セキュリティーシステム
【課題】ズームアップ用のカメラなどを必要することなく、安価なカメラシステムによって構築可能なセキュリティーシステムを提供する。
【解決手段】本発明のセキュリティーシステムは、セキュリティー確保の対象となる空間での滞在を許容された人物それぞれに付与されたIDを記憶すると共に、当該IDに応じた人物の姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータを記憶するモデルデータ記憶部120と、前記空間を撮像し撮像データを取得する撮像装置110と、前記撮像手段によって取得された撮像データから人物の動きを抽出し当該人物の姿勢情報を推定する姿勢情報推定手段と、前記姿勢推定手段によって推定された姿勢情報と前記記憶手段に記憶される姿勢情報モデルデータとから、当該人物がIDを付与された人物である確率を算出する確率算出手段と、前記確率算出手段によって算出された確率に基づいて、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第1判定手段と、を有することを特徴とする。
【解決手段】本発明のセキュリティーシステムは、セキュリティー確保の対象となる空間での滞在を許容された人物それぞれに付与されたIDを記憶すると共に、当該IDに応じた人物の姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータを記憶するモデルデータ記憶部120と、前記空間を撮像し撮像データを取得する撮像装置110と、前記撮像手段によって取得された撮像データから人物の動きを抽出し当該人物の姿勢情報を推定する姿勢情報推定手段と、前記姿勢推定手段によって推定された姿勢情報と前記記憶手段に記憶される姿勢情報モデルデータとから、当該人物がIDを付与された人物である確率を算出する確率算出手段と、前記確率算出手段によって算出された確率に基づいて、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第1判定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティーを確保したい空間における監視を自動的に行うセキュリティーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりセキュリティーを確保したい空間において、当該空間を無人で監視するセキュリティーシステムが種々提案されている。例えば、特許文献1(特開2005−295469号公報)には、所定領域を監視するシステムにおいて、侵入者を的確に検知し、無人監視状態であっても、的確なアングル制御やズーミング制御を行ない、侵入者の的確な映像の録画や、低い誤報率で警報を発することの可能な監視システムが開示されている。
【特許文献1】特開2005−295469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のセキュリティーシステムでは、ズームアップ用のカメラなどが必要となり、セキュリティーシステムを構築する際に大きなコストが必要となる、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、セキュリティー確保の対象となる空間での滞在を許容された人物それぞれに付与されたIDを記憶すると共に、当該IDに応じた人物の姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータを記憶する記憶手段と、前記空間を撮像し撮像データを取得する撮像手段と、前記撮像手段によって取得された撮像データから人物の動きを抽出し当該人物の姿勢情報を推定する姿勢情報推定手段と、前記姿勢推定手段によって推定された姿勢情報と前記記憶手段に記憶される姿勢情報モデルデータとから、当該人物がIDを付与された人物である確率を算出する確率算出手段と、前記確率算出手段によって算出された確率に基づいて、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第1判定手段と、を有することを特徴とするセキュリティーシステムである。
【0005】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のセキュリティーシステムにおいて、前記第1判定手段によって、当該人物がIDを付与された人物でないと判断されたとき、前記前記第1判定手段による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第2判定手段を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に記載のセキュリティーシステムによれば、ズームアップ用のカメラなどを必要することなく、安価なカメラシステムによってセキュリティーシステムを構築することが可能となる。
【0007】
また、本発明の請求項1に記載のセキュリティーシステムによれば、特定しようとする人物がサングラスなどをかけた場合においても、セキュリティーシステムが不能とならない。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載のセキュリティーシステムによれば、前記第1判定手段による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第2判定手段を有するので、第1判定手段をバックアップすることが可能となる
。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの概念を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの概要のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムで用いられるベイジアンネットワークの概念を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの撮像装置によって取得されるデータを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの撮像データなどから認識される動作データの構造を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムのモデルデータ記憶部に記憶されるデータを説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける姿勢情報モデルデータのデータ構造を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの登録データ記憶部に記憶されるデータを説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るセキュリティーシステムで用いる姿勢情報モデルのネットワーク構造を示す図である。
【図10】ベイジアンネットワーク構造における生理状態Ph(5)がとる状態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムによる処理のフローチャートを示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける第1人物判定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける姿勢認識処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける確率Pid計算処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける第2人物判定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図16】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける学習処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図17】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける個人モデルデータの学習処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のセキュリティーシステムにおける好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの概念を説明する図であり、図2は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの概要のブロック図である。図1において、Rは本システムでのセキュリティー確保の対象となる空間であり、A、B、C、Dはそのような空間Rに滞在している人物を表している。また、図1及び図2において、100は主制御部、110は撮像装置、120はモデルデータ記憶部、130は登録データ記憶部、140は通信部、200はセキュリティー管理センターをそれぞれ示している。
【0011】
