説明

セキュリティ確認装置

【課題】 自動発信による外部への通報を可能とし、距離に依存しないセキュリティ事項に対応し、人為的操作や秘密操作を可能とした、応用用途の広いセキュリティ確認装置を提供する。
【解決手段】 到達距離が限定された電波を送信する送信局と前記到達距離内で前記電波を受信可能な受信局とを用いたセキュリティ確認装置において、前記送信局21には、前記電波の送信を継続させる送信継続手段を設け、前記受信局22には、前記電波が一定時間受信されないことをセキュリティ異常と認識する異常認識手段と、セキュリティ異常が認識されたとき前記到達距離外の遠隔へ通報を行う遠隔通報手段23とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、到達距離が限定された電波を用いて人又は物品のセキュリティ確認を行うセキュリティ確認装置に係り、特に、自動発信による外部への通報を可能とし、距離に依存しないセキュリティ事項に対応し、人為的操作や秘密操作を可能とした、応用用途の広いセキュリティ確認装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】操縦者が携帯する電波の送信局と移動体に搭載される受信局とを用い、移動体の操縦者確認を行う技術が文献(特願平11−190683号)に記載されている。この技術では、送信局は微小時間幅の信号をその時間幅より長い時間間隔で繰り返し送信し、受信局は受信された信号をトリガにしてタイマパルスを延長させ、このタイマパルスが消失したとき、移動体が移動不能になるようにしたものである。この技術によれば、操縦者又は移動体が移動して受信局が送信局からの電波到達範囲外に出たとき、受信局に信号が届かなくなり、タイマパルスが消失するので、操縦者から移動体が所定距離まで離れたときに、移動体が移動不能になる。この技術は、特定小電力無線のような間欠発信しかできない無線システムを利用するとき特に有効である。
【0003】上記文献に記載された技術は、適用される移動体として船舶や自動車などがあり、海難事故、窃盗、強盗、省エネなど多岐にわたる目的に利用できる。また、移動体の操縦者確認に限らず、送信局を携帯した人が受信局を中心とするエリアの外へ出たことを受信局で検出するという対人監視システムへの応用も可能である。
【0004】一方、近年では、バスジャックやストーカなどの事件が発生しており、セキュリティシステムの需要が高まっている。
【0005】そこで、上記技術を広く人又は物品のセキュリティシステムに適用できないかと本出願人は考えた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記技術をそのまま各種のセキュリティシステムに適用するには、以下のような問題点がある。
【0007】1)上記技術は、送信局と受信局との間の閉じられたシステムである。警察や警備会社には人が電話等を用いて通報するしかない。しかし、事故時などでは、本人が電話を使用できない状況であったり、短い電話番号であっても操作する余裕がない状況であったりするので、通報ができないことがある。
【0008】2)上記技術では、送信局からの電波到達距離の外に出るまで受信局は平常動作を維持する。つまり、人と移動体との距離が大きくなったことだけをセキュリティ異常として認識することになる。この技術では、距離に依存しないセキュリティ事項は扱うことができない。
【0009】3)人為的操作でもってセキュリティ異常時の動作を得たい場合がある。上記技術では、人為的操作でもってセキュリティ異常時の動作は得られない。また、人為的操作ができるように構成しても、強盗やバスジャックなどでは、操作をしているところが犯人に見つかると困る。
【0010】4)距離に依存するセキュリティ事項であっても、例えば、あるエリア内が危険でエリア外は安全とする場合があり、上記技術は、セキュリティ異常の認識が逆となるので、このセキュリティ事項には適用できない。
