説明

シリカ系被膜形成用組成物、シリカ系被膜の形成方法、シリカ系被膜及び電子部品

【課題】十分に低い比誘電率及び良好な機械強度を有するシリカ系被膜を形成できるとともに、凹凸面を覆うシリカ系被膜を形成したときの凹凸緩和性に優れるシリカ系被膜形成用組成物を提供すること。
【解決手段】(a)成分:テトラアルコキシシラン及びオルガノトリアルコキシシランを含むアルコキシシランを、マレイン酸及び/又はマロン酸の存在下に加水分解重縮合して得られる、500〜1500の重量平均分子量を有するシロキサン樹脂と、(b)成分:アンモニウム塩とを含有する塗布型のシリカ系被膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリカ系被膜形成用組成物、シリカ系被膜の形成方法、シリカ系被膜及び電子部品に冠する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスは高性能化のために微細化が進行している。デバイスを微細化するために、例えばデバイス中の配線間スペースの幅が狭くなる。配線間スペースの幅の縮小に伴い、配線を被覆する絶縁膜に対する要求特性も一層高いものとなってきている。
【0003】
半導体デバイス内には、一般に、STI層(Shallow Trench Isolation)、PMD層(Pre−Metal Dielectric)、又は金属配線のILD層(Inter Layer Dielectric)と称される絶縁膜が設けられる。これらの絶縁膜はいずれも凹凸面を有する下地上に形成される。
【0004】
PMD層やILD層として用いられる絶縁膜に要求される特性としては、例えば、(1)配線間の凹部への良好な埋め込み性を有すること、(2)凹部に埋め込まれた部分の表面の凹凸ができるだけ少ないこと、(3)絶縁性に優れること、(4)機械強度が高いことが挙げられる。絶縁性に関して、一般に、PMD層の場合は比誘電率4以下、ILD層の場合は比誘電率3以下が要求される。STI層用の絶縁膜には、上記特性に加え、有機成分が含まれないことが必要とされる。これら要求特性を満たすために、絶縁膜として、Si−O−Si骨格を有するシロキサンを主成分として含むシリカ系被膜が用いられる場合が多い。
【0005】
シリカ系被膜は、一般にCVD法又は塗布法により形成される。PMD層用の絶縁膜は、CVD法により形成される場合が多い。CVD法により得られるシリカ系被膜の機械強度が塗布法に比べて高く、パッケージングプロセス等において有利なためである。
【0006】
塗布法の代表例としては、アルコキシシランの加水分解・重縮合により形成されるシロキサン樹脂を含む組成物を塗付し、塗膜を焼成する方法がある。この方法はアルコキシシランのゾル−ゲル法と称される。ゾル−ゲル法によって形成されるシリカ系被膜の機械強度向上を図る手法として、シロキサン樹脂、有機溶媒及びオニウム塩を含有する組成物を用いる方法が提案されている(特許文献1)。また、塗布法の他の例として、シラザン(SiN)骨格を酸化してSi−O−Si骨格へ転換する方法がある。
【特許文献1】特許第3674041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1は、CVD法により凹凸面上にシリカ系被膜を形成する従来の方法を示す端面図である。CVD法の場合、下地の形状に追従して被膜が成膜されるため、凹部1aを有する基板1(図1(a))の凹凸面上にCVD法によって形成されるシリカ系被膜20の表面には、下地の凹凸面を反映した凹部20aが深く形成されやすい(図1(b))。さらに、凹部1aの幅が狭くなると、凹部1aを被膜により十分に埋め込むことが困難になる傾向があり、凹部1a内で被膜内に空洞20bが形成されてしまう場合がある(図1(c))。CVD法の場合、デバイスの微細化の進行に伴って、凹凸面の形成や凹部の埋め込み性等の問題が顕著化している。
【0008】
下地の凹凸形状を緩和して平坦な表面を形成するための凹凸緩和性や、凹部への良好な埋め込み性を維持しながら絶縁膜を形成することは非常に重要である。凹凸緩和性が十分でないと、絶縁膜の表面を平坦にするためのCMP等の研磨工程に長時間を要することや、リソマージンが狭くなること等の問題を生じる。また、絶縁膜の凹部への埋め込みが十分でないと、所望の絶縁性が発揮されずにデバイスの性能悪化を招く。半導体デバイスの微細化に伴い、この埋め込み性の問題からCVD法による絶縁膜の形成が非常に困難になりつつあるのが現状である。
【0009】
ゾル−ゲル法は、凹部への埋め込み性の点でCVD法よりも有利である。しかし、ゾル−ゲル法は、形成されるシリカ系被膜の機械強度が一般にCVD法に比べて低い。また、シロキサン樹脂の縮合に伴う収縮によって下地の凹凸面に追従した凹部が形成されるため、厚膜の塗布が必要となる。そのため、平坦化のための研磨工程に長時間を要するという問題がある。
【0010】
SiNを用いた塗布法は、微細スペースへの埋め込み性に優れ、下地の凹凸緩和性にも優れている。また、この方法によれば緻密なシロキサン骨格が形成できるため、比較的良好な機械強度を有する絶縁膜が形成される。しかし、SiNを酸化する工程が必要であり、またSiNよりも更に安全性の高い材料を用いることが望まれる。
【0011】
