説明

チェアベッド

【課題】医療用又は介護用としてより実用的なチェアベッドを提供する。
【解決手段】本発明のチェアベッドは、座部13、背もたれ15、大腿受け部17及び下腿受け部19を備えている。背もたれ15は椅子状態とベッド状態とショック体位状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能である。背もたれ15がベッド状態であれば、大腿受け部17及び下腿受け部19は略水平であるが、背もたれ15がショック体位状態であれば、下腿受け部19は人の足P6が下端になる下り傾斜となるように構成されている。また、背もたれ15がベッド状態であれば、大腿受け部17は略水平であり、下腿受け部19は、人の大腿P3を大腿受け部17の上方に位置させながら、略水平で大腿受け部17より上方に持ち上がるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子とベッドとを兼ねることが可能なチェアベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1開示のチェアベッドが知られている。このチェアベッドは、人の殿部及び大腿と当接する座部と、その人の背部と当接する背もたれと、その人の下腿と当接する下腿受け部とを備えている。
【0003】
背もたれは、座部に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と、座部とともに略水平となるベッド状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能に構成されている。また、背もたれの上端側にはヘッドレストが固定され、下腿受け部の下端側にはフットレストが下腿受け部に対して揺動可能に設けられている。背もたれがベッド状態であれば、下腿受け部及びフットレストも略水平になるように構成されている。
【0004】
このチェアベッドは透析治療等の医療用に用いて好適である。例えば、患者がこのチェアベッドを用いて透析治療を受ける場合、椅子状態のチェアベッドに腰掛けていることも可能であるし、ベッド状態のチェアベッドに仰向けで寝転んでいることも可能である。椅子状態のチェアベッドに腰掛けた患者は、殿部及び大腿が座部に当接し、背部が背もたれに当接し、頭部がヘッドレストに当接し、下腿の脹脛が下腿受け部に当接し、足裏がフットレストに当接可能である。また、ベッド状態のチェアベッドに仰向けで寝転んだ患者は、殿部及び大腿が座部に当接し、背部が背もたれに当接し、頭部がヘッドレストに当接し、脹脛が下腿受け部に当接する。このため、患者は長時間にわたる透析治療の間、比較的快適に過ごすことが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−290239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のチェアベッドでは、背もたれは、人の頭部が下端になる下り傾斜となるショック体位状態までは揺動されず、かつ固定されることができない。例えば、透析治療中の患者は、体中の血液を順次一旦は体外に取り出すことから、血圧が下がって全身の臓器や組織の血流が減少し、酸素等の供給が不十分になる(末梢循環不全)。このような場合、心臓への静脈血の還流を助け、心拍出量を増やすよう、頭部が低くなるように患者をショック体位にする必要がある。従来のチェアベッドは背もたれがそのようなショック体位状態になることができず、医療用として改良が望まれる。
【0007】
この点、例えば、特開2007−202862号公報には、背もたれをベッド状態まで揺動可能であるとともに、ショック体位状態まで揺動可能な椅子が開示されている。このため、チェアベッドにおいて、背もたれを単にショック体位状態まで揺動可能にすることは考えられる。しかしながら、ショック体位にする者はほとんど意思のない患者であり、背もたれを単にショック体位状態まで揺動可能にしただけのチェアベッドでは、患者が頭部から落下してしまう懸念がある。それを避けようとすれば、背もたれの傾斜角度に制限を生じ、末梢循環不全の解消が不十分になり易い。
【0008】
また、このチェアベッドは、老人等の被介護者の介護用に用いられた場合、被介護者の下の世話をし辛い。すなわち、このチェアベッドは、たとえ背もたれをベッド状態にしていても、被介護者は殿部、大腿及び脹脛が略水平のままであり、介護者が被介護者の下の世話をするためには、被介護者の下腿を介護者が手で持ち上げてそれを行わなければならない。このため、従来のチェアベッドは介護用としても改良が望まれる。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、医療用又は介護用としてより実用的なチェアベッドを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明のチェアベッドは、人の殿部と当接する座部と、該人の背部と当接する背もたれと、該人の大腿と当接する大腿受け部と、該人の下腿と当接する下腿受け部とを備え、