本実施形態に係るセキュリティーシステムは、図1における空間Rのセキュリティーを確保するために、当該空間Rに滞在しているそれぞれの人物を特定するように動作するも
のである。ここで、空間Rに滞在を許容された人物については、あらかじめそれぞれ固有のID番号などを付与して登録する。さらに、このIDに対応した人物毎の動き方(動作)のクセをデータ化することによって、システムが人物判定を行うようになっている。なお、人物毎の動き方のクセに基づいて、システムが人物判定を行う判定を、本実施形態では第1の人物判定とている。また、動き方のクセなどを記録したデータは、本実施形態においては、姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータと称し、このデータを後述するようなベイジアンネットワークによるモデルに基づいて作成する。本実施形態に係るセキュリティーシステムは、姿勢情報モデルデータに基づかずに、人物判定を行う第2の人物判定手段を有している。この第2の人物判定手段については、本実施形態では、人物毎に予め登録してある顔画像データと、撮像した撮像データとを画像処理的に比較することで判定する例に基づいて説明するが、本発明のセキュリティーシステムでは、第2人物判定手段としては、その他の手法のものを用いることができる。
【0012】
ここで、本発明のセキュリティーシステムで姿勢情報モデルデータに基づく人物判定に用いるベイジアンネットワークの概要について説明する。図3は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムで用いられるベイジアンネットワークの概念を示す図である。ベイジアンネットワークとは、確率的な因果関係をグラフ構造で表現したモデルである。図3に示す各ノードX1、X2、X3、X4は確率変数を表し、それらの間の因果関係の有無を有向グラフで、また、確率変数の取りうる値のノード間での因果関係を条件付確率で表す。ノードX1とノードX2とは確率的な関係があることを、ノードX1からノードX2への矢印によって示している。ノードX2はノードX1、X3からの影響を、また、ノードX4はノードX3の影響を受ける関係となっており、このような因果関係を加味した確率テーブルが、図3中に示す条件付き確率テーブルである。これに対して、ノードX1、X3はどのノードからの影響も受けない親ノードであり、このときの確率テーブルは図中に示す事前確率テーブルのようになる。図3示すものの場合、そのグラフの構造より、全ての確率変数の結合確率はP(X1,X2,X3,X4)=P(X1)P(X2|X1,X3)P(X3)P(X4|X3)となる。ベイジアンネットワークを利用した推論においては、この結合確率の周辺化により、周辺事後確率を求めることにより行われる。このようなベイジアンネットワークに基づく確率算出の手法については、発明者らによる出願番号2008−90755号(発明の名称「セキュリティーシステム」)、出願番号2008−90777号(発明の名称「セキュリティーシステム及び運転支援方法」)に詳しく記載されているので、本明細書においてもこれら出願の内容を援用するものとする。
【0013】
さて、本実施形態に係るセキュリティーシステムは、空間Rのセキュリティーを確保するために、当該空間Rに滞在しているそれぞれの人物を特定するように動作するが、そのために空間Rの動画を撮影するための撮像装置110が設けられている。図1においては、この撮像装置110が4台設けられる例について示しているが、このような撮像装置110の設置台数はこれに限定されるものではない。したがって、本発明のセキュリティーシステムでは、2以上のn台の撮像装置110を用いて、これらn台の撮像装置110からのnの撮像データを取得することができる。図4は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの撮像装置によって取得されるデータを示す図である。
【0014】
図4に示すようなn台の撮像装置110によって取得された撮像データからは、人物の動き方に係る情報(位置情報なども含む姿勢情報)を抽出・推定して、人物毎の動き方のクセなどのデータである姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータを作成したり、或いは、前記抽出・推定した情報と、予め登録されている姿勢情報モデルデータとに基づいて、撮像データによって認識された人物を特定したりするようにしている。
【0015】
図5は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの撮像データなどから認識される動作データの構造を示す図である。図5に示すよう個人の動作データの内訳としては「
位置情報」、「姿勢情報」、「非顕在情報」に大別することができる。これらのデータのうち、「位置情報」、「姿勢情報」については、撮像装置110によって取得された撮像データからの推定が行われる。「位置情報」は対象となる人物の存在位置に関する情報であり、これは撮像データから求められる。また、「姿勢情報」の下には、「右手の位置」、「左手の位置」、「右ひじ位置」、「左ひじ位置」、「顔の向き」、「右足の位置」、「左足の位置」、「右ひざの位置」、「左ひざの位置」、「腰の位置」、「体の向き」などのデータがあり、これらは撮像データからの推定が行われる。また、「非顕在情報」には「心理状態」、「行動変数」は、撮像データなどから認識することができない情報であり、本実施形態では「心理状態」は「平静」、「緊張」、「疲労」、「興奮」、「その他」の5状態をとる分散量データであり、「行動変数」は当該人物の行動パターンを数値化した連続量データである。
【0016】
主制御部100は、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理機構である。主制御部100は、ブロック図中に示されている主制御部100と接続される各構成と協働・動作する。また、主制御部100は、本発明のセキュリティーシステムにおける種々の制御処理は、主制御部100内のROMなどの記憶手段に記憶保持されるプログラムやデータに基づいて実行されるものである。
【0017】
上記のような主制御部100には、モデルデータ記憶部120が接続されており、主制御部100は、モデルデータ記憶部120に登録、記録されている個々の人物の姿勢情報モデルデータを参照したり、或いは、新規に姿勢情報モデルデータを登録したり、既に登録されている姿勢情報モデルデータを更新したりする。
【0018】
次に、このようなモデルデータ記憶部120に記憶されているデータについて説明する。図6は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムのモデルデータ記憶部に記憶されるデータを説明する図であり、図7は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける姿勢情報モデルデータのデータ構造を示す図である。図6に示すように、モデルデータ記憶部120は、セキュリティーを確保すべき対象となる空間Rにおける滞在を許可された人物それぞれに付与された固有の登録ID(id=1,2,3,・・・,M)と、その登録IDに対応したそれぞれの人物の姿勢情報モデルデータを記憶している。図7は個々の姿勢情報モデルデータのデータ構造をより詳しく説明する図である。図7に示すように、姿勢情報モデルデータ中のデータは、概略、離散データ、連続データの2種類のデータに分類することができる。前者には「心理状態」のデータが属し、このデータは条件付き確率テーブルの形式で保有される。また、後者には「現在位置」、「右手の位置」、「左手の位置」、「右ひじ位置」、「左ひじ位置」、「頭の位置」、「顔の向き」、「右足の位置」、「左足の位置」、「右ひざの位置」、「左ひざの位置」、「腰の位置」、「体の向き」、「行動変数」の各データが属し、これらのデータはガウス分布の平均・分散・重みの形式で保有される。
【0019】
また、主制御部100には、登録データ記憶部130が接続されており、主制御部100は、登録データ記憶部130に登録、記録されている個々の人物のマッチング用の顔画像データを参照したり、或いは、マッチング用の顔画像データを新規登録したり、既に登録されている顔画像データを更新したりする。図8は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの登録データ記憶部に記憶されるデータを説明する図である。図8に示すように、登録データ記憶部130は、セキュリティーを確保すべき対象となる空間Rにおける滞在を許可された人物それぞれに付与された固有の登録ID(id=1,2,3,・・・,M)と、その登録IDに対応したそれぞれの人物の顔を撮影した顔画像データを記憶している。このような登録データ記憶部130に記憶されている顔画像データは、姿勢情報モデルデータに基づかない人物判定である第2人物判定手段を実行するときに用いられ
る。
【0020】
主制御部100には通信部140が接続されており、例えば、空間Rにおける滞在を許可されていない人物が滞在しているものと判定されたときは、この通信部140を介してセキュリティー管理センター200などに通知・通報などがなされる。なお、このような通信部140を設けて通報を行うようにすることは必ずしも必須の構成ではなく、例えば単にアラート表示部を設けて、空間Rにおける滞在を許可されていない人物が滞在しているものと判定されたときは、当該表示部によってアラート表示を行うようにするだけでもよい。
