説明

シリカ系被膜の形成方法及び電子部品

【課題】密着性に優れ、電気的信頼性の高いシリカ系被膜の硬化物が得られるシリカ系被膜の形成方法を提供する。
【解決手段】本発明のシリカ系被膜の形成方法は、下記一般式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、光酸発生剤及び光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種と、シロキサン樹脂を溶解可能な溶媒と、オニウム塩と、を含有する感光性樹脂組成物を基板上に塗布して被膜を得る工程と、パターンマスクを介して被膜を露光する工程と、露光する工程の後に被膜を加熱する工程と、加熱する工程の後に被膜の未露光部を現像によって除去する工程と、除去する工程の後に残存する被膜に紫外線を照射して、パターンを有するシリカ系被膜を得る工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系被膜の形成方法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIやディスプレイなどの電子部品は、高集積化及び配線の微細化が進んでいる。これら電子部品に用いられる絶縁膜として、CVD法により成膜されるSiO膜、塗布法で成膜される有機SOG(Spin On Glass)膜や無機SOG膜が多用されているが、さらなる低誘電率化とプロセス耐性に優れた絶縁材料が要求されている。 そこで、これらの要求を達成するため、基板上に形成された被膜に紫外線を照射することによって、低誘電率でプロセス耐性の高い絶縁膜とする提案がなされており、例えば、特許文献1及び特許文献2が開示されている。
【0003】
しかしながら、従来の絶縁膜では直接的に配線溝やビアホールを形成することが不可能であり、通常は絶縁膜上にフォトレジストをパターニング後、プラズマによるドライエッチング処理や薬液によるウエットエッチング処理を行い、次いでレジスト除去工程と洗浄工程とを経てパターンを形成する。これに対し、耐熱性、電気的信頼性等に優れる絶縁膜材料に感光特性が付与されたならば、上記工程で必須であったレジスト材料が不要となり、プラズマによるドライエッチング処理や薬液によるウエットエッチング処理、レジスト除去工程や洗浄工程を省略することが可能となる。
【0004】
このような感光性のポリシロキサン材料として、例えば、特許文献3及び特許文献4が開示されており、水及び触媒を除去したアルカリ可溶性シロキサンポリマーと光酸発生剤と溶剤とからなる感光性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−283520号公報
【特許文献2】特開2004−356508号公報
【特許文献3】特開平6−148895号公報
【特許文献4】特開平10−246960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、このような従来の感光特性を付与された絶縁膜材料を用いたパターニングについて詳細に検討を行った。その結果、例えば、特許文献3及び特許文献4で開示されている水及び触媒を除去したアルカリ可溶性シロキサンポリマーと光酸発生剤と溶剤とからなる感光性樹脂組成物を用いると、いずれも多量の露光量を必要とし、大量生産性に優れないことが明らかとなった。
さらに、感光性樹脂組成物から形成される被膜は、被着体への密着性、電気絶縁性が充分ではないためにプロセス工程中に膜剥離が生じやすく、また電気的信頼性が低い課題があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、密着性に優れ、電気的信頼性の高いシリカ系被膜の硬化物が得られるシリカ系被膜の形成方法、及び当該方法により形成されたシリカ系被膜を備える電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の成分を含有する感光性樹脂組成物を用いたシリカ系被膜を形成方法が、従来の種々の問題点を解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、光酸発生剤及び光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種と、シロキサン樹脂を溶解可能な溶媒と、オニウム塩と、を含有する感光性樹脂組成物を基板上に塗布して被膜を得る工程と、パターンマスクを介して被膜を露光する工程と、露光する工程の後に被膜を加熱する工程と、加熱する工程の後に被膜の未露光部を現像によって除去する工程と、除去する工程の後に残存する被膜に紫外線を照射して、パターンを有するシリカ系被膜を得る工程と、を備える、シリカ系被膜の形成方法を提供する。
【化1】


[式中、Rは、H原子、F原子、有機基、又は、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子及びTi原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、4−n個のXは同一でも異なっていてもよく、nが2であるとき、2個のRは同一でも異なっていてもよい。]
【0010】
本発明によれば、感光性樹脂組成物の構成成分として上記特定のシロキサン樹脂を用いているため、反応性の高いシラノール(SiOH)基濃度を低減することができ、その結果、長期の室温放置安定性に優れる感光性樹脂溶液とすることができる。また、上記シロキサン樹脂は、極性を有する官能基を含むため、各種被着体との密着性に優れたシリカ系被膜を形成することができる。さらに、上記シロキサン樹脂は、紫外線の照射によって充分に硬化反応が進行するため、低誘電性、電気絶縁性、耐熱性及び透明性に優れたシリカ系被膜を形成することが可能である。
【0011】
また、本発明では、感光性樹脂組成物が光酸発生剤及び光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有するため、透明性及び解像性に優れるネガ型感光性を発現することができ、シリカ系被膜を形成する際の露光後の現像時に優れた現像性を得ることができる。さらに、感光性樹脂組成物に含まれる光酸発生剤や光塩基発生剤が光分解して生じる酸又は塩基によってシリカ系被膜中のシラノール基間の縮合反応が更に促進されるため、得られるシリカ系被膜の耐熱性、電気特性及び機械強度が向上する。
【0012】
さらに、本発明では、感光性樹脂組成物がオニウム塩を含有するため、シロキサン樹脂中に存在するシラノール基の縮合反応を促進することができ、現像時の解像性が向上し、硬化後、絶縁性に優れたシリカ系被膜を形成することができる。
【0013】
本発明のシリカ系被膜の形成方法では、シリカ系被膜を得る工程において、被膜を150℃以上に加熱した状態で被膜に紫外線を照射することが好ましい。この場合、シリカ系被膜中のシラノール基間の縮合反応が充分に進行するため、低誘電性、絶縁性及び機械強度が更に向上する。
【0014】
本発明はさらに、基板と、上記方法により基板上に形成された上記シリカ系被膜と、を備える、電子部品を提供する。
【0015】
本発明の電子部品は、上記感光性樹脂組成物を用いた上記方法により形成されたシリカ系被膜を備えているため、優れた性能を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長期の室温放置安定性に優れ、精度よくパターン形成できる感光性樹脂組成物を用いるため、密着性が高く、電気的信頼性の高いシリカ系被膜を提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば、絶縁膜として用いることのできる、パターンを有するシリカ系被膜の形成が容易であり、且つ、形成されるシリカ系被膜における膜厚の面内均一性、塗布性、解像性、密着性、絶縁特性、低誘電性、耐熱性、透明性及び機械特性に優れたシリカ系被膜の形成方法を提供することができる。さらに、本発明は、上記シリカ系被膜の形成方法により形成される、パターンを有するシリカ系被膜を備える電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のシリカ系被膜の形成方法により形成されたシリカ系被膜を備える半導体素子の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
また、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と言う。)により測定され、且つ標準ポリスチレンの検量線を使用して換算されたものである。
【0021】
ここで、重量平均分子量(Mw)は、例えば、以下の条件で、GPCを用いて測定することができる。
(条件)
試料:5μL
