲート幅が80nm等となる。
これらの加工ばらつきを、それぞれ標準偏差で5%以下に抑えるのは、それほど難しくない。言い替えれば、ゲート面積の加工ばらつきをσで10%以下に抑えるのは難しくないので、ワイブル傾きの値への影響は0.5%以下と無視可能なレベルになる。
従って、SBD分布のワイブル傾きを正確に求めるために加工可能な最小寸法を用いても、加工ばらつきは問題にならないので、加工可能な範囲で最もゲート面積が小さいMOSトランジスタを、試験素子として用意すべきである。
【0044】
(2)の温度については、tSBDとtPBDの温度依存性が異なっており、低温の方がtSBD÷tPBDが大きくなることに因る。
SBD寿命及びPBD時間と温度との関係を、図4に示す。図4の横軸は1000/絶対温度であり、右に行くほど低温になる。
図4に示すように、SBD寿命とPBD時間の温度依存性は大きく異なるので、試験温度を下げることは効果が大きい。
通常のTDDB試験は、集積回路の高温動作を想定して高温で行うのが普通である。これに対して、SBDのワイブル傾き及びSBD判定基準を決定するためには、通常のTDDB試験の温度(第1の温度)と比較して充分に低い第2の温度で、TDDB試験を実施するのが有効である。特に、室温、或いは室温よりも低い温度でTDDB験を実施すれば、さらに有効であると言える。
【0045】
(3)の電圧については、tSBDとtPBDの電圧依存性が異なっており、低電圧の方がtSBD÷tPBDが大きくなることに因る。
SBD寿命及びPBD時間と、ゲート電圧との関係を、図5に示す。
ただし、図5に示すように、SBD寿命及びPBD時間の電圧依存性の差は大きくないので、可能な範囲で試験電圧を下げればよい。ここで言う可能な範囲とは、現実的な期間内にTDDB試験を終了可能という意味であり、現実的な期間と言えば数日から長くても数週間であると考えられる。
例えば、ワイブル傾きを±5%の精度及び95.4%の確度で決定するためには、概ね2600個の試験素子を破壊してTDDB試験を行う必要があることが、本発明の発明者のモンテカルロシミュレーションからわかっている。2600個の試験素子に対して順番にTDDB試験を実施して、例えば100時間以内に試験を終了するためには、1個の試験素子当たり約2.3分で終わるような電圧に設定する必要がある。
【0046】
ここで、ウェハ内の複数の試験素子に同時に針当てして、同時に試験可能であるようなシステムや評価装置を構築すれば、より低い電圧で試験することが可能になる。
例えば、40素子のTDDB試験を同時に実施することが可能であれば、各素子のTDDB試験に約1.5時間(=100時間÷(2600÷40))を要する程度にまで電圧を下げることができる。
【0047】
実際の例として、例えば膜厚1.2nmのSiONゲート絶縁膜のpMOSにおけるTDDB寿命を、ゲート長40nmゲート幅200nmの試験素子を用いて、ストレスゲート電圧が−3.1Vかつ25℃という条件において測定した。この測定により求めたHBD寿命分布を、図6に示す。
図6より、ワイビットが−3程度以上の範囲において直線に乗っており、ワイビットが−3以下になると、徐々にその直線から下に離れていく結果になっている。そして、図2に示した、tPBD≪tSBDの場合のHBD寿命分布のモンテカルロシミュレーション結果と、類似した形であることがわかる。
即ち、図6に示したHBD寿命分布のワイビットが大きい領域(例えば−2以上)は、ほぼSBD寿命分布に重なっているとみなすことができ、その領域のデータからSBDのワイブル傾きを決定できることがわかる。
【0048】
なお、ゲート絶縁膜の膜厚が薄くなると、tPBD≪tSBDという状態を実現することが、より困難になる。このことは、文献に報告されている(例えば、Pompl et al.,Microelectronics Reliability,Vol.46,2006,p.1603-1607を参照)。
従って、ゲート絶縁膜が1.2nmよりも薄い場合には、試験素子のゲート面積をもっと小さくしたり、試験温度を室温以下に下げたりする必要がある。
【0049】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法においては、MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する。
さらにその後、決定したワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する。この検知条件は、例えば、リーク電流の変化量の閾値である。
そして、決定したソフトブレークダウンの検知条件を使用して、所定の温度で絶縁破壊試験を行う。
【0050】
ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定して、このワイブル傾きからソフトブレークダウンの検知条件を決定することにより、ソフトブレークダウンの検知条件を、ぶれることなく、一意にかつ論理的に決定することができる。
そして、この決定した検知条件を使用して絶縁破壊試験を行うことにより、ソフトブレークダウンを見逃すことなく検知することができる。
【0051】
本発明の評価方法において、ゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する具体的な手法、手順等については、前述した説明に沿って実行することができる。
【0052】
本発明の評価方法において、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する際には、ゲート面積の小さい試験素子を使用することが好ましい。
