説明

シフト切換機構の制御装置、制御方法およびその制御方法をコンピュータに実現させるプログラムならびにそのプログラムが記録された記録媒体

【課題】コストの上昇および構成の複雑化を抑制しつつ、シフト操作に対する応答性および精度を向上させる。
【解決手段】SBW−ECUは、シフト信号が入力されて(S100にてYES)、現在と異なるシフト位置指令であると(S102にてYES)、アクチュエータを駆動するステップ(S104)と、シフトの切換が完了すると(S106にてYES)、シフトポジションを判定するステップ(S108)と、タイマーを起動するステップ(S110)と、ガタ詰制御を開始するステップ(S112)と、切換後シフトポジションに対応した設定時間が経過すると(S114にてYES)、ガタ詰制御を終了するステップ(S116)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機のシフト切換機構の制御に関し、特に、シフトポジションを切り換える前に、予めシフト切換機構のガタを詰める制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転者によるシフトレバーの操作に従い自動変速機のシフトポジションをアクチュエータにより切り換えるシフト切換機構においては、シフトポジション切換用の動力源として電動機(たとえば直流モータ)を備えたものが知られている。
【0003】
このようなシフト切換装置によれば、自動変速機のシフトポジションを運転者によるシフトレバーの操作力によって直接切り換える一般的な切換機構のように、シフトレバーとシフト切換機構とを機械的に接続する必要がないことから、これら各部を車両に搭載する際のレイアウト上の制限がなく、設計の自由度を高めることができる。また、車両への組み付け作業を簡単に行なうことができるという利点があった。
【0004】
また、シフト切換機構とシフトレバーとは機械的な接続を要しないため、シフトレバーの操作に対するシフト切換機構の作動の応答性および精度の向上が要求される。
【0005】
このような問題に鑑みて、たとえば、特開2002−349703号公報(特許文献1)は、シフトバイワイヤシステムにおいて、運転者のシフトスイッチ操作に応答性よくシフト可能なシフトバイワイヤシステムを開示する。このシフトバイワイヤシステムは、運転者の操作により、パーキングレンジやドライブレンジなどの各レンジに応じたシフトポジションに対するスイッチ信号を出力するシフトスイッチと、シフトポジションに応じた位置となるようにシフトを行なわせる電動式のシフトアクチュエータと、シフトスイッチのスイッチ信号を入力し、スイッチ信号が示すシフトポジションを得る指令をシフトアクチュエータに出力するシフト制御手段と、各レンジに応じたシフトポジションを示すシフトスイッチの接点間に設けられ、各レンジの中間位置を示す中間スイッチと、を備える。
【0006】
上述した公報に開示されたシフトバイワイヤシステムによると、中間スイッチを設けたことで、より早くシフトアクチュエータを駆動することが可能となり、応答性を高めることができる。よって、発進クラッチ圧及びプライマリプーリ発生トルクも応答性よく発生することができる。
【特許文献1】特開2002−349703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した公報に開示されたシフトバイワイヤシステムにおいては、各レンジの中間位置に、中間位置を示すスイッチを設ける必要があるため、スイッチ点数が増加するという問題がある。スイッチ点数が増加すると、コストが上昇するばかりでなく、シフト切換機構の構成が複雑化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コストの上昇および構成の複雑化を抑制しつつ、シフト操作に対する応答性および精度を向上させたシフト切換機構の制御装置、制御方法およびその制御方法をコンピュータに実現させるプログラムならびにそのプログラムが記録された記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係るシフト切換機構の制御装置は、操作部材の状態に対応した電気信号に基づいてアクチュエータの回転力により、変速機のシフトポジションを切り換えるシフト切換機構の制御装置である。変速機は、複数のシフトポジションを有する。この制御装置は、電気信号に基づいて、操作部材により選択された第1のシフトポジションを検知するための検知手段と、アクチュエータの回転状態に基づいて第2のシフトポジションを判定するための判定手段と、第1のシフトポジションと第2のシフトポジションが異なると、第1のシフトポジションに切り換えるようにアクチュエータを制御するための制御手段と、第1のシフトポジションに切り換えるようにアクチュエータの制御が開始される前に、シフト切換機構のガタが詰まるようにアクチュエータを制御するためのガタ詰制御手段とを含む。第13の発明に係るシフト切換機構の制御方法は、第1の発明に係るシフト切換機構の制御装置と同様の構成を有する。
【0010】
第1または第13の発明によると、ガタ詰制御手段は、第1のシフトポジションに切り換えるようにアクチュエータの制御が開始される前に、シフト切換機構におけるガタが詰まるようにアクチュエータを制御する。そのため、たとえば、第1のシフトポジションに切り換えられる前に、シフト切換機構の第1のシフトポジション側のガタが詰められているようにすると、第1のシフトポジションへの切換時に、速やかに第2のシフトポジションから第1のシフトポジションに切り換えるようにアクチュエータを制御することができる。そのため、シフト操作に対する応答性を向上させることができる。また、ガタが詰められているため、切換の精度を向上させることができる。さらに、このような制御において、各レンジ間の中間位置にスイッチを設ける必要もないため、部品点数が増加することもない。したがって、コストの上昇および構成の複雑化を抑制しつつ、シフト操作に対する応答性および精度を向上させたシフト切換機構の制御装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係るシフト切換機構の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、ガタ詰制御手段は、第2のシフトポジションに切り換えられた時点で、シフト切換機構のガタが詰まるようにアクチュエータを制御するための手段を含む。
【0012】
第2の発明によると、第2のシフトポジションに切り換えられた時点で、シフト切換機構のガタが詰まるようにアクチュエータが制御される。そのため、たとえば、第2のシフトポジションに切り換えられた時点でシフト切換機構の第1のシフトポジション側のガタが詰められているようにすると、第1のシフトポジションへの切換時に、速やかに第2のシフトポジションから第1のシフトポジションに切り換えるようにアクチュエータを制御することができる。