【0021】
次に、本発明のセキュリティーシステムで用いる姿勢情報モデルの具体的な構成について説明する。図9は本発明の実施の形態に係るセキュリティーシステムで用いる姿勢情報モデルのネットワーク構造を示す図である。本発明のセキュリティーシステムで用いる姿勢情報モデルは、(a)図9に示すベイジアンネットワークの構造、(b)条件付き確率テーブル(図7の心理状態のデータ)、事前確率テーブル、(c)ガウス分布のパラメーター(図7における連続データに属する各項目のデータ)から構成されるものである。これらの3つのうち(a)のベイジアンネットワークの構造は全ての登録IDの人物に共通で用いられる。これに対して、(b)、(c)は学習によって登録ID個人毎のモデルデータとして記憶されたり、適宜更新されたりするようになっている。
【0022】
図9のベイジアンネットワークの構造において、□は離散ノードを、○は連続ノードを示しており、離散ノード内の数字は各ノードが取る状態の数を示している。例えば、「生理状態Ph(5)」は、Ph=0(平常)、Ph=1(緊張)、Ph=2(疲労)、Ph=3(興奮)、Ph=4(その他)、の5つの状態をとるものである。
【0023】
図9のネットワーク構造においては、上段に示されている現在位置(PO)、右手の位置(RH)、・・・顔の向き(FA)の各ノード及び下段に示されている右足の位置(RF)、右足の位置(LF)、・・・体の向き(BD)の各ノードが親ノードであり、これらのノードが生理状態Ph(2)のノード、行動変数DBのノードに影響を与えているものと考える。また、ネットワーク構造において、生理状態Ph(2)のノードが行動変数DBのノードに影響を与えているものと考える。すなわち、生理状態データは、人物の位置情報データ、右手の位置などの姿勢情報データから影響を受けるノードであって、行動変数は、位置情報データ、姿勢情報データ及び生理状態データから影響を受けるノードとなるネットワーク構造となっており、このネットワーク構造の因果関係は、ベイジアンネットワークによって定められている。
【0024】
ここで、ネットワーク構造で上段に示されている現在位置(PO)、右手の位置(RH)、・・・顔の向き(FA)の各ノード及び下段に示されている右足の位置(RF)、左足の位置(LF)、・・・・体の向き(BD)の各ノードは図7に示されているようにセキュリティーシステムで記憶される姿勢情報モデルデータと対応している。これらの連続データは、ガウス分布の「離散」、「平均」、「分散」の形で保有しておき、これを所定の確率に置き換える。
【0025】
図9における生理状態Ph(5)ノードは、一種の裕度として働くものであり、このノードが存在しない場合、本発明のセキュリティーシステムが有効に動作しないことがあることが分かっている。これは、現在位置(PO)、右手の位置(RH)、・・・体の向き(BD)の各ノードの状態(運転状況の状態)が一意的に決定したとしても、行動変数DBが一意的に決まるわけではないことに起因している。本発明のセキュリティーシステムでは、生理状態Ph(5)ノードを導入することによって、不確定要素を含んだ因果律を扱うことができるようになる。また、生理状態Ph(5)ノードは、本発明のセキュリテ
ィーシステムをコンピュータプログラムで実行する上で非常に重要となる。
【0026】
図10はベイジアンネットワーク構造における生理状態Ph(5)がとる状態を示す図である。図10に示すように、本実施形態においては、生理状態Ph(5)は、Ph=0(平常)、Ph=1(緊張)、Ph=2(疲労)、Ph=3(興奮)、Ph=4(その他)の5つの状態をとるものであるとしたが、本発明のセキュリティーシステムでは、生理状態Phを5以上の自然数の適当なものに設定することができる。
【0027】
次に、本発明のセキュリティーシステムによる監視処理や学習処理などのフローの概略について説明する。図11は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムによる処理のフローチャートを示す図である。なお、このようなフローチャートは、セキュリティーを確保すべき対象となる空間Rへの人物の進入が確認されたことを契機に動作するものである。
【0028】
図11において、ステップS100で本発明のセキュリティーシステムによる処理が開始されると、続いてステップS101に進み、第1人物判定処理のサブルーチンが実行される。この第1人物判定処理のサブルーチンは、姿勢情報モデルデータに基づく人物の判定処理を行うものである。
【0029】
ここで、第1人物判定処理のサブルーチンについて説明する。図12は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける第1人物判定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。ステップS200で、第1人物判定処理のサブルーチンが開始されると、次にステップS201に進み、姿勢認識処理のサブルーチンが実行される。このサブルーチンは撮像された人物の姿勢を推定するためのものである。
【0030】
ここで、この姿勢認識処理のサブルーチンについて説明する。図13は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける姿勢認識処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図13において、ステップS300で姿勢認識処理のサブルーチンが開始されると、次にステップS301に進み、予め用意しておく動きがないときの画像データ(背景画像データ)の読み込みを行う。このような背景画像データは、画像に所定時間変動がない瞬間などに取り込んで予め用意しておくものである。ステップS302では、撮像装置110による現在の撮像データの読み込みが行われる。次のステップS303では、撮像データと背景画像データの差分が作成され、ステップS304において、複数の撮像装置110からの差分情報より非背景物体(すなわち、人物)の空間内の位置(現在位置)の推定が行われる。そして、ステップS305では、姿勢推定が行われ、姿勢情報(右手の位置、左手の位置、右ひじ位置、…)の取得が行われる。ここで、姿勢推定のための手法としては、例えば、村上智基ら「自己オクルージョンを含む人物姿勢の距離画像による推定」情報処理学会第65回全国大会に開示されている技術を用いることができる。ステップS306で、元のルーチンにリターンする。
【0031】
図12に戻って、ステップS202乃至ステップS205は登録IDのid毎に確率の計算を行うループである。このループからは、全てのidにつき計算が終わると、抜けて次のステップに進むことができる。このループ中で、ステップS203では、モデルデータ記憶部120より、該当idに対応する姿勢情報モデルデータの読み込みが行われ、ステップS204では、姿勢情報モデルデータにより確率Pidを計算するサブルーチンが実行される。前記のループを抜けると、ステップS206の中のP1〜PMの中で最大のものをPmaxとする。ステップS207では、Pmaxが所定値以上であるか否かが判定され、判定結果がYESであるときにはステップS208に進み、Pmaxに対応する登録IDを戻
り値にセットし、判定結果がNOであるときにはステップS209に進み、戻り値に該当なしをセットする。ステップS210では、メインのルーチンにリターンする。
【0032】
ここで、姿勢情報モデルデータにより確率Pidを計算するサブルーチンについて説明する。図14は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける確率Pid計算処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図14において、ステップS400で確率Pid計算処理のサブルーチンが開始されると、続いてステップS401に進み、ID=idの姿勢情報モデルデータが取得され、ステップS402では、このモデルデータから一致確率演算Pidが下記の式(1)によって計算される。
【0033】
【数1】
なお、RHはノードを示し、rhはノードの値を示す。また、P(ID=id|RH=rh)とは、ノードRHがrhであるときの事後確率といい、ノードRHのパラメーターがrhであるときに、IDがidである確率を示すものである。また、PDBは式(2)によって求められるものである。
【0034】
【数2】
また、ノードPO、RH、・・・BD、DBは連続ノードであり、これらに係る量は正規分布関数Nの平均μ、分散Σ、重みから式(3)のように求めることができる。
【0035】
【数3】
ここで、Pa(PO)はPOの親ノードを示す。ステップS402に続く、ステップS4
03では、元のルーチンにリターンする。
【0036】
なお、ベイジアンネットワークにより所定の確率を導く方法については、より詳しくは、
○Jensen, F. V., “Bayesian networks and decision graphs”, Springer, 2001.
