説明

ゴムローラの表面処理方法

【課題】 本発明は、ゴムローラに対して表面処理剤の塗布、エアー吹きつけ、紫外線の照射を連続的に短時間で行う事により、ホコリ、異物等の画像欠陥の発生せず、量産性に優れ低コストで、動摩擦係数が低減された高品質なゴムローラの表面処理方法を提供する。
【解決手段】 ゴムローラに対して表面処理剤をリングヘッドから吐出してゴムローラ表面に塗布するゴムローラの表面処理方法であって、表面処理剤を塗布するリングヘッドに対して、エアーを吹きつける吹出リングヘッドと、紫外線を照射する円環状又は螺旋状の紫外線ランプとを同心上に配置して、その中心にゴムローラを配置して連続的に表面処理剤の塗布、エアーの吹きつけ、紫外線の照射を行うゴムローラの表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にLBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等のOA機器における、電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いるゴムローラ(帯電ローラ、現像ローラ等)の表面処理方法(製造方法)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置は高速化、高耐久化に伴い、画像形成装置に使用されるゴムローラも、高精度、高耐久化が要求されてきている。
【0003】
画像形成装置に使用される帯電ローラは帯電部材のうち最も一般的なものであり、感光体ドラムに接触して帯電処理を行うものである。帯電ローラに関しては、性能上ゴムローラに塗料や表面処理剤を塗布したものが多く、塗布工程でのゴムローラ表面へのホコリ、異物等の付着は画像不良にもつながっている。塗布工程をクリーンルームで行い、ゴムローラ表面へのホコリ、異物等の付着を防止する場合もあるが、クリーンルームの付帯設備を含めると非常にコスト高な生産ラインになる可能性がある。
【0004】
更に、画像形成装置に帯電ローラを用いてハーフトーン画像による画像耐久試験を行った場合、画像耐久をしていくと共にトナー及びトナーに付着している外添剤等により帯電ローラ表面が汚れるという問題がある。その結果、帯電ローラ表面のひどく汚れた部分を起点に白スジといった画像不良が生じる。これは帯電ローラ表面が汚れる事により感光体ドラムに均一な帯電処理ができなくなるからである。ローラ表面が汚れる原因の一つとして、感光体ドラムとローラ表面との動摩擦係数(摩擦抵抗)が大きい事が考えられる。動摩擦係数が大きい場合トナー及び外添剤に外力がかかりローラ表面に付着しやすくなるため、ローラ表面の動摩擦係数を下げる事は非常に重要である。
【0005】
ここで、特に画像形成装置に使用するゴムローラの表面処理方法に関して、本発明のようなリングヘッド塗布・吹出リングヘッド乾燥・円環状又は螺旋状の紫外線ランプ照射を連続的に行うような製造方法の特許出願はされていない。
【0006】
ただし、円筒基体ドラム(感光体ドラム)の塗布方法として、スライドホッパー塗布とリング状の吸引スリット乾燥を連続的に行い、更にスライドホッパー塗布とリング状の吸引スリット乾燥を2段以上重ねて、重層塗布を行える方法が検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。これはゴムローラの表面処理方法に関するものではなく、いずれも弾性層(ゴムローラ)への塗布に関しては記載されていない。また、塗布ヘッド構造や乾燥ヘッド構造・方法も異なり、更に円環状又は螺旋状の紫外線ランプを用いた照射との組合せに関する記載もない。
【特許文献1】特開平5−099559号公報
【特許文献2】特開平6−057495号公報
【特許文献3】特開平10−243398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記で述べたような問題を解決するためになされたものである。
【0008】
