説明

ズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法

【課題】ゴーストやフレアをより低減させ、高い結像性能を有する大画角のズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法の提供。
【解決手段】物体側から順に、負屈折力の前群Gnと、正屈折力の後群Gpとを有し、後群Gpは、物体側から順に、正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合正レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合レンズLdとを有し、さらに、正レンズLaよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面側へ移動する合焦レンズ群Gfを有し、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、所定の条件式を満足し、前群Gnにおける光学面のうち少なくとも1面に、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含む反射防止膜が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル一眼レフカメラ、フィルムカメラ、ビデオカメラ等の撮影光学系に好適なズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大画角を有するズームレンズが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また近年、このような大画角を有するズームレンズに対しては、収差性能だけではなく、光学性能を損なう要因の一つであるゴーストやフレアに関する要求も厳しさを増しており、そのためレンズ面に施される反射防止膜にもより高い性能が要求され、要求に応えるべく多層膜設計技術や多層膜成膜技術も進歩を続けている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−21223号公報
【特許文献2】特開2000−356704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来のレトロフォーカス型のズームレンズにおいて高性能化を図ろうとすれば、後群の構成の複雑化や、レンズ枚数が増加する傾向があった。また、当該後群は、一般に所謂変形トリプレット型又はエルノスター型の構成が一般的で、特に大きな負の屈折力を有するレンズを備えることとなるため、偏芯敏感度が高くなりやすく、レンズの組み立て性に欠ける課題があった。それと同時に、このようなズームレンズにおける光学面からは、ゴーストやフレアとなる反射光が発生しやすいという課題もあった。
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、ゴーストやフレアをより低減させ、高い結像性能を有する大画角のズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、
物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有し、
前記後群は、物体側から順に、正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合正レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合レンズLdとを有し、さらに、前記正レンズLaよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面側へ移動する合焦レンズ群Gfを有し、
前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、
以下の条件式を満足し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されていることを特徴とするズームレンズを提供する。
0.000<Fw/(−Fb)<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記負レンズLbの焦点距離
【0006】
また本発明は、
前記ズームレンズを有することを特徴とする撮像装置を提供する。
【0007】
また本発明は、
物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有するズームレンズの製造方法であって、
前記後群が、物体側から順に、正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合正レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合レンズLdとを有し、さらに、前記正レンズLaよりも物体側に、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面側へ移動する合焦レンズ群Gfを有するようにし、
前記ズームレンズが以下の条件式を満足するようにし、
前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されていることを特徴とするズームレンズの製造方法を提供する。
0.000<Fw/(−Fb)<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記負レンズLbの焦点距離
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、ゴーストやフレアをより低減させ、高い結像性能を有する大画角のズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願の第1実施例に係るズームレンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図2】(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、本願の第1実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
【図3】本願の第1実施例に係るズームレンズのレンズ構成を示す断面図であって、入射した光線が第1番目のゴースト光発生面と第2番目のゴースト光発生面で反射する様子の一例を説明する図である。
【図4】本願の第2実施例に係るズームレンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、本願の第2実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
【図6】本願の第3実施例に係るズームレンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図7】(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、本願の第3実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
【図8】本願の第4実施例に係るズームレンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図9】(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、本願の第4実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
【図10】本願の第5実施例に係るズームレンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図11】(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、本願の第5実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
【図12】本願のズームレンズを備えたカメラの構成を示す図である。
【図13】本願のズームレンズの製造方法を示す図である。
【図14】反射防止膜の層構造の一例を示す説明図である。
【図15】反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図16】変形例に係る反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図17】変形例に係る反射防止膜の分光特性の入射角度依存性を示すグラフである。
【図18】従来技術で作成した反射防止膜の、分光特性を示すグラフである。
【図19】従来技術で作成した反射防止膜の、分光特性の入射角度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願のズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法について説明する。
本願のズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有し、前記後群は、物体側から順に、正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合正レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合レンズLdとを有し、さらに、前記正レンズLaよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面側へ移動する合焦レンズ群Gfを有し、前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
(1) 0.000<Fw/(−Fb)<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記負レンズLbの焦点距離
【0011】
一般に、大画角を有するレトロフォーカス型のズームレンズにおいて、マスターレンズ群である後群の構成は、主点とバックフォーカスの関係より、物体側から順に、正レンズ、正レンズ、負レンズ、及び正レンズを有するレンズ構成を基本とした変形トリプレット型又はエルノスター型が主流であった。しかしながら、斯かる後群は正レンズで発生した収差を負レンズで打ち消す手法をとるため、偏芯、レンズ厚、及び空気間隔の各々の敏感度が高くなる傾向にあった。このような現象は、特に、口径が比較的大きなズームレンズや、マスターレンズ群である後群の屈折力が大きいズームレンズにおいて顕著であった。
そこで本願のズームレンズは、この点を改善するために、物体側から順に、正レンズ群、正レンズ、負レンズ、接合正レンズ、及び接合レンズを有するレンズ構成を後群の基本とすることで、中央の負レンズの屈折力を小さくすることに成功している。これにより、前記敏感度の低減を実現することができ、さらに球面収差、コマ収差、像面湾曲、及び非点収差を良好に補正することが可能となり、小型で良好な光学性能を有する大画角のズームレンズを達成することができる。
【0012】
上記条件式(1)は、後群内の負レンズLbの焦点距離の大きさ、即ち負レンズLbの屈折力を規定する条件式である。
本願のズームレンズの条件式(1)の対応値が上限値を上回ると、負レンズLbの焦点距離の絶対値が小さくなる、即ち負レンズLbの負の屈折力が大きくなることを意味する。この場合、球面収差が補正過剰になってしまうため好ましくない。また、偏芯敏感度も増加してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.900とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.800とすることがより好ましく、これによって良好な収差補正を行うことが可能となる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.700とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.600とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(1)の上限値を0.500とすることがより好ましい。
【0013】
一方、本願のズームレンズの条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、負レンズLbの焦点距離の絶対値が大きくなる、即ち負レンズLbの負の屈折力が著しく小さくなる、又は負レンズLbが正の屈折力を有するようになることを意味する。この場合、球面収差が補正不足になり、特に接合正レンズLcと接合レンズLdに収差補正の負担がかかってしまう。そして結果的には、コマ収差、像面湾曲、及び非点収差が悪化することとなってしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を0.005とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を0.010とすることがより好ましく、これによって諸収差をより良好に補正することができる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を0.020とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(1)の下限値を0.030とすることがより好ましい。
【0014】
また、本願のズームレンズは、前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、この反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んでいる。このように構成することで、本実施形態にかかるズームレンズは、物体からの光が光学面で反射されて生じるゴーストやフレアを低減することができ、高い結像性能を達成することができる。
【0015】
また、本願のズームレンズは、前記反射防止膜は多層膜であり、前記ウェットプロセスで形成された層は、多層膜を構成する層のうち最も表面の層であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0016】
また、本願のズームレンズは、前記ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率をndとしたとき、屈折率ndが1.30以下であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0017】
また、本願のズームレンズは、前群において反射防止膜が設けられた前記光学面は、開口絞りから見て凹形状のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち開口絞りから見て凹形状のレンズ面で反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0018】
また、本願のズームレンズは、前群において反射防止膜が設けられた、開口絞りから見て凹形状のレンズ面は、像面側のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち開口絞りから見て凹形状の像面側のレンズ面で反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0019】
また、本願のズームレンズは、前記像面側のレンズ面は、最も物体側のレンズにおけるレンズ面であることが好ましい。前群の最も物体側のレンズにおいて開口絞りから見て凹形状の像面側のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0020】
また、本願のズームレンズは、前群において反射防止膜が設けられた、開口絞りから見て凹形状のレンズ面は、物体側のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち開口絞りから見て凹形状の物体側のレンズ面で反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0021】
また、本願のズームレンズは、前群において反射防止膜が設けられた前記光学面は、物体から見て凹形状のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち物体から見て凹形状のレンズ面で反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0022】
また、本願のズームレンズでは、前群において反射防止膜が設けられた、物体から見て凹形状のレンズ面は、最も物体側のレンズから像面側に2番目のレンズの、物体側のレンズ面であることが好ましい。前群において最も物体側のレンズから像面側に2番目のレンズの、物体側レンズ面で反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0023】
また、本願のズームレンズでは、前群において反射防止膜が設けられた、物体から見て凹形状のレンズ面は、最も物体側のレンズから像面側に3番目のレンズの、物体側のレンズ面であることが好ましい。前群において最も物体側のレンズから像面側に3番目のレンズの、物体側レンズ面で反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0024】
また、本願のズームレンズでは、前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、最も物体側のレンズにおける像面側のレンズ面であり、かつ開口絞りから見て凹形状のレンズ面と、最も物体側のレンズから像面側に3番目のレンズにおける物体側のレンズ面であり、かつ物体側から見て凹形状のレンズ面とであることが好ましい。前群において最も物体側のレンズにおける像面側のレンズ面であり、かつ開口絞りから見て凹形状のレンズ面と、最も物体側のレンズから像面側に3番目のレンズにおける物体側のレンズ面であり、かつ物体側から見て凹形状のレンズ面とにゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0025】
なお、本願のズームレンズでは、反射防止膜は、ウェットプロセスに限らず、ドライプロセス等により形成しても良い。この際、反射防止膜は屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることが好ましい。反射防止膜が、屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることで、反射防止膜をドライプロセス等で形成しても、ウェットプロセスを用いた場合と同様の効果を得ることができる。なおこの時、屈折率が1.30以下になる層は、多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることが好ましい。
【0026】
また、本願のズームレンズは、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2) 0.0000<Fw/|Fd|<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fd:前記後群内の前記接合レンズLdの焦点距離
【0027】
