説明

ダム堤体の変位測定装置および変位測定方法

【課題】ダムの堤体に配置したワイヤの水平方向および鉛直方向の変位を検出でき、ダム堤体の変位を精度良く検出できるダム堤体の変位測定装置を提供すること。
【解決手段】ダム堤体の変位測定装置1は、堤体内部に鉛直に配置された測定ワイヤ2と、測定ワイヤ2に固定された金属球20と、金属球20を撮影する2台のカメラ21,22および照明装置23,24と、各カメラ21,22で撮影された画像を処理する画像処理装置30とを備える。カメラ21,22は、レンズの光軸が水平面内で互いに直交する位置に配置する。画像処理装置30は、撮影画像データから金属球20を認識して重心位置を検出し、その重心位置の変位によって、ダム堤体の変位を測定する。金属球20を2台のカメラ21,22で撮影して重心位置を検出しているので、金属球20の三次元方向の変位量を測定でき、ダム堤体の変位を精度良く検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムの堤体の変位を測定する変位測定装置および変位測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムの堤体の変位を測定するプラムラインと呼ばれる変位測定装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
この特許文献1の変位測定装置は、ダム堤体内に竪坑を形成し、この竪坑の上部にワイヤを固定し、ワイヤ下端に重錘を取り付け、ワイヤの水平方向の変位を検出して堤体の変位を検出している。
【0003】
ここで、ワイヤの水平方向の変位を検出する方法としては、特許文献1の従来技術に開示されたように、光源からワイヤ(懸垂線)に平行光を照射し、ワイヤで遮光された以外の左右の透過光を受光器で受光するものが用いられていた。
この際、受光器に入射する左右の透過光の光量が等しくなるように、前記光源や受光器が取り付けられた可動ベースを移動させ、その移動量によりワイヤの一方向の変位を測定している。そして、このような構成を2セット設け、前記ワイヤのX方向およびY方向の2次元の変位を検出できるようにして、ワイヤの水平方向の変位を検出していた。
【0004】
しかしながら、可動ベースを移動させて変位量を検出する構成では、移動機構のバックラッシュによる誤差が生じるおそれがあった。また、移動機構は、365日24時間動作するため、劣化が激しく、定期的に機材の更新が必要であった。このため、システム全体の信頼性を維持するために点検・整備の工数が膨大となる。
【0005】
そこで、特許文献1では、LED等の単位光源を一定間隔で直線状に配置し、ワイヤ(位置指示棒)を挟んで反対側にCCD等の単位受光素子を1次元に配列した1次元センサーを配置している。そして、前記単位光源を順次駆動し、各単位光源からの光を位置指示棒が遮ることで生じる陰影の位置を、前記1次元センサーで検出して、位置指示棒の変位を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−81316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1の方法では、水平方向に受光素子が並べられた1次元センサーを用いているため、位置指示棒の鉛直方向の変位を検出することができなかった。さらに、位置指示棒の表面に水滴などが付着すると、位置指示棒のエッジ部分によって生じる前記陰影の位置が変化し、位置指示棒の変位を精度良く検出できなかった。
このため、ダムの堤体のたわみ等による変位を高精度に検出することができないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、ダムの堤体に配置したワイヤの水平方向の変位だけでなく、鉛直方向の変位も検出することができ、ダム堤体の変位を精度良く検出することができるダム堤体の変位測定装置および変位測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ダムの堤体または堤体が設置された地盤に一端側が固定され、前記堤体の内部に鉛直に配置された測定ワイヤと、前記測定ワイヤの他端側に固定された位置指示部材と、前記位置指示部材を撮影する2台のカメラと、前記位置指示部材を光で照らす照明装置と、前記各カメラで撮影された画像を処理する画像処理装置と、を備え、前記2台のカメラは、各カメラのレンズの光軸が水平面内で互いに直交する位置に配置され、前記画像処理装置は、前記各カメラの撮影画像データから位置指示部材を認識し、前記位置指示部材の各画像における重心位置を検出し、その重心位置の変位によって、ダム堤体の変位を測定することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、レンズの光軸が水平面内で互いに直交する2台のカメラで位置指示部材を撮影しているので、各画像を処理することで位置指示部材の三次元の変位を検出することができる。すなわち、前記測定ワイヤ(ワイヤロープ)に沿った鉛直方向をZ軸、このZ軸に直交する水平面内で互いに直交する2軸をX軸およびY軸に設定し、前記各カメラをそのレンズの光軸が、X軸およびY軸にそれぞれ沿うように配置する。
