説明

ターボチャージャの制御装置

【課題】ストッパを用いて可変ノズル機構の動作を制限するターボチャージャの制御装置において、低水温時などにおいて背圧を適切に上昇させる。
【解決手段】ターボチャージャの制御装置において、第1のストッパは、可変ノズル機構における閉位置を規制可能に構成され、第2のストッパは、第1のストッパによって規制される閉位置よりも閉側に、可変ノズル機構における閉位置を規制可能に構成される。また、制御手段は、第1のストッパ及び第2のストッパのいずれか一方によって、可変ノズル機構における閉位置が規制されるように制御を行う。具体的には、制御手段は、低水温、軽負荷領域である場合に、第2のストッパによって可変ノズル機構における閉位置の規制を行う。これにより、低水温時などにおいて、ターボチャージャによる背圧を上昇させることができ、失火を適切に防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変ノズル機構を備えたターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ターボチャージャにおいて、タービンホイールへの排気流入部に複数のベーン(可変ベーン)を設け、タービンへの排気流入流速を制御してタービン効率を向上させる可変ノズル機構(バリアブルノズル機構)が用いられている。例えば、特許文献1には、可変ノズル機構における開位置を規制する開側ストッパと閉位置を規制する閉側ストッパとを設けることによって、可変ノズル機構における排気流量のばらつきを拘束範囲内に収める技術が記載されている。また、特許文献2には、静止部材に固定され、ユニゾンリングに形成された溝からなるガイド中に突入するストッパを備えるターボチャージャが記載されている。その他にも、本発明に関連する技術が特許文献3に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−119092号公報
【特許文献2】特開平10−37754号公報
【特許文献3】特開2003−227343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1及び2に記載された技術では、ストッパの位置が固定されているため、基本的には、ストッパによって規制される閉位置よりも更に閉側に可変ノズル機構を設定することができなかった。そのため、低水温時などにおいて、ストッパによる閉位置で規定される背圧に制限されて、望ましい背圧を得ることができない場合があった。なお、特許文献3に記載された技術では、ストッパを用いた場合については考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ストッパを用いて可変ノズル機構の動作を制限するターボチャージャの制御装置において、低水温時などにおいて背圧を適切に上昇させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、可変ノズル機構を備えるターボチャージャの制御装置は、前記可変ノズル機構における閉位置を規制可能に構成された第1のストッパと、前記第1のストッパによって規制される閉位置よりも閉側に、前記可変ノズル機構における閉位置を規制可能に構成された第2のストッパと、前記第1のストッパ及び前記第2のストッパのいずれか一方によって、前記可変ノズル機構における閉位置が規制されるように制御を行う制御手段と、を有し、前記制御手段は、内燃機関における水温が所定温度未満である場合、又は前記内燃機関における負荷が所定未満である場合に、前記第2のストッパによって前記可変ノズル機構における閉位置が規制されるように前記制御を行う。
【0007】
上記のターボチャージャの制御装置は、可変ノズル機構を備えるターボチャージャに対して制御を行う。具体的には、第1のストッパは、可変ノズル機構における閉位置を規制可能に構成され、第2のストッパは、第1のストッパによって規制される閉位置よりも閉側に、可変ノズル機構における閉位置を規制可能に構成される。また、制御手段は、第1のストッパ及び第2のストッパのいずれか一方によって、可変ノズル機構における閉位置が規制されるように制御を行う。具体的には、制御手段は、内燃機関における水温が所定温度未満である場合、内燃機関における負荷が所定未満である場合に、第2のストッパによって可変ノズル機構における閉位置が規制されるように制御を行う。つまり、失火が発生しやすい低水温、軽負荷領域であるなど場合に、第2のストッパによって可変ノズル機構における閉位置の規制を行う。これにより、可変ノズル機構をより閉側に設定することができ、ターボチャージャによる背圧を上昇させることが可能となる。よって、低水温時などにおいて、負荷を増加させることができると共に、内部EGRを増加させることができるため、失火を適切に防止することが可能となる。
【0008】
