説明

センサ用信号送信装置及びセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニット

【課題】 複数のセンサ9a、15a、15bの検出信号を、1本の信号伝達用ハーネス21により送受信する。このセンサの数が多かったり、この数が変わった場合でも、新たな設計や特別の信号処理が必要にならず、優れた汎用性を有し、コストを抑えられる構造を実現する。
【解決手段】 データビットが互いに異なる、D/Aコンバータ24の各入力端子25a、25b、25cに、各センサ9a、15a、15bの検出信号を、ディジタル信号として入力する。上記D/Aコンバータ24は、これら各センサ9a、15a、15bの検出信号を合成し、単一のアナログ信号としてから、単一の信号伝達用ハーネス21を通じてA/Dコンバータ26に送る。このA/Dコンバータ26は、この信号伝達用ハーネス21から送り込まれる上記単一のアナログ信号を元のディジタル信号に変換して、その変換結果を、データビットが互いに異なる複数の出力端子27a、27b、27cより送り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係るセンサ用信号送信装置は、自動車や鉄道車両等の各種車両の車輪の回転支持部、或いは、各種工作機械の主軸や各種産業機械の回転軸等の回転支持部に組み込んだ複数のセンサの検出信号を、この回転支持部から離れた部分に設置した制御器に送信する為に利用する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道車両の走行速度を求めたり、或いは鉄道車両の車輪が偏摩耗するのを防止する為の滑走制御を行なう為には、車輪の回転速度を検出する必要がある。更には、車輪を支持する転がり軸受ユニット部分に剥離等の異常が発生した場合に、この異常が、焼き付き等の、より重大な故障に結び付くのを防止する為には、この異常に伴って生じる温度上昇や振動の増大を検知すべく、上記転がり軸受の温度や振動を検出する必要がある。この為、上記転がり軸受ユニットに、回転速度検出用センサ、温度センサ、振動センサを組み込んだセンサ付回転支持装置により、上記車輪を軸受箱等の固定部分に対し回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度並びに上記転がり軸受ユニットの温度や振動を検出する事が、近年行われる様になっている。
【0003】
図8〜9は、この様な事情に鑑みて考えられて特許文献1に記載された、センサ付回転支持装置の第1例を示している。このセンサ付回転支持装置の場合には、車軸1の外端部を軸受箱31の内側に、転がり軸受ユニットである複列円すいころ軸受ユニット2により回転自在に支持している。又、上記車軸1の外端面に磁性材製のエンドキャップ3を、ボルトにより固定している。このエンドキャップ3の一部は歯車状に形成して、当該部分を、上記車軸1の回転速度を検出する為の被検出部4としている。更に、上記複列円すいころ軸受ユニット2の外輪5にセンサユニット6を、支持環7を介して支持している。このセンサユニット6を構成するセンサホルダ8には、回転速度検出用センサ9と振動センサ10とを包埋支持している。そして、このうちの回転速度検出用センサ9の検出部を、上記被検出部4に近接対向させている。又、上記支持環7に、温度センサ11を設置している。
【0004】
上述の図8〜9に示した様なセンサ付転がり軸受ユニットの使用時には、上記回転速度検出用センサ9が、上記車軸1の回転速度に比例した周波数で変化する検出信号を出すので、この検出信号の周波数或は変化の周期により、上記回転速度を求められる。求めた回転速度は、前記滑走制御等に利用する。又、上記振動センサ10により、上記車軸1の回転に伴って上記複列円すいころ軸受ユニット2部分で発生する振動を求められる。更に、上記温度センサ11により、上記複列円すいころ軸受ユニット2を構成する外輪5の温度を求められる。そこで、上記振動或はこの温度が所定の閾値よりも大きくなった場合には、上記複列円すいころ軸受ユニット2の転がり接触部を構成する各面の何れかの部分に、剥離等の損傷が発生したとして、運転者に注意を促す警報を発する等により、焼き付き等のより重大な故障の発生を防止する。
【0005】
尚、回転速度検出用センサは、単一で設置する他、円周方向に関して位相が異なる2個所位置(例えば被検出部の1ピッチの4分の1分相互に離間した位置)に設ける事により、位相が約90度異なる信号を生成する様にし、両回転速度検出用センサの検出信号の位相に基づいて、上記車軸1の回転方向を判別する場合もある。何れの場合でも、上記回転速度検出用センサ11の検出信号は、上記回転速度に比例した周波数のパルスを発生するディジタル信号である場合と、この回転速度に比例した周波数で正弦波的に変化するアナログ信号である場合とがある。前者は、永久磁石と、ホールICや磁気抵抗素子等の磁気検出素子と、波形成形回路とを組み合わせたアクティブ型のセンサの場合に多い。これに対して、後者は、永久磁石とポールピースとコイルとを組み合わせた、パッシブ型のセンサに多い。又、上記振動センサ10や上記温度センサ11の検出信号は、振動の大きさ或は温度を表すアナログ信号とする他、予め設定した閾値を越えているか否かを「0」と「1」とで表す、ディジタル信号とする場合もある。
【0006】
