シート状基板剥離装置およびシート状基板剥離方法
【課題】成長基板に成長したシート状基板をその成長基板から自動的に剥離するシート状基板剥離装置と、シート状基板を成長基板から剥離するシート状基板剥離方法を提供する。
【解決手段】シート状基板剥離装置1はシート状シリコン基板を成長させるための成長用基板3と、シート状基板を剥離するための真空吸着パッド11と、シート状基板を搬送するためのベルヌーイ吸着パッド13とを備えている。成長基板3には、成長基板3を掴むようにシート状シリコン基板を成長させる第1面、第2面および第3面が設けられている。真空吸着パッド11は、成長基板において第2面が位置する一端側から第2面と対向する他端側に至る長さの3分の1以下の距離にところに位置する部分に成長したシート状シリコン基板の部分が吸着される。
【解決手段】シート状基板剥離装置1はシート状シリコン基板を成長させるための成長用基板3と、シート状基板を剥離するための真空吸着パッド11と、シート状基板を搬送するためのベルヌーイ吸着パッド13とを備えている。成長基板3には、成長基板3を掴むようにシート状シリコン基板を成長させる第1面、第2面および第3面が設けられている。真空吸着パッド11は、成長基板において第2面が位置する一端側から第2面と対向する他端側に至る長さの3分の1以下の距離にところに位置する部分に成長したシート状シリコン基板の部分が吸着される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状基板剥離装置およびシート状基板剥離方法に関し、特に、太陽電池の製造に使用されるシート状基板剥離装置と、シート状基板剥離方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池は単結晶シリコンウェハを用いて製造されてきた。しかし、単結晶シリコンウェハは、シリコンのインゴットを長時間かけて作製することによって製造されることからコストが非常に高くなるため、そのような単結晶ウェハから作製される太陽電池も当然に非常に高価なものとなっていた。
【0003】
近年、低コスト化を図って太陽電池のさらなる普及を図るために、ウェハとしては、主に多結晶シリコンが使用されるようになった。このような多結晶シリコンは、いわゆるキャスト法によって製造される。キャスト法とは、たとえば特許文献1に提案されているように、まず、坩堝内で溶融されたシリコンを坩堝の底から徐々に引き上げながら冷却を行なってシリコンを固化させることにより、坩堝の底面から成長した長い結晶粒を主体とするインゴット(塊状)を作製し、そして、このインゴットを所定の厚さにスライスすることによって太陽電池に使用可能なウェハを得るという手法である。
【0004】
ところが、キャスト法では、スライスを行なうために無駄になるシリコンが比較的多いという問題があった。そして、そのようなスライスを行なうための時間とコストが問題となっていた。そこで、最近では、このような問題点を解消するために、融液したシリコンからシート状の多結晶シリコンの板を直接製造する方法が種々提案されている。
【0005】
溶融したシリコンからシート状シリコン基板を製造する方法の一つとして、シリコンの融点以下の温度に保持された基板(成長基板)を、シリコンの融液に接触させ、シート状シリコン基板を得る方法がある。たとえば特許文献2では、点状、線状および面上の凸部のうち少なくともいずれかを有する成長基板にシリコンを成長させることによって、シート状シリコン基板を製造する手法が提案されている。この手法では、かかる成長基板を用いることで、凸部を結晶成長の起点としてシリコン結晶を成長させて、凸部から成長した各結晶をつながらせることによりデンドライト成長が抑制されて、平滑性に優れたシート状シリコン基板を製造することができるとされる。
【0006】
また、特許文献3では、溶融したシリコンに浸漬されて結晶成長がそれぞれ行なわれる第1面とその第1面と所定の位置関係にある第2面とを備えた成長基板を用いて、シート状シリコン基板を製造する手法が提案されている。特に、この成長基板によると、所定の配置関係による第1面と第2面とによってその第1面と第2面にそれぞれ成長するシート状のシリコン基板が成長基板を掴むような構造となることから、成長したシート状シリコン基板が成長基板から落下するのを低減することができるとされる。
【特許文献1】特開平11−021120号公報
【特許文献2】特開2001―223172号公報
【特許文献3】国際公開2004/016836号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のシート状基板の製造方法では、次のような問題点があった。成長基板の表面に成長したシート状シリコン基板を、太陽電池等の商品に加工する場合には、シート状シリコン基板を成長基板から剥離する必要がある。特に、シート状シリコン基板からなる太陽電池等の商品を低コストでかつ大量に生産するには、シート状シリコン基板を成長基板から自動的に剥離することが可能な剥離装置が望まれている。
【0008】
ところが、成長基板を掴むようにシート状シリコン基板を成長基板に成長させる手法では、シート状シリコン基板が成長基板に比較的強固に成長基板に密着しているため、シート状シリコン基板を成長基板から剥離することは困難であった。また、シート状シリコン基板は脆弱であるため、手作業による剥離であっても細心の注意が必要であり、このシート状シリコン基板を自動的に剥離することは極めて困難であった。
【0009】
本発明は上記問題に解決するためになされたものであり、一つの目的は、成長基板に成長したシート状基板をその成長基板から自動的に剥離するシート状基板剥離装置を提供することであり、他の目的は、そのようなシート状基板を成長基板から剥離するシート状基板剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るシート状基板剥離装置は、金属材料もしくは半導体材料のうち少なくともいずれか一方を含有する所定の物質の融液に成長用基板を接触させて、その成長用基板の表面に成長した物質からなるシート状基板を、成長用基板から剥離するためのシート状基板剥離装置である。そのシート状基板剥離装置は、吸着部と移動部とを有している。吸着部は、成長用基板に成長したシート状基板における所定の部分を吸着する。移動部は、吸着部によりシート状基板を吸着した状態で吸着部および成長基板部の少なくともいずれかを移動させることにより、シート状基板を成長用基板から剥離する。成長用基板は、平面状に延在してシート状基板を実質的に成長させる主面と、その主面の一端側に設けられ、主面に成長するシート状基板の部分とで成長基板における一端側の部分を掴む態様でシート状基板の部分を成長させる所定の端面とを備えている。吸着部は、成長用基板において一端側に位置する部分に成長したシート状基板の部分を吸着する機能を備えている。移動部は、吸着部によってシート状基板を吸着した状態で、端面に成長したシート状基板の部分を端面から引離す態様で主面に平行に移動させる機能を備えている。
【0011】
この構成によれば、成長基板の一端側を掴むように成長したシート状基板に対し、成長用基板において一端側に位置する部分に成長したシート状基板の部分を吸着した状態で、端面に成長したシート状基板の部分を端面から引離す態様で吸着部および成長基板部の少なくともいずれかを主面に平行に移動させることにより、シート状基板に圧縮応力や剪断応力が生じるのを抑えてシート状基板を損傷させることなく成長基板から剥離させることができる。なお、この明細書でいう平行とは、数学的な平行を意図するものではなく、装置の製造上の誤差、クリアランス、機械的な動作の遊び等を当然に含むものを意図する。
【0012】
より具体的にシート状基板を破損させることなく成長基板から剥離するには、移動部は、シート状基板が成長基板の一端側の部分を掴んでいたのを開放する態様でシート状基板を移動させる機能を有していることが好ましい。
【0013】
成長基板の一端側を掴むようにシート状基板を成長させるためには、成長基板における所定の端面は、主面と繋がる第1端面と、主面の法線ベクトルと反平行または鈍角をなす法線ベクトルを有して第1端面と繋がる第2端面とを含むことが好ましい。なお、この明細書でいう反平行および鈍角は、数学的に厳密な関係を意図するものではなく、製造上の誤差を当然に含むものである。
【0014】
また、シート状基板に圧縮応力や剪断応力が生じないようにして剥離するには、吸着部は、成長用基板の一端側の端部から端面が位置する側とは反対の他端側の端部に至る第1長さに対して、成長用基板の一端側の端部から第1長さの3分の1以下の第2長さのところに位置する部分に成長したシート状基板の部分を吸着する機能を有しているか、あるいは、吸着部は、シート状基板における端面に成長したシート状基板の部分を吸着する機能を有していることが好ましい。なお、この明細書でいう一端側および他端側とは、それぞれの端部とその近傍の領域を含む。
【0015】
成長基板から剥離されたシート状基板を次の工程へ送り出すためには、剥離されたシート状基板を搬出する搬出部を備えていることが好ましい。
【0016】
本発明に係るシート状基板剥離方法は、金属材料もしくは半導体材料のうち少なくともいずれか一方を含有する所定の物質の融液に成長用基板を接触させて、その成長用基板の表面に成長した物質からなるシート状基板を、成長用基板から剥離するためのシート状基板剥離方法である。そのシート状基板剥離方法は、成長用基板として、平面状に延在してシート状基板を実質的に成長させる主面と、その主面の一端側に設けられ、主面に成長するシート状基板の部分とで成長基板における一端側の部分を掴む態様でシート状基板の部分を成長させる所定の端面とを備えた成長基板を用い、吸着ステップと剥離ステップとを備えている。吸着ステップでは、成長用基板を物質の融液に接触させることにより成長用基板の表面に成長した物質からなるシート状基板における所定の部分が吸着される。剥離ステップでは、シート状基板を吸着した状態で端面に成長したシート状基板の部分を端面から引離す態様でシート状基板および成長基板の少なくともいずれかを主面に平行に移動させることにより、シート状基板が成長用基板から剥離される。その吸着ステップでは、成長用基板において一端側に位置する部分に成長したシート状基板の部分が吸着される。
【0017】
この方法によれば、成長基板の一端側を掴むように成長したシート状基板に対し、吸着ステップにおいて成長用基板において一端側に位置する部分に成長したシート状基板の部分が吸着されて、その状態で、剥離ステップにおいて、端面に成長したシート状基板の部分を端面から引離す態様でシート状基板および成長基板の少なくともいずれかを主面に平行に移動させることにより、シート状基板に圧縮応力や剪断応力が生じるのを抑えてシート状基板を損傷させることなく成長基板から剥離させることができる。
【0018】
シート状基板として太陽電池に適用するには、物質してシリコンを適用し、シート状基板として、シート状シリコン基板を剥離させることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係るシート状基板剥離装置として、溶融したシリコン(シリコン融液)に成長基板に浸漬させ、その成長基板に成長したシート状シリコン基板を成長基板から剥離するためのシート状基板剥離装置について以下に説明する。なお、成長基板に成長させる対象としてシリコンは一例であって、シリコンに限られるものではない。
【0020】
実施の形態1
(シート状基板剥離装置の構造)
本発明の実施の形態1に係るシート状基板剥離装置について説明する。図1に示すように、シート状基板剥離装置1は溶融したシリコンに浸漬させてシリコンのシート状基板(シート状シリコン基板)を成長させるための成長用基板3と、成長基板3に成長したシート状基板を剥離するための真空吸着パッド11と、剥離されたシート状基板を搬送するためのベルヌーイ吸着パッド13と、真空吸着パッド11またはベルヌーイ吸着パッド13を移動させるための垂直移動ロッド15および水平移動ロッド17と、成長用基板3を固定するための固定台9とを備えて構成される。
【0021】
図1および図2に示すように、成長基板3には、それぞれシート状シリコン基板を成長させる第1成長面(主面)3a、第2成長面(第1端面)3bおよび第3成長面(第2端面)3cが設けられている。第1成長面3aは平面状に延在してシート状シリコン基板を実質的に成長させる面となり、太陽電池等の商品として使用されるシート状シリコン基板が形成される面となる。第2成長面3bと第3成長面3cは、成長基板3における一端側に設けられている。
【0022】
第1成長面3aの法線ベクトル30と第2成長面3bの法線ベクトル31とはほぼ直角をなしている。第1成長面3aの法線ベクトル30と第3成長面3cの法線ベクトル32とはほぼ反平行とされる。シート状シリコン基板は、第1成長面3aから第3成長面3cにわたり成長基板3の一端側の部分を掴むように成長することになる。なお、成長基板3における第1成長面3a〜第3成長面3cの法線ベクトル30〜32は、成長基板3の表面から外方に向う方向と定義される。
【0023】
また、前述したように、デンドライト成長を抑制して平滑性に優れたシート状シリコン基板を得るためには、成長基板3の第1成長面3aに凸部が設けられることがある。このような凸部が設けられて第1成長面3aが凹凸表面を有しているような場合には、第1成長面3aにおける法線ベクトルとしては局所的にさまざまな方向を向くことになるため、法線ベクトルは凸部を含む包絡面に対して定義することとする。
【0024】
また、成長基板3の第1成長面3aには、外周部に沿って堀5が設けられている。この堀5は、第1成長面3aに成長するシート状シリコン基板と、成長基板3の外周部に成長するシリコンのバリとを分離させるためのものである。真空吸着パッド11は、成長基板3に成長するシート状シリコン基板のうち、第1成長面3aに成長した部分を真空吸着するように成長基板3の上方に配設されている。その真空吸着パッド11は、所定の水平移動ロッド17および垂直移動ロッド15に取り付けられて、水平方向の移動と垂直方向の移動が可能とされる。また、真空吸着パッド11は真空ラインに接続されて、制御ユニット19によって真空のオン、オフが制御される。なお、図1では、簡単のために、真空ポンプもしくは真空エジェクタ、圧力計およびエアフィルタ等は図示されていない。
【0025】
ベルヌーイ吸着パッド13は、剥離されたシート状シリコン基板60を所定の位置に搬送するためのものであり、重力的に安定したシート状シリコン基板60の中心部付近を吸着するように吸着する位置が調整されている。固定台9は、シート状シリコン基板60を剥離させる動作中に成長基板3が動かないように固定する治具である。このシート状基板剥離装置1では、成長基板3に設けられたアリ溝7を固定台9に嵌合させることによって、成長基板3が固定台9に固定されることになる。
【0026】
次に、上述したシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板の剥離動作について説明をするが、その前に、シート状シリコン基板を成長させる成長基板の構造、その成長基板を用いたシート状シリコン基板の製造装置およびシート状シリコン基板の製造方法について具体的に説明する。
【0027】
(シート状基板剥離装置における成長基板の構造)
成長基板3の形状(構造)について、図3〜図6に基づいて説明する。図3〜図6に示すように、成長基板3には、シート状シリコン基板を実質的に成長させる第1成長面(主面)3aと、その第1成長面3aに連続する第2成長面(第1端面)3bおよび第3成長面(第2端面)3cが形成されている。第2成長面3bおよび第3成長面3cは、成長基板3の一端側に形成されている。この第2成長面3bおよび第3成長面3cは、それぞれの法線ベクトル31,32が、第1成長面3aの法線ベクトル30とは反平行、鋭角、あるいは鈍角をなす面を含んでいる。
【0028】
すなわち、図3に示される成長基板3では、図4に示すように、第1成長面3aの法線ベクトル30と第3成長面3cの法線ベクトル32とは反平行の関係になっている。そして、第1成長面3aの法線ベクトル30と第2成長面3bの法線ベクトル31とはほぼ直角の関係になっている。図5に示される成長基板3では、図6に示すように、第1成長面3aの法線ベクトル30と第3成長面3cの法線ベクトル32とは鈍角をなす関係になっている。そして、第1成長面3aの法線ベクトル30と第2成長面3bの法線ベクトル31とは鋭角をなす関係になっている。
【0029】
成長基板3がこのような第1成長面3a〜第3成長面3cを有していることで、その成長基板3に成長するシート状シリコン基板は、成長基板3の一端側の部分を掴むように成長することから、この構造は掴み構造と称される。
【0030】
こうして、図4に示す成長基板3に成長したシート状シリコン基板60では、成長基板3の第1成長面3a〜第3成長面3cとほぼ対応するように、第1面60a、第2面60bおよび第3面60cが形成される。第1面60aの法線ベクトル35と第3面60cの法線ベクトル37は反平行となり、第1面60aの法線ベクトル35と第2面60bの法線ベクトル36はほぼ直角の関係になる。第1面60aと第2面60bとの間に境界部分(稜の部分)が位置する。
【0031】
また、図6に示す成長基板3に成長したシート状シリコン基板60では、成長基板3の第1成長面3a〜第3成長面3cとほぼ対応するように、第1面60a、第2面60bおよび第3面60cが形成される。第1面60aの法線ベクトル35と第3面60cの法線ベクトル37は鈍角をなし、第1面60aの法線ベクトル35と第2面60bの法線ベクトル36は鋭角の関係になる。第1面60aと第2面60bとの間に境界部分(稜の部分)が位置する。
【0032】
なお、成長基板3の法線ベクトル30〜32は、前述したように、成長基板3の表面から成長基板3の外方に向う方向として定義される。また、シート状シリコン基板60の法線ベクトル35〜37は、シート状シリコン基板60が成長する方向、すなわち、成長基板3の表面から離れる方向として定義される。
【0033】
このような成長基板3を用いることで、シート状シリコン基板60は成長基板3の一端側の部分を掴むように成長し、シート状シリコン基板60が成長基板3から剥がれ落ちるのを防止して、シート状シリコン基板60の回収率を向上させることが可能になる。
【0034】
成長基板3に成長したシート状シリコン基板60を剥離する際には、剥離すべきシート状シリコン基板60の第1面60a〜第3面60cと接する成長基板3の第1成長面3a〜第3成長面3cのそれぞれの法線ベクトル30〜32と反平行の方向と、その法線ベクトル30〜32と鈍角をなす方向とのいずれの方向にも該当しない方向に引き出すことが望ましい。特に、上述した成長基板3では、太陽電池として使用される第1成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の第1面60aの部分を、第1成長面3aに平行に引き出すことが好ましい。