条件式(2)は、後群内の接合レンズLdの焦点距離の大きさ、即ち接合レンズLdの屈折力を規定する条件式である。
本願のズームレンズの条件式(2)の対応値が上限値を上回ると、接合レンズLdの焦点距離の絶対値が小さくなる、即ち接合レンズLdの屈折力が大きくなることを意味する。この場合、球面収差、コマ収差、及び変倍によるコマ収差の変動が増加してしまうため好ましくない。また、像面湾曲と非点収差も悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を0.80とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を0.50とすることがより好ましく、これによって諸収差の補正が有利になる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を0.30とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を0.20とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(2)の上限値を0.10とすることがより好ましい。
【0028】
一方、本願のズームレンズの条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、接合レンズLdの焦点距離の絶対値が大きくなる、即ち接合レンズLdの屈折力が著しく小さくなることを意味する。この場合、接合レンズLdの収差の補正能力が極端に低下し、接合正レンズLcの収差補正の負担が増加してしまう。そして結果的に、コマ収差の画角による変位、及び変倍によるコマ収差の変動が増加してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値を0.0005とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値を0.0010とすることがより好ましく、これによってコマ収差等の諸収差の補正に有利となる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値を0.0015とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(2)の下限値を0.0030とすることがより好ましい。
【0029】
また、本願のズームレンズは、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3) 0.005<Fw/Fc<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fc:前記後群内の前記接合正レンズLcの焦点距離
【0030】
条件式(3)は、後群内の接合正レンズLcの焦点距離の大きさ、即ち接合正レンズLcの屈折力を規定する条件式である。
本願のズームレンズの条件式(3)の対応値が上限値を上回ると、接合正レンズLcの焦点距離が小さくなる、即ち接合正レンズLcの屈折力が大きくなることを意味する。この場合、球面収差、及び変倍によるコマ収差の変動が増加してしまうため好ましくない。また、像面湾曲と非点収差も悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を0.800とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を0.500とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を0.300とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(3)の上限値を0.200とすることがより好ましい。
【0031】
一方、本願のズームレンズの条件式(3)の対応値が下限値を下回ると、接合正レンズLcの焦点距離が大きくなる、即ち接合正レンズLcの屈折力が著しく小さくなる、又は接合正レンズLcが負の屈折力を有するようになることを意味する。この場合、接合レンズLdに収差補正の負担が増加してしまう。そして結果的に、コマ収差の画角による変位、及び変倍によるコマ収差の変動が増加してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の下限値を0.010とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の下限値を0.030とすることがより好ましく、これによって諸収差をより良好に補正することができる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の下限値を0.050とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(3)の下限値を0.070とすることがより好ましい。
【0032】
また、本願のズームレンズは、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4) 0.005<Fw/Ff<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Ff:前記後群内の前記合焦レンズ群Gfの焦点距離
【0033】
条件式(4)は、後群内の合焦レンズ群Gfの焦点距離の大きさ、即ち合焦レンズ群Gfの屈折力を規定する条件式である。
本願のズームレンズの条件式(4)の対応値が上限値を上回ると、合焦レンズ群Gfの焦点距離が小さくなる、即ち合焦レンズ群Gfの正の屈折力が大きくなることを意味する。したがって、球面色収差、軸上色収差、及び望遠端状態におけるコマ収差が悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値を0.800とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値を0.700とすることがより好ましく、これによって諸収差の補正が有利になる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値を0.500とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(4)の上限値を0.300とすることがより好ましい。
【0034】
一方、本願のズームレンズの条件式(4)の対応値が下限値を下回ると、合焦レンズ群Gfの焦点距離が大きくなる、即ち合焦レンズ群Gfの正の屈折力が著しく小さくなる、又は合焦レンズ群Gfが負の屈折力を有するようになることを意味する。この場合、合焦レンズ群Gfが合焦レンズ群としての役割を果たせなくなり、合焦レンズ群Gfの合焦のための移動量が増大し、本願のズームレンズ全体が大型化してしまうため好ましくない。また結果的に、球面色収差、軸上色収差、及び望遠端状態におけるコマ収差が悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の下限値を0.010とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の下限値を0.030とすることがより好ましく、これによって諸収差をより良好に補正することができる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の下限値を0.040とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(4)の下限値を0.050とすることがより好ましい。
【0035】
また、本願のズームレンズは、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5) 0.00≦(r2+r1)/(r2−r1)<30.00
ただし、
r1:前記後群内の前記負レンズLbの物体側のレンズ面の曲率半径
r2:前記後群内の前記負レンズLbの像側のレンズ面の曲率半径
【0036】
条件式(5)は、後群内の負レンズLbの形状因子(Qファクター)を規定する条件式である。この条件式(5)は、負レンズLbが、物体側のレンズ面の曲率半径と像面側のレンズ面の曲率半径とが同じである所謂等rの両凹形状から、物体側に凹面を向けたメニスカス形状になることを意味している。そして条件式(5)は、負レンズLbが、等rの両凹形状以外では、必ず物体側のレンズ面の曲率が像面側のレンズ面の曲率よりも大きくなることを意味している。
したがって、本願のズームレンズの条件式(5)の対応値が上限値を上回ると、負レンズLbの形状が著しいメニスカス形状になる。この場合、球面色収差、コマ収差、及び像面湾曲の変倍による変動が悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を25.00とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を20.00とすることがより好ましく、これによって諸収差の補正が有利になる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を10.00とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(5)の上限値を8.00とすることがより好ましい。
【0037】
一方、本願のズームレンズの条件式(5)の対応値が下限値を下回ると、負レンズLbの物体側のレンズ面の曲率が像面側のレンズ面の曲率よりも小さくなること意味する。この場合、敏感度が増加し、結果的にコマ収差と球面収差が悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の下限値を0.10とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の下限値を0.20とすることがより好ましく、これによって諸収差をより良好に補正することができる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の下限値を0.30とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(5)の下限値を0.40とすることがより好ましい。
【0038】
また、本願のズームレンズは、前記後群内の前記接合レンズLdが正の屈折力を有すると、コマ収差を良好に補正することができる。
また、本願のズームレンズは、前記後群内の前記接合レンズLdが負の屈折力を有すると、歪曲収差を良好に補正することができる。
また、本願のズームレンズは、前記後群内の前記合焦レンズ群Gfが正又は負の屈折力を有する接合レンズを少なくとも有することが望ましい。この構成により、特に望遠端状態におけるコマ収差と球面収差を良好に補正することができる。
また、本願の撮像装置は、上述した構成のズームレンズを備えたことを特徴とする。これにより、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有する大画角の撮像装置を実現することができる。
【0039】
また、本願のズームレンズの製造方法は、物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有するズームレンズの製造方法であって、前記後群が、物体側から順に、正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合正レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合レンズLdとを有し、さらに、前記正レンズLaよりも物体側に、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動する合焦レンズ群Gfを有するようにし、前記ズームレンズが以下の条件式(1)を満足するようにし、前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されることを特徴とする。
(1) 0.000<Fw/(−Fb)<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記負レンズLbの焦点距離
斯かる本願のズームレンズの製造方法により、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、ゴーストやフレアをより低減させ、高い結像性能を有する大画角のズームレンズを製造することができる。
【0040】
以下、本願の数値実施例に係るズームレンズを添付図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は、本願の第1実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
本実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群Gnと、正の屈折力を有する後群Gpとから構成されている。
前群Gnは、物体側から順に、負の屈折力を有しており像面I側に凹面を向けた両側非球面負メニスカスレンズL11と、両凹形状の負レンズL12と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL14とからなる。
【0041】
後群Gpは、物体側から順に、正の屈折力を有する合焦レンズ群Gfと、開口絞りSと、正の屈折力を有する正レンズ群Grとからなる。
合焦レンズ群Gfは、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面I側へ移動するレンズ群であって、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との接合正レンズのみからなる。
正レンズ群Grは、物体側から順に、両凸形状の正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズLbと、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合正レンズLcと、両凸形状の正レンズと像面I側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合負レンズLdとからなる。
また、本実施例に係るズームレンズでは、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって、広角端状態から望遠端状態への変倍を行う。なお、図1中の矢印は、広角端状態から望遠端状態への変倍時の前群Gn及び後群Gpの移動軌跡を示している。
【0042】
本第1実施例に係るズームレンズは、前群Gnの負メニスカスレンズL11の像面I側のレンズ面と、両凹形状の負レンズL12の物体側レンズ面に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0043】
以下の表1に、本実施例に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
表1において、Fは焦点距離、BFはバックフォーカスを示す。
[面データ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面の順番、rはレンズ面の曲率半径、dはレンズ面の間隔、ndはd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、νdはd線(波長λ=587.6nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、物面は物体面、可変は可変の面間隔、(絞りS)は開口絞りS、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示している。また、面番号の左側に付された米印「*」は非球面を示している。
[非球面データ]には、[面データ]に示した非球面について、その形状を次式で表した場合の円錐係数と非球面係数を示す。
X(y)=(y/r)/[1+{1−κ(y/r)}1/2]
+A4×y+A6×y+A8×y+A10×y10+A12×y12
ここで、光軸に垂直な方向の高さをy、高さyにおける光軸方向の変位量をX(y)、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をr、円錐係数をκ、n次の非球面係数をAnとする。なお、「E-n」は「×10-n」を示し、例えば「1.234E-05」は「1.234×10−5」を示す。
【0044】
[各種データ]において、FNOはFナンバー、ωは半画角(単位:度)、Yは像高、TLは光学系全長、Σdは最も物体側のレンズ面(第1面)から最も像側のレンズ面までの距離、βは撮影倍率、d0は物体面から第1面までの距離、di(i:整数)は第i面の可変の面間隔をそれぞれ示す。なお、1-POSは広角端状態における無限遠物体合焦時、2-POSは中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時、3-POSは望遠端状態における無限遠物体合焦時、4-POSは広角端状態における有限距離物体合焦時、5-POSは中間焦点距離状態における有限距離物体合焦時、6-POSは望遠端状態における有限距離物体合焦時、7-POSは広角端状態における最短撮影距離物体合焦時、8-POSは中間焦点距離状態における最短撮影距離物体合焦時、9-POSは望遠端状態における最短撮影距離物体合焦時をそれぞれ示す。
ここで、表1に掲載されている焦点距離F、曲率半径r、及びその他長さの単位は一般に「mm」が使われる。しかしながら光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
なお、以上に述べた表1の符号は、後述する各実施例の表においても同様に用いるものとする。
【0045】
(表1)第1実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
*1) 27.6095 2.0000 1.744430 49.52
*2) 10.4613 13.4130 1.000000
3) -91.8404 2.0000 1.816000 46.63
4) 20.9975 5.0000 1.603420 38.02
5) 46.4047 2.0000 1.000000
6) 34.9634 4.5000 1.717360 29.52
7) -145.3428 可変 1.000000
8) 43.3884 1.0000 1.788000 47.38
9) 16.6939 3.0000 1.497820 82.56
10) -179.2154 可変 1.000000
11) (絞りS) ∞ 0.7000 1.000000
12) 18.7726 3.0000 1.516800 64.12
13) -48.4517 5.4164 1.000000
14) -24.9329 6.0000 1.755000 52.29
15) -43.6855 2.0000 1.000000
16) -60.8893 1.0000 1.755000 52.29
17) 18.0968 5.0000 1.518230 58.89
18) -17.6009 0.1000 1.000000
19) 312.1189 5.5000 1.497820 82.56
20) -12.3197 1.0000 1.834810 42.72
21) -39.7672 BF 1.000000
像面 ∞

