説明

ソーワイヤおよびそれを用いたIII族窒化物結晶基板の製造方法

【課題】引張破断強度が高く細いソーワイヤを用いて反りの小さいIII族窒化物結晶基板を歩留まり良く製造できるIII族窒化物結晶基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本III族窒化物結晶基板の製造方法は、炭素濃度が0.90〜0.95質量%、ケイ素濃度が0.12〜0.32質量%以下、マンガン濃度が0.40〜0.90質量%以下、リン濃度が0.025質量%以下、イオウ濃度が0.025質量%以下および銅濃度が0.20質量%以下の鋼線を含み、ワイヤの直径が0.07mm以上0.16mm未満で、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高く、ワイヤのカール径が400mm以上のソーワイヤ22を用いて、ソーワイヤに破断張力の50%以上65%以下の張力をかけて、III族窒化物結晶体30をスライスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物結晶基板の製造に好適に用いられるソーワイヤ、およびかかるソーワイヤを用いたIII族窒化物結晶基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶基板は、一般的に、各種の方法で成長させた結晶体をスライスすることにより製造されている。結晶体をスライスするための方法として種々のソーワイヤを用いたスライス方法が提案されている。
【0003】
たとえば、特開2000−233356号公報(特許公報1)は、切断される被加工物の切断面のうねりを減少させるために、ワイヤの引張強さが3200〜4200N/mm2でワイヤの平均硬度が730〜900Hvのソーワイヤを用いた被加工物の切断方法を開示する。また、特開2000−328188号公報(特許公報2)は、ワーク(被加工物)の切断面の性状を改善するために、カール径(水平に配置された平滑なガラス板上にワイヤを置いたときに、ワイヤが自然にカールして形成されるループ径をいう。以下同じ。)が製品の全長にわたって320mm以上であり引張強度が2500MPa以上で線径が0.05〜0.2mmのワイヤソー用鋼線を開示する。また、特開2000−080442号公報(特許公報3)は、伸線加工性に優れた極細鋼線を提供するために、イオウ濃度が0.0005〜0.020質量%であり組織中に初析セメンタイトとマルテンサイトが占める面積割合の和が5%以下の鋼線材を開示する。また、特開2005−111653号公報(特許公報4)は、スライス面精度に優れる切断加工品を得るために、真円度が0.8μm以下のソーワイヤを開示する。また、特開2000−087285号公報(特許公報5)は、切断物の表面性状を向上させるために、鋼線上に1層以上のめっき層を有するワイヤソー用めっき鋼線を開示する。
【0004】
さらに、特開2006−190909号公報(特許文献6)は、六方晶系のIII族窒化物結晶からなるインゴットを切断する際のクラックの発生率を低減するために、ワイヤによりインゴットを切断する際にワイヤの延伸方向をインゴットの{1−100}面に対して3°以上傾斜させることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−233356号公報
【特許文献2】特開2000−328188号公報
【特許文献3】特開2000−080442号公報
【特許文献4】特開2005−111653号公報
【特許文献5】特開2000−087285号公報
【特許文献6】特開2006−190909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GaN結晶体などのIII族窒化物結晶体は、一般的に、結晶成長速度が低く、製造プロセスが複雑であるため、きわめて高価である。このような高価なIII族窒化物結晶体から、より多くのIII族窒化物結晶基板を得るためには、カーフロス(切り代)を低減することが必要である。また、従来のソーワイヤでIII族窒化物結晶体を薄くスライスすると、クラックが発生しやすくなり、III族窒化物結晶基板の歩留が低下するという問題があった。このため、従来よりも細いソーワイヤが必要とされている。
【0007】
六方晶系のウルツ鉱型の結晶構造を有するIII族窒化物結晶体は、<0001>方向に極性を有しており、(0001)面であるGa原子表面と(000−1)面であるN原子表面とではそれらの硬度が異なる。このため、III族窒化物結晶体を(0001)面および(000−1)面に平行な面でスライスして得られる主表面がGa原子表面およびN原子表面であるIII族窒化物結晶基板の主表面には、反りが発生する。かかる反りを低減するためには、III族窒化物結晶体をスライスする際にソーワイヤにかける張力(かかる張力を懸架張力という、以下同じ)を8Nより高く、好ましくは10Nより高くする必要がある。ソーワイヤにかける張力(懸架張力)を高くすると、スライスの際の断線率が高くなるという問題がある。
【0008】
上記の特許文献に記載されているような従来のソーワイヤ、たとえばワイヤの鋼材としてJIS G3502:2004に規定するSWRS82A材を用いてその直径が0.08mmのソーワイヤとしたものは、10N以上の張力をかけるとスライスの際の断線率が高くなり、III族窒化物結晶体を安全にかつ歩留良くスライスすることが困難であった。
