説明

シリンダヘッドカバーおよび内燃機関

【課題】 結露を防止することができるシリンダヘッドカバーを提供する。
【解決手段】 シリンダヘッドカバー110は、蓄熱タンク140を有する内燃機関1のシリンダヘッドカバーであって、蓄熱タンク140と導通関係にある貯留タンク121,122が外部に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンダヘッドカバーおよび内燃機関に関し、より特定的には、排気を吸気に還流する内燃機関のシリンダヘッドカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関は、たとえば特許第3350369号公報(特許文献1)および実開平5−73216号公報(特許文献2)に開示されている。
【特許文献1】特許第3350369号公報
【特許文献2】実開平5−73216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、PCV(ポジティブクランクケースベンチレーション)バルブの凍結を防ぐ技術が開示されている。特許文献2では、PCVバルブを加熱する発熱ヒータを設けたブローバイ還流装置が開示されている。
【0004】
しかしながら、上述のいずれの技術においても、オイル劣化防止のために、シリンダヘッドカバーを開示する技術が開示されていない。
【0005】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、オイルの劣化を防止することが可能なシリンダヘッドカバーおよび内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従ったシリンダヘッドカバーは、蓄熱タンクを有する内燃機関のシリンダヘッドカバーであって、蓄熱タンクと導通関係にある貯留タンクが外部に設けられている。
【0007】
このように構成されたシリンダヘッドカバーでは、蓄熱タンク内の温水により、シリンダヘッドカバーを加熱することによってカバー内における結露を抑制することができる。その結果オイルの劣化を防止できる。
【0008】
この発明に従った内燃機関は、水蒸気を含むブローバイガスまたは排気ガスを吸気に還流し、内部部品がオイルで潤滑される内燃機関であって、ブローバイガスまたは排気ガスが吸気に還流される前にブローバイガスまたは排気ガスを加熱する熱交換部と、熱交換部に熱を供給する蓄熱タンクとを備える。
【0009】
このように構成された内燃機関では、蓄熱タンクから供給された熱により、熱交換部は、水蒸気を含むガスを加熱する。これにより、ガス内での結露を防止することができ、オイルの劣化を防止できる。
【0010】
好ましくは、蓄熱タンク内の温水を加熱する加熱部をさらに備える。
【0011】
この場合、蓄熱タンク内の温度が低い場合に蓄熱タンク内の温水を加熱でき、より確実に排気を加熱することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に従えば、オイルの劣化を防止できるシリンダヘッドカバーおよび内燃機関を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。
【0014】
図1は、この発明に従った内燃機関の模式図である。図1を参照して、この発明に従った内燃機関1は、エンジン本体10に取付けられたシリンダヘッドカバー110を備え、シリンダヘッドカバー110には、蓄熱タンク140と導通関係にある貯留タンク121,122がシリンダヘッドカバー110の外部に設けられている。エンジン本体10のヘッド部分を保護するためにシリンダヘッドカバー110が設けられ、シリンダヘッドカバー110の両端面に、温水タンクである貯留タンク121,122が設けられる。貯留タンク121,122は互いに長手方向に沿って平行に延び、温水によりシリンダヘッドカバー110を加熱する。貯留タンク121には配管131,132が接続され、貯留タンク122には、配管133,134が接続される。配管131,132,133,134は、ともに蓄熱タンク140と接続され、蓄熱タンク140内の温水が配管132を経由して貯留タンク121へ送られ、シリンダヘッドカバー110を加熱した後に配管131により蓄熱タンク140へ送られる。
【0015】
配管132の経路にはポンプが設けられ、このポンプにより蓄熱タンク140の温水が貯留タンク121へ送られる。
【0016】
また、貯留タンク121と反対側に貯留タンク122が設けられ、貯留タンク122へは、配管134を経由して蓄熱タンク140内の温水が供給される。貯留タンク122へ送られた温水は配管133を経由して再び蓄熱タンク140に溜められる。
【0017】
配管131,134は、それぞれ冷媒としての温水の通路であり、ステンレス、アルミニウム、樹脂などのさまざまな物質により形成される。
【0018】
蓄熱タンク140は熱を貯留するためのタンクであり、車両の一部分に設置される。蓄熱タンク140内の温水の温度を適宜コントロールするためにヒータ138が設けられる。ヒータ138は電源136およびスイッチ137と接続され、蓄熱タンク140内の温水の温度が低い特にヒータ138を用いて蓄熱タンク140内の温水を加熱する。
【0019】
なお、この実施の形態では冷媒として温水を用いているが、これに限られず、油を冷媒として用いてもよい。すなわち蓄熱タンク140内には油が溜められて、このオイルが配管134,132を経由してシリンダヘッドカバー110へ供給される。