より好ましくは、ゲート長とゲート幅が対象となる集積回路内で使われる最小寸法に実質的に等しいような、MOS型素子を試験素子として使用する。
集積回路内で使われる最小寸法に実質的に等しいMOS型素子を試験素子として使用して、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定することにより、寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0053】
本発明の評価方法において、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する際には、所定のTDDB試験温度、即ち、TDDB寿命を見積もる温度条件よりも低い温度で絶縁破壊試験を行うことが好ましい。より好ましくは、所定のTDDB試験温度(例えば、前述した80〜150℃)よりも充分に低い温度、即ち例えば、室温程度や室温以下の温度とする。
このように、TDDB試験温度よりも低い温度で絶縁破壊試験を行って、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定することにより、寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0054】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法は、従来の評価方法で使用されている評価装置と同様の構成の評価装置を使用して実行することが可能である。
評価装置は、MOS型素子に対して電気的なストレスを与えるために、MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部と、ゲート絶縁膜を介して流れるリーク電流を測定する電流測定部とを、少なくとも備えて構成する。
電圧供給部としては、電源や配線、MOS型素子に電気的に接続する端子等が、考えられる。
電流測定部としては、電流計、配線、MOS型素子に電気的に接続する端子等が、考えられる。
また、必要に応じて、MOS型素子を含む試験素子や、試験素子を含む基板等を固定する機構や、評価装置の動作を制御する制御部や、測定したリーク電流のデータを処理する処理部等をさらに備えた評価装置としてもよい。
【0055】
ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する際に、前述したように室温以下の温度で絶縁破壊試験を行う場合には、MOS型素子を含む試験素子を室温以下に保持する温度保持部をさらに含む構成の評価装置を使用することが望ましい。
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置は、前述した電圧供給部及び電流測定部に加えて、このような温度保持部をさらに含む構成である。これにより、温度保持部を利用して室温以下の温度で絶縁破壊試験を行って、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0056】
さらに、本発明の評価装置において、電圧供給部が、基板上に形成された複数個の試験素子に対して、同時に電気的なストレスを与えることが可能な構成であり、電流測定部が、複数個の試験素子に対して測定が可能な構成としてもよい。
このような構成とすることにより、複数個の試験素子のリーク電流を測定することができるので、より短い時間で複数個の試験素子に対して絶縁破壊試験を行うことが可能になる。また、前述したように、より低い電圧で試験することが可能になる。
【0057】
本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムは、以下の手順をコンピュータに実行させるものである。
(1)MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する手順。
(2)その後、決定した前記ワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する手順。
(3)決定した検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う手順。
即ち、本発明のプログラムは、前述した本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法を、コンピュータに実行させるものである。
本発明の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムによれば、本発明の絶縁破壊寿命の評価方法をコンピュータに実行させることができる。そして、短い時間で精度良く、絶縁破壊寿命を評価することができる。
【0058】
ここで、本発明によるゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法のフローチャートを、図7に示す。
まず、ステップS1において、ゲート絶縁膜のSBD(ソフトブレークダウン)に至る寿命分布のワイブル傾きを決定する。
次に、ステップS2において、決定したSBD(ソフトブレークダウン)に至る寿命分布のワイブル傾きから、SBD(ソフトブレークダウン)の検知条件を決定する。
次に、ステップS3において、決定したSBD(ソフトブレークダウン)の検知条件を使用して、所定の温度で絶縁破壊試験を行う。
このようにして、ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価を行うことができる。
