説明

ステント様インプラントにコートされたヘパリンを含有するブロックコポリマー

本明細書では、生体適合性ポリマー及びヘパリンを含む、その上にコーティングを含む医療用具が提供される。ヘパリン分子の結合部位を結合タンパクによって到達可能にする配置を有するスペーサーを介して、ヘパリンが生体適合性ポリマーにカップリングされる。アテローム性硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の切開又は穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性全閉塞、間欠性跛行、静脈及び人工移植片の吻合部の増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞及びこれらの組み合わせのような疾病を治療するために、該医療用具は、ヒトに埋め込まれることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ステントのような埋め込み型用具の、付加されたヘパリンを有するコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
血液は、異物に接触すると血中の種々の成分の作用によって凝固するという特性を有する。従って、人工心臓、人工心臓弁、人工血管、血管カテーテル、カニューレ、ポンプ型酸素供給器、バイパス管による血管、大動脈内バルーンパンピング、輸血用器具及び体外循環回路によって例示されるような、一部が血液に接触して使用される医療用品又は医療器具のための構成材料には、高い抗凝固性の必要性がある。ヘパリンは、医療器具に抗凝固性を付与するのに一般に使用されているが、ヘパリンの全身性の使用は、望ましくなく、多数の出血巣の形成を招く可能性がある。
【0003】
ヘパリンの使用に関連する副作用をできるだけ抑えるために方法が開発されてきたが、あまり上手くは行っていない(たとえば、米国特許第5,270,064号及び同第6,630,580号を参照のこと)。ヘパリンを使用する有効性は、ヘパリンの性質及び特性だけでなく、ヘパリンに関連して使用される材料の性質及び特性にも依存する。たとえば、生体内の表面はタンパク質で迅速に覆われるので、それは、そこに付加されたヘパリンの有効性を低減する可能性がある。さらに、基材表面へのヘパリンの直接的な付加は、ヘパリン分子が結合タンパクに接近できなくなるようにヘパリン分子上の結合部位をブロックする可能性があり、さらにヘパリンの有効性を低減する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、埋め込み型用具をコートするためのコーティング組成物を提供することによってそのような課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で提供されるのは、スペーサーを介して基材表面に取り付けられたヘパリンである。ヘパリン分子の結合部位が結合タンパクに到達可能にするようにスペーサーは十分に長い。基材は適宜、非付着性材料でコートされる。実施態様の1つでは、スペーサーはたとえば、約500ダルトン〜5,000ダルトンの間の分子量を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)である。
【0006】
任意の生体適合性のポリマー材料で基材をコートすることができる。ポリマー材料は親水性であっても疎水性であってもよい。好ましくは、ポリマー材料は非付着性材料である。実施態様の1つでは、非付着性材料は、たとえば、PEGなどである。コーティングは適宜、非付着性材料を包含する。コーティングはさらに生物活性剤を包含してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書で提供されるのは、スペーサーを介して付加されたヘパリンを有する生体適合性ポリマーで形成されるコーティングである。ヘパリンはそのまま使用することができ、又は改変した形態で使用することができる。スペーサーは、ヘパリン分子の結合部位が結合タンパクによって到達可能になるように、ポリマーに付加させたヘパリン分子を柔軟にする配置を含む。特に、スペーサーを伴って付加されたヘパリン分子と結合タンパクとは、以下のスキーム1に記載されるように、約0.01〜1μM、たとえば、約0.01〜0.28μMの結合定数(Kd)(式1)で互いに結合する。
【化1】

ヘパリン結合の表現は式1によって得ることができる。
Kd=[AT−III]x[S]]/[AT−III](式1)
式中、AT−IIIは、遊離の抗トロンビンの濃度であり、AT−IIIは、結合したトロンビンの濃度であり、Sは、ヘパリンの遊離の結合部位の濃度である(Soons H., Tans G., Hemker HC., Biochem J., 256:815-820, 1988)。
【0008】
コーティングは適宜、抗付着性材料又は非付着性材料を包含する。コーティングはさらに生物活性剤を包含してもよい。本明細書で使用するとき、用語、抗付着性(anti-fouling)及び非付着性(non-fouling)は相互交換可能である。抗付着性及び非付着性は、生体の異物への反応によって生じるタンパク質の積層の形成を防ぐ、遅らせる又はその量を減らすこととして定義される。
【0009】
(ヘパリン)
ヘパリンは、反復二糖類単位(一般に2〜9単位)で構成される高度に荷電したグリコサミノグリカンである。各グリコサミン及びイズロン酸残基(図1)は、複数の硫酸化及びアセチル化のパターンが可能である。ヘパリンは多数のタンパク質と相互作用する。コーティング表面へのヘパリンの直接的な接着は、当該技術では一般に実践されるが、ヘパリンと種々の結合タンパクとの間の相互作用を妨害する。ヘパリンの抗血栓形成作用を維持するには、ヘパリンの結合部位が、結合タンパク質に対して到達可能でなければならない。スペーサーを介してこのことを達成することができる。
【0010】
用語「ヘパリン」は、ヘパリン分子、ヘパリン分子の断片又はヘパリンの誘導体を言う。ヘパリン誘導体は、ヘパリンの任意の機能的な又は構造的な変異体であることができる。代表的な変異体には、ヘパリンのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、たとえば、ヘパリンナトリウム(たとえば、ヘプサル又はプラリン)、ヘパリンカリウム(たとえば、クラリン)、ヘパリンリチウム、ヘパリンカルシウム(たとえば、カルシパリン)ヘパリンマグネシウム(たとえば、クテパリン)、及び低分子量ヘパリン(たとえば、アルデパリンナトリウム)が挙げられる。そのほかの例には、ヘパリン硫酸、ヘパリン様物質、ヘパリンに基いた化合物及び疎水性対イオンを有するヘパリンが挙げられる。
【0011】
ヘパリンは親水性の高い分子である。通常、非常によく水に溶解するが、有機溶媒には溶解しない。この有機溶媒への溶解性の欠如は、ヘパリンの取り扱いの用途を制限するかもしれない。疎水性物質による修飾は、ヘパリンの有機溶媒への溶解性及びヘパリンの取り扱いの容易さを増してもよい。
【0012】
ヘパリンを修飾するのに有用な疎水性材料には、疎水性ポリマー及び疎水性対イオンが挙げられる。ヘパリンを疎水性ポリマーにカップリングする、架橋する又はグラフトすることができ、且つ、対イオンと錯体を形成することができ、又はそれに共役することができる。
【0013】