前記背もたれは、前記座部に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と、該座部とともに略水平となるベッド状態と、前記人の頭部が下端になる下り傾斜となるショック体位状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能であり、
該背もたれが該ベッド状態であれば、前記大腿受け部及び前記下腿受け部は略水平であり、
該背もたれが該ショック体位状態であれば、該下腿受け部は該人の足が下端になる下り傾斜となるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
第1発明のチェアベッドは、背もたれが椅子状態とベッド状態とショック体位状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能である。椅子状態とは、背もたれが座部に対して上方に向けて略垂直となる状態である。ベッド状態とは、背もたれが座部とともに略水平となる状態である。ショック体位状態とは、人の頭部が下端になる下り傾斜に背もたれがなる状態である。椅子状態は、背もたれが垂直に近い起立状態と、ベッド状態までは傾斜しないが、背もたれが垂直から傾斜したリクライニング状態とがあり得る。このため、患者がこのチェアベッドを用いて例えば透析治療を受ける場合、患者は、椅子状態のチェアベッドに腰掛けたり、ベッド状態のチェアベッドに仰向けで寝転んでいたりすることが可能である。そして、背もたれがショック体位状態まで揺動され、かつ固定可能であるため、患者がこのチェアベッド上で末梢循環不全になっても、その患者をショック体位にすることが可能である。
【0012】
そして、このチェアベッドは、背もたれがショック体位状態のとき、下腿受け部は人の足が下端になる下り傾斜となる。傾斜は水平に対する表現である。このため、患者は、上半身は頭部が下端になる下り傾斜となるが、下腿が自重によって大腿から屈曲した状態になる。このため、その患者がたとえ意思のない者であっても、患者が頭部から落下することはその患者の下腿によって阻止される。このために背もたれの傾斜角度をより大きくすることも可能であり、末梢循環不全をより効果的に解消可能である。
【0013】
したがって、第1発明のチェアベッドは医療用としてより実用的なものとなっている。
【0014】
第1発明のチェアベッドは、背もたれがショック体位状態であれば、大腿受け部は人の大腿が腰部から屈曲するように構成されていることが好ましい。この場合、ショック体位の患者は、大腿と下腿とがほぼ直角に曲がって膝を立てた状態になり、より頭部から落下し難くなるため、末梢循環不全をより効果的に解消可能である。
【0015】
上記のように構成する具体的な構造としては、種々の手段が採用され得る。例えば、略垂直から略水平まで座部に対して背もたれを揺動させる背もたれ揺動機構と、略垂直から略水平まで座部に対して下腿受け部を揺動させる第1下腿受け部揺動機構と、人の足が下端になる下り傾斜となるまで座部に対して下腿受け部を揺動させる第2下腿受け部揺動機構と、背もたれ揺動機構と第2下腿受け部揺動機構との間に設けられ、背もたれが略水平を超えれば、第2下腿受け部揺動機構を作動させる連動機構とを採用することができる。この場合、背もたれ揺動機構を作動させるモータにより第2下腿受け部揺動機構を作動させることができるため、製造コストの低廉化を実現できる。第2下腿受け部揺動機構により、人の大腿が腰部から屈曲するように大腿受け部を構成することも可能である。
【0016】
背もたれ揺動機構を第1モータによって作動し、第1下腿受け部揺動機構を第2モータによって作動し、第3モータによって座部を上下動させることも可能である。これらのモータのうち、背もたれをショック体位状態とする第1モータは、患者を迅速にショック体位にするため、手動によって背もたれを揺動させるためにモータの抵抗を解除可能なものであることが好ましい。末梢循環不全のまま時間が経過すれば、しだいに細胞の障害が進行し、毛細血管での循環環境が悪化して、最終的に死因ともなり得る(不可逆性ショック)からである。
【0017】
また、第2発明のチェアベッドは、人の殿部と当接する座部と、該人の背部と当接する背もたれと、該人の大腿と当接する大腿受け部と、該人の下腿と当接する下腿受け部とを備え、
