説明

コーティング施工された前部スタブシャフトダブテールスロット

【課題】圧縮機動翼と圧縮機ホイールダブテールの間に、動翼の腐食疲労に対する抵抗力を危うくすることなく耐摩耗性を与えること。
【解決手段】圧縮機前部スタブシャフト(10)は、ダブテールスロット(24)の、軸方向離間された複数の環状列(12、14、16、18、20、22)を備えている。この圧縮機前部スタブシャフト(10)は、前記複数の列の少なくとも第1および第2列(12、14)のダブテールスロット(24)がその一部を耐摩耗性コーティング施工されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね回転機械技術に関し、特に、圧縮機動翼のロータダブテールスロットへの取付に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圧縮機動翼のダブテール部分には、動翼と圧縮機ホイールダブテールスロットの間の圧縮応力および摩耗を減ずるために、耐摩耗コーティングが塗布される。そのようなコーティングは、主に動翼ダブテールに塗布されているが、それはそこがコーティングし易いという事実による。実際には、例えば、動翼自体が遮蔽されることにより、動翼ダブテールを直視してコーティングを溶射することが可能とされ、また養生を要する場合にも、動翼は容易にオーブンに掛けることができる。しかし、一般的な耐摩耗コーティングの中には、MoS2その他概ね同様のコーティングのように、動翼に使用される一般的なスチールC450合金と相容性のないものがある。現に、C450合金材に塗布されたコーティングは、その材料の腐食疲労に対する抵抗力を劣化させる可能性がある。
【特許文献1】米国特許第5,141,401号明細書
【特許文献2】米国特許第5,240,375号明細書
【特許文献3】米国特許第5,356,545号明細書
【特許文献4】米国特許第5,431,542号明細書
【特許文献5】米国特許第5,573,377号明細書
【特許文献6】米国特許第6,267,558号明細書
【特許文献7】米国特許第6,290,466号明細書
【特許文献8】米国特許第6,749,951号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、圧縮機動翼と圧縮機ホイールダブテールの間に、動翼の腐食疲労に対する抵抗力を危うくすることなく耐摩耗性を与える必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の例示的実施形態においては、耐摩耗性コーティングを圧縮機ホイールダブテールスロットに直接塗布することによって、コーティングと特定のガスタービンに使用される動翼材料の間に生じ得る潜在的腐食条件が、皆無とはいわないまでも極小化される。より具体的には、1つの例示的実施形態においては、前述の問題が認識されている圧縮機前部スタブシャフトの第1および第2ステージ部のダブテールスロットに、Alumazite ZD(商標)コーティングを直接塗布する。これは、コーティング自体が摩耗と圧縮応力(crush stress)を減少するために使用される従来のコーティングであり、構成要素部品を改めて設計し直す必要がないため、特段に有利な解決策とされる。
【0005】
したがって、1つの態様においては、本発明は、ダブテール溝の、軸方向離間された複数の環状列を備え、この複数の列の少なくとも第1および第2列は、一部を耐摩耗性コーティング施工されたダブテールスロットを有する圧縮機前部スタブシャフトに関する。
【0006】
別の態様においては、本発明は、動翼の環状列を少なくとも1つ支持する軸周辺に形成されたダブテールスロットを複数有し、各ダブテールスロットはエーロフォイル部分と前記ダブテールスロットに受けられる取付部分とを有する動翼を支持するタービン圧縮機シャフトであって、各ダブテールスロットの一部に耐摩耗性コーティングが塗布されたタービン圧縮機シャフトに関する。
【0007】
更に別の態様においては、本発明は、動翼の環状列を少なくとも1つ支持する軸周辺に形成されたダブテールスロットを複数有し、各ダブテールスロットはエーロフォイル部分と該ダブテールスロットに受けられるダブテール取付部分とを有する動翼を支持するタービン圧縮機シャフトであって、各ダブテールスロットは実質的に平坦な推移面により結合された一対の内向き凸状部と一対の外向き溝とを含み、且つ更に、熱可塑性アルミニウム粉コーティング(アルミニウム ピグメンテッド コーティング)が前記推移面に塗布されたタービン圧縮機シャフトに関する。
【0008】
以下に、本発明を図面に関して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、ダブテールスロットの6つの環状列12、14、16、18、20および22を一体に連ねて構成される従来の圧縮機前部スタブシャフト10を示し、各スロット24は、これと咬合するダブテール部を有する圧縮機動翼を支持するように形状構成される。動翼の各列は、圧縮機スタブシャフトのステージ部を成し、本発明に関しては、最初の2つの列、即ちステージ部12および14をとりわけ対象とする。
【0010】
一般的な第1ステージ部圧縮機動翼26を図2に示す。動翼には、エーロフォイル28、台30および対応するダブテールスロット24(図1)に受けられる形状としたダブテール32を含む。旧来は、耐摩耗性コーティング(概ね仮想線で表示)がダブテール32の対向する両側の面34(一方を図示)に塗布されていた。しかし、既に注記した通り、Alumazite ZD(商標)等、一定のコーティングは動翼26に使用されるC450スチール合金材と相容性がない。その結果、動翼の腐食疲労に対する耐抵抗力が劣化する可能性がある。
【0011】