[非球面データ]
第1面
κ = -3.0300
A4 = 2.51696E-06
A6 = 1.97213E-09
A8 = 9.53579E-13
A10 = -4.10542E-15
A12 = 0.0000

第2面
κ = 0.3010
A4 = -5.11743E-06
A6 = 2.38317E-08
A8 = -4.77560E-10
A10 = 3.04666E-12
A12 = -0.43400E-14

[各種データ]
ズーム比 1.77

1-POS 2-POS 3-POS
F 16.48 〜 24.00 〜 29.10
FNO 4.67 〜 5.39 〜 5.88
ω 53.47 〜 41.61 〜 36.17°
Y 21.60 〜 21.60 〜 21.60
TL 129.75 〜 125.92 〜 127.84
Σd 91.47 〜 76.11 〜 70.21
BF 38.28 〜 49.81 〜 57.63

1-POS 2-POS 3-POS 4-POS 5-POS 6-POS
F&β 16.48000 24.00000 29.10000 -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 ∞ ∞ ∞ 473.9082 700.5201 854.0684
d7 22.83725 7.48076 1.58270 25.12741 9.41676 3.34451
d10 6.00001 6.00001 6.00001 3.70985 4.06401 4.23820
BF 38.28373 49.81133 57.62926 38.28373 49.81133 57.62926

7-POS 8-POS 9-POS
β -0.05668 -0.08173 -0.09992
d0 270.2495 274.0784 272.1586
d7 26.69585 12.12987 6.71209
d10 2.14141 1.35090 0.87062
BF 38.28373 49.81133 57.62926