【0009】
本発明は、引張破断強度が高く細いソーワイヤを用いて反りの小さいIII族窒化物結晶基板を歩留良く製造できるIII族窒化物結晶基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるIII族窒化物結晶基板の製造方法は、III族窒化物結晶体を準備する工程と、ソーワイヤを用いてIII族窒化物結晶体をスライスすることによりIII族窒化物結晶基板を作製する工程と、を含む。ここで、ソーワイヤは、炭素濃度が0.90質量%以上0.95質量%以下、ケイ素濃度が0.12質量%以上0.32質量%以下、マンガン濃度が0.40質量%以上0.90質量%以下、リン濃度が0.025質量%以下、イオウ濃度が0.025質量%以下および銅濃度が0.20質量%以下の鋼線を含み、ワイヤの直径が0.07mm以上0.16mm未満で、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高く、ワイヤのカール径が400mm以上である。また、III族窒化物結晶体をスライスする際には、ソーワイヤには破断張力の50%以上65%以下の張力がかけられている。
【0011】
本発明にかかるIII族窒化物結晶基板の製造方法において、ソーワイヤのワイヤの直径を0.07mm以上0.10mm以下とすることができる。また、ソーワイヤの上記の鋼線は、その表面を黄銅でめっきすることができる。また、製造されるIII族窒化物結晶基板の厚さを200μm以上350μm以下とすることができる。
【0012】
本発明にかかるソーワイヤは、炭素濃度が0.90質量%以上0.95質量%以下、ケイ素濃度が0.12質量%以上0.32質量%以下、マンガン濃度が0.40質量%以上0.90質量%以下、リン濃度が0.025質量%以下、イオウ濃度が0.025質量%以下および銅濃度が0.20質量%以下の鋼線を含む。また、ワイヤの直径が0.07mm以上0.16mm未満で、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高く、ワイヤのカール径が400mm以上である。
【0013】
本発明にかかるソーワイヤにおいて、ワイヤの直径を0.07mm以上0.10mm以下とすることができる。また、ソーワイヤの上記の鋼線は、その表面を黄銅でめっきすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引張破断強度が高く細いソーワイヤを用いて反りの小さいIII族窒化物結晶基板を歩留良く製造できるIII族窒化物結晶基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるIII族窒化物結晶基板の製造方法においてIII族窒化物結晶体をスライスする方法の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す方法によりIII族窒化物結晶体をスライスする際のワイヤの軌跡を示す概略図である。
【図3】図1に示す方法によりスライスされたIII族窒化物結晶体の拡大概略断面図である。
【図4】本発明にかかるIII族窒化物結晶基板の製造方法を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態であるソーワイヤ22は、炭素濃度が0.90質量%以上0.95質量%以下、ケイ素濃度が0.12質量%以上0.32質量%以下、マンガン濃度が0.40質量%以上0.90質量%以下、リン濃度が0.025質量%以下、イオウ濃度が0.025質量%以下および銅濃度が0.20質量%以下の鋼線を含む。本実施形態のソーワイヤ22は、上記の鋼線を含むため、引張破断強度が高く、ワイヤの直径が小さい細線であっても破線させることなく高い張力をかけることができる。
【0017】
本実施形態のソーワイヤ22に含まれる鋼線は、引張破断強度が高い観点から、以下の化学成分を有する。炭素は引張破断強度を確保するのに有効な元素である。炭素濃度が0.90質量%より低いと鋼線に高強度を付与することが困難であり、炭素濃度が0.95質量%より高いと鋼線が硬質化して脆くなる。ケイ素は、脱酸(鋼線中の酸素含有量が低減することをいう。以下同じ。)に有効な元素である。ケイ素濃度が0.12質量%より低いとその作用効果が低く、ケイ素濃度が0.32質量%より高くなると部分的に脱炭層(酸性雰囲気下で鋼を加熱するとき、鋼中の炭素が酸性雰囲気中の酸素と反応して鋼の表面層から抜け出すことにより生成する層をいう。かかる層は、強度が低下し、耐疲労強度が著しく低下している。以下同じ。)が生成して鋼線の耐疲労特性が低下する。マンガンは、上記の脱酸作用に加えて鋼線中のイオウを硫化物系介在物であるMnSとして固定することにより、伸線加工性を高める作用を有する。マンガン濃度が0.40質量%より低いと上記の作用効果が低く、マンガン濃度が0.90質量%より高いと硫化物系介在物の含有量が増大して伸線加工の際に断線しやすくなるとともにマンガンの偏析によりカッピー破断(材料内部で起こるV字型の割れ破断をいう。以下同じ。)の原因となる。リンは、伸線加工性を低下させる。このため、リン濃度は0.025質量%以下とする。イオウは、存在しなくてもよいが、それが存在すると硫化物系介在物を形成して伸線加工性を高める作用を有する。イオン濃度が0.025質量%より高いと硫化物系介在物の含有量が増大して伸線加工性が低下する。銅は、存在しなくてもよいが、それが存在すると耐食性を高める作用を有する。銅濃度が0.20質量%より高いと結晶粒界に偏析して線材の熱間圧延などの熱間加工時に割れや疵が発生しやすくなる。
