説明

タイヤ加硫機

【課題】エネルギーロスを少なくして加硫時間が短縮化することにより生産性を向上させることができるタイヤ加硫機を提供する。
【解決手段】金型とブラダーとを備え、ブラダー内部に熱圧媒体を供給することにより、ブラダーをタイヤの内面全体に密着させて加硫を行うタイヤ加硫機であって、ブラダーに熱圧媒体を供給する供給管と、ブラダーから熱圧媒体を排出する排出管と、排出管に設けられて熱圧媒体に含まれるドレンを熱圧媒体から分離するドレントラップとを備えており、ブラダーから排出された熱圧媒体は、ドレントラップでドレンと分離された後、供給管に戻される一方、ドレンは、外部に排出されるタイヤ加硫機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチーム等の熱圧媒体をブラダーに供給してタイヤの加硫を行うタイヤ加硫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫機は、金型とブラダーとを備えており、未加硫タイヤを金型内に配置し、その後ブラダー内部に高温、高圧のスチーム(熱圧媒体)を供給することにより、ブラダーをタイヤの内面全体に密着させて加硫が行われる。
【0003】
このとき、ブラダー、スチーム、金型間での熱交換によりブラダー内にドレンが発生する。発生したドレンがブラダーの底部に留まった場合には、ブラダー内部の上部と下部とで温度差が生じ、下部の温度上昇が遅くなるため、加硫生産性が損なわれる。
【0004】
また、ブラダー内におけるドレンの発生には、上記の他に、機械要因による発生もある。即ち、加硫に際してはタイヤ加硫機の中心機構を昇降させているが、この昇降に用いる水圧シリンダーの水がパッキンの摩滅などにより漏れ出し、さらなるドレンが発生する。この結果、前記した下部の温度上昇はさらに遅くなり、加硫不足を招く恐れがある。この加硫不足はタイヤ内部にポーラスを発生させ、品質上の重大な欠陥となる。
【0005】
そこで、ドレンのブラダーからの排出についての種々の提案が行われている(例えば、特許文献1)。
【0006】
従来、ドレンのブラダーからの排出手段としては、スチームのブラダー内への流入と同時に排出側の配管の弁を開放してドレンを排出する方法(インフレーションスチーム・パージ)が多く採用されていた。しかし、この方法の場合、ドレン化していないスチームも同時に排出されるため、エネルギーロスの発生が避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−262767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、ドレンを排出する際に、ドレン化していないスチームが同時に排出されないようにすることにより、エネルギーロスを少なくし、また、タイヤの品質上の重大な欠陥をなくすことができるタイヤ加硫機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
金型とブラダーとを備え、ブラダー内部に熱圧媒体を供給することにより、ブラダーをタイヤの内面全体に密着させて加硫を行うタイヤ加硫機であって、
前記ブラダーに前記熱圧媒体を供給する供給管と、
前記ブラダーから前記熱圧媒体を排出する排出管と、
前記排出管に設けられて前記熱圧媒体に含まれるドレンを前記熱圧媒体から分離するドレントラップとを備えており、
前記ブラダーから排出された前記熱圧媒体は、前記ドレントラップでドレンと分離された後、前記供給管に戻される一方、前記ドレンは、外部に排出されることを特徴とするタイヤ加硫機である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
前記熱圧媒体が高温、高圧のスチームもしくは高圧ガスであり、前記熱圧媒体を前記ブラダー内に流入させると同時に、前記排出管に設けられたバルブを開いてドレンを外部に排出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫機である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
さらに、前記ドレントラップにより分離されたドレンの量を測定する測定手段と、
前記ドレン量が所定値を超えたときに警報を発する警報手段と
を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ加硫機である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドレンを排出する際に、ドレン化していないスチームが同時に排出されないようにすることにより、エネルギーロスを少なくし、また、タイヤの品質上の重大な欠陥をなくすことができるタイヤ加硫機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るタイヤ加硫機におけるドレントラップの配置状況を模式的に示す図である。
