説明

タブレット成形金型、ならびにタブレット、光半導体素子搭載用基板の製造方法および光半導体装置。

【課題】本発明は、熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレットに成形する際に、タブレット表面が黒く着色することを防止するのに適切なタブレット成形金型を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも充填材と熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレットに成形するためのタブレット成形金型であって、少なくとも上記樹脂組成物と接する成形金型の内表面がセラミック系材料またはフッ素系材料から構成され、特定の硬度を有することを特徴とするタブレット成形金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タブレット成形金型に関し、特に、熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレット成形するのに好適なタブレット成形金型に関する。さらに本発明は、当該成形金型を用いてなるタブレット、当該タブレットを用いた光半導体素子搭載用基板の製造方法および当該製法により得られる光半導体素子搭載用基板を用いてなる光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体装置の製造方法として、熱硬化性光反射用樹脂組成物を使用しパッケージ(光半導体素子搭載用基板)を製造する方法が開示されている(特許文献1、2)。この製造方法は、熱硬化性光反射用樹脂組成物を室温においてタブレット成形機(打錠機)を用いて加圧成形して得られた円柱形や角柱形のタブレットをトランスファー成形機のポットに挿入した後、プランジャーを加圧することによってタブレットを溶融させ、当該溶融物(樹脂組成物)を金型内のランナーおよびゲートを介して、リードフレームが予めセットされたキャビティに充填し、これを硬化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−140207号公報
【特許文献2】特開2006−156704号公報
【特許文献3】特開2002−1733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記熱硬化性光反射用樹脂組成物は、通常、熱硬化性樹脂に加えて、光反射率や成形性を確保するために白色顔料や無機充填材等の充填材を含有している。そのため、このような組成物を従来のタブレット成形機によってタブレット成形すると、充填材成分がタブレット成形機の金型表面を削り、その結果、得られるタブレット表面が黒く着色してしまう場合がある。着色したタブレットは光反射率の低下を招くため、これを光半導体装置用のパッケージとして用いることは望ましくない。上記のような問題は、タブレット成形機の成形金型の内面に形成されているハードクロムめっき等の保護膜の強度が弱いために発生していると考えられる。一方、樹脂との接触面にフッ素を含む非晶質の炭素被膜を設けることによって、離型性と耐磨耗性とを兼備した、半導体封止用樹脂のタブレット成形用金型が開示されている(特許文献3)。しかし、開示された金型は、基材を衝撃に弱いWC基超硬合金から構成されており、金型に欠けなどの破損が生じやすい傾向がある。
【0005】
上記を鑑みて、本発明は、熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレットに成形する際に、タブレット表面が着色することを防止するのに適切なタブレット成形金型を提供することを目的とする。また、本発明は、上記成形金型を用いてなるタブレット、当該タブレットを用いた光半導体素子搭載用基板の製造方法および当該製法により得られる光半導体素子搭載用基板を用いてなる光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下(1)〜(13)に記載の事項をその特徴とする。
(1)少なくとも充填材と熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレットに成形するためのタブレット成形金型であって、少なくとも上記樹脂組成物と接する成形金型の内表面がセラミック系材料またはフッ素系材料から構成され、特定の硬度を有することを特徴とするタブレット成形金型。
【0007】
(2)上記内表面がセラミックス系材料から構成され、ロックウェル硬度Cスケールで70以上の硬度を有することを特徴とする上記(1)に記載のタブレット成形金型。
【0008】
(3)上記内表面がフッ素系樹脂材料から構成され、ロックウェル硬度Rスケールで50以上の硬度を有することを特徴とする上記(1)に記載のタブレット成形金型。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のタブレット成形金型を用いて、少なくとも充填材と熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性光反射用樹脂組成物を成形して得られるタブレット。
【0010】