標準ポリスチレン:東ソー株式会社製標準ポリスチレン(分子量;190000、17900、9100、2980、578、474、370、266)
検出器:株式会社日立製作所製RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレーター:株式会社日立製作所製GPCインテグレーター、商品名「D−2200」
ポンプ:株式会社日立製作所製、商品名「L−6000」
デガス装置:昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム:日立化成工業株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:23℃
流速:1.75mL/分
測定時間:45分
【0022】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態に用いる感光性樹脂組成物は、下記(a)〜(d)成分を必須成分として含有する。
(a)成分:下記一般式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂
【化2】


[式中、Rは、H原子、F原子、有機基、又は、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子及びTi原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、4−n個のXは同一でも異なっていてもよく、nが2であるとき、2個のRは同一でも異なっていてもよい。]
(b)成分:光酸発生剤及び光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種
(c)成分:上記シロキサン樹脂を溶解可能な溶媒
(d)成分:オニウム塩
【0023】
以下、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分のそれぞれについて説明する。
【0024】
<(a)成分>
(a)成分は、上記一般式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を、加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂である。シロキサン樹脂は、樹脂の末端や側鎖などにヒドロキシル(OH)基を有することが好ましい。これは、感光性樹脂組成物を用いて形成される被膜を露光後に現像する際、未露光部にアルカリ溶解性を付与させるためである。また、露光後、(b)成分によって露光部のヒドロキシル基の一部が縮合反応することで、未露光部に対するアルカリ溶解性コントラストを向上することができ、さらに、露光部の被膜を熱処理する際の縮合反応が一層進行し易くなる。
【0025】
シロキサン樹脂は、上記一般式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を、加水分解縮合して得ることができる。
一般式(1)中、Rで示される有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの中で、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状又は環状の脂肪族炭化水素基が好ましい。炭素数1〜20の直鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の基が挙げられる。分枝状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基等の基が挙げられる。また、環状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチレン基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の基が挙げられる。これらの中で、メチル基、エチル基、n−プロピル基等の、炭素数1〜5の直鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましく、原料入手容易性の観点から、メチル基が更に好ましい。
【0026】
一般式(1)中、Aで示される2価の有機基としては、例えば、2価の芳香族炭化水素基及び2価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。これらの中で、原料入手容易性等の観点から、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状又は環状の2価の炭化水素基が好ましい。
【0027】
炭素数1〜20の直鎖状の2価の炭化水素基の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の基が挙げられる。炭素数1〜20の分枝状の2価の炭化水素基の好ましい具体例としては、イソプロピレン基、イソブチレン基等の基が挙げられる。炭素数1〜20の環状の2価の炭化水素基の好ましい具体例としては、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、ノルボルナン骨格を有する基、アダマンタン骨格を有する基等の基が挙げられる。これらの中で、メチレン基、エチレン基、プロピレン基のような、炭素数1〜7の直鎖状の2価の炭化水素基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基のような、炭素数3〜7の環状の2価の炭化水素基、ノルボルナン骨格を有する環状の2価の炭化水素基が、特に好ましい。
【0028】
一般式(1)中、Xで示される加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基及びヒドロキシル基が挙げられる。これらの中で、感光性樹脂組成物自体の液状安定性や塗布特性等の観点から、アルコキシ基が好ましい。
【0029】
加水分解性基Xがアルコキシ基である化合物(アルコキシシラン)としては、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシランなどが挙げられる。
【0030】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられる。
【0031】
トリアルコキシシランとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−iso−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
ジオルガノジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−iso−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
また、Rが炭素数1〜20の有機基である一般式(1)の化合物で、上記以外の化合物としては、例えば、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン等のビスシリルアルカン、ビスシリルベンゼンなどが挙げられる。
【0034】
また、加水分解性基Xが、ハロゲン原子(ハロゲン基)である一般式(1)の化合物(ハロゲン化シラン)としては、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がハロゲン原子で置換されたもの等が挙げられる。さらに、加水分解性基Xが、アセトキシ基である一般式(1)の化合物(アセトキシシラン)としては、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がアセトキシ基で置換されたもの等が挙げられる。またさらに、加水分解性基Xが、イソシアネート基である一般式(1)の化合物(イソシアネートシラン)としては、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がイソシアネート基で置換されたもの等が挙げられる。さらにまた、加水分解性基Xが、ヒドロキシル基である一般式(1)の化合物(ヒドロキシシラン)としては、例えば、上述した各アルコキシシラン分子中のアルコキシ基がヒドロキシル基で置換されたもの等が挙げられる。
【0035】
これら一般式(1)で表される化合物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0036】
また、一般式(1)で表される化合物の多量体等の部分縮合物を加水分解縮合して得られる樹脂、一般式(1)で表される化合物の多量体等の部分縮合物と一般式(1)で表される化合物とを加水分解縮合して得られる樹脂、一般式(1)で表される化合物とその他の化合物とを加水分解縮合して得られる樹脂、一般式(1)で表される化合物の多量体等の部分縮合物と一般式(1)で表される化合物とその他の化合物とを加水分解縮合して得られる樹脂、などを使用することもできる。