【0011】5)セキュリティ事項によっては、移動体(機械でもよい)を移動不能(運転不能)にしてしまう必要はなく、運転を止めるかどうかは運転者の判断に任せてよい場合もある。上記技術では、セキュリティ異常が認識されたら移動体を移動不能にしているので、セキュリティが回復しても運転が再開できないロック状態になる。
【0012】6)上記技術は、送信局が微弱な電波とはいえども信号送信を繰り返すので、電池消費が大きい。
【0013】そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、自動発信による外部への通報を可能とし、距離に依存しないセキュリティ事項に対応し、人為的操作や秘密操作を可能とした、応用用途の広いセキュリティ確認装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、到達距離が限定された電波を送信する送信局と前記到達距離内で前記電波を受信可能な受信局とを用いたセキュリティ確認装置において、前記送信局には、前記電波の送信を継続させる送信継続手段を設け、前記受信局には、前記電波が一定時間受信されないことをセキュリティ異常と認識する異常認識手段と、セキュリティ異常が認識されたとき前記到達距離外の遠隔へ通報を行う遠隔通報手段とを設けたものである。
【0015】前記送信局に、送信継続を中断させる送信中断手段を設けてもよい。
【0016】前記送信中断手段は、水分の付着量に応じて抵抗値が変化する電極と、この抵抗値を予め定めた所定値と比較する比較回路と、身体又は着衣に装着されて前記電極を保持する電極保持体とを有し、水分の付着により前記電極の抵抗値が所定値よりも下がったときに送信継続を停止させてもよい。
【0017】前記遠隔通報手段は、移動通信を行う電話機等へのインタフェースと、予め通報先の電話番号を記憶する記憶回路と、この記憶回路から読み出した通報先の電話番号を前記電話機等に発呼させる発呼制御回路とを有してもよい。
【0018】また、本発明は、到達距離が限定された電波を送信する送信局と前記到達距離内で前記電波を受信可能な受信局とを用いたセキュリティ確認装置において、前記送信局には、前記電波の送信を開始させる送信開始手段を設け、前記受信局には、前記電波が受信されたことをセキュリティ異常と認識する異常認識手段と、セキュリティ異常が認識されたとき前記到達距離外の遠隔へ通報を行う遠隔通報手段とを設けたものである。
【0019】また、本発明は、到達距離が限定された電波を送信する送信局と、前記到達距離内で前記電波を受信可能な受信局とを用いたセキュリティ確認装置において、前記送信局には、前記電波の送信を継続させる送信継続手段を設け、前記受信局には、前記電波が受信されたときセキュリティ異常と認識し前記電波が一定時間受信されなくなるとセキュリティが回復したと認識する異常認識手段と、セキュリティ異常が認識されている間は警報を発しセキュリティ回復が認識されると警報を停止する警報装置とを設けたものである。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0021】まず、本発明のセキュリティ確認装置に用いる送信局および受信局について説明する。図1(a)に示されるように、送信局は、電波の送信を行う送信モジュール1と、この送信モジュールに送信/停止指令を与える比較回路2と、この比較回路2への入力を取り込む差込みジャック3と、送信モジュール1に送信/停止指令を与える送信モジュール1に内蔵のスイッチ4とを備える。差込みジャック3には、センサユニット5を接続することができる。なお、送信モジュール1から送信される電波は、電波法規で定める特定小電力無線または微弱無線の電波である。
【0022】送信モジュール1は、アンテナと発振器とタイマとを内蔵し、送信指令が与えられると、微小時間幅の信号をその時間幅より長い時間間隔(例えば、2秒)で繰り返し送信し、停止指令が与えらると信号送信をしないようになっている。この送信モジュール1に対し送信開始、送信継続、送信中断を行う各手段は、比較回路2、差込みジャック3、センサユニット5など、或いは内蔵スイッチ4により実現される。内蔵スイッチ4は、オンにすることにより送信指令を出して送信開始、送信継続を行い、オフにすることにより停止指令を出して送信中断を行うようになっている。この内蔵スイッチ4は、送信局の筐体外に操作ツマミ(ボタン)を設けることができる。