(5)上記充填材が、無機充填材および白色顔料の少なくとも一方を含む上記(4)に記載のタブレット。
【0011】
(6)上記熱硬化性光反射用樹脂組成物が、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、白色顔料及びカップリング剤を含む上記(4)に記載のタブレット。
【0012】
(7)上記無機充填材が、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(5)または(6)に記載のタブレット。
【0013】
(8)上記白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、中空粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種である上記(5)〜(7)のいずれかに記載のタブレット。
【0014】
(9)上記白色顔料の平均粒径が、1〜50μmの範囲である上記(5)〜(8)のいずれかに記載のタブレット。
【0015】
(10)上記無機充填材と上記白色顔料との合計量が、上記樹脂組成物全体に対して、10体積%〜95体積%の範囲である上記(5)〜(9)のいずれかに記載のタブレット。
【0016】
(11)波長800nm〜350nmにおける光反射率が80%以上である上記(4)〜(10)のいずれかに記載のタブレット。
【0017】
(12)光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、少なくとも上記凹部側壁を、上記(4)〜(11)のいずれかに記載のタブレットを用いたトランスファー成形により形成することを特徴とする光半導体素子搭載用基板の製造方法。
【0018】
(13)上記(12)に記載の製造方法により製造された光半導体素子搭載用基板と、
上記光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載された光半導体素子と、
上記光半導体素子を覆うように上記凹部内に形成される蛍光体含有透明封止樹脂層とを備える光半導体装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレットに成形する際に、タブレット表面の着色を抑制するタブレット成形金型を提供することが可能となる。さらに、当該タブレット成形金型を用いて製造されたタブレットをトランスファー成形により成形することで、優れた光学特性、特に光反射率を有する光半導体素子搭載用基板および光半導体装置を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のタブレット成形金型の構造を示す模式的断面図である
【図2】本発明の光半導体素子搭載用基板の製造方法を説明する概略図であり、(a)〜(c)はトランスファーモールド成形により基板を製造する各工程に対応する。
【図3】本発明の光半導体装置の一実施形態を示す図であり、(a)および(b)はそれぞれ装置の構造を模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
(タブレット成形金型)
本発明のタブレット成形金型は、少なくとも充填材と熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレットに成形するためのものであり、臼と杵の一対または凹部を有する上金型と下金型の一対等からなる構造を有し、樹脂組成物と接触する金型の内表面がセラミック系材料またはフッ素系材料から構成され、かつ特定の硬度を有することを特徴とする。
【0022】
本発明のタブレット成形金型の一実施形態を図1に示す。図1に示すように、タブレット成形金型10は、臼10aと、上杵10bおよび下杵10cから構成され、少なくとも樹脂組成物20と接触する臼と杵の各内表面は、充填材の硬度を上回るか、またはタブレット成型時に変形しない程度の硬度を有するようにセラミック系材料またはフッ素系材料から構成される。
【0023】
上記セラミックス系材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ケイ素、チタン、タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、バナジウム等の酸化物、炭化物または窒化物、これらにコバルトやニッケル等を添加した材料など、公知の高硬度セラミックス系材料を用いることができる。
【0024】
上記フッ素系樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、3フッ化塩化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂等の比較的高い強度を示すフッ素系樹脂が挙げられ、また、これらフッ素系樹脂に補強材としてガラス繊維やウィスカなどの繊維状の無機材料を添加したものでも良い。
【0025】
また、本発明のタブレット成形金型は、例えば、公知の金属、合金、超硬合金等からなる臼と杵の少なくとも熱硬化性光反射用樹脂組成物と接する内表面に上記セラミックス系材料やフッ素系樹脂材料等の被膜を形成した構造であってよい。また、別の実施形態として、成形金型の全てを上記セラミック系材料またはフッ素系樹脂材料から構成してもよい。使用するセラミック系材料またはフッ素系樹脂材料は特に限定されないが、タブレットを着色する恐れのない白色の材料として調製されることが好ましい。