また、本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムは、図7に示すフローチャートの処理をコンピュータに実行させる。
【0059】
本発明において、MOS型素子としては、pMOS及びnMOSのいずれにも適用することが可能である。
【0060】
<2.実施の形態(実施例)>
次に、本発明の具体的な実施の形態(実施例)を説明する。
【0061】
本実施の形態(実施例)では、pMOSトランジスタにおいて、ゲート電極をポリシリコンにより形成し、ゲート絶縁膜を膜厚1.2nmのSiON膜により形成する。
【0062】
本実施の形態のpMOSトランジスタのゲート絶縁膜のTDDB寿命を求める手順の例を、以下に説明する。
【0063】
まず、SBD寿命のワイブル傾きを決定するために、種々のゲート面積の試験素子に対してTDDB試験を実施して、HBD寿命のワイブル傾きを求めた。その結果として、ゲート面積とワイブル傾きとの関係を、図8に示す。
なお、試験条件の詳細は、SBDのワイブル傾きをできるだけ正確に見積もれるように決定しており、試験温度を25℃とし、ワイブル傾きを求めるために用いるデータをワイビットが−2以上の領域とした。
こうした条件下で、十分に小さい面積におけるHBDのワイブル傾きは、SBDのそれと一致すると考えた。
【0064】
HBDのワイブル傾きの実測結果を、図8に●印で表している。同時に、95.4%信頼区間をエラーバーで示す。なお、95.4%信頼区間は、モンテカルロシミュレーションから決定しており、主にはTDDB試験で破壊した素子の数に依る。また、図8中の○印は、モンテカルロシミュレーションで求めたHBDのワイブル傾きであるが、これは図8のデータ点から求めたSBD寿命分布のワイブル傾きの真値をもとにして、絶縁破壊現象をモデリングした結果であり、事後検証である。
【0065】
ゲート面積が0.008m2及び0.01m2の2点の結果から、SBDの真のワイブル傾きは1.1と決定することができた。このうち、0.01m2についてのHBD寿命分布は、図6に示したものであり、tPBD≪tSBDの場合のHBD分布として妥当であることは、既に説明した通りである。
【0066】
次に、SBDを検知する判定条件の決定を行う。
ゲート長40nm、ゲート幅0.5mの試験素子を521個もの多数用いて、105℃においてストレスゲート電圧が−3.2VのTDDB試験を実施して、種々のSBD判定条件に対するSBD寿命のワイブル傾きを求めた。その結果を、図9に示す。なお、この図9に示すデータは、既に示した図1と同じデータではあるが、説明のために異なる図として再掲している。
ここで、SBD寿命分布のワイブル傾きの真値は、既に1.1と求まっているので、図9より、SBDを検知するゲート電流変化の閾値は6nA、と求めることができる。
なお、この6nAというゲート電流変化の閾値が意味するところは、SBDに伴うゲート電流の増加量が6nAだと見なせるということであるので、他のゲート面積の試験素子に対しても適用可能である。
【0067】
こうして決定したSBD判定基準を用いて、前記非特許文献5や前記非特許文献6に開示されている既知の方法でSBDやPBDといった現象をモデリングする。これにより、ゲート酸化膜の絶縁破壊による、集積回路の故障に至る寿命、即ちHBD寿命を見積もることが可能になる。
【0068】
上述の本実施の形態(実施例)によれば、所定の温度(105℃)でのTDDB試験に先立って、25℃でのTDDB試験を行って、SBD寿命分布のワイブル傾きを求めて、このワイブル傾きから、SBDを検知するゲート電流変化の閾値を求めている。これにより、SBDを検知するゲート電流変化の閾値、即ちSBDの検知条件を、ぶれることなく、一意にかつ論理的に決定することができる。
そして、この決定したSBDの検知条件を使用してTDDB試験を行っている。これにより、SBDを見逃すことなく検知することができる。
【0069】
また、試験温度を室温程度の25℃とし、ゲート面積が0.008m2及び0.01m2と、面積が小さい試験素子を使用して、SBD寿命のワイブル傾きを求めたことにより、寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することができる。
【0070】
上述した実施例では、約1.2nmの極薄SiONゲート絶縁膜とポリSiゲート電極を有するpMOSトランジスタに本発明を適用していた。
本発明は、pMOSトランジスタに限らず、nMOSトランジスタにも同様に適用することができる。
【0071】
なお、nMOSトランジスタの場合には、pMOSトランジスタに比べて、PBD時間が短い傾向が見られた。
即ち、本発明の発明者の検討した範囲では、pMOSでtPBD≪tSBDが満たされる、SBD寿命のワイブル傾きを決定できるような、試験素子及び温度条件であれば、同時にnMOSでもtPBD≪tSBDが満たされるという結果が得られた。これにより、nMOSトランジスタにおいても、SBD寿命のワイブル傾きを決定することが可能である。
【0072】
また、上述した実施例では、ゲート絶縁膜にSiON膜を使用していたが、SiO2膜やSiN膜等、その他のゲート絶縁膜を使用したMOS型素子にも、同様に本発明を適用することが可能である。
【0073】
さらにまた、最先端MOS製品への量産適用がすでに始まっている高誘電率ゲート絶縁膜(high−kゲート絶縁膜)や、金属ゲート電極の場合に、本発明の技術が有効かどうかについては、一般論として結論を示すことはできない。これらの新技術を用いた場合のゲート絶縁破壊の機構がすべて明らかになっているわけではなく、また破壊機構が製造方法によって変わる可能性もあるためである。