【0018】
本実施形態のソーワイヤ22は、ワイヤの直径が0.07mm以上0.16mm未満である。従来のソーワイヤの一般的なワイヤ直径0.16mmよりも小さくすることにより、III族窒化物結晶体をスライスするときのカーフロス(切り代)を低減し、また、III族窒化物結晶体を薄くスライスするときのクラックの発生を抑制してIII族窒化物結晶基板の歩留が低下する。また、ワイヤ直径を0.07mm以上とすることによりワイヤの破断張力を高くする。かかる観点から、ソーワイヤ22のワイヤ直径は、0.07mm以上0.10mm以下であることが好ましい。
【0019】
本実施形態のソーワイヤ22は、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高い。ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高いことにより、ワイヤ径が0.07mm以上0.16mm未満、好ましくは0.07mm以上0.10mm以下、より好ましくは0.08mm以上0.10mm以下の細いソーワイヤであっても、高い破断張力が得られるため、破線させることなく高い張力をかけることができる。かかる観点から、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高いことが好ましい。
【0020】
本実施形態のソーワイヤ22は、ワイヤのカール径が400mm以上である。ワイヤのカール径が400mm以上であることにより、スライス中のワイヤー往復(正回転、逆回転)走行時に発生するワイヤーのねじれを低減することができ、ねじれによる強度低下による断線トラブルを抑制することができる。かかる観点から、ワイヤのカール径が450mm以上であることが好ましい。
【0021】
本実施形態のソーワイヤ22は、上記の鋼線の表面が黄銅(真鍮)でめっきされていることが好ましい。鋼線の表面を黄銅でめっきすることによりソーワイヤの表面の硬度を低下させてソーワイヤへの砥粒の食い込みを改善してスライスするIII族窒化物結晶体のスライス表面性状が向上する。ここで、黄銅は、銅と亜鉛との合金であり、一般的には、亜鉛の含有量が45質量%までのものが多い。鋼線の表面をめっきする方法は、特に制限はなく、電気めっき、無電解めっき、融解めっきなどが用いられる。また、鋼線の表面に形成されるめっき層の厚さは、特に制限はないが、最終伸線加工後において0.05μm以上0.6μm以下が好ましい。
【0022】
本実施形態のソーワイヤ22を製造する方法は、特に制限はないが、効率的に製造する観点から、たとえば、鋼線を適当な回数の熱処理および伸線処理により線径が0.5mm以上1.5mm以下程度の1次ワイヤを作製する工程(1次ワイヤ作製工程)、1次ワイヤをパテンチング熱処理し、必要に応じてめっき処理し、さらに伸線処理によりワイヤ径が0.07mm以上0.16mm未満の2次ワイヤを作製する工程(2次ワイヤ作製工程)を含む。
【0023】
[実施形態2]
図1〜3を参照して、本発明の別の実施形態であるIII族窒化物結晶基板の製造方法は、III族窒化物結晶体30を準備する工程S1と、実施形態1のソーワイヤ22を用いてIII族窒化物結晶体30をスライスすることによりIII族窒化物結晶基板31を作製する工程S2と、を含む。かかる製造方法により、反りの小さいIII族窒化物結晶基板が歩留よく得られる。
【0024】
(III族窒化物結晶体の準備工程)
図1、2および4を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶基板の製造方法は、III族窒化物結晶体30を準備する工程S1を含む。III族窒化物結晶体30を準備する工程S1において、III族窒化物結晶体30を作製する方法は、特に制限はなく、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MBE(分子線成長)法、MOVPE(有機金属気相成長)法、昇華法などの気相法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相法、アモノサーマル法などの方法が好適に用いられる。
【0025】
(III族窒化物結晶基板の作製工程)
図1、2および4を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶基板の製造方法は、実施形態1のソーワイヤ22を用いてIII族窒化物結晶体30をスライスすることによりIII族窒化物結晶基板31を作製する工程S2を含む。
【0026】
