説明

テトラアルコキシシランの乳化重合からのマイクロカプセル

少なくとも18ナノメートルのシェル厚さを有するマイクロカプセルを、0.1〜0.3重量%の陽イオン性界面活性剤を含有するエマルションの油/水界面でのテトラアルコキシシランの重合によって調製する方法を開示する。このマイクロカプセルは、カプセル封入されたサンスクリーンであって、配合組成物中においてカプセル封入されたサンスクリーンの漏出が防止されるために十分な堅牢性を有するサンスクリーンの製造に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年6月27日出願の米国特許出願第60/816738号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、少なくとも18ナノメートルのシェル厚さを有するマイクロカプセルを、0.1〜0.3重量%の陽イオン性界面活性剤を含有するエマルションの油/水界面でのテトラアルコキシシランの重合によって調製する方法に関する。このマイクロカプセルは、カプセル封入されたサンスクリーンであって、配合組成物中においてカプセル封入されたサンスクリーンの漏出が防止されるために十分な堅牢性を有するサンスクリーンの製造に有用である。
【背景技術】
【0003】
さまざまなカプセル封入技術が、化粧品用/医薬品用の活性物質の保護および送達のための方法として、当分野で開示されてきた。特に、サンスクリーン活性物質をカプセル封入して、配合された製品中で保護することを確実にし、適用時の皮膚浸透を最小化することに広範な関心が持たれている。現在のサンスクリーンの問題点は、配合された製品中でのサンスクリーンの潜在的な相互作用により、サンスクリーンのUV吸収活性の低減が引き起こされることである。この相互作用を防止する方法の1つは、1種以上のサンスクリーン剤およびその組成物をカプセル封入によって隔離することである。UV吸収サンスクリーンを含有するマイクロカプセルの代用的な例は、仏国特許第2642329号、独国特許出願公開第19537415号、欧州特許出願公開第509904号、仏国特許第2726760号、および仏国特許第2687914号、ならびに、国際公開第00/71084号、米国特許第6,303,149号、国際公開第98/31333号、米国特許第5,876,699号、および国際公開第00/72806号に開示されている。
【0004】
特開平2−2867号には、球状シリカ微粒子内にカプセル封入されたサンスクリーン(ベンゾフェノン誘導体)が記載されている。サンスクリーンは、アルカリ金属のケイ酸塩水溶液に溶解され、有機系非溶剤中で乳化されて油中水型エマルジョンが形成される。このエマルジョンは、酸性化されて、シリカ内にカプセル封入されたサンスクリーンの水不溶性沈殿物が形成される。特開平2−2867号の方法は、親水性サンスクリーン活性物質には好適であるが、ほとんどのサンスクリーン活性物質は親油性である。
【0005】
国際公開第98/31333号には、サンスクリーンがドープされたゾル−ゲル物質、および、このゾル−ゲル物質の調製方法であって、少なくとも1種のサンスクリーン成分の存在下で、金属もしくは半金属のアルコキシドまたはエステルを縮重合させて、形成されたゾル−ゲルマトリックス内へのサンスクリーン成分の取り込みを引き起こさせる工程を含む調製方法が記載されている。
【0006】
米国特許第6,303,149(A)号には、機能性分子が充填されたゾル−ゲルマイクロカプセルの調製方法であって、ゾル−ゲル前駆体および機能性分子を水溶液中で乳化する工程と、このエマルジョンを、酸性、中性、または塩基性の水溶液と混合してマイクロカプセルの懸濁液を得る工程とによる調製方法が記載されている。
【0007】
米国特許第6238650(A)号には、少なくとも1種のサンスクリーン活性成分と化粧品用として許容可能な媒体とを含むサンスクリーン組成物が記載されており、前記サンスクリーン活性成分は、少なくとも1種類のサンスクリーン化合物を含むゾル−ゲルマイクロカプセルの形態である。このゾル−ゲルマイクロカプセルは、米国特許出願公開第6303149号に開示された方法によって調製されている。
【0008】
欧州特許出願公開第281034号には、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)などの金属アルコキシドから調製された無機高分子のマトリックス内にカプセル封入および/または包接化された香料が記載されている。香料およびTEOSの水性分散液または水溶液を、酸触媒で処理して加水分解を引き起こし、次に、塩基触媒で処理して重合させてゲルにする。
【0009】
欧州特許出願公開第941761号には、オルガノポリシロキサンシェルおよびコア物質を有するマイクロカプセルの調製方法が記載されており、ここでは前記シェルは、多くとも4個のケイ素原子を有するオルガノシランおよび/またはその縮合生成物の加水分解と縮重合とによって系内(in situ)で形成されている。
【0010】
特開昭51−78995号には、シリル処理した顔料をTEOSとともにアセトン中に分散させ、攪拌しながらアンモニア性エタノール水溶液に添加して、顔料コアを有する粒子の微粉末を形成させることが記載されている。
【0011】
欧州特許出願公開第934773号には、マイクロカプセルであって、そのカプセル壁が、式:RSi(OH)(4−m−n)(式中、m=1〜4;n=0〜3;Rは、直接Si原子に結合したC原子を有する有機基を表し;Yはアルコキシ基、H、またはシロキシ基である)の化合物を縮重合することによって合成されたオルガノポリシロキサンを含むマイクロカプセルが記載されている。
【0012】