【0074】
金属ゲート電極を用いた場合には、いわゆるPBD的な挙動は示さずに、一瞬にして見間違えようの無い絶縁破壊が生じる。このことは、文献に報告されている(例えば、Kauerauf et al.,IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS,VOL.26,No.10,OCTOBER 2005,p.773を参照)。
この場合には、本発明の技術は不要であるとも考えられる。
【0075】
しかしながら、本発明の発明者が検討したところ、金属ゲート電極を用いたとしても、酸化膜換算膜厚で0.9nmという極めて薄いhigh−kのゲート絶縁膜と組み合わせた場合には、そのような鮮明な絶縁破壊は生じないことがわかった。
この場合の絶縁破壊試験で得られるデータを、図10に示す。
図10に示すように、一意にはSBD判定を行えないような、極薄SiONゲート絶縁膜とポリシリコンゲート電極とを用いた場合と、類似したデータが得られている。この場合には、本発明の技術が有用であると考えられる。
【0076】
続いて、本発明の評価装置の具体的な実施の形態を説明する。
本発明の評価装置の一実施の形態の概略構成図(ブロック図)を、図13に示す。
図13に示す評価装置は、試験ウェハ10の温度を保持する温度保持部(ウエハステージ)11と、リーク電流を測定する電流測定部13と、電流測定部13を制御する制御・測定装置14とを備えている。電流測定部13は、その先端に測定用のプローブ12が設けられ、その内部に電流計15と可変電源16とを備えている。
試験ウェハ10には、図示しないが、MOS型素子が形成されている。
また、この評価装置は、試験ウェハ10のMOS型素子に対して電気的なストレスを与えるために、MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部を備えて構成される。この電圧供給部は、電流測定部13に設けられたプローブ12及び可変電源16と、試験ウェハ10のMOS型素子に電気的に接続された電極等により構成される。
制御・測定装置14は、測定のための命令を電流測定部13に与える。そして、電流測定部13によって測定されたデータが、電流測定部13から制御・演算装置14に送られて演算される。この制御・演算装置14を、本発明のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラムが実行されるように、構成しても良い。
温度保持部(ウエハステージ)11は、MOS型素子を含む試験ウェハ10を、室温以下の温度に保持できるように、冷却機構等を備えて構成される。この冷却機構の具体的な構成は、特に限定されるものではなく、従来から知られている構成を使用することができる。
図13に示す評価装置の構成によれば、電流測定部13と電圧供給部(プローブ12、可変電源16、試験ウェハ10側の電極等)とによって、試験ウェハ10のMOS型素子に電気的ストレスを与えて、リーク電流を測定することができる。このようにして、絶縁破壊試験を行うことができる。また、冷却機構を備えた温度保持部11により、室温以下の温度で絶縁破壊試験を行うことができる。これにより、室温以下の温度で絶縁破壊試験を行って、ソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを、より精度良く決定することが可能になる。
【0077】
なお、図13に示した評価装置において、さらに電圧供給部が試験ウェハ10の基板上に形成された複数個の試験素子(MOS型素子を含む)に対して、同時に電気的なストレスを与えることが可能な構成としてもよい。そして、このとき、電流測定部13を複数個の試験素子に対して測定が可能な構成とする。例えば、プローブ12や電流計15等を複数個設ける。このような構成とすることにより、複数個の試験素子のリーク電流を測定することができるので、より短い時間で複数個の試験素子に対して絶縁破壊試験を行うことが可能になる。また、より低い電圧で試験することが可能になる。
【0078】
本発明は、上述の実施の形態(実施例)に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【符号の説明】
【0079】
10 試験ウェハ、11 温度保持部(ウェハステージ)、12 プローブ、13 電流測定部、14 制御・演算装置、15 電流計、16 可変電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価する評価方法であって、
前記MOS型素子の前記ゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する工程と、
その後、決定した前記ワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する工程と、
決定した前記検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う工程とを含む
ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法。
【請求項2】
前記ワイブル傾きを決定する工程において、ゲート長とゲート幅とが対象となる集積回路内で使用される最小寸法に実質的に等しい、前記MOS型素子を使用する、請求項1に記載のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法。
【請求項3】