【0023】比較回路2は、2つの電圧比較素子6,6と論理和回路7とからなり、それぞれの電圧比較素子6,6が比較の対象とする電圧は差込みジャック3から導かれている共通の電圧(センサ電圧と呼ぶ)であるが、それぞれの電圧比較素子6,6が基準とする電圧は異なる。一方の電圧比較素子6は、比較的高い基準電圧E1を有し、差込みジャック3が開放されてセンサ電圧が電源電圧で与えられているときにオン動作となるが、差込みジャック3にセンサユニット5が接続されてセンサ電圧が実際にセンサから得られているときにはオフ動作となる。もう一方の電圧比較素子6は、比較的低い基準電圧E2を有し、その基準電圧よりセンサ電圧が低いときにオン動作となるが、センサ電圧の方が高いときにはオフ動作となる。両方の電圧比較素子6,6がオフ動作であれば論理和回路7から送信モジュール1に送信指令が出され、いずれか一方の電圧比較素子6がオン動作であれば、論理和回路7から送信モジュール1に停止指令が出るものとする。
【0024】なお、差込みジャック3が開放されているときにセンサ電圧が接地電圧で与えられるように回路構成すれば、1つの電圧比較素子でジャック開放とセンサ低電圧とを検出することも可能である。
【0025】センサユニット5は、センサ8と差込みジャック3に嵌合するプラグ9とを有する。センサ8は、検出する事象に応じて抵抗値または電圧が変化するものであれば何でもよく、水濡れセンサ、光電センサ、圧力センサ、温度センサなどが使用できる。また、血圧計や心拍計などの計器であっても、抵抗値変化または電圧変化する出力が取り出せる計器であれば、センサ8として使用することができる。センサユニット5の具体的な構造は後述する。
【0026】次に、図1(b)に示されるように、受信局は、電波の受信を行う受信モジュール11と、この受信モジュール11の出力に基づきセキュリティ異常/回復信号を出力する論理回路12と、セキュリティ異常/回復信号の電流を増幅するドライバ13と、ドライバ13で作動される接点14と、動作モードを切り換える受信モジュール11に内蔵のスイッチ15からなる。この接点14は、遠隔通報手段や警報装置や前記文献に記載されている移動不能化手段などの接続機器の入力となるものである。この接点14は、受信局内でなく接続機器に設けてもよい。受信局に接続される接続機器のうち遠隔通報手段については後述する。警報装置(図8参照)は、ブザー、サイレンなどである。移動不能化手段は、エンジン停止、エンジン強制アイドル、ブレーキ作動、転舵などを行うアクチュエータである。
【0027】受信モジュール11は、アンテナと検波器とタイマとを内蔵し、送信局からの信号が受信されたとき、受信された信号をトリガにして前記繰り返し送信時間間隔より長い時間間隔(例えば、3秒)のタイマパルスを立ち上げ、再トリガによってタイマパルスを延長させる動作モードと、送信局からの信号が受信されるとレベル信号を発生する動作モードとを有する。動作モードは、受信モジュール11に内蔵のスイッチ15により設定することができる。論理回路12は、受信モジュールからのタイマパルスやレベル信号を元にセキュリティ異常/回復信号を生成することになる。受信モジュール11及び論理回路12は異常認識手段を構成するもので、セキュリティシステムの構成に応じて、電波が一定時間受信されないことをセキュリティ異常と認識する場合、電波が受信されたときセキュリティ異常と認識し、電波が一定時間受信されなくなるとセキュリティが回復したと認識する場合、電波が受信されたことをセキュリティ異常と認識する場合などがある。
【0028】ドライバ13は、例えば、トランジスタとリレーコイルとから構成される。