任意の生体適合性ポリマーを使用して、ヘパリンの親水性を改変することができる。有用な疎水性ポリマーの例には、ポリ(エステルアミド)、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロックコポリマー(SIS)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(ラクチド)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリアルキレン、ポリフルオロアルキレン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、中鎖ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(オルソエステル)、ポリホスファゼン、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(チロシン誘導アリーレート)、ポリ(チロシン誘導カーボネート)、ポリジメチルオキサノン(PDMS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVDF−CTFE)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(カーボネート−ウレタン)、ポリ(シリコーン−ウレタン)、ポリ(尿素−ウレタン)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。疎水性材料又はポリマーによってヘパリンを誘導体化する方法は、たとえば、米国特許第4,331,697号;同第5,069,899号;同第5,236,570号;同第5,270,046号;同第5,453,171号;同第5,741,881号;同第5,770,563号;同第5,855,618号;同第6,589,943号及び同第6,630,580号に記載されている。
【0014】
疎水性の対イオンを使用してヘパリンの親水性を改変することができる。たとえば、有機溶媒に好適であるヘパリンとの錯体を形成するのに疎水性の四級アンモニウム化合物が一般に使用されている。一部の例示となる有用な疎水性の四級アンモニウム化合物及びこれらの化合物とヘパリンとの錯体を形成する方法は、米国特許第4,654,327号;同第4,871,357号及び同第5,047,020号に記載されている。
【0015】
(スペーサー)
一般に、本明細書で記載されるコーティングにおいてヘパリンとポリマーとを結合するのに有用なスペーサーは、2つの官能基を有し、一方はヘパリンを結合することが可能であり、他方は、コーティング材を結合することが可能である。スペーサーは、いったんヘパリンに結合し、次いでポリマーに結合したスペーサーが、ヘパリン分子の結合部位が結合タンパクによって到達可能になるようにヘパリン分子を柔軟にするような長さの原子の配置を有さねばならない。
【0016】
スペーサーの一般式は、Y−R−Xであることができ、式中、X及びYは2つの官能基を表し、Rはモノマー、オリゴマー又はポリマーのジラジカルを表す。
【0017】
例示となるX基及びY基には、ヒドロキシル、エポキシド、カルボキシル、アミノ、イミド、アジリジン、チオール、ホスホリル、アルデヒド、無水物、アシルハロゲン化物、シリル、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、ジヒドラジド、マルチアジリジン、多官能性カルボジイミド、ジアミン、ポリマー上の1級アミン側鎖、N−ヒドロキシ−スクシンアミド、アクリロキシ末端のポリエチレングリコール、メタクリロキシ末端のポリエチレングリコール及びイソチオシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
例示となるR、ジラジカルには、炭化水素ジラジカル、ポリオレフィンジラジカル、ポリエーテルジラジカル、ポリ(アルキレングリコール)ジラジカル、ポリ(エチレングリコール)ジラジカル、ポリ(エステルアミド)ジラジカル、ポリ(エーテルアミン)ジラジカル、ポリアミノ酸ジラジカル、ポリ(ヒドロキシ酸)ジラジカル、ポリヒドロキシアルカノエートジラジカル、ポリスチレンジラジカル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン(MPC)、親水性スペーサー、ポリビニルアルコールジラジカル、ポリホスファゼンジラジカル、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)ジラジカル、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)ジラジカル、ポリ(ヒドロキシルプロピルメタクリルアミド)ジラジカル、ヒドロキシルプロピルセルロースジラジカル、ポリアクリル酸ジラジカル、ポリビニルスルホン酸ジラジカル、ポリアルギネートジラジカル、デキストリンジラジカル、デキストロースジラジカル、デキストランジラジカル、カルボキシメチルセルロースジラジカル、又はヒドロキシル官能性ポリ(ビニルピロリドン)ジラジカルが挙げられる。
【0019】
上記で定義したジラジカルの1つを含む連結剤又は上記で定義したジラジカルの1つを含む化学剤によってスペーサーを提供することができる。
【0020】
(ポリマー基材の表面)
ヘパリン又は修飾されたヘパリンを任意の基材表面に結合させることができる。実施態様の1つでは、基材表面は、シリル基又はシロキシル基のような連結化学剤によって改変された金属表面を有することができる。基材表面はポリマー材から作製することができる。基材表面は、生物活性剤あり又はなしのポリマーコーティングであることができる。
【0021】
本発明の実施態様の1つでは、基材表面は、混合された、混和された又は共役された形態で1以上のポリマー材で形成されるポリマーコーティング表面である。コーティングは、治療剤であることができる1以上の生物活性剤を包含してもよい。ポリマー材は、たとえば、疎水性ポリマー、親水性ポリマー又はこれらの組み合わせのような任意の生体適合性ポリマーであることができる。
【0022】
基材は、生体安定性又は生分解性のポリマーから作製することができ、又はそれでコートすることができる。「生分解性」は、血液のような体液にさらされると完全に分解される及び/又は破壊されることが可能であるポリマー及び生体によって徐々に再吸収される、吸収される及び/又は排除されることが可能であるポリマーを言う。ポリマーの破壊、最終的な吸収及び排除の過程は、たとえば、加水分解、代謝過程、全体的な又は表面の破壊などによって生じることができる。コーティングの適用については、分解、破壊、吸収及び/又は再吸収の過程が完了した後、ポリマーは用具上に残らないことが理解される。一部の実施態様では、無視できる痕跡又は残留物が残ってもよい。
【0023】
実施態様の1つでは、ポリマー材は疎水性ポリマーである。代表的な疎水性ポリマーには、ポリ(エステルアミド)、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロックコポリマー(SIS)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(ラクチド)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリアルキレン、ポリフルオロアルキレン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、中鎖ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(オルソエステル)、ポリホスファゼン、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(チロシン誘導アリーレート)、ポリ(チロシン誘導カーボネート)、ポリジメチルオキサノン(PDMS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVDF−CTFE)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(カーボネート−ウレタン)、ポリ(シリコーン−ウレタン)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、PVDF−ソレフ(登録商標)(ポリフッ化ビニリデン)、ポリ(尿素−ウレタン)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定さされない。一部の実施態様では、ポリマーは前述のポリマーの任意の1つを除外することができる。
【0024】