【0037】
一般式(1)で表される化合物の多量体等の部分縮合物としては、例えば、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、ヘキサ−n−プロポキシジシロキサン、ヘキサ−iso−プロポキシジシロキサン等のヘキサアルコキシジシロキサン、部分縮合が進んだトリシロキサン、テトラシロキサン、オリゴシロキサン等が挙げられる。
【0038】
上記「その他の化合物」としては、例えば、重合性の2重結合又は3重結合を有する化合物等が挙げられる。重合性の2重結合を有する化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−iso−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸フェニル、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アクリルアミド、アリルベンゼン、ジアリルベンゼン等やこれらの化合物が部分縮合したものなどが挙げられる。3重結合を有する化合物としてはアセチレン、エチニルベンゼン等が挙げられる。
【0039】
このようにして得られる樹脂は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0040】
一般式(1)で表される化合物を加水分解縮合させる際に用いる水の量は、一般式(1)で表される化合物1モル当たり0.1〜1000モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜100モルである。この水の量が0.1モル未満では、加水分解縮合反応が充分に進行しない傾向にあり、水の量が1000モルを超えると、加水分解中又は縮合中にゲル化物を生じる傾向にある。
【0041】
また、一般式(1)で表される化合物の加水分解縮合において、触媒を使用することも好ましい。このような触媒の種類としては、例えば、酸触媒、アルカリ触媒、金属キレート化合物等が挙げられる。
【0042】
酸触媒としては、例えば、有機酸及び無機酸などが挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、トリフルオロエタンスルフォン酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0043】
アルカリ触媒としては、例えば、無機アルカリ及び有機アルカリなどが挙げられる。無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。有機アルカリとしては、例えば、ピリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、アンモニア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデカシルアミン、ドデカシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジシクロペンチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0044】
金属キレート化合物としては、例えば、トリメトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリエトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−iso−プロポキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、ジメトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、ジエトキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジn−プロポキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジiso−プロポキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジn−ブトキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジsec−ブトキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジtert−ブトキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、モノメトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノn−プロポキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノiso−プロポキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノn−ブトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノsec−ブトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノtert−ブトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、テトラキス(アセチルアセナート)チタン、トリメトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−iso−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジメトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジn−プロポキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジiso−プロポキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジn−ブトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジsec−ブトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジtert−ブトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、モノメトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノn−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノiso−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノn−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノsec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノtert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンを有する金属キレート化合物、上記チタンを有する金属キレート化合物のチタンがジルコニウム、アルミニウム等に置換された化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0045】
一般式(1)で表される化合物の加水分解縮合において、かかる触媒を用い加水分解を行うことが好ましいが、組成物の安定性が悪化する場合や、触媒を含むことにより他材料への腐食等の影響が懸念される場合もある。そのような場合は、例えば、加水分解後に、上記触媒を組成物から取り除いてもよく、他の化合物と反応させて触媒としての機能を失活させてもよい。取り除く方法や反応させる方法に特に制限はないが、蒸留やイオンクロマトカラム等を用いて取り除いてもよい。また、一般式(1)で表される化合物から得られる加水分解物は、再沈等により組成物から取り出されてもよい。また、反応により触媒としての機能を失活させる方法としては、例えば、触媒がアルカリ触媒の場合、酸触媒を添加して、酸塩基反応により中和したりpHを酸性側にしたりする方法が挙げられる。
【0046】
この触媒の使用量は、一般式(1)で表される化合物1モルに対して0.0001〜1モルの範囲であることが好ましい。この使用量が0.0001モル未満では、実質的に反応が進行しない傾向にあり、1モルを超えると、加水分解縮合時にゲル化が促進される傾向にある。