【0029】遠隔通報手段は、送信局・受信局よりも距離の長い通信が可能なものである。ここでは、携帯電話等の移動通信を利用した遠隔通報手段について説明する。図2に示されるように、セキュリティ確認装置は、送信局21と受信局22と遠隔通報手段23と携帯電話機24とを使用する。携帯電話機24は電話機能を持つパソコンでも代用できる。遠隔通報手段23は、携帯電話機24のモバイル用入出力に適合したインタフェース25と、予め通報先の電話番号を記憶する記憶回路26と、この記憶回路26から読み出した通報先の電話番号を携帯電話機24に発呼させる発呼制御回路27とからなる。遠隔通報手段23は、論理回路12のセキュリティ異常/回復信号で起動させるようになっている。遠隔通報手段23は、受信局22と一体化してもよい。
【0030】受信局22は、図3に示されるように、携帯電話機24を装着可能な筐体31の中に収容するとよい。また、この筐体31の中に充電式電池を収容し、移動体の内部電源や商用電源から充電できるようにしてもよい。32は、商用電源から充電するためのプラグである。33は接点出力を外部に取り出すためのコネクタである。
【0031】次に、水濡れセンサを用いたセンサユニットを説明する。
【0032】まず、水濡れセンサは、図4に示されるように、水分の付着量に応じて抵抗値が変化する電極41と、身体又は着衣に装着されて電極41を保持する電極保持体42とからなる。電極41は、2つの導体を所定幅のギャップ43を隔てて並べたものである。電極保持体42は、樹脂等の非導体を名札大の板状に形成し、片面に電極41となる導体を取り付け、反対面にクリップ、安全ピン等の装着具44を取り付けたものである。この水濡れセンサは、名札と同じように、着衣に装着することができる。電極保持体42は、電極41の上部で折り返し45を設けてもよい。この折り返し45は、波しぶきや雨が電極41にかかるのを防止するものである。
【0033】この水濡れセンサは、電極41に水分が付着しないときは無限大の抵抗値または図1(a)のようにセンサ8の並列抵抗による大きい抵抗値を示し、電極41に少量の水分が付着したときはその付着量に応じて小さい抵抗値を示し、電極41が水没した状態ではさらに小さい抵抗値を示す。ギャップ43の幅によっても抵抗値は異なる。そこで、センサ感度はギャップ幅で調節する。即ち、電極41に少量の水分が付着した程度では送信局の電圧比較素子6に入力されるセンサ電圧が基準電圧より低くならず、電極41が水没した状態のときにセンサ電圧が基準電圧より低くなるようにギャップの幅を決める。海水の場合について実験的に得たギャップ幅は5mmである。水分が海水か淡水かによって抵抗値は異なるので、淡水の場合は適切なセンサ感度を示すギャップ幅が若干異なる。また、電圧比較素子6の基準電圧によってもセンサ感度が変えられる。
【0034】水濡れセンサを用いたセンサユニットは、図5に示されるように、水濡れセンサ51と、水濡れセンサ51に一体的に繋がっているケーブル52と、プラグ9に一体的に繋がっているケーブル53と、送信局21の差込みジャックに嵌合するプラグ9とからなる。水濡れセンサ側ケーブル52とプラグ側ケーブル53とは、コネクタ54によって着脱自在に構成されている。この構成は、本人が手で引き抜くのを容易にするためのものである。
【0035】図示のように、送信局21を着衣のポケット等に収容し、水濡れセンサ51は作業の邪魔にならない位置に装着する。また、波しぶきや雨が電極にかかるのを防止する目的で、水濡れセンサ51を着衣の内側に装着してもよい。
【0036】以下、本発明を用いた具体的なセキュリティシステムを説明する。
【0037】図6に示したセキュリティシステムは、モータボートから操縦者が水中に転落したときに、モータボート停止と海上保安庁への通報とを行うものである。操縦者Hは、センサユニット5と送信局21とを携帯する。センサユニット5の装着方法は図5のとおりである。モータボートMには、受信局22、遠隔通報手段23、携帯電話機24を搭載する。図3のような筐体31がモータボートM内に固定されているとよい。受信局22の接点出力は、モータボートMのモータ停止回路に挿入しておく。電波到達距離は数十mとする。
【0038】操縦者HがモータボートMを操縦するとき、送信局21の内蔵スイッチ4をオンにしておく。これにより、送信局21は微小時間幅信号の繰り返し送信を継続する。一方、受信局22の内蔵スイッチ15でタイマパルスの動作モードを設定しておく。これにより、送信局21からの信号が繰り返し受信局22に受信されるので、セキュリティが確認され、モータボートMのモータは停止しない。