実施態様の1つでは、ポリマー材は親水性ポリマーである。代表的な親水性ポリマーには、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、PEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びn−ビニルピロリドン(VP)、カルボン酸を持つメタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、HEMAのようなヒドロキシを持つモノマー、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、ヒドロキシルプロピルメタクリルアミド、メタクリル酸アルコキシ、アクリル酸アルコキシ及び3−メタクリル酸トリメチルシリルプロピル(TMSPMA)のポリマー及びコポリマー、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、SIS−PEG、ポリスチレンPEG、ポリイソブチレンPEG、PCL−PEG、PLA−PEG、PMMA−PEG、PDMS−PEG、PVDF−PEG、プルロニック(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアルキレンオキシド、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヘパリン、エラスチン、キトサン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施態様では、ポリマーは前述のポリマーの任意の1つを除外することができる。
【0025】
本明細書で記載される組成物は、ステントのような埋め込み型用具をコートするために、又は生物活性剤の送達を制御するために使用することができる。
【0026】
スペーサーを介してヘパリンをポリマー又はポリマーコーティングに結合する方法
ヘパリンをポリマー又はポリマーコーティングに結合する方法は、少なくとも2つの連結官能性及びヘパリンのスペーサーとして役立ってもよい配置を有する連結剤を用いて達成することができる。適宜、ヘパリン又はヘパリン/スペーサー種及びポリマーを官能化して、ヘパリンのカルボン酸残基に反応基を結合することができ、又はヘパリン/スペーサー種のスペーサー配置及びポリマーに反応基を結合することができる。次いで、連結剤を介してヘパリン又はヘパリン/スペーサー種を互いにカップリングする(たとえば、Sorenson, W., Sweeny F., Campbell T., Preparative Methods of Polymer Chemistry, 3rd edition, John Wiley & Sons, copyright 2001を参照のこと)。
【0027】
ヘパリン又はヘパリン/スペーサー及びポリマーが官能化されて持つことができる有用な官能性には、たとえば、ヒドロキシル、エポキシド、カルボキシル、アミノ、イミド、アジリジン、チオール、ホスホリル、アルデヒド、無水物、アシルハロゲン化物、シリル、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、ジヒドラジド、マルチアジリジン、多官能性カルボジイミド、ジアミン、ポリマー上の1級アミン側鎖、N−ヒドロキシ−スクシンアミド、アクリロキシ末端のポリエチレングリコール、メタクリロキシ末端のポリエチレングリコール及びイソチオシアネートが挙げられる。
【0028】
有用な連結剤には、たとえば、ヒドロキシル、エポキシド、カルボキシル、アミノ、イミド、アジリジン、チオール、ホスホリル、アルデヒド、無水物、アシルハロゲン化物、シリル、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、ジヒドラジド、マルチアジリジン、多官能性カルボジイミド、イソチオシアネート又はジアミン官能性、1級アミン側鎖(単数)又は側鎖(複数)を持つポリマー、N−ヒドロキシスクシンイミド、アクリロキシ末端のポリエチレングリコール及びメタクリロキシ末端のポリエチレングリコールを持つ作用剤が挙げられる。そのほかの連結剤は、たとえば、シェアウエアカタログ(アラバマ州、ハンツビルのシェアウエアポリマー社)及びピアースネット(http://www.piercenet.com/Objects/View,cfm?type=File&ID=6ED00DF7-DE88-41C4-936A-2ED95613340A)(イリノイ州、ロックフォードのピアース・バイオテクノロジー社)のような商業カタログに列記されている。
【0029】
以下は、スペーサーを介してポリマーコーティングに結合したヘパリンを有するコーティングを作製する本発明の2、3の実施態様を説明する。
【0030】
(アルデヒドを介した結合)
本発明の側面の1つでは、スキーム2に記載されるように、アルデヒド末端を持つヘパリンをPEGのようなスペーサーとしてのアミン末端のポリマーに反応させることによってスペーサーをヘパリンにカップリングすることができる。ポリマーの他方の末端は、表面グラフトするための、又はエチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)のようなカルボジイミドを用いてポリマーにカップリングするための官能基を形成することができる保護された部分であることができる。保護された部分は、カルボン酸基、アミン基、又はヒドロキシル基のような表面グラフトすることが可能である、又はポリマーにカップリングすることが可能である、たとえば、官能性であることができる。ヘパリンにスペーサーとしてのPEGを結合させる例示となる方法は、スキーム2に示され、アミン末端のPEGがアルデヒド末端のヘパリンにカップリングし、次いで第2のアミンでt−BOC保護基を除く。次いで第2のアミノを使用してヘパリン−スペーサーの部分をポリマー又は基材表面にグラフトする。
【化2】

【0031】
ヘパリンから離れたスペーサーの官能基を介して医療用具上のポリマー表面にヘパリン/スペーサー種を直接カップリングさせることによって、スペーサーを伴ったヘパリンをポリマー基材表面に結合することができる。或いは、先ず、ヘパリン/スペーサー種をポリマーにカップリングさせてヘパリン/スペーサーで官能化されたポリマーを形成し、次いでそれを医療用具に適用して医療用具上に非発熱性の表面を提供することができる。
【0032】
(カルボン酸を介した結合)
実施態様の1つでは、カルボン酸で官能化されたポリマー主鎖を有するポリマーを作製することができる。次いで、ヘパリン/スペーサー種をポリマーにカップリングさせて一般式、ヘパリン−スペーサー−ポリマーを有する抱合体を形成することができる。ヘパリン−スペーサー−ポリマー抱合体を医療用具上にコートすることができる。或いは、カルボン酸で官能化されたポリマー主鎖を有するポリマーを医療用具上にコートしてポリマーコーティングを形成することができる。次いで、コーティング表面のカルボキシル官能性を介して、ヘパリン/スペーサー種をポリマーコーティングにグラフトする又はカップリングすることができる。たとえば、カルボキシル官能性を持つコーティングとして、メタクリル酸メチル(MMA)及びメタクリル酸tーブチル(t−BMA)のようなアクリル系モノマーの疎水性コポリマーを使用することができる。t−ブチル保護基を外す際、カルボキシル官能性が得られる。スキーム3は、MMAやt−BMAのアクリル系コポリマーを脱保護してカルボン酸を持つポリマーを得ることを示す。
【化3】

【0033】
或いは、メタクリル酸又はイタコン酸のようなカルボキシル含有のモノマーを用いてカルボキシル官能性を持つポリマーを形成することができる。ジヒドラジドのような官能基をカルボン酸と反応させて1級アミン官能性を得ることができる。従って、ポリマーを医療用具に適用してコーティングを形成することができる。スキーム4(上段)に説明されるように、表面で利用可能なカルボン酸官能性にカルボキシヘパリン/スペーサー種をカップリングすることができる。このカップリングには、たとえば、(1−エチル3−(3−ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド)(EDC)のような水溶性のカルボジイミドが介在することができる。代替は、スキーム4(下段)に説明されるように、ヘパリン/スペーサー種を官能化し、次いでその種を、カルボン酸で官能化したポリマーでコートされた表面にグラフトすることである。