○ David C. MacKay, “Information Theory, Inference and Learning Algorithms”, Cambridge University Press, 2003.
などの記載を参照して援用するものとする。
【0037】
さて、図11に示すメインフローチャートに戻り、ステップS102では、戻り値として登録IDがあるか否かが判定される。ステップS102の判定結果がYESであるときには、登録IDを有する人物が空間Rに存在することが判明するので、ステップS109に進み処理を終了する。ステップS102の判定結果がNOであるときにはステップS103に進み、ステップS103において、第2人物判定処理のサブルーチンを実行する。このサブルーチンでは、第1判定処理による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定するものである。このような第2判定処理は、第1判定処理のバックアップのような役割を果たす。また、第2判定処理で、対象人物が登録IDを有する者であるものと判定されると、姿勢情報モデルデータの学習を行う契機ともなり得る。
【0038】
上記に示したように第1判定処理に係るステップS101、ステップS102などの処理によれば、対象となる人物の位置情報や姿勢情報を取得することができればよく、このための用途には、ズームカメラや高解像度カメラなどの高価は必要とならないので、安価によってセキュリティーシステムを構築することが可能となる。また、これまで説明したように第1判定処理は、人物の動作のクセをデータ化した姿勢情報モデルデータに基づいて人物判定を行うので、例えば、特定しようとする人物がサングラスなどをかけた場合においても、セキュリティーシステムが不能となることがない。
【0039】
ここで、第2人物判定処理のサブルーチンについて説明する。図15は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける第2人物判定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図15において、ステップS500で、第2人物判定処理サブルーチンが開始されると、続いてステップS501で、対象人物の顔の撮像データを撮像装置により取得する。なお、このとき、複数の撮像装置のうちでも高精度なもので取得した撮像データを用いることが好ましい。ステップS502乃至ステップS505は、登録ID毎の判定を行うためのループであり、id=1からid=Mまでの全登録IDのチェックの終了によりループを抜けるようになっている。当該ループ中のステップS503では、登録データ記憶部130から顔画像データの読み込みを行いステップS504で、顔画像データと撮像データとのマッチング処理を行う。このステップS504では、一般的なテンプレートマッチング等による顔認証処理技術を用いることができる。ステップS505でチェックループを抜けると、ステップS506に進み、マッチングした場合には、登録IDを戻り値に設定し、マッチングしなかった場合には、登録IDなしを戻り値に設定する。ステップS507では、もとのルーチンにリターンする。
【0040】
図11に示すメインフローチャートに戻り、ステップS104では、戻り値として登録IDがあるか否かが判定される。ステップS104の判定結果がNOであるときには、2種類の人物判定処理によっても、人物の特定ができなかったこととなるので、ステップS107に進み、通信部140を介して、セキュリティー管理センター200に通報するなどの、予め事前に設定されたい措置をとる。このステップで抽出される人物は、図1におけるCなどの人物である。
【0041】
ステップS104の判定結果がYESであるときには、登録IDを有する人物が空間Rに存在することが判明したこととなるので、通報するような措置はとらず、姿勢情報モデルデータによる人物判定処理(第1の判定処理)の失敗の原因を特定するためにステップS105に進む。
【0042】
ステップS105では、該当登録IDのデータがモデルデータ記憶部120に存在するか否かが判定される。ステップS105の判定がNOであれば、システム側が当該IDに対応する姿勢情報モデルデータをまだ学習していない(ステップS108)こととなるので、ステップS106においてモデルデータの学習処理を行う。このステップで抽出される人物は、図1におけるDなどの人物である。
【0043】
また、ステップS105の判定がYESであれば、例えば、ケガなどにより当該IDの人物の所作が変わったことが考えられるので、ステップS106に進みモデルデータの学習処理を行い、モデルデータ記憶部120のデータを更新する。ステップS106では、学習処理サブルーチンが実行され、ステップS109では処理を終了する。
【0044】
次に、学習処理サブルーチンについて説明する。図16は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける学習処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。ステップS600で、学習処理サブルーチンが開始されると、ステップS601で姿勢認識処理サブルーチンが実行されて、位置情報、姿勢情報などの取得が行われる。そして、続くステップS602で、個人モデルデータの学習処理のサブルーチンが実行され、位置情報、姿勢情報から姿勢情報モデルデータを演算し、ステップS603でリターンする。
【0045】
次に、個人モデルデータの学習処理のサブルーチンについて説明する。図17は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける個人モデルデータの学習処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。図17で、ステップS700において個人モデルデータの学習処理サブルーチンがスタートすると、次にステップS701に進み、存在すれば、IDに対応する人物のモデルデータの取り込みを行い、ステップS702で、位置情報及び姿勢情報から混合正規分布確率を演算することによってモデルデータを求める。なお、このモデルデータの作成のためには、Arthur Dempster, Nan Laird, and Donald Rubin. “Maximum likelihood from incomplete d
ata via the EM algorithm”. Journal of the Royal Statistical Society, Series B, 39(1):1−38, 1977.などに示されているEMアルゴリズムを用いるものとする。
【0046】
ステップS703では、モデルデータ記憶部120に新しい姿勢情報モデルデータを記憶し、ステップS704でリターンして元のルーチンへと戻る。
【0047】
以上のような構成のセキュリティーシステムによれば、ズームアップ用のカメラなどを必要することなく、安価なカメラシステムによってセキュリティーシステムを構築することが可能となる。
【0048】
また、上記のような構成のセキュリティーシステムによれば、特定しようとする人物がサングラスなどをかけた場合においても、セキュリティーシステムが不能とならない。
【0049】
また、上記のような構成のセキュリティーシステムによれば、第1判定手段による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第2判定手段を有するので、第1判定手段をバックアップすることが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
100・・・主制御部
110・・・撮像装置
120・・・モデルデータ記憶部
130・・・登録データ記憶部
140・・・通信部
200・・・セキュリティー管理センター
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティーを確保したい空間における監視を自動的に行うセキュリティーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりセキュリティーを確保したい空間において、当該空間を無人で監視するセキュリティーシステムが種々提案されている。例えば、特許文献1(特開2005−295469号公報)には、所定領域を監視するシステムにおいて、侵入者を的確に検知し、無人監視状態であっても、的確なアングル制御やズーミング制御を行ない、侵入者の的確な映像の録画や、低い誤報率で警報を発することの可能な監視システムが開示されている。