すなわち、本発明の目的は塗布工程でのゴムローラ表面へのホコリ、異物等の付着による画像不良を防ぎ帯電性能が良く、更にローラの動摩擦係数が低減されたことにより画像耐久不良もないゴムローラを安定して製造するローラの表面処理方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、ゴムローラ表面に対してリングヘッドから表面処理剤を塗布した後に、スリット状の吹出口(吹出リングヘッド)からのエアー吹きつけを連続的に行うことにより、ゴムローラ表面へのホコリ、異物等の付着を防ぐことが可能である。更に、リングヘッドによる塗布、吹出リングヘッドによる乾燥の後、連続的にゴムローラ表面に対して円環状又は螺旋状の紫外線ランプを配置して紫外線を照射することにより、ゴムローラ表面の材料硬化またはローラの動摩擦係数の低減、またその両方を同時に行うことが可能である。これにより量産性が向上すること、更にはゴムローラの表面処理工程の縮小が可能である事を見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴムローラの表面処理方法は、ゴムローラ表面に対してリングヘッドから表面処理剤を塗布した後に、吹出リングヘッドからのエアー吹きつけを連続的に行うこと、更にリングヘッドによる塗布、吹出リングヘッドによる乾燥の後、連続的にゴムローラ表面に対して円環状又は螺旋状の紫外線ランプを配置して紫外線を照射することにより、ゴムローラ表面へのホコリ、異物等の付着を防ぐ。更に、ゴムローラ表面の材料硬化またはローラの動摩擦係数の低減またその両方を同時に行うことが可能になる。その結果、ホコリ、異物等の付着による画像不良もなく、ローラの動摩擦係数が大きい事によるローラ汚れ、画像耐久不良もない優れたゴムローラを安定して得られる。また、ゴムローラの表面処理工程の縮小も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をゴムローラの例で更に詳細に説明する。
【0012】
まず、芯金上にゴム層が設けられたゴムローラの成形方法としては、円筒金型に同心に軸状の芯金を保持する2つの円筒駒を組み、ゴム材料を注入後加熱することにより材料を硬化させてゴムローラを成形する射出成形、ゴム材料をチューブ状に押出した後、芯金にチューブ状のゴム材料を被せる、或いは芯金とゴム材料を一体に押出して円筒状のゴムローラを成形する押出成形、トランスファー成形、プレス成形等があるが、特に限定されるものではない。製造時間の短縮を考えるとゴム材料を芯金と一体に押出してゴムローラを成形する押出成形が好ましい。
【0013】
ゴムローラの加熱方法に関しては、熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱等のいずれの方法でも良く、更に加熱状態の円筒状または平面状の部材に回転させながら押し当てる方法を用いても良い。
【0014】
また、加熱後に所望のローラ形状、ローラ表面粗さにするために回転砥石を用いた乾式研磨をする場合もある。
【0015】
ここで、図1には押出機の模式図を示す。押出機1はクロスヘッド2を備える。クロスヘッドは芯金送りローラ3によって送られた芯金4を後ろから挿入でき、芯金と同時に円筒状のゴム材料を一体に押出す事ができる。ゴム材料を芯金の周囲に円筒状に成形した後に、端部を切断・除去処理5を行い、ゴムローラ6とした。
【0016】
前記のゴムローラの芯金として使用する材質は、ニッケルメッキしたSUM材等の鋼材を含むステンレススチール棒、リン青銅棒、アルミニウム棒、耐熱樹脂棒が好ましい。又、芯金上に設けられたゴム層は導電性の弾性層であり、ポリマーとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、ヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴム、熱可塑エラストマー等のいずれでも良く、ポリマー中に分散させる導電粉としてはカーボンブラック、導電性カーボン等のカーボン類、及び金属粉、導電性の繊維、或いは酸化スズ等の半導電性金属酸化物粉体、更にこれらの混合物等のいずれでも良い。
【0017】
次に、本発明のゴムローラの表面処理方法について詳細に説明する。
【0018】
まず、前記のような方法等で得られたゴムローラを垂直状態に支持し、このゴムローラに対して所定の間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吐出口(リングヘッド)と、リングヘッドの外部にある液供給手段(シリンジポンプ)により、リングヘッドに具備される1箇所以上の供給口より供給される表面処理剤を、リングヘッド内において合流し周方向に分配するための液分配室を1箇所以上、液絞り部を1箇所以上、有するリングヘッドにより、ゴムローラとリングヘッドとを所定の速度(1〜100mm/s程度)で相対移動させ、表面処理剤を全周均一に適量のみゴムローラ表面に塗布する。ここで、図2にリングヘッド塗布方法とゴムローラ6、リングヘッド7を示した。8は全周に開口されたスリット状の吐出口、9は液絞り部、10は液供給口、11は液分配室である。