【化4】

【0034】
たとえば、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOPT)、置換HOBT、又はN−ヒドロキシスクシンアミドにような作用剤が介在するEDCのようなカルボジイミドのような作用剤を用いて、アミン末端のヘパリン/スペーサー種をカルボン酸部分に直接カップリングすることができる。ポリマーをコートした表面からのグラフトとして、又は続いて表面に適用してコートするコポリマーへのカップリングとしてこれを行うことができる。
【0035】
(ヒドラジドを介した結合)
本発明の別の側面では、水のような水性媒体において、そのイズロン酸残基中にカルボン酸部分を有するヘパリンをヒドラジド反応基にカップリングすることができる。少なくとも2つのヒドラジド反応基を持つ連結剤が、カルボン酸基を有するコーティング表面にヘパリンをカップリングすることができる。連結剤によって複数のカルボン酸基を持つ分子が架橋するのを回避するために、過剰のジヒドラジドのような連結剤で反応を行い、EDCのようなカルボジイミドの量によって官能化の程度を制御する(Luo Y. et al., J. Contr. Release 69:169-184, 2000)(スキーム5)。
【化5】

たとえば、スキーム6に示すように、ジヒドラジドによってアクリル系コポリマーを官能化することができる。
【化6】

カルボジイミド化合物を用いて、残りのヒドラジド基を有する官能化されたコポリマーをヘパリン上のカルボン酸基又はヘパリン/スペーサー抱合体のスペーサー部分のカルボキシル末端と反応させ、次いで、医療用具にコートすることができる。或いは、医療用具上に官能化コポリマーをコートし、次いで、カルボジイミド化合物を用いて、ヘパリン又はヘパリン/スペーサー抱合体をコーティング上にグラフトすることができる。
【0036】
(多官能性アジリジンを介した結合)
本発明のさらなる側面によれば、架橋剤として多官能性のアジリジン剤を使用して、カルボン酸部分を有するポリマーにヘパリン又はヘパリン/スペーサー抱合体をカップリングすることができる。たとえば、シブロンケミカル(ニュージャージー州)のペンタエリスリトールトリス(3−アジリジノプロピオネート)を架橋剤として使用することができる(たとえば、Clanolino D.A., et al., Crosslinked sodium hyaluronate containing labile linkage Abstracted from Society for Biomaterials 2002を参照のこと)(スキーム7)。
【化7】

【0037】
本ポリマーの架橋はコートする表面上で行わなければならない。過剰の三官能性架橋剤を使用することによって、一部の残ったアジリジン基を表面で利用して、スペーサーあり又はなしで、ヘパリン及び任意のカルボキシPEGをカルボン酸官能性にグラフトする。
【0038】
(多官能性カルボジイミド)
本発明の別の側面では、多官能性カルボジイミドを使用して、スペーサーあり又はなしで、カルボン酸官能性を持つポリマーにヘパリンを結合することができる(スキーム8を参照のこと)。多官能性カルボジイミドは、日清紡(カルボジライト(商標))及びバイエル(バイデルム(商標)フィックスCD)から入手可能である。
【化8】

【0039】
(1級アミン官能性モノマーで形成されたポリマーへの結合)
本発明のさらなる側面によれば、アミン基とヘパリン上のカルボキシルとの間のアミド結合が介在する直接EDC及び/又はカルボキシ−PEGを介して、ヘパリンは、スペーサーあり又はなしで、1級アミン官能性を持つモノマーで形成されるポリマーに結合することができる。そのようなポリマーの一部の例は、たとえば、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミドHCl(ポリサイエンシズから入手可能)、エチル3−アミノクロトネート(アルドリッチから入手可能)、エチル3−アミノ4,4,4−トリフルオロクロトネート(アルドリッチから入手可能)、又はこれらの組み合わせのような1級アミン官能性モノマーで形成されるポリアクリル系ポリマーである。PEGのスクシンイミジル誘導体も、これらアミノ官能性モノマーと容易に反応させることができる。これらのモノマーを、たとえば、メタクリル酸n−ブチル又はメタクリル酸メチルのようなアクリレート又はメタクリレートと共に重合することができる。たとえば、スキーム9に示すように、このスキームによって、スペーサーあり又はなしで、PEGとヘパリンの混合物で置換されたポリマーを製造することができる(スキーム9)。
【化9】

【0040】
mPEGのスクシンイミジル誘導体は、ネクター社から入手することができる。代替として、ヘパリン又はヘパリン/スペーサーを含むポリマー全体を、任意でPEGと共に
先ず合成し、次いでステントに適用する。
【0041】
(生物活性剤)
本明細書で記載されるポリマーコーティング又はポリマー基材は、任意で1以上の生物活性剤を包含してもよい。生物活性剤は、生物学的に活性のあるいかなる作用剤、たとえば、治療剤、予防剤又は診断剤であることができる。
【0042】
好適な治療剤及び予防剤の例には、治療活性、予防活性又は診断活性を有する合成の無機化合物及び有機化合物、タンパク質及びペプチド、多糖類及びそのほかの糖、脂質、並びにDNA及びRNAの核酸配列が挙げられる。核酸配列には、遺伝子、相補的DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、及びリボザイムが挙げられる。幅広い範囲の分子量を持つ、たとえば、モル当たり100〜500,000グラムの化合物を封入することができる。好適な材料の例には、抗体、受容体リガンド及び酵素のようなタンパク質、接着ペプチドのようなペプチド、糖類及び多糖類、合成の有機薬剤又は無機薬剤、並びに核酸が挙げられる。封入することができる材料の例には、酵素、血液凝固因子、ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲンアクチベータのような阻害剤又は凝固溶解剤、免疫用の抗原、ホルモン及び増殖因子、ヘパリンのような多糖類、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムのようなオリゴヌクレオチド並びに遺伝子治療に使用するためのレトロウイルスベクターが挙げられる。ポリマーを用いて細胞及び組織を封入することもできる。代表的な診断剤は、X線、蛍光、磁気共鳴画像、放射性活性、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)及びポジトロン放出断層撮影(PET)によって検出可能な作用剤である。超音波診断剤は通常、空気、酸素又はパーフルオロカーボンのような気体である。
【0043】
制御放出の場合、幅広い範囲の異なった生物活性剤を制御放出用具に組み入れることができる。これらには、タンパク質のような、疎水性、親水性及び高分子量の高分子が挙げられる。0.01〜70重量%、さらに好ましくは5〜50重量%のパーセント負荷で、生物活性化合物をポリマーコーティングに組み入れることができる。
【0044】