【図2】本実施の形態のタイヤ加硫機と従来例のタイヤ加硫機のそれぞれの排出管内の温度を比較したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に基づき、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。
【0015】
1.タイヤ加硫機の構成
図1は、本実施の形態に係るタイヤ加硫機におけるドレントラップの配置状況を模式的に示す図である。図1に示すように、タイヤ加硫機1は、金型の内側に配置されて高温、高圧のスチーム(熱圧媒体の一例)により膨張および収縮するブラダー2と、ブラダー2にスチームおよびガスを供給する供給管3と、ブラダー2からスチームおよびガスを排出する排出管4と、排出管4に設けられてスチームに含まれるドレンをスチームから分離するためのドレントラップ5とを備えている。なお、図中の符号8は、ブラダー2の下部に溜まったドレンを示す。
【0016】
また、タイヤ加硫機1は、ドレントラップ5によりスチームから分離して除去されたドレンのドレン量を測定する流量計(測定手段)6と、ドレン量が所定値を超えたときに警報を発する警報器(警報手段)7とを備えている。また、排出管4には、管内の温度を測定する温度センサ14が設けられている。
【0017】
供給管3の端部には、高温、高圧のスチームをブラダー2に供給するスチーム供給用分岐管15および高圧ガスをブラダー2に供給するガス供給用分岐管16が形成されており、各分岐管15、16にはバルブ9が取り付けられている。
【0018】
排出管4の端部には、ガス回収用分岐管10、バキューム用分岐管12およびドレン用分岐管13が形成されており、各分岐管10、12、13にはバルブ9が取り付けられている。
【0019】
ドレン用分岐管13にはドレントラップ5が取り付けられており、これによりスチームに含まれるドレンがスチームから分離されて外部に排出される。なお、ドレントラップ5としては、公知のフロートタイプやサーモスタチィクタイプ等いずれでも良く、フロートタイプとサーモスタチィクタイプを併用しても良い。
【0020】
ドレントラップ5により分離されて排出されたドレンの流量は、流量計6により測定され、ドレン量が所定値を超えた場合には警報器7が警報を発する。この所定値は、熱交換により発生するドレン量に加えて、上記のように水圧シリンダーの欠陥やパッキンの摩滅により発生する水漏れ量に基づいて定められる。なお、流量計6としては、差圧式流量計や渦流量計等いずれでも良い。
【0021】
本実施の形態におけるタイヤ加硫機1は、上記の如く構成され、前記の各分岐管に設けられたバルブ9の切り替え操作により、通常180〜200℃、0.9〜1.5MPaの高温、高圧のスチーム及び通常2.0〜2.5MPaの高圧ガスを供給管3からブラダー2に送って生タイヤを加硫する。生タイヤの加硫後は、バキュームによりブラダー2内のドレンを含むスチームをブラダー2から排出する。そして、排出されたスチームは、ドレントラップ5によりドレンと分離される。その後、ドレンが除去されたスチームは、スチーム供給用分岐管15に戻される。一方、スチームから分離されたドレンは、外部に排出される。
【0022】
また、ブラダー2からドレンを排出する際に、高温、高圧のスチームもしくは高圧ガスをブラダー2内に流入させると同時に、排出管4のバルブ9を開いてドレンを外部に排出する制御(インフレーションスチーム・パージ)を短時間実施する。これにより、高温、高圧のスチームもしくは高圧ガスによるブラダー2内での攪拌作用が発生し、ブラダー2内の排出口よりも低い部分に滞留したドレンを容易に排出することができる。
【0023】
2.本実施の形態の効果
(1)本実施の形態のタイヤ加硫機は、排出管4にドレントラップ5を設けているため、スチームからドレンを分離してドレンのみを除去することができる。このため、スチームが外部に排出されることがなくなり、エネルギーロスの発生を抑制することができる。
【0024】
(2)本実施の形態のタイヤ加硫機は、流量計6および警報器7を備えているため、タイヤ加硫機の中心機構の昇降に用いられる水圧シリンダーの欠陥やパッキンの摩滅により漏れ出る等の事故が発生した場合、警報を発することにより、早急な修繕を可能にして、品質上の重大な欠陥を有するタイヤの発生を防止することができる。
【0025】
(3)本実施の形態のタイヤ加硫機は、高温、高圧のスチームもしくは高圧ガスをブラダー2内に流入させると同時に、排出管4のバルブ9を開くことによりブラダー内で攪拌作用を発生させることができる。このため、ブラダー2内に滞留したドレンを容易に排出することができる。
【0026】
3.実施例