[レンズ群データ]
群 始面 F
Gn 1 -22.95412
Gf 8 270.27515
Gr 12 38.38092

[条件式対応値]
(1) Fw/(−Fb) = 0.1847
(2) Fw/|Fd| = 0.07311
(3) Fw/Fc = 0.10804
(4) Fw/Ff = 0.06097
(5) (r2+r1)/(r2−r1) = 3.659
【0046】
図2(a)、図2(b)、及び図2(c)はそれぞれ、本願の第1実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高、dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)をそれぞれ示す。なお、球面収差図では最大口径に対応するFナンバーの値を示し、非点収差図及び歪曲収差図では像高の最大値をそれぞれ示している。また、非点収差図において実線はサジタル像面、点線はメリジオナル像面を示し、コマ収差図における実線はメリジオナルコマ収差を示す。なお、以下に示す各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。
各諸収差図より、本実施例に係るズームレンズは、球面収差、像面湾曲、非点収差、及びコマ収差を含む諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0047】
本願ズームレンズにおける、ゴースト発生原因の一例について図3を参照して説明する。
図3において、物体側からの光線BMが図示のようにズームレンズに入射すると、両凹形状の負レンズL12における物体側のレンズ面(第1番目のゴースト光発生面でありその面番号は3)で反射し、その反射光は負メニスカスレンズL11における像面I側のレンズ面(第2番目のゴースト光発生面でありその面番号は2)で再度反射して像面Iに到達し、ゴーストを発生させてしまう。なお、第1番目のゴースト光発生面3は、物体から見て凹形状のレンズ面、第2番目のゴースト光発生面2は開口絞りから見て凹形状のレンズ面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴーストを効果的に低減させることができる。
【0048】
(第2実施例)
図4は、本願の第2実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
本実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群Gnと、正の屈折力を有する後群Gpとから構成されている。
前群Gnは、物体側から順に、両側非球面メニスカスレンズL11と、複合型非球面正レンズL12と、両凹形状の負レンズL13と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL15とからなる。
両側非球面メニスカスレンズL11は、負の屈折力を有し中心から周辺へ向かうにつれて負の屈折力が小さくなる形状を有しており、像面I側に凹面を向けている。
複合型非球面正レンズL12は、合成で正の屈折力を有し中心から周辺へ向かうにつれて負の屈折力に転じる形状を有しており、樹脂部とガラスレンズとの複合によりなる。
【0049】
後群Gpは、物体側から順に、正の屈折力を有する合焦レンズ群Gfと、開口絞りSと、正の屈折力を有する正レンズ群Grとからなる。
合焦レンズ群Gfは、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面I側へ移動するレンズ群であって、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との接合正レンズのみからなる。
正レンズ群Grは、物体側から順に、両凸形状の正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズLbと、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合正レンズLcと、像面I側に凸面を向けた正メニスカスレンズと像面I側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合正レンズLdとからなる。
また、本実施例に係るズームレンズでは、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって、広角端状態から望遠端状態への変倍を行う。なお、図4中の矢印は、広角端状態から望遠端状態への変倍時の前群Gn及び後群Gpの移動軌跡を示している。
【0050】
本第2実施例に係るズームレンズは、前群Gnの負メニスカスレンズL11の像面I側のレンズ面と、正レンズL12の物体側レンズ面に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0051】
以下の表2に、本実施例に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
【0052】
(表2)第2実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
*1) 120.0323 3.0000 1.744430 49.53
*2) 14.8111 11.0000 1.000000
3) 320.0965 3.0000 1.516800 64.12
4) 70.0000 1.0000 1.553890 38.09
*5) -993.8663 4.5000 1.000000
6) -56.5907 2.0000 1.816000 46.63
7) 17.0196 7.0000 1.603420 38.02
8) 73.8459 0.1000 1.000000
9) 32.4760 5.0000 1.717360 29.52
10) -157.9244 可変 1.000000
11) 23.8096 1.0000 1.795000 45.30
12) 15.6593 3.0000 1.497820 82.56
13) -1090.6220 可変 1.000000
14) (絞りS) ∞ 0.7000 1.000000
15) 26.3980 2.5000 1.497820 82.56
16) -79.3224 4.6000 1.000000
17) -39.5467 8.0000 1.744000 44.79
18) -162.0229 2.0000 1.000000
19) -92.3426 1.0000 1.755000 52.29
20) 20.8016 5.0000 1.518230 58.89
21) -21.0542 0.1000 1.000000
22) -344.4872 5.5000 1.497820 82.56
23) -13.5094 1.0000 1.834810 42.72
24) -31.7192 BF 1.000000
像面 ∞

[非球面データ]
第1面
κ = 12.7063
A4 = 2.52869E-07
A6 = 5.51300E-10
A8 = 4.77913E-13
A10 = -3.07832E-16
A12 = -0.49549E-19

第2面
κ = -0.0947
A4 = -6.70196E-06
A6 = -1.78783E-08
A8 = -5.15142E-12
A10 = -4.83366E-14
A12 = 0.21367E-15

第5面
κ = 0.00000
A4 = 2.50710E-05
A6 = 2.09871E-08
A8 = 1.63612E-10
A10 = -1.20936E-13
A12 = -0.17594E-14

[各種データ]
ズーム比 1.77
1-POS 2-POS 3-POS
F 16.48 〜 24.00 〜 29.10
FNO 4.41 〜 5.29 〜 5.88
ω 53.27 〜 41.72 〜 35.932°
Y 21.60 〜 21.60 〜 21.60
TL 138.15 〜135.51 〜138.24
Σd 99.84 〜 84.47 〜 78.57
BF 38.31 〜 51.04 〜 59.67
1-POS 2-POS 3-POS 4-POS 5-POS 6-POS
F&β 16.48000 24.00000 29.10000 -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 ∞ ∞ ∞ 470.1967 697.5176 851.2221
d10 22.83854 7.47382 1.57260 23.82277 8.14376 2.14016
d13 6.00001 6.00001 6.00001 5.01578 5.33006 5.43245
BF 38.31325 51.03766 59.66724 38.31325 51.03766 59.66724

7-POS 8-POS 9-POS
β -0.08858 -0.12836 -0.15853
d0 161.8482 164.4885 161.7602
d10 25.46251 10.04579 4.25456
d13 3.37604 3.42803 3.31805
BF 38.31325 51.03766 59.66724

[レンズ群データ]
群 始面 F
Gn 1 -21.85385
Gf 11 65.79150
Gr 15 59.98221

[条件式対応値]
(1) Fw/(−Fb) = 0.2278
(2) Fw/|Fd| = 0.005215
(3) Fw/Fc = 0.1105
(4) Fw/Ff = 0.2505
(5) (r2+r1)/(r2−r1) = 1.646
【0053】
図5(a)、図5(b)、及び図5(c)はそれぞれ、本願の第2実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
各諸収差図より、本実施例に係るズームレンズは、球面収差、像面湾曲、非点収差、及びコマ収差を含む諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0054】
(第3実施例)
図6は、本願の第3実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
本実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群Gnと、正の屈折力を有する後群Gpとから構成されている。
前群Gnは、物体側から順に、両側非球面メニスカスレンズL11と、複合型非球面正レンズL12と、両凹形状の負レンズL13と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL15とからなる。
両側非球面メニスカスレンズL11は、負の屈折力を有し中心から周辺へ向かうにつれて負の屈折力が小さくなる形状を有しており、像面I側に凹面を向けている。
複合型非球面正レンズL12は、合成で正の屈折力を有し中心から周辺へ向かうにつれて負の屈折力に転じる形状を有しており、樹脂部とガラスレンズとの複合によりなる。
【0055】
後群Gpは、物体側から順に、正の屈折力を有する合焦レンズ群Gfと、開口絞りSと、正の屈折力を有する正レンズ群Grとからなる。
合焦レンズ群Gfは、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面I側へ移動するレンズ群であって、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との接合正レンズのみからなる。
正レンズ群Grは、物体側から順に、両凸形状の正レンズLaと、両凹形状の負レンズLbと、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合正レンズLcと、両凸形状の正レンズと像面I側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合負レンズLdとからなる。
また、本実施例に係るズームレンズでは、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって、広角端状態から望遠端状態への変倍を行う。なお、図6中の矢印は、広角端状態から望遠端状態への変倍時の前群Gn及び後群Gpの移動軌跡を示している。
【0056】
本第3実施例に係るズームレンズは、前群Gnの負メニスカスレンズL11の像面I側のレンズ面と、両凸形状の正レンズL15の物体側レンズ面に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0057】
以下の表3に、本実施例に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
【0058】
(表3)第3実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
*1) 82.7358 3.0000 1.744430 49.52
*2) 14.1379 9.0000 1.000000
3) 75.5790 3.0000 1.516800 64.12
4) 40.0000 0.5000 1.553890 38.09
*5) 83.8029 6.0000 1.000000
6) -77.5324 2.0000 1.816000 46.63
7) 17.4612 6.5000 1.603420 38.02
8) 70.9358 1.0500 1.000000
9) 34.6649 5.0000 1.717360 29.52
10) -214.0325 可変 1.000000
11) 27.4177 1.0000 1.788000 47.38
12) 15.1887 3.0000 1.497820 82.56
13) -218.1559 可変 1.000000
14) (絞りS) ∞ 0.7000 1.000000
15) 23.2434 2.8000 1.487490 70.45
16) -45.2239 4.6270 1.000000
17) -39.0084 8.0000 1.755000 52.29
18) 114.1192 2.0000 1.000000
19) -94.3568 1.0000 1.755000 52.29
20) 26.8051 5.0000 1.518230 58.89
21) -18.1493 0.1000 1.000000
22) 471.7364 5.5000 1.497820 82.56
23) -12.7396 1.0000 1.834810 42.72
24) -33.4851 BF 1.000000
像面 ∞