このように設置されたカメラで位置指示部材を撮影すれば、一方のカメラで撮影した画像データからは位置指示部材のX軸方向およびZ軸方向の変位を検出でき、かつ、他方のカメラで撮影した画像データからは位置指示部材のY軸方向およびZ軸方向の変位を検出できる。従って、位置指示部材の3次元の変位を検出することができる。このため、従来のように2次元の変位のみしか検出できない場合に比べて、ダム堤体の変位をより高精度に検出できる。すなわち、本発明では位置指示部材の3次元の変位を検出できるので、ダム堤体が水圧などでたわんだ際の堤体上部の高さ位置の変化や、地震発生の前後での高さ位置の変化も検出することができ、ダム堤体の変位を高精度に検出できる。
【0011】
さらに、画像処理装置は、各撮影画像データにおける位置指示部材の重心位置を検出しているので、位置指示部材の変位量を高精度に検出することができる。すなわち、特許文献1のように、位置指示棒に照明を照射した際の陰影の位置で変位を検出する場合、位置指示棒のエッジ部分が照明光を遮ることになる。このため、位置指示棒の表面に水滴や遊離石灰などが付着すると、陰影の状態も変化し、位置指示棒の位置検出に誤差が生じる可能性がある。
これに対し、本発明では、撮影画像データにおける位置指示部材の重心位置を検出しているので、位置指示部材の位置検出精度を高めることができる。例えば、位置指示部材の表面に水滴などが付着していても、撮影画像データの画像処理時に、位置指示部材の基準画像と比較して水滴などのノイズ成分を除去して重心位置を求めることができる。従って、位置指示部材の重心位置を正確に検出でき、この重心位置を、前回測定時の重心位置や予め設定した基準位置等と比較することで、位置指示部材の変位量つまりはダム堤体の変位量を高精度に検出できる。
【0012】
本発明において、前記各カメラの撮影領域内に基準位置設定部材が設けられ、前記画像処理装置は、前記位置指示部材および基準位置設定部材が撮影された撮影画像データを処理して、位置指示部材の重心位置と、基準位置設定部材で設定された基準位置とを検出し、前記基準位置に対する位置指示部材の重心位置を測定して重心位置の変位を求めることが好ましい。
【0013】
ここで、基準位置設定部材は、位置指示部材の変位量を測定する絶対基準となる基準位置を設定するものであり、例えば、2台のカメラが固定される測定ベースに立設された指示棒と、この指示棒の先端に固定された基準球とで構成され、画像処理によって求められる基準球の重心を前記基準位置に設定できるものなどが利用できる。
このような本発明によれば、各カメラで撮影できる位置に基準位置設定部材を設けたので、同じ撮影画像データを画像処理することで基準位置および重心位置を検出でき、基準位置に対する位置指示部材の位置を正確に検出できる。従って、基準位置を原点とすることで、位置指示部材の変位量を絶対値として容易に測定できる。
【0014】
本発明において、前記位置指示部材は球体であることが好ましい。
位置指示部材としては、各カメラで撮像した際に重心位置を検出できる形状の部材であればよい。例えば、位置指示部材としては、直方体状や円柱状のものなどを用いることができるが、最も好ましいのは球体である。
位置指示部材を球体で構成すれば、表面に平面部分が存在しないため、水滴なども付着し難い。その上、位置指示部材が球体であれば、どの方向から撮影してもその撮影画像は必ず円形となるため、水滴などが付着した部分が存在しても、撮影画像データからその部分を除去して重心位置を求めることも容易に行うことができる。
従って、位置指示部材を球体で構成すれば、各撮影画像データから位置指示部材の重心位置を容易にかつ正確に検出でき、位置指示部材の変位量も高精度に検出できる。
【0015】
本発明において、前記測定ワイヤの温度を測定する温度センサーを備え、前記画像処理装置は、測定ワイヤの温度膨張係数と、前記温度センサーで測定された温度と、測定ワイヤの一端側の固定位置から前記位置指示部材までの長さ寸法とを用いて温度補正量を求め、この温度補正量を加味して前記位置指示部材の鉛直方向の変位を検出することが好ましい。
【0016】
位置指示部材の鉛直方向(Z軸方向)の変位を高精度に検出するには、位置指示部材が取り付けられた測定ワイヤの温度膨張も考慮する必要がある。すなわち、測定ワイヤはピアノ線等で構成され、かつ、その長さもダム堤体の上端部から下端部まで配置されて数十メートルになる場合もあり、温度膨張による変化量も比較的大きい。このため、位置指示部材の鉛直方向の位置は、温度の影響を受けて変化する。従って、温度センサーで測定ワイヤの温度を測定し、温度の影響を補正すれば、位置指示部材の鉛直方向の位置をより高精度に検出できる。
なお、温度センサーとしては、測定ワイヤに温度センサーが接触すると、位置指示部材の位置に誤差が生じるため、非接触タイプの温度センサーが好ましい。
また、前記測定ワイヤが配置される空間の温度を測定することで、測定ワイヤの温度を間接的に検出するものでもよい。
【0017】
本発明において、前記カメラで撮像された画像を表示する表示装置を備えることが好ましい。
表示装置を備えていれば、ダムの管理者が位置指示部材の撮影状態をリアルタイムで確認できる。このため、例えば、地震が発生してカメラ位置がずれ、位置指示部材を撮影できない状態になった場合に、その状態を即座に確認でき、カメラ位置の修正作業などを即座に行うことができる。
また、前記表示装置にスケールも合わせて表示することで、管理者が目視で位置指示部材の概略位置を即座に把握でき、特に地震などで大きな変位があった場合に迅速に対応できる。
【0018】