【0013】
第3の発明に係るシフト切換機構の制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、ガタ詰制御手段は、シフト切換機構における、切換後のシフトポジションに対応した予め定められたシフトポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータを制御するための手段を含む。
【0014】
第3の発明によると、ガタ詰制御手段は、シフト切換機構における、切換後のシフトポジションに対応した予め定められたシフトポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータを制御する。そのため、たとえば、第2のシフトポジションに切り換えられた時点でシフト切換機構の第1のシフトポジション側のガタが詰められているようにすると、第1のシフトポジションへの切換時に、速やかに第2のシフトポジションから第1のシフトポジションに切り換えるようにアクチュエータを制御することができる。
【0015】
第4の発明に係るシフト切換機構の制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、ガタ詰制御手段は、切換後のシフトポジションがパーキングポジションであると、シフト切換機構の後進走行ポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータを制御するための手段を含む。
【0016】
第4の発明によると、切換後のシフトポジションがパーキングポジションであると、後進走行ポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータが制御される。そのため、パーキングポジションに切り換えられた後に、シフト操作により後進走行ポジションが選択された場合には、速やかにパーキングポジションから後進走行ポジションに切り換えるようにアクチュエータを制御することができる。すなわち、シフト操作に対する応答性を向上させることができる。
【0017】
第5の発明に係るシフト切換機構の制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、ガタ詰制御手段は、切換後のシフトポジションが後進走行ポジションであると、シフト切換機構のニュートラルポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータを制御するための手段を含む。
【0018】
第5の発明によると、切換後のシフトポジションが後進走行ポジションであると、ニュートラルポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータが制御される。そのため、後進走行ポジションに切り換えられた後に、シフト操作によりニュートラルポジションが選択された場合には、速やかに後進走行ポジションからニュートラルポジションに切り換えるようにアクチュエータを制御することができる。そのため、シフト操作に対する応答性を向上させることができる。
【0019】
第6の発明に係るシフト切換機構の制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、ガタ詰制御手段は、切換後のシフトポジションが前進走行ポジションであると、シフト切換機構のニュートラルポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータを制御するための手段を含む。
【0020】
第6の発明によると、切換後のシフトポジションが前進走行ポジションであると、ニュートラルポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータが制御される。そのため、前進走行ポジションに切り換えられた後に、シフト操作によりニュートラルポジションが選択された場合には、速やかに前進走行ポジションからニュートラルポジションに切り換えるようにアクチュエータを制御することができる。そのため、シフト操作に対する応答性を向上させることができる。
【0021】
第7の発明に係るシフト切換機構の制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、ガタ詰制御手段は、切換後のシフトポジションがニュートラルポジションであると、シフト切換機構の後進走行ポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータを制御するための手段を含む。
【0022】
第7の発明によると、切換後のシフトポジションがニュートラルポジションであると、後進走行ポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータが制御される。そのため、ニュートラルポジションに切り換えられた後、シフト操作により後進走行ポジションが選択された場合には、速やかにニュートラルポジションから後進走行ポジションに切り換えるようにアクチュエータを制御することができる。そのため、シフト操作に対する応答性を向上させることができる。
【0023】
第8の発明に係るシフト切換機構の制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、ガタ詰制御手段は、切換後のシフトポジションが変速に用いられるギヤ段を予め定められた範囲に制限するポジションであると、シフト切換機構のニュートラルポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータを制御するための手段を含む。
【0024】
第8の発明によると、切換後のシフトポジションが変速に用いられるギヤ段を予め定められた範囲に制限するシフトポジション(たとえば、1速段固定のシフトポジションあるいは1速段と2速段との間で自動変速するシフトポジション)であると、ニュートラルポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータが制御される。そのため、変速に用いられるギヤ段を予め定められた範囲に制限するシフトポジションに切り換えられた後、シフト操作によりニュートラルポジションが選択された場合には、速やかに予め定められた範囲のギヤ段に制限されたシフトポジションからニュートラルポジションに切り換えるようにアクチュエータを制御することができる。そのため、シフト操作に対する応答性を向上させることができる。
【0025】
第9の発明に係るシフト切換機構の制御装置においては、第1〜8のいずれかの発明の構成に加えて、ガタ詰制御手段は、設定時間が経過するまで予め定められた出力が発現するように、アクチュエータを制御するための手段を含む。
【0026】
第9の発明によると、設定時間が経過するまで予め定められた出力が発現するようにアクチュエータを制御することにより、シフト切換機構のガタを低減させることができる。