【0026】
本発明のタブレット成形金型の一実施形態として、成形時に樹脂組成物と接触する金型の内表面をセラミックス系材料から構成する場合、その内表面はロックウェル硬度Cスケールで70以上の硬度を有することが好ましい。また、別の実施形態として、金型の内表面をフッ素系樹脂材料から構成する場合、その内表面はロックウェル硬度Rスケールで50以上の硬度を有することが好ましい。
【0027】
なお、本発明で記載する「ロックウェル硬度」は、金型の内表面を以下に示す方法に従って試験することによって得られた値を意味している。
(ロックウェル硬度スケールC)
頂角120°、先端半径0.2mmのダイヤモンド円錐圧子を用いて、金型の内表面に10kgfの加重を加え、次に150kgfの加重を加え、再度10kgfの加重に戻し、この前後2回の加重によって内表面に進入した圧子の深さをリニアゲージで用いて測定した値である。
(ロックウェル硬度スケールR)
直径1/2インチ鋼球を用いて、金型の内表面に10kgfの加重を加え、次に60kgfの加重を加え、再度10kgfの加重に戻し、この前後2回の加重によって内表面に進入した圧子の深さをリニアゲージで測定した値である。
【0028】
(熱硬化性光反射用樹脂組成物)
本発明のタブレット成形金型の成形対象としては、特に限定されないが、本発明のタブレット成形金型は、少なくとも充填材と熱硬化性樹脂を含む熱硬化性光反射用樹脂組成物をタブレット成形するのに好適である。なお、この熱硬化性光反射用樹脂組成物は、熱硬化前、室温(0〜35℃)で、0.5〜2MPa、1〜5秒程度の条件下において加圧成形、具体的にはタブレット成形可能なものであることが望まれる。また、この熱硬化性光反射用樹脂組成物の熱硬化後の、波長350nm〜800nmにおける光反射率は、80%以上であることが望ましい。この光反射率が80%未満であると、光半導体装置の輝度向上に十分寄与できない傾向がある。また、この熱硬化性光反射用樹脂組成物の硬化後の熱伝導率は、1〜10W/mKの範囲であることが望ましい。この熱伝導率が1W/mK未満であると光半導体素子から発生する熱を十分に逃がすことができず、封止樹脂等を劣化させてしまう恐れがある。
【0029】
以下、上記熱硬化性光反射用樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂などがあるが、特にエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂としては、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビフェノール等のジグリシジエーテル、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、及び脂環族エポキシ樹脂等があり、これらは単独でも、2種以上併用してもよい。また、使用するエポキシ樹脂は比較的着色のないものであることが好ましく、そのようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0030】
また、上記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤や硬化促進剤を併用してもよい。硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応するものであれば、特に制限なく使用することができるが、比較的着色のないものが好ましい。例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤などが挙げられる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられ、単独で用いても、二種以上併用しても良い。これら酸無水物系硬化剤の中では、無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。また、酸無水物系硬化剤は、その分子量が140〜200程度のものが好ましく、また、無色ないし淡黄色の酸無水物が好ましい。
【0031】
また、上記硬化剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、硬化剤におけるエポキシ基と反応可能な活性基(酸無水基または水酸基)が0.5〜1.5当量となるように配合することが好ましく、0.7〜1.2当量となるように配合することがより好ましい。活性基が0.5当量未満の場合には、エポキシ樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、得られる硬化体のガラス転移温度が低くなる場合があり、一方、1.5当量を超える場合には、耐湿性が低下する場合がある。
【0032】
上記硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエートなどのリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、およびこれらの誘導体などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、あるいは、併用してもよい。これら硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。