又、図示はしないが、特許文献2には、鉄道車両の車軸を回転自在に支持する為の複列円すいころ軸受ユニットに回転速度センサと温度センサとを組み込む構造、並びに、1個の台車に組み込む4組の複列円すいころ軸受ユニットに組み込む4個の温度センサの検出信号を比較して、この複列円すいころ軸受ユニットの異常の有無を判定する構造に就いて記載されている。
【0007】
又、特願2004−7655号には、図10に示す様な、転がり軸受ユニットの荷重測定装置が開示されている。この先発明に係る構造の場合、静止輪である外輪5aの軸方向中間部で複列の外輪軌道12a、12bの間部分に形成した取付孔13にセンサユニット6aを、上記外輪5aの外径側から内径側に向けて挿通し、このセンサユニット6aの先端部14を、上記外輪5aの内周面から突出させている。この先端部14には、1対の公転速度検出用センサ15a、15bと、1個の回転速度検出用センサ9aとを設けている。
【0008】
そして、このうちの各公転速度検出用センサ15a、15bの検出部を、複列に配置された各転動体16a、16bを回転自在に保持した各保持器17a、17bに設けた、公転速度検出用エンコーダ18a、18bの被検出面(互いに対向する軸方向側面)に近接対向させて、各転動体16a、16bの公転速度を検出自在としている。又、上記回転速度検出用センサ9aの検出部を、回転輪であるハブ19の中間部に外嵌固定した回転速度検出用エンコーダ20の被検出面(外周面)に近接対向させて、上記ハブ19の回転速度を検出自在としている。この様な構成を有する先発明に係る転がり軸受ユニットの荷重測定装置によれば、上記外輪5aと上記ハブ19との間に加わるアキシアル荷重及びラジアル荷重を求められる。
【0009】
即ち、上述の様な先発明に係る転がり軸受ユニットのアキシアル荷重測定装置の場合、図示しない演算器が、上記各センサ15a、15b、9aから送り込まれる検出信号に基づいて、上記外輪5aと上記ハブ19との間に加わるアキシアル荷重又はラジアル荷重を算出する。例えば、このアキシアル荷重は、上記各公転速度検出用センサ15a、15bが検出する各列の転動体16a、16bの公転速度の差を求め、この差と、上記回転速度検出用センサ9aが検出する上記ハブ19の回転速度との比に基づいて算出する。又、上記ラジアル荷重は、上記各公転速度検出用センサ15a、15bが検出する各列の転動体16a、16bの公転速度の和を求め、この和と、上記回転速度検出用センサ9aが検出する上記ハブ19の回転速度との比に基づいて算出する。尚、上記各公転速度検出用センサ15a、15bの信号に基づいてアキシアル荷重と上記ラジアル荷重とのうちの一方又は双方の荷重を算出する方法は、他にも各種存在するが、この様な方法に就いては、前述の特願2004−7655号に詳しく説明されているし、本発明の要旨とも関係しないので、詳しい説明は省略する。
【0010】
以上に述べた、何れの構造の場合でも、複数のセンサから制御器に向けて、これら各センサの検出信号を送る必要がある。例えば、鉄道車両には、多数の車輪を支持する為に多数の転がり軸受ユニットが存在するし、自動車の場合でも、4個の車輪を支持する為に4個の転がり軸受ユニットが存在する。そして、これら各転がり軸受ユニットに、それぞれ複数個ずつ組み込まれたセンサから、それぞれ車体側に設置した制御器に向けて、検出値を表す(或は閾値を越えたか否かを表す)信号を送る必要がある。工作機械や産業機械の回転支持部に組み込んだ転がり軸受ユニットの場合も同様である。
【0011】
上述の様に、多数のセンサの検出信号を、それぞれ別個のハーネス(或は複数本のハーネスを束ねたケーブル)により上記制御器に送る様にした場合、必要となるハーネスの数が多くなり、配線作業の煩雑化や重量の増大を招く。この様な事情に鑑みて特許文献3、4には、複数種類の信号を合成して1本のハーネスにより送る送信方法に関する発明が記載されている。このうちの特許文献3に記載された発明の場合には、特別に設計されたスイッチング回路と抵抗回路とを組み合わせる事により、振幅及びオフセットが異なる種々のパルス列信号を作り出して、複数の信号を1本のハーネスに送り込み、後からこれらの信号を分離自在としている。更に、特許文献4には、上記特許文献3に記載された方法に加え、複数のセンサのアナログ信号を加算して送信し、これら各信号の周波数の違いを利用して、受信した合成信号をローパスフィルタとハイパスフィルタとで分離する方法が記載されている。
【0012】
【特許文献1】特開2003−13948号公報
【特許文献2】特開2003−262220号公報
【特許文献3】特開2002−288776号公報
【特許文献4】特開2004−94393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献3、4に記載された様なセンサの検出信号の送信方法は、送信すべき信号の数が少数に限定されたり、合成すべき信号の周波数に顕著な差が存在する事が条件とされたり、或いは、送受信回路に特別な設計を要したりする。この為、1本のハーネスでその検出信号を送信すべきセンサの数が限定されたり、このセンサの数が変わった(増減した)場合に、新たな設計や特別の信号処理が必要になる等、汎用性に乏しく、送受信回路のコストが嵩むと言った問題がある。
本発明のセンサ用信号送信装置及びセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニットは、この様な不都合を解消すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のセンサ用信号送信装置及びセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニットのうち、請求項1に記載したセンサ用信号送信装置は、前述の特許文献3、4に記載される等により従来から知られているセンサ用信号送信装置と同様に、それぞれが測定値を表すデータを検出信号として送り出す複数のセンサと、これら各センサへの電力供給を行なう為の電力供給路と、これら各センサから送り出される上記検出信号の送信を行なう信号伝達路とを備える。