前記背もたれは、前記座部に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と、該座部とともに略水平となるベッド状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能であり、
該背もたれが該ベッド状態であれば、前記大腿受け部は略水平であり、前記下腿受け部は、前記人の大腿を該大腿受け部の上方に位置させながら、略水平で該大腿受け部より上方に持ち上がるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
第2発明のチェアベッドでは、背もたれは、椅子状態とベッド状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能である。椅子状態とは、背もたれが座部に対して上方に向けて略垂直となる状態である。ベッド状態とは、背もたれが座部とともに略水平となる状態である。そして、このチェアベッドでは、背もたれがベッド状態のとき、大腿受け部は略水平であるが、下腿受け部は、人の大腿を大腿受け部の上方に位置させながら、略水平で大腿受け部より上方に持ち上がる。このため、このチェアベッドが被介護者の介護用に用いられれば、背もたれをベッド状態にすることにより、被介護者の下腿を介護者が手で持ち上げる必要がない。このため、介護者は、下腿受け部の下方、大腿受け部の上方で被介護者の殿部に対して下の世話を容易にすることが可能になる。
【0019】
したがって、第2発明のチェアベッドは介護用としてもより実用的なものとなっている。
【0020】
上記のように構成する具体的な構造としても、種々の手段が採用され得る。例えば、略垂直から略水平まで座部に対して背もたれを揺動させる背もたれ揺動機構と、略垂直から略水平まで座部に対して下腿受け部を揺動させる第1下腿受け部揺動機構と、人の大腿を大腿受け部の上方に位置させながら、略水平で大腿受け部より上方に持ち上がるように座部に対して下腿受け部を揺動させる第2下腿受け部揺動機構とを採用することができる。この場合、背もたれ揺動機構と第2下腿受け部揺動機構とは独立して作動可能であることが好ましい。被介護者が通常のように横になっている状態と、下の世話が必要な状態とで使い分けをすることが好ましいからである。
【0021】
なお、第1、2発明のチェアベッドにおいて、背もたれの上端側にヘッドレストを設けることも可能である。また、下腿受け部の下端側にフットレストを設け、このフットレストを下腿受け部に対して揺動可能に構成することも可能である。
【0022】
また、第1、2発明のチェアベッドにおいて、座部の隣りにアームレストを設けることも可能である。このアームレストは、患者や被介護者が着座したり、離座したりする際に邪魔にならないように揺動できるようになっていたり、取り外すことが可能になっていることが好ましい。
【0023】
さらに、第1、2発明のチェアベッドは、キャスタによって移動可能に構成されていることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<実施例1>
以下、第1発明を具体化した実施例1を図面を参照しつつ説明する。実施例1のチェアベッドは、図1に示すように、ベースフレーム11に座部13、背もたれ15、大腿受け部17、下腿受け部19及びフットレスト21が設けられている。座部13、背もたれ15、大腿受け部17、下腿受け部19及びフットレスト21は、各々クッションを内蔵したレザー張りからなる。これらは、背もたれ15、座部13、大腿受け部17、下腿受け部19及びフットレスト21の順で各々揺動可能に連結されている。背もたれ15の上端側にはヘッドレスト23が脱着かつ上下動可能に設けられている。
【0025】
また、このチェアベッドでは、座部13、大腿受け部17及び下腿受け部19の下方両側に側壁25a、25bが設けられている。両側壁25aはベースフレーム11に固定されており、両側壁25bは後述するリンク機構31aの上端の部材に固定されている。リンク機構31aの上端の部材にはアームレスト27a、27bもそれぞれ設けられている。また、ベースフレーム11の下端には4個のキャスタ29が設けられている。
【0026】
図2及び図3に模式的に示すように、ベースフレーム11には昇降機構31が設けられている。昇降機構31は、ベースフレーム11に設けられたリンク機構31aと、リニアアクチュエータ31bとからなる。リンク機構31aの上端の部材に座部13が固定されている。リニアアクチュエータ31bは、内蔵するDCモータの回転によってそのロッドが直線往復運動する公知のものである。リニアアクチュエータ31bは、図1に示すリモコン43を操作することによってDCモータを正転又は逆転可能である。リンク機構31aは、リニアアクチュエータ31bがロッドを延出したり、短縮したりすることにより、上端の部材が昇降するように構成されている。