【0033】
また、硬化促進剤の含有率は、エポキシ樹脂に対して、0.01〜8.0重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜3.0重量%である。硬化促進剤の含有率が、0.01重量%未満では、充分な硬化促進効果を得られない場合があり、また、8.0重量%を超えると、得られる硬化体に変色が見られる場合がある。
【0034】
充填材としては、特に限定されないが、例えば、無機充填材や光反射率を向上させるための白色顔料を用いることができる。
【0035】
上記無機充填材としては、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、熱伝導性、光反射特性、成形性、難燃性の点からは、水酸化アルミニウムを組合せて使用することが好ましい。また、無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、白色顔料とのパッキング効率を考慮すると1〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0036】
上記白色顔料としては、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、中空粒子などを挙げることができ、単独で使用しても、併用しても構わない。中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス等が挙げられる。熱伝導性、光反射特性の点からは、少なくともアルミナまたは酸化マグネシウムを使用するか、またはそれらを組合せて使用することが好ましい。また、白色顔料の平均粒径は、中心粒径が0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすく、分散性が悪くなる傾向があり、50μmを超えると反射特性が十分に得られなくなる傾向がある。
【0037】
上記無機充填材と上記白色顔料との合計配合量は、樹脂組成物全体に対して、10体積%〜95体積%の範囲であることが好ましく、85重量%〜95重量%の範囲であることがより好ましい。この配合量が、10体積%未満であると硬化物の光反射特性が不十分になる恐れがある。一方、95体積%を超えると樹脂組成物の成形性が悪くなり、光半導体素子搭載用基板の作製が困難となる。
【0038】
上記熱硬化性光反射用樹脂組成物には、必要に応じて、カップリング剤、酸化防止剤、離型剤、イオン補足剤等の添加剤を添加してもよい。
【0039】
上記カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等を用いることができ、シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系、およびこれらの複合系等を用いることができる。カップリング剤の種類や処理条件は特に限定しないが、カップリング剤の配合量は樹脂組成物全体に対して、5重量以下であることが好ましい。
【0040】
上記熱硬化性光反射用樹脂組成物は、上記した各種成分を均一に分散混合することで得ることができ、その手段や条件等は特に限定されない。一般的な手法として、所定配合量の成分をミキサー等によって十分均一に撹拌、混合した後、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等によって混練し、必要に応じて、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。
【0041】
本発明のタブレットは、上記のような熱硬化性光反射用樹脂組成物等の成形材料を本発明のタブレット成形金型を用いて成形してなるものである。成形の際の各種条件は、成形材料の組成等に応じて適宜決定すればよく、特に制限されないが、室温において、0.5〜2MPa、1〜5秒程度の条件下で行うことが好ましい。また、タブレットの形状やサイズは、用途等に応じて適宜決定すればよく、特に制限されない。例えば、一般的なトランスファー成形機のポットにセットして使用するタブレットの場合、代表的には円柱状に成形され、そのサイズはφ13mm、厚みは成形体積によって変化するが10〜50mmの範囲であることが望ましい。
【0042】
本発明の光半導体素子搭載用基板は、光半導体素子搭載領域となる1つ以上の凹部と配線パターン(リードフレーム)とが一体化された構成を有し、少なくとも凹部側壁部が本発明のタブレットを用いたトランスファー成形によって形成されたものである。図2は、本発明の光半導体素子搭載用基板の製造方法を説明する概略図であり、(a)〜(c)はトランスファーモールド成形により基板を製造する各工程に対応する。より具体的には、光半導体素子搭載用基板は、例えば、図2(a)に示すように、金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線105を形成し、次いで該金属配線105を所定形状の金型301に配置し(図2(b))、金型301の樹脂注入口300から熱硬化性光反射用樹脂組成物を注入する。次いで、注入した樹脂組成物を、好ましくは金型温度170〜190℃、成形圧力2〜8MPaで60〜120秒にわたって硬化させた後に金型301を外し、アフターキュア温度120℃〜180℃で1〜3時間にわたって熱硬化させる。次いで、硬化した熱硬化性光反射用樹脂組成物からなるリフレクター103に周囲を囲まれてなる、光半導体素子搭載領域となる凹部200の所定位置に、電気めっきによってNi/銀めっき104を施すことによって製造することが可能である(図2(c))。