【0039】操縦者Hが水中に転落したとき、操縦者Hは、ケーブル52またはケーブル53を掴んで引っ張る。コネクタ54はプラグ9より抜けやすくなっているので、コネクタ54が抜けることになる。コネクタ54が抜けたことで、プラグ9が抜けたのと同じ効果が生じる。即ち、差込みジャック3が開放されて比較回路2の電圧比較素子6がオン動作となり、送信モジュール1に停止指令が出る。これにより、送信局21が信号送信を中断する。受信局22では、信号が一定時間受信されないことによりタイマパルスが消失し、セキュリティ異常が認識される。
【0040】操縦者Hがケーブルを掴めないような状況であっても、水濡れセンサ51が水没しているため、比較回路2のもうひとつの電圧比較素子6がオン動作となり、送信モジュール1に停止指令が出るので、セキュリティ異常が認識される。
【0041】受信局22は、セキュリティ異常を認識したとき、モータボートMのモータを停止させると共に、遠隔通報手段23にセキュリティ異常信号を送る。
【0042】このとき、遠隔通報手段23は、記憶回路26から通報先の電話番号を読み出し、発呼制御回路27により携帯電話機24に発呼させる。通報先は、海上保安庁の緊急番号である118番が設定されているものとする。このときのための通報内容も記憶回路26に記憶させておくとよい。通報内容は、船舶登録名称又は番号、操縦者氏名などである。発信者電話番号は、ナンバーディスプレイを利用して知らせることができる。また、通報内容に位置情報が含まれていると好ましい。そこで、携帯電話機24又は遠隔通報手段23にはGPS等による測位機能を持たせるとよい。
【0043】図6のセキュリティシステムによれば、センサユニット5の引き抜きか水濡れセンサ51の作動かにより、セキュリティ異常が認識され、さらに、これらの送信中断手段が作動しなかった場合でも、受信局22が送信局21から数十mのエリア外に出れば信号が一定時間受信されないのでセキュリティ異常が認識されるという、三重の判断が可能である。また、セキュリティ異常が認識されたときモータボートMが停止されるだけでなく、海上保安庁への通報が自動発信で行われるので、迅速な救援活動が期待できる。
【0044】次に、図7に示したセキュリティシステムは、駐車中の車両を盗む窃盗、運転者から車両を奪う強盗などに対し本来の運転者Hが意図的にセキュリティ異常を発信することができるようにしたものである。運転者Hは、送信局21を携帯する。自動車Cには、受信局22、遠隔通報手段23、携帯電話機24を搭載する。受信局22の接点出力は、エンジンの強制停止回路に接続しておく。電波到達距離は数百mとする。
【0045】予め送信局21の内蔵スイッチ4をオンにしておく。これにより、送信局21は微小時間幅信号の繰り返し送信を継続する。一方、受信局22の内蔵スイッチ15でタイマパルスの動作モードを設定しておく。これにより、運転者Hが乗車して平常の運転を行っているときには、送信局21からの信号が繰り返し受信局22に受信されるので、セキュリティが確認され、自動車Cのエンジンが強制停止されることがない。路上駐車などで運転者Hが自動車Cから電波到達距離以上離れるときには、送信局21を電波到達距離以内の場所に設置する。このとき送信局21を充電可能に構成してもよい。
【0046】窃盗や強盗により運転者Hが地上に残された状態で自動車Cが走り去るとき、受信局22が送信局21から数百mのエリア外に出ればセキュリティ異常が認識されるので、エンジンが強制停止される。同時に、遠隔通報手段23は、予め設定された110番または警備会社を通報先とし携帯電話機24に発呼させる。
【0047】送信局21から数百mを電波到達距離としたのは、ある程度の逃走距離を許容して運転者Hの安全を確保するためである。運転者Hの安全が既に確保されている場合は、運転者Hは、積極的に送信局21の内蔵スイッチ4をオフにする。これによりエリア外への逃走以前にエンジンの強制停止及び外部への通報が可能となる。