【0027】
第10の発明に係るシフト切換機構の制御装置においては、第9の発明の構成に加えて、設定時間は、切換後のシフトポジションに応じて異なる時間が設定される。
【0028】
第10の発明によると、シフト切換機構においては、各シフトポジションによって、ガタの度合いが異なるため、シフトポジションに応じて異なる時間を設定することにより、各シフトポジションにおけるガタを精度よく低減することができる。
【0029】
第11の発明に係るシフト切換機構の制御装置は、第1〜10のいずれかの発明の構成に加えて、アクチュエータの回転力に対する反力に対応する物理量を検出するための反力検出手段をさらに含む。ガタ詰制御手段は、検出された物理量に対応する反力が予め定められた反力を超えるまで、予め定められた出力が発現するように、アクチュエータを制御するための手段を含む。
【0030】
第11の発明によると、アクチュエータの回転力に対する反力が予め定められた反力を超えるまで予め定められた出力が発現するようにアクチュエータを制御することにより、シフト切換機構のガタを低減させることができる。
【0031】
第12の発明に係るシフト切換機構の制御装置は、第1〜11のいずれかの発明の構成に加えて、アクチュエータの回転量に対応する物理量を検出するための回転量検出手段をさらに含む。ガタ詰制御手段は、検出された物理量に対応する回転量が予め定められた回転量を超えるまで、予め定められた出力が発現するように、アクチュエータを制御するための手段を含む。
【0032】
第12の発明によると、アクチュエータの回転量が予め定められた回転量を超えるまで予め定められた出力が発現するようにアクチュエータを制御することにより、シフト切換機構のガタを低減させることができる。
【0033】
第14の発明に係るプログラムは、第13の発明に係るシフト切換機構の制御方法をコンピュータで実現されるプログラムであって、第15の発明に係る記録媒体は、第13の発明に係るシフト切換機構の制御方法をコンピュータで実現されるプログラムを記録した媒体である。
【0034】
第14または第15の発明によると、コンピュータ(汎用でも専用でもよい)を用いて、第13の発明に係るシフト切換機構の制御方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0036】
図1は、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置を備えたシフト制御システム10の構成を示す。本実施の形態に係るシフト制御システム10は、車両のシフトポジションを切り換えるために用いられる。シフト制御システム10は、Pスイッチ20と、シフトスイッチ26と、車両電源スイッチ28と、車両の制御装置(以下、「EFI−ECU(Electronic Control Unit)」と表記する)30と、パーキング制御装置(以下、「SBW(Shift By Wire)−ECU」と表記する)40と、アクチュエータ42と、エンコーダ46と、シフト切換機構48と、表示部50と、メータ52と、駆動機構60と、ニュートラルスタートスイッチ(以下、NSWと表記する)70とを含む。シフト制御システム10は、電気制御によりシフトポジションを切り換えるシフトバイワイヤシステムとして機能する。具体的にはシフト切換機構48がアクチュエータ42により駆動されてシフトポジションの切り換えを行なう。本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置は、SBW−ECU40により実現される。
【0037】
車両電源スイッチ28は、車両電源のオン・オフを切り換えるためのスイッチである。車両電源スイッチ28は、特に限定されるものではないが、たとえば、イグニッションスイッチである。車両電源スイッチ28がドライバなどのユーザから受付けた指示はEFI−ECU30に伝達される。たとえば、車両電源スイッチ28がオンされることにより、図示しない補機バッテリから電力が供給されて、シフト制御システム10が起動される。
【0038】
Pスイッチ20は、シフトポジションをパーキングポジション(以下、「Pポジション」と呼ぶ)とパーキング以外のポジション(以下、「非Pポジション」と呼ぶ)との間で切り換えるためのスイッチであり、スイッチの状態をドライバに示すためのインジケータ22、およびドライバからの指示を受付ける入力部24を含む。ドライバは、入力部24を通じて、シフトポジションをPポジションに入れる指示を入力する。入力部24はモーメンタリスイッチであってもよい。入力部24が受付けたドライバからの指示を示すP指令信号は、SBW−ECU40に送信される。なお、このようなPスイッチ20以外により、非PポジションからPポジションにシフトポジションを切り換えるものであってもよい。
【0039】
SBW−ECU40は、シフトポジションをPポジションと非Pポジションとの間で切り換えるために、シフト切換機構48を駆動するアクチュエータ42の動作を制御し、現在のシフトポジションの状態をインジケータ22に提示する。シフトポジションが非Pポジションであるときにドライバは入力部24を押下すると、SBW−ECU40はシフトポジションをPポジションに切り換えて、インジケータ22に現在のシフトポジションがPポジションである旨を提示する。
【0040】
アクチュエータ42は、スイッチドリラクタンスモータ(以下、「SRモータ」と表記する)により構成され、SBW−ECU40からのアクチュエータ制御信号を受信してシフト切換機構48を駆動する。エンコーダ46は、アクチュエータ42と一体的に回転し、SRモータの回転状況を検知する。本実施の形態のエンコーダ46は、A相、B相およびZ相の信号を出力するロータリーエンコーダである。SBW−ECU40は、エンコーダ46から出力される信号を取得してSRモータの回転状況を把握し、SRモータを駆動するための通電の制御を行なう。
【0041】
シフトスイッチ26は、シフトポジションをD(前進走行)ポジション、R(後進走行)ポジション、N(ニュートラル)ポジションなどのポジションに切り換えたり、またPポジションに入れられているときには、Pポジションを解除したりするためのスイッチである。シフトスイッチ26が受付けたドライバからの指示を示すシフト信号はSBW−ECU40に送信される。すなわち、シフトスイッチ26は、運転者により操作された操作部材(たとえば、シフトレバー)の位置に対応したシフトポジションを示すシフト信号をSBW−ECU40に送信する。SBW−ECU40は、ドライバからの指示を示すシフト信号に基づき、EFI−ECU30を通じて、駆動機構60におけるシフトポジションを切り換える制御を行なうとともに、現在のシフトポジションの状態をメータ52に提示する。駆動機構60は、有段変速機構から構成されてもよいし、無段変速機構から構成されてもよい。
【0042】