【特許文献1】特開2005−295469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のセキュリティーシステムでは、ズームアップ用のカメラなどが必要となり、セキュリティーシステムを構築する際に大きなコストが必要となる、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、セキュリティー確保の対象となる空間での滞在を許容された人物それぞれに付与されたIDを記憶すると共に、当該IDに応じた人物の姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータを記憶する記憶手段と、前記空間を撮像し撮像データを取得する撮像手段と、前記撮像手段によって取得された撮像データから人物の動きを抽出し当該人物の姿勢情報を推定する姿勢情報推定手段と、前記姿勢推定手段によって推定された姿勢情報と前記記憶手段に記憶される姿勢情報モデルデータとから、当該人物がIDを付与された人物である確率を算出する確率算出手段と、前記確率算出手段によって算出された確率に基づいて、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第1判定手段と、を有することを特徴とするセキュリティーシステムである。
【0005】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のセキュリティーシステムにおいて、前記第1判定手段によって、当該人物がIDを付与された人物でないと判断されたとき、前記前記第1判定手段による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第2判定手段を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に記載のセキュリティーシステムによれば、ズームアップ用のカメラなどを必要することなく、安価なカメラシステムによってセキュリティーシステムを構築することが可能となる。
【0007】
また、本発明の請求項1に記載のセキュリティーシステムによれば、特定しようとする人物がサングラスなどをかけた場合においても、セキュリティーシステムが不能とならない。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載のセキュリティーシステムによれば、前記第1判定手段による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第2判定手段を有するので、第1判定手段をバックアップすることが可能となる
。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの概念を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの概要のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムで用いられるベイジアンネットワークの概念を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの撮像装置によって取得されるデータを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの撮像データなどから認識される動作データの構造を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムのモデルデータ記憶部に記憶されるデータを説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける姿勢情報モデルデータのデータ構造を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの登録データ記憶部に記憶されるデータを説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るセキュリティーシステムで用いる姿勢情報モデルのネットワーク構造を示す図である。
【図10】ベイジアンネットワーク構造における生理状態Ph(5)がとる状態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムによる処理のフローチャートを示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける第1人物判定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける姿勢認識処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける確率Pid計算処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける第2人物判定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図16】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける学習処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図17】本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける個人モデルデータの学習処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のセキュリティーシステムにおける好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの概念を説明する図であり、図2は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの概要のブロック図である。図1において、Rは本システムでのセキュリティー確保の対象となる空間であり、A、B、C、Dはそのような空間Rに滞在している人物を表している。また、図1及び図2において、100は主制御部、110は撮像装置、120はモデルデータ記憶部、130は登録データ記憶部、140は通信部、200はセキュリティー管理センターをそれぞれ示している。
【0011】
本実施形態に係るセキュリティーシステムは、図1における空間Rのセキュリティーを確保するために、当該空間Rに滞在しているそれぞれの人物を特定するように動作するも
のである。ここで、空間Rに滞在を許容された人物については、あらかじめそれぞれ固有のID番号などを付与して登録する。さらに、このIDに対応した人物毎の動き方(動作)のクセをデータ化することによって、システムが人物判定を行うようになっている。なお、人物毎の動き方のクセに基づいて、システムが人物判定を行う判定を、本実施形態では第1の人物判定とている。また、動き方のクセなどを記録したデータは、本実施形態においては、姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータと称し、このデータを後述するようなベイジアンネットワークによるモデルに基づいて作成する。本実施形態に係るセキュリティーシステムは、姿勢情報モデルデータに基づかずに、人物判定を行う第2の人物判定手段を有している。この第2の人物判定手段については、本実施形態では、人物毎に予め登録してある顔画像データと、撮像した撮像データとを画像処理的に比較することで判定する例に基づいて説明するが、本発明のセキュリティーシステムでは、第2人物判定手段としては、その他の手法のものを用いることができる。
【0012】