本発明において、前記カメラは第1の間隔で撮影処理を実行し、前記画像処理装置は、前記カメラで撮影された画像データを第1の記憶部に一時的に記憶し、所定の外部信号または規定値を超えた変位が検出された場合に、その検出時点の画像データと、その検出時点の前後の所定時間範囲の画像データとを、前記第1の記憶部から読み出して第2の記憶部に記憶することが好ましい。
【0019】
ここで、前記外部信号としては、例えば、ダムに設置された地震計で地震発生を検知した場合に出力される地震検知信号や、地震発生時に送信される緊急地震警報の信号などである。
このような本発明によれば、地震発生前後の位置指示部材の状態を画像で把握することができる。このため、地震発生時の位置指示部材の挙動を確認でき、ダム堤体の損傷などの判断材料の一つとして利用することができる。
同様に、位置指示部材の変位として規定値を超えた場合も、その規定値を超えた時点の前後の位置指示部材の状態が画像で把握することができ、規定値を超えた原因解析の材料の一つとして利用することもできる。
その上、第1の記憶部に記憶される画像データを記憶されてから一定時間で消去するようにすれば、上記外部信号が入力された場合や規定値を超えた変位が検出された場合の画像データのみを第2の記憶部に記憶すれば良く、保存する画像データの容量を最小限に抑えることができる。
【0020】
本発明のダム堤体の変位測定方法は、ダムの堤体または堤体が設置された地盤に一端側が固定され、前記堤体の内部に鉛直に配置された測定ワイヤと、前記測定ワイヤの他端側に固定された位置指示部材と、レンズの光軸が水平面内で互いに直交する位置に配置されて前記位置指示部材を撮影する2台のカメラと、前記位置指示部材を光で照らす照明装置と、を備えた変位測定装置を用いたダム堤体の変位測定方法であって、前記各カメラの撮影画像データから位置指示部材を認識し、その前記位置指示部材の各画像における重心位置を検出し、その重心位置の変位によって、ダム堤体の変位を測定することを特徴とする。
【0021】
このような本発明においても、位置指示部材の重心位置を求め、その変位を検出しているので、位置指示部材の3次元の変位を検出でき、かつ、位置指示部材の変位量を高精度に検出できる。このため、ダム堤体の変位を高精度に検出できる。
【0022】
本発明の変位測定方法において、前記位置指示部材が基準位置にある際に撮影した画像データからマスターパターンを作成し、前記撮影画像データで認識された位置指示部材に対し、前記マスターパターンを重ね合わせて残差マッチング処理を行い、重ね合わせの残差が最小となる際の前記マスターパターンに設定した中心位置を、前記位置指示部材の重心位置として検出することが好ましい。
【0023】
本発明によれば、マスターパターンを用いた残差マッチング処理で位置指示部材の重心位置を求めることができるので、画像処理を短時間で行え、重心位置を容易に検出できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ダムの堤体に配置した測定ワイヤの水平方向の変位だけでなく、鉛直方向の変位も検出することができ、かつ、位置指示部材の重心位置を検出してその変位を測定しているので、ダム堤体の変位を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る変位測定装置を示す概略斜視図である。
【図2】前記実施形態の変位測定装置の主要部を示すブロック図である。
【図3】前記実施形態の自動計測モードの処理を示すフローチャートである。
【図4】自動計測モード時のモニター表示画面を示す図である。
【図5】自動計測モードにおける画像処理を示すフローチャートである。
【図6】マスターパターンの作成用の撮影画像データを示す図である。
【図7】マスターパターンの作成例を示す図である。
【図8】撮影画像データに対する画像処理を説明する図である。
【図9】手動モード時のモニター表示画面を示す図である。
【図10】解析モード時のモニター表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の変位測定装置1の主要部を示す概略斜視図である。図2は、変位測定装置1の変位測定処理を行う処理系の主要部を模式的に示すブロック図である。
【0027】
[変位測定装置の構造]
本実施形態の変位測定装置1は、ダム堤体の上端から吊り下げた測定ワイヤ2を用いて変位を測定するプラムラインと呼ばれる装置である。
前記変位測定装置1は、前記測定ワイヤ2と、ワイヤ巻上器3と、重錘4と、オイルタンク5と、変位検出器6とを備えている。さらに、本実施形態の変位測定装置1は、手動操作で測定ワイヤ2の変位を観測するコーディネーター7も備えている。
【0028】
測定ワイヤ2は、強度および耐久性に優れたステンレスワイヤ等で構成され、ダム堤体内に鉛直方向に埋設されたパイプ8内に挿通されている。この測定ワイヤ2の上端は、ワイヤ巻上器3に取り付けられている。
ワイヤ巻上器3は、ダム堤体の上面に埋設され、防水性の蓋9で覆われている。この蓋9により、パイプ8内への雨水の浸入が防止されている。
【0029】
前記パイプ8の下端は、ダム堤体内に設けられた測定室に開口されている。測定室には、コンクリート製の測定基台10が設置されている。
測定基台10には凹部10Aが形成され、この凹部10Aには前記オイルタンク5が配置されている。オイルタンク5内にはダンパー用のオイルが充填され、測定ワイヤ2の下端に固定された重錘4が配置されている。
【0030】