【0047】
さらに、この加水分解によって副生するアルコールはプロトン性溶媒であるため、エバポレータ等を用いて除去することが好ましい。
【0048】
このようにして得られる樹脂の重量平均分子量は、溶媒への溶解性、機械特性、成形性、室温放置安定性等の観点から、5000〜100000であることが好ましく、5000〜50000であることがより好ましく、5000〜30000であることが更に好ましく、6000〜20000であることが特に好ましく、6000〜15000であること極めて好ましい。この重量平均分子量が5000未満では、溶液の室温放置安定性が劣る傾向にあり、この重量平均分子量が100000を超えると、溶媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0049】
下地への接着性及び機械強度を必要とする場合は、一般式(1)におけるSi原子1モルに対する、H原子、F原子、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子、Ti原子及びC原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子の総含有割合(これを、特定の結合原子(一般式(1)中のR)の総数(M)とする。)が、1.3〜0.20モルであることが好ましく、1.0〜0.20モルであることがより好ましく、0.90〜0.20モルであることが更に好ましく、0.80〜0.20モルであることが特に好ましい。このようにすれば、硬化物の他の膜(層)への接着性及び機械強度の低下を抑制することができる。
【0050】
この特定の結合原子の総数(M)が0.20未満では、硬化物を絶縁膜として用いたときの誘電特性が劣る傾向にあり、1.3を超えると、最終的に得られる硬化物の他の膜(層)との接着性や機械強度等が劣る傾向にある。また、上述の特定の結合原子のなかでも、硬化物の成膜性の点で、H原子、F原子、N原子、Si原子、Ti原子及びC原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子を含むことが好ましく、それらのなかでも、誘電特性及び機械強度の点において、H原子、F原子、N原子、Si原子及びC原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子を含むことがより好ましい。
【0051】
なお、特定の結合原子の総数(M)は、シロキサン樹脂の仕込み量から求めることができ、例えば、下記式(A);
M=(M1+(M2/2)+(M3/3))/Msi …(A)
で表される関係を用いて算出できる。式中、M1は、特定の結合原子のうち単一の(ただ1つの)Si原子と結合している原子の総数を示し、M2は、特定の結合原子のうち2つのケイ素原子と結合している原子の総数を示し、M3は、特定の結合原子のうち3つのイ素原子と結合している原子の総数を示し、Msiは、Si原子の総数を示す。
【0052】
このようなシロキサン樹脂は1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上のシロキサン樹脂を組み合わせる方法としては、例えば、異なる重量平均分子量を有する2種類以上のシロキサン樹脂を組み合わせる方法、異なる化合物を必須成分として加水分解縮合して得られる2種類以上のシロキサン樹脂を組み合わせる方法等が挙げられる。
【0053】
<(b)成分>
(b)成分は、光酸発生剤及び光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種であり、放射線を照射することにより、(a)成分を光硬化(加水分解重縮合)可能な酸性活性物質又は塩基性活性物質を放出することができる化合物として定義される。
【0054】
光酸発生剤としては、例えば、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、オキシムスルホン酸エステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、他の増感剤等と組み合わせて使用することもできる。
【0055】
光塩基発生剤としては、例えば、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物群、ニフェジピン類等の非イオン性の光塩基発生剤、コバルトアミン錯体、下記一般式(6)、下記一般式(7)で表される4級アンモニウム塩等のイオン性の光塩基発生剤などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、他の増感剤等と組合せて使用することもできる。
【0056】
(R−OCO−NH)−R …(2)
ここで、式中、Rは炭素数1〜30の1価の有機基を示し、側鎖にメトキシ基又はニトロ基を有する芳香族環を含んでいてもよく、Rは炭素数1〜20の1〜4価の有機基を示し、mは1〜4の整数である。
【0057】
(RC=N−OCO)−R …(3)
ここで、式中、R及びmは上記一般式(2)におけるものと同義であり、R及びRは各々独立に炭素数1〜30の1価の有機基を示し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0058】
−OCO−NR …(4)
ここで、式中、Rは上記一般式(2)におけるものと同義であり、R及びRは各々独立に炭素数1〜30の1価の有機基を示し、互いに結合して環状構造を形成してもよく、いずれか一方が水素原子であってもよい。
【0059】
−CO−R−NR …(5)
ここで、式中、R及びRは上記一般式(4)におけるものと同義であり、Rは炭素数1〜30の1価の有機基を示し、側鎖にアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキル置換アミノ基又はアルキルチオ基を有する芳香族環を含んでいてもよく、Rは炭素数1〜30の2価の有機基を示す。
【0060】
【化3】


ここで、式中、R10は炭素数1〜30の1価の有機基を示し、R11及びR12は各々独立に炭素数1〜30の1価の有機基又は水素原子を示し、Xは、下記一般式(6A)、(6B)、(6C)、(6D)、(6E)及び(6F)(以下、「(6A)〜(6F)」のように表記する。)のいずれかで表される1価の基を示し、Zはアンモニウム塩の対イオンを示し、tは1〜3の整数であり、p及びqは0〜2の整数であり、t+p+q=3である。
【0061】
【化4】


ここで、式中、R13、R14、R15及びR16は各々独立に炭素数1〜30の1価の有機基を示し、R17、R18及びR19は各々独立に炭素数1〜30の2価の有機基又は単結合を示し、R20及びR21は各々独立に炭素数1〜30の3価の有機基を示す。
【0062】
【化5】


ここで、式中、R10、R11及びR12、Z、t、p及びqは上記一般式(6)におけるものと同様であり、Xは下記一般式(7A)〜(7D)のいずれかで表される2価の基を示す。
【0063】
【化6】


ここで、式中、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR21は、上記一般式(6A)〜(6F)におけるものと同義である。
【0064】
(b)成分の使用量は特に制限されるものではないが、用いる光酸発生剤又は光塩基発生剤の感度、効率、用いる光源、所望とする硬化物の厚さ等に依存するため、その範囲は広きに渡る。具体的には、放射線硬化性組成物中の(a)成分の総量に対して(b)成分の使用量は0.0001〜50重量%であることが好ましく、0.001〜20重量%であることがより好ましく、0.01〜10重量%であることが更に好ましい。この使用量が0.0001重量%未満では、光硬化性が低下する、又は硬化させるために多大な露光量を必要とする傾向があり、50重量%を超えると、組成物の安定性、成膜性等が劣る傾向にあると共に、硬化物の電気特性及びプロセス適合性が低下する傾向がある。
【0065】
また、上述した光酸発生剤又は光塩基発生剤とともに光増感剤を併用してもよい。光増感剤を用いることにより、効率的に放射線のエネルギー線を吸収することができ、光酸発生剤又は光塩基発生剤の感度を向上させることができる。光増感剤としては、例えば、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、アントラキノン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン等が挙げられる。
【0066】
なお、保存安定性向上のために、感光性樹脂組成物中を保存する場合は、例えば、5℃以下の温度で保存することが好ましい。この温度の下限は、感光性樹脂組成物中の溶媒の凝固点以上であることが好ましく、−50℃であることが好ましい。
【0067】
<(c)成分>
