説明

シリカ系ガラス薄層付き無機質基板、その製造方法、コーテイング剤および半導体装置

【課題】電気絶縁性と可撓性と優れた耐熱性を有し平坦化され高温に曝されても変質、劣化、変形することのないシリカ系ガラス薄層付き無機質基板、その製造方法、そのためのコーテイング剤および半導体装置を提供する。
【解決手段】無機質基板に環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)または特定の単位式を有するハイドロジェンポリシロキサン(B)を被覆し硬化させる、鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する無機質基板の製造方法。前記シリカ系ガラス薄層付き無機質基板。前記 (A)または(B)からなる無機質基板のコーテイング剤。前記シリカ系ガラス薄層付き無機質基板を有する半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系ガラス薄層を有する無機質基板、その製造方法、ハイドロジェンポリシロキサンからなる無機質基板のコーテイング剤、およびシリカ系ガラス薄層付き無機質基板上に少なくとも半導体層が形成された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池等の半導体装置の電極層、半導体層、発光層等形成に使用される基板に要求される基本特性としては、電極層、半導体層、発光層等形成プロセスにおける高温により変質したり劣化したり歪みを生じないこと、高い平坦性を有していること、大気中の湿気によりさび等の変化を生じないこと、また、半導体膜中にピンホール等の欠陥を生じさせないこと、さらに反り、剥がれ、割れが生じないこと等が挙げられる。これらの性質を有する基板として、ガラス板やセラミックス板が従来から用いられてきた。
【0003】
しかし、近年の電子機器、半導体装置の軽薄短小化、多様化に伴い、また経済性の面より、薄膜太陽電池、反射型液晶表示装置用薄膜トランジスター(TFT)、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子等の薄膜半導体素子ないし装置が注目されている。特に宇宙衛星用太陽電池は軽量化が最も重要な課題の一つであり、高性能の薄膜太陽電池が要望されている。
【0004】
たとえば、特公平4−63551には、「ポリイミド樹脂薄膜を素板として使用した太陽電池が特開昭54−149489に記載されているが、ポリイミド樹脂薄膜がデポジションの高温によってカールし、均一に加熱されないという欠点がある。そのため、金属箔上に形成した可撓性、耐熱性に富むポリイミド等の樹脂薄膜上にアモルファスシリコン系の光起電力素子層を形成した薄膜太陽電池を発明した」旨記載されている。
特開平10−286907には、「金属薄板表面にポリイミド樹脂の薄層を形成しようとすると、金属薄板表面の凹凸などによりピンホールが発生する場合があり、ピンホールの発生を抑制するには金属薄板の研磨が必要であり、そのような工程をへるため高価なものになる。そのため金属薄板にポリイミドフィルムをエポキシ樹脂接着剤により貼り合わせてなる耐熱性可撓性基板を発明した。太陽電池、反射型液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置等の薄膜半導体装置の製作に有用である」旨記載されている。
特開2000−323732には、「ステンレススチールやアルミニウム等の導電性シートの表面および接続孔内周面にポリイミド樹脂やアラミド樹脂等の耐熱性高分子の電気絶縁層を形成した基板は400℃以上で薄膜半導体層(光電変換層)が形成可能である」旨記載されている。
特開2003−179238には、「可撓性を有する基板(例、ステンレススチール、ポリイミド)上またはSiO膜を有する基板上に電極膜を形成し、電極膜上にIb族元素(例、Cu)とIIIb族元素(例、In)とVIb族元素(例、Se)とを含む薄膜を形成し、該薄膜を450℃以上、好ましくは500℃〜600℃で熱処理することによって半導体膜(光吸収層)を形成して薄膜CIS系太陽電池を製造する」旨記載されている。
【0005】
特開2005−079405の特許請求の範囲には、シロキサン結合を主体とするシリカ系無機ポリマー膜で被覆されたステンレス箔であって、シリカ系無機ポリマーを構成するSiの少なくと一部が有機基又は水素の一方又は双方と化学結合しており、シリカ系無機ポリマー膜表面に凹凸構造を有するシリカ系無機ポリマー膜で被覆されたステンレス箔、および、これを基板とするシリコン薄膜太陽電池が記載されているが、実施例は、ステンレス箔にテトラエトキシチタンと両末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサンもしくはポリメチルフェニルシロキサンと水の反応物であるゾルを塗布し加熱硬化させて得られたサブミクロンオーダの凹凸構造を有するオルガノシリコンポリマー膜で被覆されたステンレス箔のみであり、比較例は、ステンレス箔にテトラエトキシチタンとテトラメトキシシランと水の溶液を塗布し加熱硬化させて得られた絶縁膜で被覆されたステンレス箔である。
【0006】
特開2000−260570には、「耐熱温度が600℃以上の基板(例、アルミナ、ムライト)と、導電性電極層(例、不純物ドーピングシリコン)と、電極層形成材料の酸化物からなる絶縁層(例、酸化シリコン、窒化シリコン)と、発光層(例、ZnS、SrS:Ce)を形成した後、600℃以上で加熱処理を行って薄膜EL素子を製造する」旨記載されている。
特開2003−318119には、「基板(例、石英板)上に光重合性シランを塗布し、光をパターン照射して高次シランを形成し、550℃前後で熱処理してシリコン膜を形成してなる薄膜トランジスタは、液晶表示装置等に有用である」旨記載されている。
特開2001−011611には、「フィルム状基板(例、SUS304)に400℃以下で三酸化二マンガンをスパッタリングしてβ-二酸化マンガン薄膜を形成し、400℃でリチウムを蒸着し、さらにβ-二酸化マンガンを蒸着してLiMnとし、これをリチウム電池の正極にする」旨記載されている。
【0007】
しかし、ポリイミド製基板、金属箔上にポリイミド等の耐熱性樹脂薄膜を形成した基板、金属薄板にポリイミドフィルムをエポキシ樹脂接着剤により貼り合わせてなる耐熱性可撓性基板、ステンレススチールやアルミニウム等の金属薄板表面にポリイミド樹脂やアラミド樹脂等の耐熱性高分子の電気絶縁層を形成した基板、ステンレス箔にテトラエトキシチタンと両末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサンもしくはポリメチルフェニルシロキサンと水の反応物であるゾルを塗布し加熱硬化させて得られたサブミクロンオーダの凹凸構造を有するオルガノシリコンポリマー膜で被覆されたステンレス箔は、いずれも有機樹脂であるポリイミド樹脂やアラミド樹脂、オルガノシリコンポリマーを構成材料としているので、電極層、半導体層、発光層等の形成過程での高温により損傷、変質するという問題がある。
また、ステンレススチール、アルミニウム、アルミナ、ムライト等の金属基板や無機基板の表面は、一見平坦に見えるが、微細な凹凸や孔があるので、その表面に電極薄層、半導体薄層、発光薄層等を形成しようとすると、厚みが不均一になったり、被覆されない部分が生じかねないという問題がある。ポリイミド樹脂やアラミド樹脂等の耐熱性高分子基板も同様である。
【0008】
【特許文献1】特公平4−63551
【特許文献2】特開昭54−149489
【特許文献3】特開平10−286907
【特許文献4】特開2000−323732
【特許文献5】特開2003−179238
【特許文献6】特開2005−079405
【特許文献7】特開2000−260570
【特許文献8】特開2003−318119
【特許文献9】特開2001−011611
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは上記従来公知技術の問題点を解決すべく鋭意研究した結果、特定のハイドロジェンポリシロキサンを無機質基板上に被覆し硬化させてシリカ系ガラス薄層を形成すれば、薄層コーテイングが可能であり、該無機質基板表面に微細な凹凸や孔があっても平坦化することができ、硬化中や硬化後にクラックが発生せず、硬化物が該無機質基板表面に密着しており電気絶縁性と可撓性と優れた耐熱性とを有し、半導体層、発光層、正電極層等の形成時に高温に曝されても変質、劣化、変形することのないことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の目的は、電気絶縁性と可撓性と優れた耐熱性とするシリカ系ガラス薄層により表面が平坦化され、該シリカ系ガラス薄層にクラックがなく、該無機質基板表面に密着しており、半導体層、発光層、正電極層等の形成時に高温に曝されても変質、劣化、変形することのない無機質基板を製造する方法、かかる特性を有する無機質基板、無機質基板上に上記特性を有するシリカ系ガラス薄層を形成するためのコーテイング剤、および、信頼性と耐久性に優れ薄膜化が可能な半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、