[非球面データ]
第1面
κ = 4.0103
A4 = 1.16908E-06
A6 = 4.58987E-10
A8 = 4.52741E-14
A10 = -7.38248E-16
A12 = 0.0000

第2面
κ = -0.0638
A4 = -7.94597E-07
A6 = -5.98169E-09
A8 = 2.11786E-11
A10 = -5.51429E-14
A12 = 0.81892E-16

第5面
κ = -5.6064
A4 = 2.51241E-05
A6 = 2.20702E-08
A8 = 5.50134E-11
A10 = -1.42359E-13
A12 = -0.72010E-15

[各種データ]
ズーム比 1.77
1-POS 2-POS 3-POS
F 16.48 〜 24.00 〜 29.10
FNO 4.42 〜 5.28 〜 5.87
ω 53.20 〜 41.29 〜 35.96°
Y 21.60 〜 21.60 〜 21.60
TL 137.91 〜135.13 〜137.77
Σd 99.62 〜 84.25 〜 78.35
BF 38.29 〜 50.88 〜 59.41

1-POS 2-POS 3-POS 4-POS 5-POS 6-POS
F&β 16.48000 24.00000 29.10000 -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 ∞ ∞ ∞ 471.3609 698.1959 851.7729
d10 22.83872 7.47624 1.57589 23.82393 8.20492 2.20852
d13 6.00001 6.00001 6.00001 5.01479 5.27133 5.36738
BF 38.29175 50.87810 59.41406 38.29175 50.87810 59.41406

7-POS 8-POS 9-POS
β -0.12195 -0.17557 -0.21797
d0 112.0925 114.8687 112.2331
d10 26.43169 11.27028 5.64318
d13 2.40704 2.20597 1.93272
BF 38.29175 50.87810 59.41406

[レンズ群データ]
群 始面 F
Gn 1 -21.97176
Gf 11 82.35563
Gr 15 52.85072

[条件式対応値]
(1) Fw/(−Fb) = 0.4376
(2) Fw/|Fd| = 0.001919
(3) Fw/Fc = 0.2208
(4) Fw/Ff = 0.2001
(5) (r2+r1)/(r2−r1) = 0.4905
【0059】
図7(a)、図7(b)、及び図7(c)はそれぞれ、本願の第3実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
各諸収差図より、本実施例に係るズームレンズは、球面収差、像面湾曲、非点収差、及びコマ収差を含む諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0060】
(第4実施例)
図8は、本願の第4実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
本実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群Gnと、正の屈折力を有する後群Gpとから構成されている。
前群Gnは、物体側から順に、両側非球面メニスカスレンズL11と、複合型非球面正レンズL12と、両凹形状の負レンズL13と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL15とからなる。
両側非球面メニスカスレンズL11は、負の屈折力を有し中心から周辺へ向かうにつれて負の屈折力が小さくなる形状を有しており、像面I側に凹面を向けている。
複合型非球面正レンズL12は、合成で正の屈折力を有し中心から周辺へ向かうにつれて負の屈折力に転じる形状を有しており、樹脂部とガラスレンズとの複合によりなる。
【0061】
後群Gpは、物体側から順に、正の屈折力を有する合焦レンズ群Gfと、開口絞りSと、正の屈折力を有する正レンズ群Grとからなる。
合焦レンズ群Gfは、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面I側へ移動するレンズ群であって、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL22との接合負レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23とからなる。
正レンズ群Grは、物体側から順に、両凸形状の正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズLbと、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合正レンズLcと、像面I側に凸面を向けた正メニスカスレンズと像面I側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合負レンズLdとからなる。
また、本実施例に係るズームレンズでは、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって、広角端状態から望遠端状態への変倍を行う。なお、図8中の矢印は、広角端状態から望遠端状態への変倍時の前群Gn及び後群Gpの移動軌跡を示している。
【0062】
本第4実施例に係るズームレンズは、前群Gnの負メニスカスレンズL11の像面I側のレンズ面と、正メニスカスレンズL14の像面I側のレンズ面に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0063】
以下の表4に、本実施例に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
【0064】
(表4)第4実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
*1) 153.3543 3.0000 1.744430 49.53
*2) 15.3606 11.0000 1.000000
3) 236.8320 3.0000 1.516800 64.12
4) 70.0000 1.0000 1.553890 38.09
*5) 3985.5156 4.5000 1.000000
6) -67.6319 2.0000 1.816000 46.63
7) 15.1899 7.5000 1.603420 38.02
8) 43.3750 0.1000 1.000000
9) 27.7464 5.5000 1.717360 29.52
10) -157.9244 可変 1.000000
11) 49.1344 1.0000 1.804000 46.58
12) 16.8331 2.5000 1.516800 64.12
13) 146.9875 0.1000 1.000000
14) 25.6591 2.5000 1.497820 82.56
15) 599.0698 可変 1.000000
16) (絞りS) ∞ 0.7000 1.000000
17) 29.3063 2.5000 1.497820 82.56
18) -61.3653 4.6000 1.000000
19) -50.5351 8.0000 1.744000 44.79
20) -67.6742 2.0000 1.000000
21) -79.7962 1.0000 1.755000 52.29
22) 18.3139 5.0000 1.518230 58.89
23) -20.4715 0.1000 1.000000
24) -60.2074 5.5000 1.497820 82.56
25) -12.2737 1.0000 1.834810 42.72
26) -31.7192 BF 1.000000
像面 ∞

[非球面データ]
第1面
κ = 13.2493
A4 = 1.31283E-06
A6 = 1.06752E-09
A8 = 1.38001E-13
A10 = -8.11754E-16
A12 = 0.10966E-17

第2面
κ = -0.2095
A4 = -5.86923E-06
A6 = -7.67156E-09
A8 = -1.78993E-11
A10 = -5.48129E-14
A12 = 0.28144E-15

第5面
κ = 0.0000
A4 = 2.47964E-05
A6 = 2.84299E-08
A8 = 1.25579E-10
A10 = -1.72740E-13
A12 = -0.21040E-14

[各種データ]
ズーム比 1.77
1-POS 2-POS 3-POS
F 16.48 〜 24.00 〜 29.10
FNO 4.35 〜 5.14 〜 5.68
ω 53.12 〜 41.82 〜 36.38°
Y 21.60 〜 21.60 〜 21.60
TL 141.21 〜140.02 〜143.41
Σd 102.95 〜 88.69 〜 83.22
BF 38.26 〜 51.33 〜 60.20

1-POS 2-POS 3-POS 4-POS 5-POS 6-POS
F&β 16.48000 24.00000 29.10000 -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 ∞ ∞ ∞ 471.1267 698.0278 851.5633
d10 22.85014 8.59216 3.11601 23.72910 9.20066 3.63146
d15 6.00001 6.00001 6.00001 5.12105 5.39151 5.48457
BF 38.26242 51.33188 60.19547 38.26242 51.33188 60.19547