(c)成分は、(a)成分を溶解可能な溶媒であり、例えば、非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒等が挙げられ、非プロトン性溶媒を含有させることが好ましい。非プロトン性溶媒は、露光量の低減やパターン精度の向上に有効なのではないかと発明者らは推定している。
【0068】
アルコールに代表されるプロトン性溶媒は、電気陰性度の大きい酸素原子に結合した水素原子を持っている。そのために、プロトン性溶媒分子は求核試薬などと水素結合を作って溶媒和する。すなわち、プロトン性溶媒は一般式(1)で表される化合物を加水分解して得られるシロキサン樹脂と溶媒和するため、シロキサン樹脂が縮合するためにはこの溶媒分子を取り除かなければならず、低温での硬化を阻害する傾向があると考えられる。
【0069】
一方、非プロトン性溶媒は、電気陰性度の大きい元素上に水素原子を持たない溶媒であり、プロトン性溶媒よりも反応阻害の要因は小さいと考えられる。そのため、露光部では酸性活性物質や塩基性活性物質の発生とともに硬化反応が進み、酸や塩基の拡散などによるパターン精度の低下が起こり難く、パターン精度が向上する傾向があると考えられる。これは、従来の酸拡散制御剤が発生した酸を失活(中和)させることによりパターン精度を向上するというメカニズムとは異なるものである。これにより、(c)成分に非プロトン性溶媒を含有させると、パターン精度の向上及び露光量の低減という効果が一層有効に発揮されると考えられる。
【0070】
(c)成分に含まれる非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ジ−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶媒;アセトニトリル、N―メチルピロリジノン、N―エチルピロリジノン、N―プロピルピロリジノン、N―ブチルピロリジノン、N―ヘキシルピロリジノン、N―シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、塗布時の面内膜厚均一性、パターン形成時の感度及びパターン精度、並びに硬化物の機械強度の観点から、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、エーテルアセテート系溶媒及びケトン系溶媒が好ましい。また、窒素原子を有しない溶媒であることが好ましい。
【0071】
これらの中でも、シロキサン樹脂と溶媒との相溶性を高めることができ、被膜表面に凹凸が少ない膜厚の面内均一性に優れた被膜を形成できる観点から、エーテルアセテート系溶媒、エーテル系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく、エーテルアセテート系溶媒及びエーテル系溶媒がより好ましく、エーテルアセテート系溶媒が特に更に好ましい。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0072】
非プロトン性溶媒の使用割合は、全溶媒中50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが更に好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。この使用割合が少ないと、露光量が少ない場合に露光部が充分に硬化しない傾向がある。あるいは、この使用割合が少ないと、充分に硬化させるためにより高温での熱処理が必要となり、発生した酸や塩基が拡散しやすくなり、パターン精度が劣化する傾向がある。
【0073】
(c)成分を用いる方法は特に限定されないが、例えば、(a)成分を調製する際の溶媒として用いる方法、(a)成分を調製後、添加する方法、溶媒交換を行う方法、(a)成分を溶媒留去等で取り出して(c)溶媒を加える方法等がある。
【0074】
この溶媒(非プロトン性溶媒とプロトン性溶媒との合計)の使用量は、(a)成分(シロキサン樹脂)の濃度が3〜60重量%となるような量であることが好ましい。溶媒の量が過多で(a)成分の濃度が3重量%未満では、所望の膜厚を有する硬化物を形成し難くなる傾向があり、溶媒の量が過少で(a)成分の濃度が60重量%を超えると、硬化物の成膜性等が悪化すると共に、組成物自体の安定性が低下する傾向がある。
【0075】
<(d)成分>
(d)成分は、硬化促進触媒であり、感光性樹脂組成物に添加することにより、縮合反応が促進され、光酸発生剤量若しくは光塩基発生剤量の低減効果、露光量の低減効果、又は、PEBの温度の低下効果が期待できると考えられる。この硬化促進触媒は(b)成分の光によって活性物質を発生するような通常の光酸発生剤又は光塩基発生剤とは異なる。したがって、硬化促進触媒として用いることができるオニウム塩は、通常、光酸発生剤又は光塩基発生剤として使用されるようなオニウム塩とは区別される。
【0076】
(d)成分である硬化促進触媒は、溶液中では触媒作用を示さず、塗布後の被膜中で活性を示す特異なものであると考えられる。露光部では酸性活性物質や塩基性活性物質の発生とともに硬化促進触媒による縮合反応、すなわち硬化反応が進むため、酸や塩基の拡散などによるパターン精度の低下がさらに起こりづらい、すなわちパターン精度がさらに向上すると推定される。
【0077】
硬化促進触媒の硬化促進触媒能を調べる手段を以下1〜4に示す。
【0078】
1.(a)成分及び(c)成分からなる組成物を用意する。
2.ベイク後の膜厚が1.0±0.1μmになるようにシリコンウエハに上記1で用意した組成物を塗布し、所定の温度で30秒間ベイクして、被膜の膜厚を測定する。
3.被膜が形成されたシリコンウエハを23±2℃の2.38重量%のテトラメチルアモニウムハイドロオキシド(TMAH)水溶液に30秒間浸漬し、水洗、乾燥後の被膜の膜減りを観察する。この際、TMAH水溶液浸漬前後の被膜の膜厚変化が20%以内であるベイク時の最低温度を不溶解温度とする。
4.上記1で用意した組成物に硬化促進触媒能を確認したい化合物を、(a)成分の総量に対して、0.01重量%添加して組成物を得、上記2及び3と同様にして、不溶解温度を求める。硬化促進触媒能を確認したい化合物を添加することにより、不溶解温度が低下すれば、その化合物は硬化促進触媒能がある。
【0079】
(d)成分である硬化促進触媒としては、オニウム塩が必須成分として使用されるが、他の硬化促進触媒として、例えば、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属類などを併用することができる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
得られる硬化物の電気特性及び機械強度を向上でき、更に、感光性樹脂組成物の安定性を高めることができるという観点から、オニウム塩は、4級アンモニウム塩であることが好ましい。
【0081】
オニウム塩としては、より具体的には、アンモニウムハイドロオキシド、アンモニウムフルオライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、ヨウ化アンモニウム、燐酸アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、蟻酸アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、フマル酸アンモニウム塩、フタル酸アンモニウム塩、マロン酸アンモニウム塩、コハク酸アンモニウム塩、酒石酸アンモニウム塩、リンゴ酸アンモニウム塩、乳酸アンモニウム塩、クエン酸アンモニウム塩、酢酸アンモニウム塩、プロピオン酸アンモニウム塩、ブタン酸アンモニウム塩、ペンタン酸アンモニウム塩、ヘキサン酸アンモニウム塩、ヘプタン酸アンモニウム塩、オクタン酸アンモニウム塩、ノナン酸アンモニウム塩、デカン酸アンモニウム塩、シュウ酸アンモニウム塩、アジピン酸アンモニウム塩、セバシン酸アンモニウム塩、酪酸アンモニウム塩、オレイン酸アンモニウム塩、ステアリン酸アンモニウム塩、リノール酸アンモニウム塩、リノレイン酸アンモニウム塩、サリチル酸アンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、安息香酸アンモニウム塩、p−アミノ安息香酸アンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸アンモニウム塩、メタンスルホン酸アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルフォン酸アンモニウム塩、トリフルオロエタンスルフォン酸アンモニウム塩、等のアンモニウム塩化合物が挙げられる。
【0082】
これらのオニウム塩では、硬化物の硬化促進の観点から、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等のアンモニウム塩が好ましい。