【0035】
なお、シート状シリコン基板60において、成長基板3の第1成長面3aに成長する部分と、成長基板3の側面に成長する部分(バリ)とが繋がっていると、このような引き出し方向を特定することは困難な場合がある。そこで、上述したように、図1に示すように、成長基板3に第1成長面3aの周囲に沿って堀5を設けて第1成長面3aに成長する部分とバリとを分離することで、引き出し方向を比較的容易に特定することができる。
【0036】
(シート状シリコン基板の製造装置)
次に、成長基板にシート状シリコン基板を成長させるシート状シリコン基板の製造装置の一例について説明する。図7に示すように、シート状シリコン基板の製造装置では、坩堝昇降台56の上に断熱材55および坩堝台54を介在させて坩堝51が載置されている。坩堝51の周囲には加熱用ヒーター53が配設されている。その坩堝51には加熱用ヒーター53によって溶融したシリコン融液52が貯留され、融点以上の所定の温度に保持されている。断熱材55は、そのようなシリコン融液52の温度を均一に保持するとともに、坩堝51の底から熱が逃げるのを抑制する機能を有している。
【0037】
坩堝51の上方には、固定脚57に固定された成長基板3が配設されている。成長基板3は駆動装置(図示せず)によって矢印に示す方向に搬送されながらシリコン融液52に浸漬され、その後、シリコン融液52から引き上げられる。成長基板3がシリコン融液52に浸漬されて引き上げられる間に成長基板3の表面にシリコンが成長する。同じ厚さのシリコンを成長基板3の表面に成長させるため、坩堝昇降台56は成長基板3がシリコン融液52の融液面から一定の深さまで浸漬するように坩堝台54を上下動させる機能を有している。
【0038】
シート状シリコン基板60を成長基板3に安定して成長させるには、シリコン融液52の温度を精密に制御することが望まれる。たとえば、複数の熱電対、あるいは、放射温度計などを用いることでよりシリコン融液52の温度をより精密に制御することが可能になる。
【0039】
特に、熱電対の場合には、より正確に温度を測定しようとすれば、熱電対をシリコン融液52に直接浸漬させるのが有効な手法である。ところが、この場合には、熱電対の保護管などが含有する不純物がシリコン融液52に混入するおそれがあるため、不純物の混入が問題となるシート状シリコン基板60の用途によっては、そのような熱電対による汚染を阻止する構造を採用することが求められる。
【0040】
また、温度の制御方法としては、たとえば坩堝51の壁に適当な孔などを設け、その孔に熱電対を挿入するなどして、シリコン融液52の温度を間接的に制御する手法がある。また、放射温度計を用いてシリコン融液52の温度を測定するような構造としてもよい。
【0041】
(シート状シリコン基板の製造方法)
次に、図7に示されるシート状シリコン基板の製造装置に基づいて、シート状シリコン基板を製造する方法の一例について説明する。まず、シート状シリコン基板の比抵抗の値が所望の値になるようにホウ素(B)の濃度を調整したシリコンの塊を坩堝51に入れ、その坩堝51をチャンバー58内の坩堝台54に載置する。
【0042】
次に、チャンバー58内を真空引きしてチャンバ−58内を所定の圧力まで減圧する。その後、チャンバー58内にアルゴンガスを、たとえば流量10×10-3m3/minにて流し続ける。常時アルゴンガスを流しつづけるのは、清浄なシリコン融液面を得るためである。次に、加熱用ヒーター53の設定温度を段階的に上昇させて最終的に1500℃に設定し、坩堝51内のシリコンの塊を完全に溶融させてシリコン融液52とする。
【0043】
その後、シリコン融液52の温度がたとえば1410℃となるように加熱用ヒーター53の温度を設定し、その状態を約30分間保持してシリコン融液52の温度を安定させる。そして、坩堝昇降機構56によって坩堝51を所定の位置(高さ)に移動させる。
【0044】
次に、成長基板3にシート状シリコン基板を成長させる。坩堝51の上方に配設された固定脚57に対して、たとえば図1に示す成長基板3の第1成長面3aがシリコン融液52と向かい合うように、第1成長面3aを下方に向けて成長基板3があらかじめ固定される。固定脚57に固定された成長基板3を駆動装置(図示せず)によって矢印に示す方向に搬送させながらシリコン融液52に浸漬し、その後、シリコン融液52から引き上げる。成長基板3がシリコン融液52に浸漬されて引き上げられる間に成長基板3の表面にシリコンが成長することになる。
【0045】
(シート状基板剥離装置の剥離動作)
次に、以上のようにして成長基板3に成長させたシート状シリコン基板60を、本実施の形態に係るシート状基板剥離装置1によって成長基板3から剥離させる剥離動作について詳しく説明する。
【0046】
まず、図8および図9に示すように、シート状シリコン基板60を成長させた成長基板3が固定台9に固定される。次に、垂直移動ロッド15を降下させて、成長基板3の第1成長面3aにおいて第2成長面3bが位置する一端側の部分に成長したシート状シリコン基板60の部分をめがけて真空吸着パッド11を降ろす。次に、真空排気を行なって真空吸着パッド11にそのシート状シリコン基板60の部分を吸着させる。
【0047】
次に、図10に示すように、真空吸着パッド11にシート状シリコン基板60を吸着させた状態で水平移動ロッド17を成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左側)に移動させることによって、図11および図12に示すように、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させる。
【0048】
この場合、第1成長面3aの一端側に成長するシート状シリコン基板60の部分は第1成長面3aに密着していることから、このシート状シリコン基板60の法線ベクトル35は第1成長面3aの法線ベクトル30(図2参照)と同じ向きになり、真空吸着パッド11を移動させる方向は、法線ベクトル35または法線ベクトル30とほぼ直交する方向ということになる。また、この方向は、第2成長面3bおよび第3成長面3cに成長したシート状シリコン基板60の部分を、第2成長面3bおよび第3成長面3cから引離す方向でもある。
【0049】
その水平移動ロッド17を移動させる距離としては、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させることができ、かつ、剥離されたシート状シリコン基板60を搬送させるのに十分な距離であることが好ましい。この場合、その移動させる距離としては、成長基板3の第3成長面3cの幅Wよりも長いことが望ましい。こうして、シート状基板60が成長基板60の一端側の部分を掴んでいたのを開放した状態になる。シート状基板剥離装置1では、このようなシート状基板60が成長基板3の一端側の部分を掴んでいたのを開放させる動作が行なわれる。
【0050】
次に、真空排気を停止して真空吸着パッド11をシート状シリコン基板60から離し、シート状シリコン基板60を搬送するのに支障のない位置に真空吸着パッド11を退避させる。次に、剥離されて成長基板3の第1成長面3aに載置された状態のシート状シリコン基板60の中心部付近にベルヌーイ吸着パッド13を降ろし、シート状シリコン基板60を吸着させる。そして、図13に示すように、シート状シリコン基板60を吸着したベルヌーイ吸着パッド13を移動させて、シート状シリコン基板60を所定の位置に搬送する。こうして、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させる一連の剥離動作が完了する。
【0051】
上述したシート状基板剥離装置1による剥離動作によれば、成長基板3の第1成長面3aおける一端側の部分に成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着し、その吸着した状態でシート状シリコン基板60を第1成長面3aに平行に移動させる。これにより、シート状シリコン基板60を破損させることなく高い歩留まりをもって成長基板3から剥離させることができる。
【0052】
特に、シート状シリコン基板60を破損させずに吸着するには、図9に示すように、成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側の端部から第2成長面3bと対向する他端側の端部に至る長さ(L)の3分の1以下の距離Sのところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着させることが望ましく、より高い歩留まりをもってシート状シリコン基板60を剥離するには、その距離Sは5分の1以下であることがより望ましい。すなわち、第1成長面3aと第2成長面3bとの境界部分(陵の部分)により接近したところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着しながら第1成長面3aに平行に移動させることで、シート状シリコン基板60を損傷させることなく成長基板3から剥離させることができる。これは、次の理由によると考えられる。
【0053】
図9または図10に示されるように、成長基板3が所定の配置関係を有する第1成長面3a、第2成長面3bおよび第3成長面3cを有していることで、点線枠40内に示すように、シート状シリコン基板60は成長基板3の一端側の部分を掴むように成長して、成長基板3に比較的強固に密着する。そのため、シート状シリコン基板60の第1成長面3aを真空吸着しながら第1成長面3aに平行に移動(スライド)させるとき、シート状シリコン基板60が成長基板3を掴む部分(点線枠40内)と真空吸着する位置がそれぞれ力点となって、この2つの力点の間に圧縮応力が作用することになる。
【0054】
このとき、第1成長面3aと第2成長面3bとの境界部分からの距離(成長基板3の一端側の端部からの距離)Sが、距離Lの3分の1を越える距離のところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着してスライドさせようとすると、この場合には、この2つの力点間の距離が比較的離れているために、シート状シリコン基板60を容易に反らせてしまうことになる。シート状シリコン基板60が反った状態でさらにスライドさせようとすると、シート状シリコン基板60には圧縮応力のみならず剪断応力も加わり、シート状シリコン基板60が破壊されてしまうおそれが強くなる。
【0055】
これに対して、成長基板3の一端側の端部からの距離Sが、距離Lの3分の1以下の距離のところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着してスライドさせる場合には、2つの力点間の距離が比較的短いために、シート状シリコン基板60に圧縮応力に起因する反りが小さくなり、剪断応力も小さくなる。その結果、シート状シリコン基板60を破壊することなく成長基板3から剥離させることができると考えられる。
【0056】
また、上述したシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板の剥離方法は、シート状シリコン基板60が成長した時点で反っている場合にも適用することができる。上述した成長基板3では、シート状シリコン基板60は成長基板3における一端側の部分を掴むように成長するため、成長基板3の一端側の部分ではシート状シリコン基板60は成長基板3と密着する。したがって、シート状シリコン基板60が成長した時点で反っている場合とは、成長基板3における第2成長面3bが位置する側とは反対の他端側の部分に成長するシート状シリコン基板60の部分が成長基板3の表面から離れている、あるいは、浮いているような場合である。
【0057】
この場合に、成長基板3の一端側の端部から比較的離れたところに成長するシート状シリコン基板60の部分を真空吸着しようとすると、成長基板3の表面から浮いたシート状シリコン基板60の部分を上方から押え付けることになる。そうすると、成長基板3の第1成長面3aにおける一端側の部分に成長して第1成長面3aに密着しているシート状シリコン基板60の部分を成長基板3から引離そうとする力が作用することになり、シート状シリコン基板60に割れを生じさせるおそれが強くなる。
【0058】
これに対して、成長基板3の第1成長面3aにおける一端側の部分により接近したところに成長するシート状シリコン基板60の部分を真空吸着する場合には、真空吸着するシート状シリコン基板60の部分が成長基板3に密着しているため、上方から押さえつける力は成長基板3によって受けられてシート状シリコン基板60にはあまり作用しない。その結果、シート状シリコン基板60には無理な力が作用せず、シート状シリコン基板60に割れを生じさせるおそれが低くなる。
【0059】
真空吸着パッド11によりシート状シリコン基板60を真空吸着させた後に、そのシート状シリコン基板60を移動させる方向は、図10に示すように、成長基板3の3つの法線ベクトル30〜32のいずれに対しても鈍角をなさず、そして、反平行をなさない方向とすることが好ましい。具体的には、この方向は、法線ベクトル30とほぼ直交する方向であり、成長基板3の第1成長面3aに平行であって、真空吸着した位置から成長基板3の一端側に向う方向である。なお、反平行とは、2つのベクトルが平行で互いに反対の向きをいう。
【0060】
このような方向にシート状シリコン基板60をスライドさせることで、剥離を阻害する力がシート状シリコン基板60に作用することがなくなって剥離が容易になるだけでなく、シート状シリコン基板60に無理な力を与えることがなくなる。その結果、剥離の際にシート状シリコン基板60に割れが生じるのを抑制することができる。
【0061】
なお、上述したシート状基板剥離装置1では、シート状シリコン基板60を吸着する真空吸着パッド11の材質は特に限定されないが、耐熱性の高い素材から形成されていることが好ましい。これは浸漬直後の成長基板3とシート状シリコン基板60の温度が150〜200℃と比較的高温であるため、耐熱性の低い材質から形成された真空吸着パッド11の場合では、冷却を行なってからシート状シリコン基板60の剥離を行なう必要があるためである。
【0062】
また、真空吸着パッド11は、比較的しなやかな性質を有する材料から形成されていることが好ましい。これは、シート状シリコン基板60に与える衝撃を和らげることができるとともに、シート状シリコン基板60の表面に微小な凹凸があっても、真空吸着パッド11の変形により微小な凹凸を吸収して真空吸着を容易に行なうことができるからである。耐熱性としなやかさの双方の性質を有する素材としては、たとえばフッ素ゴム、シリコンゴム等が挙げられる。
【0063】
(変形例1)
上述したシート基板剥離装置1では、シート状シリコン基板60を真空吸着する真空吸着パッド11として、1つの真空吸着パッド11を備えた場合を例に挙げて説明したが、真空吸着パッド11の数としては1つに限られず、たとえば図14および図15に示すように、複数の真空吸着パッド11を備えていてもよい。複数の真空吸着パッド11を備えていることで、シート状シリコン基板60の複数の箇所を真空吸着させることができて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0064】
(変形例2)
また、真空吸着パッド11を複数備えたシート状基板剥離装置1では、たとえば図16および図17に示すように、複数の真空吸着パッド11a,11bのうち少なくとも一つの真空吸着パッド11aが、成長基板3の一端側の端部からの距離S1が、一端側の端部と他端側の端部との距離Lの3分の1以下の距離のところに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する位置に配置され、残りの真空吸着パッド11bがその一つの真空吸着パッド11の動きと連動するように設定されていれば、その残りの真空吸着パッド11bは、成長基板3の一端側の端部からの距離S2が距離Lの3分の1以上の距離のところに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する位置に配置されていてもよい。
【0065】
これは、以下の理由による。図16および図17に示されるシート状基板剥離装置1では、成長基板3に成長したシート状シリコン基板60に作用する力点は、シート状シリコン基板60が成長基板3を掴む部分(点線枠40内)、真空吸着パッド11a,11bがそれぞれシート状シリコン基板60を吸着する部分の三箇所である。この三箇所の力点のうち、真空吸着パッド11a,11bがそれぞれシート状シリコン基板60を吸着する部分の2つの力点については、真空吸着パッド11a,11bが連結部材21によって互いに連結されて連動することで、この2つの力点の間に位置するシート状シリコン基板60の部分に圧縮応力が作用することはほとんどない。
【0066】
一方、シート状シリコン基板60が成長基板3を掴む部分と真空吸着パッド11aがシート状シリコン基板60を吸着する部分の2つの力点については、上述したように、2つの力点間の距離が比較的短いことで、シート状シリコン基板60をスライド動作させることに伴ってシート状シリコン基板60に作用する圧縮応力に起因する反りと剪断応力は比較的小さいものとなる。
【0067】
(変形例3)
また、さらに、真空吸着パッド11としては、たとえば図18および図19に示すように、シート状シリコン基板60を吸着する部分の形状が矩形の真空吸着パッド11を用いてもよい。このような矩形状の真空吸着パッド11を適用することで、シート状シリコン基板60の比較的広い領域が真空吸着されて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0068】
その真空吸着パッド11による真空吸着力は、真空吸着パッド11の面積と真空圧力によって決まる。シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させるのに適した真空吸着力は、真空吸着パッド11の形状や成長基板3の形状によって異なるために、これらの形状に応じて適切な吸着力が得られるように適宜変更することが好ましい。
【0069】
また、上述したシート状基板剥離装置1では、成長基板3から剥離されたシート状シリコン基板60を搬送するのに、真空吸着パッド11とは別に設けられたベルヌーイ吸着パッド13を用いて搬送する場合を例に挙げて説明したが、真空吸着パッド11を用いて剥離したシート状シリコン基板60を搬送するようにしてもよい。この場合には、別途ベルヌーイ吸着パッド13を設ける必要がなくなって、シート状基板剥離装置1の構造をよりシンプルにすることができる。
【0070】
