説明

ステージ装置、露光装置、露光方法及びデバイスの製造方法

【課題】剛性を維持しつつ軽量化を図ること。
【解決手段】基板を保持して移動するステージ部と、当該ステージ部を駆動する駆動機構とを備え、ステージ部及び駆動機構のうち少なくとも一部に、炭化ホウ素、炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物、及び、炭化ケイ素並びに炭素の混合物、のうち少なくとも1つの材料が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ装置、露光装置、露光方法及びデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶表示素子等を製造するリソグラフィ工程では、マスクのパターン形成領域を露光光で照明し、そのマスクを介した露光光で感光基板を露光する露光装置が用いられる。このような露光装置は、マスクを保持して移動するマスクステージ装置や基板を保持して移動する基板ステージ装置などのステージ装置を有しており、例えばモータなどを用いてステージ装置を高速で駆動することによって、基板の露光を行っている。
【0003】
近年、素子等の高集積化に伴い、感光基板上に形成する回路パターンの微細化が要請されている。回路パターンの微細化を実現するためには、例えばステージ装置の位置決めの高精度化が求められている。また、これと共に、スループットの向上が求められている。これらの要請に対して、例えばステージ装置を軽量化する提案がなされている。
【0004】
ステージ装置を軽量化することにより、駆動装置の負担が軽減され、駆動装置からの発熱によるステージ装置の変形が抑制される。このため、位置決めの精度を向上することができるという利点がある。また、ステージ装置の軽量化により、ステージ装置の移動速度が高められるため、高スループット化を図ることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2002/080185号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、安易にステージ装置を軽量化すると、ステージ装置の剛性の低下を招く虞がある。ステージ装置の剛性が低下すると、当該ステージ装置が変形しやすくなってしまい、位置合わせ精度が却って低下する可能性がある。このため、剛性を維持しつつステージ装置を軽量化することが求められている。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明は、剛性を維持しつつ軽量化を図ることができるステージ装置、露光装置、露光方法及びデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、基板を保持して移動するステージ部と、ステージ部を駆動する駆動機構とを備え、ステージ部及び駆動機構のうち少なくとも一部に、炭化ホウ素、炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物、及び、炭化ケイ素並びに炭素の混合物、のうち少なくとも1つの材料が用いられるステージ装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様に従えば、基板を保持して移動する第1ステージ及び当該第1ステージを支持して移動する第2ステージを有するステージ部と、ステージ部を駆動する駆動機構とを備え、第2ステージ及び駆動機構のうち少なくとも一部に、炭素を含む樹脂材料が用いられるステージ装置が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様に従えば、本発明のステージ装置を備える露光装置が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様に従えば、本発明の露光装置を用いた露光方法であって、基板を保持したステージ部を駆動しつつ、基板を用いて露光処理を行う露光方法が提供される。
【0012】
本発明の第5の態様に従えば、本発明の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することとを含むデバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、剛性を維持しつつ軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る露光装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係るステージ装置(レチクルステージ装置)の構成を示す図。
【図3】レチクルステージ装置の一部の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るステージ装置(ウエハステージ装置)の構成を示す図。
【図5】ウエハステージ装置の一部の構成を示す図。
【図6】マイクロデバイスの製造工程の一例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0016】
図1は、本実施形態に係るステージ装置STを備えた露光装置EXの構成を示す斜視図である。
図1に示す露光装置EXは、投影光学系PLに対してマスクとしてのレチクルRと基板としてのウエハ(物体)Wとを相対的に移動させつつ、レチクルRに形成されたパターンをウエハWに逐次転写するステップ・アンド・スキャン方式の走査露光型の露光装置である。