III族窒化物結晶体30をスライスするために、実施形態1のソーワイヤ22が用いられる。実施形態1のソーワイヤ22は、炭素濃度が0.90質量%以上0.95質量%以下、ケイ素濃度が0.12質量%以上0.32質量%以下、マンガン濃度が0.40質量%以上0.90質量%以下、リン濃度が0.025質量%以下、イオウ濃度が0.025質量%以下および銅濃度が0.20質量%以下の鋼線を含み、ワイヤの直径が0.07mm以上0.16mm未満で、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高く、ワイヤのカール径が400mm以上である。本実施形態において用いられるソーワイヤ22は、実施形態1の実施形態1のソーワイヤ22であり、ここでは繰り返さない。
【0027】
図1を参照して、ソーワイヤ22を用いてIII族窒化物結晶体30をスライスする方法は、特に制限はないが、効率よくスライスする観点から、マルチワイヤソー10を用いてスライスする方法が、好適に挙げられる。
【0028】
マルチワイヤソー10は、ワーク支持台11a、ワーク支持材11b,ガイドローラ12a,12b,12c、スラリーノズル13、および1本のソーワイヤ22が掛け回されて形成されたソーワイヤ列21を備える。マルチワイヤソー10が備えるこれらの構成要素は図示しない筐体によってそれぞれ支持されている。
【0029】
ワーク支持台11aは他の構成要素に対して下方に配置されている。少なくとも1つのIII族窒化物結晶体30が、ワーク支持材11bを介在させて、ワーク支持台11aの上方に固定されている。ワーク支持台11aは、図示しない移動テーブル上に載置されており、この移動テーブルが鉛直上方に移動することにより、III族窒化物結晶体30が鉛直上方(図1および2における矢印Aで示される送り方向A)へ送られる。
【0030】
ガイドローラ12a,12b,12cは略円柱状の回転体であり、それぞれの回転軸が鉛直方向(送り方向A)と直交しかつ互いに平行になるように配置されている。ガイドローラ12aおよびガイドローラ12bは、ワーク支持台11bを通る鉛直線の左右に離れて配置されている。ガイドローラ12cは、ガイドローラ12aおよびガイドローラ12bの上方かつワーク支持台11aを通る鉛直線上に配置されている。
【0031】
これらのガイドローラ12a,12b,12cの外周面には複数本の溝が互いに平行にかつ等間隔で形成されている。これらの複数本の溝に1本のソーワイヤ22が螺旋状に掛け回されることにより、ソーワイヤ列21が形成されている。ソーワイヤ22は、これらのガイドローラ12a,12b,12cが正回転および逆回転を交互に繰り返すことにより2方向に往復走行する。これらのガイドローラ12a,12b,12cに掛け回されたソーワイヤ22のうち、ガイドローラ12aおよびガイドローラ12bの下側を走行する部分は、ワーク支持台11aの移動によって上方に送られてくるIII族窒化物結晶体30と交差する位置を走行する。
【0032】
スラリーノズル13は、ラッピングオイルに遊離砥粒が混入されて得られるスラリー(砥液)をソーワイヤ22およびIII族窒化物結晶体30に向けて噴射するためのものである。
【0033】
マルチワイヤソー10を用いてスライスする方法は、たとえば、以下のとおりである。ワーク(加工対象物)である1以上のIII族窒化物結晶体30にオリエンテーションフラット面30fを形成する。オリエンテーションフラット面は、特に制限はないが、劈開性の高い(1−100)面に直交する面、たとえば(11−20)面が好ましい。かかるIII族窒化物結晶体30を、そのオリエンテーションフラット面30fがソーワイヤ22の延伸方向(図1および2における矢印Bで示されるソーワイヤ22の走行方向Bと同じ方向)と平行になるように、ワーク支持材11bを介在させて、ワーク支持台11aの上に固定する。
【0034】
次いで、上記のガイドローラ11a,12b,12cを正方向および逆方向に交互に回転させ、ソーワイヤ22の往復走行を開始させる。次いで、III族窒化物結晶体30が固定されたワーク支持台11aを上方に移動させることにより、III族窒化物結晶体30をソーワイヤ列21へ送る。このとき、スラリーノズル13からソーワイヤ列21およびIII族窒化物結晶体30へのスラリーの噴射を開始する。III族窒化物結晶体30がソーワイヤ22に接すると、III族窒化物結晶体30とソーワイヤ22との間に侵入したスラリーの作用により、III族窒化物結晶体30が切削され始める。スラリーを供給しながら、III族窒化物結晶体30を略一定速度で送り方向Aへ送る。このようにして、III族窒化物結晶体30は、ソーワイヤ列21のソーワイヤ22の間隔に応じた厚さのIII族窒化物結晶基板31にスライスされる。
【0035】
ここで、図2を参照して、III族窒化物結晶体30をスライスする際には、
ソーワイヤ22のたわみδyは、ソーワイヤ22にかかるIII族窒化物結晶体30の切り込み方向(送り方向Aと正反対の方向)の切断抵抗P、ガイドローラ12aとガイドローラ12bとの間の距離L、およびソーワイヤにかける張力(懸架張力)Tを用いて、以下の(1)式で、表わされる。
【0036】
【数1】

【0037】