〔1〕 (A)重量平均分子量が1500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなる環状ジハイドロジェンポリシロキサン、 (B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であるハイドロジェンポリシロキサン、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して流動性を高めるか有機溶剤で希釈して、無機質基板上に被覆し、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して該有機溶剤を揮発させ、ついで、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B) 、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を硬化させることを特徴とする、鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する無機質基板の製造方法。
〔2〕硬化手段が、酸素ガス含有雰囲気下で150℃以上の温度での加熱、不活性ガスもしくは真空中での200℃以上の温度での加熱、高エネルギー線照射、オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露であることを特徴とする、〔1〕記載の無機質基板の製造方法。
〔3〕無機質基板上に、(A)重量平均分子量が1500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなる環状ジハイドロジェンポリシロキサン、 (B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であるハイドロジェンポリシロキサン、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有することを特徴とする、シリカ系ガラス薄層付き無機質基板。
〔4〕無機質基板が金属基板、セラミック基板または非光学ガラス基板であることを特徴とする、〔3〕記載のシリカ系ガラス薄層付き無機質基板。
〔5〕金属基板が可撓性金属薄板であることを特徴とする、〔4〕記載のシリカ系ガラス薄層付き無機質基板。
〔6〕可撓性金属薄板がステンレススチール薄板であることを特徴とする、〔5〕記載のシリカ系ガラス薄層付き無機質基板。
〔7〕 (A)重量平均分子量が1500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなる環状ジハイドロジェンポリシロキサン、(B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であるハイドロジェンポリシロキサン、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物、またはこれらの有機溶剤溶液であることを特徴とする、無機質基板のコーテイング剤。
〔8〕〔3〕記載のシリカ系ガラス薄層付き無機質基板の当該シリカ系ガラス薄層上に少なくとも半導体層が形成されていることを特徴とする半導体装置。
〔9〕無機質基板が可撓性金属薄板であり、半導体層が薄層であることを特徴とする〔8〕記載の半導体装置。
〔10〕可撓性金属薄板がステンレススチール薄板であり、半導体薄層がシリコン半導体薄層または化合物半導体薄層であることを特徴とする〔9〕記載の半導体装置。
〔11〕半導体装置が薄膜太陽電池である〔10〕記載の半導体装置。
;により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によると、電気絶縁性と可撓性と優れた耐熱性を有し鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層により無機質基板表面が平坦化され、該シリカ系ガラス薄層はクラックなく該無機質基板表面に密着しており、半導体層、発光層、正電極層等の形成時に高温に曝されても変質、劣化、変形することのないシリカ系ガラス薄層付き無機質基板を効率、精度よく製造することができる。
本発明のシリカ系ガラス薄層付き無機質基板は、電気絶縁性と可撓性と優れた耐熱性を有し鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層により無機質基板表面が平坦化され、該シリカ系ガラス薄層はクラックなく該無機質基板表面に密着しており、半導体層、発光層、正電極層等の形成時に高温に曝されても変質、劣化、変形することがない。
本発明のコーテイング剤は、無機質基板上に上記特性を有するシリカ系ガラス薄層を効率、精度よく形成することができる。
本発明の半導体装置は、無機質基板上の該シリカ系ガラス薄層上に少なくとも半導体層が形成されているので信頼性と耐久性に優れ、薄膜化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する無機質基板の製造方法は、 (A)重量平均分子量が1500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなる環状ジハイドロジェンポリシロキサン、(B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であるハイドロジェンポリシロキサン、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して流動性を高めるか有機溶剤で希釈し、無機質基板上に被覆し、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して該有機溶剤を揮発させ、ついで、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A) 、ハイドロジェンポリシロキサン(B) 、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を硬化させることを特徴とする。
【0013】
本発明の製造方法で使用する(A)重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなることを特徴とする環状ジハイドロジェンポリシロキサンは、有機溶媒に溶解しなくても薄層コーテイングが可能であり、コーテイング層表面が平滑であり、酸素雰囲気下での加熱等により硬化させたときにクラックがはいらない高硬度のシリカ系ガラス層を形成するので、無機質基板上にシリカ系ガラス膜を形成するのに有用である。なお、本発明における無機質基板は、光学用でない無機質基板、すなわち、非光学用無機質基板を意味している。非光学用無機質基板に限定するのは、石英、蛍石等の透明な光学部材上に鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する光学基板の製造方法、および、かくして得られたシリカ系ガラス薄層付き光学基板については、既に特許出願済み(特願2005−228774)であるからである。
【0014】
この環状ジハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量は、製造の容易性の点で上限値は100,000が好ましい。なお、重量平均分子量は試料を2重量%のクロロホルム溶液にしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(略称GPC)により測定して標準ポリスチレン換算して求めるものである。
本発明で使用する環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)は、コーテイング作業上熱硬化開始温度120℃未満の温度で粘度が10,000mPa・s以下、特には5,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0015】
この環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)は、非極性有機溶媒と水の混合物中でジハイドロジェンジクロロシラン(H2SiCl)を加水分解縮合させることにより容易に製造することができる。
ここで使用される非極性有機溶媒として芳香族炭化水素系有機溶媒と脂肪族炭化水素系有機溶媒が例示され、芳香族炭化水素系有機溶媒としてトルエン、キシレンが例示され、脂肪族炭化水素系有機溶媒としてヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンが例示される。
加水分解縮合反応は、非極性有機溶媒と水を撹拌しつつ、ジハイドロジェンジクロロシランの非極性有機溶媒溶液をじょじょに滴下することが好ましい。滴下は、ジハイドロジェンジクロロシランの揮発を防止するために5℃以下で行うことが好ましい。
非極性有機溶媒相と水性相の混合物中でジハイドロジェンジクロロシランを加水分解縮合させた後、生成した環状ジハイドロジェンポリシロキサンを含有する非極性有機溶媒層を水洗し、乾燥し、非極性有機溶媒および揮発性環状ジハイドロジェンポリシロキサンを留去することが好ましい。
【0016】
滴下終了後、静置すると非極性有機溶媒層と水性層に分離するので、非極性有機溶媒層を分取し、水洗する。この水洗は、中性になるまで、あるいは、塩素イオンが検出されなくなるまで行うことが好ましい。ある程度水洗し、弱アルカリ、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムにより中和し、生成した塩を水洗により除去してもよい。水洗した非極性有機溶媒層は、乾燥し、非極性有機溶媒および揮発性環状ジハイドロジェンポリシロキサンを留去する。水洗した非極性有機溶媒層を乾燥する方法は、環状ジハイドロジェンポリシロキサンを変質させなければ特に限定されないが、粉末状または粒状の脱水剤、例えば、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブを投入して撹拌し当該脱水剤をろ別するとよい。非極性有機溶媒および環状ジハイドロジェンポリシロキサンを変質させなければ特に限定されず、減圧下での加熱、加熱下で乾燥した窒素ガスの吹き込みが例示される。ここで揮発性環状ジハイドロジェンポリシロキサンは、3量体〜15量体位のものである。生成物が環状ジハイドロジェンポリシロキサンであることは、FT-IRにより分析したときにシラノール基の吸収不存在により首肯される。