【0083】
これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0084】
(d)成分の使用量は、感光性樹脂組成物中の(a)成分の総量に対して0.0001〜5重量%であることが好ましく、0.0001〜1重量%であることがより好ましい。この使用量が0.0001重量%未満では、(a)成分を硬化させるために多大な露光量を必要とする傾向がある。この使用量が5重量%を超えると、組成物の安定性、成膜性等が劣る傾向があると共に、硬化物の電気特性及びプロセス適合性が低下する傾向がある。
【0085】
なお、オニウム塩は、必要に応じて水や溶媒に溶解又は希釈してから、所望の濃度となるように添加することができる。また、添加する時期は特に限定されないが、例えば、(a)成分の加水分解を行う時点、加水分解中、反応終了時、溶媒留去前後、酸発生剤を添加する時などがある。
【0086】
<その他の成分>
本実施形態で用いる感光性樹脂組成物は、色素を更に含有してもよい。感光性樹脂組成物が色素を含有することにより、例えば、感度を調整する効果、定在波効果を抑制する効果等が得られる。
【0087】
また、本実施形態で用いる感光性樹脂組成物は、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、界面活性剤、シランカップリング剤、増粘剤、無機充填剤、ポリプロピレングリコール等の熱分解性化合物、揮発性化合物などを更に含有してもよい。上記熱分解性化合物及び揮発性化合物は、熱(好ましくは250〜500℃)により分解又は揮発し、空隙を形成可能であることが好ましい。また、(a)成分であるシロキサン樹脂に空隙形成能を付与してもよい。
【0088】
なお、感光性樹脂組成物を電子部品に使用する場合は、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含有しないことが望ましく、含まれる場合でも組成物中のそれらの金属イオン濃度が1000ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。これらの金属イオン濃度が1000ppmを超えると、組成物から得られる硬化物を有する半導体素子等の電子部品に金属イオンが流入し易くなって、デバイス性能そのものに悪影響を与えるおそれがある。したがって、必要に応じて、例えば、イオン交換フィルター等を使用してアルカリ金属やアルカリ土類金属を組成物中から除去することが有効である。しかし、光導波路や他の用途等に用いる際は、その目的を損なわないのであれば、この限りではない。
【0089】
[シリカ系被膜の形成方法]
次に、本実施形態のシリカ系被膜の形成方法を説明する。本実施形態のシリカ系被膜の形成方法は、上記感光性樹脂組成物を基板上に塗布して被膜を得る成膜工程と、パターンマスクを介して被膜を露光する露光工程と、露光工程の後に被膜を加熱する加熱工程と、加熱工程の後に被膜の未露光部を現像によって除去する現像工程と、現像工程の後に残存する被膜に対して紫外線を照射して、パターンを有するシリカ系被膜を得る紫外線照射工程と、を備える。
【0090】
<成膜工程>
上記感光性樹脂組成物を用いて、パターニングされた硬化物を基板上に形成する方法について、一般に成膜性及び膜均一性に優れるスピンコート法を例にとって説明する。ただし、硬化物形成方法はスピンコート法に限定されるものではない。また、基板は表面が平坦なものでも、電極等が形成され凹凸を有しているものであってもよい。
【0091】
上記基板としては、Si、SiN、SiCN、SiC、SiO、ガラス、ITO、メタル等の材質からなる基板、又はこれらの材質が複合された材質からなる基板を用いることができる。
【0092】
まず、感光性樹脂組成物をシリコンウエハ又はガラス基板等の基板上に好ましくは500〜5000回転/分、より好ましくは500〜3000回転/分でスピン塗布して被膜を形成する。この回転数が500回転/分未満では、膜均一性が悪化する傾向があり、5000回転/分を超えると、成膜性が悪化するおそれがある。
【0093】
硬化物の膜厚は使用用途により異なり、例えば、LSI等の層間絶縁膜に使用する際の膜厚は0.01〜2μmであることが好ましく、パッシベーション層に使用する際の膜厚は2〜40μmであることが好ましい。液晶用途に使用する際の膜厚は0.1〜20μmであることが好ましく、フォトレジストに使用する際の膜厚は0.1〜2μmであることが好ましく、光導波路に使用する際の膜厚は1〜50μmであることが好ましい。通常、この膜厚は概して0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜5μmであることがより好ましく、0.01〜3μmであることが更に好ましく、0.01〜2μmであることが特に好ましく、0.1〜2μmであることが極めて好ましい。硬化物の膜厚を調整するためには、例えば、組成物中の(a)成分の濃度を調整してもよい。また、スピン塗布法を用いる場合、回転数と塗布回数を調整することにより膜厚を調整することができる。(a)成分の濃度を調整して膜厚を制御する場合、例えば、膜厚を厚くする場合には(a)成分の濃度を高くし、膜厚を薄くする場合には(a)成分の濃度を低くすることにより制御することができる。また、スピン塗布法を用いて膜厚を調整する場合、例えば、膜厚を厚くする場合には回転数を下げたり、塗布回数を増やしたりし、膜厚を薄くする場合には回転数を上げたり、塗布回数を減らしたりすることにより調整することができる。
【0094】
次いで、好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜150℃でホットプレート等により被膜を乾燥させて被膜に含まれる溶媒を除去する。後に行われる現像の際の諸条件でこの被膜が溶解するように乾燥温度を調整する必要がある。また、このときの乾燥方法は、常圧で行ってもよく、場合によっては減圧で乾燥してもよい。この乾燥温度が50℃未満では、溶媒の乾燥が充分に行われない傾向があり、200℃を超えると、現像時に溶解せず、パターンが形成されない可能性がある。
【0095】
<露光工程>
次いで、所望のパターンを有するパターンマスクを介して、放射線を被膜に照射して当該被膜を露光する。この露光量は5〜5000mJ/cmであることが好ましく、5〜1000mJ/cmであることがより好ましく、5〜750mJ/cmであることが更に好ましく、5〜500mJ/cmであることが特に好ましい。この露光量が5mJ/cm未満では、光源によっては制御が困難となるおそれがあり、5000mJ/cmを超えると、露光時間が長くなり、生産性が悪くなる傾向がある。
【0096】
この際の放射線としては、例えば、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等を用いることができるが、特に紫外線であることが好ましい。紫外線の発生源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、エキシマランプ等が挙げられる。
【0097】
未露光部は、現像液に対して充分に溶解性を有するが、露光部では酸性活性物質や塩基性活性物質が発生し、加水分解縮合反応が起こり、現像液に対する溶解性が低下する。これにより、パターンが形成される。
【0098】
<加熱工程>
次いで、露光後に加熱(ポストエクスプロージャベイク:PEB)を行う。この加熱はホットプレート等にて被膜を加熱させるものであるが、未露光部の現像液に対する溶解性が低下しない温度領域で加熱させることが好ましい。この温度は50〜200℃であることが好ましく、70〜150℃であることがより好ましく、70〜120℃であることが更に好ましい。一般に温度が高いと発生した酸が拡散しやすくなるため、この温度は低い方がよい。
【0099】
<現像工程>
感光性樹脂組成物の未露光部分の除去、すなわち現像に関しては、例えば、アルカリ性水溶液等の現像液を使用することができる。このアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムハイドロオキシド(TMAH)、テトラエチアンモニウムハイドロオキシド等の四級アンモニウム塩などが挙げられる。また、これらのアルカリ水溶液に水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することもできる。電子部品ではアルカリ金属の汚染を嫌うため、現像液としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキシド水溶液が好ましい。
【0100】