上記特許文献1に記載されるようなシリカ系被膜形成用組成物を用いることにより、SiNを用いることなく、比較的良好な機械強度を有する絶縁膜を形成することが可能である。しかしながら、本発明者らの検討の結果、凹凸面上に絶縁膜を形成したときの凹凸緩和性の点ではまだ改善が必要であることが明らかとなった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、十分に低い比誘電率及び良好な機械強度を有するシリカ系被膜を形成できるとともに、凹凸面を覆うシリカ系被膜を形成したときの凹凸緩和性に優れるシリカ系被膜形成用組成物を提供することにある。また、本発明は係るシリカ系被膜形成用組成物を用いて得ることのできるシリカ系被膜及びその形成方法を提供することを目的とする。さらに、本発明はシリカ系被膜を備える電子部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するべく鋭意検討の結果、本発明者らは、特定のシロキサン樹脂をアンモニウム塩と組合わせることにより、機械強度ばかりでなく、凹凸緩和性にも優れるシリカ系被膜用組成物を得ることが可能であることを見出し、係る知見に基づいて本発明の完成に至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る塗布型のシリカ系被膜形成用組成物は、(a)成分:テトラアルコキシシラン及びオルガノトリアルコキシシランを含むアルコキシシランを、マレイン酸及び/又はマロン酸の存在下に加水分解重縮合して得られる、500〜1500の重量平均分子量を有するシロキサン樹脂と、(b)成分:アンモニウム塩とを含有する。
【0015】
上記本発明に係るシリカ系被膜形成用組成物は、十分に低い比誘電率及び良好な機械強度を有するシリカ系被膜を形成できるとともに、凹凸面を覆うシリカ系被膜を形成したときの凹凸緩和性にも優れる。マレイン酸及びマロン酸以外の酸を用いた場合、シロキサン樹脂の重量平均分子量が500〜1500であっても凹凸緩和性は劣る傾向にあり、マレイン酸又はマロン酸を用いた場合であっても、シロキサン樹脂の重量平均分子量が上記範囲外であると凹凸緩和性が劣る傾向があることが本発明者らの実験より明らかとなった。また、アンモニウム塩の添加により、得られる被膜の機械強度が十分に高められる。なお、上記「重量平均分子量」の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算される換算値である。
【0016】
シロキサン樹脂を得るために用いられるオルガノトリアルコキシシランは、好ましくはメチルトリアルコキシシランである。これにより本発明による効果がより顕著に奏される。
【0017】
シロキサン樹脂を得るために用いられるアルコキシシランにおいて、テトラアルコキシシラン1molに対するオルガノトリアルコキシシランの比率は好ましくは0.4〜2molである。これにより本発明による効果がより顕著に奏される。
【0018】
本発明に係るシリカ系被膜形成用組成物は、凹凸緩和性に優れることから、凹凸面を被覆するシリカ系被膜を形成するために用いられるときに特に有用である。
【0019】
本発明に係るシリカ系被膜の形成方法は、上記本発明に係るシリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、塗布膜を焼成する工程とを備える。本発明に係る方法によれば、十分に低い比誘電率及び良好な機械強度を有するシリカ系被膜を、下地の凹凸面の形状を緩和しながら形成することができる。本発明に係る方法は、シリカ系被膜形成用組成物を基板の凹凸面に塗布するときに特に有効である。
【0020】
本発明に係るシリカ系被膜は、上記本発明に係るシリカ系被膜の形成方法により形成することができるものである。本発明に係るシリカ系被膜は、十分に低い比誘電率及び良好な機械強度を有するとともに、表面の凹凸が少ない。
【0021】
本発明に係る電子部品は、基板と、該基板上に形成された本発明に係るシリカ系被膜とを具備する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、十分に低い比誘電率及び良好な機械強度を有するシリカ系被膜を、下地の凹凸面の形状を十分に緩和しながら形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本実施形態に係るシリカ系被膜形成用組成物は、シロキサン樹脂と、アンモニウム塩とを少なくとも含有する。
【0025】
シロキサン樹脂として、テトラアルコキシシラン及びオルガノトリアルコキシシランを含むアルコキシシランをマレイン酸及び/又はマロン酸の存在下に加水分解重縮合して得られるものが用いられる。マレイン酸及び/又はマロン酸が加水分解触媒として作用して、アルコキシシランからシロキサン樹脂が生成する。
【0026】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン及びテトラフェノキシシランが挙げられる。これらの中でも適度な反応性や反応副生成物抑制の点から、テトラエトキシシランが好ましい。
【0027】
オルガノトリアルコキシシランとしては、例えば、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−iso−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン及び3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらの中でも、熱的安定性、被膜の下地との密着性、反応副生成物抑制の観点から、トリエトキシシランのようなメチルトリアルコキシシランを用いることが好ましい。
【0028】