【0017】
本発明の製造方法で使用する(B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃以下で液状であることを特徴とするハイドロジェンポリシロキサンは、有機溶媒に溶解しなくても薄膜コーテイングが可能であり、コーテイング膜表面が平滑であり、酸素雰囲気下での加熱等により硬化させたときにクラックがはいらない高硬度のシリカ系ガラス薄膜を形成するので、無機質基板上にシリカ系ガラス薄層を形成するのに有用である。このハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量は、製造の容易性の点で上限値は100,000が好ましい。なお、重量平均分子量は試料を2重量%のクロロホルム溶液にしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(略称GPC)により測定して標準ポリスチレン換算して求めるものである。
このハイドロジェンポリシロキサンは、120℃未満の温度で粘度が10,000mPa・s以下であることが望ましい。
【0018】
シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)において、z=0の場合は、シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y(式中、x,yはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0<y≦0.88,x+y=1である)で示される。ここで、xが小さいと分岐度が大きくなり硬化時にクラックが入りやすくなるので0.15≦x<1.0,0<y≦0.85が好ましい。
y=0の場合は、シロキサン単位式[H2SiO2/2x[SiO4/2]z(式中、x,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0<z≦0.30,x+z=1である)で示される。ここで、xが小さいと分岐度が大きくなり硬化時にクラックが入りやすくなるので0.15≦x<1.0が好ましく、zが大きいと分岐度が大きくなり硬化時にクラックが入りやすくなるので0<z≦0.15であることが好ましい。
本発明の上記ハイドロジェンポリシロキサン(B)は、分子中に上記シロキサン単位式をx,y,zのモル分率で平均的に有するものであり、上記シロキサン単位の順に配列しているということではない。各シロキサン単位が分子中にランダムに配置している場合、ある程度のブロック状部分を有するが残余がランダムに配置している場合等があり得る。必ず[H2SiO2/2]単位を有するので直鎖状ブロックを有することがあり得るが、必ず[HSiO3/2 ]単位および/または[SiO4/2]を有するので、少なくとも分岐状の分子構造となり、網状やかご状の分子構造も取り得るので、いわばレジンである。[SiO4/2] 単位を有するとさらに分岐度が増大する。
【0019】
上記ハイドロジェンポリシロキサン(B)は、120℃未満で液状であるが、薄膜コーテイングしやすくするためには、粘度が1〜10,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。分子中に[H2SiO2/2]単位量が多いほど、常温で液状になりやすく粘度が小さくなり、分子中に[HSiO3/2 ]単位量および[SiO4/2]単位量が多いほど常温で粘度が大きくなり固体状になることあり得るが、常温より高く120℃未満で固体状にはならない。ハイドロジェンポリシロキサンは120℃未満ではそのケイ素原子結合水素原子が分解して脱離しないので、固体状であっても加熱して溶融させることができる
【0020】
上記ハイドロジェンポリシロキサン(B)は、非極性有機溶媒、塩酸、イオン系界面活性剤の混合物中で、(a) ジハイドロジェンジクロロシラン(H2SiCl), (b) ハイドロジェントリクロロシラン(HSiCl3),(c)テトラアルコキシシラン(Si(OR))またはテトラクロロシラン(SiCl)を0.12≦(a)<1.0,0≦(b)≦0.88,0≦(c)≦0.30,(a) と(b)が同時に0になることがなく、 (a)+(b)+(c)=1であるようなモル比で共加水分解縮合させ、生成したハイドロジェンポリシロキサンを含有する非極性有機溶媒層を水洗し、乾燥し、非極性有機溶媒および揮発性ハイドロジェンポリシロキサンを留去することにより容易に製造することがきる。
ここで、Rはアルキル基であり、エチル基が好ましくメチル基やプロピル基であってもよい。
【0021】
(B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y(式中、x,yはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0<y≦0.88,x+y=1である)で示されるハイドロジェンポリシロキサンは、(a) ジハイドロジェンジクロロシラン(H2SiCl)と (b) ハイドロジェントリクロロシラン(HSiCl3)を共加水分解することにより、シロキサン単位式[H2SiO2/2x[SiO4/2]z(式中、x,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0<z≦0.30,x+z=1である)で示されるハイドロジェンポリシロキサンは、(a) ジハイドロジェンジクロロシラン(H2SiCl)と(c)テトラアルコキシシラン(Si(OR))またはテトラクロロシラン(SiCl)を共加水分解することにより製造することができる。
【0022】
塩酸は、濃塩酸が好ましく、より好ましくは塩化水素含有量が15〜37重量%の塩酸である。塩酸に含まれている水が(a) ジハイドロジェンジクロロシラン(H2SiCl), (b) ハイドロジェントリクロロシラン(HSiCl3),(c)テトラアルコキシシラン(Si(OR))またはテトラクロロシラン(SiCl)の加水分解に供されるので、塩酸は(a) ジハイドロジェンジクロロシラン(H2SiCl), (b) ハイドロジェントリクロロシラン(HSiCl3),(c)テトラアルコキシシラン(Si(OR))またはテトラクロロシラン(SiCl)の加水分解に必要な等モル以上の量を使用する。
【0023】
イオン系界面活性剤は、ハイドロジェントリクロロシランの急激な加水分解縮合および単独縮合によるゲル化を抑制し、ジハイドロジェンジクロロシランとの共加水分解縮合を促進する。イオン系界面活性剤には、アニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤と両性界面活性剤があるが、アニオン系界面活性剤として、脂肪族炭化水素スルホン酸アルカリ金属塩、例えば、炭素原子数6〜20のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩、炭素原子数6〜20のアルケンスルホン酸アルカリ金属塩;アルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩;脂肪族炭化水素スルホン酸、例えば、炭素原子数6〜20のアルキルスルホン酸、炭素原子数6〜20のアルケンスルホン酸;アルキルベンゼンスルホン酸;アルキル硫酸エステルアルカリ金属塩;高級脂肪酸アルカリ金属塩が例示される。ここでアルカリ金属はナトリウムとカリウムが好ましい。カチオン系界面活性剤は、第4級アンモニウム塩、例えばテトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド;アルキルアミン塩酸塩,例えばドデシルアミン塩酸塩が例示される。イオン系界面活性剤の使用量は、塩酸中の水の0.01〜50重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0重量%である。
【0024】
加水分解縮合反応は、非極性有機溶媒、塩酸、イオン系界面活性剤の混合物中に、ジハイドロジェンジクロロシランとハイドロジェントリクロロシランを含有する非極性有機溶媒溶液、あるいは、ジハイドロジェンジクロロシランとハイドロジェントリクロロシランとテトラアルコキシシランもしくはテトラクロロシランを含有する非極性有機溶媒溶液を滴下することが好ましい。滴下中撹拌を継続することが好ましい。
ジハイドロジェンジクロロシラン、ハイドロジェントリクロロシラン、テトラアルコキシシランもしくはテトラクロロシランの揮発を防止するために、加水分解縮合反応は5℃以下で行うことが好ましい。
【0025】
本発明で使用する(B)シロキサン単位式:[H2 SiO2/2[HSiO3/2(式中、v,wはモル分率を表わし、0.12≦v<1.0,0<w≦0.88, v+w=1.0)で示されるハイドロジェンポリシロキサンは、非極性有機溶媒と水の混合物中で、ジハイドロジェンジクロロシランを加水分解縮合させ、生成したジハイドロジェンポリシロキサンを含有する非極性有機溶媒と無機酸とプロトン性極性溶媒を混合することによりジハイドロジェンポリシロキサンを分岐させることによっても容易に製造することができる。