測定ワイヤ2の重錘4の上方には、位置指示部材である金属球20が取り付けられている。金属球20は、例えば直径が16mm程度のものであり、その直径方向に前記測定ワイヤ2が挿通されて固定されている。なお、金属球20の大きさは、後述するカメラ21,22で撮影して画像処理できるサイズであればよい。また、位置指示部材の材質は金属に限らず、プラスチックなどでも可能であるが、測定ワイヤ2は数十年単位で設置されるため、耐久性が高く、長期間設置しても錆などで劣化しない材質のものが好ましい。
【0031】
測定基台10には、前記凹部10Aの上部開口に跨って測定ベース11が固定されている。測定ベース11は、金属製の板材で構成され、その平面中央部分には、前記測定ワイヤ2が挿通される孔11Aが開口されている。
また、測定ベース11は、上面が水平となるように固定されており、この水平な上面に2台のカメラ21,22と、照明装置23,24と、基準位置設定部材25とが取り付けられている。
【0032】
カメラ21,22は、前記金属球20を一定時間間隔(第1の間隔)で撮影でき、その撮影画像データを出力可能なビデオカメラで構成されている。
これらのカメラ21,22は、そのレンズの光軸が水平面内において互いに直交するように、測定ベース11上に固定されている。
すなわち、図1に示すように、測定ベース11が凹部開口に架け渡された方向をX軸、水平面内において前記X軸に直交する方向をY軸、前記X,Y軸に直交する鉛直方向をZ軸とすると、カメラ21は、レンズの光軸がY軸に沿うように配置され、カメラ22はX軸に沿うように配置されている。
【0033】
これらのカメラ21,22は、図2に示すように、画像処理装置30に接続され、撮影した画像データを画像処理装置30に出力している。
【0034】
照明装置23,24は、金属球20をカメラ21,22で撮影するための照明用に用いられるものである。本実施形態では、LEDや有機EL等を用いたパネル型の照明装置23,24を用いており、各カメラ21,22に対向する位置に配置されている。なお、照明装置23,24としては、蛍光灯などのパネル型でないものを用いてもよいが、LEDや有機EL等のパネル型にすれば省スペースで消費電力も小さくできるメリットがある。
【0035】
基準位置設定部材25は、測定ベース11の上面から立設された支持棒251と、この支持棒251の上端に固定された基準球252とで構成されている。
この基準位置設定部材25は、各カメラ21,22で金属球20を撮影した際に、金属球20に隠れることなく、基準位置設定部材25の基準球252も撮影される位置に配置されている。
具体的には、平面視で図2に示すような位置に配置されている。すなわち、金属球20の重心(中心)位置を通るX軸、Y軸を設定した場合、X,Y軸の原点位置(金属球20の重心位置)からX、Y軸に対して45度の角度方向に配置されている。
【0036】
また、前記測定ワイヤ2に近接して温度計26が配置されている。温度計26は、測定ワイヤ2の周囲の気温を測定することで、間接的に測定ワイヤ2の温度を測定するものであり、測定した温度データを後述する画像処理装置30に出力可能な公知の温度計を利用できる。なお、温度計26としては、放射温度計のように、測定ワイヤ2の温度を非接触状態で測定できる温度計を用いてもよい。
【0037】
コーディネーター7は、測定ワイヤ2の位置を測定室(現地)で管理者が目視で測定するための光学式位置測定器であり、従来から周知のため、説明を省略する。
【0038】
[画像処理装置の構成]
次に、前記各カメラ21,22で撮影した画像データを処理する画像処理装置30について説明する。
画像処理装置30は、CPUおよびメモリーなどを備え、画像データを処理可能なコンピューターで構成されている。図2には、画像処理装置30の機能ブロックが示され、画像処理装置30は、画像取得部31、画像処理部32、表示制御部33、デジタル出力部34、アナログ出力部35、記憶部36を備えている。
記憶部36は、ハードディスクなどの記憶装置で構成され、画像取得部31で取得された画像データや、画像処理部32で処理されたデータ等が記憶される。具体的には、記憶部36は、第1〜第3記憶部361〜363を備えている。
【0039】
画像処理装置30には、液晶ディスプレイなどのモニター(表示装置)37と、キーボードやマウスなどの入力装置38とが接続されている。
さらに、画像処理装置30には、ダム管理用のダムコンピューターシステム40も接続されている。ここで、画像処理装置30は、通常は、ダムコンピューターシステム40に対して、前記デジタル出力部34からデータを出力するが、ダムコンピューターシステム40にアナログ入力がある場合には、アナログ出力部35から画像処理部32で求めた金属球20の変位量データをアナログデータとして出力するように構成されている。この場合、ダムコンピューターシステム40には、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換装置(アナログデジタル変換装置)41が設けられている。
また、画像処理装置30には、ダムもしくはダムの外部に設けられた地震計(震度計)39から出力される外部信号が、直接あるいはダムコンピューターシステム40を介して入力可能に構成されている。
【0040】
[画像処理装置の作用]
画像処理装置30は、自動計測モード、手動計測モード、データ解析モードの3つのモードで動作する。この動作モードの選択は、管理者が入力装置38を操作することで行われる。