【0019】
ゴムローラ表面への吐出量については、表面処理剤の液粘度、表面処理速度(ゴムローラとリングヘッドとの相対移動速度)を考慮して算出する。リングヘッドの全周に開口されたスリット状の吐出口の開口幅(スリット幅)は0.05mm以上で、好ましくは0.1mm(スリット幅は表面処理剤の液粘度、表面処理剤中の添加材料によって選択・決定される)で使用した。表面処理剤としては、特にシリコーン系、フッ素系、ウレタン系、アクリル系、ウレタン変性アクリル系、シリコーン変性ウレタン系が用いられる。ここで、表面処理剤とはゴムローラ表面に膜を形成するもの、あるいはゴムローラ表面から含浸されるもののどちらとも含む。リングヘッドの材質としては、加工精度が高いステンレス等の鋼材を用いることが好ましい。また、アルミニウムやフッ素樹脂等を用いても良い。
【0020】
前記のようなリングヘッド塗布方法により、ゴムローラ表面に対して表面処理剤を塗布した後に連続的に、ゴムローラに対して所定の間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吹出口(吹出リングヘッド)からエアーを吹きつけること、もしくはゴムローラに対して所定の間隔をなす距離に円環状又は螺旋状の紫外線ランプを配置して紫外線を照射すること、またその両方を連続的に行う。
【0021】
まず、吹出リングヘッドからのエアー吹きつけについて説明する。ゴムローラを垂直状態に支持し、このゴムローラに対して所定の間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吹出口(吹出リングヘッド)と、リングヘッドの外部にあるエアー供給手段により、吹出リングヘッドに具備される1箇所以上のエアー供給口より供給されるエアーを、リングヘッド内において合流し周方向に分配するためのエアー分配室を1箇所以上、エアー絞り部を1箇所以上、有する吹出しリングヘッドにより、ゴムローラとリングヘッドとを所定の速度(1〜100mm/s程度)で相対移動させ、エアーを全周均一にゴムローラ表面に吹きつける。ここで、図3にエアー吹出リングヘッド方法とゴムローラ6、吹出リングヘッド12を示した。13は全周に開口されたスリット状の吹出口、14はエアー絞り部、15はエアー供給口、16はエアー分配室である。
【0022】
ゴムローラ表面へのエアー吹出量(流量)については、吹出リングヘッドの全周に開口されたスリット状の吹出口の開口幅(スリット幅)及び吹出口径の寸法を任意に調整して所望のエアー吹出量(流量)に決定する。エアーの圧力については、0.01〜1MPa内でゴムローラの表面(塗布層)のはじきや塗布層ムラの発生しないところで調整する。吹出リングヘッドから吹出されるエアーとしては、ドライエアーや熱エアー、エアーの温度・湿度を任意に設定して用いても良い。更に、エアーのかわりに窒素をパージしても良い。ここで塗布される表面処理剤によるが、吹出リングヘッドから吹出される熱風の温度、流量、圧力を制御することにより、水分を含有する表面処理剤の水分率の制御やゴムローラの表面から内部へのフッ素基又はシリコーン基の勾配濃度を制御することが可能になる。吹出リングヘッドの材質としては、加工精度が高いステンレス等の鋼材を用いることが好ましい。また、アルミニウムやフッ素樹脂等を用いても良い。
【0023】
次に、円環状又は螺旋状の紫外線ランプによる紫外線の照射について説明する。ゴムローラを垂直状態に支持し、このゴムローラに対して所定の間隔をなす距離に円環状又は螺旋状の紫外線ランプを配置して、ゴムローラと円環状又は螺旋状の紫外線ランプとを所定の速度(1〜100mm/s程度)で相対移動させ、紫外線を全周均一にゴムローラ表面に照射する。速度に関しては紫外線積算光量を考慮して決定する。また、円環状又は螺旋状の紫外線ランプの外側に紫外線の反射板を配置して効率を上げることが好ましい。また、ゴムローラと円環状又は螺旋状の紫外線ランプを相対移動させて紫外線の照射をしているとき、ゴムローラ自体を回転させても良い。ここで、図4に円環状の紫外線ランプによる紫外線の照射方法とゴムローラ6、円環状の紫外線ランプ17を示した。18は紫外線の反射板である。
【0024】