この反応に使用する無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸が例示されるが、これらのうち硫酸がもっとも好ましい。プロトン性極性溶媒として、アルコールと脂肪族カルボン酸が例示されるが、炭素原子数が大きすぎると常温で液状でなくなりがちであるので、炭素原子数10以下のアルコールおよび炭素原子数5以下の脂肪族カルボン酸が好ましく、特にはエチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコール、酢酸、プロピオン酸が好ましい。
【0026】
非極性有機溶媒と水の混合物中でジハイドロジェンジクロロシランを加水分解縮合させる反応は、上述したとおりである。生成したジハイドロジェンポリシロキサンを含有する非極性有機溶媒と無機酸とプロトン性極性溶媒の混合は、常温で3〜5時間位が好ましい。
反応終了後、生成したジハイドロジェンポリシロキサンを含有する非極性有機溶媒層を分取し、水洗し、乾燥し、非極性有機溶媒および揮発性ハイドロジェンポリシロキサンを留去する。分取、水洗、乾燥、非極性有機溶媒および揮発性ハイドロジェンポリシロキサンの留去については、前述したとおりである。プロトン性極性溶媒は、非極性有機溶媒および揮発性ハイドロジェンポリシロキサンの留去と同時に行うとよい。
【0027】
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物が高粘度である場合は有機溶媒により稀釈してからコーテイングに供することが好ましく、ハイドロジェンポリシロキサン(B)が常温で固形状である場合は有機溶媒により溶液化してからコーテイングに供することが好ましい。
特に、膜厚がμmオーダのシリカ系ガラス薄膜を形成するときは、有機溶媒稀釈が好ましい。有機溶媒として、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、デカン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン;ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル;酢酸メチル、γ−ブチロラクトン、酢酸n−プロピル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエステル、シュウ酸ジエチル、乳酸メチル、乳酸エチル等エステル系有機溶媒が例示される。これらを単独または2種あるいは3種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0028】
有機溶媒希釈液または有機溶媒溶液中の環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の濃度は、これらを低粘度化または溶解して膜厚がμmオーダのシリカ系ガラス薄膜を形成するのに十分な濃度であればよく、例えば5〜90重量%、好ましくは10〜50重量%である。
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を有機溶媒により稀釈してから無機質基板にコーテイングした場合、また、固形状のハイドロジェンポリシロキサン(B)有機溶媒により溶液化してから無機質基板にコーテイングした場合は、120℃未満の硬化しない温度に保持して該有機溶剤を揮発させてから、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を硬化させることが好ましい。なお、有機溶媒により希釈または溶解させる環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物中の環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の配合比率は特に限定されず、99:1〜1:99、90:10〜10:90が例示される。
【0029】
本発明の無機質基板のコーテイング剤は、(A)重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなることを特徴とする環状ジハイドロジェンポリシロキサン自体、(B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であることを特徴とするハイドロジェンポリシロキサン自体、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)を有機溶剤で希釈して得られた環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)の溶液、ハイドロジェンポリシロキサン(B)を有機溶剤で希釈または有機溶剤に溶解して得られたハイドロジェンポリシロキサン(B)の溶液、および、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を有機溶剤で希釈または有機溶剤に溶解して得られた環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の溶液から選択される。環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)が常温で粘稠な液状である場合はその溶液が好ましく、ハイドロジェンポリシロキサン(B)が常温で粘稠な液状または固形状である場合はその溶液が好ましい。
そのための有機溶媒および溶液中の環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)やハイドロジェンポリシロキサン(B)の濃度は前述したとおりである。環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物中の環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の配合比率は特に限定されず、99:1〜1:99、90:10〜10:90が例示される。
【0030】
(A)重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなることを特徴とする環状ジハイドロジェンポリシロキサン、(B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であることを特徴とするハイドロジェンポリシロキサン、および、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物は、酸素ガス含有雰囲気下150℃以上の温度に加熱すると、酸化反応によってケイ素原子に直結した水素が水酸基になり、ケイ素原子結合水素原子と脱水縮合反応を起こして架橋する。すなわち、SiOSi結合を形成して架橋し、硬化する。この反応はオゾンでも誘起される反応であり、大気中の酸素ガスによる反応誘起よりも効率よく起きる。純不活性ガス中もしくは真空中で200℃以上の温度で加熱すると分子が再分配反応を起こして架橋し、硬化する。湿性アンモニアガス中では、ケイ素直結水素原子が活性化され、空気中の水分と容易に反応して水酸基になり、ケイ素原子結合水素原子と脱水縮合反応を起こし架橋し、硬化する。その結果、シリカ(二酸化ケイ素)が生成する。もっとも、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)の分子中およびハイドロジェンポリシロキサン(B)の分子中のすべてのケイ素原子結合水素原子が消費される必要はなく、その一部、例えば60モル%以下が残留していてもよい。ケイ素原子結合水素原子の消費度合いが増すにしたがって、すなわち、SiOSi結合を形成するに従ってシリカ系ガラスの硬度が大きくなり、鉛筆硬度が2H〜9H、好ましくは4H〜9Hとなり、より好ましくは7H〜9Hとなる。
【0031】
酸素ガス含有雰囲気の代表例は、空気である。空気より酸素ガス濃度の小さい酸素ガス含有窒素ガスやヘリウムガス、アルゴンガスであってもよい。加熱する温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは200〜500℃である。
加熱時間は200℃では10時間以上が好ましく、それより高温になるほど短くてよい。純不活性ガス中や真空中で200℃以上の温度で加熱すると分子の再分配反応が起こって架橋し、硬化する。加熱する温度は、200℃以上であり、好ましくは300〜500℃である。加熱時間は200℃では10時間以上が好ましく、それより高温になるほど短くてよい。
【0032】
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、および、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物は、酸素ガス含有雰囲気下での加熱の代わりに、オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露によっても硬化する。オゾンは、純粋のオゾン、オゾンを含有する空気、水蒸気を含有するオゾン、オゾンを含有する窒素ガスが例示され、これらのいずれでもよい。亜酸化窒素ガスは、純粋の亜酸化窒素ガス、亜酸化窒素含有空気、亜酸化窒素含有窒素ガスが例示され、これらのいずれでもよい。湿性アンモニアガスは、アンモニアを含有する空気、水酸化アンモニウムガス、アンモニアと水蒸気を含有する窒素ガスが例示され、これらのいずれでもよい。オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露は、加熱下で行ってもよい。