【0043】
本発明の光半導体素子搭載用基板を用いた光半導体装置は、例えば、本発明の光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載される光半導体素子と、光半導体素子を覆うように凹部内に形成される蛍光体含有透明封止樹脂層とを少なくとも備える。図3(a)および図3(b)は、それぞれ本発明の光半導体装置の一実施形態を示す側面断面図である。より具体的には、図3に示した光半導体装置は、本発明の光半導体素子搭載用基板110の光半導体素子搭載領域となる凹部(図2の参照符号200)の底部所定位置に光半導体素子100が搭載され、該光半導体素子100と金属配線105とがボンディングワイヤ102やはんだバンプ107などの公知の方法によってNi/銀メッキ104を介して電気的に接続され、該光半導体素子100が公知の蛍光体106を含む透明封止樹脂101により覆われている。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例1は本発明のタブレットの作製に関する。最初に、下記に示した各成分を、混練温度20〜30℃、混練時間10分の条件でロール混練することによって、熱硬化性光反射用樹脂組成物を調製した。
(硬化性光反射用樹脂組成物)
エポキシ樹脂:
トリグリシジルイソシアヌレート 100重量部
(エポキシ当量100)
硬化剤:
ヘキサヒドロ無水フタル酸 140重量部
硬化促進剤:
テトラ−n−ブチルホスホニウム− 2.4重量部
o,o−ジエチルホスホロジチオエート
無機充填材:
溶融シリカ(平均粒径20μm) 600重量部
アルミナ(平均粒径1μm) 890重量部
白色顔料:
中空粒子(平均粒径27μm) 185重量部
(3M社製「グラスバブルズS60HS(商品名)」)
カップリング剤:
エポキシシラン 19重量部
酸化防止剤:
9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10− 1重量部
ホスファフェナントレン−10−オキシド
次いで、アルミナからなる成形金型を用い、上記熱硬化性光反射用樹脂組成物を、室温(25℃)、成形圧力2MPa、3秒間の条件で成形し、φ13mm、厚さ15mmの円柱状のタブレットを作製した。なお、成形金型は杵と臼の一対から構成される構造を有し(図1を参照されたい)、成形時に樹脂組成物と接する表面の硬度(以下、「表面硬度」と称す)はロックウェル硬度Cスケールで80.0であった。
【0045】
(実施例2)
アルミナ製の成形金型の代わりに、4フッ化エチレン−エチレン共重合体からなる成形金型を用いた以外は、実施例1と同様にしてタブレットを作製した。なお、成形金型の表面硬度は、ロックウェル硬度Rスケールで50であった。
【0046】
(実施例3)
アルミナ製の成形金型の代わりに、3フッ化塩化エチレン樹脂からなる成形金型を用いた以外は、実施例1と同様にしてタブレットを作製した。なお、成形金型の表面硬度は、ロックウェル硬度Rスケールで93であった。
【0047】
(実施例4)
アルミナ製の成形金型の代わりに、フッ化ビニリデン樹脂からなる成形金型を用いた以外は、実施例1と同様にしてタブレットを作製した。なお、成形金型の表面硬度は、ロックウェル硬度Rスケールで110であった。
【0048】
(比較例1)
アルミナ製の成形金型の代わりに、本体が鉄−ニッケル合金からなり、樹脂組成物と接する表面がクロームめっきされた成形金型を用いた以外は、実施例1と同様にしてタブレットを作製した。なお、成形金型の表面硬度は、ロックウェル硬度Rスケールで65であった。
【0049】
(比較例2)
アルミナ製の成形金型の代わりに、本体が鉄−ニッケル合金からなり、樹脂組成物と接する表面がダイクロンめっきされた成形金型を用いた以外は、実施例1と同様にしてタブレットを作製した。なお、成形金型の表面硬度は、ロックウェル硬度Rスケールで68であった。
【0050】
(比較例3)
アルミナ製の成形金型の代わりに、4フッ化エチレン樹脂からなる成形金型を用いた以外は、実施例1と同様にしてタブレットを作製した。しかし、成形金型が軟質で、成形時に成形金型の杵部が変形してしまい、タブレットを作製することができなかった。なお、成形金型の表面硬度は、ロックウェル硬度Rスケールで18であった。
【0051】

<タブレットの評価試験>
各実施例及び各比較例で作製したタブレットの表面着色および光反射率について、下記に従って評価した。その結果を表1に示す。
(表面着色)
○:目視にて着色が確認できない
×:目視にて着色が認められる
(光反射率)