シロキサン樹脂を得るために用いられるアルコキシシランにおいて、テトラアルコキシシラン1molに対するオルガノトリアルコキシシランの比率は好ましくは0.4〜2molである。シリカ系被膜の下地との密着性やシリカ系被膜の機械強度向上の観点からは、この比率0.4〜1.5molであることがより好ましく、0.6〜1.3molであることが更に好ましい。
【0029】
アルコキシシランの加水分解重縮合反応は、マレイン酸及びマロン酸のうち少なくとも一方の加水分解触媒の存在下に行われる。テトラアルコキシシランの量をAmol、オルガノトリアルコキシシランの量をBmolとしたときに、加水分解触媒(マレイン酸とマロン酸の合計量)の比率は、(4A+3B)/5000〜(4A+3B)/10の範囲内にあることが好ましく、(4A+3B)/1000〜(4A+3B)/100の範囲内にあることがさらに好ましい。加水分解触媒の比率を係る範囲内とすることにより、アルコキシシランとの適度な反応性及び合成後の組成物の良好な安定性が得られる。
【0030】
シロキサン樹脂は、500〜1500の重量平均分子量を有する。シロキサン樹脂の重量平均分子量がこの範囲内にないと、マレイン酸又はマロン酸の存在下に得たものであっても凹凸緩和性が低下する傾向がある。同様の観点から、シロキサン樹脂の重量平均分子量は好ましくは700〜1300、より好ましくは700〜1100である。
【0031】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)により測定され、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算される換算値である。重量平均分子量(Mw)は、例えば、以下の条件のGPCにより測定することができる。
試料:シリカ系被膜形成用組成物10μmL
標準ポリスチレン:東ソー株式会社製標準ポリスチレン(分子量:190000、17900、9100、2980、578、474、370、266)
検出器:株式会社日立製作所社製RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレータ:株式会社日立製作所社製GPCインテグレーター、商品名「D−2200」
ポンプ:株式会社日立製作所社製、商品名「L−6000」
デガス装置:昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム:日立化成工業株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:23℃
流速:1.75mL/分
測定時間:45分
【0032】
加水分解重縮合反応の条件を調整することにより、シロキサン樹脂の重量平均分子量を500〜1500の範囲内とすることができる。例えば、シロキサン樹脂を得るためのゾルーゲル反応中の溶液温度やゾルーゲル反応中の攪拌時間の調整により生成するシロキサン樹脂の重量平均分子量を調整することか可能である。一般的には、ゾルーゲル反応中の溶液温度が高いほど、攪拌時間が長いほど得られるシロキサン樹脂の重量平均分子量は大きくなる傾向にある。
【0033】
本実施形態に係るシリカ系被膜形成用組成物は、焼成の際にシロキサン樹脂の硬化を十分に進行させるためのオニウム塩としてアンモニウム塩を含有する。
【0034】
アンモニウム塩の具体例としては、アンモニウムハイドロオキシド、アンモニウムフルオライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、ヨウ化アンモニウム、燐酸アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、蟻酸アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、フマル酸アンモニウム塩、フタル酸アンモニウム塩、マロン酸アンモニウム塩、コハク酸アンモニウム塩、酒石酸アンモニウム塩、リンゴ酸アンモニウム塩、乳酸アンモニウム塩、クエン酸アンモニウム塩、酢酸アンモニウム塩、プロピオン酸アンモニウム塩、ブタン酸アンモニウム塩、ペンタン酸アンモニウム塩、ヘキサン酸アンモニウム塩、ヘプタン酸アンモニウム塩、オクタン酸アンモニウム塩、ノナン酸アンモニウム塩、デカン酸アンモニウム塩、シュウ酸アンモニウム塩、アジピン酸アンモニウム塩、セバシン酸アンモニウム塩、酪酸アンモニウム塩、オレイン酸アンモニウム塩、ステアリン酸アンモニウム塩、リノール酸アンモニウム塩、リノレイン酸アンモニウム塩、サリチル酸アンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、安息香酸アンモニウム塩、p−アミノ安息香酸アンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸アンモニウム塩、メタンスルホン酸アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルフォン酸アンモニウム塩、及びトリフルオロエタンスルフォン酸アンモニウム塩が挙げられる。
【0035】
また、上記アンモニウム塩のアンモニウムの部分をメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、又はトリエタノールアンモニウムに置換したアンモニウム塩を用いてもよい。
【0036】