また、図3を参照して、III族窒化物結晶体30は、<0001>方向に極性を有する六方晶系のウルツ鉱型の結晶構造を有し、(0001)面であるGa原子表面30gと(000−1)面であるN原子表面30nとではそれらの硬度が異なる。このため、III族窒化物結晶体30を(0001)面および(000−1)面に平行な面でスライスして得られる主表面がGa原子表面30gおよびN原子表面30nであるIII族窒化物結晶基板の主表面には、Ga原子表面30g側が凸となり、N原子表面30n側が凹となる反りが発生する。かかる反りを低減するためには、III族窒化物結晶体をスライスする際にソーワイヤにかける張力(懸架張力)Tを高くして、ソーワイヤ22のたわみδyを低くすることが必要である。
【0038】
本実施形態のIII族窒化物結晶体の製造方法において、III族窒化物結晶体30をスライスする際には、ソーワイヤ22には破断張力の50%以上65%以下の張力Tがかけられている。ここで、ソーワイヤ22は、ワイヤの直径が0.07mm以上0.16mm未満であり、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高いことから、その破断張力は16.16Nより大きい。すなわち、ソーワイヤ22には、8.08Nより大きな張力Tがかけられている。このため、ソーワイヤ22のたわみδyが低くなり、III族窒化物結晶基板31の主表面(Ga原子表面およびN原子表面)の反りを低減することができる。
【0039】
(III族窒化物結晶基板の両主表面の同時研磨工程)
図4を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶基板の製造方法は、III族窒化物結晶基板の両主表面を同時に研磨する工程S3をさらに含むことができる。本実施形態のIII族窒化物結晶基板の製造方法によれば、III族窒化物結晶基板の両方の主表面(両主表面)の反りを低減することができるため、両主表面の同時研磨の歩留が向上する。
【0040】
III族窒化物結晶基板の両主表面を同時に研磨する方法には、特に制限はないが、効率的に平滑な主表面を得る観点から、機械研磨、化学機械的研磨などが好適に用いられる。
【実施例】
【0041】
[実施例A]
1.III族窒化物結晶体の準備
HVPE法により成長させた、表主表面がGa原子表面((0001)面)であり裏主表面がN原子表面((000−1)面)であるGaN結晶体(III族窒化物結晶体)を、以下の手順により、外形加工した。GaN結晶体の外周を、JIS R6001:1998に規定する♯800のダイヤモンド砥石を用いて、直径50.8mm(2インチ)に研削加工した。GaN結晶体の表主表面および裏主表面を、JIS R6001:1998に規定する♯1000のダイヤモンド砥石を用いて、研削して、GaN結晶体をその厚さを20mmになるように整形した。GaN結晶体の外周に、JIS R6001:1998に規定する♯800のダイヤモンド砥石を用いて、(11−20)面であるオリエンテーションフラット面を形成した。最後に、加工により発生した加工歪をウエットエッチングやドライエッチングにより除去した。
【0042】
2.III族窒化物結晶基板の作製
2−1.ソーワイヤの準備
JIS G3502:2004に規定するSWRS92A相当の鋼線、具体的には、炭素濃度が0.92質量%、ケイ素濃度0.21質量%、マンガン濃度が0.47質量%、リン濃度が0.000質量%、イオウ濃度が0.001質量%および銅濃度が0.15質量%で直径が5.5mmの鋼線を準備した。この鋼線に適当な回数の熱処理および伸線処理により線径が0.70mm程度の1次ワイヤを作製した(1次ワイヤ作製工程)。得られた1次ワイヤをパテンチング熱処理し、黄銅めっき処理し、さらに連続湿式伸線処理することにより、ワイヤ径が0.08mmの2次ワイヤを作製して(2次ワイヤ作製工程)、これをソーワイヤとした。得られたソーワイヤは、破断張力が21.6N、引張破断強度が4300N/mm2、カール径が410mmであった。ここで、破断張力および引張破断強度は、引張試験機(トーヨーボールドウィン社製UTM−3−100)を用いて、25℃および相対湿度50%の大気雰囲気下において、標線間距離300mm、引張速度100mm/minの条件で測定した。また、カール径は、ノギスを用いて測定した。
【0043】
2−2.III族窒化物結晶体のスライス
準備した上記のソーワイヤを用いて、準備した上記のGaN結晶体をスライスした。GaN結晶体は、そのオリエンテーションフラット面((11−20)面)がソーワイヤ22の延伸方向と平行になるように固定した。ソーワイヤにかける張力(懸架張力)は、安全係数(この係数はソーワイヤの破断張力をソーワイヤの懸架張力で除した係数をいう。)が1.2、1.5、1.6、1.8、2.0、2.5および3.0のいずれか、すなわち、破断張力に対する懸架張力の割合が83.3%、66.7%、62.5%、56.6%、50.0%、40.0%および33.3%のいずれかとなるようにした。具体的にはソーワイヤの懸架張力を18.0N(例A1)、14.4N(例A2)、13.5N(例A3)、12.0N(例A4)、10.8N(例A5)、8.64N(例A6)および7.20N(例A7)のいずれかとした。スラリーは、ラッピングオイルとして鉱物油、遊離砥粒として平均粒径6μmのダイヤモンド砥粒を用いた。ガイドロール間の距離は250mmであった。ソーワイヤの走行平均速度は600m/minであった。GaN結晶体のスライス速度(結晶体の送り速度)は2mm/hrであった。かかるGaN結晶体のスライスにより得られたGaN結晶基板(III族窒化物結晶基板)の厚さは350μmであった。