EFI−ECU30は、シフト制御システム10の動作を統括的に管理する。表示部50は、EFI−ECU30またはSBW−ECU40が発したドライバに対する指示や警告などを表示する。メータ52は、車両の機器の状態やシフトポジションの状態などを提示する。
【0043】
図2は、シフト切換機構48の構成を示す。以下、シフトポジションは、Pポジション、非Pポジション(R、N、Dの各ポジションを含み、さらにDポジションに加えて1速固定のD1ポジションや、2速固定のD2ポジションを含んでも良い)とを含む。
【0044】
シフト切換機構48は、アクチュエータ42により回転されるシャフト102、シャフト102の回転に伴って回転するディテントプレート100、ディテントプレート100の回転に伴って動作するロッド104、図示しない変速機の出力軸に固定されたパーキングロックギヤ108、パーキングロックギヤ108をロックするためのパーキングロックポール106、ディテントプレート100の回転を制限してシフトポジションを固定するディテントスプリング110およびころ112を含む。ディテントプレート100は、アクチュエータ42により駆動されてシフトポジションを切り換える。またエンコーダ46は、アクチュエータ42の回転量に応じた計数値を取得する計数手段として機能する。
【0045】
なお、図2の斜視図においては、ディテントプレート100の谷(Pポジション位置)しか示していないが、実際には図2の拡大平面図に示すように、ディテントプレート100には、D、N、R、Pの4つのポジションに対応する4つの谷が存在する。なお、以下においては、D、N、Rの各ポジションを(まとめて)非Pポジションとして、Pポジションと非Pポジションとの切換えについて説明する。
【0046】
図2は、シフトポジションが非Pポジションであるときの状態を示している。この状態では、パーキングロックポール106がパーキングロックギヤ108をロックしていないので、車両の駆動軸の回転は妨げられない。この状態からアクチュエータ42によりシャフト102を時計回り方向に回転させると、ディテントプレート100を介してロッド104が図2に示す矢印Aの方向に押され、ロッド104の先端に設けられたテーパ部によりパーキングロックポール106が図2に示す矢印Bの方向に押し上げられる。ディテントプレート100の回転に伴ってディテントプレート100の頂部に設けられた2つの谷のうちの一方、すなわち非Pポジション位置120にあったディテントスプリング110のころ112は、山122を乗り越えて他方の谷、すなわちPポジション位置124へ移る。ころ112は、その軸方向に回転可能にディテントスプリング110に設けられている。ころ112がPポジション位置124に来るまでディテントプレート100が回転したとき、パーキングロックポール106は、パーキングロックポール106の突起部分がパーキングロックギヤ108の歯部間に嵌合する位置まで押し上げられる。これにより、車両の駆動軸が機械的に固定され、シフトポジションがPポジションに切り換わる。
【0047】
本実施の形態に係るシフト制御システム10では、シフトポジション切換時にディテントプレート100、ディテントスプリング110およびシャフト102などのシフト切換機構の構成部品に係る負荷を低減するために、SBW−ECU40が、ディテントスプリング110のころ112が山122を乗り越えて落ちるときの衝撃を少なくするように、アクチュエータ42の回転量を制御する。
【0048】
SBW−ECU40は、エンコーダ46で検出された回転量に基づく、アクチュエータ42の回転位置(ディテントプレート100におけるころ112の相対位置)がPポジションに対応する予め定められた範囲内にあるときには、シフトポジションがPポジションであることを判定する。
【0049】
一方、SBW−ECU40は、エンコーダ46で検出された回転量に基づく、アクチュエータ42の回転位置が非Pポジション(たとえば、D、R、N)に対応する予め定められた範囲内にあるときには、シフトポジションが非Pポジションであることを判定する。
【0050】
また、ディテントプレート100あるいはシャフト102は、自動変速機のマニュアルバルブのスプール(いずれも図示せず)に最終的に接続される。アクチュエータ42の回転位置がDポジション、Rポジション、Nポジションになると、マニュアルバルブのスプールがそれぞれのシフトポジションに対応する位置に移動させられる。このようにして、自動変速機のシフトポジションがアクチュエータ42により切り換えられる。
【0051】
SBW−ECU40は、エンコーダ46により検知されるカウンタ値に基づいてアクチュエータ42の回転量を検出する。
【0052】
SBW−ECU40は、規制部材により規制されたアクチュエータの回転位置に基づいて、複数のシフトポジションのうちの少なくとも1つのシフトポジションの位置を設定する。
【0053】
以上のような構成を有するシフト制御システム10において、本発明は、SBW−ECU40が、シフトポジションが切り換えるようにアクチュエータ42の制御を開始する前に、シフト切換機構48のガタが詰まるようにアクチュエータ42を制御する点に特徴を有する。本実施の形態において、「ガタ」とは、アクチュエータ42とシャフト102との間のガタである。たとえば、「ガタ」は、アクチュエータ42とシャフト102とを連結するスプライン嵌合部およびアクチュエータ42の内部に設けられるギヤ部のガタである。
【0054】
具体的には、SBW−ECU40は、シフトポジションが切り換えられた時点で、シフト切換機構48のガタが詰まるようにアクチュエータ42を制御する。さらに、SBW−ECU40は、切換後のシフトポジションに対応した予め定められたシフトポジション側のガタが詰まるように、アクチュエータ42を制御する。すなわち、アクチュエータ42は、予め定められた回転方向についての、シフト切換機構48のガタが詰まるように制御される。
【0055】
図3に、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECU40の機能ブロック図を示す。
【0056】
SBW−ECU40は、入力インターフェース(以下、入力I/Fと記載する)300と、演算処理部400と、記憶部600と、出力インターフェース(以下、出力I/Fと記載する)500とを含む。
【0057】
入力I/F300は、Pスイッチ20からのP指令信号と、エンコーダ46からの計数信号と、シフトスイッチ26からのシフト信号と、NSW70からのNSW接点信号とを受信して、演算処理部400に送信する。
【0058】
演算処理部400は、シフト信号入力判定部402と、シフト判定部404と、アクチュエータ駆動制御部406と、シフト完了判定部408と、ポジション判定部410と、ガタ詰制御部412と、時間計測部414とを含む。
【0059】