組成物の安定性の観点から、4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウムオキサイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラブチルアンモニウムオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムフロライド、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩及びテトラメチルアンモニウム硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアンモニウム塩を組成物が含有することが好ましい。これらの中でも、シリカ系被膜の機械強度及び電気特性の見地から、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩及びテトラメチルアンモニウム硫酸塩が特に好ましい。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0037】
オニウム塩の配合割合は、シロキサン樹脂の総質量に対して、0.001〜0.5質量%であることが好ましく、0.01〜0.1質量%であることがさらに好ましい。この配合割合が0.001質量%未満では、最終的に得られるシリカ系被膜の電気特性、機械強度等が低下する傾向があり、0.5質量%を超えると組成物の安定性、成膜性等が低下する傾向や、シリカ系被膜の平坦性、電気特性、プロセス適合性が低下する傾向がある。
【0038】
シリカ系被膜形成用組成物は、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、非プロトン性溶媒及び/又はプロトン性溶媒が用いられる。また、シリカ系被膜形成用組成物は、目的とする特性を損なわない範囲で、必要に応じて水を含んでいてもよい。
【0039】
非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ジ−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶媒;アセトニトリル、N―メチルピロリジノン、N―エチルピロリジノン、N―プロピルピロリジノン、N―ブチルピロリジノン、N―ヘキシルピロリジノン、N―シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0040】
プロトン性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等のエステル系溶媒などが挙げられる。
【0041】
有機溶媒(非プロトン性溶媒とプロトン性溶媒との合計)の配合割合は、シロキサン樹脂の濃度が組成物全体質量に対して3〜25質量%となるような量であることが好ましい。シロキサン樹脂の濃度が3重量%未満であると成膜性等が低下する傾向があり、25質量%を超えると安定性に問題が生じる傾向がある。
【0042】
シリカ系被膜形成用組成物は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を実質的に含有しないことが望ましい。これら金属が含まれる場合でも組成物中のそれらの金属イオン濃度が100ppb以下であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましい。これらの金属イオン濃度が100ppbを超えると、組成物から得られるシリカ系被膜を有する半導体素子等の電子部品に金属イオンが流入し易くなって、デバイス性能そのものに悪影響を与えるおそれがある。したがって、必要に応じて、例えば、イオン交換フィルター等を使用してアルカリ金属やアルカリ土類金属を組成物中から除去することが有効である。しかし、光導波路等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の存在があまり問題にならない用途に用いる際は、その目的を損なわないのであれば、この限りではない。
【0043】
シリカ系被膜形成用組成物は、例えば、テトラアルコキシシラン及びオルガノトリアルコキシシランを含むアルコキシシランを、溶媒を含有する反応液中でマレイン酸及び/又はマロン酸の存在下に加水分解重縮合してシロキサン樹脂を生成させる工程と、シロキサン樹脂を含有する反応液にアンモニウム塩を加える工程とを備える方法により得ることができる。
【0044】
加水分解重縮合は、アルコキシシランと、マレイン酸及び/又はマロン酸と、溶媒とを含有する反応液中で進行させることができる。反応液は、加水分解水を含有することが好ましい。加水分解水の比率は、テトラアルコキシシランの量をAmol、オルガノトリアルコキシシランの量をBmolとしたときに、(4A+3B)/3〜(4A+3B)×2の範囲内にあることが好ましく、(4A+3B)/2〜(4A+3B)の範囲内にあることがさらに好ましい。加水分解水の比率を係る範囲内とすることは、アルコキシシランへの反応性、合成後の組成物の安定性及び下地への塗布性の観点から好ましい。
【0045】
反応液の溶媒として上記有機溶媒を用いてもよいし、他の溶媒中で加水分解重縮合反応を行った後、反応液に有機溶媒を加えてもよいし、溶媒置換してもよい。
【0046】
オニウム塩は、必要に応じて水又は有機溶媒に溶解又は希釈してた溶液の状態で反応液に添加することができる。オニウム塩の水溶液を反応液に添加する場合、そのpHが1.5〜10であると好ましく、2〜8であるとより好ましく、3〜6であると特に好ましい。このpHが範囲外では、組成物の安定性、成膜性等が低下する傾向がある。オニウム塩の添加は、例えば、アルコキシシランの加水分解重縮合の前でも加水分解重縮合中でもよいし、加水分解重縮合反応が終了した後でもよい。