ゴムローラ表面に対して配置される円環状又は螺旋状の紫外線ランプ数と紫外線ランプ外径は任意に設定でき、ゴムローラの外径、紫外線積算光量、更にはランプからの輻射による熱の影響を考慮して決定される。
【0025】
紫外線ランプは、高出力低圧水銀ランプ、無電極低圧水銀ランプ、エキシマランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプのいずれでも良いが、表面処理の効果に応じて適宜選択すれば良い。本発明では高出力低圧水銀ランプを用いており、主に254nmの波長を代表とする紫外線である。ここで、本発明で用いた紫外線ランプ(低圧水銀ランプ)の分光分布を図5に示す。尚、紫外線の積算光量は、下記で定義される。
【0026】
紫外線積算光量(mJ/cm)=紫外線強度(mW/cm)×照射時間(sec)
紫外線の積算光量については、表面処理の効果に応じて適宜選択すれば良い。その調節は、照射時間、ランプ出力、ランプとローラとの距離のいずれでも行う事が可能であり、所望の積算光量が得られるように決めればよい。今回、254nmの波長を代表とする紫外線に関しては、紫外線の積算光量をウシオ電機株式会社製のUIT−150−A、UVD−S254の紫外線強度計、積算光量計を用いて測定した。
【0027】
また、円環状又は螺旋状の紫外線ランプの外側に配置する反射板の材質としては、アルミニウム、ステンレス、鉄を用い反射面は鏡面加工、又は反射率を向上させるコート処理、表面処理が施される事が望ましい。好ましくは、材質が99.9%以上の高純度アルミニウムで表面に反射率90%以上の光沢アルマイト処理を施す事が良い。ここで、ステンレスに鏡面加工を施した反射板の場合は紫外線の反射率が約80%で、高純度アルミニウムの表面に光沢アルマイト処理を施した反射板の場合は紫外線の反射率が90%以上である。反射板とゴムローラの距離は任意に設定でき、紫外線積算光量や反射板からの輻射による熱の影響を考慮して決定される。
【0028】
ゴムローラ表面に表面処理剤をリングヘッド塗布する前に、ゴムローラ表面の濡れ性をあげるため、円環状又は螺旋状の紫外線ランプにより紫外線を照射することも可能である。また、ゴムローラ表面に表面処理剤を塗布したあとに紫外線照射を行った場合、塗布される表面処理剤によるが、ゴムローラ表面の材料硬化とゴムローラ表面の改質の両方を同時に行うことが可能である。
【0029】
本発明は、ゴムローラ表面へのリングヘッドによる表面処理剤の塗布、その後の吹出リングヘッドからのエアー吹きつけ、もしくは円環状の紫外線ランプによる紫外線の照射、またはその両方を連続的に行ったゴムローラの表面処理方法である。リングヘッド塗布、吹出リングヘッドからのエアー吹きつけ、円環状又は螺旋状の紫外線ランプによる紫外線の照射の順番はその目的により任意に決定して良い。
【0030】
本発明の実施の形態であるゴムローラの紫外線照射方法により得られたゴムローラは、LBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等の画像形成装置の電子写真用部材として用いられる。ここで、帯電ローラとして用いた場合の使用形態を図6に示した。画像形成装置は、回転ドラム型・転写方式の電子写真装置であって、19は像担持体としての電子写真感光体(感光ドラム)であり、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。感光ドラムは、その回転過程で帯電手段としての電源E1から帯電バイアスを印加した帯電ローラ20により周面が所定の極性・電位(本実施例では−600V)に一様帯電処理され、次いで露光系21により目的の画像情報に対応したネガ画像露光(原稿像のアナログ露光、デジタル走査露光)を受けて周面に目的画像情報の静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像がマイナストナーによる反転現像方式のトナー現像ローラ22によりトナー画像として現像される。そしてそのトナー画像が感光ドラムと転写手段としての転写ローラ23との間の転写部に不図示の給紙手段から所定のタイミングで転写材が給送され、転写ローラに対して電源E2から約+2〜3KVの転写バイアスが印加され感光ドラム面の反転現像されたトナー像が転写材に対して順次転写されていく。トナー画像の転写を受けた転写材は、感光ドラム面から分離されて不図示の定着手段へ導入されて像定着処理を受ける。トナー画像転写後の感光ドラム面は、クリーニング手段24で転写残りトナー等の付着汚染物の除去処理を受けて清浄面化されて繰り返して作像に供される。