好適な現像時間は、膜厚や溶剤にもよるが、5秒間〜5分間であることが好ましく、30秒間〜3分間であることがより好ましく、30秒間〜2分間であることが更に好ましい。この現像時間が5秒間未満では、ウエハ又は基板全面での時間制御が困難となる場合があり、5分間を超えると、生産性が悪くなる傾向がある。現像時の処理温度は、一般に20〜30℃である。現像方法としては、例えば、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。次に、現像によって形成したパターンを必要に応じて蒸留水等によりリンスすることもできる。
【0101】
<紫外線照射工程>
次に、上記現像工程において残存し、パターン化された被膜に紫外線を照射して最終硬化を行う。これにより、パターンを有するシリカ系被膜(硬化物)を絶縁膜として得ることができる。この最終硬化は、N、Ar、He等の不活性雰囲気下、大気中や減圧化で行うことが出来、用いる用途に要求される特性を満足するのであれば特に制限はない。
【0102】
紫外線照射工程では、被膜を150℃以上(好ましくは150〜500℃)に加熱した状態で被膜に紫外線を照射することが好ましい。この加熱温度が150℃未満では、充分な硬化が達成されない傾向があると共に、電気絶縁性に劣る傾向があり、500℃を超えると、その下層材料が劣化するおそれがある。
【0103】
また、最終硬化の加熱・紫外線照射時間は、2〜120分間であることが好ましく、2〜60分間であることがより好ましく、2〜30分間であることが更に好ましい。この加熱・照射時間が120分間を超えると、被膜が劣化する傾向がある。
【0104】
また、照射する紫外線は、150nm〜800nmの波長であることが好ましく、200nm〜800nmの波長であることがより好ましい。波長は単一波長でもよく、150nm〜800nmの波長範囲にわたり分布があってもよい。
また、紫外線の発生源としては、例えば、重水素ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプなどが挙げられる。
【0105】
[電子部品]
かかる硬化物を有する使用例である電子部品としては、例えば、半導体素子、多層配線板等の絶縁膜を有するデバイスなどが挙げられる。具体的には、半導体素子においては、表面保護膜(パッシベーション膜)、バッファーコート膜、層間絶縁膜等として使用することができる。一方、多層配線板においては、層間絶縁膜として好適に使用することができる。
【0106】
図1は、上記硬化物を半導体素子の表面保護膜として使用した場合の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す半導体素子は、金属配線5が形成された窒化ケイ素膜2を有するシリコン基板1上に、上記感光性樹脂組成物を塗布し、形成された被膜をパターニング後、硬化してシリカ系被膜3を形成し、次いで、金属配線4を形成することで作製される。
【0107】
半導体素子としては、例えば、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリー等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子などが挙げられる。また、多層配線板としては、例えば、MCM等の高密度配線板などが挙げられる。
【0108】
また、液晶用部品、光導波路、フォトレジスト等の用途としても使用することができるが、使用用途はこの限りではない。
【実施例】
【0109】
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0110】
以下の実施例において、感光性樹脂組成物は光酸発生剤又は光塩基発生剤が励起されないように、感光性樹脂組成物の現像工程が終了するまでは、使用する酸発生剤又は光塩基発生剤と増感剤の感光波長を含まない環境下で作業した。
【0111】
(実施例1)
テトラエトキシシラン74.8gとメチルトリエトキシシラン128.7gと2.38重量%に調製したテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液(pH3.6)3.1gをジエチレングリコールジメチルエーテル447.3gに溶解させた溶液中に、60%の硝酸0.6gをイオン交換水48.7gで希釈した硝酸水溶液を攪拌下で30分間かけて滴下した。滴下終了後3時間反応させた後、減圧下、温浴中で生成エタノールおよびジエチレングリコールジメチルエーテルの一部を留去したのち、さらに80℃の温浴中で5時間加熱して、ポリシロキサン溶液383.2gを得た。これに、ジエチレングリコールジメチルエーテル116.8gを加えて感光性樹脂組成物用ポリシロキサン溶液を得た。GPC法によりポリシロキサンの重量平均分子量を測定すると、6450であった。
この感光性樹脂組成物用ポリシロキサン溶液10.0gに光酸発生剤(PAI−101、みどり化学社製)0.1gを配合し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0112】
<パターン精度>
上記感光性樹脂組成物を低抵抗5インチシリコンウエハの中心に2mL滴下して、膜厚が0.5μmになるようにスピン塗布によって被膜を作製し、それを100℃のホットプレート上で60秒間乾燥させた。その後、最小線幅が10μmのライン状パターンを有するネガ用のマスクを介して、露光機(PLA−600F、キャノン社製)で紫外光を200mJ/cm照射した。露光後の塗膜を備えたウエハを100℃のホットプレートで60秒間加熱し、ウエハが室温になるまで自然冷却させた後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキシド(TMAH)水溶液からなる現像液に60秒間浸漬した。その後、ウエハを水洗、スピン乾燥した。次いで、スピン乾燥後のウエハを窒素雰囲気下、400℃に加熱されたホットプレート上で、150nmから800nmの範囲の波長の紫外線を5分間照射し、ウエハ上に感光性樹脂の硬化物を得た。該硬化物のパターン形状を光学顕微鏡による上部からの観察、及びSEMによる断面形状を観察したところ、ラインが精度よく形成されており、パターン精度は10μmであることがわかった。
【0113】
<密着性試験>
また、ネガ用のマスクを介さず、塗膜の全面に露光機で露光する操作以外は、上述した方法と同様な操作を行い、パターンのない感光性樹脂の硬化物を得た。該硬化物を碁盤目状にカミソリ刃で傷を付け、テープ剥離による密着性試験を行い、その表面を光学顕微鏡による上部から観察したところ、硬化物はウエハから剥離のないことが確認できた。
【0114】
<絶縁特性>
また、上記の密着性試験で作製した硬化膜のウエハを用いて、比誘電率とリーク電流を測定した。はじめに、硬化物上に真空蒸着装置でAl金属を直径2mmの円で、厚さ約0.1μmになるように真空蒸着した。比誘電率は、インピーダンスアナライザー(横河電機製:HP4192A)を用いてAl金属とウエハ間の電荷容量を測定した。測定時の周波数を1MHzとし、塗膜の膜厚はガートナー製のエリプソメータL116Bで測定された膜厚を使用して塗膜の比誘電率を算出したところ、2.7であることがわかった。
次に、リーク電流は、抵抗計(ADVANTEST社製:R8340)を用いて、Al金属とウエハ間に0Vから絶縁破壊するまでの電圧をかけて、2MV/cmのときのリーク電流を測定したところ、1.0E−09A/cm以下であることがわかった。
【0115】
(実施例2)
テトラエトキシシラン74.8gとメチルトリエトキシシラン128.7gと2.38重量%に調製したテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液(pH3.6)3.1gをプロピレングリコールメチルエーテルアセテート447.3gに溶解させた溶液中に、60%の硝酸0.6gをイオン交換水48.4gで希釈した硝酸水溶液を攪拌下で30分間かけて滴下した。滴下終了後3時間反応させた後、減圧下、温浴中で生成エタノールおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの一部を留去したのち、さらに80℃の温浴中で5時間加熱して、ポリシロキサン溶液397.2gを得た。これに、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート102.8gを加えて感光性樹脂組成物用ポリシロキサン溶液を得た。GPC法によりポリシロキサンの重量平均分子量を測定すると、5650であった。
この感光性樹脂組成物用ポリシロキサン溶液10.0gに光酸発生剤(PAI−101、みどり化学社製)0.04gを配合し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0116】
実施例1と同様の操作を行い、硬化物のパターン形状を観察したところ、ラインが精度よく形成されており、パターン精度は10μmであることがわかった。