国際公開第00/71084号には、一緒に配合すると光不安定性である少なくとも2種類のサンスクリーン活性成分を含む、光安定性が改善されたサンスクリーン組成物の調製であって、前記サンスクリーン活性成分のうち少なくとも1種類をマイクロカプセルに封入し、サンスクリーン組成物の他の成分を添加することによる調製が記載されている。
【0013】
国際公開第01/80823号には、コア−シェル構造を有する直径0.1〜100μのマイクロカプセルを含む、治療用または化粧品用組成物が記載されている。コアは、少なくとも1種類の活性成分を含む。シェルは、ゾル−ゲル法により得られる無機ポリマーを含み、局所適用後に活性成分を放出する。
【0014】
国際公開第03/066209号には、テトラアルコキシシランのエマルション重合生成物から得られたシェル内にカプセル封入された、親油性の化粧品用、化学品用、または医薬品用活性物質組成物の製造方法が記載されている。これらのマイクロカプセルの製造方法は、連続相の除去を行わないワンポット法である。
【0015】
国際公開第2005/009604号には、コア−シェルマイクロカプセルの製造方法が記載されている。この場合において、シェルは、少なくとも1種の無機ポリマーを含み、この無機ポリマーは、前駆体を系内で重合することによって得られる重合した前駆体を含む。ここで、マイクロカプセルの総重量に基づくコア物質の濃度は、95重量%より高い。
【0016】
国際公開第03/066209号には、テトラアルコキシシランからの系外(ex-situ)エマルション重合による新規なカプセル封入法と、出発陽イオン性エマルション中の界面活性剤濃度とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第03/066209号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/009604号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
カプセル封入されたサンスクリーンであって、カプセル封入するシェルが、拮抗作用が起こりうる配合組成物中へのサンスクリーンの漏出を防ぐために十分に堅牢なサンスクリーンが求められている。さらに、サンスクリーンの皮膚への接触および皮膚浸透を避けることが望ましい。漏出の問題は、桂皮酸エステル誘導体、例えば、2-エチルヘキシルメトキシシンナメート(EHMCまたはOMCまたはParsol(登録商標)MCXとしても知られている)などで特に深刻である。EHMCは、有用なUV B 吸収剤として知られているが、この化合物は、望ましくない作用、例えばアレルギー反応を引き起こすことがあり、他のサンスクリーン剤、特に、ブチルメトキシジベンゾイルメタンとの交差反応性も有する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、テトラアルコキシシランの「系外(ex-situ)エマルション重合」を用いる、改良されたマイクロカプセル調製方法を見出した。より詳細には、本発明者らは、系外エマルション重合中の2つのプロセスパラメータを組合せると、改良された配合の統合性および性能を有するマイクロカプセルが製造される結果となることを見出した。これらのパラメータには、プロセスにおいて存在する陽イオン性界面活性剤の量の制御と、マイクロカプセルの全体的なシェル厚さの制御とが含まれる。
【0020】
本発明は、マイクロカプセルの調製方法であって、
I) 油相と陽イオン性界面活性剤の水溶液とを混合して水中油型エマルションを形成させる工程、
II) テトラアルコキシシランを含む、水との反応性を有するケイ素化合物を、前記水中油型エマルションに添加する工程、
III) 前記エマルションの油/水界面で前記テトラアルコキシシランを重合させて、油を含有するコアとシェルとを有するマイクロカプセルを形成させる工程
を含み、
工程I)の前記エマルションにおける前記油相に対する陽イオン性界面活性剤の重量%が、0.1重量%〜0.3重量%の範囲であり、かつ、前記マイクロカプセルのシェルの厚さが少なくとも18ナノメートルである方法を提供する。
【0021】
本発明は、本発明の方法に従って調製された、マイクロカプセルおよびマイクロカプセルの懸濁液にも関する。
本発明はさらに、0.2〜10マイクロメートルの範囲の粒径を有するマイクロカプセルであって、
A) テトラアルコキシシランの重合によって調製される、ケイ素系ポリマーを含むシェルと、
B) 油相コアと
を含み、
前記油相コアの前記シェルに対する重量比が、10/1より大きく、かつ、前記シェルが、少なくとも18ナノメートルの厚さを有するマイクロカプセル、およびその懸濁液を提供する。
【発明の効果】
【0022】
このマイクロカプセルは、カプセル封入されたサンスクリーンであって、カプセル封入されたサンスクリーンが、他のサンスクリーンを含有する配合組成物中に漏出することを防ぐために十分な堅牢性を有するサンスクリーンの製造に有用である。したがって、本発明のカプセル封入サンスクリーンを用いることによって、配合組成物の保存期間を制限する拮抗作用が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本方法の第一の工程は、油相と陽イオン性界面活性剤の水溶液とを混合して水中油型エマルションを形成させる工程を含む。
【0024】
[油相]
本明細書において、「油相」は、任意の化合物、または疎水性の化合物の混合物を包含する。典型的には、油相は、水中油型エマルションの形成時に液体である。この油相は、有機、シリコーン、またはフルオロカーボン系の任意のオイルを、単独でまたは組み合わせて含有していてよい。油相は、任意の溶媒または希釈剤を含有していてもよく、この任意の溶媒または希釈剤は、固体の疎水性化合物を可溶化してエマルションの形成の際に液状の油相を生じさせる目的で添加することができる。