【0020】
蓄熱タンク140内部にヒータ138が設けられており、ヒータ138は蓄熱タンク140内の冷媒を加熱することが可能である。常にこのヒータ138を設ける必要はなく、たとえば常に高い温度で使用される内燃機関1においては、蓄熱タンク140内の温水の温度も高いので、ヒータ138を設けなくてもよい。ヒータ138は電源136によって駆動され、スイッチ137が閉じるとヒータ138へ電源136から電力が供給され、ヒータ138が発熱する。この熱が蓄熱タンク140内の温水に伝わり、温水の温度が高くなる。
【0021】
ECU(電子制御装置)150が設けられる。電子制御装置150は、シリンダヘッドカバー110の温度、蓄熱タンク140内の温水の温度を検出し、これらの検出データに基づきポンプ135およびスイッチ137を駆動させる。すなわち、蓄熱タンク140内の温水の温度が所定値以上であれば、ポンプ135により蓄熱タンク140内の温水をシリンダヘッドカバー110側部に供給すればよいが、蓄熱タンク140内の温度が低い場合には、蓄熱タンク140内部を駆動させるためにスイッチ137を入れる。これにより電源136からコイル形状のヒータ138へ電力が供給され、蓄熱タンク140内が暖まる。
【0022】
すなわち、この発明では蓄熱タンク140に溜まっている温水を利用してシリンダヘッドカバー110にある温水タンクとしての貯留タンク121,122を暖めて、シリンダヘッドカバー110内の結露を防止している。
【0023】
図2は、図1中のII−II線に沿った断面図である。図2を参照して、この発明の実施の形態2に従った内燃機関1では、燃焼室19を有するエンジン本体10と、エンジン本体10のブローバイガスを外部へ取出すための経路としての第1経路21と、燃焼室19に空気を送込む吸気ポート30と、吸気ポート30と燃焼室19との境界部分に設けられる吸気バルブ41と、燃焼室19に燃料を直接噴射する燃料噴射装置としてのインジェクタ50とを備える。
【0024】
エンジンブロックとしてのエンジン本体10はクランクケース室11を有し、クランクケース室11から燃焼室19に向かってコネクティングロッド12が延びている。コネクティングロッド12はピストン13に接続されており、ピストン13の往復運動をコネクティングロッド12が回転運動に変換する。
【0025】
燃焼室19はピストン13のヘッド、吸気バルブ41および排気バルブ42で取囲まれた空間であり、この燃焼室19内で燃料の燃焼(爆発)を行なわれる。燃焼室19に燃料を噴射するためのインジェクタ50が吸気ポート30側に設けられている。吸気バルブ41と排気バルブ42との間には点火プラグ14が配置されている。吸気バルブ41は図2で示すように開いた状態において空気を燃焼室19に導入する。燃焼室19に導入された空気は、ピストン13で圧縮空気とされ、さらにインジェクタ50からの燃料(ガソリン)が噴射され、点火プラグ14により着火する。これにより燃焼かつ爆発が生じる。
【0026】
圧縮工程において、シリンダ壁18とピストン13との間からブローバイガスがクランクケース室11へ漏れる。ブローバイガスは未燃焼ガスと燃焼ガスとを含んでおり、水蒸気成分を含む。ブローバイガスは矢印61で示すようにクランクケース室11から上部室15へ連なる縦孔16を介して上部室15へ到達する。ブローバイガスはPCVバルブ55を経由し、第1経路21を通過して吸気ポート30へ戻される。
【0027】
また、上部室15のブローバイガスは第2経路22を通過してスロットル58の上流へ戻される。なお、吸気ポート30へはエアクリーナ57およびスロットル58を通過した空気が導入される。
【0028】
上部室15はシリンダヘッドカバー110により規定され、シリンダヘッドカバー110の両側には貯留タンク121,122が設けられる。貯留タンク121,122には、ブローバイガスを暖めるための温水200が供給される。
【0029】
一般に、エンジンから発生するブローバイガスの量は、エンジンの負荷が大きいとき、すなわち吸気ポート30の負圧が低いときは多量に排出され、エンジンの負荷が少ないとき、すなわち吸気ポート30の負圧が高いときには排出量は少量となる。このため、エンジンの負荷に応じてブローバイガスの流量を調整するベンチレーションバルブとしてのPCVバルブ55が設けられる。
【0030】
PCVバルブ55の動作について説明する。まず、アイドル回転時には、ブローバイガスの発生は少量である。このブローバイガスは吸気ポート30の負圧に引かれることにより、主としてPCVバルブ55を経由して吸気ポート30へ導入される。また、負荷が軽いときも同様である。
【0031】
これに対して、加速時および高負荷時には、ブローバイガスは増大する。PCVバルブ55を追加することが可能な量のブローバイガスを超える量のブローバイガスが発生すると、そのブローバイガスは第2経路22を通過してスロットル58の上流側へ導入される。
【0032】
本発明ではこのブローバイガスを暖めるべくシリンダヘッドカバー110の両側に加熱のための貯留タンク121,122が設けられる。これにより、ブローバイガス中の水蒸気成分が液化することを防止できる。水分は内燃機関の内部部品を順渇するオイルを劣化させる。本発明では、水分の発生を防止するため、オイルの劣化を防ぐことができる。
【0033】
図3は、蓄熱タンクの配置を説明するために示す車両の斜視図である。図3を参照して、蓄熱タンク140は、たとえば車両500の前方に配置される。蓄熱タンク140と貯留タンク122とは配管133,134により導通される。配管134には電動モータポンプにより構成されるポンプ135が配置される。なお、蓄熱タンク140の位置は、図3で示す位置に限られず、たとえば車両前方中央であってもよい。
