説明

スペックルノイズを低減するプロジェクションディスプレイ装置

【課題】スクリーンに走査される映像に生じるスペックルノイズを低減することができるプロジェクションディスプレイ装置を提供すること。
【解決手段】光源と、光源からの出射光が同じく変調された変調光を予め設定された時間範囲内でN(Nは2以上の自然数)回繰り返して出射する光変調器と、N回繰り返して出射される変調光を反射して毎回スクリーンの同一位置に走査するミラーと、変調光が走査される度に変調光の偏光方向を回転させる偏光回転部と、を含むプロジェクションディスプレイ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクションディスプレイ装置に関するもので、より詳細には、スペックルノイズを低減するプロジェクションディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザを光源として用いるプロジェクションディスプレイ装置が広く普及している。プロジェクションディスプレイ装置は、一般のLCD、PDPなどのディスプレイでは実現することが非常に困難であった超大型映像から超小型映像まで実現することができるという長所がある。
【0003】
しかし、このようなプロジェクションディスプレイ装置は、レーザ光源からの出射光をピクセル別に変調し、その変調された光をスクリーンに走査して映像を実現するため、スクリーンから直接発光する他のディスプレイ装置に比べて映像品質が劣るという問題点があった。
【0004】
その中の一つが、レーザプロジェクションディスプレイ装置を使用する際に、映像に生じるスペックルノイズ(Speckle Noise)またはスペックルパターン(Speckle Pattern)である。レーザ光は干渉性を有するため、スクリーンには多数の干渉パターンが発生し、パターンの間隔が1mmを超えると、使用者はこれをノイズとして認識することになる。
【0005】
例えば、3メートル程度の距離からスクリーンを見る場合、人の目に見えるスクリーン上の1ピクセルのサイズは1mmを超える場合が多い。したがって、1ピクセル内に同じ明るさではないスペックルパターンが生じると、人間の目はこれを感知することになる。すなわち、映像にノイズが入り、映像の品質が大幅に低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたもので、プロジェクションディスプレイ装置の光源から出力されるレーザ光の偏光方向を時分割的に回転させることによりスクリーン上のスペックルノイズを低減するプロジェクションディスプレイ装置を提供することをその目的とする。また、本発明の他の目的については、本発明の好適な実施の形態を通じて、より明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決し目的を達成するために、本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置が提供される。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、プロジェクションディスプレイ装置であって、光源と、上記光源からの出射光が同じく変調された変調光を予め設定された時間範囲内でN回(Nは2以上の自然数)繰り返して出射する光変調器と、上記N回繰り返して出射される変調光を反射して毎回スクリーンの同一位置に走査するミラーと、上記変調光が走査される度に上記変調光の偏光方向を回転させる偏光回転部と、を含むプロジェクションディスプレイ装置が提供される。上記予め設定された時間範囲は、HVS(Human Vision System)の時間分解能より小さい方がよい。
【0009】
上記光変調器は線形変調光を出射する1次元光変調器であり、上記ミラーは上記1次元光変調器からN回繰り返して出射される線形変調光を上記スクリーンに走査して2次元映像を形成するスキャニングミラーであり、上記偏光回転部は上記線形変調光が走査される度に上記線形変調光の偏光方向を回転させることができる。
【0010】
上記光源は赤色、緑色、及び青色の光源を含み、上記赤色、緑色、及び青色の光源は予め設定された順に光を出力することができる。
【0011】
上記光源は、赤色、緑色、及び青色の光を少なくとも1度含む1セット周期で光を出力し、上記光変調器は上記光を上記1セット周期でN回同じく変調して上記変調光を出射し、上記偏光回転部は上記1セット周期で上記変調光の偏光方向を回転させることができる。
【0012】
上記1セット周期でN回同じく変調出力された変調光が上記スクリーンの同一位置に走査された場合、フルカラー映像フレームが完成できる。上記1セット周期の上記Nの倍数は人間の時間分解能周期より小さい方がよい。
【0013】