【0017】
露光装置EXは、照明光学系IL、レチクルRを保持するレチクルステージ装置RST、投影光学系PL、ウエハWを保持するウエハステージ装置WST及び不図示の制御系を含んで構成される。本実施形態におけるステージ装置STは、例えば上記のレチクルステージ装置RST及びウエハステージ装置WSTを含む。
【0018】
照明光学系ILは、不図示のレチクルブラインドで規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域を照明光(露光光)ILによってほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ELとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0019】
投影光学系PLは、鏡筒LB内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を含む。投影光学系PLとしては、例えばZ方向の共通の光軸AXを有する複数のレンズ(レンズエレメント)からなる屈折光学系が用いられている。鏡筒LBを保持する保持部材には、オフアクシス型のアライメント系45が設けられており、対象マーク(ウエハWに形成されたアライメントマーク等)の位置を計測する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るレチクルステージ装置RSTの斜視図である。図3は、レチクルステージ装置RSTの一部の構成を示す斜視図である。図2及び図3において、レチクルステージ装置RSTは、レチクル保持部14が設けられたレチクルスライダ27と、当該レチクルスライダ27を駆動する駆動機構15と、駆動機構15を保持するフレーム部材18と、を備えている。レチクル保持部14は、レチクルRを吸着して保持する。
【0021】
図2及び図3に示すように、レチクルスライダ27は、XY平面内においてほぼ矩形の本体部28を有している。本体部28は、+X側の側面及び+Y側の側面に、レーザ干渉計IAの計測光L1が照射される反射面1Rを有する。本体部28の反射面1Rは、X軸又はY軸にそれぞれ垂直になっている。フレーム部材18の+X側の側面及び+Y側の側面には、レーザ干渉計IAの計測光L1が透過可能な透過領域18X及び18Yが配置されている。
【0022】
レチクル定盤13のほぼ中央には、凸部13Aが設けられている。レチクル定盤13のガイド面13Gは、凸部13Aの上面を含む。本体部28のうちガイド面13Gに対向する面には真空予圧型のエアパッド(不図示)が設けられている。このエアパッドは、ガイド面13Gに向かってエア(空気)を吹き付けることにより、ガイド面13Gに対して本体部28を、例えば数ミクロン程度のクリアランスを介して浮上支持(非接触支持)させる。また、このエアパッドは、本体部28とガイド面13Gとの間のエアを吸引することにより、当該クリアランスを維持できるようにもなっている。レチクルスライダ27は、当該エアパッドによって凸部13Aの上面13Gに非接触で支持されるようになっている。レチクル定盤13の凸部13Aのほぼ中央には、不図示の開口部が設けられている。
【0023】
レチクル側駆動機構RAは、レチクルステージ装置RSTを移動可能である。レチクル側駆動機構RAは、レチクルステージ装置RSTをY軸及びθZ方向に移動可能な第1駆動装置30と、レチクルステージ装置RSTをX軸方向に移動可能な第2駆動装置31とを有する。本実施形態において、第1駆動装置30は、一対のリニアモータ32(+X側)及びリニアモータ33(−X側)を含む。第2駆動装置31は、ボイスコイルモータ36を含む。
【0024】
第1駆動装置30は、Y軸方向(移動方向)に沿って長い一対のガイド部材34、35を備えている。ガイド部材34、35は、フレーム部材18の内側に配置されている。ガイド部材34は本体部28の+X側に配置されており、ガイド部材35は本体部28の−X側に配置されている。したがって、これらガイド部材34、35は、X軸方向に関して離れた位置に設けられている。ガイド部材34、35の+Y側の端及び−Y側の端は、所定の固定部材を介して、フレーム部材18の内面に固定されている。ガイド部材34、35は、レチクルスライダ27をY軸方向に移動可能に支持する。
【0025】
このガイド部材34、35は、リニアモータ32、33の固定子として機能するコイルユニット41をそれぞれ有する。レチクルステージ装置RSTの本体部28は、リニアモータ32、33の可動子として機能する磁石ユニット45を有する。磁石ユニット45は、本体部28の+X側の端面及び−X側の端面に配置されており、ガイド部材34、35のコイルユニット41に対応するように、+X側及び−X側のそれぞれに配置されている。
【0026】
本実施形態においては、本体部28の+X側の端に設けられた可動子、及びガイド部材34に設けられた固定子によって、レチクルスライダ27をY軸方向に移動可能なムービングマグネット方式のリニアモータ32が形成される。同様に、本体部28の−X側の端に設けられた可動子、及びガイド部材35に設けられた固定子によって、レチクルスライダ27をY軸方向に移動可能なムービングマグネット方式のリニアモータ33が形成される。
【0027】