【0048】次に、図8に示したセキュリティシステムは、クレーン等の重機の稼働エリアに作業者が立ち入ったときに警報を出すものである。重機Jには受信局22と警報装置81とを搭載し、受信局22の接点出力を警報装置81に接続しておく。送信局21は地上の作業者Wの全員に携帯させる。例えば、送信局21をヘルメットに取り付けるとよい。重機Jの運転者は送信局21を持たない。電波到達距離は、重機Jの稼働エリア程度に設定する。
【0049】予め送信局21の内蔵スイッチ4をオンにしておく。これにより、送信局21は微小時間幅信号の繰り返し送信を継続する。一方、受信局22の内蔵スイッチ15でタイマパルスの動作モードを設定しておく。
【0050】作業者Wが重機Jの稼働エリアに立ち入ると、受信局22は、電波が受信されるのでセキュリティ異常と認識してセキュリティ異常信号を警報装置81に出力する。警報装置81より警報が奏鳴されるので、作業者Wは重機Jに近寄り過ぎていることがわかり、自主的に稼働エリアから退出する。受信局22は、電波が一定時間受信されなくなるとセキュリティが回復したと認識して回復信号を警報装置81に出力する。警報装置81は警報を停止する。この間、重機Jの運転者は、警報によって注意が喚起されるので、稼働エリア内の作業者Wに注意を払いながら重機Jの運転を続行することができる。重機Jが運転不能になることはないので、作業の効率を損なうことがない。
【0051】次に、図9に示したセキュリティシステムは、バスジャックの際に運転者が秘密の操作で通報を行うものである。運転者Hは送信局21を携帯する。バスBには、受信局22、遠隔通報手段23、携帯電話機24を隠れた場所に搭載する。受信局22は、エンジンの強制停止などの運転不能化手段は使用せず、通報の自動発呼だけを行う。
【0052】送信局21の内蔵スイッチ4は、平常時にオフにしておく。受信局22の内蔵スイッチ15は送信局からの信号が受信されるとレベル信号を発生する動作モードにしておく。
【0053】バスジャックが発生した場合、運転者Hは、送信局21の内蔵スイッチ4をオンにする。これにより、送信局21は、微小時間幅信号の繰り返し送信を開始する。受信局22は、電波が受信されたことをセキュリティ異常と認識し、レベル信号を発生する。このレベル信号は、遠隔通報手段23にセキュリティ異常信号として出力される。遠隔通報手段23は、記憶回路26から通報先の電話番号を読み出し、発呼制御回路27により携帯電話機24に発呼させる。通報先は、バス会社、警備会社、警察などである。通報内容は、バスジャック発生を意味するコード、車両番号、運転者氏名、位置情報などである。
【0054】仮に、運転者Hが携帯電話機24を直接操作して通報しようとすると、携帯電話機を手に持ち、短縮番号を操作して電話番号を表示し、さらに発呼の操作を行う必要があり、犯人に気付かれてしまう。また、電話がつながっても声を出すことができない。また、ポケットなどに入れている携帯電話機は取り上げられてしまうことがある。このセキュリティシステムでは、送信局21の内蔵スイッチ4を操作するだけで自動発呼が行われるので、また、声を出さずに所定の通報内容が自動通報されるので、犯人に気付かれることがない。さらに、このセキュリティシステムでは、センサユニット5を使用しないので、送信局21は、送信モジュール1と電池とから構成することができ、携帯電話機よりも小さいサイズに形成することができ、着衣や帽子に装着しても目立たなくできる。従って、秘密のうちに内蔵スイッチ4を操作することが容易となる。
【0055】次に、図10に示したセキュリティシステムは、ストーカまたは痴漢の際に被害者が秘密の操作で通報を行うものである。人Hが送信局21、受信局22、携帯電話機24を携帯する。送信局21は手に持つか着衣に装着するのがよいが、受信局22及び携帯電話機24はハンドバッグ等に入れておけばよい。
【0056】送信局21の内蔵スイッチ4は、平常時にオフにしておく。受信局22の内蔵スイッチ15は送信局からの信号が受信されるとレベル信号を発生する動作モードにしておく。