上記のターボチャージャの制御装置の一態様では、前記第1のストッパは、移動可能に構成されており、前記制御手段は、前記第1のストッパの移動を制御する。これにより、第1のストッパを移動させることで、可変ノズル機構における閉位置を規制する位置を適切に変更することができる。
【0009】
また、上記のターボチャージャの制御装置において好適には、前記第2のストッパは、前記第1のストッパの移動を規制するように構成されている。
【0010】
上記のターボチャージャの制御装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記水温及び前記負荷だけでなく吸気温にも基づいて、前記第1のストッパ及び前記第2のストッパのいずれを用いて前記可変ノズル機構における閉位置を規制するかを判定する。これにより、第2のストッパが使用される領域を限定することができる。よって、第2のストッパを用いたことにより、可変ノズル機構がより閉側に設定されてしまったことに起因して、背圧クライテリアや回転クライテリアなどを超えてしまうことを適切に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0012】
[装置構成]
図1は、本実施形態に係るターボチャージャの制御装置が適用された車両100の概略構成を示すブロック図である。なお、図1では、実線の矢印は吸気及び排気の流れを示し、破線の矢印は信号の入出力を示す。
【0013】
内燃機関(エンジン)10は、直列4気筒のエンジンとして構成され、車両100の走行用動力源を出力する。例えば、内燃機関10は、低圧縮比の圧縮着火エンジン(CI(Compression Ignition)エンジン)などで構成される。内燃機関10の各気筒は、吸気マニホールド11及び排気マニホールド12に接続されている。内燃機関10は、各気筒に設けられた燃料噴射弁15と、各燃料噴射弁15に対して高圧の燃料を供給するコモンレール14とを備え、コモンレール14には不図示の燃料ポンプにより燃料が高圧状態で供給される。
【0014】
吸気マニホールド11に接続された吸気通路20には、内燃機関10へ供給される吸気量を検出するエアフロメータ(AFM)21と、吸気量を調整するスロットルバルブ22aと、吸気を過給するターボチャージャ23のコンプレッサ23aと、吸気を冷却するインタークーラ(IC)24と、吸気量を調整するスロットルバルブ22bと、が設けられている。一方、排気マニホールド12に接続された排気通路25には、排気ガスのエネルギーによって回転されるターボチャージャ23のタービン23bと、排気ガスを浄化可能な触媒30とが設けられている。
【0015】
ターボチャージャ23は、可変ノズル機構44を備えて構成される。可変ノズル機構44は、タービン23bへの排気流入部に配置された複数のベーン(不図示)などを有しており、モータ(ステッピングモータ)45によってベーンにおける開度が制御される。この場合、可変ノズル機構44を閉じ側に設定するとターボチャージャ23による過給圧は上昇する傾向にあり、可変ノズル機構44を開き側に設定するとターボチャージャ23による過給圧は減少する傾向にある。なお、モータ45は、ECU7から供給される制御信号S45により制御される。更に、可変ノズル機構44には、当該可変ノズル機構44における閉位置を規制可能に構成された第1のストッパ51が設けられている。具体的には、第1のストッパ51は、移動可能に構成されており、ストッパ制御機構55によって移動が制御される。ストッパ制御機構55は、ECU7から供給される制御信号S55により制御され、例えば油圧などを用いて第1のストッパ51に対する制御を行う。なお、第1のストッパ51などの詳細については後述する。
【0016】
また、車両100は、タービン23bの上流側からコンプレッサ23aの下流側に、排気ガスを還流させるように構成されている。具体的には、排気通路25のタービン23bの上流位置と、吸気通路20のインタークーラ24より下流位置とを接続するEGR通路31によって、排気ガスが還流される。このEGR通路31上には、EGRガス量を制御するためのEGR弁33が設けられている。
【0017】
車両100には、各種のセンサが設けられている。具体的には、内燃機関10には、回転数センサ42及び水温センサ43が設けられている。回転数センサ42は、内燃機関10の回転数を検出し、検出した回転数に対応する検出信号S42をECU7に供給する。水温センサ43は、内燃機関10などの冷却を行う冷却水の温度(以下、単に「水温」と呼ぶ。)を検出し、水温に対応する検出信号S43をECU7に供給する。更に、吸気通路20上には、吸気温を検出する吸気温センサ46が設けられている。吸気温センサ46は、検出した吸気温に対応する検出信号S46をECU7に供給する。なお、車両100には、上記したセンサ以外にも種々のセンサが設けられているが、本実施形態と特に関係の無い部分については説明を省略する。
【0018】