特に、請求項1に記載したセンサ用信号送信装置に於いては、D/Aコンバータを組み込んだ送信回路と、A/Dコンバータを組み込んだ受信回路とを備える。
このうちのD/Aコンバータは、データビットが互いに異なる複数の入力端子を備えたものである。
そして、上記D/Aコンバータの各入力端子に上記各センサの検出信号が、少なくともこれら各入力端子に入力される時点で、ディジタル信号として入力されている。
又、上記D/Aコンバータは、上記各入力端子から入力された上記各センサの検出信号を合成して、単一のアナログ信号としてから出力する機能を有する。
又、上記送信回路は、上記D/Aコンバータにより合成された単一のアナログ信号を、単一の上記信号伝達路に送り出す。
更に、上記A/Dコンバータは、上記信号伝達路から単一の入力端子に送り込まれる上記単一のアナログ信号を、D/Aコンバータで変換する以前の元のディジタル信号に変換して、その変換結果を、データビットが互いに異なる複数の出力端子より送り出す機能を有する。
【0015】
一方、請求項5に記載したセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニットは、転がり軸受ユニットと、この転がり軸受ユニットに組み付けられた複数個のセンサと、これら各センサの検出信号を送信する為のセンサ用信号送信装置とを備える。
このうちの転がり軸受ユニットは、互いに同心に配置された静止輪及び回転輪と、これら静止輪及び回転輪の表面のうちで互いに対向する部分に形成された静止側軌道と回転側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備える。
又、上記各センサは、上記転がり軸受ユニットの構成部材の状態を測定するものである。
そして、上記センサ用信号送信装置は、上述の様な請求項1に記載したセンサ用送信装置である。
【発明の効果】
【0016】
上述の様に本発明のセンサ用信号送信装置及びセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニットの場合には、複数のセンサの検出信号に対応する複数のディジタル信号を、D/Aコンバータに設けた複数の入力端子のうち、データビットが互いに異なる端子に入力する。すると、このD/Aコンバータは、上記複数のディジタル信号を、例えば階段状のアナログ信号に変換してから、1本のハーネス等、単一の信号伝達路に送り出す。そして、この信号伝達回路からこのアナログ信号を受信したA/Dコンバータは、このアナログ信号を、上記D/Aコンバータにより変換される以前の(元の)複数のディジタル信号に再生してから、その変換結果を、データビットが互いに異なる複数の出力端子より送り出す。この為、これら各出力端子から取り出したディジタル信号を、必要に応じて適切な処理を加えてから、上記各センサの検出信号を処理、利用する制御器に送れば、これら各センサの測定値に応じた適切な制御を行なえる。
【0017】
上述の様に本発明のセンサ用信号送信装置及びセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニットよれば、送信回路と受信回路との間に設ける信号伝達路は、1本のみで良い。又、これら送信回路及び受信回路は、データビットが互いに異なる複数の端子を有するD/Aコンバータ又はA/Dコンバータを設ける事で、簡単に構成できる。この様なD/Aコンバータ及びA/Dコンバータは、従来から市販されている汎用品を使用できる。又、データビットが互いに異なる端子を数多く有する、これら各コンバータも、安価に得られる。そして、送信すべき信号の数や、合成すべき信号の周波数に関係なく、又、送受信回路に特別な設計を要する事なく、単一の信号伝達路(1本のハーネス)で複数個のセンサの検出信号を送信できる。又、このセンサの数が変わった場合に、新たな設計や特別の信号処理が不要であるので、優れた汎用性を有し、送受信回路のコスト低減を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
請求項1に記載したセンサ用信号送信装置を実施する場合に、例えば、請求項2に記載した様に、複数のセンサとして、それぞれ、測定値を表すデータをパルス列の検出信号として送り出すディジタル式のセンサを使用する。
この様な場合には、これら各センサの検出信号を、特に処理をする事なく、そのままD/Aコンバータの入力端子に入力すれば良い。従って、上記センサ用信号送信装置を最も簡略に実施できる。回転速度検出用センサや公転速度検出用センサ等として、前述した様な、波形成形回路を組み込んだアクティブ型のセンサを使用する場合には、その検出信号は、ディジタル信号として扱えるパルス信号となる。そこで、この様な場合には、上記請求項2に記載した構造を採用する事により、センサ用信号送信装置の構造の簡略化を図れる。
【0019】