【0057】ストーカまたは痴漢に遭遇した場合に、人Hは、送信局21の内蔵スイッチ4をオンにする。これにより、送信局21は、微小時間幅信号の繰り返し送信を開始する。受信局22は、電波が受信されたことをセキュリティ異常と認識し、レベル信号を発生する。このレベル信号は、遠隔通報手段23にセキュリティ異常信号として出力される。遠隔通報手段23は、記憶回路26から通報先の電話番号を読み出し、発呼制御回路27により携帯電話機24に発呼させる。通報先は、警備会社、警察などである。通報内容は、ストーカまたは痴漢発生を意味するコード、氏名、位置情報などである。
【0058】このセキュリティシステムでは、センサユニット5を使用しないので、送信局21は、送信モジュール1と電池とから構成することができ、携帯電話機よりも小さいサイズに形成することができ、手に持っても着衣に装着しても目立たなくできる。従って、秘密のうちに内蔵スイッチ4を操作することが容易となる。
【0059】次に、図11に示したセキュリティシステムは、老人徘徊の際に自動通報を行うものである。送信局21は、自宅、老人ホーム、病院等に固定的に設置する。対象者Hが受信局22及び携帯電話機24を携帯する。
【0060】予め送信局21の内蔵スイッチ4をオンにしておく。これにより、送信局21は微小時間幅信号の繰り返し送信を継続する。一方、受信局22の内蔵スイッチ15でタイマパルスの動作モードを設定しておく。これにより、対象者Hがエリア内に居るときには、送信局21からの信号が繰り返し受信局22に受信されるので、セキュリティが確認され、通報は行われない。対象者Hがエリア外に出てしまうと、受信局22では、信号が一定時間受信されないためセキュリティ異常が認識される。遠隔通報手段23は、記憶回路26から通報先の電話番号を読み出し、発呼制御回路27により携帯電話機24に発呼させる。通報先は、自宅、老人ホーム、病院、警備会社などである。
【0061】前述の文献に記載された対人監視システムでは、対象者Hに送信局21を携帯させたので、固定されている受信局22では、対象者Hがエリア外に出たということしか判断できないが、本発明のシステムでは、対象者Hに受信局22を携帯させ、携帯電話機24で自動的に通報するようにしたので、通報先では対象者Hの居場所や状況が分かりやすくなる。例えば、通報先から通話で対象者Hに呼び掛けることができる。また、測位機能付きの携帯電話機24であれば、位置情報を通報できるので、通報先のパソコン25において居場所を表示することも可能になる。
【0062】
【発明の効果】本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0063】(1)受信局にて携帯電話の自動発信によにり所轄官署や警備会社に通報できるので、本人が電話を使用できない状況でも通報が可能である。
【0064】(2)送信局で電波の送信を継続し、受信局で電波が受信されないことを異常と認識する場合でも、センサの動作で送信中断ができるので、距離に依存しないセキュリティ事項を扱うことができる。
【0065】(3)送信局の操作で送信中断や送信開始を行うことで受信局での携帯電話の自動発信が行われるので、人為的操作や秘密操作が可能になる。
【0066】(4)送信局で電波の送信を継続し、受信局で電波が受信されたことを異常と認識するので、電波到達範囲内の危険を知らせることができる。
【0067】(5)送信局で電波の送信を継続し、受信局で電波が受信されたとき異常と認識し、受信されなくなると回復と認識するので、ロック状態にならない。また、異常が認識されている間は警報を発するだけなので、運転の継続を人が判断できる。
【0068】(6)送信局で電波の送信を開始し、受信局で電波が受信されたとき異常と認識するようにしたので、電池寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す送信局および受信局の回路構成図である。(a)が送信局、(b)が受信局を示す。
【図2】図1の送信局・受信局を用いたセキュリティ確認装置の全体構成図である。
【図3】図1の受信局の外観図である。