【0027】
リンク機構31aの上端の部材には、背もたれ揺動機構33が設けられている。背もたれ揺動機構33は、リンク機構31aの上端の部材の後方に設けられたリンク機構33aと、リンク機構33aに設けられた背もたれ用フレーム33bと、リニアアクチュエータ33cとを有している。背もたれ用フレーム33bに背もたれ15が固定されている。リニアアクチュエータ33cはリニアアクチュエータ31bと同様のものである。但し、図1に示すリモコン43にはリニアアクチュエータ33cからワイヤが伸ばされており、このワイヤを操作することによってリニアアクチュエータ33cが内蔵するDCモータの抵抗を解除可能になっている。リンク機構33aは、リニアアクチュエータ33cがロッドを延出したり、短縮したりすることにより、背もたれ用フレーム33bが略垂直から略水平まで座部13に対して揺動するように構成されている。背もたれ用フレーム33bの揺動中心は水平に延びるA1線である。
【0028】
また、リンク機構31aの上端の部材には、第1下腿受け部揺動機構35も設けられている。第1下腿受け部揺動機構35は、リンク機構31aの上端の部材の前方に設けられたリンク機構35aと、リンク機構35aに設けられた第1下腿用フレーム35bと、リニアアクチュエータ35cとを有している。第1下腿用フレーム35bには下腿受け部19が載置されている。リニアアクチュエータ35cはリニアアクチュエータ31b、33cと同様のものである。リンク機構35aは、リニアアクチュエータ35cがロッドを延出したり、短縮したりすることにより、第1下腿用フレーム35bが略垂直から略水平まで座部13に対して揺動するように構成されている。リンク機構35aによる第1下腿用フレーム35bの揺動中心は水平に延びるB線である。
【0029】
また、第1下腿用フレーム35bの下端には公知のリンク機構を介してフットレスト用フレーム37が設けられている。フットレスト用フレーム37にフットレスト21が載置されている。フットレスト用フレーム37は、背もたれ15が後述のショック体位状態とされた場合を除き、第1下腿用フレーム35bの揺動角度に拘わらずに略水平になるように構成されている。
【0030】
また、リンク機構31aの上端の部材には、図4〜6に模式的に示すように、第2下腿受け部揺動機構39も設けられている。第2下腿受け部揺動機構39は、大腿用フレーム39aと、第2下腿用フレーム39bとを有している。大腿用フレーム39aの揺動中心は、A1線に近い位置で水平に延びるC線である。大腿用フレーム39aにおけるC線から遠い部分に大腿受け部17が固定されている。第2下腿用フレーム39bは、大腿用フレーム39aと揺動可能に接続されている。大腿用フレーム39aに対する第2下腿用フレーム39bの揺動中心は水平に延びるD線である。第2下腿用フレーム39bは、図2及び図3に示す第1下腿用フレーム35bに対し、上下で重ならない位置に設けられている。図4〜6に示すように、第2下腿受け部揺動機構39は、大腿用フレーム39aを座部13に対して屈曲させながら持ち上げ、第2下腿用フレーム39bを第1下腿用フレーム35bとは独立して下り傾斜とするように構成されている。このとき、大腿用フレーム39aによって大腿受け部17が持ち上げられることから、下腿受け部19及びフットレスト21は下り傾斜とされる。
【0031】
図2及び図3に示す背もたれ揺動機構33と、図4〜6に示す第2下腿受け部揺動機構39との間には、連動機構41が設けられている。連動機構41は、大腿用フレーム39aのC線に近い部分に固定されたアーム39cと、アーム39cの先端に揺動可能に接続されたレバー39dとを有している。アーム39cとレバー39dとの揺動中心は、A1線近くで水平に延びるA2線である。一方、背もたれ用フレーム33bの下端にはアーム33dが固定されている。このアーム33dも連動機構41を構成している。図4及び図5に示すように、背もたれ用フレーム33bが略垂直から水平に対して+5度になるまでは、アーム33dはレバー39dと当接しない。しかし、図5に示すように、背もたれ用フレーム33bが水平に対して+5度になると、アーム33dがレバー39dと当接し、図6に示すように、背もたれ用フレーム33bが水平に対して+5度以下に傾斜すると、アーム33dがレバー39dを押圧し、大腿用フレーム39aがC線を中心として揺動する。
【0032】
図2及び図3に示すリニアアクチュエータ31b、35c、33cには電力が供給されるようになっている。そして、これらリニアアクチュエータ31b、35c、33cは図1に示すリモコン43に接続され、個別及び相互に制御されるようになっている。