或は、請求項1に記載したセンサ用信号送信装置を実施する場合に、例えば、請求項3に記載した様に、複数のセンサとして、それぞれ、測定値を表すデータをアナログ検出信号として送り出すアナログ式のセンサを使用する。この場合には、これら各センサとD/Aコンバータの入力端子との間にそれぞれ、上記アナログ検出信号をパルス幅変調信号に変換する変換器を設ける。そして、これら各変換器から出力されるパルス幅変調信号を、D/Aコンバータの各入力端子に入力する。又、受信回路に、A/Dコンバータの各出力端子から送り出されるパルス幅変調信号をアナログ信号に復調する復調器を組み込む。
温度センサや振動センサ等の状態量の変化を連続的に測定するセンサの検出信号は、アナログ信号とならざるを得ない場合が多い。この様な場合でも、これら各センサと上記D/Aコンバータの入力端子との間に上記変換器をそれぞれ設ける事で、上述した請求項2に記載した様に、ディジタル式のセンサを使用する場合と同様に、複数のセンサの検出信号を合成して単一の信号伝達路に送り込み、受信回路側に設けたA/Dコンバータの複数の出力端子に送り出せる。そして、このA/Dコンバータの各出力端子から送り出されるディジタル信号を復調器でアナログ信号に戻せば、上記各センサの検出信号を利用する制御を適切に行なえる。
【0020】
或は、請求項1に記載したセンサ用信号送信装置を実施する場合に、例えば、請求項4に記載した様に、複数のセンサのうちの一部のセンサを、測定値を表すデータをパルス列の検出信号として送り出すディジタル式のセンサとし、残りのセンサを、測定値を表すデータをアナログ検出信号として送り出すアナログ式のセンサとする。そして、この残りのセンサとD/Aコンバータの入力端子との間に、上記アナログ検出信号をパルス幅変調信号に変換する変換器を設け、この変換器から出力されるパルス幅変調信号をD/Aコンバータの何れかの入力端子に入力する。又、受信回路の一部で上記アナログ式のセンサから送り出される検出信号を伝達する出力端子に繋がる部分に、当該出力端子から送り出されるパルス幅変調信号をアナログ信号に復調する復調器を組み込む。
鉄道車両や自動車の車輪を支持する為の転がり軸受ユニットには、この車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出用センサと、この転がり軸受ユニット部分の温度或は振動を検出する為の温度センサ或は振動センサとを設ける場合がある。この場合に、回転速度検出用センサをディジタル式のセンサとし、温度センサ或は振動センサをアナログ式のセンサとする場合がある。上記請求項4に記載した発明によれば、この様にディジタル式のセンサとアナログ式のセンサとが混在した場合でも、これら各センサの検出信号を単一のアナログ信号に変換して単一の信号伝達路を通じて送信できる。そして、上記受信回路から取り出される信号を、上記各センサから送り出される元々の検出信号に見合う状態として、これら各センサの検出信号を利用する制御を適切に行なわせる事ができる。
【0021】
又、請求項5に記載したセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニットを実施する場合に、例えば、請求項6に記載した様に、静止輪を、内周面に複列の外輪軌道を形成した外輪とする。又、回転輪を、外周面に複列の内輪軌道を形成したハブとする。又、転動体を、これら両内輪軌道と上記両外輪軌道との間に、1対の保持器に保持され、且つ、両列同士の間で接触角を互いに逆にした状態で、複列に配置する。更に、上記両保持器の一部に、被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させた公転速度検出用エンコーダを、全周に亙って設置する。そして、複数のセンサに、これら両公転速度検出用エンコーダの被検出面にそれぞれの検出面を対向させた、1対の公転速度検出用センサを含ませる(1対の公転速度検出用センサのみの場合、及び、他のセンサも含まれる場合を含む)。
この様な請求項6に記載した構造によれば、前述の図10に示した先発明に係る転がり軸受ユニットの荷重測定装置で、1対の公転速度検出用センサ15a、15bの検出信号を(更には回転速度検出用センサ9aの検出信号も合わせて)1本のハーネスにより、車体側に設けた制御器に送信できる。
【0022】
又、請求項5に記載したセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニットを実施する場合に、例えば、請求項7に記載した様に、各センサのうちの少なくとも1個のセンサとして、転がり軸受ユニット部分の温度と振動とのうちの少なくとも一方を測定してその測定値を表す信号をアナログ検出信号として送り出す、アナログ式のセンサを使用する。
本発明の場合には、前述した様に、複数のセンサの全部がディジタル式である場合は勿論、全部がアナログ式のセンサである場合も、ディジタル式のセンサとアナログ式のセンサとが混在している場合も、これら各センサの検出信号を単一の信号伝達路により送信できる。この為、上記請求項7に記載した様に、アナログ式のセンサを組み込んだセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニットでも、本発明の作用・効果を得られる。
【実施例1】
【0023】
図1〜3は、請求項1、2、5、6に対応する、本発明の実施例1を示している。本実施例は、前述の図10に示した様な、先発明に係る荷重測定装置付転がり軸受ユニットに組み込んだ、1個の回転速度検出用センサ9aと1対の公転速度検出用センサ15a、15bとの、合計3個のセンサ9a、15a、15bの検出信号を、単一の信号伝達路である1本の信号伝達用ハーネス21により送信可能としている。尚、この信号伝達用ハーネス21と平行に、通電用ハーネス22と接地用ハーネス23とを設けて、上記各センサ9a、15a、15bに電圧を印加自在としている。これら通電用ハーネス22と接地用ハーネス23とが、特許請求の範囲に記載した電力供給路を構成する。