シフト信号入力判定部402は、シフトスイッチ26からシフト信号を受信するか否かを判定する。シフト信号入力判定部402は、たとえば、シフト信号を受信すると、入力判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0060】
シフト判定部404は、シフト信号を受信すると、アクチュエータの回転状態、すなわち、エンコーダ46の計数値から得られる回転量に基づいて特定される、現在選択されているシフトポジションと、シフトスイッチ26から受信したシフト信号に基づいて特定されるシフトレバーの操作位置に対応したシフトポジションとが異なるか否かを判定する。
【0061】
なお、シフト判定部404は、たとえば、入力判定フラグがオンであると、現在選択されているシフトポジションと、シフトレバーの操作位置に対応したシフトポジションとが異なるか否かの判定を実行するようにしてもよい。また、シフト判定部404は、現在選択されているシフトポジションと、シフトレバーの操作位置に対応したシフトポジションとが異なる場合には、シフト判定フラグをオンするようにしてもよい。なお、シフト判定部404は、NSW70から受信するNSW接点信号に基づいて、現在選択されているシフトポジションを検出するようにしてもよい。
【0062】
アクチュエータ駆動制御部406は、現在選択されているシフトポジションと、シフトレバーの操作位置に対応したシフトポジションとが異なる場合には、自動変速機におけるシフトポジションがシフトレバーの操作位置に対応したシフトポジションに切り換えるようにアクチュエータ42を制御する。
【0063】
シフト完了判定部408は、NSW70から受信するNSW接点信号あるいはエンコーダ46から受信する計数信号に基づいて、シフトレバーの操作位置に対応したシフトポジションに切り換わったか否かを判定する。なお、シフト完了判定部408は、たとえば、シフトポジションが切り換わったことを判定すると、完了判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0064】
ポジション判定部410は、シフトポジションが切り換わったことを判定すると、現在選択されているシフトポジションを判定する。ポジション判定部410は、たとえば、NSW70から受信するNSW接点信号に基づいて現在選択されているシフトポジションを判定するようにしてもよいし、あるいは、エンコーダ46から受信する計数信号に基づいて、現在選択されているシフトポジションを判定するようにしてもよい。なお、ポジション判定部410は、完了判定フラグがオンであると、シフトポジションを判定するようにしてもよい。
【0065】
ガタ詰制御部412は、判定されたシフトポジションに対応するシャフト102の回転方向についてのガタが詰まるようにアクチュエータ42を制御する。
【0066】
具体的には、ガタ詰制御部412は、切換後のシフトポジションがPポジションであると、シフト切換機構48のR(後進走行)ポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータ42を制御する。
【0067】
さらに、ガタ詰制御部412は、切換後のシフトポジションがRポジションであると、シフト切換機構48のN(ニュートラル)ポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータ42を制御する。
【0068】
さらに、ガタ詰制御部412は、切換後のシフトポジションがD(前進走行)ポジションであると、シフト切換機構48のNポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータ42を制御する。
【0069】
さらに、ガタ詰制御部412は、切換後のシフトポジションがNポジションであると、シフト切換機構48のPポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータ42を制御する。
【0070】
さらに、ガタ詰制御部412は、切換後のシフトポジションが変速に用いられるギヤ段を予め定められた範囲に制限するシフトポジションであると、シフト切換機構48におけるNポジション側のガタが詰まるようにアクチュエータを制御する。
【0071】
「自動変速に用いられるギヤ段を予め定められた範囲に制限するシフトポジション」とは、たとえば、1速段固定のシフトポジション、2速段固定のシフトポジション、1速段と2速段との間で自動変速するシフトポジション、1速段から最上段のギヤ段までのうちの予め定められた範囲内で自動変速するシフトポジション、あるいは、1速段から最上段のギヤ段までのうちのいずれか1つに固定する、手動変速モードに対応するシフトポジションである。
【0072】
なお、本実施の形態においては、ディテントプレート100の形状に対応させて、上述したようにガタ詰方向を規定したが、特に、これらのガタ詰め方向に限定されるものではない。
【0073】
ガタ詰制御部412は、設定時間が経過するまで予め定められた出力が発現するように、アクチュエータ42を制御する。設定時間は、切換後のシフトポジションに対応させて異なる時間が設定される。設定時間は、たとえば、ガタ詰まりが完了する時間であって、たとえば、実験等により適合される。これにより、各シフトポジションにおけるガタを精度よく低減することができる。ガタ詰制御部412は、設定時間が経過すると、アクチュエータ42を停止するように制御する。時間計測部414は、上述した設定時間を計測するタイマーである。
【0074】
なお、本実施の形態において、シフト信号入力判定部402、シフト判定部404、アクチュエータ駆動制御部406、シフト完了判定部408、ポジション判定部410、ガタ詰制御部412および時間計測部414は、いずれも演算処理部400であるCPU(Central Processing Unit)が記憶部600に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記録媒体に記録されて車両に搭載される。
【0075】
記憶部600には、各種情報、プログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じて演算処理部400からデータが読み出されたり、格納されたりする。
【0076】
以下、図4を参照して、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECU40で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0077】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、SBW−ECU40は、シフト信号が入力されたか否かを判定する。シフト信号が入力されると(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
【0078】