【0033】
このチェアベッドは、図2〜6に示すように、背もたれ15が椅子状態とベッド状態とショック体位状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能である。このチェアベッドは透析治療用に用いられる。
【0034】
透析治療の間、図2及び図4に示すように、チェアベッドは、背もたれ15が座部13に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態とされ得る。椅子状態は、背もたれ15が垂直に近い起立状態と、後述のベッド状態までは傾斜しないが、背もたれ15が垂直から傾斜したリクライニング状態とがある。このため、リモコン43(図1参照)でリニアアクチュエータ33c、35cを操作することにより、患者Pは好みの椅子状態で腰掛けることが可能である。このとき、図7に示すように、患者Pは、殿部P1が座部13に当接し、背部P2が背もたれ15に当接し、大腿P3が大腿受け部17に当接し、下腿P4の脹脛が下腿受け部19に当接する。また、頭部P5はヘッドレスト23(図1参照)に当接し、足P6の裏がフットレスト21に当接可能である。
【0035】
また、図3及び図5に示すように、リモコン43(図1参照)でリニアアクチュエータ33c、35cを操作することにより、チェアベッドは背もたれ15が座部13とともに略水平となるベッド状態にもされ得る。患者Pは、このベッド状態のチェアベッドに仰向けで寝転んでいることも可能である。このとき、図8に示すように、患者Pは、殿部P1が座部13に当接し、背部P2が背もたれ15に当接し、大腿P3が大腿受け部17に当接し、下腿P4の脹脛が下腿受け部19に当接する。また、頭部P5はヘッドレスト23(図1参照)に当接し、足P6の踵がフットレスト21に当接可能である。
【0036】
こうして患者Pが比較的快適に過ごしている間、患者Pが末梢循環不全になった場合、チェアベッドを椅子状態又はベッド状態から図6に示すショック体位状態にする。すなわち、背もたれ15は、図5に示す略水平を超え、図6に示すように、人の頭部P5が下端になる下り傾斜になる。このショック体位状態は、リモコン43(図1参照)でリニアアクチュエータ33cを操作して行ってもよいが、緊急の場合には、リモコン43に設けられたワイヤによってリニアアクチュエータ33cの抵抗を解除し、手動及び患者Pの体重によって背もたれ15を下り傾斜にする。こうして、患者Pは、図9に示すように、チェアベッド上で末梢循環不全になっても、ショック体位にされて心臓への静脈血の還流が行われることとなる。
【0037】
そして、このチェアベッドは、背もたれ15が下り傾斜になると、図6に示すように、アーム33dがレバー39dを押圧し、大腿用フレーム39aがC線を中心として上方に持ち上がり、下腿受け部19は足P6が下端になる下り傾斜となる。このため、図9に示すように、患者Pは、上半身は頭部P5が下端になる下り傾斜となるが、下腿が自重によって大腿P3から屈曲した状態になる。このため、その患者Pは、下腿P4によって支えられ、たとえ意思がなくても頭部P5から落下することが阻止される。
【0038】
特に、このチェアベッドでは、大腿受け部17が持ち上がり、大腿P3が腰部から上方に屈曲される。このため、ショック体位の患者Pは、大腿P3と下腿P4とがほぼ直角に曲がって膝を立てた状態になり、より頭部P5から落下し難くなる。
【0039】
このため、このチェアベッドは、背もたれ15の傾斜角度をより大きくすることも可能であり、末梢循環不全をより効果的に解消可能である。
【0040】
したがって、このチェアベッドは医療用としてより実用的なものとなっている。また、このチェアベッドは、背もたれ揺動機構33を作動させるリニアアクチュエータ33cにより第2下腿受け部揺動機構39を作動させることができるため、製造コストの低廉化も実現している。
【0041】
<実施例2>
次に、第2発明を具体化した実施例2を図面を参照しつつ説明する。実施例2のチェアベッドも、図1に示すように、座部13と、背もたれ15と、大腿受け部17と、下腿受け部19とを備えている。背もたれ15は、図7に示す椅子状態と、図8に示すベッド状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能である。
【0042】
背もたれ15がベッド状態であれば、大腿受け部17は略水平である。ここで、被介護者の下の世話を行おうとする場合、図10に示すように、下腿受け部19は、被介護者Pの大腿P3を大腿受け部17の上方に位置させながら、略水平で大腿受け部17より上方に持ち上がるように構成されている。他の構成は実施例1のチェアベッドと同様である。