上記偏光回転部は液晶偏光回転部であってもよい。上記偏光回転部は上記ミラーと上記スクリーンとの間に位置することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明によれば、スクリーンに走査された映像に生じるスペックルノイズを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は多様な変換を加えることができ、様々な実施形態を有することができるため、本明細書では特定の実施形態を図面に例示し、詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物及び代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0016】
「第1」、「第2」などのような序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために用いられるに過ぎず、構成要素がそれらの用語により限定されることはない。それらの用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的だけに用いられる。例えば、本発明の権利範囲内における第1構成要素は第2構成要素であると命名することができ、同様に第2構成要素も第1構成要素であると命名することができる。「及び/または」という用語は、複数の関連のある記載項目の組み合わせまたは複数の関連のある記載項目のうち何れかの項目を含む。
【0017】
ある構成要素が他の構成要素に「連結」あるいは「接続」されていると記載された場合は、その他の構成要素に直接的に連結されているか、または接続されていることの他にも、中間に他の構成要素が存在する場合も含むものとして理解しなければならない。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結」あるいは「直接接続」されていると記載された時には、中間に他の構成要素が存在しないものと理解しなければならない。
【0018】
本明細書において用いた用語は、特定の実施形態を説明するためだけに用いられたものであって、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文の中で明らかに表現しない限り複数の表現を含む。本明細書において「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組合せたものの存在を指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組合せたものの存在または付加可能性を予め排除するものではないと理解しなければならない。
【0019】
その他、定義しない限りにおいて技術的または科学的用語を含み、ここで用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味であるものと解する。予め定義しているような一般的に用いられる用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈すべきで、本明細書で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味として解釈しない。
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る好ましい実施形態を詳細に説明する。本発明を説明するに当たって、図面の符号に拘わらず、同一かつ対応する構成要素は同一の参照番号を付し、これに対する重複する説明は省略する。
【0021】
図1aは、本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置の構成を示した図である。図1aを参照すると、本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置は、光源100、偏光回転部150、偏光ドライバ回路155を含むものである。
【0022】
本発明のプロジェクションディスプレイ装置は、照明系レンズ、プロジェクションレンズ、スキャニングミラー、光変調器などがさらに含まれる。プロジェクションディスプレイ装置に含まれる他の構成要素については、図3及び図4を参照して説明する。
【0023】
図1aに示されたように、光源100からは光が出射される。ここで、光源100はレーザダイオード、固体レーザ、気体レーザ、及び液体レーザ等であって、特にレーザの種類は限定されない。光源100から出射された光は、スクリーン190に到達してスクリーン190上に像を形成し、スクリーン190に形成された映像を使用者が認識することができる。光は干渉性を有するため、スクリーン190上に投射された映像には不規則なパターンのスペックルノイズ(またはスペックルパターン)が生じることがある。すなわち、レーザはコヒーレント光であり、投射映像にスペックルノイズを生じさせる原因となるが、人間の視覚でこれを認識できる程度になると、映像の品質は急激に落ちることになる。
【0024】