【0024】
上記各センサ9a、15a、15bは、前述した様な、波形成形回路を備えたアクティブ型のセンサであり、保持器17a、17bに支持固定した各公転速度検出用エンコーダ18a、18b、ハブ19に外嵌固定した回転速度検出用エンコーダ20(図10参照)の回転に対応して変化する検出信号を送り出す(発生する)。本実施例の場合、上記各センサ9a、15a、15bの検出信号は何れも、高電圧と低電圧の間で変化するパルス列信号である。
【0025】
上記荷重測定装置付転がり軸受ユニットの運転時、上記各センサ9a、15a、15bの検出信号を送る為の電路(プリント基板の電路或はハーネス)の端部は、それぞれ送信回路を構成するD/Aコンバータ24の入力端子25a、25b、25cに、それぞれ接続している。このD/Aコンバータ24は3ビットで、これら各入力端子25a、25b、25cのデータビットは互いに異なる。図示の実施例の場合、上記回転速度検出用センサ9aの検出信号を受け入れる入力端子25aはビット0、一方の公転速度検出センサ15aの検出信号を受け入れる入力端子25bはビット1、他方の公転速度検出センサ15bの検出信号を受け入れる入力端子25cはビット2である。
【0026】
この様に、互いにデータビットが異なる3個の入力端子25a、25b、25cから、上記各センサ9a、15a、15bの検出信号である3種類のディジタル信号を送り込まれた上記D/Aコンバータ24は、これら3種類のディジタル信号(パルス列信号)を合成(多重化)し、アナログ信号としてから、出力端子から前記信号伝達用ハーネス21に送り出す。この信号伝達用ハーネス21に送り込まれた上記アナログ信号は、受信回路を構成するA/Dコンバータ26に、このA/Dコンバータ26の入力端子から送り込まれる。このA/Dコンバータ26も3ビットで、それぞれがビット0、ビット1、ビット2に対応する、3個の出力端子27a、27b、27cを有する。そして、上記A/Dコンバータ26は、上記信号伝達用ハーネス21から受信した上記アナログ信号の電圧に対応する、互いに並列な3種類のディジタル信号を出力する。これら3種類のディジタル信号は、上記各センサ9a、15a、15bの検出信号に対応するので、これら各ディジタル信号を図示しない制御器に送れば、これら各センサ9a、15a、15bの検出信号を利用する制御を適切に行なわせる事ができる。
【0027】
次に、上記D/Aコンバータ24の入力端子25a、25b、25cに送り込んだ上記各センサ9a、15a、15bの検出信号を上記アナログ信号に変換し、更に上記A/Dコンバータ26によりこのアナログ信号を上記3種類のディジタル信号とする際の動作に就いて、図2〜3を参照しつつ説明する。
上記各センサ9a、15a、15bの検出信号(パルス列信号)は、高電圧のとき論理値「1」、低電圧のとき論理値「0」として、上記3ビットのD/Aコンバータ24に入力される。上記各センサ9a、15a、15bから送り込まれる3種類の検出信号は、通常は非同期であり、例えば図2の(A)に示す様な波形になっている。これら3種類の検出信号は、それぞれがビット0、1、2である入力端子25a、25b、25cから上記D/Aコンバータ24に入力されるので、それぞれ1、2、4に重み付けされる。
【0028】
即ち、このD/Aコンバータ24の入力信号のビットデータのパターンと、出力値(出力電圧)との関係は、図3の(A)に示す様になる。従って、上記図2の(A)に示した、上記各センサ9a、15a、15bから上記入力端子25a、25b、25cに送り込まれる、3種類の検出信号に対応する、上記D/Aコンバータ24の出力値は、図2の(B)に示す様な、階段状に変化する波形を有するアナログ信号となる。上記D/Aコンバータ24の最小ステップを0.5V(=4V/8)とすれば、このD/Aコンバータ24の出力信号の電圧は、0Vから3.5V(=0.5×7)の範囲で、0.5V間隔で変化する。前記信号伝達用ハーネス21には、この様な{図2の(B)に示す様な}、階段状に変化する電圧として表されるアナログ信号が送り込まれる。
【0029】
この様にして上記信号伝達用ハーネス21に送り込まれたアナログ信号を受け入れた、送信回路側に設けたA/Dコンバータ26は、入力電圧{図2の(B)に示す様に階段状に変化する電圧として表されるアナログ信号}を、0から7に相当する、3ビットのディジタルデータに変換する。上記A/Dコンバータ26は、上記入力電圧に対するA/D変換値の関係が、図3の(B)に示す様になっている。例えば、図2の(B)でビットパターンが「000」に対応する0Vが、上記信号伝達用ハーネス21に送り込まれたアナログ信号の電圧である場合に就いて見る。この信号伝達用ハーネス21に送り込まれたアナログ信号の電圧が0Vの場合、図3の(B)から、上記D/Aコンバータ26のビットパターンは「000」になる。又、図2の(B)でビットパターンが「111」に相当する3.5Vが、上記信号伝達用ハーネス21に送り込まれたアナログ信号の電圧である場合に就いて見る。この信号伝達用ハーネス21に送り込まれたアナログ信号の電圧が3.5Vの場合、図3の(B)から、上記D/Aコンバータ26のビットパターンは「111」になる。他の電圧及びビットパターンの場合でも、同様である。
【0030】