そこで、各モードにおける上記画像処理装置30の各処理部の作用に関し、図3に示すフローチャートをも参照して説明する。なお、通常時の動作モードは自動計測モードであるため、自動計測モードから説明する。
【0041】
[自動計測モード]
自動計測モードに設定されている場合、画像処理装置30の画像取得部31は、前記各カメラ21,22から出力される画像データを一定間隔(第1の間隔)、例えば1秒間隔で取り込み、記憶部36の第1記憶部361に保存する画像取得処理を行う(ステップ1、以下ステップを「S」と略す)。
なお、本実施形態では、第1記憶部361に、1秒毎に取得される画像データが連続で最大20分記憶されるように設定されている。具体的には、20分×60秒=1200枚の画像データが記憶されることになる。そして、新たな画像データが取得されると、最も古い画像データが消去され、第1記憶部361には常に20分間の画像データが記憶されるようになっている。
【0042】
次に、画像処理部32は、取得した画像データを処理する画像処理を行う(S2)。
画像処理S2の詳細は後述するが、検出対象である金属球20および基準球252の重心位置を求め、基準球252の重心位置を原点とした金属球20の重心位置のX方向、Y方向、Z方向の座標を求めて撮像日時データとともに第3記憶部363に記憶する処理を行う。
【0043】
次に、表示制御部33は、画像取得処理S1で取得された画像データと、画像処理S2で求められた金属球20の重心位置とを、図4に示すように、モニター37に表示する画像表示処理を行う(S3)。
すなわち、モニター37には、カメラ21で撮影された画像データ51と、カメラ22で撮影された画像データ52と、測定日時データ53と、金属球20の重心位置の座標データ54と、モード選択ボタン55〜57とが表示されている。モード選択ボタン55〜57は、それぞれ自動計測モード、手動計測モード、解析モードを選択するボタンである。
【0044】
次に、画像取得部31は、画像取得処理S1で取得した画像データが、正時に取得したものであるかを判断する(S4)。
S4で「Yes」と判断された場合、すなわち、0時ちょうど、1時ちょうど、など、画像取得処理が毎正時のタイミングであった場合は、画像取得部31は、その画像データを第3記憶部363に記憶する保存画像記憶処理を行う(S5)。
【0045】
すなわち、前述したように、画像取得処理S1では1秒間隔で画像データを取得しており、そのすべてのデータを保存し続けるには、記憶部36に必要な記憶容量が非常に大きくなる。また、ダム堤体の変位測定において、画像処理で求めた金属球20の重心位置の座標データは保存しておく必要があるが、1秒間隔で取得した過去の画像データのすべてを1秒間隔で残しておく必要は無い。従って、本実施形態では、異常時以外は、正時の画像データのみを残すようにしている。これにより、1日あたり24枚の画像データのみが第3記憶部363に記憶される。
このため、第3記憶部363には、1秒毎に検出された金属球20の重心位置の座標データと、毎正時の撮影画像データとが測定日時データとともに記憶される。
【0046】
S5の処理後、または、S4で「No」と判断された場合は、地震計39からの外部信号が入力されたか、あるいは、画像処理S2で算出された基準球252の重心位置(原点)に対する金属球20の重心位置の座標値が、予め設定された範囲外になった場合、つまり金属球20の変位量が規定値を超えたか否かを判断する(S6)。
【0047】
S6で「Yes」と判断された場合、そのタイミングから10分経過し、前記「Yes」と判定されたタイミングを含む、前後10分間(計20分間)の画像データを、前記第1記憶部361から第2記憶部362に記憶するビデオログ記憶処理を実行する(S7)。
【0048】
S6で「No」と判断された場合およびS7の処理後は、画像取得処理S1に戻り、処理を続行する。このため、S1〜S3の処理は1秒間隔で繰り返し実行される。
【0049】
[画像処理]
次に、画像処理S2の詳細について、図5のフローチャートおよび図6〜8を参照して説明する。
各カメラ21,22で取り込まれた画像データは、図6に示すような画像60となる。
ここで、画像60は、カメラ22で撮影された画像データであり、本実施形態では、Y方向(左右方向)が1600画素、Z方向(上下方向)が600画素の画像データである。1画素のピッチが0.1mmとなるように、カメラ21,22の倍率などを設定すれば、X方向およびY方向に160mm、Z方向に60mmの範囲内で撮影が可能となる。
【0050】
[事前準備:マスターパターンの作成]
画像処理部32は、最初にマスターパターンが未作成であるかを判断する(S21)。本実施形態では、画像処理によって重心位置を求めるために、予めマスターパターンを用意している。すなわち、画像処理手法のなかで、最もよく使用される手法の一つがパターンマッチングである。パターンマッチングには、残差マッチング、正規化相関法、位相限定相関、幾何マッチング、ベクトル相関、一般化ハフ変換等の手法がある。
本実施形態では、検出対象が球体(画像においては円)であるため、処理が簡易であり、演算時間も短い残差マッチングを使用している。この残差マッチングは、マスターパターンをターゲットパターンに対して位置を上下左右に移動させ、重ね合わせの残差が最小になる点を求めるものである。
【0051】
このため、画像処理部32は、S21で「Yes」つまりマスターパターンが未作成の場合、マスターパターンを作成する(S22)。