しかしながら、互いに干渉しないN個の光がスクリーン上に重なると、スペックルノイズは√N倍低減する。すなわち、N個の無相関(Uncorrelated)レーザ光が重畳されると、映像のスペックルノイズは√Nを低減因子として、低減することになる。したがって、本発明の偏光回転部150は、光源100から出射された光がスクリーン190に照射される間に光の偏光方向を時分割的に回転させて、スクリーン190上に無相関レーザ光を重畳させる。
【0025】
すなわち、本発明の偏光回転部150が、1/20秒以下の時間周期である1/40秒の間に光の偏光方向を90°(=π/2)回転させると、1/20秒内に互いの偏光方向が直交する二つの光がスクリーン190上で重畳されることになる。したがって、スクリーン190を見ている人にはスペックルノイズが√2倍低減する。
【0026】
1/40秒以下では無相関レーザ光は重畳されないが、これによるスペックルノイズは人間の視覚では認識することができないため、考慮しなくても良い。これは、人間の視覚情報システムHVSの時間分解能には、限界があるからである。すなわち、目で物体を見るとき、目は1/20秒より短い時間範囲内で変化する視覚的刺激は認められないと知られている。これは、TVの走査線が左上端から60Hzの周波数で隔行走査したとしても、人間はこれを完全な2次元映像として認識するという原理である。但し、1/20秒という数値は人によって多少の差はある。したがって、人間の時間分解能以下の周期で無相関レーザ光をスクリーン上に重畳させると、HVSはスペックルノイズが√2倍低減すると認識することになる。
【0027】
これについて、図1bを参照して説明すると、本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置には光源100、視準レンズ100c、偏光回転部150が含まれることが示されている。図1aを参照して説明したように、光源100から出射された光は視準レンズ100cを通じて平行光となる。平行に視準された平行光は偏光回転部150を通過しながら偏光方向が垂直に回転する。図1bに示された偏光回転部150は液晶偏光回転部であることができる。
【0028】
偏光回転部150が液晶偏光回転部であれば、電圧を印加すると、偏光回転部150内に含まれている液晶の配列が変わって偏光回転部150を通過する光の偏光方向Eを一方向に回転させる。より詳細に説明すると、偏光回転部150に含まれている「液晶」は、分子が固体状態での完全な規則性を有する状態と、通常の等方性液体での不規則性を有する状態との中間状態にある物質を意味する。
【0029】
液晶状態は外部から電場が加えられると液晶分子の配列が変わるが、これを用いてスクリーン190に照射される光を偏光させる。すなわち、電場が一方向に加えられている液晶にスクリーンへの照射前の光を透過させると、光がフィルタリングされて一方向に加えられている電場と同じ振動面だけが残って偏光される。すなわち、分子配列に応じて光を特定方向に偏光させることができる。
【0030】
また、電場を直前の電場の方向と垂直方向に回転するか、印加していた電場を除去すると、液晶を透過する光に残る振動面は、直前の電場と垂直な振動面だけが残る偏光となる。したがって、液晶偏光回転部150は外部から加えられる電場の方向に応じて偏光方向を回転させることができる。液晶偏光回転部150に電位Vを供給して電場を加えるものは、図1aに示された偏光ドライバ回路155とすることができる。
【0031】
偏光ドライバ回路155は、予め決められた周期で電場の印加及び解除を繰り返すか、印加する電場の方向を予め決められた周期で変更することにより、偏光回転部150を通過した光の偏光方向が時分割的に垂直になるようにすることができる。
【0032】
しかし、本発明の他の実施形態によれば、光源100から出射された光がスクリーン190に直接投射されて映像を形成することではなく、映像を形成する各ピクセル別に異なる輝度値及び異なるカラーが投射されて一つのフルカラー映像を形成するために、様々な構成要素をさらに含む。特に、本発明の他の実施形態に含まれる光変調器は、光源100から出射される光をピクセル単位で変調して変調光を生成する。生成された変調光はスキャニングミラーにより反射されてスクリーン190に投射され、スクリーン190上には映像が生成される。
【0033】
ピクセル単位で光の輝度を変調する光変調器については、図2及び図3を参照して詳しく説明する。図2は本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置に含まれる光変調器を構成するマイクロミラーの形状を示す図である。図2を参照すると、光変調器を構成するために一列に配列された複数のマイクロミラーのうちの一つのマイクロミラーにおいて、基板210、絶縁層220、犠牲層230、リボン構造物240、及び圧電体250を含むマイクロミラーが示されている。
【0034】
光変調器にマイクロミラーが一列に配列された場合には1次元光変調器となり、2次元平面上に配列された場合には2次元平面光変調器となる。これについては、図3を参照して詳しく説明する。