【0033】
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、および、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物は、高エネルギー線照射によっても硬化する。その代表例は電子線とX線である。電子線の照射量は、好ましくは3MGy以上である。
【0034】
(A)重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなることを特徴とする環状ジハイドロジェンポリシロキサン、(B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であることを特徴とするハイドロジェンポリシロキサン、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して流動性を高めてから、無機質基板上に被覆し、ついで、硬化させることにより、具体的には、酸素ガス含有雰囲気下で120℃以上の温度での加熱、高エネルギー線照射、オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露により硬化させることにより、平坦でありクラックがなく、耐熱性、電気絶縁性、可撓性に優れ、鉛筆高度が2H〜9H、好ましくは4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する無機質基板を製造することができる。
【0035】
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物は、無機添加剤と併用することにより薄膜の物性(例えば、強度、熱膨張率)や耐久性を改善させることができる。無機添加物として無機微細球状粒子、無機微細チューブ、無機微細板があり、代表例としてコロイダルシリカ、コロイダルアルミナがある。
コロイダルシリカとの併用が好ましく、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物とコロイダルシリカの好ましい配合比率は、前者100重量部に対して後者1〜100重量部である。コロイダルシリカは粉末状であるので、沸点200℃未満の有機溶媒中に分散したものを使用することが好ましい。環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物は、この有機溶媒との合計量を基準として50重量%以下であることが好ましい。
【0036】
シリカ系ガラス薄層を形成するための無機質基板は、350℃以上、好ましくは500℃以上、さらに好ましくは700℃以上の耐熱性を有し、表面加工と使用時の応力、変位に耐えることができる機械的強度と耐久性を有することが必要である。その代表例は、金属板、セラミック板、非光学ガラス板および半導体チップである。金属板、セラミック板、非光学ガラス板のような無機質基板は、厚みがあって可撓性を有しないもの、薄くて可撓性を有するもののいずれでもよいが、薄膜太陽電池、反射型液晶表示装置用薄膜トランジスター(TFT)、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子ないし装置等の薄膜半導体素子ないし装置用には、薄くて可撓性を有するものである必要がある。機械的強度の点で、金属薄板、金属箔が好ましく、金属の具体例としては、金、銀、銅、ニッケル、チタン、チタン合金、アルミニウム、ジュラルミン、スチール、特には、ステンレススチール、モリブデン鋼が例示される。ステンレススチール箔として、フェライト系ステンレススチール箔、マルテンサイトステンレススチール箔、オーステナイトステンレススチール箔が例示される。また、透明性の点でガラス薄板が好ましい。
【0037】
無機質基板としての薄板は、厚みが10μm以上1mm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましく、かかる薄板の厚みは薄いほど高屈曲性の可撓性基板が得られる。しかし、10μm未満では、撓みが大きくハンドリング性に欠けるという不都合があり、また、1mm、特には100μmを超えると、可撓性が小さくなり、薄膜太陽電池等の薄膜半導体装置の基板として不適になる。
【0038】
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の無機質基板へのコーテイング方法は、特に限定されず、スピンコーテイング、ブレードコーテイング、スプレー、ローラコーテイング、浸漬コーテイングが例示される。環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物が硬化して形成されるシリカ系ガラス薄層の厚みは、通常0.1〜10μmであり、可撓性がさほど要求されない場合は10μmより厚くてもよく、極端な場合は1mm位まで種々の厚みをとり得る。
シリカ系ガラス薄層は、多くの場合無機質基板の片面に形成されるが、無機質基板の両面に形成してもよい。無機質基板の両面にシリカ系ガラス薄層が存在するに形成するには、その片面に環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物をスピンコーテイング、ブレードコーテイング、スプレーまたはローラコーテイングし、加熱して硬化させ、ついで、反対面に前記ハイドロジェンポリシロキサンをスピンコーテイング、ブレードコーテイング、スプレーまたはローラコーテイングし、加熱して硬化させればよい。あるいは、無機質基板を前記ハイドロジェンポリシロキサン中に浸漬して引き上げ、加熱して硬化させればよい。あるいは、無機質基板の両面に前記ハイドロジェンポリシロキサンを噴霧し、加熱して硬化させればよい。
【0039】
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9H、好ましくは4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する無機質基板は、該シリカ系ガラス薄層により平坦化されており、平坦さが10nm以下であり、該シリカ系ガラス薄層は優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、機械的強度、耐薬品性等を併せ持つので、太陽電池、反射型液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置等の製造に使用される基板として有用である。無機質基板が可撓性金属薄板である場合は、薄膜太陽電池、反射型液晶表示装置用薄膜トランジスター(TFT)、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子ないし装置、薄膜型リチウム電池の電極用基板として有用である。無機質基板がガラス薄板である場合は、薄膜太陽電池、透過型液晶表示装置用薄膜トランジスター(TFT)、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子ないし装置等の製造に使用される無機質基板としてとして有用である。
【0040】
本発明の半導体装置、特には薄膜半導体装置は、例えば、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)の硬化物、ハイドロジェンポリシロキサン(B)の硬化物、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9H、好ましくは4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する可撓性金属薄板の表面に第1電極薄膜を形成し、該第1電極薄膜上にシリコン半導体薄膜を形成し、ついで該シリコン半導体薄膜上に第2電極薄膜を形成して薄膜太陽電池を製造することができる。あるいは、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)の硬化物、ハイドロジェンポリシロキサン(B)の硬化物、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する可撓性金属薄板の表面に第1電極薄膜を形成し、該第1電極薄膜上に化合物半導体薄膜を形成し、ついで化合物半導体薄膜を熱処理して薄膜太陽電池を製造することができる。
【0041】
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)の硬化物、ハイドロジェンポリシロキサン(B)の硬化物、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9H、好ましくは4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する可撓性金属薄板の表面にアモルファスシリコン半導体薄膜を形成し熱処理して薄膜トランジスターを製造することができる。
【0042】
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)の硬化物、ハイドロジェンポリシロキサン(B)の硬化物、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9H、好ましくは4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する可撓性金属薄板の表面にシリコン含有導電性電極層を形成し、該シリコン含有導電性電極層上に電気絶縁層を形成し、該電気絶縁層上に発光層を形成し、ついで熱処理等して薄膜エレクトロルミネッセンス(EL)素子を製造することができる。