車両100の各要素は、ECU(Engine Control Unit)7により制御されている。ECU7は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備えて構成される。本実施形態では、主に、ECU7は、回転数センサ42、水温センサ43、及び吸気温センサ46から供給される検出信号S42、S43、S46に基づいて、ストッパ制御機構55に対して制御信号S55を供給する。つまり、ECU7は、運転状況などに基づいて、第1のストッパ51を制御する。このように、ECU7は、本発明における制御手段に相当する。なお、ECU7は車両100における他の構成要素の制御も行うが、本実施形態と特に関係の無い部分については説明を省略する。
【0019】
なお、本発明は、図1に示したような直列4気筒の内燃機関10への適用に限定はされず、4気筒以外の気筒数で構成された内燃機関や、気筒がV型に配列された内燃機関に対しても適用することができる。更に、本発明は、直噴タイプの燃料噴射弁15によって構成された内燃機関10への適用に限定はされず、ポート噴射タイプの燃料噴射弁によって構成された内燃機関に対しても適用することができる。
【0020】
[ターボチャージャの構成]
次に、本実施形態におけるターボチャージャ23の構成について、図2及び図3を参照して説明する。
【0021】
図2は、ターボチャージャ23全体を拡大して表した図を示している。図2に示すように、ターボチャージャ23は、コンプレッサ23a及びタービン23bを有している。また、モータ45は、ロッド45aを介して、前述した可変ノズル機構44(図2においては図示せず)における開度を制御する。
【0022】
図3は、図2中の矢印B1方向から観察した図を示している。具体的には、タービン23bから排気ガスが排出される開口部23ba付近を示している。図3に示すように、ロッド45aはモータ45によって制御されることによって、矢印C1で示すように移動する。この場合、ロッド45aに連結されたアーム45bは、軸45cを中心にして揺動する。これにより、矢印C2に示すように、軸45cが回転する。つまり、モータ45によってロッド45aが移動されてアーム45bが回転されることにより、軸45cが回転される。このような軸45cの回転により、可変ノズル機構44におけるベーンの開度が変化する。
【0023】
具体的には、軸45cが反時計回りに回転されると、可変ノズル機構44は閉じ側に設定される。この場合には、アーム45bは矢印C3で示す方向に回転されることとなる。ここで、アーム45bを矢印C3で示す方向に回転させていくと、アーム45bは第1のストッパ51に接触する。これにより、アーム45bの回転が制限されて、軸45cにおける反時計回りへの回転も制限されることとなる。したがって、可変ノズル機構44における閉位置が規制されることとなる。なお、このようにして可変ノズル機構44における閉位置を規制しているのは、主に、可変ノズル機構44を最大限閉側(全閉側)に設定した場合にも、タービン23bを通過する排気ガスの微小な流量を確保するためである。
【0024】
更に、第1のストッパ51は、矢印C4で示す方向に、前述したストッパ制御機構55(図3においては図示せず)によって移動可能に構成されている。具体的には、ストッパ制御機構55は、ECU7から供給される制御信号S55に応じて、油圧などを利用して第1のストッパ51を移動させる制御を行う。また、矢印C4で示す第1のストッパ51の移動方向には、第2のストッパ52が配設されている。そのため、矢印C4で示す方向に第1のストッパ51を移動させていくと、第1のストッパ51は第2のストッパ52に接触することとなる。この場合、第2のストッパ52は固定されているため、当該第2のストッパ52によって第1のストッパ51の移動が制限されることとなる。なお、以下では、第1のストッパ51及び第2のストッパ52の区別をしないで用いる場合には、単に「ストッパ」と表記する。
【0025】
第1のストッパ51は、基本的には、第2のストッパ52からある程度離れた基準位置と、第2のストッパ52に接触するような位置(以下、「接触位置」と呼ぶ。)との間を移動される。即ち、第1のストッパ51は、ストッパ制御機構55によって移動されることにより、基準位置と接触位置とのいずれかの位置に固定される。具体的には、第1のストッパ51における基準位置は、主に、ハード固体による排気流量のばらつきを管理値内に合わせることを目的として設定されている。更に、基準位置は、ターボチャージャ23における背圧クライテリアやタービン23bにおける回転クライテリアなどを考慮に入れて設定されている。例えば、背圧クライテリアや回転クライテリアなどを超えないように、ある程度余裕を持たせた位置に設定される。一方、第1のストッパ51における接触位置は、低水温時などにおいて、背圧をより上昇させることを目的として設定されている。つまり、低水温時などにおいて、可変ノズル機構44をより閉側に設定可能にするために設定されている。