【0035】
基板210は一般に使用される半導体基板であり、絶縁層220はエッチング停止層(etch stop layer)として蒸着され、犠牲層として用いられる物質をエッチングするエッチャントに対して選択比の高い物質として形成される。ここで、エッチャントとは、エッチングガスまたはエッチング溶液をさすものである。また、絶縁層220上には入射光を反射するために下部反射層220(a)が形成されることができる。犠牲層230は、リボン構造物240が絶縁層220から一定間隔離隔されるように、両側からリボン構造物240を支持し、中心部にスペースを形成する役割を担う。
【0036】
リボン構造物240は、入射光に対して回折及び干渉を起こして信号を光変調する役割を担う。リボン構造物240は、複数のリボン形状で構成されることができ、リボンの中心部に一つ以上の開口部240(b)を具備することもできる。また、圧電体250は、上部及び下部電極間の電圧差により発生する上下または左右の収縮及び膨脹程度に応じて、リボン構造物240が上下移動するように制御する。ここで、下部反射層220(a)は、リボン構造物240に形成された開口部240(b)に対応して形成される。
【0037】
例えば、光の波長がλである場合、リボン構造物240に形成された上部反射層240(a)と、絶縁層220に形成された下部反射層220(a)との間の間隔が、(2L)λ/4(Lは自然数)になるようにする第1電圧が圧電体250に印加される。この場合、0次回折光の場合には、上部反射層240(a)から反射された光と下部反射層220(a)から反射された光との間の全体経路差はLλであって、補強干渉を起こして変調光は最大輝度を有する。ここで、+1次及び−1次回折光の場合には、光の明るさは相殺干渉により最小値を有する。
【0038】
また、リボン構造物240に形成された上部反射層240(a)と、絶縁層220に形成された下部反射層220(a)との間の間隔が(2L+1)λ/4(Lは自然数)になるようにする第2電圧が圧電体250に印加される。この場合、0次回折光の場合には、上部反射層240(a)から反射された光と下部反射層220(a)から反射された光との間の全体経路差は(2L+1)λ/2であって、相殺干渉を起こして変調光は最小輝度を有する。ここで、+1次及び−1次回折光の場合には、補強干渉により光の輝度は最大値を有する。このような干渉から、マイクロミラーは回折光の光量を調節して一つのピクセルに対する信号を光に乗せることができる。
【0039】
以上では、リボン構造物240と絶縁層220との間の間隔が(2L)λ/4または(2L+1)λ/4である場合を説明したが、リボン構造物240と絶縁層220との間の間隔を調節して、入射光の回折、反射により干渉される光の輝度を調節できる多様な実施形態が本発明に適用できることは自明である。
【0040】
また、図2では回折型光変調器を中心に説明したが、これは、本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置に含まれる光変調器に過ぎず、透過型、反射型の光変調器で代替できることは明らかである。
【0041】
また、図2では圧電方式の光変調器を中心に説明したが、これは本発明に用いられる光変調器の一例に過ぎず、静電方式の光変調器で代替できることは明らかである。
【0042】
図3は、本発明の実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置に含まれる光変調器を示す図である。図3を参照すると、光変調器130は、それぞれ第1ピクセル(pixel #1)、第2ピクセル(pixel #2)、…、第mピクセル(pixel #m)を担当するm個のマイクロミラー(100−1,100−2,…,100−m)で構成される。光変調器130は、垂直走査線または水平走査線(ここで、垂直走査線または水平走査線はm個のピクセルで構成されると仮定する)の1次元映像に対する映像情報を担当し、各マイクロミラー100−1,100−2,…,100−mは、垂直走査線または水平走査線を構成するm個のピクセルの中の一つのピクセルを担当する。したがって、図3に示された光変調器130は1次元光変調器に該当する。
【0043】
図3に示すように、垂直走査線または水平走査線は、マイクロミラーが一列に配置された長手方向の光変調器に線形光(Line Beam)が入射されてピクセル単位に変調される1次元変調光である。
【0044】
それぞれのマイクロミラーにより反射及び/または回折された光は、その後、スキャナによりスクリーン190に2次元映像として投射される。例えば、VGA640×480解像度の場合、480個の垂直ピクセルに対して、スキャナの一面当たり640回変調されてスクリーン190に一つの平面フレームが生成される。
【0045】