具体的なマスターパターンの作成手順は以下の通りである。まず、画像処理部32は、変位測定装置1を設置した初期、つまり検出体である金属球20や基準球252が汚れていない初期状態の入力画像60から、図6に示すように、金属球20および基準球252の検出体画像61,62を取得する。この検出体画像61,62の切り出しは、管理者がマウスなどで範囲を選択して行っても良いし、画像処理部32が画像処理で自動的に行ってもよい。
次に、画像処理部32は、各検出体画像61,62を2値化する。
【0052】
そして、画像処理部32は、2値化した画像から図7に示すような、マスターパターン63,64を作成する。このマスターパターン63,64は、検出体画像61,62の外周に沿って円周状に作成されるが、下端側は直線状にカットされている。このカットは、各球20,252の下面に水滴が付着している場合に、その水滴によるノイズを除去するために設けられている。また、重心位置を検出するため、マスターパターン63,64には、マスターパターン63,64の外周円の中心座標631,632を設定する。
【0053】
[画像処理工程]
S21で「No」と判断された場合やS22の処理後、画像処理部32は、取得した画像データ51,52と、準備したマスターパターン63,64との残差マッチング処理を行い、重ね合わせの残差が最小になる点を求める(S23)。
次に、画像処理部32は、取得した画像データ51,52に対して、残差が最小となる位置にマスターパターン63,64を配置した際のマスターパターン63,64の中心座標631,632によって各球20,252の重心位置を求める(S24)。
【0054】
次に、画像処理部32は、基準球252を基準とした金属球20の変位量を次の式によって求める(S25)。例えば、カメラ22で撮影した画像データ52においては、図8に示すように、Y方向の変位量a=Y1−Y0、Z方向の変位量b=Z1−Z0で求める。さらに、画像処理部32は、Z方向の変位量bに関し、温度計26で測定した温度に基づいて測定ワイヤ2の温度膨張量を補正する。
【0055】
そして、表示制御部33は、前記aを図4ではY方向の変位量として表示し、bをZ方向の変位量として表示する。
カメラ21で撮影した画像データ51においても同様の処理を行い、X方向の変位量、Z方向の変位量を求め、図4で表示する。
【0056】
[手動計測モード]
次に、手動計測モードが選択された場合の動作について説明する。
管理者の選択操作によって手動計測モードが選択されると、画像処理装置30は、自動計測を中断し、図9に示すように、モニター37に各カメラ21,22で撮影した金属球20、基準球252の生画像データ51A,52Aと、クロスカーソル58を表示する。
【0057】
管理者は、マウスなどを操作して前記クロスカーソル58を、生画像データ51A,52Aにおける基準球252の重心位置に合わせた後、金属球20の重心位置に移動する。このクロスカーソル58の移動により、基準球252に対する金属球20の座標位置が画面上で測定できる。
また、生画像データ51A,52Aにおける金属球20の直径を測定し、初期設定した直径データと比較し、相違した場合にはその割合を利用して金属球20の座標位置データを補正する。撮影した金属球20の画像の大きさが異なる場合には、カメラ21,22の撮影倍率などが変化していることなどが想定され、基準球252に対する座標位置も変化する。従って、初期の直径データと比較することで、測定値を補正すれば、正しい変位量を測定できる。
【0058】
[解析モード]
次に、解析モードが選択された場合の動作について説明する。
管理者の選択操作によって解析モードが選択されると、画像処理装置30は、自動計測を継続したまま、図10に示すように、モニター37に解析データを表示する。
すなわち、解析モードでは、管理者が入力した期間の変位量データを第3記憶部363から検索してグラフ71として表示するとともに、その期間の正時の画像データ72,73を指定した時間内で早送り表示する。
なお、期間の入力は、過去1ヶ月などの形式で入力してもよいし、期間の開始日および終了日を入力してもよい。また、画像データ72,73の早送り表示は、例えば、50日間の画像データを10分間で表示する場合、10分×60秒=600秒で、24枚×50=1200枚の画像データを表示するため、0.5秒で1枚の画像データを表示すればよい。
【0059】
また、解析モードでは、第2記憶部362に記憶したビデオログを選択して表示することもできる。この場合、地震発生時や規定量以上の変位が生じた際の前後の画像データが表示され、金属球20の移動変化を確認できる。
【0060】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)各カメラ21,22で金属球20を撮影し、その撮影データを画像処理することで、金属球20の重心位置を求めているので、金属球20の水平方向の変位だけでなく、鉛直方向(Z方向)の変位も検出することができる。このため、従来のように水平方向の変位のみ検出する場合に比べて、ダム堤体の変位を高精度に検出できる。
さらに、本実施形態では、温度計26を設け、測定ワイヤ2の温度膨張も考慮して鉛直方向の変位を検出しているので、ダム堤体の変位をより一層高精度に検出できる。
【0061】
(2)また、金属球20の重心位置を求めて変位量を算出しているので、金属球20に水滴などが付着していても、その影響を軽減できる。