【図4】本発明に使用する水濡れセンサの構造図である。(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】水濡れセンサを用いたセンサユニットの外観図である。
【図6】本発明を用いた水難セキュリティシステムの概念図である。
【図7】本発明を用いた自動車セキュリティシステムの概念図である。
【図8】本発明を用いた重機セキュリティシステムの概念図である。
【図9】本発明を用いたバスセキュリティシステムの概念図である。
【図10】本発明を用いたストーカセキュリティシステムの概念図である。
【図11】本発明を用いた対人監視システムの概念図である。
【符号の説明】
1 送信モジュール
2 比較回路
3 差込みジャック
4 内蔵スイッチ
5 センサユニット
11 受信モジュール
12 論理回路
13 ドライバ
14 接点
15 内蔵スイッチ
21 送信局
22 受信局
23 遠隔通報手段
24 携帯電話機器
41 電極
42 電極保持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 到達距離が限定された電波を送信する送信局と前記到達距離内で前記電波を受信可能な受信局とを用いたセキュリティ確認装置において、前記送信局には、前記電波の送信を継続させる送信継続手段を設け、前記受信局には、前記電波が一定時間受信されないことをセキュリティ異常と認識する異常認識手段と、セキュリティ異常が認識されたとき前記到達距離外の遠隔へ通報を行う遠隔通報手段とを設けたことを特徴とするセキュリティ確認装置。
【請求項2】 前記送信局に、送信継続を中断させる送信中断手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のセキュリティ確認装置。
【請求項3】 前記送信中断手段は、水分の付着量に応じて抵抗値が変化する電極と、この抵抗値を予め定めた所定値と比較する比較回路と、身体又は着衣に装着されて前記電極を保持する電極保持体とを有し、水分の付着により前記電極の抵抗値が所定値よりも下がったときに送信継続を停止させることを特徴とする請求項2記載のセキュリティ確認装置。
【請求項4】 前記遠隔通報手段は、移動通信を行う電話機等へのインタフェースと、予め通報先の電話番号を記憶する記憶回路と、この記憶回路から読み出した通報先の電話番号を前記電話機等に発呼させる発呼制御回路とを有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のセキュリティ確認装置。
【請求項5】 到達距離が限定された電波を送信する送信局と前記到達距離内で前記電波を受信可能な受信局とを用いたセキュリティ確認装置において、前記送信局には、前記電波の送信を開始させる送信開始手段を設け、前記受信局には、前記電波が受信されたことをセキュリティ異常と認識する異常認識手段と、セキュリティ異常が認識されたとき前記到達距離外の遠隔へ通報を行う遠隔通報手段とを設けたことを特徴とするセキュリティ確認装置。
【請求項7】 到達距離が限定された電波を送信する送信局と、前記到達距離内で前記電波を受信可能な受信局とを用いたセキュリティ確認装置において、前記送信局には、前記電波の送信を継続させる送信継続手段を設け、前記受信局には、前記電波が受信されたときセキュリティ異常と認識し前記電波が一定時間受信されなくなるとセキュリティが回復したと認識する異常認識手段と、セキュリティ異常が認識されている間は警報を発しセキュリティ回復が認識されると警報を停止する警報装置とを設けたことを特徴とするセキュリティ確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2002−24972(P2002−24972A)
【公開日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−215887(P2000−215887)
【出願日】平成12年7月12日(2000.7.12)
【出願人】(592003072)株式会社森公 (1)
【Fターム(参考)】