本実施形態では、リボン構造物240に形成された開口部240(b)−1は二つであると仮定する。二つの開口部240(b)−1によりリボン構造物240上部には三つの上部反射層240(a)−1が形成される。絶縁層220には二つの開口部240(b)−1に対応して二つの下部反射層が形成される。そして、第1ピクセル(pixel #1)と第2ピクセル(pixel #2)との間の間隔に対応して、絶縁層220にはさらに一つの下部反射層が形成される。したがって、各ピクセル当りの上部反射層240(a)−1及び下部反射層の数は、同じく三つになり、0次回折光または±1次回折光を用いて変調光の輝度を調節することが可能になる。
【0046】
図4は、本発明の実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置の構成を示す図である。図4を参照すると、プロジェクションディスプレイ装置は光源100、照明系レンズ110、光変調器130、プロジェクションレンズ140、絞り142、スキャニングミラー170、偏光回転部150、偏光ドライバ回路155を含んで構成される。
【0047】
光源100は緑色レーザダイオードで設けられる。以下では、光源100が緑色レーザダイオードであると仮定して説明する。しかし、光源100が赤色または青色の光源であってもよいことは自明である。
【0048】
緑色レーザダイオード100から出力された緑色光は、先ず、前方に放射され、緑色光を視準するための視準レンズを通過することになる。視準レンズを通過した緑色光は平行光になって進行し、シリンダレンズを通過する。
【0049】
シリンダレンズとは、平行光を線形に変形させるためにシリンダ形状の光学材質に横方向または縦方向に曲率半径が形成されたレンズのことである。しかし、本発明がシリンダレンズの名称や構成に限定されるものではなく、1次元光変調器に線形光が入射されるように光の形状を変形する光学要素であれば、シリンダレンズを代替することができる。
【0050】
視準レンズ及びシリンダレンズで構成された照明系レンズ110を通過した緑色光は、平行な線形光になり、1次元光変調器130に入射される。1次元光変調器130には、図3で説明したように、複数のマイクロミラーがピクセル単位で配列されているため、ピクセル単位別に緑色光を回折させて各ピクセル別の輝度を変調することができる。
【0051】
1次元光変調器130によりピクセル単位で変調された変調光は、プロジェクションレンズ140を通じて絞り142に進行する。プロジェクションレンズ140は、1次元光変調器130によりピクセル単位に変調された線形の変調光が絞り142を通過できるように集光する機能を担う。図4には、絞り142が単一スリットの絞り142であるものを示したが、本発明のプロジェクションディスプレイ装置に含まれる絞りはこれに限定されず、二重スリットの絞りによっても代替が可能である。
【0052】
絞り142を通過した緑色の変調光がスクリーン190に照射されると、一つの1次元セグメント映像が形成される。1次元光変調器130に480個のマイクロミラーが一列に含まれている場合、1次元光変調器130から変調されて出力される光は480個のピクセル情報を含む光であるからである。
【0053】
したがって、緑色の変調光がスクリーン190上に2次元映像として投射されるためには、スキャニングミラー170が必要である。スキャニングミラー170は、ガルバノミラー(Galvano−mirror)またはポリゴンミラー(Polygon−mirror)とすることができる。
【0054】
スキャニングミラー170は、緑色の変調光をスクリーン190の一端から他端まで走査する。すなわち、スクリーン190にVGA640×480解像度の映像を投射する場合、スキャニングミラー170は480個のピクセル情報が含まれている垂直走査線または水平走査線(変調光)を走査することで、2次元の640×480解像度の映像を完成する。
【0055】
この場合、スキャニングミラー170が、スクリーン190の一端から他端まで走査する間に1次元光変調器130は640回変調し、スクリーン190には640×480ピクセルのフルカラー映像を完成する。単に、スクリーンの一端から他端までの走査に必要とされる時間(走査周期)はHVSの時間分解能である1/20秒以下とするべきである。
【0056】
しかし、本発明の実施形態のプロジェクションディスプレイ装置に含まれる1次元光変調器130は、1/20秒の間に640回の変調を2回行い、スキャニングミラー170は二倍の速さで走査を行う。すなわち、同じ画面をスクリーンに2回投射する。しかし、HVSによれば人間の時間分解能は1/20秒であるため、1/20秒以内に二つの同じフレームがスクリーン上で重畳されても人はこれを認知することができない。
【0057】
この場合、本発明のプロジェクションディスプレイ装置に含まれる偏光回転部150は、1/40秒の周期で偏光方向を回転させる。したがって、1/20秒の間に同じフレームが互いに偏光方向を異にして重畳されても、映像のRGB画素には影響を与えずに、単に無相関レーザ光がスクリーン190の同一位置に重畳されることによりスペックルノイズが√2倍低減することになる。偏光回転の周期は偏光ドライバ回路155で調節することができる。すなわち、偏光ドライバ回路155は光変調器を制御する回路(図示せず)あるいはディスプレイ装置のホストプロセッサ(図示せず)に接続されて、光源及び光変調器の制御と同期して偏光を回転させるように制御することが可能である。