【0031】
以上説明したように、本発明の実施の形態であるゴムローラの表面処理方法によれば、ゴムローラ表面に対してリングヘッドから表面処理剤を塗布した後に、吹出リングヘッドからのエアー吹きつけを連続的に行うこと、更にリングヘッドによる塗布、吹出リングヘッドによる乾燥の後、連続的にゴムローラ表面に対して円環状又は螺旋状の紫外線ランプを配置して紫外線を照射することにより、ゴムローラ表面へのホコリ、異物等の付着を防ぐ。更に、ゴムローラ表面の材料硬化またはローラの動摩擦係数の低減またその両方を同時に行うことが可能になる。その結果、ホコリ、異物等の付着による画像不良もなく、ローラの動摩擦係数が大きい事によるローラ汚れ、画像耐久不良もない優れたゴムローラを安定して得られる。また、ゴムローラの表面処理工程の縮小も可能である。
【0032】
本発明における動摩擦係数の測定は、一端がロードセル或いはテンションゲージに接続されるとともに他端に一定荷重Wが与えられたシート状体(例えば、ステンレス等の金属フィルムやPET等のプラスチックフィルム)を、軸固定したローラの表面に所定の巻付け角度θ(実施例では90°)で接触させておき、該ローラを矢印方向に一定速度で回転させることによりシート状体を該ローラ表面で摺動させるときの張力Tを検出するようにしたローラ摩擦係数測定機で評価した。このとき検出した張力Tを、次のオイラーの式に適用して動摩擦係数μを求めた。
【0033】
μ=(1/θ)・ln(T/W)
μ:動摩擦係数
θ:巻付け角(ラジアン)
W:荷重(g)
T:張力(g)
今回の動摩擦係数測定は、プラスチックフィルム(厚み25μm、幅30mm)を用い、総荷重Wは100g、ローラ回転数は115ppmの条件で測定を行った。
【0034】
また、測定は、23.5℃/60%の環境において行ったものである。
【0035】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例1】
【0036】
〈ゴムローラの作製〉
以下の原料をオープンロールで30分間混練した。
【0037】
・エピクロルヒドリンゴム 100質量部
(商品名「エピクロマー(エピクロマーは登録商標です)CG102」:ダイソー(株)製)
・MTカーボン 5質量部
(商品名「HTC#20」:新日化カーボン製)
・酸化亜鉛 5質量部
・ステアリン酸 1質量部
更に、加硫促進剤(DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)1質量部、加硫促進剤(TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド)0.5質量部及び加硫剤としてイオウ1.2質量部を加えて、15分間オープンロールで混練して未加硫ゴム組成物を作製した。次いで、外径φ6mm、長さ258mmのステンレス棒の芯金を用意した。ここで、図1に模式的に示す押出機を用いて芯金とゴム材料とを一体に押出してゴムローラを成形した。その後160℃、2時間の加熱加硫を行い、更に回転砥石を用いた乾式研磨、端部の切断・除去処理により、厚み1.25mm、長さ232mmのゴムローラを得た(ゴムローラ外径φ8.5mm)。
【0038】
〈表面処理方法〉
シリコーン変性ウレタン系の表面処理剤を密閉容器に入れ、密閉容器を液供給手段であるシリンジポンプにつなぎ、更にリングヘッドに具備された1箇所の液供給口につなぎ、リングヘッド内に適量の表面処理剤を供給した。表面処理剤は、リングヘッド内で合流し周方向に分配するための液分配室を有するリングヘッド内に充填された。前記より得られたゴムローラを垂直状態に支持し、このゴムローラの外径に対して0.5mmの間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吐出口がくるようにリングヘッドを配置した。この時、リングヘッドの全周に開口されたスリット状の吐出口の開口幅(スリット幅)は0.1mmで使用した。リングヘッドをゴムローラの上端部から下端部へ、10mm/sの一定の速度で垂直移動と同時に表面処理剤を適量(0.07mL)、0.003mL/sの吐出速度で全周均一に塗布を行った。
【0039】