第2駆動装置31は、Y軸方向に長いガイド部材37を備えている。ガイド部材37は、ボイスコイルモータ36の固定子として機能するコイルユニット42を有する。ガイド部材37は、フレーム部材18の内側に配置されている。ガイド部材37は、ガイド部材35の−X側に配置されている。ガイド部材37の+Y側の端及び−Y側の端は、所定の固定部材を介して、フレーム部材18の内面に固定されている。
【0028】
レチクルスライダ27の−X側の端には、ボイスコイルモータ36の可動子として機能する磁石ユニット46が配置されている。レチクルスライダ27の−X側の端に設けられた磁石ユニット46、及びガイド部材37に設けられたコイルユニット42によって、レチクルスライダ27をX軸方向に移動可能なムービングマグネット方式のボイスコイルモータ36が形成される。
【0029】
レチクルステージ装置RSTは、第1、第2駆動装置30、31を含むレチクル側駆動機構RAにより、X軸、Y軸及びθZ方向の3つの方向に移動可能である。レチクルスライダ27は、露光光ELの照射位置(照明系ILの照明領域)を含むXY平面に沿って、レチクル保持部14にレチクルRを保持して移動可能である。
【0030】
フレーム部材18は、レチクルステージ装置RSTを配置可能な開口を有する矩形の枠状の部材であり、レチクルステージ装置RSTの移動に伴う反力を相殺するために、レチクル定盤13の上面において移動可能である。フレーム部材18は、レチクルステージ装置RSTの移動方向とは反対方向に移動することにより、レチクルステージ装置RSTの移動に伴う反力を相殺する。
【0031】
上記のレチクルステージ装置RSTのうち、例えばレチクルスライダ27の本体部28、第1駆動装置30の磁石ユニット45並びにガイド部材34、35、第2駆動装置31の磁石ユニット46並びにガイド部材37、及び、フレーム部材18のうち少なくとも一部分には、例えば炭化ホウ素、炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物、及び、炭化ケイ素並びに炭素の混合物のうち少なくとも1つを含む材料が用いられている。レチクルステージ装置RSTのうち、例えばレチクルスライダ27の各部位(本体部28や第1駆動装置30、第2駆動装置31)において上記材料を用いるとより好ましい。
【0032】
炭化ホウ素は、例えば炭化ケイ素セラミックスに比べてほぼ同等の剛性を有する上、比重が20%〜30%低い材料である。このため、上記部分に当該炭化ホウ素を用いた場合、レチクルステージ装置RSTは剛性が維持されたまま軽量化されることになる。炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物は、炭化ケイ素セラミックスに比べて比重が10%程度低い材料である。このため、上記部分に炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物を用いた場合には、レチクルステージ装置RSTは剛性をほとんど低下させること無く軽量化されることになる。炭化ケイ素並びに炭素の混合物は、炭化ケイ素セラミックスに比べて比重が10%程度低い材料である。このため、上記部分に炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物を用いた場合には、レチクルステージ装置RSTは剛性をほとんど低下させること無く軽量化されることになる。
【0033】
ウエハステージ装置WSTは、フレームキャスタFC、ウエハ定盤BP、ステージ部50、ウエハ側駆動機構WA及びレーザ干渉計IBを有している。フレームキャスタFCは、例えば露光装置EXが設置される工場などの床面FL上に配置されている。フレームキャスタFCは、+X側端辺及び−X側端辺に沿った位置に、Y方向を長手方向として上方に突出した突部FCa及びFCbを有している。
【0034】
ウエハ定盤BPは、フレームキャスタFC上であって突部FCaと突部FCbとで挟まれた領域に配置されている。ウエハ定盤BPの+Z側の面50aは、XY平面にほぼ平行に形成されている。当該面50aは、ステージ部50の移動面を形成するガイド面となっている。
【0035】
ステージ部50は、微動ステージ51及び粗動ステージ52を有している。
微動ステージ51は、フレーム部材53、ウエハテーブル54、プレート部材55、自重キャンセラ機構56及びミラー部材57を有している。フレーム部材53は、断面矩形枠状でX方向に延びる中空部材によって構成されている。
【0036】
ウエハテーブル54は、フレーム部材53の+Z側に配置されている。ウエハテーブル54は、XY平面視で例えば円形に形成されている。ウエハテーブル54は、ウエハWを例えば真空吸着などによって保持する保持部を有している。プレート部材55は、ウエハWを囲うようにフレーム部材53の+Z側に配置されている。プレート部材55は、例えばウエハテーブル54に設けられる不図示の吸着部によって吸着されて保持されている。プレート部材55の+Z側の面は、ウエハテーブル54にウエハWを保持させたときにウエハWの+Z側の面とほぼ面一状態になるように形成されている。
【0037】
自重キャンセラ機構56は、フレーム部材53の−Z側に配置されている。自重キャンセラ機構56は、例えば特願2004−215439号に記載されている構成を有している。自重キャンセラ機構56は、エアベアリング部56aを有している。エアベアリング部56aは、例えばガイド面Gaに対向して設けられ、微動ステージ51をガイド面Gaに対して浮上させる構成になっている。この他、自重キャンセラ機構56には、例えばベローズに内圧をかけて微動ステージ51を支える支持部(不図示)が設けられている。