【0058】
図5は本発明の他の実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置の構成を示す図である。図5では、図4に示されたプロジェクションディスプレイ装置とは異なって、三色の光源を含んでいる。三色の光源は、緑色レーザダイオード100、赤色レーザダイオード101、青色レーザダイオード102とすることができる。光源の配置順序は一実施形態に過ぎず、構成に応じてその配置は異なってもよい。
【0059】
本発明のプロジェクションディスプレイ装置は、一つの1次元光変調器130を用いるため、緑色レーザダイオード100、赤色レーザダイオード101、青色レーザダイオード102が予め設定された順にそれぞれの光を出力することになる。例えば、出力される光の順は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)という順番があり得る。したがって、光はRGB,RGB,RGB,…,RGBの順に光を出力することになる。
【0060】
しかし、これは本発明のプロジェクションディスプレイ装置を説明するための一実施形態に過ぎず、様々な要因により出力される光の順序を異にすることができる。例えば、赤色レーザダイオード101の出力が、青色レーザダイオード102あるいは緑色レーザダイオード100の出力より低い場合には、赤色レーザダイオード101が2回連続して赤色光を出力し、その後、緑色レーザダイオード100、青色レーザダイオード102の順に光を出力することができる。したがって、この場合、出力される光の順序は、RRGB,RRGB,RRGB,…,RRGBとなる。
【0061】
以下では、説明の便宜のために、赤色、赤色、緑色、青色の順に光が出力される場合(RRGB,RRGB,RRGB,…,RRGB)を中心に説明する。また、それぞれの光が出力される時間間隔は1/240秒であると仮定する。
【0062】
赤色、赤色、緑色、青色の順に光が出力されると、それぞれの光は順に照明系レンズ110を経て光変調器130に入射される。緑色レーザダイオード以外の青色レーザダイオードや赤色レーザダイオードは、その配置からハーフミラー101h,102hなどの光学素子により反射され、シリンダレンズなどを経て1次元光変調器130に入射される。また、それぞれの光源100,101,102は、それぞれの視準レンズ100c,101c,102cを有することができる。
【0063】
先ず、赤色の光が1/240秒間出力され、1次元光変調器130に入射されると、1次元光変調器130は1/240秒の間に640回変調を行う。すなわち、スクリーン190に640×480ピクセルの映像を投射するために、480ピクセル単位の一次元変調光を640回変調することになる。
【0064】
変調光はプロジェクションレンズ140を経て、絞り142を通過し、スキャニングミラー170により反射されて1/240秒の間にスクリーン190の一端から他端まで走査される。したがって、1/240秒の間に、スクリーン190上には640×480ピクセルの赤色映像が投射されて表示される。
【0065】
その後、赤色レーザダイオード101はオフ(OFF)になり、緑色レーザダイオード100がオン(ON)になって緑色光が1/240秒間出力される。上述した赤色映像と同様に緑色映像がスクリーン190に投射される。その後、青色レーザダイオード102から青色光が出力されてスクリーン190には青色映像が1/240秒間投射される。
【0066】
したがって、赤色、青色、緑色の映像がスクリーン190に投射されるのに必要とされる時間は、1/60秒(1/240秒×4)になる。但し、赤色、青色、緑色の映像がスクリーン190に投射される間に、1次元光変調器130から行われる変調はそれぞれ異なる。すなわち、スクリーン190に投射される映像は640×480ピクセルの映像であり、各ピクセルのRGB画素値は独立しているために、赤色が入射される1/240秒、緑色が入射される1/240秒、青色が入射される1/240秒の間にそれぞれ異なる変調が行われる。単に、赤色は出力が弱くて2回連続して出力されるので、赤色が出力される1/240秒の2回(1/240秒×2)の間は、互いに同じ変調を行う。
【0067】
これについて、図6を参照してより詳細に説明する。図6は、本発明のプロジェクションディスプレイ装置により、スクリーン上にフルカラー映像が投射される過程を簡略に示す図である。1次元光変調器130及びスキャニングミラー170以外の構成要素は省略する。
【0068】
先ず、赤色光が入射された1次元光変調器130が、480個の垂直ピクセルからなった1次元線形変調光を出力すると、スキャニングミラー170が回転しながらこれを反射してスクリーン190に投映する。これにより、480個の垂直ピクセルからなった1次元線形変調光がスクリーン190の右端から左端に走査され赤色映像がスクリーン190に投射される。