受信器側でビットパターンを再生できたならば、送信器側で当該ビットパターンを得たのと逆の動作{図2の(B)に示した合成信号から図2の(A)に示した別個の信号に分離する動作}を行なう。この結果、前記各センサ9a、15a、15bの検出信号を単一の信号伝達用ハーネス21により送受信して、受信器側でこれら各センサ9a、15a、15bの検出信号を互いに独立した信号として再生できる。
【0031】
尚、上記A/Dコンバータ26の変換時間は、上記各センサ9a、15a、15bの検出信号(パルス列信号)に許容するパルスの時間位置のばらつきの幅(許容ジッタ幅)よりも十分に短時間でなければならない。即ち、この許容ジッタ幅以内で、A/D変換を完了できるだけの処理速度を有するA/Dコンバータ26を使用する必要がある。例えば、上記各センサ9a、15a、15bの検出信号の周波数の最高値を10kHzとし、この検出信号の時間測定に関する許容ジッタ幅を、その10%とすれば、要求される許容ジッタ幅△Tは、△T=100μsec×0.1=10μsecとなる。そして、上記A/Dコンバータ26によるA/D変換時間は、この半分の5μsec以内が望ましい。現在、この程度の変換時間のA/Dコンバータ26は、容易に(十分な低コストで)入手できる。検出信号を送るべきセンサの検出信号がより高い(高速のパルス列信号となる)場合には、2のべき乗個の比較回路と論理回路を組み合わせたフラッシュ型のA/Dコンバータを利用する事もでき、この場合には、10nsec、又は、それより短時間の1、2クロックで、A/D変換が可能となる。
【実施例2】
【0032】
図4〜5は、請求項1、3、5、7に対応する、本発明の実施例2を示している。本実施例は、前述した特許文献2に記載されている様に、鉄道車両の車輪を台車に対し回転自在に支持する為、この台車と車軸との間に設けた複数の転がり軸受ユニットの異常の有無を判定する装置に、本発明を実施する場合に就いて示している。この為に本実施例の場合には、それぞれがアナログ式のセンサであって、上記各転がり軸受ユニットの温度を測定してその測定値を出力する、複数の(m個の)温度センサの検出信号を、信号伝達路である単一の信号伝達用ハーネス21aにより送受信できる様にしている。この様な本実施例の場合、この信号伝達用ハーネス21aによりそれぞれの検出信号を送受信すべき上記各温度センサの検出信号が、ディジタル信号ではなく、アナログ信号である点で、上述した実施例1と相違する。この相違に基づいて本実施例の場合には、上記各温度センサの検出信号を、それぞれがPWM変調回路である変換器28、28よりディジタル信号に変換してから、D/Aコンバータ24aの入力端子に送り込む様にしている。この点に就いて、以下に説明する。
【0033】
上記m個の温度センサのアナログ出力電圧を、それぞれTm 、Tm-1 、−−−、T1 とする。上記各変換器28、28は、温度を表す出力電圧Tm 、Tm-1 、−−−、T1 を、それぞれ三角波発生器が発生する三角波と比較して、パルス幅変調波形に変換(PWM変調)する。即ち、図5の上段に全線で示した、上記温度を表す出力電圧と、同じく細線で示した上記三角波との大小を比較し、図5の下段に示す様なディジタル信号(パルス幅変調信号)に変換する。このディジタル信号は、上記温度を表す出力電圧の値が上記三角波の値よりも大きい間は高電圧になり、同じく小さい間は低電圧になる。この様な、アナログ出力電圧をディジタル信号に変換するPWM変調は、上記m個の温度センサの出力信号の総てに就いて、互いに独立して行なう。
【0034】
この様にして、上記m個の温度センサの出力信号の総てをアナログ信号からディジタル信号に変換したならば、これらm種類のディジタル信号を、D/Aコンバータ24a→信号伝達用ハーネス21a→A/Dコンバータ26aの順で、上記各温度センサの検出信号を利用する為の制御器側に送る。これらD/Aコンバータ24a→信号伝達用ハーネス21a→A/Dコンバータ26a部分での処理は、原理的には前述した実施例1の場合と同様である。又、このA/Dコンバータ26a部分で、上記信号伝達用ハーネス21aから送られてきたアナログ信号をディジタル信号に変換した後の状態では、上記A/Dコンバータ26aに設けたm個の出力端子からは、それぞれが図5の下段に示した様なパルス幅変調信号である、m種類のPWM波が得られる。そこで、これら各PWM波を、上記A/Dコンバータ26aと共に受信器側に設けたm個の復調器により復調する。
【0035】
本実施例の場合には、図4に示す様に、上記m種類のPWM波をそれぞれローパスフィルタ29、29で平均化する事により、元の各温度センサの出力電圧Tm 、Tm-1 、−−−、T1 と等価な電圧信号を得る様に構成している。尚、上記PWM波を復調するには、変調と逆の処理により行なう事もできる。即ち、上述した変調の場合とは逆に、図5の下段に示したPWM波と上段に細線で示した三角波とに基づいて、同じく全線で示した、温度を表すアナログ電圧信号を得る。この場合には、三角波発生器を受信側に置き、発生した三角波を、上記復調に利用する他、送信側の変換器28、28(PWM変調回路)にも送る様にする事もできる。又、三角波の周期(T)は、許容ジッタ幅(△T)とアナログ信号の要求精度(ε%)とから、T≧△T÷ε×100となる様に決める事が好ましい。△T=10μsec、ε=0.1ならば、T≧10msecとなる。即ち、100Hz以下の三角波とすべきである。
【実施例3】
【0036】