【0038】
ミラー部材57は、干渉計IBX及びIBYからの計測光L2(図1参照)を反射する反射鏡である。ミラー部材57Xは、フレーム部材53の例えば+X側の面に設けられている。ミラー部材57Yは、例えばフレーム部材53の+Y側の面に設けられている。
【0039】
フレーム部材53の+X方向の端面には3つの開口53a〜53cが設けられており、フレーム部材53の−X方向の端面には開口53a〜53cの各々に対応する不図示の3つの開口が設けられている。開口53aの内周部には一対の磁石部材61a及び61bが対向して設けられている。開口53bの内周部には一対の磁石部材62a及び62bが対向して設けられている。開口53cの内周部には一対の磁石部材62c及び62dが対向して設けられている。磁石部材61a、61b、62a〜62dは、それぞれカバー部材によって覆われている。
【0040】
粗動ステージ52は、微動ステージガイド63及び64(64a、64b)、チューブキャリア65及びチューブキャリアガイド66を有している。微動ステージガイド63、64は、図中X方向に延在して形成されており、微動ステージ51のフレーム部材53に設けられた開口53a〜53cを貫通するように配置されている。粗動ステージ52の−Z側には、エアベアリング部52aが設けられている。エアベアリング部52aは、例えばガイド面Gaに対向して設けられ、粗動ステージ52をガイド面Gaに対して浮上させる構成になっている。
【0041】
微動ステージガイド63及び64の内部には、複数のコイル部(不図示)が図中X方向に沿って配列されている。微動ステージガイド63及び64が開口53a〜53c内に設けられた状態において、コイル部は磁石部材61a、61b、62a〜62dによって挟まれる位置に配置されることになる。
【0042】
チューブキャリア65は、微動ステージ51に接続されたチューブ65tを保持して移動するフレーム部材である。このチューブ65tは、微動ステージ51に真空やエアなどの用力を伝達するために設けられている。チューブキャリア65は、例えば中空に形成されており、内部には上記チューブ65tの一部が収容されるようになっている。チューブキャリア65は、微動ステージ51に近接する位置に設けられている。チューブキャリア65の−Z側の面には、エアベアリング部65dが設けられている。エアベアリング部65dは、例えばガイド面Gaに対向して設けられ、チューブキャリア65をガイド面Gaに対して浮上させる構成になっている。
【0043】
チューブキャリアガイド66は、図中X方向に延在して形成されており、チューブキャリア65に設けられた開口部65aを貫通するように配置されている。チューブキャリア65の開口部65aの内周部には、一対の磁石部材65b及び65cが対向して設けられている。微動ステージガイド63及び64、チューブキャリアガイド66のそれぞれは、X方向の両端部において板状部材67に固定されている。
【0044】
ウエハ側駆動機構WAは、微動ステージ51を駆動する第1駆動機構71と、粗動ステージ52を駆動する第2駆動機構72とを有している。第1駆動機構71は、フレーム部材53の開口53a〜53c内に配置された各磁石部材61a、61b、62a〜62dと、微動ステージガイド63及び64の内部に設けられたコイル部で構成されている。第1駆動機構71は、磁石部材61a、61b、62a〜62dが移動子となっており、コイル部を有する微動ステージガイド63及び64が固定子となっている。第1駆動機構71は、磁石部材61a、61b、62a〜62dとコイル部との間に働く電磁力を用いて微動ステージ51を微動ステージガイド63及び64に沿った方向(X方向)に駆動するようになっている。
【0045】
第2駆動機構72は、固定子部材68a及び68bと、磁石部材69a及び69bとを有している。固定子部材68aは、フレームキャスタFCの突部FCa上に配置されている。固定子部材68aの+X側の面には、Y方向に沿って凹部が形成されている。凹部の+Z側の面及び−Z側の面には、不図示の複数のコイル部がそれぞれY方向に沿って配列されている。固定子部材68bは、フレームキャスタFCの突部FCb上に配置されている。固定子部材68bは、固定子部材68aと同様の形状に形成されている。固定子部材68bは、−X側の面に凹部が位置するように配置されている。固定子部材68bにおいても、凹部の+Z側の面及び−Z側の面に不図示の複数のコイル部がそれぞれY方向に沿って配列されている。固定子部材68a及び68bは、第2駆動機構72の固定子となっている。
【0046】
磁石部材69aは、板状部材67aの+X側の面に取り付けられている。磁石部材69aは、固定子部材68aの凹部内に収まる寸法に形成されている。磁石部材69bは、板状部材67bの−X側の面に取り付けられている。磁石部材69bは、固定子部材68bの凹部内に収まる寸法に形成されている。磁石部材69a及び69bは、第2駆動機構72の移動子となっている。磁石部材69a及び69bは、例えばカバー部材などによって覆われている。
【0047】
第2駆動機構72は、固定子部材68a及び68bのコイル部と磁石部材69a及び69bとの間に働く電磁力を用いて粗動ステージ52を凹部に沿った方向(Y方向)に駆動するようになっている。
【0048】