ここで、本発明のセキュリティーシステムで姿勢情報モデルデータに基づく人物判定に用いるベイジアンネットワークの概要について説明する。図3は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムで用いられるベイジアンネットワークの概念を示す図である。ベイジアンネットワークとは、確率的な因果関係をグラフ構造で表現したモデルである。図3に示す各ノードX1、X2、X3、X4は確率変数を表し、それらの間の因果関係の有無を有向グラフで、また、確率変数の取りうる値のノード間での因果関係を条件付確率で表す。ノードX1とノードX2とは確率的な関係があることを、ノードX1からノードX2への矢印によって示している。ノードX2はノードX1、X3からの影響を、また、ノードX4はノードX3の影響を受ける関係となっており、このような因果関係を加味した確率テーブルが、図3中に示す条件付き確率テーブルである。これに対して、ノードX1、X3はどのノードからの影響も受けない親ノードであり、このときの確率テーブルは図中に示す事前確率テーブルのようになる。図3示すものの場合、そのグラフの構造より、全ての確率変数の結合確率はP(X1,X2,X3,X4)=P(X1)P(X2|X1,X3)P(X3)P(X4|X3)となる。ベイジアンネットワークを利用した推論においては、この結合確率の周辺化により、周辺事後確率を求めることにより行われる。このようなベイジアンネットワークに基づく確率算出の手法については、発明者らによる出願番号2008−90755号(発明の名称「セキュリティーシステム」)、出願番号2008−90777号(発明の名称「セキュリティーシステム及び運転支援方法」)に詳しく記載されているので、本明細書においてもこれら出願の内容を援用するものとする。
【0013】
さて、本実施形態に係るセキュリティーシステムは、空間Rのセキュリティーを確保するために、当該空間Rに滞在しているそれぞれの人物を特定するように動作するが、そのために空間Rの動画を撮影するための撮像装置110が設けられている。図1においては、この撮像装置110が4台設けられる例について示しているが、このような撮像装置110の設置台数はこれに限定されるものではない。したがって、本発明のセキュリティーシステムでは、2以上のn台の撮像装置110を用いて、これらn台の撮像装置110からのnの撮像データを取得することができる。図4は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの撮像装置によって取得されるデータを示す図である。
【0014】
図4に示すようなn台の撮像装置110によって取得された撮像データからは、人物の動き方に係る情報(位置情報なども含む姿勢情報)を抽出・推定して、人物毎の動き方のクセなどのデータである姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータを作成したり、或いは、前記抽出・推定した情報と、予め登録されている姿勢情報モデルデータとに基づいて、撮像データによって認識された人物を特定したりするようにしている。
【0015】
図5は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの撮像データなどから認識される動作データの構造を示す図である。図5に示すよう個人の動作データの内訳としては「
位置情報」、「姿勢情報」、「非顕在情報」に大別することができる。これらのデータのうち、「位置情報」、「姿勢情報」については、撮像装置110によって取得された撮像データからの推定が行われる。「位置情報」は対象となる人物の存在位置に関する情報であり、これは撮像データから求められる。また、「姿勢情報」の下には、「右手の位置」、「左手の位置」、「右ひじ位置」、「左ひじ位置」、「顔の向き」、「右足の位置」、「左足の位置」、「右ひざの位置」、「左ひざの位置」、「腰の位置」、「体の向き」などのデータがあり、これらは撮像データからの推定が行われる。また、「非顕在情報」には「心理状態」、「行動変数」は、撮像データなどから認識することができない情報であり、本実施形態では「心理状態」は「平静」、「緊張」、「疲労」、「興奮」、「その他」の5状態をとる分散量データであり、「行動変数」は当該人物の行動パターンを数値化した連続量データである。
【0016】
主制御部100は、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理機構である。主制御部100は、ブロック図中に示されている主制御部100と接続される各構成と協働・動作する。また、主制御部100は、本発明のセキュリティーシステムにおける種々の制御処理は、主制御部100内のROMなどの記憶手段に記憶保持されるプログラムやデータに基づいて実行されるものである。
【0017】
上記のような主制御部100には、モデルデータ記憶部120が接続されており、主制御部100は、モデルデータ記憶部120に登録、記録されている個々の人物の姿勢情報モデルデータを参照したり、或いは、新規に姿勢情報モデルデータを登録したり、既に登録されている姿勢情報モデルデータを更新したりする。
【0018】
次に、このようなモデルデータ記憶部120に記憶されているデータについて説明する。図6は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムのモデルデータ記憶部に記憶されるデータを説明する図であり、図7は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける姿勢情報モデルデータのデータ構造を示す図である。図6に示すように、モデルデータ記憶部120は、セキュリティーを確保すべき対象となる空間Rにおける滞在を許可された人物それぞれに付与された固有の登録ID(id=1,2,3,・・・,M)と、その登録IDに対応したそれぞれの人物の姿勢情報モデルデータを記憶している。図7は個々の姿勢情報モデルデータのデータ構造をより詳しく説明する図である。図7に示すように、姿勢情報モデルデータ中のデータは、概略、離散データ、連続データの2種類のデータに分類することができる。前者には「心理状態」のデータが属し、このデータは条件付き確率テーブルの形式で保有される。また、後者には「現在位置」、「右手の位置」、「左手の位置」、「右ひじ位置」、「左ひじ位置」、「頭の位置」、「顔の向き」、「右足の位置」、「左足の位置」、「右ひざの位置」、「左ひざの位置」、「腰の位置」、「体の向き」、「行動変数」の各データが属し、これらのデータはガウス分布の平均・分散・重みの形式で保有される。
【0019】
また、主制御部100には、登録データ記憶部130が接続されており、主制御部100は、登録データ記憶部130に登録、記録されている個々の人物のマッチング用の顔画像データを参照したり、或いは、マッチング用の顔画像データを新規登録したり、既に登録されている顔画像データを更新したりする。図8は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムの登録データ記憶部に記憶されるデータを説明する図である。図8に示すように、登録データ記憶部130は、セキュリティーを確保すべき対象となる空間Rにおける滞在を許可された人物それぞれに付与された固有の登録ID(id=1,2,3,・・・,M)と、その登録IDに対応したそれぞれの人物の顔を撮影した顔画像データを記憶している。このような登録データ記憶部130に記憶されている顔画像データは、姿勢情報モデルデータに基づかない人物判定である第2人物判定手段を実行するときに用いられ
る。
【0020】
主制御部100には通信部140が接続されており、例えば、空間Rにおける滞在を許可されていない人物が滞在しているものと判定されたときは、この通信部140を介してセキュリティー管理センター200などに通知・通報などがなされる。なお、このような通信部140を設けて通報を行うようにすることは必ずしも必須の構成ではなく、例えば単にアラート表示部を設けて、空間Rにおける滞在を許可されていない人物が滞在しているものと判定されたときは、当該表示部によってアラート表示を行うようにするだけでもよい。
【0021】
次に、本発明のセキュリティーシステムで用いる姿勢情報モデルの具体的な構成について説明する。図9は本発明の実施の形態に係るセキュリティーシステムで用いる姿勢情報モデルのネットワーク構造を示す図である。本発明のセキュリティーシステムで用いる姿勢情報モデルは、(a)図9に示すベイジアンネットワークの構造、(b)条件付き確率テーブル(図7の心理状態のデータ)、事前確率テーブル、(c)ガウス分布のパラメーター(図7における連続データに属する各項目のデータ)から構成されるものである。これらの3つのうち(a)のベイジアンネットワークの構造は全ての登録IDの人物に共通で用いられる。これに対して、(b)、(c)は学習によって登録ID個人毎のモデルデータとして記憶されたり、適宜更新されたりするようになっている。
【0022】