実施態様の1つでは、生物活性剤は、血管平滑筋細胞の活性を阻害するためであることができる。さらに具体的には、生物活性剤は、再狭窄を抑えるために平滑筋細胞の異常な又は不適当な移動及び/又は増殖を阻害することを目的とする。生物活性剤は、本発明の実践において治療効果又は予防効果を発揮することが可能であるいかなる物質も包含することができる。たとえば、生物活性剤は、血管部位にて創傷治癒を高めるため、又は血管部位にて構造的特性及び弾性特性を改善するためであることができる。活性剤の例には、アクチノマイシンD又はその誘導体及び類縁体(ウィスコンシン州53233、ミルウォーキー、ウエストセントポール通り1001番地のシグマ−アルドリッチにより製造される;又はメルクから入手可能なコスメゲン)のような増殖抑制物質が挙げられる。アクチノマイシンDの同義語には、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCが挙げられる。生物活性剤は、抗腫瘍物質、抗炎症性物質、抗血小板物質、抗凝固性物質、抗フィブリン性物質、抗血栓性物質、細胞分裂抑制性物質、抗生物質、抗アレルギー性物質、及び抗酸化物質の種類に分類される。そのような抗腫瘍物質及び/又は細胞分裂抑制性物質の例には、パクリタキセル(たとえば、コネチカット州、スタムフォードのブリストル・マイヤーズ・スクイブによるタキソール(登録商標))、ドセタキセル(たとえば、ドイツ、フランクフルトのアベンティスのタキソテレ(登録商標))、メソトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩(たとえば、ニュージャージー州、ピーパックのファルマシア&アップジョンのアドリアマイシン(登録商標))、及びマイトマイシン(たとえば、コネチカット州、スタムフォードのブリストル・マイヤーズ・スクイブのムタマイシン(登録商標))が挙げられる。そのような抗血小板物質、抗凝固性物質、抗フィブリン性物質、及び抗血栓性物質の例には、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン様物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類縁体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗血栓剤)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗剤抗体、組換えヒルジン及びアンギオマックス(マサチューセッツ州、ケンブリッジ、バイオゲン社)のようなトロンビン阻害剤が挙げられる。そのような細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤の例には、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、たとえば、カプトプリル(たとえば、コネチカット州、スタムフォードのブリストル・マイヤーズ・スクイブのカポテン(登録商標)及びカポジド(登録商標))、シラザプリル又はリシノプリル(たとえば、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーションのメルク社のプリニビル(登録商標)及びプリンジド(登録商標));カルシウムチャンネル遮断剤(たとえば、ニフェジピン)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗剤、魚油(オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗剤、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素の阻害剤、コレステロール低下剤、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーションのメルク社の商品名、メバコール(登録商標))、モノクローナル抗体(たとえば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に特異的なもの)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断剤、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗剤)、及び一酸化窒素が挙げられる。抗アレルギー剤の例には、ペミロラストカリウムである。適当であってもよいそのほかの治療物質又は治療作用剤には、α−インターフェロン、遺伝子操作を施した上皮細胞、抗炎症剤、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、抗凝固剤、遊離のラジカルスカベンジャー、エストラジオール、抗生剤、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、細胞増殖抑制剤、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
前述の物質は例示を目的として列記されるものであり、限定を意味するものではない。現在利用可能である又は将来開発されてもよいそのほかの活性剤も等しく適用可能である。
【0046】
都合の良い治療効果を生じるのに必要とされる生物活性剤の投与量又は濃度は、生物活性剤が毒性効果を生じるよりレベルよりも低く、且つ治療効果が得られないレベルよりも高くすべきである。血管領域の所望の細胞活性を阻害するのに必要とされる生物活性剤の投与量又は濃度は、患者の特定の状況;傷害の性質;所望の治療法の性質;投与された成分が血管部位にとどまる時間;並びにほかの活性剤が採用されるのなら、その物質又は物質の組み合わせの性質及び種類のような因子に依存する。治療上有効な投与量は経験的に決定することができ、たとえば、好適な動物モデル系の血管に注入し、免疫組織化学法、蛍光法又は電子顕微鏡法を用いて作用剤及びその効果を検出することによって、又は好適な試験管内の試験を行うことによって決定することができる。投与量を決定する標準的な薬学試験法は当業者によって理解されている。
【0047】
(埋め込み型用具の例)
本明細書で使用するとき、埋め込み型用具は、ヒト又は家畜の患者に埋め込むことができる任意の好適な医療用基材であってもよい。埋め込み型用具の例には、自己拡張可能なステント、バルーン拡張可能なステント、ステント移植片、移植片(たとえば、大動脈移植片)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカーの電極、及び心内膜のリード(たとえば、カリフォルニア州、サンタクララのガイダント社より入手可能なフィネリン及びエンドタック)が挙げられる。用具の下に置く構造は、事実上、いかなる設計のものでもよい。用具は、コバルトクロム合金(エルギロイ)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、たとえば、バイオドゥール108、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、エラスチナイト(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、白金イリジウム合金、金、マグネシウム、又はこれらの組み合わせのような、しかし、これらに限定されない金属材料又は合金から作製することができる。「MP35N」及び「MP20N」は、ペンシルベニア州、ジェンキンタウンのスタンダードプレススチール社から入手可能なコバルト、ニッケル、クロム及びモリブデンの合金の商標名である。「MP35N」は、35%のコバルト、35%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成り、「MP20N」は、50%のコバルト、20%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンから成る。生体吸収性又は生体安定性のポリマーから作製される用具も本発明の実施態様と共に使用すればよい。
【0048】
(使用方法)
本発明の実施態様によれば、たとえばステントのような埋め込み型用具又は人工補装具の上に、記載された種々の実施態様のコーティングを形成することができる。1以上の活性剤を含むコーティングについては、薬剤は、用具の送達中及び拡張中は、ステントのような医療用具の上に保持され、埋め込んだ部位で所望の速度及び所定の持続時間で放出される。好ましくは、前記医療用具はステントである。上述のコーティングを有するステントは、例示の目的で、胆管、食道、気管/気管支及びそのほかの生体通路において腫瘍が原因で生じる閉塞の治療を含む、多様な医療処置に有用である。上述のコーティングを有するステントは、平滑筋細胞の異常な又は不適当な移動及び増殖が原因で生じる血管の閉塞領域、血栓症及び再狭窄を治療するのに特に有用である。ステントは、動脈及び静脈双方の多種多様な血管に留置してもよい。部位の代表例には、腸骨動脈、腎動脈及び冠状動脈が挙げられる。
【0049】