上記のウエハステージ装置WSTのうち、例えば上記のフレームキャスタFCやウエハ定盤BP、微動ステージ51のフレーム部材53、ウエハテーブル54、プレート部材55並びに自重キャンセラ機構56(エアベアリング部56a)、粗動ステージ52の微動ステージガイド63、64、エアベアリング部52a、チューブキャリア65、チューブキャリアガイド66、エアベアリング部65d並びに板状部材67、第1駆動機構71の磁石部材61a、61b、62a〜62dを覆うカバー部材、第2駆動機構72の磁石部材69a及び69bを覆うカバー部材、固定子部材68a、68bのうち少なくとも一部分には、例えば炭化ホウ素、炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物、及び、炭化ケイ素並びに炭素の混合物のうち少なくとも1つを含む材料が用いられている。
【0049】
上記のうち、例えばフレーム部材53、ウエハテーブル54、プレート部材55など、ウエハWの近傍に配置される部位に上記材料を用いるとより好ましい。また、上記各材料は熱伝導性にも優れているため、第1駆動機構71や第2駆動機構72において上記材料を用いる構成とすると、駆動時の発熱をより効率的に逃がすことができるため好ましい。
【0050】
炭化ホウ素は、例えば炭化ケイ素セラミックスに比べてほぼ同等の剛性を有する上、比重が20%〜30%低い材料である。このため、上記部分に当該炭化ホウ素を用いた場合、ウエハステージ装置WSTは剛性が維持されたまま軽量化されることになる。炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物は、炭化ケイ素セラミックスに比べて比重が10%程度低い材料である。このため、上記部分に炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物を用いた場合には、ウエハステージ装置WSTは剛性をほとんど低下させること無く軽量化されることになる。炭化ケイ素並びに炭素の混合物は、炭化ケイ素セラミックスに比べて比重が10%程度低い材料である。このため、上記部分に炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物を用いた場合には、ウエハステージ装置WSTは剛性をほとんど低下させること無く軽量化されることになる。
【0051】
また、上記のウエハステージ装置WSTのうち微動ステージ51から外れた部分、具体的にはフレームキャスタFC、ウエハ定盤BP、粗動ステージ52の微動ステージガイド63、64、エアベアリング部52a、チューブキャリア65、チューブキャリアガイド66、エアベアリング部65d並びに板状部材67、第1駆動機構71の磁石部材61a、61b、62a〜62dを覆うカバー部材、第2駆動機構72の磁石部材69a及び69bを覆うカバー部材、固定子部材68a、68bのうち少なくとも一部分に、炭素を含む樹脂材料を用いた構成としても構わない。このような炭素を含む樹脂材料として、例えばCFRP(carbon fiber reinforced plastics)などが挙げられる。
次に、本実施形態に係る露光装置EXの動作の一例について説明する。
【0052】
制御装置は、レチクルステージ装置RSTのレチクル保持部14にレチクルRを保持させ、レチクルアライメント、ベースライン計測等の準備作業が行わせる。その後、ウエハステージ装置WSTのウエハテーブル54にウエハWを保持させ、アライメントセンサを用いたウエハWのファインアライメント(EGA;エンハンスト・グローバル・アライメント等)を行わせる。
【0053】
制御装置は、当該アライメント結果に基づいてレーザ干渉計の計測値をモニタしつつ、ウエハ側駆動機構WAを制御してウエハWの第1ショットの露光のための走査開始位置に微動ステージ51を移動させる。制御装置は、レチクルステージ装置RSTのレチクルスライダ27及びウエハステージ装置WSTの微動ステージ51のY方向の走査を開始させ、それぞれが目標走査速度に達すると、露光用照明光によってレチクルRのパターン領域を照明させて走査露光を開始させる。
【0054】
制御装置は、この走査露光時に、レチクルスライダ27のY方向の移動速度と、微動ステージ51のY方向の移動速度とが投影光学系PLの投影倍率に応じた速度比に維持されるようにレチクル側駆動機構RA及びウエハ側駆動機構WAを同期制御する。レチクルRのパターン領域の異なる領域が照明光で逐次照明され、パターン領域全面に対する照明が完了することにより、ウエハW上の第1ショットの走査露光が完了する。これにより、レチクルRのパターンが投影光学系PLを介してウエハW上の第1ショット領域に縮小転写される。
【0055】
このようにして、第1ショットの走査露光が終了すると、制御装置は、微動ステージ51をY方向に、粗動ステージ52をX方向に、それぞれステップ移動させ、第2ショットの露光のため走査開始位置に移動させる。このステップ移動の際に、ウエハWの位置を検出するレーザ干渉計の計測値に基づいて、当該微動ステージ51、粗動ステージ52のX、Y、θZ方向の位置をリアルタイムで計測する。この計測結果に基づいてウエハWの位置を制御する。その後、制御装置は、上記第1ショット領域と同様に、第2ショット領域に対して走査露光を行わせる。当該制御により、ウエハW上のショット領域の走査露光と次ショット露光のためのステップ移動とが繰り返し行われ、ウエハW上の露光対象ショット領域の全てにレチクルRのパターンが順次転写される。