図9のベイジアンネットワークの構造において、□は離散ノードを、○は連続ノードを示しており、離散ノード内の数字は各ノードが取る状態の数を示している。例えば、「生理状態Ph(5)」は、Ph=0(平常)、Ph=1(緊張)、Ph=2(疲労)、Ph=3(興奮)、Ph=4(その他)、の5つの状態をとるものである。
【0023】
図9のネットワーク構造においては、上段に示されている現在位置(PO)、右手の位置(RH)、・・・顔の向き(FA)の各ノード及び下段に示されている右足の位置(RF)、右足の位置(LF)、・・・体の向き(BD)の各ノードが親ノードであり、これらのノードが生理状態Ph(2)のノード、行動変数DBのノードに影響を与えているものと考える。また、ネットワーク構造において、生理状態Ph(2)のノードが行動変数DBのノードに影響を与えているものと考える。すなわち、生理状態データは、人物の位置情報データ、右手の位置などの姿勢情報データから影響を受けるノードであって、行動変数は、位置情報データ、姿勢情報データ及び生理状態データから影響を受けるノードとなるネットワーク構造となっており、このネットワーク構造の因果関係は、ベイジアンネットワークによって定められている。
【0024】
ここで、ネットワーク構造で上段に示されている現在位置(PO)、右手の位置(RH)、・・・顔の向き(FA)の各ノード及び下段に示されている右足の位置(RF)、左足の位置(LF)、・・・・体の向き(BD)の各ノードは図7に示されているようにセキュリティーシステムで記憶される姿勢情報モデルデータと対応している。これらの連続データは、ガウス分布の「離散」、「平均」、「分散」の形で保有しておき、これを所定の確率に置き換える。
【0025】
図9における生理状態Ph(5)ノードは、一種の裕度として働くものであり、このノードが存在しない場合、本発明のセキュリティーシステムが有効に動作しないことがあることが分かっている。これは、現在位置(PO)、右手の位置(RH)、・・・体の向き(BD)の各ノードの状態(運転状況の状態)が一意的に決定したとしても、行動変数DBが一意的に決まるわけではないことに起因している。本発明のセキュリティーシステムでは、生理状態Ph(5)ノードを導入することによって、不確定要素を含んだ因果律を扱うことができるようになる。また、生理状態Ph(5)ノードは、本発明のセキュリテ
ィーシステムをコンピュータプログラムで実行する上で非常に重要となる。
【0026】
図10はベイジアンネットワーク構造における生理状態Ph(5)がとる状態を示す図である。図10に示すように、本実施形態においては、生理状態Ph(5)は、Ph=0(平常)、Ph=1(緊張)、Ph=2(疲労)、Ph=3(興奮)、Ph=4(その他)の5つの状態をとるものであるとしたが、本発明のセキュリティーシステムでは、生理状態Phを5以上の自然数の適当なものに設定することができる。
【0027】
次に、本発明のセキュリティーシステムによる監視処理や学習処理などのフローの概略について説明する。図11は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムによる処理のフローチャートを示す図である。なお、このようなフローチャートは、セキュリティーを確保すべき対象となる空間Rへの人物の進入が確認されたことを契機に動作するものである。
【0028】
図11において、ステップS100で本発明のセキュリティーシステムによる処理が開始されると、続いてステップS101に進み、第1人物判定処理のサブルーチンが実行される。この第1人物判定処理のサブルーチンは、姿勢情報モデルデータに基づく人物の判定処理を行うものである。
【0029】
ここで、第1人物判定処理のサブルーチンについて説明する。図12は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける第1人物判定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。ステップS200で、第1人物判定処理のサブルーチンが開始されると、次にステップS201に進み、姿勢認識処理のサブルーチンが実行される。このサブルーチンは撮像された人物の姿勢を推定するためのものである。
【0030】
ここで、この姿勢認識処理のサブルーチンについて説明する。図13は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける姿勢認識処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図13において、ステップS300で姿勢認識処理のサブルーチンが開始されると、次にステップS301に進み、予め用意しておく動きがないときの画像データ(背景画像データ)の読み込みを行う。このような背景画像データは、画像に所定時間変動がない瞬間などに取り込んで予め用意しておくものである。ステップS302では、撮像装置110による現在の撮像データの読み込みが行われる。次のステップS303では、撮像データと背景画像データの差分が作成され、ステップS304において、複数の撮像装置110からの差分情報より非背景物体(すなわち、人物)の空間内の位置(現在位置)の推定が行われる。そして、ステップS305では、姿勢推定が行われ、姿勢情報(右手の位置、左手の位置、右ひじ位置、…)の取得が行われる。ここで、姿勢推定のための手法としては、例えば、村上智基ら「自己オクルージョンを含む人物姿勢の距離画像による推定」情報処理学会第65回全国大会に開示されている技術を用いることができる。ステップS306で、元のルーチンにリターンする。
【0031】
図12に戻って、ステップS202乃至ステップS205は登録IDのid毎に確率の計算を行うループである。このループからは、全てのidにつき計算が終わると、抜けて次のステップに進むことができる。このループ中で、ステップS203では、モデルデータ記憶部120より、該当idに対応する姿勢情報モデルデータの読み込みが行われ、ステップS204では、姿勢情報モデルデータにより確率Pidを計算するサブルーチンが実行される。前記のループを抜けると、ステップS206の中のP1〜PMの中で最大のものをPmaxとする。ステップS207では、Pmaxが所定値以上であるか否かが判定され、判定結果がYESであるときにはステップS208に進み、Pmaxに対応する登録IDを戻
り値にセットし、判定結果がNOであるときにはステップS209に進み、戻り値に該当なしをセットする。ステップS210では、メインのルーチンにリターンする。
【0032】
ここで、姿勢情報モデルデータにより確率Pidを計算するサブルーチンについて説明する。図14は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける確率Pid計算処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図14において、ステップS400で確率Pid計算処理のサブルーチンが開始されると、続いてステップS401に進み、ID=idの姿勢情報モデルデータが取得され、ステップS402では、このモデルデータから一致確率演算Pidが下記の式(1)によって計算される。
【0033】
【数1】
なお、RHはノードを示し、rhはノードの値を示す。また、P(ID=id|RH=rh)とは、ノードRHがrhであるときの事後確率といい、ノードRHのパラメーターがrhであるときに、IDがidである確率を示すものである。また、PDBは式(2)によって求められるものである。
【0034】
【数2】
また、ノードPO、RH、・・・BD、DBは連続ノードであり、これらに係る量は正規分布関数Nの平均μ、分散Σ、重みから式(3)のように求めることができる。
【0035】
【数3】
ここで、Pa(PO)はPOの親ノードを示す。ステップS402に続く、ステップS4
03では、元のルーチンにリターンする。
【0036】
なお、ベイジアンネットワークにより所定の確率を導く方法については、より詳しくは、
○Jensen, F. V., “Bayesian networks and decision graphs”, Springer, 2001.
○ David C. MacKay, “Information Theory, Inference and Learning Algorithms”, Cambridge University Press, 2003.