【0047】
以上のような本実施形態に係るシリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、塗布膜を焼成する工程とを備える方法によりシリカ系被膜の形成することができる。図2、3及び4は、シリカ系被膜を形成する工程を含む、電子部品の製造方法の一実施形態を端面図により示す工程図である。
【0048】
図2に示されるように、シリコンウエハ1の表面にパターン状に形成されたトレンチ(シャロートレンチ)1aを充填する絶縁膜であるシリカ系被膜(STI層)20が形成される。トレンチ1aは、シリコンウエハ1上にレジストパターン41を形成し(図2(a))、レジストパターンによって覆われていない部分のシリコンウエハをエッチングし、その後レジストパターン41を除去する(図2(b))方法により形成される。トレンチ1aを有する凹凸面にシリカ系被膜形成用組成物を塗付し、塗布膜を焼成してシリカ系被膜20が形成される(図2(c))。形成されたシリカ系被膜20は、トレンチ1aを充填する部分(STI層)を残して除去される(図2(d))。シリカ系被膜20の形成方法の詳細については後述する。
【0049】
次いで、図3に示されるように、シリコンウエハ1表面のSTI層20によって互いに分離された領域上にトランジスタ3が設けられ(図3(a))、トランジスタ3を覆う絶縁膜であるシリカ系被膜(PMD層)22が形成される(図3(b))。PMD層22の表面は研磨等の方法により平坦化される(図3(c))。
【0050】
図4に示されるように、PMD層22上に金属配線層5が設けられる。金属配線層5は、PMD層22を貫通する導電層7を介してトランジスタ3と電気的に接続される。導電層7は、PMD層22上にレジストパターン43を形成し(図4(a))、レジストパターン43をマスクとして用いたエッチングによりトランジスタ3が露出する開口22cをPMD層22に形成し、その後レジストパターン43を除去して(図4(b))、開口7を導電材料で充填する(図4(c))方法により形成される。導電層7上に金属配線層5が設けられる。
【0051】
更に、図5に示されるように、金属配線層5を覆う絶縁膜であるシリカ系被膜(ILD層)24が形成される。ILD層24の表面は必要により平坦化される。以上の工程により、STI層、PMD層及びILD層を絶縁膜として有する半導体素子である電子部品100が得られる。
【0052】
以上のような実施形態において、STI層20、PMD層22及びILD層24から選ばれる少なくとも1つの絶縁層が、上述の本実施形態に係るシリカ系被膜形成用組成物の塗布及び焼成を経る方法によって形成される。
【0053】
シリカ系被膜形成用組成物を塗布する方法は特に限定されないが、成膜性及び膜均一性に優れるスピンコート法が好ましい。スピンコートの回転数は、好ましくは500〜5000回転/分、より好ましくは500〜3000回転/分である。回転数が500回転/分未満では膜均一性が低下する傾向があり、5000回転/分を超えると成膜性が低下する傾向がある。
【0054】
塗布膜を好ましくは50〜350℃、より好ましくは100〜300℃の加熱により、乾燥させる。この乾燥により塗布膜中の有機溶媒の大部分が除去される。乾燥温度が50℃未満では、有機溶媒の十分な除去が困難になる傾向がある。
【0055】
次いで、乾燥後の塗布膜を好ましくは250〜600℃、より好ましくは350〜500℃の加熱により焼成する。焼成によりシロキサン樹脂が最終硬化されて、シリカ系被膜が形成される。この加熱温度が250℃未満では、十分な硬化が達成されない傾向があり、600℃を超えると、金属配線層がある場合に、入熱量が増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。
【0056】
また、焼成のための加熱時間は15〜180分が好ましく、30〜60分であるとより好ましい。この加熱時間が180分を超えると、入熱量が過度に増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。また、加熱装置としては、石英チューブ炉その他の炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール(RTA)等の加熱処理装置を用いることが好ましい。
【0057】
焼成は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下で行うのが好ましい。また、酸素濃度が1000ppm以下であると好ましい。
【0058】
焼成後のシリカ系被膜(絶縁膜)20,22,24のそれぞれの表面において、下地の凹凸面の形状を反映した凹部20a,22a又は24aが形成される場合がある。ただし、本実施形態に係るシリカ系被膜形成用組成物を用いることにより、凹凸面のこれら凹部の深さ、言い換えると絶縁膜表面に残留する段差は十分に小さいレベルに抑制される。
【0059】
本発明は以上説明したような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変形が可能である。
【0060】
本発明に係るシリカ系被膜形成用組成物は、好ましくは0.1〜2.0μm、より好ましくは0.2〜1.5μm、さらに好ましくは0.2〜1.0μmの膜厚を有するシリカ系被膜(絶縁膜)を形成するために用いることができる。
【0061】