【0056】
本実施形態においては、レチクルステージ装置RST及びウエハステージ装置WSTの各部のうち少なくとも一部に、炭化ホウ素、炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物、及び、炭化ケイ素並びに炭素の混合物、のうち少なくとも1つの材料が用いられるため、ステージ装置ST(例えばレチクルステージRST及びウエハステージ装置WST)の剛性をほとんど低下させること無く当該ステージ装置STを軽量化することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、スキャン露光動作の際に移動するレチクルスライダ27や微動ステージ51、粗動ステージ52に対して上記材料を用いることにより、これらレチクルスライダ27、微動ステージ51、粗動ステージ52が軽量化されるため、移動速度を速めることができる。これにより、スループットを向上することができる。また、移動時の駆動機構の負担を低減することができるため、発熱量の低減化を図ることができる。加えて、レチクルスライダ27、微動ステージ51及び粗動ステージ52に作用する加速度を低減することができるため、これら各部の変形や位置合わせなどをより高精度に行うことができる。
【0058】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態においては、レチクルステージ装置RST及びウエハステージ装置WSTにおいて本発明に係る構成を適用させた例を説明したが、これに限られることは無く、例えば露光装置EXにおいて設けられる不図示の計測ステージにおいて本発明の構成を適用させるようにしても構わない。
【0059】
なお、上記実施形態において、露光装置EXとしては、レチクルRとウエハWとを同期移動してレチクルRのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、レチクルRとウエハWとを静止した状態でレチクルRのパターンを一括露光し、ウエハWを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0060】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンとウエハWとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像をウエハW上に転写した後、第2パターンとウエハWとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねてウエハW上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、ウエハW上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、ウエハWを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0061】
また、例えば米国特許第第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
【0062】
また、露光装置EXとして、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6400441号明細書、米国特許第6549269号明細書、米国特許第6590634号明細書、米国特許第6208407号明細書、及び米国特許第6262796号明細書等に開示されているような、複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0063】
また、例えば国際公開第99/49504号パンフレット等に開示されているような、液体を介して露光光で基板を露光する液浸露光装置に適用することもできる。また、極端紫外光でウエハWを露光するEUV光光源露光装置にも適用することができる。
【0064】
露光装置EXの種類としては、ウエハWに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0065】
また、上述の各実施形態では、露光光ELとしてArFエキシマレーザ光を発生する光源装置として、ArFエキシマレーザを用いてもよいが、例えば、米国特許第7023610号明細書に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザなどの固体レーザ光源、ファイバーアンプなどを有する光増幅部、及び波長変換部などを含み、波長193nmのパルス光を出力する高調波発生装置を用いてもよい。
【0066】
上述の各実施形態においては、投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。このように投影光学系PLを用いない場合であっても、露光光はレンズ等の光学部材を介して基板に照射される。
【0067】
以上のように、本願実施形態の露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0068】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図6に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクを介した露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0069】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0070】