特に、真空吸着パッド11を使用してシート状シリコン基板60を搬送する場合には、シート状シリコン基板60の重心を考慮して、シート状シリコン基板60を安定して搬送させることができる位置に真空吸着パッド11を吸着させることが望まれる。たとえば、図18等に示されるように、複数の真空吸着パッド11a,11bを設けることで、バランスを崩すことなく安定してシート状シリコン基板60を搬送することができる。
【0071】
さらに、上述したシート状基板剥離装置1では、成長基板3のアリ溝7を固定台9に嵌合させることによって成長基板3を固定台9に固定する場合を例に挙げて説明したが、この他に、たとえば成長基板3の側面を固定する態様であってもよい。また、成長基板3のアリ溝角部を対角線上にチャッキングする態様であってもよい。あるいは、成長基板3を真空吸着により固定する態様であってもよい。
【0072】
また、上述したシート状基板剥離装置1では、真空吸着パッド11を移動させるのに水平移動ロッド17および垂直移動ロッド15を用いた場合を例に挙げて説明したが、この他に、多関節ロボット等を用いて真空吸着パッド11を移動させるようにしてもよい。また、真空吸着パッド11によってシート状シリコン基板60を吸着して静止した状態で、成長基板3を移動させるようにしてもよい。成長基板3を固定台9に固定する構造や、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させる機構としては、製造ラインとの関係で最も適した構造等を選択して、これを適用することができる。
【0073】
さらに、上述したシート状基板剥離装置1に適用される成長基板3としては、成長するシート状シリコン基板60が成長基板3の一端側の部分を掴むような構造となるものであれば、図1に示される成長基板3の他に、前述したように、図5または図6に示すような成長基板3であってもよく、成長したシート状シリコン基板60を破損することなく成長基板3から剥離させることができる。
【0074】
本実施の形態におけるシート状基板剥離装置1の主眼は、剥離の際にシート状シリコン基板60に与える剪断応力が比較的小さく、そして、成長基板3の一端部からの距離が一端部と他端部との距離Lの3分の1以下の距離のところに成長して成長基板3の第1成長面3aとの密接性がよいシート状シリコン基板60の部分を、吸着しながら第1成長面3aに平行にスライドさせることによって、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離することにある。
【0075】
したがって、上述した、真空吸着パッド11の形状や個数、剥離したシート状シリコン基板60の移載の態様、成長基板3の固定態様、動作機構の構造、成長基板3の形状等は一例であってこれらに制限されるものではない。
【0076】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2に係るシート状基板剥離装置について説明する。図20および図21に示すように、シート状基板剥離装置1は、溶融したシリコンに浸漬させてシリコンのシート状基板を成長させるための成長用基板3と、成長基板3に成長したシート状基板を剥離するための真空吸着パッド11と、剥離されたシート状基板を搬送するためのベルヌーイ吸着パッド13と、真空吸着パッド11またはベルヌーイ吸着パッド13を移動させるための垂直移動ロッド15および水平移動ロッド17と、成長用基板3を固定するための固定台9とを備えて構成される。
【0077】
本実施の形態に係るシート状基板剥離装置1では、特に、真空吸着パッド11は、成長基板3の第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を真空吸着するよう配設されている。なお、これ以外の構成については、前述した図1等に示すシート状基板剥離装置と同様なので、同一部材には同一符合を付しその説明を省略する。
【0078】
次に、上述したシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板60の剥離動作について説明する。まず、前述した方法により成長基板3にシート状シリコン基板60を成長させた後、図20に示すように、その成長基板3が固定台9に固定される。次に、図21に示すように、水平移動ロッド17を移動させて、成長基板3の第2成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の部分に接触させる。次に、真空排気を行なって真空吸着パッド11にそのシート状シリコン基板60の部分を吸着させる。
【0079】
次に、図22および図23に示すように、真空吸着パッド11にシート状シリコン基板60を吸着させた状態で水平移動ロッド17を成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左側)に移動させることによって、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させる。なお、水平移動ロッド17を移動させる距離としては、前述したシート状基板剥離装置1の場合と同様に、成長基板3の第3成長面3cの幅Wよりも長いことが望ましい。
【0080】
次に、真空排気を停止して真空吸着パッド11をシート状シリコン基板60から離し、シート状シリコン基板60を搬送するのに支障のない位置に真空吸着パッド11を退避させる。次に、剥離されて成長基板3の第1成長面3aに載置された状態のシート状シリコン基板60の中心部付近にベルヌーイ吸着パッド13を降ろし、シート状シリコン基板60を吸着させる。そして、図24に示すように、シート状シリコン基板60を吸着したベルヌーイ吸着パッド13を移動させてシート状シリコン基板60を所定の位置に搬送する。こうして、シート状シリコン基板60の一連の剥離動作が完了する。
【0081】
上述したシート状基板剥離装置1によれば、成長基板3の第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着し、その吸着した状態でシート状シリコン基板60を第1成長面3aに平行に移動させる。これにより、シート状シリコン基板60を破損させることなく高い歩留まりをもって成長基板3から剥離させることができる。
【0082】
前述したように、成長基板3の一端側の端部からの距離Sが、一端側の端部と他端側の端部との距離Lの3分の1を越える距離のところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着してスライドさせようとすると、シート状シリコン基板60には圧縮応力のみならず剪断応力も加わり、シート状シリコン基板60が破壊されてしまうおそれが強くなる。
【0083】
これに対して、成長基板3の第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着してスライドさせる場合には、シート状シリコン基板60に圧縮応力が作用することはほとんどなくなる。その結果、シート状シリコン基板60を破壊することなくより確実に成長基板3から剥離させることができる。
【0084】
また、上述したシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板の剥離方法は、シート状シリコン基板60が成長した時点で反っている場合にも適用することができる。前述したように、シート状シリコン基板60が成長した時点で反っている場合とは、成長基板3において第2成長面3bが位置する一端側の部分ではシート状シリコン基板60は成長基板3と密着する一方、成長基板3において第2成長面3bが位置する側とは反対側の他端側の部分に成長するシート状シリコン基板60の部分は成長基板3の表面から離れている、あるいは、浮いているような場合である。
【0085】
そのため、シート状シリコン基板60と成長基板3とが密着している第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を真空吸着することで、側方から押さえつける力は成長基板3によって受けられてシート状シリコン基板60にはあまり作用しない。その結果、シート状シリコン基板60には無理な力が作用せず、シート状シリコン基板60に割れを生じさせるおそれが低くなる。
【0086】
シート状シリコン基板60を真空吸着させた後に、そのシート状シリコン基板60を移動させる方向は、前述したように、図21に示される成長基板3の3つの法線ベクトル30〜32のいずれに対しても鈍角をなさず、そして、反平行をなさない方向とすることが好ましい。具体的には、この方向は、法線ベクトル30とほぼ直交する方向であり、成長基板3の第1成長面3aに平行であって、真空吸着した位置から成長基板3の一端側に向う方向である。なお、反平行とは、2つのベクトルが平行で反対の向きをいう。
【0087】
このような方向にシート状シリコン基板60をスライドさせることで、剥離を阻害する力がシート状シリコン基板60に作用することがなくなって剥離が容易になるだけでなく、シート状シリコン基板60に無理な力を与えることがなくなる。その結果、剥離の際にシート状シリコン基板60に割れが生じるのを抑制することができる。
【0088】
(変形例1)
本実施の形態に係るシート状基板剥離装置1では、前述したシート状基板剥離装置1と同様に、図25および図26に示すように、複数の真空吸着パッド11を備えていてもよい。複数の真空吸着パッド11を備えていることで、シート状シリコン基板60の複数の箇所を真空吸着させることができて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0089】
(変形例2)
また、真空吸着パッド11として、たとえば図27および図28に示すように、シート状シリコン基板60を吸着する部分の形状が矩形の真空吸着パッド11を用いてもよい。このような矩形状の真空吸着パッド11を適用することで、シート状シリコン基板60の比較的広い領域が真空吸着されて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0090】
(変形例3)
また、さらに、本実施の形態に係るシート状基板剥離装置1では、成長基板3に成長したシート状シリコン基板60において第2成長面3bに成長した部分を吸着する真空吸着パッド11を少なくとも一つ備えていれば、たとえば図29および図30に示すように、第1成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する真空吸着パッド11をさらに備えていてもよく、このような真空吸着パッド11を備えていることで、シート状シリコン基板60をより広い範囲で真空吸着を行なうことができて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0091】
さらに、上述した真空吸着パッド11の真空吸着力についても、前述したように、真空吸着パッド11の形状や成長基板3の形状に応じて適切な吸着力が得られるように適宜変更することが好ましい。また、真空吸着パッド11を水平移動ロッド17および垂直移動ロッド15によって移動させる他に、多関節ロボット等を用いて真空吸着パッド11を移動させるようにしてもよい。そして、さらに、ベルヌーイ吸着パッド13を設ける代わりに、このような真空吸着パッド11を用いて剥離したシート状シリコン基板60を搬送するようにしてもよい。
【0092】
また、前述したように、成長基板3としては、成長するシート状シリコン基板が成長基板3の一端側の部分を掴むような構造となるものであれば、成長したシート状シリコン基板60を破損することなく成長基板3から剥離させることができる。
【実施例】
【0093】
次に、上述した各シート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板の剥離動作について、これを実施例として具体的に説明する。
【0094】
(評価用試料の調整例)
まず、シート状シリコン基板の比抵抗が2Ω・cmになるようにホウ素(B)濃度を調整したシリコンの塊(原料)29kgを、内径40cmの円形の高純度カーボン製の坩堝1に入れて、図7に示されるシート状シリコン基板の製造装置のチャンバー58内に設置した。
【0095】
次に、真空ポンプによりチャンバ−58内を真空引きして、チャンバー58内の圧力が2.66×10-3Pa以下になるまで減圧した。その後、チャンバ−58内にアルゴンガスを導入してチャンバー58内の圧力を常圧(大気圧)にまで上げて、その後は、アルゴンガスを流量10×10-3m3/minにてチャンバー58の上部から流し続けた。
【0096】
そして、加熱用ヒーター53を昇温速度10℃/minの条件のもとで温度1500℃まで昇温させた。坩堝51内においてシリコンの原料が完全に溶融したことを確認した後、溶融したシリコン融液52の温度を1415℃に保持して、温度の安定化を図った。
【0097】
成長基板として、高純度の黒鉛の焼結体を図1に示される形状に加工した成長基板3を用いた。成長基板3における第1成長面3aの大きさを200mm×200mmとした。第2成長面3bの長さ(幅)を4.5mmとし、第3成長面3cの長さ(幅)を5mmとした。
【0098】
その成長基板3をシリコン融液52に浸漬させてシート状シリコン基板を成長させた。このとき、成長基板3の移動速度を、500cm/minとし、また、成長基板3をシリコン融液52に浸漬させる深さを最大10mmとした。この条件のもとで、成長基板3の第1成長面3aの中央部における厚みが平均350μmであり、成長基板3の一端側の端部を掴む態様で成長基板3に密着したシート状シリコン基板60を形成した。そして、剥離の評価のために、成長基板3を100枚用意して、そのそれぞれにシート状シリコン基板60を成長させた。
【0099】
このようにして成長基板3に成長したシート状シリコン基板60を、各種のシート状基板剥離装置1を用いて成長基板3から実際に剥離する剥離評価を行なった。以下、この評価について説明する。
【0100】
(実施例1)
シート状基板剥離装置として、図1に示されるシート状基板剥離装置1を用いた。そのシート状基板剥離装置1において、真空吸着パッド11として、吸着穴径φが10mmの真空吸着パッドを用いた。真空吸着パッドの材質をフッ素ゴムとし、また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−50kPaになるように調整した。また、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側から10mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11を配設した。
【0101】
次に、固定台9に成長基板3を固定し、シート状シリコン基板60の剥離時に成長基板3が移動しないようにした。そして、垂直移動ロッド15を降下させて、真空吸着パッド11をシート状シリコン基板60に接触させた。次に、真空吸着を行なって真空吸着パッド11によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッド17を成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左側)に長さ10mmだけ動かし、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させた。
【0102】
その後、真空吸着パッド11の内部を大気圧にした。次に、水平移動ロッド17を紙面に向って左側に長さ10mmだけ動かして、真空吸着パッド11を退避させた。そして、ベルヌーイ吸着パッド13をシート状シリコン基板60のほぼ中心部に降ろし、シート状シリコン基板60を吸着させた。最後に、ベルヌーイ吸着パッド13によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッド17と垂直移動ロット18とを動かし、シート状シリコン基板60を所定の位置にまで搬送して、シート状シリコン基板3と成長基板3とを完全に分離させた。
【0103】
剥離評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、シート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中97枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0104】
(実施例2)
次に、シート状基板剥離装置として、図14に示される複数の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素系ゴムとした。また、真空吸着パッド11の吸着穴径φを6mmとして、この真空吸着パッド11をピッチ15mmをもって4つ配設させた。さらに、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−40kPaになるように調整した。そして、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側から10mmの距離を隔てられたところに位置するように各真空吸着パッド11を配設した。
【0105】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例1の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中98枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0106】
(実施例3)
次に、シート状基板剥離装置として、図18に示される吸着口が矩形状の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をシリコンゴム製とし、矩形状の吸着口をサイズ4mm×60mmとした。また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−30kPaになるように調整した。さらに、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側から10mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11を配設した。
【0107】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例1の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中97枚であり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0108】
(実施例4)