【0117】
また、同様に、全面露光した感光性樹脂のパターンのない硬化物を碁盤目状にカミソリ刃で傷を付け、テープ剥離による密着性試験を行い、その表面を光学顕微鏡による上部から観察したところ、硬化物の剥離のないことがわかった。
【0118】
さらに、同様に、硬化物の比誘電率とリーク電流を測定したところ、比誘電率は2.7であり、2MV/cmのときのリーク電流は、1.0E−09A/cm以下であることがわかった。
【0119】
(実施例3)
実施例2で得られた感光性樹脂組成物用ポリシロキサン溶液10.0gに光塩基発生剤(NBC−101、みどり化学社製)0.040gを配合し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0120】
実施例1と同様に、硬化物のパターン形状を観察したところ、ラインが精度よく形成されており、パターン精度は10μmであることがわかった。
【0121】
また、同様に、全面露光した感光性樹脂のパターンのない硬化物を碁盤目状にカミソリ刃で傷を付け、テープ剥離による密着性試験を行い、その表面を光学顕微鏡による上部から観察したところ、硬化物の剥離のないことがわかった。
【0122】
さらに、同様に、硬化物の比誘電率とリーク電流を測定したところ、比誘電率は2.8であり、2MV/cmのときのリーク電流は、1.0E−09A/cm以下であることがわかった。
【0123】
(実施例4)
実施例2で得られた感光性樹脂組成物用ポリシロキサン溶液10.0gに光酸発生剤(PAI−101、みどり化学社製)0.04gを配合し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0124】
パターンが形成された塗膜を150℃に加熱されたホットプレート上で、150nmから800nmの範囲の波長の紫外線を30分間照射する以外は、実施例1と同様の操作を行い、ウエハ上にパターンを有する感光性樹脂の硬化物を得た。硬化物のパターン形状を観察したところ、ラインが精度よく形成されており、パターン精度は10μmであることがわかった。
【0125】
また、同様に、全面露光した感光性樹脂の硬化被膜を碁盤目状にカミソリ刃で傷を付け、テープ剥離による密着性試験を行い、その表面を光学顕微鏡による上部から観察したところ、被膜の剥離のないことがわかった。
【0126】
さらに、同様に、比誘電率とリーク電流を測定したところ、比誘電率は2.9であり、2MV/cmのときのリーク電流は、1.0E−08A/cm以下であることがわかった。
【0127】
(比較例1)
テトラエトキシシラン74.8gとメチルトリエトキシシラン128.7gとプロピレングリコールモノメチルエーテル447.3gに溶解させた溶液中に、60%の硝酸0.6gをイオン交換水48.7gで希釈した硝酸水溶液を攪拌下で30分間かけて滴下した。滴下終了後3時間反応させた後、減圧下、温浴中で生成エタノールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルの一部を留去し、ポリシロキサン溶液398.8gを得た。これに、プロピレングリコールモノメチルエーテル101.2gを加えて感光性樹脂組成物用ポリシロキサン溶液を得た。GPC法によりポリシロキサンの重量平均分子量を測定すると、910であった。
この感光性樹脂組成物用ポリシロキサン溶液10.0gに光酸発生剤(PAI−101、みどり化学社製)0.1gを配合し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0128】
実施例1と同様に、最小線幅が10μmのライン状パターンを有するネガ用のマスクを介して露光機(PLA−600F、キャノン社製)で紫外光を200mJ/cm照射した。露光後の塗膜を備えたウエハを100℃のホットプレートで60秒間加熱し、ウエハが室温になるまで自然冷却させた後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキシド(TMAH)水溶液からなる現像液に60秒間浸漬し未露光部を溶解させた。その後、ウエハを水洗、スピン乾燥した。次いで、スピン乾燥後のウエハを窒素雰囲気下、400℃に加熱されたホットプレート上で30分間加熱し、ウエハ上にパターンを有する感光性樹脂の硬化物を得た。該硬化物のパターン形状を光学顕微鏡による上部からの観察、及びSEMによる断面形状を観察したところ、未露光部分が不溶化しておりパターンが形成されていないことがわかった。
【0129】
また、ネガ用のマスクを介さず、被膜の全面に露光機で露光する操作以外は、上記記載の比較例1と同様な操作を行い、パターンのない感光性樹脂の硬化物を得た。全面露光した感光性樹脂の硬化被膜を碁盤目状にカミソリ刃で傷を付け、テープ剥離による密着性試験を行い、その表面を光学顕微鏡によって上部から観察したところ、被膜が剥離することがわかった。
【0130】
さらに、同様に、比誘電率とリーク電流を測定したところ、比誘電率は3.5であり、2MV/cmのときのリーク電流は、1.0E−04A/cm以上であり、誘電率及びリーク電流が高いことがわかった。
【0131】
(比較例2)
比較例1の感光性樹脂組成物用ポリシロキサン溶液10.0gに光塩基発生剤(NBC−101、みどり化学社製)0.040gを配合し、感光性樹脂組成物を調製した。
感光性樹脂溶液を用いて、比較例1と同様に、ウエハ上にパターンを有する感光性樹脂の硬化物を得た。該硬化物のパターン形状を光学顕微鏡による上部からの観察、及びSEMによる断面形状を観察したところ、未露光部分が不溶化しておりパターンが形成されていないことがわかった。
また、全面露光したパターンのない感光性樹脂の硬化物を碁盤目状にカミソリ刃で傷を付け、テープ剥離による密着性試験を行い、その表面を光学顕微鏡による上部から観察したところ、被膜が剥離することがわかった。
さらに、全面露光した感光性樹脂の硬化被膜の比誘電率とリーク電流を測定したところ、比誘電率は3.7であり、2MV/cmのときのリーク電流は、1.0E−04A/cm以上であり、誘電率及びリーク電流が高いことがわかった。
【0132】
以上の実施例1〜4及び比較例1〜2について、結果を表1に示す。なお、表1中の「PB」とは、樹脂組成物の塗布後且つ露光前における加熱温度を意味しており、「PEB」とは、露光後且つ現像前における加熱時間を意味している。
【0133】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明によれば、優れた感光性樹脂組成物を用いた、パターンを有するシリカ系被膜の形成方法により、パターン精度が高く、密着性及び電気信頼性に優れた硬化物を得ることができる。したがって、本発明は、電子部品に有用である。
【符号の説明】
【0135】
1…シリコン基板、2…窒化ケイ素膜、3…シリカ系被膜、4,5…金属配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、
光酸発生剤及び光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種と、
前記シロキサン樹脂を溶解可能な溶媒と、
オニウム塩と、
を含有する感光性樹脂組成物を基板上に塗布して被膜を得る工程と、
パターンマスクを介して前記被膜を露光する工程と、
前記露光する工程の後に前記被膜を加熱する工程と、
前記加熱する工程の後に前記被膜の未露光部を現像によって除去する工程と、
前記除去する工程の後に残存する被膜に紫外線を照射して、パターンを有するシリカ系被膜を得る工程と、を備える、シリカ系被膜の形成方法。
【化1】


[式中、Rは、H原子、F原子、有機基、又は、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子及びTi原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、4−n個のXは同一でも異なっていてもよく、nが2であるとき、2個のRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記シリカ系被膜を得る工程において、前記被膜を150℃以上に加熱した状態で前記被膜に前記紫外線を照射する、請求項1に記載のシリカ系被膜の形成方法。
【請求項3】
前記基板と、請求項1又は2に記載の方法により前記基板上に形成された前記シリカ系被膜と、を備える、電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−222104(P2012−222104A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85387(P2011−85387)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】