ST…ステージ装置 EX…露光装置 R…レチクル W…ウエハ RST…レチクルステージ装置 WST…ウエハステージ装置 RA…レチクル側駆動機構 WA…ウエハ側駆動機構 BP…ウエハ定盤 18…フレーム部材 27…レチクルスライダ 28…本体部 34、35…ガイド部材 50…ステージ部 51…微動ステージ 52…粗動ステージ 52a…エアベアリング部 53…フレーム部材 54…ウエハテーブル 55…プレート部材 56…自重キャンセラ機構 56a…エアベアリング部 57…ミラー部材 63、64…微動ステージガイド 65…チューブキャリア 65d…エアベアリング部 66…チューブキャリアガイド 67…板状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して移動するステージ部と、
前記ステージ部を駆動する駆動機構と
を備え、
前記ステージ部及び前記駆動機構のうち少なくとも一部に、
炭化ホウ素、炭化ホウ素並びに炭化ケイ素の混合物、及び、炭化ケイ素並びに炭素の混合物、のうち少なくとも1つの材料が用いられる
ステージ装置。
【請求項2】
前記ステージ部は、フレーム部材を有し、
前記フレーム部材の少なくとも一部に、前記材料が用いられる
請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記ステージ部は、浮上機構を有し、
前記浮上機構の少なくとも一部に、前記材料が用いられる
請求項1又は請求項2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記ステージ部の移動面を形成する移動面形成部材を更に備え、
前記移動面形成部材の少なくとも一部に、前記材料が用いられる
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項5】
前記ステージ部は、干渉光を含む光を反射する光反射部材を有し、
前記光反射部材の少なくとも一部に、前記材料が用いられる
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項6】
前記ステージ部は、所定のパターンが形成されたパターン部材を有し、
前記パターン部材の少なくとも一部に、前記材料が用いられる
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項7】
前記ステージ部は、流体を流通させるチューブ部材と、当該チューブ部材を保持する保持部材とを有し、
前記保持部材の少なくとも一部に、前記材料が用いられる
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項8】
前記ステージ部は、前記基板が載置される基板載置部材を有し、
前記基板載置部材の少なくとも一部に、前記材料が用いられる
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項9】
前記ステージ部は、前記基板としてウエハを保持する
請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項10】
前記ステージ部は、前記基板としてマスクを保持する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項11】
前記駆動機構は、前記ステージ部に接続される可動子及び前記可動子を移動させる固定子を有し、
前記可動子及び前記固定子のうち少なくとも一部に前記材料が用いられる
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項12】
基板を保持して移動する第1ステージ及び当該第1ステージを支持して移動する第2ステージを有するステージ部と、
前記ステージ部を駆動する駆動機構と
を備え、
前記第2ステージ及び前記駆動機構のうち少なくとも一部に、炭素を含む樹脂材料が用いられる
ステージ装置。
【請求項13】
前記第2ステージは、流体を流通させるチューブ部材と、当該チューブ部材を保持する保持部材とを有し、
前記保持部材の少なくとも一部に、前記樹脂材料が用いられる
請求項12に記載のステージ装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のうちいずれか一項に記載のステージ装置を備える露光装置。
【請求項15】
請求項14に記載の露光装置を用いた露光方法であって、
前記基板を保持した前記ステージ部を駆動しつつ、前記基板を用いて露光処理を行う
露光方法。
【請求項16】
請求項14に記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと
を含むデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−60844(P2011−60844A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206140(P2009−206140)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】