次に、シート状基板剥離装置として、図16(図17)に示される複数の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素ゴムとした。真空吸着パッド11のうち真空吸着パッド11aを、成長基板3における第2成長面3bが位置する側の一端部からの距離S1が成長基板3の長さLの3分の1以下になる位置に配設し、特に、真空吸着パッド11aの中心が成長基板3の一端側から10mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11aを配設した。
【0109】
一方、真空吸着パッド11のうち真空吸着パッド11bを、対応する距離S2が長さLの3分の1以上になる位置に配設し、特に、真空吸着パッド11bの中心が成長基板3の一端側から100mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11bを配設した。その真空吸着パッド11aの吸着穴径φを8mmとし、真空吸着パッド11bの吸着穴径φを6mmとした。また、真空吸着パッド11a,11bの真空吸着時の真空圧力が−40kPaになるように調整した。
【0110】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例1の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中92枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0111】
(実施例5)
次に、シート状基板剥離装置として、図20に示される真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素系ゴムとし、また、真空吸着パッド11の吸着穴径φを4mmとした。さらに、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−60kPaになるように調整した。また、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2面の中心部に位置するように真空吸着パッド11を配設した。
【0112】
次に、固定台9に成長基板3を固定し、シート状シリコン基板60の剥離時に成長基板3が移動しないようにした。そして、水平移動ロッド17を所定の方向(紙面に向って右方向)に動作させて、真空吸着パッド11を成長基板3における第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分に接触させた。次に、真空吸着を行なって真空吸着パッド11によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッド17を所定の方向(紙面に向って左方向)に距離10mmだけ動かし、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させた。
【0113】
その後、真空吸着パッド11の内部を大気圧にした。次に、水平移動ロッド17を成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左方向)に距離10mmだけ動かして、真空吸着パッド11を退避させた。そして、ベルヌーイ吸着パッド13をシート状シリコン基板60のほぼ中心部に降ろし、シート状シリコン基板60を吸着させた。最後に、ベルヌーイ吸着パッド13によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッド17と垂直移動ロット18とを動かし、シート状シリコン基板60を所定の位置にまで搬送して、シート状シリコン基板3と成長基板3とを完全に分離させた。
【0114】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、シート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中90枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0115】
(実施例6)
次に、シート状基板剥離装置として、図25に示される複数の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素系ゴムとした。また、真空吸着パッド11の吸着穴径φを4mmとして、この真空吸着パッド11をピッチ10mmをもって6つ配設させた。さらに、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−60kPaになるように調整した。
【0116】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例5の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中98枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0117】
(実施例7)
次に、シート状基板剥離装置として、図27に示される吸着口が矩形状の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をシリコンゴム製とし、矩形状の吸着口をサイズ4mm×60mmとした。また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−30kPaになるように調整した。
【0118】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例5の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中97枚であり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0119】
(実施例8)
次に、シート状基板剥離装置として、図29に示される複数の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素ゴムとした。真空吸着パッド11のうち、成長基板3の第1成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する真空吸着パッド11の吸着穴径φを6mmとして、この真空吸着パッド11をピッチ15mmをもって4つ配設させた。一方、真空吸着パッド11のうち、成長基板3の第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する真空吸着パッド11の吸着穴径φを4mmとして、この真空吸着パッド11をピッチ15mmをもって4つ配設させた。
【0120】
また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−40kPaになるように調整した。そして、成長基板3の第1成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する真空吸着パッド11の中心が、成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側の端部から10mmの距離を隔てたところに位置するようにその真空吸着パッド11を配設した。
【0121】
次に、水平移動ロッドおよび垂直移動ロッド(図示せず)を同時に動作させて、各真空吸着パッド11を成長基板3の第1成長面3aと第2成長面3bのそれぞれに成長したシート状シリコン基板60の部分に接触させた。次に、真空吸着を行なって真空吸着パッド11によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッドを成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左側)に動かして、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させた。
【0122】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例5の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中98枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0123】
(実施例9)
次に、シート状基板剥離装置として、図1に示されるシート状基板剥離装置1を用いた。そのシート状基板剥離装置1において、真空吸着パッド11として、吸着穴径φが10mmの真空吸着パッドを用いた。真空吸着パッドの材質をフッ素ゴムとし、また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−50kPaになるように調整した。また、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側から65mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11を配設した。
【0124】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例1の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中79枚であった。この結果により、成長基板3の一端側から約3分の1の離れたところに位置するシート状基板60の部分を吸着することによって、実施例1〜8の場合に比べて剥離性は劣るが、後述する比較例と比べると優れた剥離性を有していることが実証された。
【0125】
(比較例)
本実施の形態1,2において説明した図1等に示されるシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板60の剥離効果を比較するために、図31および図32に示すように、真空吸着パッドとして成長基板3に成長したシート状シリコン基板60の中央付近を吸着する真空吸着パッドを備えたシート状基板剥離装置を用いて剥離評価を行なった。
【0126】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、真空吸着パッド11の位置以外は実施例1と同じ条件のもとでシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは100枚中57枚であり、40%以上のシート状シリコン基板60が破損することがわかった。
【0127】
なお、上述した各実施の形態に係るシート状基板剥離装置1では、成長基板3にシリコンを成長させた場合を例に挙げて説明したが、シリコン以外の他の金属材料や半導体材料についてもこれらを成長させて、その成長基板からこれらの金属材料等を破損させることなく剥離することができる。
【0128】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の実施の形態1に係るシート状基板剥離装置の斜視図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示される断面線II−IIにおける断面図である。
【図3】同実施の形態において、シート状基板剥離装置に適用される成長基板の構造を説明するための部分斜視図である。
【図4】同実施の形態において、図3に示される断面線IV−IVにおける断面図である。
【図5】同実施の形態において、シート状基板剥離装置に適用される成長基板の変形例1に係る成長基板を示す斜視図である。
【図6】同実施の形態において、図5に示される断面線VI−VIにおける断面図である。
【図7】同実施の形態において、成長基板にシート状基板を成長させるシート状基板の製造装置を示す断面図である。
【図8】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第1の斜視図である。
【図9】同実施の形態において、真空吸着パッドと成長基板との配置関係を説明するための断面図である。
【図10】同実施の形態において、図8に示される断面線X−Xにおける断面図である。
【図11】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第2の斜視図である。
【図12】同実施の形態において、図11に示される断面線XII−XIIにおける断面図である。
【図13】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第3の斜視図である。
【図14】同実施の形態において、変形例1に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図15】同実施の形態において、図14に示される断面線XV−XVにおける断面図である。
【図16】同実施の形態において、変形例2に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図17】同実施の形態において、図16に示される断面線XVII−XVIIにおける断面図である。
【図18】同実施の形態において、変形例3に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図19】同実施の形態において、図18に示される断面線XIX−XIXにおける断面図である。
【図20】本発明の実施の形態2に係るシート状基板剥離装置の斜視図である。
【図21】同実施の形態において、成長基板と吸着パッドの配置関係を説明するための図20に示される断面線XXI−XXIにおける第1の断面図である。
【図22】同実施の形態において、成長基板と吸着パッドの配置関係を説明するための図20に示される断面線XXI−XXIにおける第2の断面図である。
【図23】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第1の斜視図である。
【図24】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第2の斜視図である。
【図25】同実施の形態において、変形例1に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図26】同実施の形態において、図25に示される断面線XXVI−XXVIにおける断面図である。
【図27】同実施の形態において、変形例2に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図28】同実施の形態において、図27に示される断面線XXVIII−XXVIIIにおける断面図である。
【図29】同実施の形態において、変形例3に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図30】同実施の形態において、図29に示される断面線XXX−XXXにおける断面図である。
【図31】同実施の形態において、比較例に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図32】同実施の形態において、図31に示される断面線XXXII−XXXIIにおける断面図である。
【符号の説明】
【0130】
1 シート状基板剥離装置、3 成長基板、3a 第1成長面、3b 第2成長面、3c 第3成長面、5 堀、7 アリ溝、9 固定台、11,11a,11b 真空吸着パッド、13 ベルヌーイ吸着パッド、15 垂直移動ロッド、17 水平移動ロッド、19 制御ユニット、21 連結部材、30〜32,35〜37 法線ベクトル、51 坩堝、52 シリコン融液、53 加熱用ヒータ、54 坩堝台、55 断熱材、56 坩堝昇降機構、57 固定脚、58 チャンバー、60 シート状シリコン基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状基板剥離装置およびシート状基板剥離方法に関し、特に、太陽電池の製造に使用されるシート状基板剥離装置と、シート状基板剥離方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池は単結晶シリコンウェハを用いて製造されてきた。しかし、単結晶シリコンウェハは、シリコンのインゴットを長時間かけて作製することによって製造されることからコストが非常に高くなるため、そのような単結晶ウェハから作製される太陽電池も当然に非常に高価なものとなっていた。
【0003】
近年、低コスト化を図って太陽電池のさらなる普及を図るために、ウェハとしては、主に多結晶シリコンが使用されるようになった。このような多結晶シリコンは、いわゆるキャスト法によって製造される。キャスト法とは、たとえば特許文献1に提案されているように、まず、坩堝内で溶融されたシリコンを坩堝の底から徐々に引き上げながら冷却を行なってシリコンを固化させることにより、坩堝の底面から成長した長い結晶粒を主体とするインゴット(塊状)を作製し、そして、このインゴットを所定の厚さにスライスすることによって太陽電池に使用可能なウェハを得るという手法である。
【0004】
ところが、キャスト法では、スライスを行なうために無駄になるシリコンが比較的多いという問題があった。そして、そのようなスライスを行なうための時間とコストが問題となっていた。そこで、最近では、このような問題点を解消するために、融液したシリコンからシート状の多結晶シリコンの板を直接製造する方法が種々提案されている。
【0005】
溶融したシリコンからシート状シリコン基板を製造する方法の一つとして、シリコンの融点以下の温度に保持された基板(成長基板)を、シリコンの融液に接触させ、シート状シリコン基板を得る方法がある。たとえば特許文献2では、点状、線状および面上の凸部のうち少なくともいずれかを有する成長基板にシリコンを成長させることによって、シート状シリコン基板を製造する手法が提案されている。この手法では、かかる成長基板を用いることで、凸部を結晶成長の起点としてシリコン結晶を成長させて、凸部から成長した各結晶をつながらせることによりデンドライト成長が抑制されて、平滑性に優れたシート状シリコン基板を製造することができるとされる。
【0006】
また、特許文献3では、溶融したシリコンに浸漬されて結晶成長がそれぞれ行なわれる第1面とその第1面と所定の位置関係にある第2面とを備えた成長基板を用いて、シート状シリコン基板を製造する手法が提案されている。特に、この成長基板によると、所定の配置関係による第1面と第2面とによってその第1面と第2面にそれぞれ成長するシート状のシリコン基板が成長基板を掴むような構造となることから、成長したシート状シリコン基板が成長基板から落下するのを低減することができるとされる。
【特許文献1】特開平11−021120号公報
【特許文献2】特開2001―223172号公報
【特許文献3】国際公開2004/016836号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のシート状基板の製造方法では、次のような問題点があった。成長基板の表面に成長したシート状シリコン基板を、太陽電池等の商品に加工する場合には、シート状シリコン基板を成長基板から剥離する必要がある。特に、シート状シリコン基板からなる太陽電池等の商品を低コストでかつ大量に生産するには、シート状シリコン基板を成長基板から自動的に剥離することが可能な剥離装置が望まれている。