【0069】
その後、緑色光が入射された1次元光変調器130は、480個の垂直ピクセルからなる1次元線形変調光を出力し、スキャニングミラー170は回転しながらこれを反射してスクリーン190に投映する。但し、スキャニングミラー170が左端から右端に回転するので、スキャニング方向は以前の赤色光の場合と反対になる。しかし、スキャニングミラー170の回転方向の設定から1次元線形変調光が一方向にだけ走査されるようにすることができる。ここで、スキャニングミラー170は1光走査毎に2回回転することになる。
【0070】
上述したように、赤色、緑色、青色、赤色、赤色、緑色、青色、…の順で1次元変調光がスクリーン190に投射され、その際、1セットの赤色、赤色、緑色、青色の照射時間は1/60秒になる。したがって、1/20秒間には、3セットの赤色、赤色、緑色、青色の変調光がスクリーン190に走査されることができる。しかし、HVSの時間分解能を1/20秒と仮定すれば、それぞれのフルカラー映像フレームを1/20秒の間にスクリーン190に走査しても人はこれを認知することができない。
【0071】
したがって、本発明のプロジェクションディスプレイ装置は、3セットを同じくスクリーン190に走査して1/20秒の間に同じフルカラー映像フレームが3回スクリーン190に重畳される(1/60秒×3)ようにする。但し、同じ変調光が同一位置に重畳されなくてはならないため、1次元光変調器130はセット(RRGB)ごとにスキャニングミラー170と同期してスクリーン190の同一位置に同じく変調された光が投射されるように各色の光を変調しなくてはならない。この場合、本発明のプロジェクションディスプレイ装置は、それぞれのセット毎に変調光の偏光方向が互いに直交するように偏光方向Eを回転させる。
【0072】
すなわち、本発明によるプロジェクションディスプレイ装置はスキャニングミラー170とスクリーン190との間に偏光回転部150を備えており、それぞれのセット毎に変調光の偏光方向を回転させることができる。偏光回転部150は、図2を参照して説明したような液晶偏光回転部で設けられることができ、偏光回転周期は上述した例では、1/60秒となる。しかし、偏光回転周期はこれに限定されず、偏光ドライバ回路155により、スクリーン上に重畳される光の偏光方向が予め設定された時間周期内で繰り返して回転されるように調整することができる。
【0073】
したがって、垂直方向(12時−6時方向)に偏光された赤色、赤色、緑色、青色の1次元変調光がスクリーン190に投射され、その後、同じく変調された赤色、赤色、緑色、青色の1次元変調光が再び水平方向(9時−3時方向)に偏光されてスクリーン190に投射される。
【0074】
したがって、1/20秒の間にスクリーン190に投射される3セットの同じ映像のうちの少なくとも二つの映像は、無相関レーザ光が互いに重畳されて完成された映像であるので、スペックルノイズは√2倍低減することになる。
【0075】
しかし、上述した3セットの赤色、赤色、緑色、青色の1次元線形変調光をスクリーン190に投射しながら各セット別に偏光方向を回転させることは、本発明の一実施形態に過ぎず、2セットの赤色、緑色、青色の1次元線形変調光がスクリーン190に走査される場合にも同様にセット別に偏光方向を回転させることができる。
【0076】
図7は本発明の実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置から生じるスペックルノイズの低減状態を示すグラフである。図7には、三つの光の強さを示すグラフが図示されている。グラフの縦軸は光の強さを示し、横軸はスクリーンの長さを示す。また、本グラフは本発明の実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置を用いて、スクリーン190に映像を投射し、3mの距離で測定した光の強さの分布を示している。
【0077】
第1の光の強さの分布610は、垂直方向に偏光された光をスクリーン190に照射した場合にスクリーン190に生じるスペックルパターンを意味し、第2の光の強さの分布620は、水平方向に偏光された光をスクリーン190に照射した場合にスクリーン190に生じるスペックルパターンを意味する。
【0078】
第3の光の強さの分布630は、垂直方向に偏光された光をスクリーン190に照射し、HVSの時間分解能以内に水平方向に偏光された光をスクリーン190に照射する場合に、映像が重畳されることで生じるスペックルパターンを示している。グラフを参照すると、第3の光の強さの分布630は、第1の光の強さの分布610や第2の光の強さの分布620に比べて不規則性(Fluctuation)が低減したことが分かる。これは、互いに直交する偏光方向を有する同じ光がスクリーン190に照射されると、スペックルノイズが低減することを示す。したがって、図1a〜図5を参照して説明した本発明の多様な実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置を用いると、スクリーン190に生じるスペックルノイズを√2倍低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1a】本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置の構成を簡略化して示す図である。