S102にて、SBW−ECU40は、入力されたシフト信号に対応するシフトポジションが、現在選択されているシフトポジションと異なるか否かを判定する。入力されたシフト信号に対応するシフトポジションと、現在選択されているシフトポジションとが異なると(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでないと(S102にてNO)、この処理は終了する。
【0079】
S104にて、SBW−ECU40は、入力されたシフト信号に対応するシフトポジションに切り換えるようにアクチュエータ42を制御する。S106にて、SBW−ECU40は、シフトポジションの切換が完了したか否かを判定する。シフトポジションの切換が完了すると(S106にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでないと(S106にてNO)、処理はS106に戻されて、シフトポジションの切換が完了するまで待機する。
【0080】
S108にて、SBW−ECU40は、現在選択されているシフトポジションを判定する。S110にて、SBW−ECU40は、タイマーを起動させて、時間計測を開始する。S112にて、SBW−ECU40は、ガタ詰制御を開始する。
【0081】
S114にて、SBW−ECU40は、タイマーを起動させてから現在選択されているシフトポジションに対応した設定時間が経過したか否かを判定する(S114にてYES)、処理はS116に移される。もしそうでないと(S114にてNO)、処理はS114に戻されて、設定時間が経過するまで待機する。なお、SBW−ECU40は、ガタ詰制御を開始してから設定時間が経過したか否かを判定するようにしてもよい。S116にて、SBW−ECU40は、アクチュエータ42を停止させて、ガタ詰制御を終了する。
【0082】
以上のような構造、フローチャートに基づく、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECU40の動作について図5および図6を参照しつつ説明する。
【0083】
<PポジションからDポジションへの切換時>
シフトレバーの操作位置がPポジションに対応する位置にある場合には、SBW−ECU40は、シフトスイッチ26から、図5(A)に示すように、Pポジションに対応する信号を受信する。
【0084】
また、アクチュエータ42の回転位置は、Pポジションに対応する位置であるため、SBW−ECU40は、NSW70から、図5(B)に示すように、Pポジションに対応するNSW接点信号を受信する。さらに、図5(C)に示すように、SBW−ECU40は、エンコーダ46から、ディテントプレート100の回転位置がPポジションに対応する位置にあることを示す計数信号を受信する。
【0085】
時間T(0)において、運転者がシフトレバーをDポジションに対応する位置に移動させると、図5(A)に示すように、SBW−ECU40は、シフトスイッチ26からDポジションに対応するシフト信号を受信する(S100にてYES)。
【0086】
現在選択されているシフトポジションがPポジションであるため(S102にてYES)、時間T(1)において、アクチュエータ42の駆動制御が開始される(S104)。このとき、図5(D)に示すように、SBW−ECU40は、予め定められたトルクTq(1)が発現されるようにアクチュエータ42を制御する。
【0087】
図5(C)に示すように、時間T(1)以降において、アクチュエータ42は、回転トルクを発現させて、ディテントプレート100を回転させる。そのため、エンコーダ46から出力される計数値は、Dポジションに対応する計数値に接近していく。たとえば、図5(C)の紙面下方向が計数値の減少側であるとすると、計数値は、時間の経過とともに減少していく。
【0088】
アクチュエータ42の回転が継続すると、時間T(2)において、NSW70からSBW−ECU40に出力されるNSW接点信号は、図5(B)に示すように、Pポジションに対応する信号からRポジションに対応する信号に切り換わる。
【0089】
時間T(3)において、NSW70からSBW−ECU40に出力されるNSW接点信号は、Rポジションに対応する信号からNポジションに対応する信号に切り換わる。
【0090】
時間T(4)において、NSW70からSBW−ECU40に出力されるNSW接点信号は、Nポジションに対応する信号からDポジションに対応する信号に切り換わる。
【0091】
時間T(5)において、エンコーダ46から出力される計数信号に基づく計数値が、Dポジションに対応する計数値と略同じになると、アクチュエータ42の駆動が停止されて、シフトポジションの切換が完了したことが判定される(S106にてYES)。
【0092】
時間T(6)において、シフトポジションの判定がなされるとともに(S108)、タイマーが起動される(S110)。
【0093】
時間T(7)において、ガタ詰制御が開始される(S112)。このとき、図5(D)に示すように、SBW−ECU40は、切換後のシフトポジションがDポジションであるため、Nポジション側のガタが詰められるようにガタ詰制御が実行される。
【0094】
このとき、SBW−ECU40は、予め定められたトルクTq(2)が発現するようにアクチュエータ42を制御する。なお、予め定められたトルクTq(2)の絶対値は、予め定められたトルクTq(1)の絶対値以下であれば特に限定されるものではない。
【0095】
時間T(8)において、ガタ詰制御が開始されてから、Dポジションに対応させて設定される設定時間Ta(1)が経過すると(S114にてYES)、アクチュエータ42の駆動が停止されて、ガタ詰制御が終了する(S116)。
【0096】
このとき、図5(C)に示すように、エンコーダ46から出力される計数値は、Nポジションに近づく方向に増加する。すなわち、シフト切換機構48のNポジション側のガタが詰められた状態となる。
【0097】
<PポジションからRポジションへの切換時>
シフトレバーの操作位置がPポジションに対応する位置にある場合には、SBW−ECU40は、シフトスイッチ26から、図6(A)に示すように、Pポジションに対応する信号を受信する。
【0098】
また、アクチュエータ42の回転位置は、Pポジションに対応する位置であるため、SBW−ECU40は、NSW70から、図6(B)に示すように、Pポジションに対応するNSW接点信号を受信する。さらに、図6(C)に示すように、SBW−ECU40は、エンコーダ46から、ディテントプレート100の回転位置がPポジションに対応する位置にあることを示す計数信号を受信する。
【0099】
時間T(10)において、運転者がシフトレバーをRポジションに対応する位置に移動させると、図6(A)に示すように、SBW−ECU40は、シフトスイッチ26からRポジションに対応するシフト信号を受信する(S100にてYES)。
【0100】