【0026】
ここで、第1のストッパ51を基準位置に位置させた場合と接触位置に位置させた場合とを比較する。第1のストッパ51を接触位置に位置させた場合には、第1のストッパ51を基準位置に位置させた場合と比較すると、アーム45bは矢印C3で示す方向の回転可能範囲が大きくなり、軸45cも反時計回り方向における回転可能範囲が大きくなる。よって、このように第1のストッパ51を接触位置に位置させることにより、可変ノズル機構44における閉位置を規制する位置を、より閉側に変更することが可能となる。これにより、可変ノズル機構44をより閉側に設定することができ、ターボチャージャ23による背圧を上昇させることが可能となる。
【0027】
[制御方法]
次に、ECU7が行う制御方法について具体的に説明する。
【0028】
(第1実施例)
まず、第1実施例に係る制御方法について説明する。第1実施例では、ECU7は、運転状況などに基づいて、ストッパ制御機構55を介して第1のストッパ51に対する制御を行う。つまり、ECU7は、ストッパ制御機構55に対して制御信号S55を供給することにより第1のストッパ51を移動させることによって、可変ノズル機構44における閉位置を規制する位置を変更する制御を行う。言い換えると、ECU7は、運転状況などに基づいて、可変ノズル機構44における閉位置を規制するために用いるストッパを、第1のストッパ51と第2のストッパ52とのいずれかに切り替える制御を行う。
【0029】
具体的には、ECU7は、水温が所定温度未満である場合又は負荷が所定未満である場合に、つまり低水温又は軽負荷領域である場合に、第1のストッパ51を接触位置にまで移動させる。即ち、接触位置に位置する第1のストッパ51によって、可変ノズル機構44における閉位置の規制を行う。言い換えると、第2のストッパ52によって可変ノズル機構44における閉位置の規制を行う。これにより、低水温時などにおいて、可変ノズル機構44における閉位置を規制する位置をより閉側に変更することができる。したがって、可変ノズル機構44をより閉側に設定することができ、ターボチャージャ23による背圧を適切に上昇させることが可能となる。これに対して、低水温、軽負荷領域でない場合(以下、単に「通常時」と呼ぶ。)には、ECU7は、第1のストッパ51を基準位置に移動させるように制御を行う。つまり、基準位置に位置する第1のストッパ51によって、可変ノズル機構44における閉位置の規制を行う。
【0030】
図4は、ECU7が行う制御方法を模式的に表した図を示す。具体的には、図4(a)は通常時における各構成要素の状態の一例を示し、図4(b)は低水温、軽負荷領域である場合における各構成要素の状態の一例を示している。なお、図4では、説明の便宜上、上下方向に可変ノズル機構44における開度を表現している。具体的には、モータ45におけるロッド45aの先端部の位置によって可変ノズル機構44の開度を表現しており、上方向に閉じ側を表しており、下方向に開き側を表している。また、第1のストッパ51が基準位置に位置されている状態を図4(a)に示すように表現し、第1のストッパ51が接触位置に位置されている状態を図4(b)に示すように表現している。つまり、第1のストッパ51を部材54の壁面上に位置させることによって、基準位置にある第1のストッパ51を表現している。これに対して、白抜き矢印のように第1のストッパ51を部材54内に収納させることによって、接触位置にある第1のストッパ51を表現している、言い換えると第2のストッパ52によって閉位置を規制していることを表現している。更に、図4中の符号53で示す構成要素は、可変ノズル機構44における開位置を規制するストッパを示している。
【0031】
具体的には、図4(a)に示すように、通常時(低水温、軽負荷領域でない場合)には、ECU7は、第1のストッパ51を基準位置に位置させる。この場合には、基準位置に位置する第1のストッパ51によって、可変ノズル機構44における閉位置が規制されることとなる。これに対して、図4(b)に示すように、低水温、軽負荷領域である場合には、ECU7は、第1のストッパ51を接触位置に位置させる。この場合には、接触位置に位置する第1のストッパ51によって、可変ノズル機構44における閉位置が規制されることとなる。言い換えると、第2のストッパ52によって可変ノズル機構44における閉位置が規制されることとなる。そのため、図4(b)中のロッド45aの位置からわかるように、基準位置に位置する第1のストッパ51によって規制される位置よりも閉側に、可変ノズル機構44を設定することが可能となる。
【0032】