【0044】
上記の例A1から例A7までのスライスについて、スライスの際の断線率、スライスにより得られたGaN結晶基板のGa原子表面における平均反りを測定した。ここで、断線率は、上記のGaN結晶体を50回スライスするまでに断線する確率を百分率で示したものである。平均反りは、110枚のGaN結晶基板についてのそれぞれのGa原子表面において最凸部の高さと最凹部の高さとの高低差の平均を示したものであり、接触式表面粗さ計により測定した。なお、全ての基板において、ソーワイヤの走行方向に対して垂直な方向における反りは、ソーワイヤの走行方向に対して平行な方向における反りに比べて大きかった。
【0045】
例A1のスライスにおいては、断線率が22%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは12μmであった。例A2のスライスにおいては、断線率が10%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは14μmであった。例A3のスライスにおいては、断線率が0%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは15μmであった。例A4のスライスにおいては、断線率が0%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは28μmであった。例A5のスライスにおいては、断線率が0%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは30μmであった。例A6のスライスにおいては、断線率が0%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは55μmであった。例A7のスライスにおいては、断線率が0%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは66μmであった。結果を表1にまとめた。
【0046】
2−3.GaN結晶基板の両主表面の同時研磨
上記の各例のスライスにより得られた各例についてそれぞれ100枚のGaN結晶基板の両主表面を同時に研磨して、その歩留率(同時研磨歩留率)を調べた。ここで、同時研磨歩留率とは、100枚のGaN結晶基板の両主表面を同時に研磨したときに得られたクラックの発生のない良品の百分率とした。研磨は、直径380mmの銅定盤、平均粒径が5μmの単結晶ダイヤモンド水性スラリーを用いて、定盤回転数40rpm、研磨荷重100gf/cm2の条件で行なった。両主表面同時研磨歩留率は、例A1においては100%、例A2においては100%、例A3においては100%、例A4においては100%、例A5においては100%、例A6においては76%、例A7においては68%であった。結果を表1にまとめた。
【0047】
【表1】

【0048】
表1を参照して、例A1〜例A7に示すように、炭素濃度が0.90質量%以上0.95質量%以下、ケイ素濃度が0.12質量%以上0.32質量%以下、マンガン濃度が0.40質量%以上0.90質量%以下、リン濃度が0.025質量%以下、イオウ濃度が0.025質量%以下および銅濃度が0.20質量%以下の鋼線を含み、ワイヤの直径が0.07mm以上0.16mm未満で、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高く、ワイヤのカール径が400mm以上であるソーワイヤを用いて、ソーワイヤに破断張力の50%以上65%以下の張力(懸架張力)をかけて、III族窒化物結晶体をスライスすることにより、極めて低い断線率で、反りの小さいIII族窒化物結晶基板が得られた。
【0049】
具体的には、表1を参照して、ソーワイヤの破断張力の62.5%以下(安全率1.6以上)の懸架張力において、ワイヤの破断率を0%とすることができた。また、ソーワイヤの破断張力の50.0%以上(安全率2.0以下)の懸架張力において、スライス後のGaN結晶基板の反りを30μm以下とすることができ、このため、その後のGaN結晶基板の両主表面の同時研磨における歩留率(両主表面同時研磨歩留率)を100%とすることができた。
【0050】
[実施例B]
1.III族窒化物結晶体の準備
実施例Aと同様のGaN結晶体(III族窒化物結晶体)を準備した。
【0051】
2.III族窒化物結晶基板の作製
2−1.ソーワイヤの準備
ワイヤの直径が、0.16mm(例B1)、0.14mm(例B2)、0.12mm(例B3)、0.10mm(例B4)、0.08mm(例B5)および0.07(例B6)のいずれかとしたこと以外は、実施例Aと同様にして、ソーワイヤを作製した。得られた例B1のソーワイヤは、破断張力が76N、引張破断強度が3800N/mm2、カール径が400mmであった。得られた例B2のソーワイヤは、破断張力が60N、引張破断強度が3900N/mm2、カール径が410mmであった。得られた例B3のソーワイヤは、破断張力が32N、引張破断強度が4050N/mm2、カール径が460mmであった。得られた例B4のソーワイヤは、破断張力が33N、引張破断強度が4250N/mm2、カール径が440mmであった。得られた例B5のソーワイヤは、破断張力が22N、引張破断強度が4300N/mm2、カール径が410mmであった。得られた例B6のソーワイヤは、破断張力が17N、引張破断強度が4300N/mm2、カール径が430mmであった。