特に、本実施形態では、位置指示部材として球体を採用しているので、水滴などのノイズ成分を容易に除去でき、重心位置を正確に求めることができる。その上、位置指示部材として球体を採用しているので、マスターパターン63,64を用いた残差マッチング処理で重心位置を求めることができ、画像処理を短時間に行うことができる。
【0062】
(3)さらに、金属球20の位置を検出する基準点となる基準位置設定部材25を設けたので、常に原点との相関性を示すデータを得ることができる。すなわち、基準位置設定部材25が無い場合には、コーディネーター7で原点位置を確認し、その際の画像データと、自動測定したデータとを比較して変位量を算出しなければならない。これに対し、本実施形態では、撮影画像データに基準位置設定部材25が含まれているので、常に基準球252の基準位置を原点とし、この原点位置に対する金属球20の重心位置を直接求めることができるので変位測定処理を容易に行うことができる。また、コーディネーター7は必ずしも必要ないため、コストも低減できる。
【0063】
(4)地震発生時や変位量が既定値を超えた際に、その前後の撮影画像データを第2記憶部362に保存し、解析モードでビデオログとして表示できるようにしたので、地震前後などでの変位量の変化(金属球20の移動状態)を、管理者が目視で確認することができる。
また、毎正時の画像データを第3記憶部363に保存し、解析モードで早送り表示できるようにしたので、年間を通しての変位量の変化(金属球20の移動状態)も、管理者が目視で確認することができる。
【0064】
(5)さらに、カメラ21,22で撮影した画像データを処理することで、ダム堤体の変位を測定できるため、磁界の影響を受けることもない。また、変位検出器6には、モーター等で移動される機構部が不要なため、変位測定装置1を構成する機器の点数が減り、機器の信頼性を大幅に向上し、かつ、コストも削減できる。
【0065】
(6)また、自動測定モードの他に、手動モードを選択できるようにし、この手動モードでは、各カメラ21,22の生画像をモニター37に表示している。このため、従来は、ダム堤体の底部の測定室まで管理者が移動しなければ判断できなかった変位検出器6の状態を、管理室のモニター37に表示される画像で判断できるので、点検時間を短縮することができる。
【0066】
(7)本実施形態の画像処理装置30は、デジタル出力部34およびアナログ出力部35を備えているので、様々なダムコンピューターシステム40に接続することができる。このため、アナログ入力しか備えていない既存のダムコンピューターシステム40に対しても、本実施形態の変位測定装置1を追加して設置することができる。従って、本実施形態の変位測定装置1は、既存のダムに対しても設置でき、ダム堤体の変位測定の精度を容易に向上できる。
さらに、画像処理装置30をダムコンピューターシステム40に接続しているので、変位測定装置1で測定した金属球20の変位量データを、ダムにおいて管理している他の測定データと共にダムコンピューターシステム40で集中管理することができる。
【0067】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、温度計26を用いて測定ワイヤ2の熱膨張分を補正できるようにしていたが、温度計26を設けずに測定ワイヤ2の熱膨張分を補正しないように構成してもよい。このような場合でも、測定ワイヤ2が設置されるダム堤体内は温度変化が外部よりも小さく、測定ワイヤ2自体の温度変化量も小さいため、ダム堤体の変位を測定するために必要な精度は確保できる。
【0068】
前記実施形態では、ダム堤体の上端から測定ワイヤ2を吊り下げ、測定ワイヤ2の下端側に取り付けた金属球20の変位を測定するプラムラインに本発明を適用していたが、ダム堤体が設置された岩盤に測定ワイヤ2の下端を固定し、ダム内部の測定室に設けたフロートに測定ワイヤ2の上端を取り付けた逆プラムラインに適用してもよい。この逆プラムラインにおいても、測定ワイヤ2の上端部に位置指示部材を取り付け、この位置指示部材を各カメラ21,22で撮影し、その画像データを処理することで、前記実施形態と同じく位置指示部材の三次元の変位を検出して、ダム堤体の変位を測定できる。
【0069】
前記実施形態では、基準位置設定部材25を設けていたが、基準位置設定部材25を設けずに、金属球20のみを撮影して処理してもよい。この場合、コーディネーター7で金属球20の基準位置を設定し、その際の撮影画像データから求めた金属球20の重心位置を基準位置として記憶し、その後の撮影画像データから求めた金属球20の重心位置との差分を変位量として求めればよい。
【0070】
前記実施形態では、位置指示部材として金属球20を用いていたが、他の材質の球体としてもよい。また、位置指示部材は、円柱体や立方体など球体以外の形状のものでもよい。ただし、球体の位置指示部材を用いたほうが、前述したように、水滴などの付着物によるノイズを除去しやすく、重心を簡単に検出できる点で好ましい。
【0071】
前記実施形態では、ダムコンピューターシステム40に画像処理装置30を接続していたが、画像処理装置30をダムコンピューターシステム40から独立して設置しても良い。