前記、リングヘッドに対して同心上に円環状の低圧水銀ランプを3本配置して、前記リングヘッド塗布を行った後に連続的に円環状の低圧水銀ランプを垂直移動させて紫外線照射を行った。3本の円環状の低圧水銀ランプをゴムローラの上端部から下端部へ、1mm/sの一定の速度で垂直移動させた。低圧水銀ランプに関しては、主に254nmの波長を代表とする紫外線で、この時の紫外線積算光量は約3600mJ/cmであった。また、円環状の低圧水銀ランプの外側に、光沢アルマイト処理を施した高純度アルミニウム反射板(紫外線の反射率は90%以上)を使用した。
【0040】
前記のリングヘッド塗布と3本の円環状の低圧水銀ランプによる紫外線の照射の模式図を図7に示す。ここで、製作されたゴムローラの構成を図8に示す。
【0041】
本実施例では、ゴムローラ表面に表面処理剤を塗布して、そのあと連続的に紫外線の照射を行ったため、塗布後すぐに表面処理剤の乾燥・硬化ができゴムローラ表面のホコリ、異物等の付着はほとんどなかった。ゴムローラ表面を目視で観察した結果、ゴムローラ1本中に100μm以上のホコリ、異物等は観察されなかった。また、紫外線の照射によりゴムローラ表面が改質され、ゴムローラの動摩擦係数を測定した結果、0.23であった。
【0042】
更に、このゴムローラを図6に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光ドラムの両端に500gづつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による連続6000枚の耐久画像評価を行った。この評価において、本実施例のゴムローラ(帯電ローラ)はローラ表面上の汚れも確認されず汚れによる不良画像もなく、良好な画像を得ることができた。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0043】
〈ゴムローラの作製〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラを得た(ゴムローラ外径φ8.5mm)。
【0044】
〈表面処理方法〉
前記の実施例1と同様なリングヘッド塗布方法で、ゴムローラ表面にフッ化アルキル基含有のシリコーン表面処理剤の塗布を行った。
【0045】
前記、リングヘッドに対して同心上に吹出リングヘッドを配置して、前記リングヘッド塗布を行った後に連続的に吹出リングヘッドを垂直移動させてエアーの吹きつけを行った。エアー供給手段を吹出リングヘッドに具備された1箇所のエアー供給口につなぎ、吹出リングヘッド内にエアーを供給した。エアーは、リングヘッド内で合流し周方向に分配するためのエアー分配室を有するリングヘッド内に供給された。前記より得られたゴムローラを垂直状態に支持し、このゴムローラの外径に対して1mmの間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吹出口がくるように吹出リングヘッドを配置した。この時、リングヘッドの全周に開口されたスリット状の吹出口の開口幅(スリット幅)は0.5mmで使用した。リングヘッドをゴムローラの上端部から下端部へ、10mm/sの一定の速度で垂直移動と同時に圧力0.1MPaのエアーを全周均一に吹きつけを行った。また、今回吹出リングヘッド内に供給されたエアーは、予め120℃程度に加熱されたエアーを使用した。
【0046】
更に、前記リングヘッド、吹出リングヘッドに対して同心上に円環状の低圧水銀ランプを3本配置して、前記リングヘッド塗布、吹出リングヘッドによるエアー吹きつけを行った後に、前記の実施例1と同様に連続的に円環状の低圧水銀ランプを垂直移動させて紫外線照射を行った。
【0047】
前記のリングヘッド塗布、吹出リングヘッドによるエアー吹きつけと3本の円環状の低圧水銀ランプによる紫外線の照射の模式図を図9に示す。ここで、製作されたゴムローラの構成を図8に示す。
【0048】
本実施例では、ゴムローラ表面に表面処理剤を塗布して、そのあと連続的に熱エアーの吹きつけ、紫外線の照射を行ったため、塗布後すぐに表面処理剤の乾燥・硬化ができゴムローラ表面のホコリ、異物等の付着はなかった。ゴムローラ表面を目視で観察した結果、ゴムローラ1本中にホコリ、異物等は全く観察されなかった。また、紫外線の照射によりゴムローラ表面が改質され、ゴムローラの動摩擦係数を測定した結果、0.21であった。
【0049】