ステントの埋め込みについては、先ず、血管造影を行ってステント療法の適当な位置取りを決定する。血管造影は通常、X線を利用しながら、動脈又は静脈に挿入されたカテーテルを介して放射線不透過の造影剤を注入することによって達成される。次いで、ガイドワイヤを病変部又は提案された治療部位に進める。送達用カテーテルをガイドワイヤの上に通し、それによって折り畳んだ構造のステントを通路に挿入することができる。経皮的に又は外科的処置によって、送達カテーテルを大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈、又は上腕静脈に挿入し、蛍光顕微鏡の案内のもと、血管系を通ってカテーテルを操縦することによって適切な血管の中に進める。次いで、治療の所望部位にて、上述のコーティングを有するステントを拡張してもよい。挿入後の血管造影を利用して適当な位置取りを確認してもよい。
【0050】
以下に述べる実施例によって本発明の実施態様を説明する。パラメータ及びデータはすべて本発明の実施態様の範囲を過度に限定するように解釈しないものとする。
【実施例1】
【0051】
(メタクリレートコポリマーへのヘパリンの結合)
tert−ブチルヒドロペルオキシド(0.1g)を触媒として用いて、ヘキサデカン及び水(それぞれ0.7g及び80g)の溶液にて遊離のラジカル重合によって、メタクリル酸2−エトキシエチル(10g)とメタクリル酸2−エチルアミノ塩酸塩(1g)を共重合することができる。ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの添加後、エマルションを60℃にて60分間反応させることができる。冷却メタノール中で得られたポリマーを沈殿させることができる。
【0052】
ジメチルホルムアミド(10重量%、固形分)にヘパリンアルデヒド(0.4g)と共にメタクリルコポリマー(2g)を溶解することができる。ナトリウムシアノボロヒドリドを溶液に加え、それを40℃にて48時間撹拌することができる。得られたポリマーを水に沈殿させ、ろ過し、減圧下で48時間乾燥することができる。
【化10】

【0053】
本発明の特定の実施態様を示し、記載してきたが、さらに広い側面にて本発明から逸脱することなく、変更及び修正を行うことができることは、当業者に明らかであろう。従って、添付のクレームは、本発明の真の精神及び範囲に入るものとしてそのような変更及び修正すべてをその範囲内に包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ヘパリンの基礎的要素:グリコサミン及びイズロン酸を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ポリマーとヘパリンとを含む医療用具であって、前記ヘパリン分子の結合部位を結合タンパクが到達可能にする基を有するスペーサーを介して、ヘパリンが前記ポリマーに結合され、ヘパリンが分子状ヘパリン、ヘパリンの断片又はその誘導体であることができる医療用具。
【請求項2】
前記スペーサーが、炭化水素ジラジカル、ポリオレフィンジラジカル、ポリエーテルジラジカル、ポリ(アルキレングリコール)ジラジカル、ポリ(エチレングリコール)ジラジカル、ポリ(エステルアミド)ジラジカル、ポリ(エーテルアミン)ジラジカル、ポリアミノ酸ジラジカル、ポリ(ヒドロキシ酸)ジラジカル、ポリヒドロキシアルカノエートジラジカル、ポリスチレンジラジカル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン(MPC)、親水性スペーサー、ポリビニルアルコールジラジカル、ポリホスファゼンジラジカル、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)ジラジカル、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)ジラジカル、ポリ(ヒドロキシルプロピルメタクリルアミド)ジラジカル、ヒドロキシルプロピルセルロースジラジカル、ポリアクリル酸ジラジカル、ポリビニルスルホン酸ジラジカル、ポリアルギネートジラジカル、デキストリンジラジカル、デキストロースジラジカル、デキストランジラジカル、カルボキシメチルセルロースジラジカル、ヒドロキシル官能性ポリ(ビニルピロリドン)ジラジカル及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1の医療用具。
【請求項3】
前記スペーサーが、ポリ(エチレングリコール)である請求項1の医療用具。
【請求項4】
前記ヘパリンが、疎水性対イオン又は疎水性物質を持つヘパリンである請求項1の医療用具。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリ(エステルアミド)、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロックコポリマー(SIS)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(ラクチド)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリアルキレン、ポリフルオロアルキレン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、中鎖ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(オルソエステル)、ポリホスファゼン、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(チロシン誘導アリーレート)、ポリ(チロシン誘導カーボネート)、ポリジメチルオキサノン(PDMS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVDF−CTFE)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(カーボネート−ウレタン)、ポリ(シリコーン−ウレタン)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリ(尿素−ウレタン)、並びにPEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びn−ビニルピロリドン(VP)、又はカルボン酸を持つモノマーのポリマー及びコポリマー、メタクリル酸(MA)又はアクリル酸(AA)で形成されるポリマー及びコポリマー、ヒドロキシルを持つモノマーで形成されるポリマー及びコポリマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、3−メタクリル酸トリメチルシリルプロピル(TMSPMA)、アルコキシメタクリレート又はアルコキシアクリレートで形成されるポリマー又はコポリマー、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、SIS−PEG、ポリスチレンPEG、ポリイソブチレンPEG、PCL−PEG、PLA−PEG、PMMA−PEG、PDMS−PEG、PVDF−PEG、プルロニック(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアルキレンオキシド、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、エラスチン、キトサン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1の医療用具。
【請求項6】
ヒドロキシル、エポキシド、カルボキシル、アミノ、イミド、アジリジン、チオール、ホスホリル、アルデヒド、無水物、アシルハロゲン化物、シリル、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、ジヒドラジド、マルチアジリジン、多官能性カルボジイミド、イソチオシアネート及びジアミンの官能性;1級アミン側鎖又は側鎖を持つポリマー、N−ヒドロキシ−スクシンアミド、アクリロキシ末端のポリエチレングリコール、メタクリロキシ末端のポリエチレングリコール及びこれらの組み合わせから成る群から選択される官能性を持つ作用剤から成る群から選択される連結剤を介して前記ヘパリン分子と前記ポリマーが連結される請求項1の医療用具。