以下の実施例においては、上記したドレントラップを有するタイヤ加硫機(実施例)と、従来のインフレーションスチーム・パージ方式のタイヤ加硫機(比較例)とによりタイヤの加硫を行い、加硫における省エネルギー効果と加硫時間の短縮効果を確認した。なお、11R22.5 14P のサイズのタイヤを使用した。また、ドレントラップはフロートタイプとサーモスタチィクタイプを併用した。
【0027】
(1)省エネルギー効果は、タイヤ加硫機から外部に排出されるスチーム排出量を測定することにより確認した。
【0028】
従来のタイヤ加硫機では、タイヤ1本当り約1.65kgのスチームを排出していたが、ドレントラップを有するタイヤ加硫機では、ドレントラップの使用によりスチームを効率よく回収してスチームの外部への排出がほぼゼロになり、省エネルギー効果が高いことが確認できた。
【0029】
(2)加硫時間の短縮効果については、排出管内の温度を測定することにより確認した。
【0030】
図2は、実施例と比較例のそれぞれの排出管内の温度を比較したグラフ図である。縦軸は温度センサーで測定された配管内部の温度を、横軸は加硫時間を示している。
【0031】
図2に示すように、図中の実線で示す実施例の温度変化の方が、破線で示す比較例のタイヤ加硫機の温度変化よりも早く最高温度に達していることが分かる。
【0032】
比較例では、配管内のドレンにより、加硫開始後、最高温度に到達するのに2.1分を要していたが、実施例では、加硫開始後、0.5分で最高温度に到達した。このため、ブラダー2内を高温で保持する時間を長くすることができ、加硫時間を0.6分短縮できることが分かった。
【0033】
次に、ドレントラップに加えて、インフレーションスチーム・パージの有無による最高温度到達時間および加硫時間の短縮効果を確認した。
【0034】
インフレーションスチーム・パージは、198℃、1.4MPaの高温、高圧のスチームをブラダー内に流入させると同時に、排出管のバルブを開いてドレンを排出した。
【0035】
結果を表1に示す。表中の数値は、排出時間である。
【0036】
最高温度到達時間は、排出管内の温度で、加硫開始から最高温度に達するまでに要する時間であり、数値が小さいほど温度上昇が速く、加硫生産性に優れていることを示す。
【0037】
加硫時間は、比較例1を100とした時の指数表示であり、数値が小さいほど加硫時間が短く、加硫生産性に優れていることを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1より、インフレーションスチーム・パージを行うことにより、加硫時間が短くなり、加硫生産性が向上することが分かる。
【0040】
以上、実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一及び均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 タイヤ加硫機
2 ブラダー
3 供給管
4 排出管
5 ドレントラップ
6 流量計
7 警報器
8 ドレン
9 バルブ
12 バキューム用分岐管
13 ドレン用分岐管
14 温度センサ
15 スチーム供給用分岐管
16 ガス供給用分岐管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型とブラダーとを備え、ブラダー内部に熱圧媒体を供給することにより、ブラダーをタイヤの内面全体に密着させて加硫を行うタイヤ加硫機であって、
前記ブラダーに前記熱圧媒体を供給する供給管と、
前記ブラダーから前記熱圧媒体を排出する排出管と、
前記排出管に設けられて前記熱圧媒体に含まれるドレンを前記熱圧媒体から分離するドレントラップとを備えており、
前記ブラダーから排出された前記熱圧媒体は、前記ドレントラップでドレンと分離された後、前記供給管に戻される一方、前記ドレンは、外部に排出されることを特徴とするタイヤ加硫機。
【請求項2】
前記熱圧媒体は高温、高圧のスチームもしくは高圧ガスであり、前記熱圧媒体を前記ブラダー内に流入させると同時に、前記排出管に設けられたバルブを開いてドレンを外部に排出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫機。
【請求項3】
さらに、前記ドレントラップにより分離されたドレンの量を測定する測定手段と、
前記ドレン量が所定値を超えたときに警報を発する警報手段と
を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ加硫機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−43436(P2013−43436A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184966(P2011−184966)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】