【0008】
ところが、成長基板を掴むようにシート状シリコン基板を成長基板に成長させる手法では、シート状シリコン基板が成長基板に比較的強固に成長基板に密着しているため、シート状シリコン基板を成長基板から剥離することは困難であった。また、シート状シリコン基板は脆弱であるため、手作業による剥離であっても細心の注意が必要であり、このシート状シリコン基板を自動的に剥離することは極めて困難であった。
【0009】
本発明は上記問題に解決するためになされたものであり、一つの目的は、成長基板に成長したシート状基板をその成長基板から自動的に剥離するシート状基板剥離装置を提供することであり、他の目的は、そのようなシート状基板を成長基板から剥離するシート状基板剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るシート状基板剥離装置は、金属材料もしくは半導体材料のうち少なくともいずれか一方を含有する所定の物質の融液に成長用基板を接触させて、その成長用基板の表面に成長した物質からなるシート状基板を、成長用基板から剥離するためのシート状基板剥離装置である。そのシート状基板剥離装置は、吸着部と移動部とを有している。吸着部は、成長用基板に成長したシート状基板における所定の部分を吸着する。移動部は、吸着部によりシート状基板を吸着した状態で吸着部および成長基板部の少なくともいずれかを移動させることにより、シート状基板を成長用基板から剥離する。成長用基板は、平面状に延在してシート状基板を実質的に成長させる主面と、その主面の一端側に設けられ、主面に成長するシート状基板の部分とで成長基板における一端側の部分を掴む態様でシート状基板の部分を成長させる所定の端面とを備えている。吸着部は、成長用基板において一端側に位置する部分に成長したシート状基板の部分を吸着する機能を備えている。移動部は、吸着部によってシート状基板を吸着した状態で、端面に成長したシート状基板の部分を端面から引離す態様で主面に平行に移動させる機能を備えている。
【0011】
この構成によれば、成長基板の一端側を掴むように成長したシート状基板に対し、成長用基板において一端側に位置する部分に成長したシート状基板の部分を吸着した状態で、端面に成長したシート状基板の部分を端面から引離す態様で吸着部および成長基板部の少なくともいずれかを主面に平行に移動させることにより、シート状基板に圧縮応力や剪断応力が生じるのを抑えてシート状基板を損傷させることなく成長基板から剥離させることができる。なお、この明細書でいう平行とは、数学的な平行を意図するものではなく、装置の製造上の誤差、クリアランス、機械的な動作の遊び等を当然に含むものを意図する。
【0012】
より具体的にシート状基板を破損させることなく成長基板から剥離するには、移動部は、シート状基板が成長基板の一端側の部分を掴んでいたのを開放する態様でシート状基板を移動させる機能を有していることが好ましい。
【0013】
成長基板の一端側を掴むようにシート状基板を成長させるためには、成長基板における所定の端面は、主面と繋がる第1端面と、主面の法線ベクトルと反平行または鈍角をなす法線ベクトルを有して第1端面と繋がる第2端面とを含むことが好ましい。なお、この明細書でいう反平行および鈍角は、数学的に厳密な関係を意図するものではなく、製造上の誤差を当然に含むものである。
【0014】
また、シート状基板に圧縮応力や剪断応力が生じないようにして剥離するには、吸着部は、成長用基板の一端側の端部から端面が位置する側とは反対の他端側の端部に至る第1長さに対して、成長用基板の一端側の端部から第1長さの3分の1以下の第2長さのところに位置する部分に成長したシート状基板の部分を吸着する機能を有しているか、あるいは、吸着部は、シート状基板における端面に成長したシート状基板の部分を吸着する機能を有していることが好ましい。なお、この明細書でいう一端側および他端側とは、それぞれの端部とその近傍の領域を含む。
【0015】
成長基板から剥離されたシート状基板を次の工程へ送り出すためには、剥離されたシート状基板を搬出する搬出部を備えていることが好ましい。
【0016】
本発明に係るシート状基板剥離方法は、金属材料もしくは半導体材料のうち少なくともいずれか一方を含有する所定の物質の融液に成長用基板を接触させて、その成長用基板の表面に成長した物質からなるシート状基板を、成長用基板から剥離するためのシート状基板剥離方法である。そのシート状基板剥離方法は、成長用基板として、平面状に延在してシート状基板を実質的に成長させる主面と、その主面の一端側に設けられ、主面に成長するシート状基板の部分とで成長基板における一端側の部分を掴む態様でシート状基板の部分を成長させる所定の端面とを備えた成長基板を用い、吸着ステップと剥離ステップとを備えている。吸着ステップでは、成長用基板を物質の融液に接触させることにより成長用基板の表面に成長した物質からなるシート状基板における所定の部分が吸着される。剥離ステップでは、シート状基板を吸着した状態で端面に成長したシート状基板の部分を端面から引離す態様でシート状基板および成長基板の少なくともいずれかを主面に平行に移動させることにより、シート状基板が成長用基板から剥離される。その吸着ステップでは、成長用基板において一端側に位置する部分に成長したシート状基板の部分が吸着される。
【0017】
この方法によれば、成長基板の一端側を掴むように成長したシート状基板に対し、吸着ステップにおいて成長用基板において一端側に位置する部分に成長したシート状基板の部分が吸着されて、その状態で、剥離ステップにおいて、端面に成長したシート状基板の部分を端面から引離す態様でシート状基板および成長基板の少なくともいずれかを主面に平行に移動させることにより、シート状基板に圧縮応力や剪断応力が生じるのを抑えてシート状基板を損傷させることなく成長基板から剥離させることができる。
【0018】
シート状基板として太陽電池に適用するには、物質してシリコンを適用し、シート状基板として、シート状シリコン基板を剥離させることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係るシート状基板剥離装置として、溶融したシリコン(シリコン融液)に成長基板に浸漬させ、その成長基板に成長したシート状シリコン基板を成長基板から剥離するためのシート状基板剥離装置について以下に説明する。なお、成長基板に成長させる対象としてシリコンは一例であって、シリコンに限られるものではない。
【0020】
実施の形態1
(シート状基板剥離装置の構造)
本発明の実施の形態1に係るシート状基板剥離装置について説明する。図1に示すように、シート状基板剥離装置1は溶融したシリコンに浸漬させてシリコンのシート状基板(シート状シリコン基板)を成長させるための成長用基板3と、成長基板3に成長したシート状基板を剥離するための真空吸着パッド11と、剥離されたシート状基板を搬送するためのベルヌーイ吸着パッド13と、真空吸着パッド11またはベルヌーイ吸着パッド13を移動させるための垂直移動ロッド15および水平移動ロッド17と、成長用基板3を固定するための固定台9とを備えて構成される。
【0021】
図1および図2に示すように、成長基板3には、それぞれシート状シリコン基板を成長させる第1成長面(主面)3a、第2成長面(第1端面)3bおよび第3成長面(第2端面)3cが設けられている。第1成長面3aは平面状に延在してシート状シリコン基板を実質的に成長させる面となり、太陽電池等の商品として使用されるシート状シリコン基板が形成される面となる。第2成長面3bと第3成長面3cは、成長基板3における一端側に設けられている。
【0022】
第1成長面3aの法線ベクトル30と第2成長面3bの法線ベクトル31とはほぼ直角をなしている。第1成長面3aの法線ベクトル30と第3成長面3cの法線ベクトル32とはほぼ反平行とされる。シート状シリコン基板は、第1成長面3aから第3成長面3cにわたり成長基板3の一端側の部分を掴むように成長することになる。なお、成長基板3における第1成長面3a〜第3成長面3cの法線ベクトル30〜32は、成長基板3の表面から外方に向う方向と定義される。
【0023】
また、前述したように、デンドライト成長を抑制して平滑性に優れたシート状シリコン基板を得るためには、成長基板3の第1成長面3aに凸部が設けられることがある。このような凸部が設けられて第1成長面3aが凹凸表面を有しているような場合には、第1成長面3aにおける法線ベクトルとしては局所的にさまざまな方向を向くことになるため、法線ベクトルは凸部を含む包絡面に対して定義することとする。
【0024】
また、成長基板3の第1成長面3aには、外周部に沿って堀5が設けられている。この堀5は、第1成長面3aに成長するシート状シリコン基板と、成長基板3の外周部に成長するシリコンのバリとを分離させるためのものである。真空吸着パッド11は、成長基板3に成長するシート状シリコン基板のうち、第1成長面3aに成長した部分を真空吸着するように成長基板3の上方に配設されている。その真空吸着パッド11は、所定の水平移動ロッド17および垂直移動ロッド15に取り付けられて、水平方向の移動と垂直方向の移動が可能とされる。また、真空吸着パッド11は真空ラインに接続されて、制御ユニット19によって真空のオン、オフが制御される。なお、図1では、簡単のために、真空ポンプもしくは真空エジェクタ、圧力計およびエアフィルタ等は図示されていない。
【0025】
ベルヌーイ吸着パッド13は、剥離されたシート状シリコン基板60を所定の位置に搬送するためのものであり、重力的に安定したシート状シリコン基板60の中心部付近を吸着するように吸着する位置が調整されている。固定台9は、シート状シリコン基板60を剥離させる動作中に成長基板3が動かないように固定する治具である。このシート状基板剥離装置1では、成長基板3に設けられたアリ溝7を固定台9に嵌合させることによって、成長基板3が固定台9に固定されることになる。
【0026】
次に、上述したシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板の剥離動作について説明をするが、その前に、シート状シリコン基板を成長させる成長基板の構造、その成長基板を用いたシート状シリコン基板の製造装置およびシート状シリコン基板の製造方法について具体的に説明する。
【0027】
(シート状基板剥離装置における成長基板の構造)
成長基板3の形状(構造)について、図3〜図6に基づいて説明する。図3〜図6に示すように、成長基板3には、シート状シリコン基板を実質的に成長させる第1成長面(主面)3aと、その第1成長面3aに連続する第2成長面(第1端面)3bおよび第3成長面(第2端面)3cが形成されている。第2成長面3bおよび第3成長面3cは、成長基板3の一端側に形成されている。この第2成長面3bおよび第3成長面3cは、それぞれの法線ベクトル31,32が、第1成長面3aの法線ベクトル30とは反平行、鋭角、あるいは鈍角をなす面を含んでいる。
【0028】
すなわち、図3に示される成長基板3では、図4に示すように、第1成長面3aの法線ベクトル30と第3成長面3cの法線ベクトル32とは反平行の関係になっている。そして、第1成長面3aの法線ベクトル30と第2成長面3bの法線ベクトル31とはほぼ直角の関係になっている。図5に示される成長基板3では、図6に示すように、第1成長面3aの法線ベクトル30と第3成長面3cの法線ベクトル32とは鈍角をなす関係になっている。そして、第1成長面3aの法線ベクトル30と第2成長面3bの法線ベクトル31とは鋭角をなす関係になっている。
【0029】
成長基板3がこのような第1成長面3a〜第3成長面3cを有していることで、その成長基板3に成長するシート状シリコン基板は、成長基板3の一端側の部分を掴むように成長することから、この構造は掴み構造と称される。
【0030】
こうして、図4に示す成長基板3に成長したシート状シリコン基板60では、成長基板3の第1成長面3a〜第3成長面3cとほぼ対応するように、第1面60a、第2面60bおよび第3面60cが形成される。第1面60aの法線ベクトル35と第3面60cの法線ベクトル37は反平行となり、第1面60aの法線ベクトル35と第2面60bの法線ベクトル36はほぼ直角の関係になる。第1面60aと第2面60bとの間に境界部分(稜の部分)が位置する。
【0031】
また、図6に示す成長基板3に成長したシート状シリコン基板60では、成長基板3の第1成長面3a〜第3成長面3cとほぼ対応するように、第1面60a、第2面60bおよび第3面60cが形成される。第1面60aの法線ベクトル35と第3面60cの法線ベクトル37は鈍角をなし、第1面60aの法線ベクトル35と第2面60bの法線ベクトル36は鋭角の関係になる。第1面60aと第2面60bとの間に境界部分(稜の部分)が位置する。
【0032】
なお、成長基板3の法線ベクトル30〜32は、前述したように、成長基板3の表面から成長基板3の外方に向う方向として定義される。また、シート状シリコン基板60の法線ベクトル35〜37は、シート状シリコン基板60が成長する方向、すなわち、成長基板3の表面から離れる方向として定義される。
【0033】
このような成長基板3を用いることで、シート状シリコン基板60は成長基板3の一端側の部分を掴むように成長し、シート状シリコン基板60が成長基板3から剥がれ落ちるのを防止して、シート状シリコン基板60の回収率を向上させることが可能になる。
【0034】
成長基板3に成長したシート状シリコン基板60を剥離する際には、剥離すべきシート状シリコン基板60の第1面60a〜第3面60cと接する成長基板3の第1成長面3a〜第3成長面3cのそれぞれの法線ベクトル30〜32と反平行の方向と、その法線ベクトル30〜32と鈍角をなす方向とのいずれの方向にも該当しない方向に引き出すことが望ましい。特に、上述した成長基板3では、太陽電池として使用される第1成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の第1面60aの部分を、第1成長面3aに平行に引き出すことが好ましい。
【0035】
なお、シート状シリコン基板60において、成長基板3の第1成長面3aに成長する部分と、成長基板3の側面に成長する部分(バリ)とが繋がっていると、このような引き出し方向を特定することは困難な場合がある。そこで、上述したように、図1に示すように、成長基板3に第1成長面3aの周囲に沿って堀5を設けて第1成長面3aに成長する部分とバリとを分離することで、引き出し方向を比較的容易に特定することができる。
【0036】
(シート状シリコン基板の製造装置)
次に、成長基板にシート状シリコン基板を成長させるシート状シリコン基板の製造装置の一例について説明する。図7に示すように、シート状シリコン基板の製造装置では、坩堝昇降台56の上に断熱材55および坩堝台54を介在させて坩堝51が載置されている。坩堝51の周囲には加熱用ヒーター53が配設されている。その坩堝51には加熱用ヒーター53によって溶融したシリコン融液52が貯留され、融点以上の所定の温度に保持されている。断熱材55は、そのようなシリコン融液52の温度を均一に保持するとともに、坩堝51の底から熱が逃げるのを抑制する機能を有している。
【0037】
坩堝51の上方には、固定脚57に固定された成長基板3が配設されている。成長基板3は駆動装置(図示せず)によって矢印に示す方向に搬送されながらシリコン融液52に浸漬され、その後、シリコン融液52から引き上げられる。成長基板3がシリコン融液52に浸漬されて引き上げられる間に成長基板3の表面にシリコンが成長する。同じ厚さのシリコンを成長基板3の表面に成長させるため、坩堝昇降台56は成長基板3がシリコン融液52の融液面から一定の深さまで浸漬するように坩堝台54を上下動させる機能を有している。
【0038】
シート状シリコン基板60を成長基板3に安定して成長させるには、シリコン融液52の温度を精密に制御することが望まれる。たとえば、複数の熱電対、あるいは、放射温度計などを用いることでよりシリコン融液52の温度をより精密に制御することが可能になる。
【0039】
特に、熱電対の場合には、より正確に温度を測定しようとすれば、熱電対をシリコン融液52に直接浸漬させるのが有効な手法である。ところが、この場合には、熱電対の保護管などが含有する不純物がシリコン融液52に混入するおそれがあるため、不純物の混入が問題となるシート状シリコン基板60の用途によっては、そのような熱電対による汚染を阻止する構造を採用することが求められる。
【0040】
また、温度の制御方法としては、たとえば坩堝51の壁に適当な孔などを設け、その孔に熱電対を挿入するなどして、シリコン融液52の温度を間接的に制御する手法がある。また、放射温度計を用いてシリコン融液52の温度を測定するような構造としてもよい。
【0041】
(シート状シリコン基板の製造方法)
次に、図7に示されるシート状シリコン基板の製造装置に基づいて、シート状シリコン基板を製造する方法の一例について説明する。まず、シート状シリコン基板の比抵抗の値が所望の値になるようにホウ素(B)の濃度を調整したシリコンの塊を坩堝51に入れ、その坩堝51をチャンバー58内の坩堝台54に載置する。
【0042】
次に、チャンバー58内を真空引きしてチャンバ−58内を所定の圧力まで減圧する。その後、チャンバー58内にアルゴンガスを、たとえば流量10×10-3m3/minにて流し続ける。常時アルゴンガスを流しつづけるのは、清浄なシリコン融液面を得るためである。次に、加熱用ヒーター53の設定温度を段階的に上昇させて最終的に1500℃に設定し、坩堝51内のシリコンの塊を完全に溶融させてシリコン融液52とする。
【0043】
その後、シリコン融液52の温度がたとえば1410℃となるように加熱用ヒーター53の温度を設定し、その状態を約30分間保持してシリコン融液52の温度を安定させる。そして、坩堝昇降機構56によって坩堝51を所定の位置(高さ)に移動させる。
【0044】
次に、成長基板3にシート状シリコン基板を成長させる。坩堝51の上方に配設された固定脚57に対して、たとえば図1に示す成長基板3の第1成長面3aがシリコン融液52と向かい合うように、第1成長面3aを下方に向けて成長基板3があらかじめ固定される。固定脚57に固定された成長基板3を駆動装置(図示せず)によって矢印に示す方向に搬送させながらシリコン融液52に浸漬し、その後、シリコン融液52から引き上げる。成長基板3がシリコン融液52に浸漬されて引き上げられる間に成長基板3の表面にシリコンが成長することになる。
【0045】
(シート状基板剥離装置の剥離動作)
次に、以上のようにして成長基板3に成長させたシート状シリコン基板60を、本実施の形態に係るシート状基板剥離装置1によって成長基板3から剥離させる剥離動作について詳しく説明する。