図6〜7は、請求項1、4、5、7に対応する、本発明の実施例3を示している。本実施例の場合には、ディジタル検出信号を出力するセンサと、アナログ検出信号を出力するセンサとを複数個ずつ設置した構造で、これら各センサの検出信号を、信号伝達路である1本の信号伝達用ハーネス21bにより送受信する様に構成している。この様な構造は、例えば鉄道車両の車輪を支持する為の転がり軸受ユニットに組み込んだ複数種類のセンサの信号の送受信する為に有効である。即ち、本実施例の場合には、異常の有無を判定する為にこの転がり軸受ユニットの温度を測定する為の温度センサ11aと、振動を測定する為の振動センサ10aとを組み込んでいる。この振動センサ10aとしては、転がり接触部に生じた剥離等の損傷に応じて発生する加速度に比例した電圧を惹起する加速度センサを利用する。この様な加速度センサは、衝撃的な高周波数域の振動に対して敏感であるから、上記剥離等の故障を検出して警告を発し、焼き付き等のより重大な故障の発生を防止する為に有効である。この様な振動センサ10a(加速度センサ)が発生する、衝撃的な振動を表す検出信号は、ピークホールド回路30に入力している。このピークホールド回路30は、振動を表す検出信号のピーク値を検出して、このピーク値に見合う電圧をしばらく維持しながらゆっくり減衰させる機能を有する。従って、上記転がり軸受ユニットの損傷に起因する衝撃の周期より長い周期の衝撃、或いは、車輪が石に乗り上げる等により生じる突発的な衝撃を、ピークホールド信号とは区別できる。何れにしても、上記温度センサ11aと上記振動センサ10aとの検出信号そのものはアナログ信号である。そこで、これら両センサ11a、10aの検出信号は、それぞれ変換器28、28により、アナログ信号をディジタル信号に変換するPWM変調を施してから、D/Aコンバータ24bに入力している。
【0037】
又、上記転がり軸受ユニットには、滑走制御や安全制御を行なうべく、車輪の回転速度と回転方向とを監視する為に、1対の回転速度検出用検出センサ9b、9cも組み込んでいる。これら両回転速度検出用センサ9b、9cは、例えば被検出部の1ピッチの4分の1分相互に離間した位置に設ける事により、位相が約90度異なる信号を生成する様にする。この様に配置したこれら両回転速度検出用センサ9b、9cの検出信号は、上記回転方向に応じて、図7の(A)又は(B)の様に変化するので、この変化のパターンを見る事で、上記回転方向を知る事ができる。又、回転速度は、何れかの回転速度検出用センサ9b(9c)の出力信号が変化する周期或は周波数に基づいて求められる。何れにしても、上記両回転速度検出用センサ9b、9cの検出信号はディジタル信号である。そこで、これら両センサ9b、9cの検出信号は、そのまま上記D/Aコンバータ24bに入力している。
【0038】
このD/Aコンバータ24bは4ビットで、上記各センサ11a、10a、9b、9cの検出信号を、前述の実施例1、2と同様にして多重化し、単一のアナログ信号として、前記1本の信号伝達用ハーネス21bに送り出す。そして、このアナログ信号を受信した受信器側に設けた、4ビットのA/Dコンバータ26bによりA/D変換を行なって、上記温度センサ11aと上記振動センサ10aとの検出信号に見合う2種類のPWM波形と、上記両回転速度検出用センサ9b、9cの検出信号に見合う、2種類のディジタル信号とを得る。このうち、上記2種類のPWM波形は、前述の実施例2の場合と同様に、ローパスフィルタ29、29で平均化して(或は三角波を利用した復調を行なって)、それぞれが温度を表すアナログ信号と振動の加速度のピークホールド信号とに再生する。又、上記2種類のディジタル信号は、車輪の回転速度及び回転方向を判別する為の回路に送る。この様に本実施例の場合には、ディジタル検出信号をアナログ検出信号とを合わせて、1本の信号伝達用ハーネス21bで送る様にしている。
【0039】
尚、図示の各実施例では、説明を簡略にする為にD/Aコンバータ或はA/Dコンバータとして3ビット又は4ビットのものを使用した。但し、実際の場合には、産業界で広く使用されている、8〜12ビットのD/Aコンバータ或はA/Dコンバータを使用する事が、コストを抑える面から有利である。この様な8〜12ビットのD/Aコンバータ或はA/Dコンバータを使用する場合には、上位のデータビットから使用し、余った下位のデータビットを「0」に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1を示す回路図。
【図2】複数のディジタル信号を1個のアナログ信号に合成する状態を説明する為の線図。
【図3】D/Aコンバータ及びA/Dコンバータ部分で行なう、電圧とデータビットとの変換に就いて示す図。
【図4】本発明の実施例2を示す回路図。
【図5】アナログ検出信号をパルス幅変調信号に変換する状況を示す線図。
【図6】本発明の実施例3を示す回路図。
【図7】1対の回転速度センサの検出信号に基づいて回転方向を判定する状態を説明する為の線図。
【図8】従来構造の1例を示す、図9のA−O−B断面図。
【図9】図8の左方から見た図。
【図10】先発明に係る構造の1例を示す断面図。
【符号の説明】
【0041】
1 車軸
2 複列円すいころ軸受ユニット
3 エンドキャップ
4 被検出部
5、5a 外輪
6、6a センサユニット
7 支持環
8 センサホルダ
9、9a、9b、9c 回転速度検出用センサ
10、10a 振動センサ
11、11a 温度センサ
12a、12b 外輪軌道
13 取付孔
14 先端部
15a、15b 公転速度検出用センサ
16a、16b 転動体
17a、17b 保持器
18a、18b 公転速度検出用エンコーダ
19 ハブ
20 回転速度検出用エンコーダ