【請求項7】
さらに生物活性剤を含む請求項1の医療用具。
【請求項8】
さらに生物活性剤を含む請求項2の医療用具。
【請求項9】
さらに生物活性剤を含む請求項3の医療用具。
【請求項10】
さらに生物活性剤を含む請求項4の医療用具。
【請求項11】
さらに生物活性剤を含む請求項5の医療用具。
【請求項12】
さらに生物活性剤を含む請求項6の医療用具。
【請求項13】
前記生物活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、並びにこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項7の医療用具。
【請求項14】
前記生物活性剤が、増殖抑制物質、抗腫瘍物質、抗炎症性物質、ステロイド性抗炎症性物質、非ステロイド性抗炎症性物質、抗血小板物質、抗凝固性物質、抗フィブリン性物質、抗血栓性物質、細胞分裂抑制性物質、抗生物質、抗アレルギー性物質、抗酸化物質、細胞静止剤及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項7の医療用具。
【請求項15】
生体適合性ポリマー及びヘパリンを含むポリマー組成物であって、前記ヘパリン分子の結合部位を結合タンパクが到達可能にする基を有するスペーサーを介して、ヘパリンが前記ポリマーに結合され、ヘパリンが分子状ヘパリン、ヘパリンの断片又はその誘導体であることができるポリマー組成物。
【請求項16】
前記スペーサーが、炭化水素ジラジカル、ポリオレフィンジラジカル、ポリエーテルジラジカル、ポリ(アルキレングリコール)ジラジカル、ポリ(エチレングリコール)ジラジカル、ポリ(エステルアミド)ジラジカル、ポリ(エーテルアミン)ジラジカル、ポリアミノ酸ジラジカル、ポリ(ヒドロキシ酸)ジラジカル、ポリヒドロキシアルカノエートジラジカル、ポリスチレンジラジカル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン(MPC)、親水性スペーサー、ポリビニルアルコールジラジカル、ポリホスファゼンジラジカル、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)ジラジカル、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)ジラジカル、ポリ(ヒドロキシルプロピルメタクリルアミド)ジラジカル、ヒドロキシルプロピルセルロースジラジカル、ポリアクリル酸ジラジカル、ポリビニルスルホン酸ジラジカル、ポリアルギネートジラジカル、デキストリンジラジカル、デキストロースジラジカル、デキストランジラジカル、カルボキシメチルセルロースジラジカル、ヒドロキシル官能性ポリ(ビニルピロリドン)ジラジカル及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項15のポリマー組成物。
【請求項17】
前記スペーサーが、ポリ(エチレングリコール)である請求項15のポリマー組成物。
【請求項18】
前記ヘパリンが、疎水性対イオン又は疎水性物質を持つヘパリンである請求項15のポリマー組成物。
【請求項19】
前記ポリマーが、ポリ(エステルアミド)、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロックコポリマー(SIS)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(ラクチド)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリアルキレン、ポリフルオロアルキレン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、中鎖ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(オルソエステル)、ポリホスファゼン、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(チロシン誘導アリーレート)、ポリ(チロシン誘導カーボネート)、ポリジメチルオキサノン(PDMS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVDF−CTFE)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(カーボネート−ウレタン)、ポリ(シリコーン−ウレタン)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリ(尿素−ウレタン)、並びにPEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びn−ビニルピロリドン(VP)、又はカルボン酸を持つモノマーのポリマー及びコポリマー、メタクリル酸(MA)又はアクリル酸(AA)で形成されるポリマー及びコポリマー、ヒドロキシルを持つモノマーで形成されるポリマー及びコポリマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、ヒドロキシルプロピルメタクリルアミド、3−メタクリル酸トリメチルシリルプロピル(TMSPMA)、アルコキシメタクリレート又はアルコキシアクリレートで形成されるポリマー又はコポリマー、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、SIS−PEG、ポリスチレンPEG、ポリイソブチレンPEG、PCL−PEG、PLA−PEG、PMMA−PEG、PDMS−PEG、PVDF−PEG、プルロニック(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシル官能性ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアルキレンオキシド、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、エラスチン、キトサン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項15のポリマー組成物。
【請求項20】
ヒドロキシル、エポキシド、カルボキシル、アミノ、イミド、アジリジン、チオール、ホスホリル、アルデヒド、無水物、アシルハロゲン化物、シリル、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、ジヒドラジド、マルチアジリジン、多官能性カルボジイミド、イソチオシアネート及びジアミンの官能性;1級アミン側鎖又は側鎖を持つポリマー、N−ヒドロキシ−スクシンアミド、アクリロキシ末端のポリエチレングリコール、メタクリロキシ末端のポリエチレングリコール及びこれらの組み合わせから成る群から選択される官能性を持つ作用剤から成る群から選択される連結剤を介して前記ヘパリン分子と前記ポリマーが連結される請求項15のポリマー組成物。
【請求項21】
さらに生物活性剤を含む請求項15のポリマー組成物。
【請求項22】
さらに生物活性剤を含む請求項16のポリマー組成物。
【請求項23】
さらに生物活性剤を含む請求項17のポリマー組成物。
【請求項24】
さらに生物活性剤を含む請求項18のポリマー組成物。
【請求項25】
さらに生物活性剤を含む請求項19のポリマー組成物。
【請求項26】
さらに生物活性剤を含む請求項20のポリマー組成物。
【請求項27】
前記生物活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ABT−578、クロベタゾール、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、並びにこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項21のポリマー組成物。
【請求項28】