【0046】
まず、図8および図9に示すように、シート状シリコン基板60を成長させた成長基板3が固定台9に固定される。次に、垂直移動ロッド15を降下させて、成長基板3の第1成長面3aにおいて第2成長面3bが位置する一端側の部分に成長したシート状シリコン基板60の部分をめがけて真空吸着パッド11を降ろす。次に、真空排気を行なって真空吸着パッド11にそのシート状シリコン基板60の部分を吸着させる。
【0047】
次に、図10に示すように、真空吸着パッド11にシート状シリコン基板60を吸着させた状態で水平移動ロッド17を成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左側)に移動させることによって、図11および図12に示すように、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させる。
【0048】
この場合、第1成長面3aの一端側に成長するシート状シリコン基板60の部分は第1成長面3aに密着していることから、このシート状シリコン基板60の法線ベクトル35は第1成長面3aの法線ベクトル30(図2参照)と同じ向きになり、真空吸着パッド11を移動させる方向は、法線ベクトル35または法線ベクトル30とほぼ直交する方向ということになる。また、この方向は、第2成長面3bおよび第3成長面3cに成長したシート状シリコン基板60の部分を、第2成長面3bおよび第3成長面3cから引離す方向でもある。
【0049】
その水平移動ロッド17を移動させる距離としては、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させることができ、かつ、剥離されたシート状シリコン基板60を搬送させるのに十分な距離であることが好ましい。この場合、その移動させる距離としては、成長基板3の第3成長面3cの幅Wよりも長いことが望ましい。こうして、シート状基板60が成長基板60の一端側の部分を掴んでいたのを開放した状態になる。シート状基板剥離装置1では、このようなシート状基板60が成長基板3の一端側の部分を掴んでいたのを開放させる動作が行なわれる。
【0050】
次に、真空排気を停止して真空吸着パッド11をシート状シリコン基板60から離し、シート状シリコン基板60を搬送するのに支障のない位置に真空吸着パッド11を退避させる。次に、剥離されて成長基板3の第1成長面3aに載置された状態のシート状シリコン基板60の中心部付近にベルヌーイ吸着パッド13を降ろし、シート状シリコン基板60を吸着させる。そして、図13に示すように、シート状シリコン基板60を吸着したベルヌーイ吸着パッド13を移動させて、シート状シリコン基板60を所定の位置に搬送する。こうして、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させる一連の剥離動作が完了する。
【0051】
上述したシート状基板剥離装置1による剥離動作によれば、成長基板3の第1成長面3aおける一端側の部分に成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着し、その吸着した状態でシート状シリコン基板60を第1成長面3aに平行に移動させる。これにより、シート状シリコン基板60を破損させることなく高い歩留まりをもって成長基板3から剥離させることができる。
【0052】
特に、シート状シリコン基板60を破損させずに吸着するには、図9に示すように、成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側の端部から第2成長面3bと対向する他端側の端部に至る長さ(L)の3分の1以下の距離Sのところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着させることが望ましく、より高い歩留まりをもってシート状シリコン基板60を剥離するには、その距離Sは5分の1以下であることがより望ましい。すなわち、第1成長面3aと第2成長面3bとの境界部分(陵の部分)により接近したところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着しながら第1成長面3aに平行に移動させることで、シート状シリコン基板60を損傷させることなく成長基板3から剥離させることができる。これは、次の理由によると考えられる。
【0053】
図9または図10に示されるように、成長基板3が所定の配置関係を有する第1成長面3a、第2成長面3bおよび第3成長面3cを有していることで、点線枠40内に示すように、シート状シリコン基板60は成長基板3の一端側の部分を掴むように成長して、成長基板3に比較的強固に密着する。そのため、シート状シリコン基板60の第1成長面3aを真空吸着しながら第1成長面3aに平行に移動(スライド)させるとき、シート状シリコン基板60が成長基板3を掴む部分(点線枠40内)と真空吸着する位置がそれぞれ力点となって、この2つの力点の間に圧縮応力が作用することになる。
【0054】
このとき、第1成長面3aと第2成長面3bとの境界部分からの距離(成長基板3の一端側の端部からの距離)Sが、距離Lの3分の1を越える距離のところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着してスライドさせようとすると、この場合には、この2つの力点間の距離が比較的離れているために、シート状シリコン基板60を容易に反らせてしまうことになる。シート状シリコン基板60が反った状態でさらにスライドさせようとすると、シート状シリコン基板60には圧縮応力のみならず剪断応力も加わり、シート状シリコン基板60が破壊されてしまうおそれが強くなる。
【0055】
これに対して、成長基板3の一端側の端部からの距離Sが、距離Lの3分の1以下の距離のところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着してスライドさせる場合には、2つの力点間の距離が比較的短いために、シート状シリコン基板60に圧縮応力に起因する反りが小さくなり、剪断応力も小さくなる。その結果、シート状シリコン基板60を破壊することなく成長基板3から剥離させることができると考えられる。
【0056】
また、上述したシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板の剥離方法は、シート状シリコン基板60が成長した時点で反っている場合にも適用することができる。上述した成長基板3では、シート状シリコン基板60は成長基板3における一端側の部分を掴むように成長するため、成長基板3の一端側の部分ではシート状シリコン基板60は成長基板3と密着する。したがって、シート状シリコン基板60が成長した時点で反っている場合とは、成長基板3における第2成長面3bが位置する側とは反対の他端側の部分に成長するシート状シリコン基板60の部分が成長基板3の表面から離れている、あるいは、浮いているような場合である。
【0057】
この場合に、成長基板3の一端側の端部から比較的離れたところに成長するシート状シリコン基板60の部分を真空吸着しようとすると、成長基板3の表面から浮いたシート状シリコン基板60の部分を上方から押え付けることになる。そうすると、成長基板3の第1成長面3aにおける一端側の部分に成長して第1成長面3aに密着しているシート状シリコン基板60の部分を成長基板3から引離そうとする力が作用することになり、シート状シリコン基板60に割れを生じさせるおそれが強くなる。
【0058】
これに対して、成長基板3の第1成長面3aにおける一端側の部分により接近したところに成長するシート状シリコン基板60の部分を真空吸着する場合には、真空吸着するシート状シリコン基板60の部分が成長基板3に密着しているため、上方から押さえつける力は成長基板3によって受けられてシート状シリコン基板60にはあまり作用しない。その結果、シート状シリコン基板60には無理な力が作用せず、シート状シリコン基板60に割れを生じさせるおそれが低くなる。
【0059】
真空吸着パッド11によりシート状シリコン基板60を真空吸着させた後に、そのシート状シリコン基板60を移動させる方向は、図10に示すように、成長基板3の3つの法線ベクトル30〜32のいずれに対しても鈍角をなさず、そして、反平行をなさない方向とすることが好ましい。具体的には、この方向は、法線ベクトル30とほぼ直交する方向であり、成長基板3の第1成長面3aに平行であって、真空吸着した位置から成長基板3の一端側に向う方向である。なお、反平行とは、2つのベクトルが平行で互いに反対の向きをいう。
【0060】
このような方向にシート状シリコン基板60をスライドさせることで、剥離を阻害する力がシート状シリコン基板60に作用することがなくなって剥離が容易になるだけでなく、シート状シリコン基板60に無理な力を与えることがなくなる。その結果、剥離の際にシート状シリコン基板60に割れが生じるのを抑制することができる。
【0061】
なお、上述したシート状基板剥離装置1では、シート状シリコン基板60を吸着する真空吸着パッド11の材質は特に限定されないが、耐熱性の高い素材から形成されていることが好ましい。これは浸漬直後の成長基板3とシート状シリコン基板60の温度が150〜200℃と比較的高温であるため、耐熱性の低い材質から形成された真空吸着パッド11の場合では、冷却を行なってからシート状シリコン基板60の剥離を行なう必要があるためである。
【0062】
また、真空吸着パッド11は、比較的しなやかな性質を有する材料から形成されていることが好ましい。これは、シート状シリコン基板60に与える衝撃を和らげることができるとともに、シート状シリコン基板60の表面に微小な凹凸があっても、真空吸着パッド11の変形により微小な凹凸を吸収して真空吸着を容易に行なうことができるからである。耐熱性としなやかさの双方の性質を有する素材としては、たとえばフッ素ゴム、シリコンゴム等が挙げられる。
【0063】
(変形例1)
上述したシート基板剥離装置1では、シート状シリコン基板60を真空吸着する真空吸着パッド11として、1つの真空吸着パッド11を備えた場合を例に挙げて説明したが、真空吸着パッド11の数としては1つに限られず、たとえば図14および図15に示すように、複数の真空吸着パッド11を備えていてもよい。複数の真空吸着パッド11を備えていることで、シート状シリコン基板60の複数の箇所を真空吸着させることができて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0064】
(変形例2)
また、真空吸着パッド11を複数備えたシート状基板剥離装置1では、たとえば図16および図17に示すように、複数の真空吸着パッド11a,11bのうち少なくとも一つの真空吸着パッド11aが、成長基板3の一端側の端部からの距離S1が、一端側の端部と他端側の端部との距離Lの3分の1以下の距離のところに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する位置に配置され、残りの真空吸着パッド11bがその一つの真空吸着パッド11の動きと連動するように設定されていれば、その残りの真空吸着パッド11bは、成長基板3の一端側の端部からの距離S2が距離Lの3分の1以上の距離のところに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する位置に配置されていてもよい。
【0065】
これは、以下の理由による。図16および図17に示されるシート状基板剥離装置1では、成長基板3に成長したシート状シリコン基板60に作用する力点は、シート状シリコン基板60が成長基板3を掴む部分(点線枠40内)、真空吸着パッド11a,11bがそれぞれシート状シリコン基板60を吸着する部分の三箇所である。この三箇所の力点のうち、真空吸着パッド11a,11bがそれぞれシート状シリコン基板60を吸着する部分の2つの力点については、真空吸着パッド11a,11bが連結部材21によって互いに連結されて連動することで、この2つの力点の間に位置するシート状シリコン基板60の部分に圧縮応力が作用することはほとんどない。
【0066】
一方、シート状シリコン基板60が成長基板3を掴む部分と真空吸着パッド11aがシート状シリコン基板60を吸着する部分の2つの力点については、上述したように、2つの力点間の距離が比較的短いことで、シート状シリコン基板60をスライド動作させることに伴ってシート状シリコン基板60に作用する圧縮応力に起因する反りと剪断応力は比較的小さいものとなる。
【0067】
(変形例3)
また、さらに、真空吸着パッド11としては、たとえば図18および図19に示すように、シート状シリコン基板60を吸着する部分の形状が矩形の真空吸着パッド11を用いてもよい。このような矩形状の真空吸着パッド11を適用することで、シート状シリコン基板60の比較的広い領域が真空吸着されて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0068】
その真空吸着パッド11による真空吸着力は、真空吸着パッド11の面積と真空圧力によって決まる。シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させるのに適した真空吸着力は、真空吸着パッド11の形状や成長基板3の形状によって異なるために、これらの形状に応じて適切な吸着力が得られるように適宜変更することが好ましい。
【0069】
また、上述したシート状基板剥離装置1では、成長基板3から剥離されたシート状シリコン基板60を搬送するのに、真空吸着パッド11とは別に設けられたベルヌーイ吸着パッド13を用いて搬送する場合を例に挙げて説明したが、真空吸着パッド11を用いて剥離したシート状シリコン基板60を搬送するようにしてもよい。この場合には、別途ベルヌーイ吸着パッド13を設ける必要がなくなって、シート状基板剥離装置1の構造をよりシンプルにすることができる。
【0070】
特に、真空吸着パッド11を使用してシート状シリコン基板60を搬送する場合には、シート状シリコン基板60の重心を考慮して、シート状シリコン基板60を安定して搬送させることができる位置に真空吸着パッド11を吸着させることが望まれる。たとえば、図18等に示されるように、複数の真空吸着パッド11a,11bを設けることで、バランスを崩すことなく安定してシート状シリコン基板60を搬送することができる。
【0071】
さらに、上述したシート状基板剥離装置1では、成長基板3のアリ溝7を固定台9に嵌合させることによって成長基板3を固定台9に固定する場合を例に挙げて説明したが、この他に、たとえば成長基板3の側面を固定する態様であってもよい。また、成長基板3のアリ溝角部を対角線上にチャッキングする態様であってもよい。あるいは、成長基板3を真空吸着により固定する態様であってもよい。
【0072】
また、上述したシート状基板剥離装置1では、真空吸着パッド11を移動させるのに水平移動ロッド17および垂直移動ロッド15を用いた場合を例に挙げて説明したが、この他に、多関節ロボット等を用いて真空吸着パッド11を移動させるようにしてもよい。また、真空吸着パッド11によってシート状シリコン基板60を吸着して静止した状態で、成長基板3を移動させるようにしてもよい。成長基板3を固定台9に固定する構造や、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させる機構としては、製造ラインとの関係で最も適した構造等を選択して、これを適用することができる。
【0073】
さらに、上述したシート状基板剥離装置1に適用される成長基板3としては、成長するシート状シリコン基板60が成長基板3の一端側の部分を掴むような構造となるものであれば、図1に示される成長基板3の他に、前述したように、図5または図6に示すような成長基板3であってもよく、成長したシート状シリコン基板60を破損することなく成長基板3から剥離させることができる。
【0074】
本実施の形態におけるシート状基板剥離装置1の主眼は、剥離の際にシート状シリコン基板60に与える剪断応力が比較的小さく、そして、成長基板3の一端部からの距離が一端部と他端部との距離Lの3分の1以下の距離のところに成長して成長基板3の第1成長面3aとの密接性がよいシート状シリコン基板60の部分を、吸着しながら第1成長面3aに平行にスライドさせることによって、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離することにある。
【0075】
したがって、上述した、真空吸着パッド11の形状や個数、剥離したシート状シリコン基板60の移載の態様、成長基板3の固定態様、動作機構の構造、成長基板3の形状等は一例であってこれらに制限されるものではない。
【0076】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2に係るシート状基板剥離装置について説明する。図20および図21に示すように、シート状基板剥離装置1は、溶融したシリコンに浸漬させてシリコンのシート状基板を成長させるための成長用基板3と、成長基板3に成長したシート状基板を剥離するための真空吸着パッド11と、剥離されたシート状基板を搬送するためのベルヌーイ吸着パッド13と、真空吸着パッド11またはベルヌーイ吸着パッド13を移動させるための垂直移動ロッド15および水平移動ロッド17と、成長用基板3を固定するための固定台9とを備えて構成される。
【0077】
本実施の形態に係るシート状基板剥離装置1では、特に、真空吸着パッド11は、成長基板3の第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を真空吸着するよう配設されている。なお、これ以外の構成については、前述した図1等に示すシート状基板剥離装置と同様なので、同一部材には同一符合を付しその説明を省略する。
【0078】
次に、上述したシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板60の剥離動作について説明する。まず、前述した方法により成長基板3にシート状シリコン基板60を成長させた後、図20に示すように、その成長基板3が固定台9に固定される。次に、図21に示すように、水平移動ロッド17を移動させて、成長基板3の第2成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の部分に接触させる。次に、真空排気を行なって真空吸着パッド11にそのシート状シリコン基板60の部分を吸着させる。
【0079】
次に、図22および図23に示すように、真空吸着パッド11にシート状シリコン基板60を吸着させた状態で水平移動ロッド17を成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左側)に移動させることによって、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させる。なお、水平移動ロッド17を移動させる距離としては、前述したシート状基板剥離装置1の場合と同様に、成長基板3の第3成長面3cの幅Wよりも長いことが望ましい。