【0043】
さらには、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)の硬化物、ハイドロジェンポリシロキサン(B)の硬化物、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9H、好ましくは4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系ガラス膜を有する可撓性金属薄板の表面に酸化マンガン薄膜、LiMn等の正電極層を形成してリチウム電池の正極材料を製造することができる。
これらの製造時には、高温での蒸着、プラズマCVD、スパッタリング、高温熱処理等が行われるので、これら可撓性金属薄板がきわめて高温、例えば、400℃〜700℃に曝されるが、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9H、好ましくは4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有するので変質、劣化、変形することがない。
【0044】
薄膜半導体装置の代表例である薄膜太陽電池は、一般に、金属薄板にまずモリブテン等の金属層を被着させた後、フォトエッチング等の手法により薄膜電極層を形成し、ついで半導体層を被着させた後、フォトエッチングやレーザースクライブ等の手法により薄膜半導体層を形成する。ついで該薄膜半導体層上に透明導電膜を被着させた後、フォトエッチング等の手法により薄膜電極層を形成する等の工程を経て製造される。このため、金属薄板は、耐薬品性、耐腐食性等が要求される。薄膜太陽電池は、可撓性が必要な用途に使用されるものであるため、金属薄板は、可撓性が必要であり、特には、熱伝導性、耐薬品性、耐腐食性の点より、ステンレススチール、モリブデン鋼、アルミナ等が適するが、前記特性を有する他、入手可能性、経済性等の観点より、特にはステンレススチール薄板、すなわち、ステンレススチール箔が好ましい。ステンレススチール箔として、フェライト系ステンレススチール箔、マルテンサイトステンレススチール箔、オールステナイトステンレススチール箔が例示される。
そこで、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)の硬化物、ハイドロジェンポリシロキサン(B) 、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9H、好ましくは4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有するステンレススチール箔が基板として好適である。
【0045】
環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)の硬化物、ハイドロジェンポリシロキサン(B)の硬化物、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9H、好ましくは4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層上に形成される金属電極の金属の種類には特に制約はなく、モリブテン、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、錫等、これら金属の合金が例示される。
この金属電極上に形成する半導体層用の半導体として、多結晶シリコン半導体、単結晶シリコン半導体、アモルファスシリコン半導体、化合物半導体が例示され、化合物半導体としては、CIS、CdTe、GICSが例示される。これらの半導体層上に形成する透明電極としては酸化インジウム−スズ合金、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛が例示される。この透明電極上にさらに必要に応じて保護層を形成するが、この保護層としてフッ素樹脂、透明ポリイミドなどの光透過率が高く、かつ耐候性にすぐれた高分子材料が好適である。
【0046】
かくして得られた薄膜太陽電池は、その基板がフレキシブルであり、折り曲げ可能であり、製造時あるいは取り扱い時に割れることがなく、シリカ系ガラス薄層にクラックが生じたり、ステンレススチール箔から剥がれたりすることがないため、生産性、ハンドリング性、耐久性等が優れている。薄膜太陽電池だけでなく、反射型液晶表示装置用薄膜トランジスター(TFT)、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子ないし装置、薄膜型リチウム電池等の薄膜半導体装置についても同様である。
【実施例】
【0047】
以下に実施例と比較例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
実施例と比較例中、溶解、コーテイング、加熱等の操作および測定は、特に断らない限り実験室雰囲気中で行った。
【0048】
参考例中、諸特性は下記の条件により測定した。
環状ジハイドロジェンポリシロキサンとハイドロジェンポリシロキサンレジンの粘度は、TOKIMEC製のE型回転粘度計により25℃で測定した。
環状ジハイドロジェンポリシロキサンとハイドロジェンポリシロキサンレジンの重量平均分子量と分子量分布は、ゲルパーミエーション(GPC)により測定した。装置として、東ソー株式会社製のHLC-8020 ゲルパーミエーション(GPC)に屈折検出器と東ソー株式会社製のTSKgel GMHXL-L カラム2個を取り付けたものを使用した。試料は2重量%クロロホルム溶液として測定に供した。検量線は分子量既知の標準ポリスチレンを用いて作成した。重量平均分子量は標準ポリスチレン換算して求めた。
環状ジハイドロジェンポリシロキサンとハイドロジェンポリシロキサンレジの29Si−NMRと1H−NMRは、Bruker ACP-300 Spectrometerにより測定した。
【0049】
シリカ系ガラス薄層、ステンレススチール薄板および非光学ガラス薄板の表面粗さは、 AFM DI 5000 Atomic Force Microscope (略称AFM)を用いて25μmスキャンで観測した。
シリカ系ガラス薄膜の厚さは、その切断面をFESEM- JEOL JSM-6335F Field Emission Scanning Electron Microscopeにより観測して求めた。
シリカ系ガラス薄膜の鉛筆硬度(鉛筆ひっかき値)は、その表面をJIS K5400の8.4.2に従い各種硬度の鉛筆でひっかき、傷が発生しない最大硬度の鉛筆の硬度で示した。
シリカ系ガラス薄膜のクラックは、KEYENCE VH-7000電子顕微鏡により観察した。
【0050】
[参考例1] ハイドロジェンポリシロキサンレジンA〜Dの調製
撹拌機と温度計と窒素ガス導入口と滴下ロート付き4口ガラスフラスコに、オクチルスルホン酸ナトリウムを1gとトルエン700mlと濃塩酸200mlを仕込み、窒素ガスを流しつつ零下5℃で攪拌しながら、ドライアイスとイソプロパノールで5℃以下に冷却したジハイドロジェンジクロロシランとハイドロジェントリクロロシランのトルエン混合溶液(ジハイドロジェンジクロロシランとハイドロジェントリクロロシランのモル比=12/98(A)、15/85(B)、25/75(C)、50/50(D)200mlを滴下ロートから60分間かけて滴下した。滴下終了後、じょじょに室温に戻し、更に室温で1時間攪拌した後、分液ロートで有機層を分取し、中性になるまで水洗後、無水硫酸マグネシウム粉末を投入して乾燥した。無水硫酸マグネシウム粉末を濾別し、ロータリエバポレータによりトルエンを除去し、残渣を真空中で乾燥した。乾燥した各残渣(ハイドロジェンポリシロキサンレジン)は無色透明の液体であり、収率は80〜90%であり、分子量分布は複数のピークを有していた。その重量平均分子量(Mw)、粘度(mPa・s)および29Si‐NMRのHSiO2/2単位に由来する−50.1ppmのシグナルとHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値、または1H‐NMRのH2SiO2/2単位に由来する4.71ppmのシグナルとHSiO3/2単位に由来する4.37ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式を表1に示した。
【0051】
[参考例2] ハイドロジェンポリシロキサンレジンEの調製
撹拌機と温度計と窒素ガス導入口と滴下ロート付き4口ガラスフラスコに、オクチルスルホン酸ナトリウムト1.0gとトルエン200mlと濃塩酸200mlを仕込み、窒素ガスを流しつつ5℃〜−5℃で攪拌しながら、ドライアイスとイソプロパノールで5℃以下に冷却したジハイドロジェンジクロロシラン4.7gとハイドロジェントリクロロシラン14.2gとテトラエトキシシラン3.2gの混合液(ジハイドロジェンジクロロシランとハイドロジェントリクロロシランとテトラエトキシシランのモル比=0.28:0.62:0.10)を滴下ロートから60分間かけて滴下した。滴下終了後、じょじょに室温に戻し、更に室温で1時間攪拌した後、分液ロートで有機層を分取し、中性になるまで水洗後、無水硫酸マグネシウム粉末を投入して乾燥した。無水硫酸マグネシウム粉末を濾別し、ロータリエバポレータにより加熱減圧下でトルエンを除去し、残渣を真空中で乾燥した。乾燥した残渣(ハイドロジェンポリシロキサンレジンE)は無色透明の液体であり、収率は65%であり、分子量分布は複数のピークを有していた。その粘度は25,000mPa・sであり、重量平均分子量(Mw)は27.5X103であり、その29Si‐NMRのHSiO2/2単位に由来する−50.1ppmのシグナルとHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO4/2単位に由来する−112.4ppmのシグナル、または1H‐NMRのH2SiO2/2単位に由来する4.71ppmのシグナルとHSiO3/2単位に由来する4.37ppmのシグナルとの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO)0.28(HSiO1.5)0.62(SiO4/20.10であることが判明した。このハイドロジェンポリシロキサンレジンEの平均シロキサン単位式と重量平均分子量と粘度を表1に示した。