21、21a、21b 信号伝達用ハーネス
22 通電用ハーネス
23 接地用ハーネス
24、24a、24b D/Aコンバータ
25a、25b、25c 入力端子
26、26a、26b A/Dコンバータ
27a、27b、27c 出力端子
28 変換器
29 ローパスフィルタ
30 ピークホールド回路
31 軸受箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが測定値を表すデータを検出信号として送り出す複数のセンサと、これら各センサへの電力供給を行なう為の電力供給路と、これら各センサから送り出される上記検出信号の送信を行なう信号伝達路とを備えたセンサ用信号送信装置に於いて、
D/Aコンバータを組み込んだ送信回路と、A/Dコンバータを組み込んだ受信回路とを備え、
このうちのD/Aコンバータは、データビットが互いに異なる複数の入力端子を備えたものであり、
上記D/Aコンバータの各入力端子に上記各センサの検出信号が、少なくともこれら各入力端子に入力される時点で、ディジタル信号として入力されており、
上記D/Aコンバータは、上記各入力端子から入力された上記各センサの検出信号を合成して、単一のアナログ信号としてから出力する機能を有するものであり、
上記送信回路は、上記D/Aコンバータにより合成された単一のアナログ信号を単一の上記信号伝達路に送り出すものであり、
上記A/Dコンバータは、上記信号伝達路から単一の入力端子に送り込まれる上記単一のアナログ信号を、D/Aコンバータで変換する以前の元のディジタル信号に変換して、その変換結果を、データビットが互いに異なる複数の出力端子より送り出す機能を有するものである
事を特徴とするセンサ用信号送信装置。
【請求項2】
各センサがそれぞれ、測定値を表すデータをパルス列の検出信号として送り出すディジタル式のセンサである、請求項1に記載したセンサ用信号送信装置。
【請求項3】
各センサがそれぞれ、測定値を表すデータをアナログ検出信号として送り出すアナログ式のセンサであり、これら各センサとD/Aコンバータの入力端子との間にそれぞれ、上記アナログ検出信号をパルス幅変調信号に変換する変換器が設けられており、これら各変換器から出力されるパルス幅変調信号をD/Aコンバータの各入力端子に入力しており、受信回路に、A/Dコンバータの各出力端子から送り出されるパルス幅変調信号をアナログ信号に復調する復調器を組み込んでいる、請求項1に記載したセンサ用信号送信装置。
【請求項4】
複数のセンサのうちの一部のセンサが、測定値を表すデータをパルス列の検出信号として送り出すディジタル式のセンサであり、残りのセンサが測定値を表すデータをアナログ検出信号として送り出すアナログ式のセンサであり、この残りのセンサとD/Aコンバータの入力端子との間に、上記アナログ検出信号をパルス幅変調信号に変換する変換器が設けられており、この変換器から出力されるパルス幅変調信号をD/Aコンバータの何れかの入力端子に入力しており、受信回路の一部で上記アナログ式のセンサから送り出される検出信号を伝達する出力端子に繋がる部分に、当該出力端子から送り出されるパルス幅変調信号をアナログ信号に復調する復調器を組み込んでいる、請求項1に記載したセンサ用信号送信装置。
【請求項5】
転がり軸受ユニットと、この転がり軸受ユニットに組み付けられた複数個のセンサと、これら各センサの検出信号を送信する為のセンサ用信号送信装置とを備え、
このうちの転がり軸受ユニットは、互いに同心に配置された静止輪及び回転輪と、これら静止輪及び回転輪の表面のうちで互いに対向する部分に形成された静止側軌道と回転側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、
上記各センサは、上記転がり軸受ユニットの構成部材の状態を測定するものであり、
上記センサ用信号送信装置は、請求項1〜4の何れかに記載したセンサ用送信装置である、
センサ用信号送信装置付転がり軸受ユニット。
【請求項6】
静止輪が内周面に複列の外輪軌道を形成した外輪であり、回転輪が外周面に複列の内輪軌道を形成したハブであり、転動体が、これら両内輪軌道と上記両外輪軌道との間に、1対の保持器に保持され、且つ、両列同士の間で接触角を互いに逆にした状態で、複列に配置されており、これら両保持器の一部に、被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させた公転速度検出用エンコーダが全周に亙って設置されており、複数のセンサに、これら両公転速度検出用エンコーダの被検出面にそれぞれの検出面を対向させた、1対の公転速度検出用センサが含まれている、請求項5に記載したセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニット。
【請求項7】
各センサのうちの少なくとも1個のセンサが、転がり軸受ユニット部分の温度と振動とのうちの少なくとも一方を測定してその測定値を表す信号をアナログ検出信号として送り出す、アナログ式のセンサである、請求項5〜6の何れかに記載したセンサ用信号送信装置付転がり軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−72679(P2006−72679A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255065(P2004−255065)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】