前記絶縁破壊試験を行う工程の試験温度を第1の温度とし、前記ワイブル傾きを決定する工程において、前記第1の温度よりも低い第2の温度で絶縁破壊試験を行って、前記ワイブル傾きを決定する、請求項1に記載のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法。
【請求項4】
前記第2の温度を室温程度又は室温未満の温度とする、請求項3に記載のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法。
【請求項5】
MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価するための評価装置であって、
前記MOS型素子に対して電気的なストレスを与えるために、前記MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部と、
前記ゲート絶縁膜を介して流れるリーク電流を測定する電流測定部と、
前記MOS型素子を含む試験素子を室温以下の温度に保持する温度保持部とを含む
ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置。
【請求項6】
前記電圧供給部は、基板上に形成された複数個の前記試験素子に対して、同時に前記電気的なストレスを与えることが可能な構成であり、前記電流測定部は、複数個の前記試験素子に対して測定が可能な構成である、請求項5に記載のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置。
【請求項7】
MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する手順と、
その後、決定した前記ワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する手順と、
決定した前記検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う手順とを、コンピュータに実行させる
ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラム。
【請求項1】
MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価する評価方法であって、
前記MOS型素子の前記ゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する工程と、
その後、決定した前記ワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する工程と、
決定した前記検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う工程とを含む
ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法。
【請求項2】
前記ワイブル傾きを決定する工程において、ゲート長とゲート幅とが対象となる集積回路内で使用される最小寸法に実質的に等しい、前記MOS型素子を使用する、請求項1に記載のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法。
【請求項3】
前記絶縁破壊試験を行う工程の試験温度を第1の温度とし、前記ワイブル傾きを決定する工程において、前記第1の温度よりも低い第2の温度で絶縁破壊試験を行って、前記ワイブル傾きを決定する、請求項1に記載のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法。
【請求項4】
前記第2の温度を室温程度又は室温未満の温度とする、請求項3に記載のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価方法。
【請求項5】
MOS型素子のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命を評価するための評価装置であって、
前記MOS型素子に対して電気的なストレスを与えるために、前記MOS型素子に電圧を供給する電圧供給部と、
前記ゲート絶縁膜を介して流れるリーク電流を測定する電流測定部と、
前記MOS型素子を含む試験素子を室温以下の温度に保持する温度保持部とを含む
ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置。
【請求項6】
前記電圧供給部は、基板上に形成された複数個の前記試験素子に対して、同時に前記電気的なストレスを与えることが可能な構成であり、前記電流測定部は、複数個の前記試験素子に対して測定が可能な構成である、請求項5に記載のゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価装置。
【請求項7】
MOS型素子のゲート絶縁膜のソフトブレークダウンに至る寿命分布のワイブル傾きを決定する手順と、
その後、決定した前記ワイブル傾きから、ソフトブレークダウンの検知条件を決定する手順と、
決定した前記検知条件を使用して、絶縁破壊試験を行う手順とを、コンピュータに実行させる
ゲート絶縁膜の絶縁破壊寿命の評価用のプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−40541(P2011−40541A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185966(P2009−185966)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]