【0052】
[参考例3] 環状ジハイドロジェンポリシロキサンFの調製
撹拌機と温度計と窒素ガス導入口と滴下ロート付き4口ガラスフラスコにオクチルスルホン酸ナトリウムト0.1gとトルエン100mlと濃塩酸50mlを仕込み、窒素ガスを流しつつ5℃〜−5℃で攪拌しながら、ドライアイスとイソプロパノールで5℃以下に冷却したジハイドロジェンジクロロシラン10mlとトルエン10mlの混合液を30分間にわたり滴下した。反応混合液を更に30分間攪拌した後、じょじょに反応温度を上げ室温に戻した。更に室温で30分間攪拌した後、トルエン層を分離し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム粉末を投入して、乾燥した後無水硫酸ナトリウム粉末をろ別し、透明なトルエン溶液を得た。そのトルエン溶液を1.0x10-2mmHgの減圧度でストリッピングしてトルエンと揮発性環状ジハイドロジェンポリシロキサンを留去して無色透明の液状物を得た。その液状物をクロロホルム溶媒としてGPC測定により標準ポリスチレン換算分子量を求めたところ重量平均分子量は5.0x10であった。この液状物の粘度は800mPa・sであった。この液状物は、29Si‐NMRではHSiO2/2単位に由来する−49.05ppmのシグナルのみ観測され、1H‐NMRではHSiO2/2単位に由来する4.77ppmのシグナルのみ観測された。また、FT−IRの測定でもシラノール基が観測されなかった。これらの測定結果は、加水分解縮合物生成物が環状ジハイドロジェンポリシロキサンであることを示している。この環状ジハイドロジェンポリシロキサンFの平均シロキサン単位式と重量平均分子量と粘度を表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
[実施例1]
表1のハイドロジェンポリシロキサンレジンAを、モレキュラシーブで脱水したジブチルエーテルに、該樹脂濃度が20重量%になるように溶解し、その溶液を厚さ24μmであり表面の粗さRmaxが56.7nmのステンレススチール薄板、すなわち、ステンレススチール箔(150mm角の切片)にスピンコーターでコーテイング後、200℃で2時間加熱し、更に600℃で1時間加熱することにより、片面に厚さ0.8μmのシリカ系ガラス薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板を得た。シリカ系ガラス薄層の表面の粗さをAFMで観測したところRmaxが6.1nm であった。FT−IRの観測により、波数2220cm−1のSiHに由来する吸収ピークが観測されなかった。シリカ系ガラス薄膜は鉛筆硬度が9Hであり、電気絶縁性であった。このシリカ系ガラス薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板の両端を指で摘まんで、繰り返し180度屈曲してもシリカ系ガラス薄層に剥がれやクラックが生じなかった。
シリカ系ガラス薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板はさらに空気中または窒素ガス中で600℃で1時間加熱してもシリカ系ガラス薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックが観察されなかった。
【0055】
[実施例2]
表1のハイドロジェンポリシロキサンレジンBを、モレキュラシーブで脱水したジブチルエーテルに、樹脂濃度が10重量%に成るように溶解し、その溶液を厚さ75μmであり表面の粗さRmaxが30.6nmの非光学ガラス薄板にディップコートし、200℃で2時間加熱し、ついで450℃で2時間加熱することにより、両面に厚さ1.5μmのシリカ系ガラス薄層を有する可撓性ガラス薄板を得た。シリカ系ガラス薄層表面の粗さをAFMで観測したところRmaxが1.0nmであった。シリカ系ガラス薄層の鉛筆硬度は9Hであり、電気絶縁性であった。この可撓性非光学ガラス薄板の両端を指で持って撓ませてもシリカ系ガラス薄層に剥がれやクラックが生じなかった。
この可撓性非光学ガラス薄板をさらに600℃で加熱しても、このシリカ系ガラス薄層は非光学ガラス薄板との密着性が良好であり、クラックが観察されなかった。
【0056】
[実施例3]
表1のハイドロジェンポリシロキサンレジンDを、モレキュラシーブで脱水したジブチルエーテルに、樹脂濃度が10重量%に成るように溶解し、その溶液を実施例1で使用したステンレススチール薄板と同一のステンレススチール薄板(150mm角の切片)にブレードコーティングし、200℃で2時間加熱して、片面に厚さ2.5μmのハイドロジェンポリシロキサン樹脂Dの半硬化物層を有する可撓性ステンレススチール薄板を得た。酸素ガスが70ppm含まれる窒素ガス中で、このハイドロジェンポリシロキサン樹脂Dの硬化物層に、加速電圧165kVの電子線照射装置より線量200Mradの電子線を照射して厚さ2.5μmのシリカ系ガラス薄層を形成させた。
このシリカ系ガラス薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックは観察されなかった。このシリカ系ガラス薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板の両端を指で摘まんで、繰り返し180度屈曲してもシリカ系ガラス薄層に剥がれやクラックが生じなかった。赤外線吸収スペクトルにおけるケイ素原子結合水素原子(SiH)の特性吸収であるOSiHに由来する2264cm-1 とO1.5SiHに由来する2200cm-1の吸収ピークの高さの減少から、SiH含有量が60%減少したことが判明した。更に500℃で1時間加熱して表面の粗さをAFMで観測したところRmaxが10.2nmであった。シリカ系ガラス薄層の鉛筆硬度は9Hであり、電気絶縁性であった。このシリカ系ガラス薄層を有するステンレススチール薄板をさらに空気中または窒素ガス中で600℃で1時間加熱してもシリカ系ガラス薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックは観察されなかった。
【0057】
[実施例4]
参考例2で調製したハイドロジェンポリシロキサンレジンEを、モレキュラシーブで脱水したジブチルエーテルに、樹脂濃度が20重量%に成るように溶解し、その溶液を実施例1で使用したステンレススチール薄板と同一のステンレススチール薄板(150mm角の切片)上にブレードコーティングし、200℃で12時間加熱してステンレススチール薄板の片面にハイドロジェンポリシロキサンレジンEの半硬化物層を形成した。ハイドロジェンポリシロキサンレジンEの半硬化物層を形成したステンレススチール薄板を、5体積%のアンモニアガス含有空気を充填した縦30cmx横30cmのポリエチレンフィルム袋に入れ2時間放置して硬化させた。これを更に500℃で1時間加熱して、厚さ1.5μmのシリカ系ガラス薄層を形成させた。シリカ系ガラス薄層の表面の粗さをSEM顕微鏡で観測したところRmaxが8.5nmであった。シリカ系ガラス薄層をFT−IRにより観測したところ、波数2220cm−1のSiHに由来するピークが観測されなかった。シリカ系ガラス薄層の鉛筆硬度は9Hであり、電気絶縁性であった。片面にシリカ系ガラス薄層を有するステンレススチール薄板を空気中または窒素ガス中でさらに600℃で1時間加熱しても、このシリカ系ガラス薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックは観察されなかった。
【0058】
[実施例5]
参考例3で調製した環状ジハイドロジェンポリシロキサンFを、モレキュラシーブで脱水したジブチルエーテルに、その濃度が30重量%に成るように溶解し、その溶液を実施例1で使用したステンレススチール薄板と同一のステンレススチール薄板(150mm角の切片)上にスピンコーターによりコーテイング後、200℃で2時間加熱して、ステンレススチール薄板の片面上に環状ジハイドロジェンポリシロキサンFの半硬化物薄層を形成した。片面上に環状ジハイドロジェンポリシロキサンFの半硬化物薄層を有するステンレススチール薄板をさらに500℃で2時間加熱することにより、片面に厚さ0.75μmのシリカ系ガラス薄層を有するステンレススチール薄板を得た。シリカ系ガラス薄層の表面の粗さをAFMで観測したところRmaxが6.2nm であった。シリカ系ガラス薄層の鉛筆硬度は9Hであり、電気絶縁性であった。シリカ系ガラス薄層をFT−IRにより観測したところ、波数2220cm−1のSiH由来するピークが観測されなかった。鉛筆硬度は9Hであった。さらに空気中または窒素ガス中で600℃で加熱してもこのシリカ系ガラス薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックは観察されなかった。