シリカ系被膜の膜厚を調整するために、例えば、組成物中のシロキサン樹脂の濃度が調整される。この場合、膜厚を厚くする場合にはシロキサン樹脂の濃度を高くすれば膜厚が厚くなる傾向があり、シロキサン樹脂の濃度を低くすれば膜厚が薄くなる傾向がある。また、スピンコート法により組成物を塗布する場合は、回転数や塗布回数を調整することにより膜厚を調整することもできる。この場合は、回転数を下げたり、塗布回数を増やしたりすれば膜厚が厚くなる傾向があり、回転数を上げたり、塗布回数を減らしたりすれば膜厚が薄くなる傾向がある。
【0062】
シリカ系被膜が形成される下地としての基板は特に制限されず、ガラス基板等であってもよい。
【0063】
本発明に係るシリカ系被膜形成用組成物は凹凸緩和性が優れることから、凹凸面上にシリカ系被膜形成用組成物を塗布する工程を含む方法によりシリカ系被膜を形成する場合に特に有用である。より具体的には、凸部高さ(又は凹部深さ)が100〜1000nm、より好ましくは250〜500nm程度の凹凸面や、凹部の幅が10〜3000nm、より好ましくは20〜2000nm程度の凹凸面上にシリカ系被膜を形成することが好ましい。また、これらの凹凸面のパターンが複数設けられていることがより好ましい。
【0064】
本発明に係る組成物は、例えば、半導体素子、多層配線板等のシリカ系被膜を有する電子部品、液晶用部品を製造するために好適に用いられる。例えば半導体素子においては、表面保護膜(パッシベーション膜)、バッファーコート膜、層間絶縁膜等を形成するための組成物として好適に用いられる。
【0065】
本発明に係るシリカ系被膜形成用組成物は凹凸緩和性が優れるため、例えば、シリカ系被膜形成用組成物の塗布量を低減させることが可能であったり、シリカ系被膜形成後の余分な凸部の研磨量を少なくする又は省略することが可能となる。多層配線を有する半導体デバイスにおいて、下層配線が十分に平坦でないと上層配線がショートするなどの問題が生じ得るが、本発明のシリカ系被膜形成用組成物を用いれば、平坦性のよい絶縁膜が形勢されるため、配線ショートの低減が可能である。さらに本発明のシリカ系被膜系形成用組成物によって形成されるシリカ系被膜の機械強度が高いため、パッケージプロセス等での歩留まり低下を防止することが可能である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0067】
実施例1
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液に、マレイン酸0.11gを水7.5gに溶解させたマレイン酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた。次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.42gを添加し、0.5時間反応させて、100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0068】
実施例2
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液に、マレイン酸0.11gを水7.5gに溶解させたマレイン酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で24時間反応させた。次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.42gを添加し、0.5時間反応させて、100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0069】
実施例3
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液に、マロン酸0.1gを水7.5gに溶解させたマロン酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた。次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.42gを添加し、0.5時間反応させ、100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0070】
比較例1
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液を60℃に加温し、そこにマレイン酸0.11gを水7.5gに溶解させたマレイン酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で3時間反応させた。次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.42gを添加し、0.5時間反応させて、100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0071】
比較例2
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.8gに溶解させた溶液に、マレイン酸0.11gを水7.5gに溶解させたマレイン酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させて100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0072】
比較例3