このように第1実施例によれば、第1のストッパ51と第2のストッパ52とを用いることによって、可変ノズル機構44における閉位置を規制する位置を適切に変更することができる。したがって、低水温、軽負荷領域である場合に、第2のストッパ52によって可変ノズル機構44における閉位置を規制することが可能となる。これにより、可変ノズル機構44をより閉側に設定することができ、ターボチャージャ23による背圧を上昇させることが可能となる。よって、低水温時などにおいて、負荷を増加させることができると共に、内部EGRを増加させることができるため、失火を適切に防止することが可能となる。特に、低圧縮エンジンにおいては、低水温時などにおける対失火性が比較的弱いため、第1実施例によれば、低圧縮エンジンにおいて発生し得る失火を効果的に防止することが可能となる。
【0033】
(第2実施例)
次に、第2実施例に係る制御方法について説明する。第2実施例でも、前述した第1実施例と同様に、ECU7は、第1のストッパ51を移動させることによって、可変ノズル機構44における閉位置を規制する位置を変更する制御を行う。つまり、可変ノズル機構44における閉位置を規制するために用いるストッパを、第1のストッパ51と第2のストッパ52とのいずれかに切り替える制御を行う。しかしながら、第2実施例では、第2のストッパ52を用いて可変ノズル機構44における閉位置を規制する領域(運転状況などにより定められる領域)を、第1実施例よりも限定する。言い換えると、接触位置に位置する第1のストッパ51によって閉位置の規制を行う領域を、第1実施例よりも狭める。こうするのは、第2のストッパ52を用いることにより、第2のストッパ52によって規制される閉位置付近の開度(第1のストッパ51によって規制される閉位置よりも閉側)に可変ノズル機構44が設定された際に、背圧クライテリアや回転クライテリアなどを超えてしまうことを確実に防止するためである。
【0034】
具体的には、第2実施例では、ECU7は、水温及び負荷だけでなく吸気温にも基づいて、可変ノズル機構44における閉位置を規制するために用いるストッパを決定する。つまり、第1のストッパ51及び第2のストッパ52のいずれを用いて閉位置を規制するかを判定する。より具体的には、まず水温及び吸気温に基づいて判定を行い、この判定結果に基づいて、負荷(回転数及び噴射量)に基づいて更に判定を行う。例えば、ECU7は、低水温又は低吸気温であり、且つ低負荷領域である場合に、第2のストッパ52によって可変ノズル機構44における閉位置を規制すべきと決定し、これ以外の場合には、第1のストッパ51によって可変ノズル機構44における閉位置を規制すべきと決定する。また、この場合、水温の判定に用いる判定値を第1実施例で用いた判定値よりも低く設定したり、負荷の判定に用いる判定値を第1実施例で用いた判定値よりも低く設定したりすることができる。なお、上記した「低負荷領域」は、第1実施例で用いた「軽負荷領域」よりも負荷が低い領域を意味するものとする。
【0035】
図5は、可変ノズル機構44における閉位置の規制を行うストッパを決定する方法の具体例を示す図である。図5(a)は、ストッパを決定する際に用いるテーブルを選択するためのマップの一例を示している。マップは、水温(横軸に示す)と吸気温(縦軸に示す)とによって規定される。また、マップにおいて、領域A1は第1テーブルを用いる領域を示しており、領域A2は第2テーブルを用いる領域を示している。これより、領域A1で示す第1テーブルは、低水温又は低吸気温である領域に相当することがわかる。
【0036】
ECU7は、まず、図5(a)に示すようなマップを用いて、閉位置の規制を行うストッパを決定する際に用いるテーブルを選択する。具体的には、ECU7は、水温センサ43及び吸気温センサ46から取得された水温及び吸気温が領域A1及び領域A2のいずれに属するかによって、第1テーブル及び第2テーブルのいずれか一方を決定する。
【0037】
図5(b)は、第1テーブルの一例を示している。第1テーブルは、回転数(横軸に示す)と噴射量(縦軸に示す)とによって規定される。第1テーブルにおいて、領域A3は第2のストッパ52によって可変ノズル機構44における閉位置を規制すべき領域(以下、「第2のストッパ使用領域」と呼ぶ。)に相当する。これに対して、領域A4は第1のストッパ51によって可変ノズル機構44における閉位置を規制すべき領域(以下、「第1のストッパ使用領域」と呼ぶ。)に相当する。これより、第2のストッパ使用領域A3は、低負荷領域に位置することがわかる。
【0038】
ECU7は、前述したマップ(図5(a)参照)により第1テーブルが決定された場合、この後、図5(b)に示すような第1テーブルを用いて、可変ノズル機構44における閉位置の規制を行うストッパを決定する。具体的には、ECU7は、回転数センサ42から取得された回転数及び噴射量(例えば燃料噴射弁15に対して供給している制御信号より得られる)が第2のストッパ使用領域A3及び第1のストッパ使用領域A4のいずれに属するかによって、第1のストッパ51及び第2のストッパ52のいずれか一方を決定する。
【0039】