などの記載を参照して援用するものとする。
【0037】
さて、図11に示すメインフローチャートに戻り、ステップS102では、戻り値として登録IDがあるか否かが判定される。ステップS102の判定結果がYESであるときには、登録IDを有する人物が空間Rに存在することが判明するので、ステップS109に進み処理を終了する。ステップS102の判定結果がNOであるときにはステップS103に進み、ステップS103において、第2人物判定処理のサブルーチンを実行する。このサブルーチンでは、第1判定処理による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定するものである。このような第2判定処理は、第1判定処理のバックアップのような役割を果たす。また、第2判定処理で、対象人物が登録IDを有する者であるものと判定されると、姿勢情報モデルデータの学習を行う契機ともなり得る。
【0038】
上記に示したように第1判定処理に係るステップS101、ステップS102などの処理によれば、対象となる人物の位置情報や姿勢情報を取得することができればよく、このための用途には、ズームカメラや高解像度カメラなどの高価は必要とならないので、安価によってセキュリティーシステムを構築することが可能となる。また、これまで説明したように第1判定処理は、人物の動作のクセをデータ化した姿勢情報モデルデータに基づいて人物判定を行うので、例えば、特定しようとする人物がサングラスなどをかけた場合においても、セキュリティーシステムが不能となることがない。
【0039】
ここで、第2人物判定処理のサブルーチンについて説明する。図15は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける第2人物判定処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。図15において、ステップS500で、第2人物判定処理サブルーチンが開始されると、続いてステップS501で、対象人物の顔の撮像データを撮像装置により取得する。なお、このとき、複数の撮像装置のうちでも高精度なもので取得した撮像データを用いることが好ましい。ステップS502乃至ステップS505は、登録ID毎の判定を行うためのループであり、id=1からid=Mまでの全登録IDのチェックの終了によりループを抜けるようになっている。当該ループ中のステップS503では、登録データ記憶部130から顔画像データの読み込みを行いステップS504で、顔画像データと撮像データとのマッチング処理を行う。このステップS504では、一般的なテンプレートマッチング等による顔認証処理技術を用いることができる。ステップS505でチェックループを抜けると、ステップS506に進み、マッチングした場合には、登録IDを戻り値に設定し、マッチングしなかった場合には、登録IDなしを戻り値に設定する。ステップS507では、もとのルーチンにリターンする。
【0040】
図11に示すメインフローチャートに戻り、ステップS104では、戻り値として登録IDがあるか否かが判定される。ステップS104の判定結果がNOであるときには、2種類の人物判定処理によっても、人物の特定ができなかったこととなるので、ステップS107に進み、通信部140を介して、セキュリティー管理センター200に通報するなどの、予め事前に設定されたい措置をとる。このステップで抽出される人物は、図1におけるCなどの人物である。
【0041】
ステップS104の判定結果がYESであるときには、登録IDを有する人物が空間Rに存在することが判明したこととなるので、通報するような措置はとらず、姿勢情報モデルデータによる人物判定処理(第1の判定処理)の失敗の原因を特定するためにステップS105に進む。
【0042】
ステップS105では、該当登録IDのデータがモデルデータ記憶部120に存在するか否かが判定される。ステップS105の判定がNOであれば、システム側が当該IDに対応する姿勢情報モデルデータをまだ学習していない(ステップS108)こととなるので、ステップS106においてモデルデータの学習処理を行う。このステップで抽出される人物は、図1におけるDなどの人物である。
【0043】
また、ステップS105の判定がYESであれば、例えば、ケガなどにより当該IDの人物の所作が変わったことが考えられるので、ステップS106に進みモデルデータの学習処理を行い、モデルデータ記憶部120のデータを更新する。ステップS106では、学習処理サブルーチンが実行され、ステップS109では処理を終了する。
【0044】
次に、学習処理サブルーチンについて説明する。図16は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける学習処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。ステップS600で、学習処理サブルーチンが開始されると、ステップS601で姿勢認識処理サブルーチンが実行されて、位置情報、姿勢情報などの取得が行われる。そして、続くステップS602で、個人モデルデータの学習処理のサブルーチンが実行され、位置情報、姿勢情報から姿勢情報モデルデータを演算し、ステップS603でリターンする。
【0045】
次に、個人モデルデータの学習処理のサブルーチンについて説明する。図17は本発明の実施形態に係るセキュリティーシステムにおける個人モデルデータの学習処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。図17で、ステップS700において個人モデルデータの学習処理サブルーチンがスタートすると、次にステップS701に進み、存在すれば、IDに対応する人物のモデルデータの取り込みを行い、ステップS702で、位置情報及び姿勢情報から混合正規分布確率を演算することによってモデルデータを求める。なお、このモデルデータの作成のためには、Arthur Dempster, Nan Laird, and Donald Rubin. “Maximum likelihood from incomplete d
ata via the EM algorithm”. Journal of the Royal Statistical Society, Series B, 39(1):1−38, 1977.などに示されているEMアルゴリズムを用いるものとする。
【0046】
ステップS703では、モデルデータ記憶部120に新しい姿勢情報モデルデータを記憶し、ステップS704でリターンして元のルーチンへと戻る。
【0047】
以上のような構成のセキュリティーシステムによれば、ズームアップ用のカメラなどを必要することなく、安価なカメラシステムによってセキュリティーシステムを構築することが可能となる。
【0048】
また、上記のような構成のセキュリティーシステムによれば、特定しようとする人物がサングラスなどをかけた場合においても、セキュリティーシステムが不能とならない。
【0049】
また、上記のような構成のセキュリティーシステムによれば、第1判定手段による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第2判定手段を有するので、第1判定手段をバックアップすることが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
100・・・主制御部
110・・・撮像装置
120・・・モデルデータ記憶部
130・・・登録データ記憶部
140・・・通信部
200・・・セキュリティー管理センター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティー確保の対象となる空間での滞在を許容された人物それぞれに付与されたIDを記憶すると共に、当該IDに応じた人物の姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータを記憶する記憶手段と、
前記空間を撮像し撮像データを取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された撮像データから人物の動きを抽出し当該人物の姿勢情報を推定する姿勢情報推定手段と、
前記姿勢推定手段によって推定された姿勢情報と前記記憶手段に記憶される姿勢情報モデルデータとから、当該人物がIDを付与された人物である確率を算出する確率算出手段と、
前記確率算出手段によって算出された確率に基づいて、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第1判定手段と、を有することを特徴とするセキュリティーシステム。
【請求項2】
前記第1判定手段によって、当該人物がIDを付与された人物でないと判断されたとき、前記前記第1判定手段による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第2判定手段を有する請求項1に記載のセキュリティーシステム。
【請求項1】
セキュリティー確保の対象となる空間での滞在を許容された人物それぞれに付与されたIDを記憶すると共に、当該IDに応じた人物の姿勢情報に関わる姿勢情報モデルデータを記憶する記憶手段と、
前記空間を撮像し撮像データを取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された撮像データから人物の動きを抽出し当該人物の姿勢情報を推定する姿勢情報推定手段と、
前記姿勢推定手段によって推定された姿勢情報と前記記憶手段に記憶される姿勢情報モデルデータとから、当該人物がIDを付与された人物である確率を算出する確率算出手段と、
前記確率算出手段によって算出された確率に基づいて、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第1判定手段と、を有することを特徴とするセキュリティーシステム。
【請求項2】
前記第1判定手段によって、当該人物がIDを付与された人物でないと判断されたとき、前記前記第1判定手段による判定方法と異なる方法によって、当該人物がIDを付与された人物であるか否かを判定する第2判定手段を有する請求項1に記載のセキュリティーシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−176561(P2010−176561A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20623(P2009−20623)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
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