【0059】
[実施例6]
実施例1で得られたシリカ系ガラス薄層を有するステンレススチール薄板のシリカ系ガラス薄層上に、公知の方法でMo裏面電極薄層、CuInGaSe2からなるCIGS系光吸収薄層、CdS高抵抗バッファ薄層、ZnO半絶縁薄層、ITO透明電極薄層を順次蒸着することにより、図4に示す薄膜化合物半導体太陽電池セルを製作した。この薄膜太陽電池セルは高い光変換効率を有していた。
【0060】
[比較例1]
実施例1で使用した厚さ24μmのステンレススチール薄板と同一のステンレススチール薄板(150mm角の切片)にファインケミカルジャパン株式会社製のFC-114ファイン・ポリイミドワニスを噴霧して220℃で60分間加熱して、厚さ1μmのポリイミド薄膜を形成した。このポリイミド薄膜を空気中で600℃で1時間加熱したところ、ピンホールが発生し、黒く変色した。
【0061】
[比較例2]
東京応化工業株式会社製無機SOG(商品名:OCD−typeII)を実施例1で使用した厚さ24μmのステンレス薄板と同一のステンレススチール薄板(150mm角の切片)上にスピンコートし、200℃で30分間加熱して最大厚さ0.55μmの無機SOG被膜を形成した。被膜形成後、600℃で1時間加熱したところ肉眼で確認できるクラックが多数発生していた。
【0062】
[比較例3]
アセト酢酸エチル2モルとテトラエトキシチタン1モルを4モルのエタノールに分散させ、テトラメトキシシラン10モルを加え、攪拌した。4モルのエタノールと2モルの水の混合液を滴下して透明溶液を得た。この溶液を実施例1で使用した厚さ24μmのステンレススチール薄板と同一のステンレススチール薄板(150mm角の切片)上にスピンコートし、120℃で24時間加熱してコーテイング層を乾燥・ゲル化させた後、200℃で3時間加熱した。硬化したコーテイング層の膜厚は0.6μmであった。コーテイング層の表面をSEM観察したところ、膜表面は平滑であり、Raは0.02μm以下であった。このステンレススチール薄板を600℃で1時間加熱したところ、硬化したコーテイング層に肉眼で確認できるクラックが多数発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のシリカ系ガラス薄層を有する無機質基板の製造方法は、太陽電池、反射型液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示素子等の半導体装置用の無機質基板、特には薄膜太陽電池、反射型液晶表示装置用薄膜トランジスター、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子等の薄膜半導体装置用の無機質基板、また、薄膜型リチウム電池の電極形成用の無機質基板を製造するのに有用である。
本発明のシリカ系ガラス薄層を有する無機質基板は、太陽電池、反射型液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示素子等の半導体装置用の基板として、特には薄膜太陽電池、反射型液晶表示装置用薄膜トランジスター、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子等の薄膜半導体装置用の基板として、また、薄膜型リチウム電池の電極形成用基板として有用である。
本発明のコーテイング剤は、無機質基板上に電気絶縁性と可撓性と優れた耐熱性を有するシリカ系ガラス薄層を形成するのに有用である。
本発明の半導体装置は、ソーラハウス、映像機器、携帯電話機、コンピュータ、デイスプレー、家庭電器、OA機器、自動車、航空機、宇宙衛星、船舶等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例1の、片面にシリカ系ガラス薄層を有するステンレススチール薄板の断面図である。
【図2】本発明の実施例2の、両面にシリカ系ガラス薄層を有する非光学ガラス薄板の断面図である。
【図3】本発明の実施態様である、片面にシリカ系ガラス薄層を有するステンレススチール薄板のシリカ系ガラス薄層上に半導体層を有する半導体装置の断面図である。
【図4】本発明の実施例6の、薄膜化合物半導体太陽電池セルの断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1;シリカ系ガラス薄層
2;ステンレススチール薄板
3;非光学ガラス薄板
4:半導体薄層
5a:Mo裏面電極薄層
5b:ITO透明電極薄層
6:CdS高抵抗バッファ薄層
7:CuInGaSe2からなるCIGS系光吸収薄層
8:ZnO半絶縁薄層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量が1500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなる環状ジハイドロジェンポリシロキサン、 (B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であるハイドロジェンポリシロキサン、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して流動性を高めるか有機溶剤で希釈して、無機質基板上に被覆し、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して該有機溶剤を揮発させ、ついで、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)、ハイドロジェンポリシロキサン(B)、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物を硬化させることを特徴とする、鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有する無機質基板の製造方法。
【請求項2】
硬化手段が、酸素ガス含有雰囲気下で150℃以上の温度での加熱、不活性ガスもしくは真空中での200℃以上の温度での加熱、高エネルギー線照射、オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露であることを特徴とする、請求項1記載の無機質基板の製造方法。
【請求項3】
無機質基板上に、(A)重量平均分子量が1500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなる環状ジハイドロジェンポリシロキサン、 (B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であるハイドロジェンポリシロキサン、または環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物の硬化物であり鉛筆硬度が2H〜9Hであるシリカ系ガラス薄層を有することを特徴とする、シリカ系ガラス薄層付き無機質基板。
【請求項4】
無機質基板が金属基板、セラミック基板または非光学ガラス基板であることを特徴とする、請求項3記載のシリカ系ガラス薄層付き無機質基板。
【請求項5】
金属基板が可撓性金属薄板であることを特徴とする、請求項4記載のシリカ系ガラス薄層付き無機質基板。
【請求項6】
可撓性金属薄板がステンレススチール薄板であることを特徴とする、請求項5記載のシリカ系ガラス薄層付き無機質基板。
【請求項7】
(A)重量平均分子量が1500〜1,000,000の範囲内であり、常温で液状であり、H2SiO2/2単位からなる環状ジハイドロジェンポリシロキサン、(B)シロキサン単位式[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0.12≦x<1.0,0≦y≦0.88,0≦z≦0.30,yとzが同時に0であることがなく、x+y+z=1である)を有し、重量平均分子量が500〜1,000,000の範囲内であり、120℃未満で液状であるハイドロジェンポリシロキサン、環状ジハイドロジェンポリシロキサン(A)とハイドロジェンポリシロキサン(B)の混合物、またはこれらの有機溶剤溶液であることを特徴とする、無機質基板のコーテイング剤。
【請求項8】
請求項3記載のシリカ系ガラス薄層付き無機質基板の当該シリカ系ガラス薄層上に少なくとも半導体層が形成されていることを特徴とする、半導体装置。
【請求項9】
無機質基板が可撓性金属薄板であり、半導体層が薄層であることを特徴とする、請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
可撓性金属薄板がステンレススチール薄板であり、半導体薄層がシリコン半導体薄層または化合物半導体薄層であることを特徴とする、請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
半導体装置が薄膜太陽電池である請求項10記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−111645(P2007−111645A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306720(P2005−306720)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【出願人】(500295461)ダウ コーニング コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】