7-POS 8-POS 9-POS
β -0.12479 -0.18187 -0.22726
d0 108.7874 109.9760 106.5885
d10 26.14974 11.89568 6.59818
d15 2.70041 2.69648 2.51784
BF 38.26242 51.33188 60.19547

[レンズ群データ]
群 始面 F
Gn 1 -20.77230
Gf 11 69.36596
Gr 17 62.45782

[条件式対応値]
(1) Fw/(−Fb) = 0.04921
(2) Fw/|Fd| = 0.1469
(3) Fw/Fc = 0.08016
(4) Fw/Ff = 0.2376
(5) (r2+r1)/(r2−r1) = 6.897
【0065】
図9(a)、図9(b)、及び図9(c)はそれぞれ、本願の第4実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
各諸収差図より、本実施例に係るズームレンズは、球面収差、像面湾曲、非点収差、及びコマ収差を含む諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0066】
(第5実施例)
図10は、本願の第5実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。 本実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群Gnと、正の屈折力を有する後群Gpと、固定群Gsとから構成されている。
前群Gnは、物体側から順に、両側非球面メニスカスレンズL11と、複合型非球面正レンズL12と、両凹形状の負レンズL13と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL15とからなる。
両側非球面メニスカスレンズL11は、負の屈折力を有し中心から周辺へ向かうにつれて負の屈折力が小さくなる形状を有しており、像面I側に凹面を向けている。
複合型非球面正レンズL12は、合成で正の屈折力を有し中心から周辺へ向かうにつれて負の屈折力に転じる形状を有しており、樹脂部とガラスレンズとの複合によりなる。
【0067】
後群Gpは、物体側から順に、正の屈折力を有する合焦レンズ群Gfと、開口絞りSと、正の屈折力を有する正レンズ群Grとからなる。
合焦レンズ群Gfは、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面I側へ移動するレンズ群であって、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との接合正レンズのみからなる。
正レンズ群Grは、物体側から順に、両凸形状の正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズLbと、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合正レンズLcと、像面I側に凸面を向けた正メニスカスレンズと像面I側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合正レンズLdとからなる。
固定群Gsは、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31のみからなる。
また、本実施例に係るズームレンズでは、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって、広角端状態から望遠端状態への変倍を行う。なお、固定群Gsの位置は、変倍に際して固定である。また、図10中の矢印は、広角端状態から望遠端状態への変倍時の前群Gn及び後群Gpの移動軌跡を示している。
【0068】
本第5実施例に係るズームレンズは、前群Gnの負メニスカスレンズL11の像面I側のレンズ面と、両凹形状の負レンズL13の物体側レンズ面に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0069】
以下の表5に、本実施例に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
【0070】
(表5)第5実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
*1) 120.0323 3.0000 1.744430 49.53
*2) 14.8111 11.0000 1.000000
3) 320.0965 3.0000 1.516800 64.12
4) 70.0000 1.0000 1.553890 38.09
*5) -993.8663 4.5000 1.000000
6) -56.5907 2.0000 1.816000 46.63
7) 17.0196 7.0000 1.603420 38.02
8) 73.8459 0.1000 1.000000
9) 32.4760 5.0000 1.717360 29.52
10) -157.9244 可変 1.000000
11) 23.8096 1.0000 1.795000 45.30
12) 15.6593 3.0000 1.497820 82.56
13) -1090.6220 可変 1.000000
14) (絞りS) ∞ 0.7000 1.000000
15) 26.3980 2.5000 1.497820 82.56
16) -79.3224 4.6000 1.000000
17) -39.5467 8.0000 1.744000 44.79
18) -162.0229 2.0000 1.000000
19) -92.3426 1.0000 1.755000 52.29
20) 20.8016 5.0000 1.518230 58.89
21) -21.0542 0.1000 1.000000
22) -344.4872 5.5000 1.497820 82.56
23) -13.5094 1.0000 1.834810 42.72
24) -31.7192 可変 1.000000
25) -100.0000 2.0000 1.516800 64.12
26) -107.0000 BF 1.000000
像面 ∞

[非球面データ]
第1面
κ = 12.7063
A4 = 2.52869E-07
A6 = 5.51300E-10
A8 = 4.77913E-13
A10 = -3.07832E-16
A12 = -0.49549E-19

第2面
κ = -0.0947
A4 = -6.70196E-06
A6 = -1.78783E-08
A8 = -5.15142E-12
A10 = -4.83366E-14
A12 = 0.21367E-15

第5面
κ = 0.00000
A4 = 2.50710E-05
A6 = 2.09871E-08
A8 = 1.63612E-10
A10 = -1.20936E-13
A12 = -0.17594E-14

[各種データ]
ズーム比 1.77
1-POS 2-POS 3-POS
F 16.48 〜 24.00 〜 29.10
FNO 4.49 〜 5.33 〜 5.93
ω 52.73 〜 41.73 〜 36.33°
Y 21.60 〜 21.60 〜 21.60
TL 139.69 〜136.93 〜139.40
Σd 102.78 〜100.03 〜102.50
BF 36.90 〜 36.90 〜 36.90

1-POS 2-POS 3-POS 4-POS 5-POS 6-POS
F&β 16.48000 24.00000 29.10000 -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 ∞ ∞ ∞ 479.0879 697.4475 851.1518
d10 22.83854 8.08582 2.08111 23.80535 8.75458 2.64698
d13 5.94351 5.94351 5.94351 4.97670 5.27476 5.37764
d24 1.00000 12.99953 21.47140 1.00000 12.99953 21.47140
BF 36.90477 36.90477 36.90477 36.90477 36.90477 36.90477

7-POS 8-POS 9-POS
β -0.09092 -0.12930 -0.15949
d0 160.3132 163.0664 160.5992
d10 25.48445 10.67259 4.77187
d13 3.29760 3.35675 3.25276
d24 1.00000 12.99953 21.47140
BF 36.90477 36.90477 36.90477