現在選択されているシフトポジションがPポジションであるため(S102にてYES)、時間T(11)において、アクチュエータ42の駆動制御が開始される(S104)。このとき、図6(D)に示すように、SBW−ECU40は、予め定められたトルクTq(1)が発現するようにアクチュエータ42を制御する。
【0101】
図6(C)に示すように、時間T(11)以降において、アクチュエータ42は、回転トルクを発現させて、ディテントプレート100を回転させる。そのため、エンコーダ46から出力される計数値は、Rポジションに対応する計数値に近づいていく。たとえば、図6(C)の紙面下方向が計数値の減少側であるとすると、計数値は、時間の経過とともに減少していく。
【0102】
アクチュエータ42の回転が継続すると、時間T(12)において、NSW70からSBW−ECU40に出力されるNSW接点信号は、図6(B)に示すように、Pポジションに対応する信号からRポジションに対応する信号に切り換わる。
【0103】
時間T(13)において、エンコーダ46から出力される計数信号に基づく計数値が、Rポジションに対応する計数値と略同じになると、アクチュエータ42の駆動が停止されて、シフトポジションの切換が完了したことが判定される(S106にてYES)。
【0104】
時間T(14)において、シフトポジションの判定がなされるとともに(S108)、タイマーが起動される(S110)。
【0105】
時間T(15)において、ガタ詰制御が開始される(S112)。このとき、図6(D)に示すように、SBW−ECU40は、切換後のシフトポジションがRポジションであるため、Nポジション側のガタが詰められるようにガタ詰制御が実行される。
【0106】
このとき、SBW−ECU40は、予め定められたトルクTq(3)が発現するようにアクチュエータ42を制御する。このとき、アクチュエータ42とシャフト102との間のスプライン嵌合部およびアクチュエータ42内部のギヤ部におけるガタが詰められる。なお、予め定められたトルクTq(3)の絶対値は、予め定められたトルクTq(1)の絶対値以下であればよい。また、予め定められたトルクTq(3)の絶対値は、予め定められたトルクTq(2)の絶対値と同じであってもよい。
【0107】
時間T(16)において、ガタ詰制御が開始されてから、Rポジションに対応させて設定される設定時間Ta(2)が経過すると(S114にてYES)、アクチュエータ42の駆動が停止されて、ガタ詰制御が完了する(S116)。
【0108】
このとき、図6(C)に示すように、エンコーダ46から出力される計数値は、Nポジションに近づく方向に増加する。すなわち、シフト切換機構48のNポジション側のガタが詰められた状態となる。
【0109】
以上のようにして、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置によると、シフトポジションが切り換えられた時点で、切換後のシフトポジションに対応した方向のシフト切換機構におけるガタが詰められるようにアクチュエータが制御されるため、切換後のシフトポジションに対応した方向に位置するシフトポジションに切り換えられる際には、速やかにシフトポジションを切り換えるようにアクチュエータを制御することができる。そのため、シフト操作に対する応答性を向上させることができる。また、ガタが詰められているため、切換の精度を向上させることができる。さらに、このような制御において、各レンジ間の中間位置にスイッチを設ける必要もないため、部品点数が増加することもない。したがって、コストの上昇および構成の複雑化を抑制しつつ、シフト操作に対する応答性および精度を向上させたシフト切換機構の制御装置を提供することができる。
【0110】
なお、本実施の形態においては、ガタ詰制御は、設定時間が経過するまで予め定められた出力が発現するようにアクチュエータを制御することにより実現されるものであるが、特にこれに限定されるものではない。
【0111】
たとえば、シフト制御システムは、図示しないアクチュエータの回転力に対する反力に対応する物理量を検出する反力検出部をさらに含み、SBW−ECU40は、検出された物理量に対応する反力が予め定められた反力を超えるまで、予め定められた出力が発現するようにアクチュエータを制御するようにしてもよい。
【0112】
なお、反力検出部は、反力を直接的に検出するようにしてもよいし、アクチュエータに供給される電力状態(たとえば、電流値あるいは電圧値)およびアクチュエータの回転状態(たとえば、カウント値あるいはその変化量)に基づいて、反力を検出するようにしてもよい。
【0113】
あるいは、SBW−ECUは、エンコーダにより検出されたアクチュエータの回転量が予め定められた回転量を超えるまで、予め定められた出力が発現するようにアクチュエータを制御するようにしてもよい。なお、アクチュエータの回転量に対応する物理量が検出できれば、特にエンコーダに限定されるものではない。
【0114】
さらには、SBW−ECUは、上述した経過時間、反力および回転量についての3つの条件のうちいずれか1つの条件が成立するまで、予め定められた出力が発現するようにアクチュエータを制御するようにしてもよい。あるいは、SBW−ECUは、上述した3つの条件のうちいずれか2つの条件が成立するまで、予め定められた出力が発現するようにアクチュエータを制御するようにしてもよい。あるいは、SBE−ECUは、上述した3つの条件のうちのすべての条件が成立するまで、予め定められた出力が発現するようにアクチュエータを制御するようにしてもよい。
【0115】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置が搭載された車両の構成を示す図である。
【図2】シフト機構の構成を示す図である。
【図3】本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECUの機能ブロック図である。
【図4】本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECUの動作を示すタイミングチャート(その1)である。
【図6】本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECUの動作を示すタイミングチャート(その2)である。
【符号の説明】
【0117】
10 シフト制御システム、20 Pスイッチ、22 インジケータ、24 入力部、26 シフトスイッチ、28 車両電源スイッチ、30 EFI−ECU、40 SBW−ECU、42 アクチュエータ、46 エンコーダ、48 シフト切換機構、50 表示部、52 メータ、60 駆動機構、70 NSW、100 ディテントプレート、102 シャフト、104 ロッド、106 パーキングロックポール、108 パーキングロックギヤ、110 ディテントスプリング、112 ころ、120 非P位置、122 山、124 P位置、300 入力I/F、400 演算処理部、402 シフト信号入力判定部、404 シフト判定部、406 アクチュエータ駆動制御部、408 シフト完了判定部、410 ポジション判定部、412 ガタ詰制御部、414 時間計測部、500 出力I/F、600 記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材の状態に対応した電気信号に基づいてアクチュエータの回転力により、変速機のシフトポジションを切り換えるシフト切換機構の制御装置であって、前記変速機は、複数のシフトポジションを有し、