【0043】
このチェアベッドでは、背もたれ15がベッド状態のとき、大腿受け部17は略水平であるが、下腿受け部19は、人の大腿P3を大腿受け部17の上方に位置させながら、略水平で大腿受け部P3より上方に持ち上がる。このため、このチェアベッドが被介護者Pの介護用に用いられれば、背もたれ15をベッド状態にすることにより、被介護者Pの下腿P4を介護者が手で持ち上げる必要がない。このため、介護者は、下腿受け部19の下方、大腿受け部17の上方で被介護者Pの殿部P1に対して下の世話を容易にすることが可能になる。
【0044】
したがって、このチェアベッドは介護用としてもより実用的なものとなっている。
【0045】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0046】
例えば、昇降機構31、背もたれ揺動機構33、第1下腿受け部揺動機構35、第2下腿受け部揺動機構39及び/又は連動機構41として、他の機構を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のチェアベッドは、透析治療等の医療用や介護用に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1、2のチェアベッドの斜視図である。
【図2】実施例1、2のチェアベッドに係り、椅子状態のチェアベッドを示す模式構造図である。
【図3】実施例1、2のチェアベッドに係り、ベッド状態のチェアベッドを示す模式構造図である。
【図4】実施例1のチェアベッドに係り、椅子状態のチェアベッドを示す模式構造図である。
【図5】実施例1のチェアベッドに係り、ベッド状態のチェアベッドを示す模式構造図である。
【図6】実施例1のチェアベッドに係り、ショック体位状態のチェアベッドを示す模式構造図である。
【図7】実施例1、2のチェアベッドに係り、椅子状態のチェアベッドを示す模式側面図である。
【図8】実施例1、2のチェアベッドに係り、ベッド状態のチェアベッドを示す模式側面図である。
【図9】実施例1のチェアベッドに係り、ショック体位状態のチェアベッドを示す模式側面図である。
【図10】実施例2のチェアベッドに係り、ベッド状態で介護を行う場合のチェアベッドを示す模式側面図である。
【符号の説明】
【0049】
P1…殿部
13…座部
P2…背部
15…背もたれ
P3…大腿
17…大腿受け部
P4…下腿
19…下腿受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の殿部と当接する座部と、該人の背部と当接する背もたれと、該人の大腿と当接する大腿受け部と、該人の下腿と当接する下腿受け部とを備え、
前記背もたれは、前記座部に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と、該座部とともに略水平となるベッド状態と、前記人の頭部が下端になる下り傾斜となるショック体位状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能であり、
該背もたれが該ベッド状態であれば、前記大腿受け部及び前記下腿受け部は略水平であり、
該背もたれが該ショック体位状態であれば、該下腿受け部は該人の足が下端になる下り傾斜となるように構成されていることを特徴とするチェアベッド。
【請求項2】
前記背もたれが前記ショック体位状態であれば、前記大腿受け部は前記人の大腿が腰部から屈曲するように構成されている請求項1記載のチェアベッド。
【請求項3】
人の殿部と当接する座部と、該人の背部と当接する背もたれと、該人の大腿と当接する大腿受け部と、該人の下腿と当接する下腿受け部とを備え、
前記背もたれは、前記座部に対して上方に向けて略垂直となる椅子状態と、該座部とともに略水平となるベッド状態とで固定可能であるとともに、これらの間で揺動可能であり、
該背もたれが該ベッド状態であれば、前記大腿受け部は略水平であり、前記下腿受け部は、前記人の大腿を該大腿受け部の上方に位置させながら、略水平で該大腿受け部より上方に持ち上がるように構成されていることを特徴とするチェアベッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−268789(P2009−268789A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123275(P2008−123275)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(507120016)株式会社亘陽 (4)
【Fターム(参考)】