【図1b】本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置の構成を簡略化して示す図である。
【図2】本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置に含まれる光変調器を構成するマイクロミラーの形状を示す図である。
【図3】本発明の実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置に含まれる光変調器を示す図である。
【図4】本発明の実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置の構成を示す図である。
【図6】本発明のプロジェクションディスプレイ装置がスクリーンにフルカラー映像を投射する過程を簡略に示す図である。
【図7】本発明の実施形態によるプロジェクションディスプレイ装置から生じるスペックルノイズの低減状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
100 光源
150 偏光回転部
155 偏光ドライバ回路
190 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクションディスプレイ装置であって、
光源と、
前記光源からの出射光が同じく変調された変調光を予め設定された時間範囲内でN(Nは2以上の自然数)回繰り返して出射する光変調器と、
前記N回繰り返して出射される変調光を反射して毎回スクリーンの同一位置に走査するミラーと、
前記変調光が走査される度に前記変調光の偏光方向を回転させる偏光回転部と、
を含むことを特徴とするプロジェクションディスプレイ装置。
【請求項2】
前記予め設定された時間範囲が、HVSの時間分解能より小さいことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクションディスプレイ装置。
【請求項3】
前記光変調器が、線形変調光を出射する1次元光変調器であり、
前記ミラーは、前記1次元光変調器からのN回繰り返して出射される線形変調光を前記スクリーンに走査して2次元映像を形成するスキャニングミラーであり、
前記偏光回転部は、前記線形変調光が走査される度に前記線形変調光の偏光方向を回転させることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクションディスプレイ装置。
【請求項4】
前記光源は赤色、緑色、及び青色の光源を含み、
前記赤色、緑色、及び青色の光源は予め設定された順に光を出力することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクションディスプレイ装置。
【請求項5】
前記光源は赤色、緑色、及び青色の光を少なくとも一回含む1セット周期で光を出力し、
前記光変調器は前記光を前記1セット周期でN回同じく変調して前記変調光を出射し、
前記偏光回転部は前記1セット周期で前記変調光の偏光方向を回転させることを特徴とする請求項4に記載のプロジェクションディスプレイ装置。
【請求項6】
前記1セット周期でN回同じく変調出力された変調光が前記スクリーンの同一位置に走査された場合に、フルカラー映像フレームが完成されることを特徴とする請求項5に記載のプロジェクションディスプレイ装置。
【請求項7】
前記1セット周期の前記Nの倍数が、人間の時間分解能周期より小さいことを特徴とする請求項5に記載のプロジェクションディスプレイ装置。
【請求項8】
前記偏光回転部が、液晶偏光回転部であることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクションディスプレイ装置。
【請求項9】
前記偏光回転部が、前記ミラーと前記スクリーンとの間に位置することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクションディスプレイ装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−26483(P2010−26483A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315624(P2008−315624)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】