【0052】
2−2.III族窒化物結晶体のスライス
ソーワイヤにかける張力(懸架張力)を破断張力の50%(安全係数2.0)となるようにしたこと、および、ソーワイヤ列におけるソーワイヤの間隔を調節することにより、得られるGaN結晶基板の厚さを350μm、300μm、250μmおよび200μmのいずれかとしたこと以外は、実施例Aと同様にして、GaN結晶体をスライスしてGaN結晶基板を得た。
【0053】
例B1のGaN結晶体をスライスして得られるGaN結晶基板のスライス歩留率は、厚さ350μmの基板について96%、厚さ300μmの基板について76%、厚さ250μmの基板について45%、厚さ200μmの基板について25%であった。例B2のGaN結晶体をスライスして得られるGaN結晶基板のスライス歩留率は、厚さ350μmの基板について98%、厚さ300μmの基板について75%、厚さ250μmの基板について62%、厚さ200μmの基板について37%であった。例B3のGaN結晶体をスライスして得られるGaN結晶基板のスライス歩留率は、厚さ350μmの基板について98%、厚さ300μmの基板について85%、厚さ250μmの基板について80%、厚さ200μmの基板について75%であった。例B4のGaN結晶体をスライスして得られるGaN結晶基板のスライス歩留率は、厚さ350μmの基板について100%、厚さ300μmの基板について98%、厚さ250μmの基板について91%、厚さ200μmの基板について85%であった。例B5のGaN結晶体をスライスして得られるGaN結晶基板のスライス歩留率は、厚さ350μmの基板について100%、厚さ300μmの基板について99%、厚さ250μmの基板について98%、厚さ200μmの基板について92%であった。例B6のGaN結晶体をスライスして得られるGaN結晶基板のスライス歩留率は、厚さ350μmの基板について100%、厚さ300μmの基板について99%、厚さ250μmの基板について97%、厚さ200μmの基板について94%であった。ここで、スライス歩留率とは、GaN結晶体をスライスして各厚さの基板を100枚作製したときに得られたクラックの発生のない良品の百分率とした。結果を表2にまとめた.
【0054】
【表2】

【0055】
表2を参照して、例B1〜B6に示すように、ソーワイヤのワイヤ直径が小さくなる程、III族窒化物結晶基板の各厚さの基板の歩留が向上した。このような基板III族窒化物結晶基板の歩留向上の割合は、基板の厚さが小さい程、大きくなった。
【0056】
[比較例R]
1.III族窒化物結晶体の準備
実施例Aと同様のGaN結晶体(III族窒化物結晶体)を準備した。
【0057】
2.III族窒化物結晶基板の作製
2−1.ソーワイヤの準備
JIS G3502:2004に規定するSWRS82A相当の鋼線、具体的には、炭素濃度が0.84質量%、ケイ素濃度0.18質量%、マンガン濃度が0.49質量%、リン濃度が0.008質量%、イオウ濃度が0.008質量%および銅濃度が0.10質量%で直径が5.5mmの鋼線を用いたこと以外は、実施例Aと同様にして、ソーワイヤを作製した。得られたソーワイヤは、ワイヤの直径が0.08mm、破断張力が15.6N、引張破断強度が3100N/mm2、カール径が250mmであった。
【0058】
2−2.III族窒化物結晶体のスライス
ソーワイヤにかける張力(懸架張力)は、安全係数(この係数はソーワイヤの破断張力をソーワイヤの懸架張力で除した係数をいう。)が1.2、1.5、1.6、1.8、2.0、2.5および3.0のいずれか、すなわち、破断張力に対する懸架張力の割合が83.3%、66.7%、62.5%、56.6%、50.0%、40.0%および33.3%のいずれかとなるように、具体的にはソーワイヤの懸架張力を13.0N(例R1)、10.4N(例R2)、9.75N(例R3)、8.67N(例R4)、7.80N(例R5)、6.24N(例R6)および5.20N(例R7)のいずれかとした以外は、実施例Aと同様にして、GaN結晶体をスライスした。
【0059】
例R1のスライスにおいては、断線率が30%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは15μmであった。例R2のスライスにおいては、断線率が11%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは28μmであった。例R3のスライスにおいては、断線率が4%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは35μmであった。例R4のスライスにおいては、断線率が0%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは52μmであった。例R5のスライスにおいては、断線率が0%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは60μmであった。例R6のスライスにおいては、断線率が0%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは90μmであった。例R7のスライスにおいては、断線率が0%であり、得られたGaN結晶基板の平均反りは120μmであった。結果を表3にまとめた。