また、前記実施形態では、地震計39からの信号や、変位量が既定値を超えた場合に、20分間の画像データを第2記憶部362に記憶し、解析モードでビデオログとして出力できるようにしていたが、例えば、すべての画像データを記録し、ビデオログ記録機能を無くしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…変位測定装置、2…測定ワイヤ、3…ワイヤ巻上器、4…重錘、5…オイルタンク、6…変位検出器、7…コーディネーター、8…パイプ、10…測定基台、11…測定ベース、20…位置指示部材である金属球、21,22…カメラ、23,24…照明装置、25…基準位置設定部材、251…支持棒、252…基準球、26…温度計、30…画像処理装置、31…画像取得部、32…画像処理部、33…表示制御部、34…デジタル出力部、35…アナログ出力部、36…記憶部、361…第1記憶部、362…第2記憶部、363…第3記憶部、37…表示装置であるモニター、38…入力装置、39…地震計、40…ダムコンピューターシステム、63,64…マスターパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムの堤体または堤体が設置された地盤に一端側が固定され、前記堤体の内部に鉛直に配置された測定ワイヤと、
前記測定ワイヤの他端側に固定された位置指示部材と、
前記位置指示部材を撮影する2台のカメラと、
前記位置指示部材を光で照らす照明装置と、
前記各カメラで撮影された画像を処理する画像処理装置と、を備え、
前記2台のカメラは、各カメラのレンズの光軸が水平面内で互いに直交する位置に配置され、
前記画像処理装置は、前記各カメラの撮影画像データから位置指示部材を認識し、前記位置指示部材の各画像における重心位置を検出し、その重心位置の変位によって、ダム堤体の変位を測定する
ことを特徴とするダム堤体の変位測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダム堤体の変位測定装置において、
前記各カメラの撮影領域内に基準位置設定部材が設けられ、
前記画像処理装置は、前記位置指示部材および基準位置設定部材が撮影された撮影画像データを処理して、位置指示部材の重心位置と、基準位置設定部材で設定された基準位置とを検出し、前記基準位置に対する位置指示部材の重心位置を測定して重心位置の変位を求めることを特徴とするダム堤体の変位測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のダム堤体の変位測定装置において、
前記位置指示部材は球体であることを特徴とするダム堤体の変位測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のダム堤体の変位測定装置において、
前記測定ワイヤの温度を測定する温度センサーを備え、
前記画像処理装置は、測定ワイヤの温度膨張係数と、前記温度センサーで測定された温度と、測定ワイヤの一端側の固定位置から前記位置指示部材までの長さ寸法とを用いて温度補正量を求め、この温度補正量を加味して前記位置指示部材の鉛直方向の変位を検出することを特徴とするダム堤体の変位測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のダム堤体の変位測定装置において、
前記カメラで撮像された画像を表示する表示装置を備えることを特徴とするダム堤体の変位測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のダム堤体の変位測定装置において、
前記カメラは第1の間隔で撮影処理を実行し、
前記画像処理装置は、前記カメラで撮影された画像データを第1の記憶部に一時的に記憶し、所定の外部信号または規定値を超えた変位が検出された場合に、その検出時点の画像データと、その検出時点の前後の所定時間範囲の画像データとを、前記第1の記憶部から読み出して第2の記憶部に記憶することを特徴とするダム堤体の変位測定装置。
【請求項7】
ダムの堤体または堤体が設置された地盤に一端側が固定され、前記堤体の内部に鉛直に配置された測定ワイヤと、
前記測定ワイヤの他端側に固定された位置指示部材と、
レンズの光軸が水平面内で互いに直交する位置に配置されて前記位置指示部材を撮影する2台のカメラと、
前記位置指示部材を光で照らす照明装置と、
を備えた変位測定装置を用いたダム堤体の変位測定方法であって、
前記各カメラの撮影画像データから位置指示部材を認識し、その前記位置指示部材の各画像における重心位置を検出し、その重心位置の変位によって、ダム堤体の変位を測定する
ことを特徴とするダム堤体の変位測定方法。
【請求項8】
請求項7に記載のダム堤体の変位測定方法において、
前記位置指示部材が基準位置にある際に撮影した画像データからマスターパターンを作成し、前記撮影画像データで認識された位置指示部材に対し、前記マスターパターンを重ね合わせて残差マッチング処理を行い、重ね合わせの残差が最小となる際の前記マスターパターンに設定した中心位置を、前記位置指示部材の重心位置として検出する
ことを特徴とするダム堤体の変位測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−58136(P2012−58136A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203217(P2010−203217)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(591163177)タマヤ計測システム株式会社 (2)
【Fターム(参考)】