【0034】
次に、蓄熱タンクの作動について、フローチャートを用いて説明する。図4は、蓄熱タンクの動作を示すフローチャートである。まず、エンジン始動時には、蓄熱タンクの温度が基準値以上かどうかを判断する(ステップS1000)。
【0035】
このような判断は、たとえばECU150によって行なわれる。すなわち、蓄熱タンク140内のセンサがECU150へ蓄熱タンク140内の温度に関する情報を送る。蓄熱タンク140内の温度がたとえばシリンダヘッドカバー110の温度よりも低い場合には、蓄熱タンク140内の液体をシリンダヘッドカバー110へ送れば、シリンダヘッドカバー110の温度を低下させることになる。
【0036】
シリンダヘッドカバー110の温度を低下させると水蒸気成分が凝結しやすいため、蓄熱タンクの温度が基準値以下である場合には、ヒータ138のスイッチをオンにする(ステップS1200)。この制御はECU150によって行なう。
【0037】
再度蓄熱タンク内の温度を判断し、この温度が基準値以上となると、ポンプ135を駆動させる(ステップS1100)。これにより、温水がシリンダヘッドカバー110の側部に設けられた貯留タンク121,122に供給される。その結果、シリンダヘッドカバー110が加熱され、シリンダヘッドカバー110内での水蒸気の結露を防止することができる。
【0038】
すなわち、この発明では、シリンダヘッドカバー110に温水を流し、シリンダヘッドカバー110を加熱する。このとき温水200は、蓄熱タンク140から供給される。これにより、エンジン始動時と停止後のシリンダヘッドカバー110の温度を高くできる。その結果、凝縮水がシリンダヘッドカバー110内部に付かずにオイルの劣化を防止できる。
【0039】
この発明に従ったシリンダヘッドカバーは、蓄熱タンク140を有する内燃機関1のシリンダヘッドカバー110であって、蓄熱タンク140と導通関係にある貯留タンク121,122が外部に設けられている。
【0040】
この発明に従った内燃機関1は、水蒸気を含む排気(ブローバイガス)を吸気に還流し、内部部品がオイルで潤滑される内燃機関であって、ブローバイガスが吸気に還流される前にブローバイガスを加熱する熱交換部としての貯留タンク121,122と、貯留タンク121,122に熱を供給する蓄熱タンク140とを備える。蓄熱タンク140の温水を加熱する加熱部としてのヒータ138をさらに備える。
【0041】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、ここで示した実施の形態はさまざまなに変形することが可能である。まず、図2では、燃焼室19内に燃料を噴射するいわゆる直接噴射型のガソリンエンジンを示したが、これに限られるものではなく、吸気ポート30内に燃料を噴射する、いわゆるポート噴射のガソリンエンジンに本発明を適用してもよい。
【0042】
また、本発明はガソリンエンジンだけでなくディーゼルエンジンに適用してもよい。ディーゼルエンジンの場合、排気を吸気に還流させる、いわゆるEGR(exhaust-gas recirculation)が設けられる場合がある。ガソリンエンジンにもEGRが設けられる。このEGRの経路の一部分を加熱してもよい。この加熱手段としてこの発明に従った貯留タンク121,122ならびに蓄熱タンク140を用いることが可能である。さらに、エンジンにおけるシリンダの配置に関しても、直列型、V型、W型、水平対向型などのさまざまなエンジンに本発明を適用することが可能である。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は内燃機関の分野において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明に従った内燃機関の模式図である。
【図2】図1中のII−II線に沿った断面図である。
【図3】蓄熱タンクの配置を説明するために示す車両の斜視図である。
【図4】蓄熱タンクの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1 内燃機関、110 シリンダヘッドカバー、121,122 貯留タンク、140 蓄熱タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱タンクを有する内燃機関のシリンダヘッドカバーであって、
前記蓄熱タンクと導通関係にある貯留タンクが外部に設けられている、シリンダヘッドカバー。
【請求項2】
水蒸気を含むブローバイガスまたは排気ガスを吸気に還流し、内部部品がオイルで潤滑される内燃機関であって、
前記ブローバイガスまたは排気ガスが吸気に還流される前に前記ブローバイガスまたは排気ガスを加熱する熱交換部と、前記熱交換部に熱を供給する蓄熱タンクとを備えた、内燃機関。
【請求項3】
前記蓄熱タンク内の温水を加熱する加熱部をさらに備えた、請求項2に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−194105(P2006−194105A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4230(P2005−4230)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】