【0060】
2−3.GaN結晶基板の両主表面の同時研磨
実施例Aと同様にして、上記の各例のスライスにより得られた各例についてそれぞれ100枚のGaN結晶基板の両主表面を同時に研磨して、その歩留率(同時研磨歩留率)を調べた。両主表面同時研磨歩留率は、例R1においては100%、例R2においては100%、例R3においては92%、例R4においては74%、例R5においては37%、例A6においては16%、例A7においては3%であった。結果を表3にまとめた。
【0061】
【表3】

【0062】
表3を参照して、例R1〜例R7に示すように、従来のソーワイヤを用いた場合、ソーワイヤに破断張力の55.6%以下(安全係数1.8以上)の懸架張力においてスライスすることにより、断線率を0%とできたが、III族窒化物結晶基板の平均反りが52μm以上と極めて大きくなった。スライス後のIII族窒化物結晶基板の反りが30μmより大きくなると、その後のIII族窒化物結晶基板の両主表面同時研磨歩留率が100%未満と低下した。III族窒化物結晶基板の平均反りを30μm以下に小さくするためには、ソーワイヤの破断張力の66.7%以上(安全係数1.5以下)の懸架張力でスライスする必要があったが、この場合断線率が11%以上と極めて大きくなった。
【0063】
上記実施例および比較例は、両主表面が(0001)面および(000−1)面であるIII族窒化物結晶基板についての例であるが、両主表面が{1−100}面(M面)、{11−20}面(A面)などの無極性面であるIII族窒化物結晶基板、両主表面が上記M面またはA面からのオフ角を有する{2−201}面、{22−43}面などの半極性面であるIII族窒化物結晶基板においても、上記と同様の結果が得られた。
【0064】
なお、本願発明において用いられる引張破断強度が4200N/mm2より高いソーワイヤは、ダイヤモンド砥粒を電着、ロウ付けまたはレジン固定した固定砥粒ワイヤとしても用いることができる。
【0065】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
10 マルチワイヤソー、11a ワーク支持台、11b ワーク支持材、12a,12b,12c ガイドローラ、13 スラリーノズル、21 ソーワイヤ列、22 ソーワイヤ、30 III族窒化物結晶体、30f オリエンテーションフラット面、30g Ga原子表面、30n N原子表面、31 III族窒化物結晶基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物結晶体を準備する工程と、ソーワイヤを用いて前記III族窒化物結晶体をスライスすることによりIII族窒化物結晶基板を作製する工程と、を含み、
前記ソーワイヤは、炭素濃度が0.90質量%以上0.95質量%以下、ケイ素濃度が0.12質量%以上0.32質量%以下、マンガン濃度が0.40質量%以上0.90質量%以下、リン濃度が0.025質量%以下、イオウ濃度が0.025質量%以下および銅濃度が0.20質量%以下の鋼線を含み、ワイヤの直径が0.07mm以上0.16mm未満で、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高く、ワイヤのカール径が400mm以上であり、
前記III族窒化物結晶体をスライスする際には、前記ソーワイヤには破断張力の50%以上65%以下の張力がかけられている、III族窒化物結晶基板の製造方法。
【請求項2】
前記ソーワイヤのワイヤの直径は0.07mm以上0.10mm以下である請求項1に記載のIII族窒化物結晶基板の製造方法。
【請求項3】
前記ソーワイヤの前記鋼線は、その表面が黄銅でめっきされている請求項1に記載のIII族窒化物結晶基板の製造方法。
【請求項4】
前記III族窒化物結晶基板の厚さは200μm以上350μm以下である請求項1に記載のIII族窒化物結晶基板の製造方法。
【請求項5】
炭素濃度が0.90質量%以上0.95質量%以下、ケイ素濃度が0.12質量%以上0.32質量%以下、マンガン濃度が0.40質量%以上0.90質量%以下、リン濃度が0.025質量%以下、イオウ濃度が0.025質量%以下および銅濃度が0.20質量%以下の鋼線を含み、
ワイヤの直径が0.07mm以上0.16mm未満で、ワイヤの引張破断強度が4200N/mm2より高く、ワイヤのカール径が400mm以上であるソーワイヤ。
【請求項6】
ワイヤの直径が0.07mm以上0.10mm以下である請求項5に記載のソーワイヤ。
【請求項7】
前記鋼線は、その表面が黄銅でめっきされている請求項5に記載のソーワイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−56398(P2013−56398A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196799(P2011−196799)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】