各タブレットをトランスファー成形機のポットにセットし、プランジャーにて加圧溶融させた後、これを金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で硬化成形し、さらに150℃、2時間で後硬化を行い、厚み1.0mmの光反射率測定用試験片を作製した。作製した各試験片について、積分球型分光光度計V−750型(日本分光株式会社製)を用いて、波長350〜800nmにおける光反射率をそれぞれ測定し、下記に従って評価した。その結果を表1に示す。
光反射率の評価基準
○:光反射率80%以上
△:光反射率70%以上80%未満
×:光反射率70%未満
【表1】

【0052】
表1に示したように、各実施例のタブレットは、その表面(側壁)が着色しておらず、また、各実施例のタブレットで作製した成形品(試験片)の光反射率は、すべて80%以上であった。
【符号の説明】
【0053】
10 タブレット成形金型
10a 臼
10b 上杵
10c 下杵
20 樹脂組成物
100 光半導体素子(LED素子)
101 透明封止樹脂
102 ボンディングワイヤ
103 リフレクター(熱硬化性光反射用樹脂組成物)
104 Ni/Agめっき
105 金属配線
106 蛍光体
107 はんだバンプ
110 光半導体素子搭載用基板
200 光半導体素子搭載領域(凹部)
300 樹脂注入口
301 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフレクター用タブレットの成形方法であって、
少なくとも白色顔料と熱硬化性樹脂とを含有するリフレクター用白色樹脂組成物をタブレットに成形するためのタブレット成形金型であり、臼と杵の一対又は凹部を有する上金型及び下金型の一対からなる構造を有し、少なくとも前記樹脂組成物と接する前記成形金型の内表面がセラミック系材料またはフッ素系材料から構成され、特定の硬度を有するタブレット成形金型を使用し、前記タブレット成形金型に前記樹脂組成物を入れ、加圧すること特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記成形金型の内表面がセラミックス系材料から構成され、ロックウェル硬度Cスケールで70以上の硬度を有することを特徴とする請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記成形金型の内表面がフッ素系樹脂材料から構成され、ロックウェル硬度Rスケールで50以上の硬度を有することを特徴とする請求項1に記載の成形方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、さらに無機充填材を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、白色顔料及びカップリング剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項6】
前記無機充填材が、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4または5に記載の成形方法。
【請求項7】
前記白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、中空粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項8】
前記白色顔料の平均粒径が、1〜50μmの範囲である請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項9】
前記無機充填材と前記白色顔料との合計量が、前記樹脂組成物全体に対して、10体積%〜95体積%の範囲である請求項4〜8のいずれか1項に記載の成形方法。
【請求項10】
波長800nm〜350nmにおける光反射率が80%以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の成形方法によって得られたタブレット。
【請求項11】
光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、少なくとも前記凹部側壁を、請求項10に記載のタブレットを用いたトランスファー成形により形成することを特徴とする光半導体素子搭載用基板の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法により製造された光半導体素子搭載用基板と、
前記光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載された光半導体素子と、
前記光半導体素子を覆うように前記凹部内に形成される蛍光体含有透明封止樹脂層と
を備える光半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−214054(P2012−214054A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136933(P2012−136933)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2007−241149(P2007−241149)の分割
【原出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】