[レンズ群データ]
群 始面 F
Gn 1 -21.85385
Gf 11 65.79150
Gr 15 59.98221
Gs 25 -3276.74607

[条件式対応値]
(1) Fw/(−Fb) = 0.2278
(2) Fw/|Fd| = 0.005215
(3) Fw/Fc = 0.1105
(4) Fw/Ff = 0.2505
(5) (r2+r1)/(r2−r1) = 1.646
【0071】
図11(a)、図11(b)、及び図11(c)はそれぞれ、本願の第5実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
各諸収差図より、本実施例に係るズームレンズは、球面収差、像面湾曲、非点収差、及びコマ収差を含む諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0072】
ここで、本願のズームレンズに用いられる反射防止膜(多層広帯域反射防止膜とも言う)について説明する。図14は、反射防止膜の膜構成の一例を示す図である。この反射防止膜101は7層からなり、レンズ等の光学部材102の光学面に形成される。第1層101aは真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムで形成されている。また、この第1層101aの上に更に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第2層101bが形成される。さらに、この第2層101bの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第3層101cが形成され、この第3層101cの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第4層101dが形成される。またさらに、この第4層101dの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第5層101eが形成され、この第5層101eの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第6層101fが形成される。
【0073】
そして、このようにして形成された第6層101fの上に、ウェットプロセスによりフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる第7層101gが形成されて本実施形態の反射防止膜101が形成される。第7層101gの形成には、ウェットプロセスの一種であるゾル−ゲル法を用いている。ゾル−ゲル法とは、原料を混合することにより得られたゾルを、加水分解・重縮合反応などにより流動性のないゲルとし、このゲルを加熱・分解して生成物を得る方法であり、光学薄膜の作製においては、光学部材の光学面上に光学薄膜材料ゾルを塗布し、乾燥固化によりゲル膜とすることで膜を生成することができる。なお、ウェットプロセスとして、ゾル−ゲル法に限らず、ゲル状態を経ないで固体膜を得る方法を用いるようにしてもよい。
【0074】
このように、この反射防止膜101の第1層101a〜第6層101fまではドライプロセスである電子ビーム蒸着により形成され、最上層である第7層101gは、フッ酸/酢酸マグネシウム法で調製したゾル液を用いるウェットプロセスにより以下の手順で形成されている。まず、予めレンズの成膜面(上述の光学部材102の光学面)に真空蒸着装置を用いて第1層101aとなる酸化アルミニウム層、第2層101bとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第3層101cとなる酸化アルミニウム層、第4層101dとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第5層101eとなる酸化アルミニウム層、第6層101fとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層を順に形成する。そして、蒸着装置より光学部材102を取り出した後、フッ酸/酢酸マグネシウム法により調製したゾル液にシリコンアルコキシドを加えたものをスピンコート法により塗布することにより、第7層101gとなるフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる層を形成する。フッ酸/酢酸マグネシウム法によって調製される際の反応式を以下の式(a)に示す。
【0075】
(a) 2HF+Mg(CH3COO)2→MgF2+2CH3COOH
【0076】
この成膜に用いたゾル液は、原料混合後、オートクレーブで140℃、24時間高温加圧熟成処理を施した後、成膜に用いられる。この光学部材102は、第7層101gの成膜終了後、大気中で160℃、1時間加熱処理して完成される。このようなゾル−ゲル法を用いることにより、大きさが数nmから数十nmの粒子が空隙を残して堆積することにより第7層101gが形成される。
【0077】
このようにして形成された反射防止膜101を有する光学部材の光学的性能について図15に示す分光特性を用いて説明する。
【0078】
本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材(レンズ)は、以下の表6に示す条件で形成されている。ここで表6は、基準波長をλとし、基板の屈折率(光学部材)が1.62、1.74及び1.85について反射防止膜101の各層101a(第1層)〜101g(第7層)の光学膜厚をそれぞれ求めたものである。なお、表6では、酸化アルミニウムをAl2O3、酸化チタンと酸化ジルコニウム混合物をZrO2+TiO2、フッ化マグネシウムとシリカの混合物をMgF2+SiO2とそれぞれ表している。
【0079】
(表6)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2+SiO2 1.26 0.268λ 0.271λ 0.269λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ 0.054λ 0.059λ
第5層 Al2O3 1.65 0.171λ 0.178λ 0.162λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.127λ 0.13λ 0.158λ
第3層 Al2O3 1.65 0.122λ 0.107λ 0.08λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.059λ 0.075λ 0.105λ
第1層 Al2O3 1.65 0.257λ 0.03λ 0.03λ
基板の屈折率 1.62 1.74 1.85

【0080】
図15は、表6において基準波長λを550nmとして反射防止膜101の各層の光学膜厚を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を表している。
【0081】
図15から、基準波長λを550nmで設計した反射防止膜101を有する光学部材は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率を0.2%以下に抑えられることが判る。また、表6において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜101を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図15に示す基準波長λが550nmの場合とほぼ同等の分光特性を有する。
【0082】
次に、本反射防止膜の変形例について説明する。この反射防止膜は5層からなり、表6と同様、以下の表7で示される条件で基準波長λに対する各層の光学膜厚が設計される。本変形例では、第5層の形成に前述のゾル−ゲル法を用いている。
【0083】
(表7)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第5層 MgF2+SiO2 1.26 0.275λ 0.269λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.045λ 0.043λ
第3層 Al2O3 1.65 0.212λ 0.217λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.077λ 0.066λ
第1層 Al2O3 1.65 0.288λ 0.290λ
基板の屈折率 1.46 1.52

【0084】
図16は、表7において、基板の屈折率が1.52及び基準波長λを550nmとして各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示している。図16から本変形例の反射防止膜は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率が0.2%以下に抑えられることがわかる。なお、表7において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図16に示す分光特性とほぼ同等の特性を有する。
【0085】
図17は、図16に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。なお、図16、図17には表7に示す基板の屈折率が1.46の反射防止膜を有する光学部材の分光特性が図示されていないが、基板の屈折率が1.52とほぼ同等の分光特性を有していることは言うまでもない。
【0086】
また比較のため、図18に、従来の真空蒸着法などのドライプロセスのみで成膜した反射防止膜の一例を示す。図18は、表7と同じ基板の屈折率1.52に以下の表8で示される条件で構成される反射防止膜を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示す。また、図19は、図18に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。
【0087】
(表8)
物質 屈折率 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2 1.39 0.243λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.119λ
第5層 Al2O3 1.65 0.057λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.220λ
第3層 Al2O3 1.65 0.064λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ
第1層 Al2O3 1.65 0.193λ
基板の屈折率 1.52