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液に、酢酸0.06gを水7.5gに溶解させた酢酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた。次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.42gを添加し、0.5時間反応させて、100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0073】
比較例4
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液に、硝酸0.06gを水7.5gに溶解させた硝酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた。次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.42gを添加し、0.5時間反応させて、100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0074】
比較例5
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液に、硝酸0.06gを溶解させた水7.5gを攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させて100gのシリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0075】
比較例6
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液に、リン酸0.09gを水7.5gに溶解させたリン酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた。次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.42gを添加し、0.5時間反応させて、100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0076】
比較例7
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液に、リン酸0.09gを水7.5gに溶解させたリン酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた。次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.42gを添加し、0.5時間反応させて、100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0077】
比較例8
テトラエトキシシラン17.2gとメチルトリエトキシシラン13.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4gに溶解させた溶液中に、リン酸0.02gを水7.5gに溶解させたリン酸溶液を攪拌下で5分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた。次いで2.4重量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液0.42gを添加し、0.5時間反応させて、100gのシリカ系被膜形成用組成物を得た。
【0078】
シロキサン樹脂の重量平均分子量
上記各実施例及び比較例で作製したシリカ系被膜形成用組成物中に含まれるシロキサン樹脂の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算した換算値として求めた。
【0079】
凹凸緩和性の評価
上記各実施例及び比較例で作製したそれぞれのシリカ系被膜形成用組成物を、幅1000nm、深さ700nmの凹部を有する凹凸面が形成されたシリコンウエハー上に、回転数1000〜4000rpmで30秒間スピンコートした。シリコンウエハーが平らな部分において最終加熱後に凹部の深さ(700nm)に対して45%の膜厚を有する被膜が形成されるように、塗布量を調整した。スピンコート後、250℃で3分間加熱した。その後、O濃度が100ppm前後にコントロールされている石英チューブ炉内で425℃で30分間加熱して、被膜を最終硬化した。
【0080】
形成された被膜の断面を日立製作所社製の走査型電子顕微鏡S4800を用いて観察し、被膜の表面に形成された残留段差(図6に示すAの値)を求めた。この残留段差の値が小さいほど凹凸緩和性に優れることを意味する。
【0081】
比誘電率、機械強度の評価
上記各実施例及び比較例で作製したそれぞれのシリカ系被膜形成用組成物をSiウエハー上に滴下し、回転数1000〜4000rpmで30秒間スピンコートした。塗布量は、膜厚が0.5〜0.6μmの被膜が形成されるように調整した。スピンコート後、250℃で3分間加熱した。その後、O濃度が100ppm前後にコントロールされている石英チューブ炉内で425℃で30分間加熱して、被膜を最終硬化した。なお、シリカ系被膜の膜厚が0.5〜0.6μmであれば、被膜の特性評価において下地の影響を防止できる。
【0082】