一方、図5(c)は、第2テーブルの一例を示している。第2テーブルも、回転数(横軸に示す)と噴射量(縦軸に示す)とによって規定される。第2テーブルにおいては、領域A5の全てが第1のストッパ使用領域で構成されていることがわかる。そのため、図5(a)に示すマップを用いた判定により第2テーブルが決定された場合には、第1のストッパ51が、必然的に、可変ノズル機構44における閉位置の規制を行うストッパとして決定されることとなる。つまり、ECU7は、前述したマップ(図5(a)参照)により第2テーブルが決定された場合、可変ノズル機構44における閉位置の規制を行うストッパとして第1のストッパ51を決定する。
【0040】
このような第1テーブル及び第2テーブルによれば、失火が発生しやすい状況において、可変ノズル機構44における閉位置の規制を行うストッパとして、第2のストッパ52を適切に決定することができる。言い換えると、低水温又は低吸気温であり、且つ低負荷領域である場合に、第2のストッパ52を適切に決定することが可能となる。これに対して、失火が発生しないような状況においては、第1のストッパ51を適切に決定することができる。したがって、第2のストッパ52を用いたことにより、可変ノズル機構44がより閉側に設定されてしまったことに起因して、背圧クライテリアや回転クライテリアなどを超えてしまうことを効果的に防止することが可能となる。なお、上記した第1テーブル、第2テーブル、及び第1のストッパ使用領域、並びに第2のストッパ使用領域は、背圧クライテリアや回転クライテリアなどを超えてしまうことが確実に防止されるように、適合などにより予め設定される。
【0041】
以上説明した第2実施例によれば、低水温時などにおける失火の発生を適切に防止しつつ、背圧クライテリアや回転クライテリアなどを超えてしまうことを効果的に防止することが可能となる。
【0042】
[変形例]
上記では、第1のストッパ51の移動を規制するように第2のストッパ52を構成する例を示したが、これに限定はされない。他の例では、移動させることによって収納可能に第1のストッパを構成すると共に、第1のストッパが収納された場合に、第1のストッパの代わりに、モータ45におけるアーム45bの回転が制限可能なように第2のストッパを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態に係るターボチャージャの制御装置が適用された車両の概略構成図を示す。
【図2】ターボチャージャ全体を拡大して表した図を示す。
【図3】図2中の矢印B1方向から観察した図を示す。
【図4】ECUが行う制御方法を模式的に表した図を示す。
【図5】可変ノズル機構における閉位置の規制を行うストッパを決定する方法の具体例を示す。
【符号の説明】
【0044】
7 ECU
10 内燃機関
20 吸気通路
23 ターボチャージャ
23a コンプレッサ
23b タービン
44 可変ノズル機構
45 モータ
51 第1のストッパ
52 第2のストッパ
55 ストッパ制御機構
100 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ノズル機構を備えるターボチャージャの制御装置であって、
前記可変ノズル機構における閉位置を規制可能に構成された第1のストッパと、
前記第1のストッパによって規制される閉位置よりも閉側に、前記可変ノズル機構における閉位置を規制可能に構成された第2のストッパと、
前記第1のストッパ及び前記第2のストッパのいずれか一方によって、前記可変ノズル機構における閉位置が規制されるように制御を行う制御手段と、を有し、
前記制御手段は、内燃機関における水温が所定温度未満である場合、又は前記内燃機関における負荷が所定未満である場合に、前記第2のストッパによって前記可変ノズル機構における閉位置が規制されるように前記制御を行うことを特徴とするターボチャージャの制御装置。
【請求項2】
前記第1のストッパは、移動可能に構成されており、
前記制御手段は、前記第1のストッパの移動を制御する請求項1に記載のターボチャージャの制御装置。
【請求項3】
前記第2のストッパは、前記第1のストッパの移動を規制するように構成されている請求項2に記載のターボチャージャの制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記水温及び前記負荷だけでなく吸気温にも基づいて、前記第1のストッパ及び前記第2のストッパのいずれを用いて前記可変ノズル機構における閉位置を規制するかを判定する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のターボチャージャの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−127540(P2009−127540A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303951(P2007−303951)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】