前記生物活性剤が、増殖抑制物質、抗腫瘍物質、抗炎症性物質、ステロイド性抗炎症性物質、非ステロイド性抗炎症性物質、抗血小板物質、抗凝固性物質、抗フィブリン性物質、抗血栓性物質、細胞分裂抑制性物質、抗生物質、抗アレルギー性物質、抗酸化物質、細胞静止剤及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項15のポリマー組成物。
【請求項29】
請求項1で定義された医療用具をヒトに埋め込むことによってヒトを治療する方法であって、疾病が、アテローム性硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の切開又は穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性全閉塞、間欠性跛行、静脈及び人工移植片の吻合部の増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞及びこれらの組み合わせから成る群から選択される方法。
【請求項30】
請求項7で定義された医療用具をヒトに埋め込むことによってヒトを治療する方法であって、疾病が、アテローム性硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の切開又は穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性全閉塞、間欠性跛行、静脈及び人工移植片の吻合部の増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞及びこれらの組み合わせから成る群から選択される方法。
【請求項31】
生体適合性ポリマー及びヘパリンを含むポリマー組成物を作製する方法であって、
任意で官能化される生体適合性ポリマーを提供すること;
任意で官能化されるヘパリンを提供すること;及び
前記ヘパリン分子の結合部位を結合タンパクが到達可能にする基を有するスペーサーを介して、ヘパリンを前記生体適合性ポリマーにカップリングすることを含み、ヘパリンが分子状ヘパリン、ヘパリンの断片又はその誘導体であることができる方法。
【請求項32】
前記スペーサーが、炭化水素ジラジカル、ポリオレフィンジラジカル、ポリエーテルジラジカル、ポリ(アルキレングリコール)ジラジカル、ポリ(エチレングリコール)ジラジカル、ポリ(エステルアミド)ジラジカル、ポリ(エーテルアミン)ジラジカル、ポリアミノ酸ジラジカル、ポリ(ヒドロキシ酸)ジラジカル、ポリヒドロキシアルカノエートジラジカル、ポリスチレンジラジカル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン(MPC)、親水性スペーサー、ポリビニルアルコールジラジカル、ポリホスファゼンジラジカル、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)ジラジカル、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)ジラジカル、ポリ(ヒドロキシルプロピルメタクリルアミド)ジラジカル、ヒドロキシルプロピルセルロースジラジカル、ポリアクリル酸ジラジカル、ポリビニルスルホン酸ジラジカル、ポリアルギネートジラジカル、デキストリンジラジカル、デキストロースジラジカル、デキストランジラジカル、カルボキシメチルセルロースジラジカル、ヒドロキシル官能性ポリ(ビニルピロリドン)ジラジカル及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項31の方法。
【請求項33】
前記スペーサーが、ポリ(エチレングリコール)である請求項31の方法。
【請求項34】
前記ヘパリンが、疎水性対イオン又は疎水性物質を持つヘパリンである請求項31の方法。
【請求項35】
前記ポリマーが、ポリ(エステルアミド)、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロックコポリマー(SIS)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(ラクチド)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリアルキレン、ポリフルオロアルキレン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、中鎖ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(炭酸トリメチレン)、ポリ(オルソエステル)、ポリホスファゼン、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(チロシン誘導アリーレート)、ポリ(チロシン誘導カーボネート)、ポリジメチルオキサノン(PDMS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVDF−CTFE)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(カーボネート−ウレタン)、ポリ(シリコーン−ウレタン)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリ(尿素−ウレタン)、並びにPEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びn−ビニルピロリドン(VP)、又はカルボン酸を持つモノマーのポリマー及びコポリマー、並びにメタクリル酸(MA)又はアクリル酸(AA)で形成されるポリマー及びコポリマー、ヒドロキシルを持つモノマーで形成されるポリマー及びコポリマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、ヒドロキシルプロピルメタクリルアミド、3−メタクリル酸トリメチルシリルプロピル(TMSPMA)、アルコキシメタクリレート又はアルコキシアクリレートで形成されるポリマー又はコポリマー、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、SIS−PEG、ポリスチレンPEG、ポリイソブチレンPEG、PCL−PEG、PLA−PEG、PMMA−PEG、PDMS−PEG、PVDF−PEG、プルロニック(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシル官能性ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアルキレンオキシド、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、エラスチン、キトサン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項31の方法。
【請求項36】
ヒドロキシル、エポキシド、カルボキシル、アミノ、イミド、アジリジン、チオール、ホスホリル、アルデヒド、無水物、アシルハロゲン化物、シリル、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、ジヒドラジド、マルチアジリジン、多官能性カルボジイミド、イソチオシアネート及びジアミンの官能性;1級アミン側鎖又は側鎖を持つポリマー、N−ヒドロキシ−スクシンアミド、アクリロキシ末端のポリエチレングリコール、メタクリロキシ末端のポリエチレングリコール及びこれらの組み合わせから成る群から選択される官能性を持つ作用剤から成る群から選択される連結剤を介して前記ヘパリン分子と前記ポリマーが連結される請求項31の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−500104(P2008−500104A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515203(P2007−515203)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/017811
【国際公開番号】WO2005/118018
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】