次いで図3および4に、前部スタブシャフト10の第1ステージ部12の一部をより詳細に示す。各ダブテールスロット24は、一対の内向き凸状部36と、一対の外向き溝38とが平坦な底面40によって結合されて形成されている。図3の第1ダブテールスロット24は、耐摩耗性コーティングの位置を分かり易くするために、スロットの半径方向中心線断面を示すことに注意されたい。この実施形態において、耐摩耗性コーティング41は、ダブテール凸状部36の凸状半径部とダブテール溝38の凹状半径部の間の推移部となる実質的平坦面42の軸方向全長に亘り塗布される。そのような横方向の、対向する推移面42が各ダブテールスロット24に2つ存在すること(図4参照)と、スロット列のほぼ全360度範囲の各スロット24が同様にコーティング施工されることとが理解されよう。
【0012】
この例示的実施形態においては、NiCrMoV合金により構成されたスタブシャフトのために、熱可塑性アルミニウム粉コーティングが0.02032mmから0.04572mmの間の厚みで塗布される。そのようなコーティングの1つとして、Alumazite ZD(商標)がTiodize Co.,Inc.により市販されている。このコーティング(もしくは同種の適切なコーティング)は、電気化学的および環境による酸化を防止し、且つNiCrMoVダブテール材に対して相容性がある。コーティングは、ダブテール凸状部の下側にアクセスするには工具類を適応させなければならないことを認識の上で、従来の溶射技術により塗布することが可能とされよう。
【0013】
今日までの試験結果により、ダブテールスロット24のコーティングが、従来経験されていた前述のような動翼ダブテール32の腐食疲労に対する抵抗力劣化の防止を可能とし得る技術であることが確認される。例えば、Alumazite ZD(商標)コーティング施工のNiCrMoV材をソルトフォッグ中に405時間暴露したが、コーティングの下に腐食はなく、コーティングをナイフで削って材料を露出させた基部に僅かな腐食を見たのみであった。コーティング施工のNiCrMoVとGT−450の間で摩耗試験も行ったが、5000サイクル後に孔食の形跡がなく、且つ摩擦は軽度であった。
【0014】
以上に、本発明を現在最も実用的且つ好適と思料される実施形態に関して説明したが、いうまでもなく、本発明は開示した実施形態に何ら限定されるものではなく、むしろ、付属の特許請求の範囲の理念と範囲内に包含される各種の変形および均等の構成にも及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の圧縮機前部スタブシャフトの斜視図である。
【図2】従来の圧縮機動翼の斜視図である。
【図3】図1から取った圧縮機第1ステージ部の部分拡大詳細図であり、本発明の例示的実施形態によりダブテールスロットに塗布されたコーティングを示す図である。
【図4】コーティングが塗布された面域を示す、ダブテールスロットの簡略化した部分末端図である。
【符号の説明】
【0016】
10 前部スタブシャフト
12、14、16、18、20、22 ダブテールスロット
24 スロット
26 圧縮機第1ステージ部動翼
28 エーロフォイル
30 台
32 ダブテール、ダブテール取付部分
34 面
36 凸状部
38 溝
40 平坦な底面
41 耐摩耗性コーティング
42 平坦面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブテールスロット(24)の、軸方向離間された複数の環状列(12、14、16、18、20、22)を備え、前記複数の列の少なくとも第1および第2列は、一部を耐摩耗性コーティング施工されたダブテールスロットを有する圧縮機前部スタブシャフト(10)。
【請求項2】
前記スタブシャフト(10)はNiCrMoVにより構成される請求項1記載の圧縮機前部スタブシャフト。
【請求項3】
前記耐摩耗性コーティングは熱可塑性アルミニウム粉コーティングを含む請求項1又は2記載の圧縮機前部スタブシャフト。
【請求項4】
各ダブテールスロット(24)は、平坦な底面(40)により結合された、一対の内向き凸状部(36)と一対の外向き溝(38)とを含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧縮機前部スタブシャフト。
【請求項5】
各ダブテールスロット(24)は、前記凸状部(36)の対と前記溝(38)の対の間の実質的に平坦な推移面(42)をも含む請求項4記載の圧縮機前部スタブシャフト。
【請求項6】
前記対摩耗性コーティングは前記実質的に平坦な推移面(42)にのみ塗布される請求項5記載の圧縮機前部スタブシャフト。
【請求項7】
動翼(26)の環状列を少なくとも1つ支持する軸周辺に形成されたダブテールスロット(24)を複数有し、エーロフォイル部分(28)と前記ダブテールスロットに受けられる取付部分(32)とを備える動翼(26)を各ダブテールスロット(24)が支持するタービン圧縮機シャフトであって、
各ダブテールスロットは実質的に平坦な推移面(42)により結合された一対の内向き凸状部(36)と一対の外向き溝(38)とを含み、且つ熱可塑性アルミニウム粉コーティングが前記推移面に塗布されたタービン圧縮機シャフト。
【請求項8】
前記タービン圧縮機シャフトはNiCrMoV合金により構成され、且つ前記動翼はC450スチール合金により構成される請求項7記載のタービン圧縮機シャフト。
【請求項9】
前記熱可塑性アルミニウム粉コーティングは、前記実質的に平坦な推移面(42)にのみ塗布される請求項7又は8に記載のタービン圧縮機シャフト。
【請求項10】
前記タービン圧縮機シャフトは、動翼の環状列を少なくとも3つ有する圧縮機前部スタブシャフト(10)を含み、動翼の前記少なくとも3つの環状列の少なくとも第1および第2列が前記ダブテールスロット(24)に取り付けられ、前記耐摩耗性コーティングが前記推移面(42)に塗布される請求項7乃至9のいずれか1項に記載のタービン圧縮機シャフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−329195(P2006−329195A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142645(P2006−142645)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】