【0080】
次に、真空排気を停止して真空吸着パッド11をシート状シリコン基板60から離し、シート状シリコン基板60を搬送するのに支障のない位置に真空吸着パッド11を退避させる。次に、剥離されて成長基板3の第1成長面3aに載置された状態のシート状シリコン基板60の中心部付近にベルヌーイ吸着パッド13を降ろし、シート状シリコン基板60を吸着させる。そして、図24に示すように、シート状シリコン基板60を吸着したベルヌーイ吸着パッド13を移動させてシート状シリコン基板60を所定の位置に搬送する。こうして、シート状シリコン基板60の一連の剥離動作が完了する。
【0081】
上述したシート状基板剥離装置1によれば、成長基板3の第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着し、その吸着した状態でシート状シリコン基板60を第1成長面3aに平行に移動させる。これにより、シート状シリコン基板60を破損させることなく高い歩留まりをもって成長基板3から剥離させることができる。
【0082】
前述したように、成長基板3の一端側の端部からの距離Sが、一端側の端部と他端側の端部との距離Lの3分の1を越える距離のところに成長するシート状シリコン基板60の部分を吸着してスライドさせようとすると、シート状シリコン基板60には圧縮応力のみならず剪断応力も加わり、シート状シリコン基板60が破壊されてしまうおそれが強くなる。
【0083】
これに対して、成長基板3の第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着してスライドさせる場合には、シート状シリコン基板60に圧縮応力が作用することはほとんどなくなる。その結果、シート状シリコン基板60を破壊することなくより確実に成長基板3から剥離させることができる。
【0084】
また、上述したシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板の剥離方法は、シート状シリコン基板60が成長した時点で反っている場合にも適用することができる。前述したように、シート状シリコン基板60が成長した時点で反っている場合とは、成長基板3において第2成長面3bが位置する一端側の部分ではシート状シリコン基板60は成長基板3と密着する一方、成長基板3において第2成長面3bが位置する側とは反対側の他端側の部分に成長するシート状シリコン基板60の部分は成長基板3の表面から離れている、あるいは、浮いているような場合である。
【0085】
そのため、シート状シリコン基板60と成長基板3とが密着している第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を真空吸着することで、側方から押さえつける力は成長基板3によって受けられてシート状シリコン基板60にはあまり作用しない。その結果、シート状シリコン基板60には無理な力が作用せず、シート状シリコン基板60に割れを生じさせるおそれが低くなる。
【0086】
シート状シリコン基板60を真空吸着させた後に、そのシート状シリコン基板60を移動させる方向は、前述したように、図21に示される成長基板3の3つの法線ベクトル30〜32のいずれに対しても鈍角をなさず、そして、反平行をなさない方向とすることが好ましい。具体的には、この方向は、法線ベクトル30とほぼ直交する方向であり、成長基板3の第1成長面3aに平行であって、真空吸着した位置から成長基板3の一端側に向う方向である。なお、反平行とは、2つのベクトルが平行で反対の向きをいう。
【0087】
このような方向にシート状シリコン基板60をスライドさせることで、剥離を阻害する力がシート状シリコン基板60に作用することがなくなって剥離が容易になるだけでなく、シート状シリコン基板60に無理な力を与えることがなくなる。その結果、剥離の際にシート状シリコン基板60に割れが生じるのを抑制することができる。
【0088】
(変形例1)
本実施の形態に係るシート状基板剥離装置1では、前述したシート状基板剥離装置1と同様に、図25および図26に示すように、複数の真空吸着パッド11を備えていてもよい。複数の真空吸着パッド11を備えていることで、シート状シリコン基板60の複数の箇所を真空吸着させることができて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0089】
(変形例2)
また、真空吸着パッド11として、たとえば図27および図28に示すように、シート状シリコン基板60を吸着する部分の形状が矩形の真空吸着パッド11を用いてもよい。このような矩形状の真空吸着パッド11を適用することで、シート状シリコン基板60の比較的広い領域が真空吸着されて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0090】
(変形例3)
また、さらに、本実施の形態に係るシート状基板剥離装置1では、成長基板3に成長したシート状シリコン基板60において第2成長面3bに成長した部分を吸着する真空吸着パッド11を少なくとも一つ備えていれば、たとえば図29および図30に示すように、第1成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する真空吸着パッド11をさらに備えていてもよく、このような真空吸着パッド11を備えていることで、シート状シリコン基板60をより広い範囲で真空吸着を行なうことができて、シート状シリコン基板60をより強固に保持することができる。
【0091】
さらに、上述した真空吸着パッド11の真空吸着力についても、前述したように、真空吸着パッド11の形状や成長基板3の形状に応じて適切な吸着力が得られるように適宜変更することが好ましい。また、真空吸着パッド11を水平移動ロッド17および垂直移動ロッド15によって移動させる他に、多関節ロボット等を用いて真空吸着パッド11を移動させるようにしてもよい。そして、さらに、ベルヌーイ吸着パッド13を設ける代わりに、このような真空吸着パッド11を用いて剥離したシート状シリコン基板60を搬送するようにしてもよい。
【0092】
また、前述したように、成長基板3としては、成長するシート状シリコン基板が成長基板3の一端側の部分を掴むような構造となるものであれば、成長したシート状シリコン基板60を破損することなく成長基板3から剥離させることができる。
【実施例】
【0093】
次に、上述した各シート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板の剥離動作について、これを実施例として具体的に説明する。
【0094】
(評価用試料の調整例)
まず、シート状シリコン基板の比抵抗が2Ω・cmになるようにホウ素(B)濃度を調整したシリコンの塊(原料)29kgを、内径40cmの円形の高純度カーボン製の坩堝1に入れて、図7に示されるシート状シリコン基板の製造装置のチャンバー58内に設置した。
【0095】
次に、真空ポンプによりチャンバ−58内を真空引きして、チャンバー58内の圧力が2.66×10-3Pa以下になるまで減圧した。その後、チャンバ−58内にアルゴンガスを導入してチャンバー58内の圧力を常圧(大気圧)にまで上げて、その後は、アルゴンガスを流量10×10-3m3/minにてチャンバー58の上部から流し続けた。
【0096】
そして、加熱用ヒーター53を昇温速度10℃/minの条件のもとで温度1500℃まで昇温させた。坩堝51内においてシリコンの原料が完全に溶融したことを確認した後、溶融したシリコン融液52の温度を1415℃に保持して、温度の安定化を図った。
【0097】
成長基板として、高純度の黒鉛の焼結体を図1に示される形状に加工した成長基板3を用いた。成長基板3における第1成長面3aの大きさを200mm×200mmとした。第2成長面3bの長さ(幅)を4.5mmとし、第3成長面3cの長さ(幅)を5mmとした。
【0098】
その成長基板3をシリコン融液52に浸漬させてシート状シリコン基板を成長させた。このとき、成長基板3の移動速度を、500cm/minとし、また、成長基板3をシリコン融液52に浸漬させる深さを最大10mmとした。この条件のもとで、成長基板3の第1成長面3aの中央部における厚みが平均350μmであり、成長基板3の一端側の端部を掴む態様で成長基板3に密着したシート状シリコン基板60を形成した。そして、剥離の評価のために、成長基板3を100枚用意して、そのそれぞれにシート状シリコン基板60を成長させた。
【0099】
このようにして成長基板3に成長したシート状シリコン基板60を、各種のシート状基板剥離装置1を用いて成長基板3から実際に剥離する剥離評価を行なった。以下、この評価について説明する。
【0100】
(実施例1)
シート状基板剥離装置として、図1に示されるシート状基板剥離装置1を用いた。そのシート状基板剥離装置1において、真空吸着パッド11として、吸着穴径φが10mmの真空吸着パッドを用いた。真空吸着パッドの材質をフッ素ゴムとし、また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−50kPaになるように調整した。また、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側から10mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11を配設した。
【0101】
次に、固定台9に成長基板3を固定し、シート状シリコン基板60の剥離時に成長基板3が移動しないようにした。そして、垂直移動ロッド15を降下させて、真空吸着パッド11をシート状シリコン基板60に接触させた。次に、真空吸着を行なって真空吸着パッド11によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッド17を成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左側)に長さ10mmだけ動かし、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させた。
【0102】
その後、真空吸着パッド11の内部を大気圧にした。次に、水平移動ロッド17を紙面に向って左側に長さ10mmだけ動かして、真空吸着パッド11を退避させた。そして、ベルヌーイ吸着パッド13をシート状シリコン基板60のほぼ中心部に降ろし、シート状シリコン基板60を吸着させた。最後に、ベルヌーイ吸着パッド13によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッド17と垂直移動ロット18とを動かし、シート状シリコン基板60を所定の位置にまで搬送して、シート状シリコン基板3と成長基板3とを完全に分離させた。
【0103】
剥離評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、シート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中97枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0104】
(実施例2)
次に、シート状基板剥離装置として、図14に示される複数の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素系ゴムとした。また、真空吸着パッド11の吸着穴径φを6mmとして、この真空吸着パッド11をピッチ15mmをもって4つ配設させた。さらに、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−40kPaになるように調整した。そして、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側から10mmの距離を隔てられたところに位置するように各真空吸着パッド11を配設した。
【0105】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例1の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中98枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0106】
(実施例3)
次に、シート状基板剥離装置として、図18に示される吸着口が矩形状の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をシリコンゴム製とし、矩形状の吸着口をサイズ4mm×60mmとした。また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−30kPaになるように調整した。さらに、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側から10mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11を配設した。
【0107】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例1の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中97枚であり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0108】
(実施例4)
次に、シート状基板剥離装置として、図16(図17)に示される複数の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素ゴムとした。真空吸着パッド11のうち真空吸着パッド11aを、成長基板3における第2成長面3bが位置する側の一端部からの距離S1が成長基板3の長さLの3分の1以下になる位置に配設し、特に、真空吸着パッド11aの中心が成長基板3の一端側から10mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11aを配設した。
【0109】
一方、真空吸着パッド11のうち真空吸着パッド11bを、対応する距離S2が長さLの3分の1以上になる位置に配設し、特に、真空吸着パッド11bの中心が成長基板3の一端側から100mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11bを配設した。その真空吸着パッド11aの吸着穴径φを8mmとし、真空吸着パッド11bの吸着穴径φを6mmとした。また、真空吸着パッド11a,11bの真空吸着時の真空圧力が−40kPaになるように調整した。
【0110】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例1の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中92枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0111】
(実施例5)
次に、シート状基板剥離装置として、図20に示される真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素系ゴムとし、また、真空吸着パッド11の吸着穴径φを4mmとした。さらに、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−60kPaになるように調整した。また、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2面の中心部に位置するように真空吸着パッド11を配設した。
【0112】
次に、固定台9に成長基板3を固定し、シート状シリコン基板60の剥離時に成長基板3が移動しないようにした。そして、水平移動ロッド17を所定の方向(紙面に向って右方向)に動作させて、真空吸着パッド11を成長基板3における第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分に接触させた。次に、真空吸着を行なって真空吸着パッド11によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッド17を所定の方向(紙面に向って左方向)に距離10mmだけ動かし、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させた。
【0113】
その後、真空吸着パッド11の内部を大気圧にした。次に、水平移動ロッド17を成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左方向)に距離10mmだけ動かして、真空吸着パッド11を退避させた。そして、ベルヌーイ吸着パッド13をシート状シリコン基板60のほぼ中心部に降ろし、シート状シリコン基板60を吸着させた。最後に、ベルヌーイ吸着パッド13によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッド17と垂直移動ロット18とを動かし、シート状シリコン基板60を所定の位置にまで搬送して、シート状シリコン基板3と成長基板3とを完全に分離させた。
【0114】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、シート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中90枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0115】
(実施例6)
次に、シート状基板剥離装置として、図25に示される複数の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素系ゴムとした。また、真空吸着パッド11の吸着穴径φを4mmとして、この真空吸着パッド11をピッチ10mmをもって6つ配設させた。さらに、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−60kPaになるように調整した。
【0116】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例5の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中98枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0117】
(実施例7)