【0088】
図15〜図17で示される本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材の分光特性を、図18および図19で示される従来例の分光特性と比較すると、本反射防止膜はいずれの入射角においてもより低い反射率を有し、しかもより広い帯域を有することが良くわかる。
【0089】
次に、本願の第1実施例から第5実施例に、上記表6、表7に示す反射防止膜を適用した例について説明する。
【0090】
本第1実施例のズームレンズにおいて、前群Gnの負メニスカスレンズL11の屈折率は、表1に示すように、nd=1.744430であり、前群Gnの両凹形状の負レンズL12の屈折率は、nd=1.816000であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表6参照)を用い、両凹形状の負レンズL12の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表6参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0091】
本第2実施例のズームレンズにおいて、前群Gnの負メニスカスレンズL11の屈折率は、表2に示すように、nd=1.744430であり、前群Gnの正レンズL12の屈折率は、nd=1.516800であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表6参照)を用い、正レンズL12の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.52に対応する反射防止膜(表7参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0092】
本第3実施例のズームレンズにおいて、前群Gnの負メニスカスレンズL11の屈折率は、表3に示すように、nd=1.744430であり、前群Gnの両凸形状の正レンズL15の屈折率は、nd=1.717360であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表6参照)を用い、両凸形状の正レンズL15の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表6参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0093】
本第4実施例のズームレンズにおいて、前群Gnの負メニスカスレンズL11の屈折率は、表4に示すように、nd=1.744430であり、前群Gnの正メニスカスレンズL14の屈折率は、nd=1.603420であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表6参照)を用い、正メニスカスレンズL14の像面側のレンズ面に、基板の屈折率が1.62に対応する反射防止膜(表6参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0094】
本第5実施例のズームレンズにおいて、前群Gnの負メニスカスレンズL11の屈折率は、表5に示すように、nd=1.744430であり、前群Gnの両凹形状の負レンズL13の屈折率は、nd=1.816000であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表6参照)を用い、両凹形状の負レンズL13の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表6参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0095】
以上の各実施例によれば、一眼レフカメラ等の撮像装置に好適な、広角端状態で包括角2ω=106.3°を越え、Fナンバー=4〜5.6程度の口径を有し、レンズ枚数が少なく、前玉径が小さく即ちフィルター径が小さく、小型で、諸収差を良好に補正し、ゴーストやフレアをより低減させ、高い結像性能を有するレトロフォーカス型のズームレンズを実現することができる。
ここで、上記各実施例は本願発明の一具体例を示しているものであり、本願発明はこれらに限定されるものではない。以下の内容は、本願のズームレンズの光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
本願のズームレンズの数値実施例として2群、3群構成のものを示したが、本願はこれに限られず、その他の群構成(例えば、4群、5群等)のズームレンズを構成することもできる。具体的には、本願のズームレンズの最も物体側や最も像側にレンズ又はレンズ群を追加した構成でも構わない。なお、レンズ群とは空気間隔で分離された少なくとも1枚のレンズを有する部分をいう。
【0096】
また、本願のズームレンズは、無限遠物体から近距離物体への合焦を行うために、レンズ群の一部、1つのレンズ群全体、或いは複数のレンズ群を合焦レンズ群として光軸方向へ移動させる構成としてもよい。また、合焦レンズ群は、オートフォーカスに適用することも可能であり、オートフォーカス用のモータ、例えば超音波モータ等による駆動にも適している。特に、本願のズームレンズでは前群又は後群の少なくとも一部を合焦レンズ群とすることが好ましい。
また、本願のズームレンズにおいて、いずれかのレンズ群全体又はその一部を、防振レンズ群として光軸に直交する方向の成分を含むように移動させ、又は光軸を含む面内方向へ回転移動(揺動)させることで、手ブレによって生じる像ブレを補正する構成とすることもできる。特に、本願のズームレンズでは後群の少なくとも一部を防振レンズ群とすることが好ましい。
【0097】
また、本願のズームレンズを構成するレンズのレンズ面は、球面又は平面としてもよく、或いは非球面としてもよい。レンズ面が球面又は平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、レンズ加工及び組立調整の誤差による光学性能の劣化を防ぐことができるため好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないため好ましい。レンズ面が非球面の場合、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に成型したガラスモールド非球面、又はガラス表面に設けた樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれでもよい。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)或いはプラスチックレンズとしてもよい。
また、本願のズームレンズにおいて開口絞りは、後群Gp内の合焦レンズ群Gfと正レンズ群Grとの間に限られず、前群Gnと合焦レンズ群Gfとの間、又は正レンズ群Gr内の正レンズLaと負レンズLbとの間に配置することもできる。また、開口絞りは合焦レンズ群Gfと一体的に移動する構成としてもよい。また、開口絞りとして部材を設けずに、レンズ枠でその役割を代用する構成としてもよい。
【0098】
また、本願のズームレンズは、ズーム比が2〜7程度である。
また、本願のズームレンズにおいて前群は、正レンズ成分を2つと、負レンズ成分を2つ有することが好ましく、特にこれらのレンズ成分を物体側から順に負、正、負、正の順番で空気間隔を介在させて配置することが好ましい。或いは前群は、正レンズ成分を1つと、負レンズ成分を3つ有することが好ましく、特にこれらのレンズ成分を物体側から順に負、負、負、正の順番で空気間隔を介在させて配置することが好ましい。また、後群は、正レンズ成分を3つと、負レンズ成分を2つ有することが好ましく、特にこれらのレンズ成分を物体側から順に正、正、負、正、負の順番で空気間隔を介在させて配置することが好ましい。或いは後群は、正レンズ成分を4つと、負レンズ成分を1つ有することが好ましく、特にこれらのレンズ成分を物体側から順に正、正、負、正、正の順番で空気間隔を介在させて配置することが好ましい。
【0099】
次に、本願のズームレンズを備えたカメラを図12に基づいて説明する。
図12は、本願のズームレンズを備えたカメラの構成を示す図である。
本カメラ1は、撮影レンズ2として上記第1実施例に係るズームレンズを備えたデジタル一眼レフカメラである。
本カメラ1において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2で集光されて、クイックリターンミラー3を介して焦点板4に結像される。そして焦点板4に結像されたこの光は、ペンタプリズム5中で複数回反射されて接眼レンズ6へ導かれる。これにより撮影者は、被写体像を接眼レンズ6を介して正立像として観察することができる。
【0100】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー3が光路外へ退避し、不図示の被写体からの光は撮像素子7へ到達する。これにより被写体からの光は、当該撮像素子7によって撮像されて、被写体画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者は本カメラ1による被写体の撮影を行うことができる。
ここで、本カメラ1に撮影レンズ2として搭載した上記第1実施例に係るズームレンズは、その特徴的なレンズ構成により、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、高い結像性能と大画角を有している。これにより本カメラ1は、小型で、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有しており、大画角を包括する広角撮影が可能となる。なお、上記第2〜第5実施例に係るズームレンズを撮影レンズ2として搭載したカメラを構成しても、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。また、本願のズームレンズは、クイックリターンミラーのないミラーレスカメラに使用しても同様の効果を奏することができる。
【0101】
最後に、本願のズームレンズの製造方法の概略を図13に基づいて説明する。
本願のズームレンズの製造方法は、物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有するズームレンズの製造方法であって、以下のステップS1〜S3を含むものである。
ステップS1:後群が、物体側から順に、正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合正レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合レンズLdとを有し、さらに、前記正レンズLaよりも物体側に、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面側へ移動する合焦レンズ群Gfを有するようにする。
【0102】
ステップS2:当該ズームレンズが以下の条件式(1)を満足するようにして、前群と後群を鏡筒内に物体側から順に配置する。
(1) 0.000<Fw/(−Fb)<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記負レンズLbの焦点距離
ステップS3:前群と後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行うようにする。
斯かる本願のズームレンズの製造方法によれば、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、ゴーストやフレアをより低減させ、高い結像性能を有する大画角のズームレンズを製造することができる。
【符号の説明】
【0103】
Gn 前群
Gp 後群
Gf 合焦レンズ群
Gr 正レンズ群
La 正レンズ
Lb 負レンズ
Lc 接合正レンズ
Ld 接合レンズ
S 開口絞り
I 像面
101 反射防止膜
101a 第1層
101b 第2層
101c 第3層
101d 第4層
101e 第5層
101f 第6層
101g 第7層
102 光学部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有し、
前記後群は、物体側から順に、正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合正レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合レンズLdとを有し、さらに、前記正レンズLaよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面側へ移動する合焦レンズ群Gfを有し、
前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、
以下の条件式を満足し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されることを特徴とするズームレンズ。
0.000<Fw/(−Fb)<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記負レンズLbの焦点距離
【請求項2】
前記反射防止膜は多層膜であり、
前記ウェットプロセスで形成された層は、前記多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率をndとしたとき、ndは1.30以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、開口絞りから見て凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記凹形状のレンズ面は、像面側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記像面側のレンズ面は、最も物体側のレンズにおけるレンズ面であることを特徴とする請求項5に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記凹形状のレンズ面は、物体側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、物体側から見て凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記凹形状のレンズ面は、最も物体側のレンズから像面側に2番目のレンズの、物体側のレンズ面であることを特徴とする請求項8に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記凹形状のレンズ面は、最も物体側のレンズから像面側に3番目のレンズの、物体側のレンズ面であることを特徴とする請求項8に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、最も物体側のレンズにおける像面側のレンズ面であり、かつ開口絞りから見て凹形状のレンズ面と、
最も物体側のレンズから像面側に3番目のレンズにおける物体側のレンズ面であり、かつ物体側から見て凹形状のレンズ面とであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項12】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.0000<Fw/|Fd|<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fd:前記後群内の前記接合レンズLdの焦点距離
【請求項13】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.005<Fw/Fc<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fc:前記後群内の前記接合正レンズLcの焦点距離
【請求項14】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.005<Fw/Ff<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Ff:前記後群内の前記合焦レンズ群Gfの焦点距離
【請求項15】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.00≦(r2+r1)/(r2−r1)<30.00
ただし、
r1:前記後群内の前記負レンズLbの物体側のレンズ面の曲率半径
r2:前記後群内の前記負レンズLbの像側のレンズ面の曲率半径
【請求項16】
前記後群内の前記接合レンズLdは正の屈折力を有することを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項17】
前記後群内の前記接合レンズLdは負の屈折力を有することを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項18】
前記後群内の前記合焦レンズ群Gfが正又は負の屈折力を有する接合レンズを少なくとも有することを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のズームレンズを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項20】
物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有するズームレンズの製造方法であって、
前記後群が、物体側から順に、正レンズLaと、物体側に凹面を向けた負レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合正レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合レンズLdとを有し、さらに、前記正レンズLaよりも物体側に、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像面側へ移動する合焦レンズ群Gfを有するようにし、
前記ズームレンズが以下の条件式を満足するようにし、
前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、 前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されることを特徴とするズームレンズの製造方法。
0.000<Fw/(−Fb)<1.000
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記負レンズLbの焦点距離

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−220681(P2012−220681A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85605(P2011−85605)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】