前記電気信号に基づいて、前記操作部材により選択された第1のシフトポジションを検知するための検知手段と、
前記アクチュエータの回転状態に基づいて第2のシフトポジションを判定するための判定手段と、
前記第1のシフトポジションと前記第2のシフトポジションが異なると、前記第1のシフトポジションに切り換えるように前記アクチュエータを制御するための制御手段と、
前記第1のシフトポジションに切り換えるように前記アクチュエータの制御が開始される前に、前記シフト切換機構のガタが詰まるように前記アクチュエータを制御するためのガタ詰制御手段とを含む、シフト切換機構の制御装置。
【請求項2】
前記ガタ詰制御手段は、前記第2のシフトポジションに切り換えられた時点で、前記シフト切換機構のガタが詰まるように前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項1に記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項3】
前記ガタ詰制御手段は、前記シフト切換機構における、切換後のシフトポジションに対応した予め定められたシフトポジション側のガタが詰まるように前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項1または2に記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項4】
前記ガタ詰制御手段は、前記切換後のシフトポジションがパーキングポジションであると、前記シフト切換機構の後進走行ポジション側のガタが詰まるように前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項3に記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項5】
前記ガタ詰制御手段は、前記切換後のシフトポジションが後進走行ポジションであると、前記シフト切換機構のニュートラルポジション側のガタが詰まるように前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項3に記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項6】
前記ガタ詰制御手段は、前記切換後のシフトポジションが前進走行ポジションであると、前記シフト切換機構のニュートラルポジション側のガタが詰まるように前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項3に記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項7】
前記ガタ詰制御手段は、前記切換後のシフトポジションがニュートラルポジションであると、前記シフト切換機構の後進走行ポジション側のガタが詰まるように前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項3に記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項8】
前記ガタ詰制御手段は、前記切換後のシフトポジションが変速に用いられるギヤ段を予め定められた範囲に制限するシフトポジションであると、前記シフト切換機構のニュートラルポジション側のガタが詰まるように前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項3に記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項9】
前記ガタ詰制御手段は、設定時間が経過するまで予め定められた出力が発現するように、前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項10】
前記設定時間は、切換後のシフトポジションに応じて異なる時間が設定される、請求項9に記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記アクチュエータの回転力に対する反力に対応する物理量を検出するための反力検出手段をさらに含み、
前記ガタ詰制御手段は、前記検出された物理量に対応する反力が予め定められた反力を超えるまで、予め定められた出力が発現するように、前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記アクチュエータの回転量に対応する物理量を検出するための回転量検出手段をさらに含み、
前記ガタ詰制御手段は、前記検出された物理量に対応する回転量が予め定められた回転量を超えるまで、予め定められた出力が発現するように、前記アクチュエータを制御するための手段を含む、請求項1〜11のいずれかに記載のシフト切換機構の制御装置。
【請求項13】
操作部材の状態に対応した電気信号に基づいてアクチュエータの回転力により、変速機のシフトポジションを切り換えるシフト切換機構の制御方法であって、前記変速機は、複数のシフトポジションを有し、
前記電気信号に基づいて、前記操作部材により選択された第1のシフトポジションを検知するステップと、
前記アクチュエータの回転状態に基づいて第2のシフトポジションを判定するステップと、
前記第1のシフトポジションと前記第2のシフトポジションが異なると、前記第1のシフトポジションに切り換えられるように前記アクチュエータを制御するステップと、
前記第1のシフトポジションに切り換えられるように前記アクチュエータの制御が開始される前に、前記シフト切換機構のガタが詰まるように前記アクチュエータを制御するステップとを含む、シフト切換機構の制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載のシフト切換機構の制御方法をコンピュータで実現されるプログラム。
【請求項15】
請求項13に記載のシフト切換機構の制御方法をコンピュータで実現されるプログラムが記録された記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−95836(P2008−95836A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278479(P2006−278479)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】