次に、シート状基板剥離装置として、図27に示される吸着口が矩形状の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をシリコンゴム製とし、矩形状の吸着口をサイズ4mm×60mmとした。また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−30kPaになるように調整した。
【0118】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例5の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中97枚であり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0119】
(実施例8)
次に、シート状基板剥離装置として、図29に示される複数の真空吸着パッド11を備えたシート状基板剥離装置1を用いた。この場合、真空吸着パッド11の材質をフッ素ゴムとした。真空吸着パッド11のうち、成長基板3の第1成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する真空吸着パッド11の吸着穴径φを6mmとして、この真空吸着パッド11をピッチ15mmをもって4つ配設させた。一方、真空吸着パッド11のうち、成長基板3の第2成長面3bに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する真空吸着パッド11の吸着穴径φを4mmとして、この真空吸着パッド11をピッチ15mmをもって4つ配設させた。
【0120】
また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−40kPaになるように調整した。そして、成長基板3の第1成長面3aに成長したシート状シリコン基板60の部分を吸着する真空吸着パッド11の中心が、成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側の端部から10mmの距離を隔てたところに位置するようにその真空吸着パッド11を配設した。
【0121】
次に、水平移動ロッドおよび垂直移動ロッド(図示せず)を同時に動作させて、各真空吸着パッド11を成長基板3の第1成長面3aと第2成長面3bのそれぞれに成長したシート状シリコン基板60の部分に接触させた。次に、真空吸着を行なって真空吸着パッド11によりシート状シリコン基板60を保持しながら、水平移動ロッドを成長基板3の第1成長面3aに平行(紙面に向って左側)に動かして、シート状シリコン基板60を成長基板3から剥離させた。
【0122】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例5の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中98枚であることがわかり、本シート状基板剥離装置1が優れた剥離性を有していることが実証された。
【0123】
(実施例9)
次に、シート状基板剥離装置として、図1に示されるシート状基板剥離装置1を用いた。そのシート状基板剥離装置1において、真空吸着パッド11として、吸着穴径φが10mmの真空吸着パッドを用いた。真空吸着パッドの材質をフッ素ゴムとし、また、真空吸着パッド11の真空吸着時の真空圧力が−50kPaになるように調整した。また、真空吸着パッド11の中心が成長基板3の第2成長面3bが位置する一端側から65mmの距離を隔てられたところに位置するように真空吸着パッド11を配設した。
【0124】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、実施例1の場合と同様にしてシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは、100枚中79枚であった。この結果により、成長基板3の一端側から約3分の1の離れたところに位置するシート状基板60の部分を吸着することによって、実施例1〜8の場合に比べて剥離性は劣るが、後述する比較例と比べると優れた剥離性を有していることが実証された。
【0125】
(比較例)
本実施の形態1,2において説明した図1等に示されるシート状基板剥離装置1によるシート状シリコン基板60の剥離効果を比較するために、図31および図32に示すように、真空吸着パッドとして成長基板3に成長したシート状シリコン基板60の中央付近を吸着する真空吸着パッドを備えたシート状基板剥離装置を用いて剥離評価を行なった。
【0126】
評価用試料としてそれぞれシート状シリコン基板60を成長させた100枚の成長基板3について、真空吸着パッド11の位置以外は実施例1と同じ条件のもとでシート状シリコン基板60の剥離評価を行なった。その結果、シート状シリコン基板60が割れることなく成長基板3からシート状シリコン基板60を剥離することができたのは100枚中57枚であり、40%以上のシート状シリコン基板60が破損することがわかった。
【0127】
なお、上述した各実施の形態に係るシート状基板剥離装置1では、成長基板3にシリコンを成長させた場合を例に挙げて説明したが、シリコン以外の他の金属材料や半導体材料についてもこれらを成長させて、その成長基板からこれらの金属材料等を破損させることなく剥離することができる。
【0128】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の実施の形態1に係るシート状基板剥離装置の斜視図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示される断面線II−IIにおける断面図である。
【図3】同実施の形態において、シート状基板剥離装置に適用される成長基板の構造を説明するための部分斜視図である。
【図4】同実施の形態において、図3に示される断面線IV−IVにおける断面図である。
【図5】同実施の形態において、シート状基板剥離装置に適用される成長基板の変形例1に係る成長基板を示す斜視図である。
【図6】同実施の形態において、図5に示される断面線VI−VIにおける断面図である。
【図7】同実施の形態において、成長基板にシート状基板を成長させるシート状基板の製造装置を示す断面図である。
【図8】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第1の斜視図である。
【図9】同実施の形態において、真空吸着パッドと成長基板との配置関係を説明するための断面図である。
【図10】同実施の形態において、図8に示される断面線X−Xにおける断面図である。
【図11】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第2の斜視図である。
【図12】同実施の形態において、図11に示される断面線XII−XIIにおける断面図である。
【図13】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第3の斜視図である。
【図14】同実施の形態において、変形例1に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図15】同実施の形態において、図14に示される断面線XV−XVにおける断面図である。
【図16】同実施の形態において、変形例2に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図17】同実施の形態において、図16に示される断面線XVII−XVIIにおける断面図である。
【図18】同実施の形態において、変形例3に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図19】同実施の形態において、図18に示される断面線XIX−XIXにおける断面図である。
【図20】本発明の実施の形態2に係るシート状基板剥離装置の斜視図である。
【図21】同実施の形態において、成長基板と吸着パッドの配置関係を説明するための図20に示される断面線XXI−XXIにおける第1の断面図である。
【図22】同実施の形態において、成長基板と吸着パッドの配置関係を説明するための図20に示される断面線XXI−XXIにおける第2の断面図である。
【図23】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第1の斜視図である。
【図24】同実施の形態において、シート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための第2の斜視図である。
【図25】同実施の形態において、変形例1に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図26】同実施の形態において、図25に示される断面線XXVI−XXVIにおける断面図である。
【図27】同実施の形態において、変形例2に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図28】同実施の形態において、図27に示される断面線XXVIII−XXVIIIにおける断面図である。
【図29】同実施の形態において、変形例3に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図30】同実施の形態において、図29に示される断面線XXX−XXXにおける断面図である。
【図31】同実施の形態において、比較例に係るシート状基板剥離装置によるシート状シリコン基板の剥離動作を説明するための斜視図である。
【図32】同実施の形態において、図31に示される断面線XXXII−XXXIIにおける断面図である。
【符号の説明】
【0130】
1 シート状基板剥離装置、3 成長基板、3a 第1成長面、3b 第2成長面、3c 第3成長面、5 堀、7 アリ溝、9 固定台、11,11a,11b 真空吸着パッド、13 ベルヌーイ吸着パッド、15 垂直移動ロッド、17 水平移動ロッド、19 制御ユニット、21 連結部材、30〜32,35〜37 法線ベクトル、51 坩堝、52 シリコン融液、53 加熱用ヒータ、54 坩堝台、55 断熱材、56 坩堝昇降機構、57 固定脚、58 チャンバー、60 シート状シリコン基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料もしくは半導体材料のうち少なくともいずれか一方を含有する所定の物質の融液に成長用基板を接触させて、前記成長用基板の表面に成長した前記物質からなるシート状基板を、前記成長用基板から剥離するためのシート状基板剥離装置であって、
前記成長用基板に成長した前記シート状基板における所定の部分を吸着する吸着部と、
前記吸着部により前記シート状基板を吸着した状態で前記吸着部および前記成長基板部の少なくともいずれかを移動させることにより、前記シート状基板を前記成長用基板から剥離する移動部と
を有し、
前記成長用基板は、
平面状に延在して前記シート状基板を実質的に成長させる主面と、
前記主面の一端側に設けられ、前記主面に成長する前記シート状基板の部分とで前記成長基板における前記一端側の部分を掴む態様で前記シート状基板の部分を成長させる所定の端面と
を備え、
前記吸着部は、前記成長用基板において前記一端側に位置する部分に成長した前記シート状基板の部分を吸着する機能を備え、
前記移動部は、前記吸着部によって前記シート状基板を吸着した状態で、前記端面に成長した前記シート状基板の部分を前記端面から引離す態様で前記主面に平行に移動させる機能を備えた、シート状基板剥離装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記シート状基板が前記成長基板の前記一端側の部分を掴んでいたのを開放する態様で前記シート状基板を移動させる機能を有する、請求項1記載のシート状基板剥離装置。
【請求項3】
所定の前記端面は、
前記主面と繋がる第1端面と、
前記主面の法線ベクトルと反平行または鈍角をなす法線ベクトルを有して前記第1端面と繋がる第2端面と
を含む、請求項1または2に記載のシート状基板剥離装置。
【請求項4】
前記吸着部は、前記成長用基板の前記一端側の端部から前記端面が位置する側とは反対の他端側の端部に至る第1長さに対して、前記成長用基板の前記一端側の前記端部から前記第1長さの3分の1以下の第2長さのところに位置する部分に成長した前記シート状基板の部分を吸着する機能を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のシート状基板剥離装置。
【請求項5】
前記吸着部は、前記シート状基板における前記端面に成長した前記シート状基板の部分を吸着する機能を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のシート状基板剥離装置。
【請求項6】
剥離された前記シート状基板を搬出する搬出部を備えた、請求項1〜5のいずれかに記載のシート状基板剥離装置。
【請求項7】
金属材料もしくは半導体材料のうち少なくともいずれか一方を含有する所定の物質の融液に成長用基板を接触させて、前記成長用基板の表面に成長した前記物質からなるシート状基板を、前記成長用基板から剥離するためのシート状基板剥離方法であって、
前記成長用基板として、平面状に延在して前記シート状基板を実質的に成長させる主面と、前記主面の一端側に設けられ、前記主面に成長する前記シート状基板の部分とで前記成長基板における前記一端側の部分を掴む態様で前記シート状基板の部分を成長させる所定の端面とを備えた成長基板を用い、
前記成長用基板を前記物質の融液に接触させることにより前記成長用基板の表面に成長した前記物質からなるシート状基板における所定の部分を吸着する吸着ステップと、
前記シート状基板を吸着した状態で前記端面に成長した前記シート状基板の部分を前記端面から引離す態様で、前記シート状基板および前記成長基板の少なくともいずれかを前記主面に平行に移動させることにより、前記シート状基板を前記成長用基板から剥離する剥離ステップと
を備え、
前記吸着ステップでは、前記成長用基板において前記一端側に位置する部分に成長した前記シート状基板の部分が吸着される、シート状基板剥離方法。
【請求項8】
前記物質してシリコンを適用し、
前記シート状基板として、シート状シリコン基板を剥離させる、請求項7記載のシート状基板剥離方法。
【請求項1】
金属材料もしくは半導体材料のうち少なくともいずれか一方を含有する所定の物質の融液に成長用基板を接触させて、前記成長用基板の表面に成長した前記物質からなるシート状基板を、前記成長用基板から剥離するためのシート状基板剥離装置であって、
前記成長用基板に成長した前記シート状基板における所定の部分を吸着する吸着部と、
前記吸着部により前記シート状基板を吸着した状態で前記吸着部および前記成長基板部の少なくともいずれかを移動させることにより、前記シート状基板を前記成長用基板から剥離する移動部と
を有し、
前記成長用基板は、
平面状に延在して前記シート状基板を実質的に成長させる主面と、
前記主面の一端側に設けられ、前記主面に成長する前記シート状基板の部分とで前記成長基板における前記一端側の部分を掴む態様で前記シート状基板の部分を成長させる所定の端面と
を備え、
前記吸着部は、前記成長用基板において前記一端側に位置する部分に成長した前記シート状基板の部分を吸着する機能を備え、
前記移動部は、前記吸着部によって前記シート状基板を吸着した状態で、前記端面に成長した前記シート状基板の部分を前記端面から引離す態様で前記主面に平行に移動させる機能を備えた、シート状基板剥離装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記シート状基板が前記成長基板の前記一端側の部分を掴んでいたのを開放する態様で前記シート状基板を移動させる機能を有する、請求項1記載のシート状基板剥離装置。
【請求項3】
所定の前記端面は、
前記主面と繋がる第1端面と、
前記主面の法線ベクトルと反平行または鈍角をなす法線ベクトルを有して前記第1端面と繋がる第2端面と
を含む、請求項1または2に記載のシート状基板剥離装置。
【請求項4】
前記吸着部は、前記成長用基板の前記一端側の端部から前記端面が位置する側とは反対の他端側の端部に至る第1長さに対して、前記成長用基板の前記一端側の前記端部から前記第1長さの3分の1以下の第2長さのところに位置する部分に成長した前記シート状基板の部分を吸着する機能を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のシート状基板剥離装置。
【請求項5】
前記吸着部は、前記シート状基板における前記端面に成長した前記シート状基板の部分を吸着する機能を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のシート状基板剥離装置。
【請求項6】
剥離された前記シート状基板を搬出する搬出部を備えた、請求項1〜5のいずれかに記載のシート状基板剥離装置。
【請求項7】
金属材料もしくは半導体材料のうち少なくともいずれか一方を含有する所定の物質の融液に成長用基板を接触させて、前記成長用基板の表面に成長した前記物質からなるシート状基板を、前記成長用基板から剥離するためのシート状基板剥離方法であって、
前記成長用基板として、平面状に延在して前記シート状基板を実質的に成長させる主面と、前記主面の一端側に設けられ、前記主面に成長する前記シート状基板の部分とで前記成長基板における前記一端側の部分を掴む態様で前記シート状基板の部分を成長させる所定の端面とを備えた成長基板を用い、
前記成長用基板を前記物質の融液に接触させることにより前記成長用基板の表面に成長した前記物質からなるシート状基板における所定の部分を吸着する吸着ステップと、
前記シート状基板を吸着した状態で前記端面に成長した前記シート状基板の部分を前記端面から引離す態様で、前記シート状基板および前記成長基板の少なくともいずれかを前記主面に平行に移動させることにより、前記シート状基板を前記成長用基板から剥離する剥離ステップと
を備え、
前記吸着ステップでは、前記成長用基板において前記一端側に位置する部分に成長した前記シート状基板の部分が吸着される、シート状基板剥離方法。
【請求項8】
前記物質してシリコンを適用し、
前記シート状基板として、シート状シリコン基板を剥離させる、請求項7記載のシート状基板剥離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2008−19100(P2008−19100A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189434(P2006−189434)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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