形成されたシリカ系被膜上に、直径2mm、厚さ0.1μmのアルミニウム被膜を真空蒸着法で形成して、比誘電率測定用の試料を得た。この試料の電荷容量を温度23±2℃、湿度40±10%、使用周波数1MHzの条件で測定した。測定は、LFインピーダンスアナライザー(横河電機社製:HP4192A)に、誘電体テスト・フィクスチャー(横河電機製:HP16451B)を接続した装置を用いて行った。シリカ系被膜にHe−Neレーザー照射し、照射により生じた位相差に基づいて被膜の膜厚を求めた。測定装置はガートナー社製のエリプソメータL116Bを用いた。
【0083】
そして、電荷容量及びの測定値を以下の式に代入し、シリカ系被膜の比誘電率を算出した。
シリカ系被膜の比誘電率=3.597×10−2×電荷容量(pF)×シリカ系被膜の膜厚(μm)
【0084】
ナノインデンターSA2(DCM,MTS社製)を用い、温度:23℃±2℃、周波数:75Hzの条件でシリカ系被膜の弾性率を測定した。押し込み深さは、被膜の膜厚の1/10以下で、一定の弾性率が示される範囲内とした。弾性率が高いほど機械強度が良好でわること意味する。
【0085】
評価結果を、シリカ系被膜用組成物の組成とともに表1、2にまとめて示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
表1に示されるように、マレイン酸又はマロン酸の存在下での加水分解重縮合によって得られた重量平均分子量が500〜1500のシロキサン樹脂とアンモニウム塩を組合わせた実施例1〜3によれば、凹凸緩和性、機械強度及び比誘電率の点で十分に優れていた。一方、表2に示されるように、マレイン酸及びマロン酸以外の加水分解触媒を用いて得たシロキサン樹脂や、重量平均分子量が500〜1500の範囲内にないシロキサン樹脂を用いたり、アンモニウム塩を用いない場合には、凹凸緩和性及び機械強度のうち少なくともいずれかに関して十分なレベルが達成されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、凹凸緩和性に優れ、且つ高機械強度のシリカ系被膜を得ることができる。そのため、微細化された構造を有する電子部品の絶縁膜を形成するために非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】従来のCVD法によりシリカ系被膜を形成する工程を示す端面図である。
【図2】電子部品の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図3】電子部品の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図4】電子部品の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図5】電子部品の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図6】残留段差の測定方法を示す端面図である。
【符号の説明】
【0091】
1…シリコンウエハ、1a…トレンチ、3…トランジスタ、7…導電層、20…シリカ系被膜(STI層)、20a…凹部、20b…空洞、22…シリカ系被膜(PMD層)、22a…凹部、22c…開口、24…シリカ系被膜(ILD層)、24a…凹部、41,43…レジストパターン、100…電子部品、A…残留段差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分:テトラアルコキシシラン及びオルガノトリアルコキシシランを含むアルコキシシランを、マレイン酸及び/又はマロン酸の存在下に加水分解重縮合して得られる、500〜1500の重量平均分子量を有するシロキサン樹脂と、
(b)成分:アンモニウム塩と、
を含有する塗布型のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項2】
前記オルガノトリアルコキシシランがメチルトリアルコキシシランである、請求項1記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項3】
前記テトラアルコキシシラン1molに対する前記オルガノトリアルコキシシランの比率が0.4〜2molである、請求項1又は2記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項4】
凹凸面を被覆するシリカ系被膜を形成するために用いられる、請求項1〜3いずれか一項に記載のシリカ系被膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリカ系被膜形成用組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜を焼成する工程と、を備えるシリカ系被膜の形成方法。
【請求項6】
前記シリカ系被膜形成用組成物を前記基板の凹凸面に塗布する、請求項5記載のシリカ系被膜の形成方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載のシリカ系被膜の形成方法により形成することができるシリカ系被膜。
【請求項8】
基板と、該基板上に形成された請求項7記載のシリカ系被膜と、を具備する電子部品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−285667(P2008−285667A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106960(P2008−106960)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】