更に、このゴムローラを図6に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光ドラムの両端に500gづつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による連続6000枚の耐久画像評価を行った。この評価において、本実施例のゴムローラ(帯電ローラ)はローラ表面上の汚れも確認されず汚れによる不良画像もなく、良好な画像を得ることができた。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例]
〈ゴムローラの作製〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラを得た(ゴムローラ外径φ8.5mm)。
【0051】
〈表面処理方法〉
前記の実施例1と同様なリングヘッド塗布方法で、ゴムローラ表面にシリコーン変性ウレタン系の表面処理剤の塗布を行った後、ゴムローラを内容量200L程度の加熱処理用の乾燥オーブンにハンドリング搬送して、160℃30分の条件で表面処理剤の乾燥・硬化を行った。
【0052】
ゴムローラ表面を目視で観察した結果、ゴムローラ1本中の100μm以上のホコリ、異物等が約10個程度、観察されてしまった。
【0053】
更に、このゴムローラを図6に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光ドラムの両端に500gづつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による初期画像評価を行った。この評価において、A4用紙1枚中に黒ポチ不良画像が約20個程度、発生してしまった。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】押出機の模式図
【図2】リングヘッド塗布の模式図
【図3】エアー吹出リングヘッドの模式図
【図4】円環状の紫外線ランプ照射の模式図
【図5】低圧水銀ランプの分光分布
【図6】画像形成装置の概略を示す構成図
【図7】リングヘッド塗布と3本の円環状の紫外線ランプ照射の模式図
【図8】本発明の実施例により作製されたゴムローラの断面図
【図9】リングヘッド塗布、エアー吹出リングヘッドと3本の円環状の紫外線ランプ照射の模式図
【符号の説明】
【0056】
1 押出機
2 押出機のクロスヘッド
3 芯金送りローラ
4 芯金
5 切断・除去処理
6 ゴムローラ
7 リングヘッド
8 全周に開口されたスリット状の吐出口
9 液絞り部
10 液供給口
11 液分配室
12 吹出リングヘッド
13 全周に開口されたスリット状の吐出口
14 エアー絞り部
15 エアー供給口
16 エアー分配室
17 円環状の紫外線ランプ
18 紫外線の反射板
19 電子写真感光体(感光ドラム)
20 帯電ローラ(帯電手段)
21 露光系
22 現像ローラ(現像手段)
23 転写ローラ(転写手段)
24 クリーニング手段
E1、E2、E3 バイアス印加用電源
25 ゴム層
26 紫外線照射処理層
27 表面処理剤の塗膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金上に第1の弾性層が設けられたゴムローラに対して間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吐出口(リングヘッド)から表面処理剤を吐出して表面処理剤をゴムローラ表面に塗布するゴムローラの表面処理方法において、ゴムローラに対して間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吹出口(リングヘッド)からエアーを吹きつける工程と、ゴムローラに対して間隔をなす距離に円環状又は螺旋状の紫外線ランプを配置して紫外線を照射する工程の内、少なくとも1つ以上の工程を有する事を特徴とするゴムローラの表面処理方法。
【請求項2】
第1請求項記載のゴムローラの表面処理方法において、ゴムローラ表面に表面処理剤を塗布するリングヘッドに対して、エアーを吹きつけるリングヘッドと、紫外線を照射する円環状又は螺旋状の紫外線ランプとを同心上に配置して、その中心にゴムローラを配置して連続的に表面処理を行う事を特徴とするゴムローラの表面処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−167711(P2007−167711A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365029(P2005−365029)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】