【0025】
本発明の1つの実施態様では、油相は、サンスクリーン剤を含有する。この実施態様で用いるサンスクリーン剤は、液体のサンスクリーンまたはそのブレンドであってよい。同じ本発明の実施態様において、固体の有機サンスクリーンを、封入前に良溶媒に可溶化させることができる。本発明のサンスクリーン剤は、例えば、DEA-メトキシシンナメート、ジエチルヘキシルブタミドトリアジン、ジイソプロピルメチルシンナメート、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3 -ペンタンジオン、ドロメトリゾールトリシロキサン、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、3-ベンジリデンカンファー、3-ベンジリデンカンファースルホン酸、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、カンファーベンザルコニウムメトサルフェート、エチルジイソプロピルメチルシンナメート、2-エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオネート、エチルヘキシルジメチルPABA、エチルヘキシルサリチレート、エチルヘキシルトリアゾン、エチルPABA、ホモサレート、イソアミルp-メトキシシンナメート、メンチルアントラニレート、4-メチルベンジリデンショウノウ、メチレン-ビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、オクトクリレン、PABA、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー、ポリシリコーン-15、カリウムフェニルベンズイミダゾールスルホネート、ナトリウムフェニルベンズイミダゾールスルフォネート、TEAサリチレート、テレフタリデンジカンファースルホン酸、2,2-(l,4-フェニレン)ビス-(lH-ベンゾイミダゾール-4,6-ジスルホン酸、(2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシ-ベンゾイル)-安息香酸ヘキシルエステルであってよいが、この紫外線吸収剤のリストに限定されない。
【0026】
本方法の油相に使用することができる活性物質の他の例には、耐候性を向上させるため、および色褪せに耐性をもたせるために、被覆剤、塗料、プラスチック材料、シーラント、または織布の仕上げ剤に使用されるUV吸収剤が含まれる。
【0027】
油相は、他の成分(例えば、シリコーン、有機物、またはパーソナルケア活性剤など)であって、他の油相成分と実質的に可溶性であり、反対に水に実質的に不溶性である成分を含有していてよい。したがって、他の典型的なエモリエント(皮膚軟化剤)には、シリコーン〔例えば、揮発性シロキサン、ポリジメチルシロキサン液体、シリコーンエラストマーおよびシリコーン樹脂を含む高分子量(Mwが1000より大きな)シロキサンなど〕、有機化合物(例えば、炭化水素オイル、ワックス、エモリエント、フラグランス、または香料組成物など)、およびパーソナルケア有機活性剤(例えばビタミンなど)が含まれる。
【0028】
[陽イオン性界面活性剤]
油相を、陽イオン性界面活性剤の水溶液と混合して、水中油型エマルションを形成させる。
【0029】
本発明において有用な陽イオン性界面活性剤は、四級アンモニウムヒドロキシド(例えば、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化デシルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、水酸化タロウトリメチルアンモニウム、および水酸化ココトリメチルアンモニウムなど)およびこれらの物質の対応する塩、脂肪族アミン類および脂肪酸アミド類ならびにこれらの誘導体、塩基性ピリジニウム化合物、ベンズイミダゾリン類およびポリプロパノールポリエタノールアミン類の第四級アンモニウム塩基であってよいが、この陽イオン性界面活性剤のリストに限定されない。あるいは、陽イオン性界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムクロライドである。
【0030】
本発明を目的として、陽イオン性界面活性剤は、両性界面活性剤、例えば、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルフェート、ココベタイン、ココアミド酢酸ナトリウム、ココジメチルベタイン、N-ココ-3-アミノ酪酸、およびイミダゾリニウムカルボキシル化合物から選択することができる。
【0031】
上述した界面活性剤は、単独であるいは組み合わせて用いることができる。この陽イオン性または両性界面活性剤を水に溶解させて、得られる水溶液を、工程I)の水中油型エマルションの水性相すなわち連続相中の成分として用いる。
【0032】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、陽イオン性または両性の界面活性剤を使用すると、サンスクリーン剤の乳化された液滴の表面でのテトラアルコキシシランの縮合および重合が促進されると考える。テトラアルコキシシランは、加水分解され、エマルション中で反応と同時に縮合する。この負に荷電した加水分解生成物は、界面の陽イオン性または両性界面活性剤に引きつけられ、この界面でケイ素系ポリマーシェルを形成する。
【0033】
水中油型エマルションの形成の際の陽イオン性界面活性剤濃度は、用いる油相の濃度の0.1重量%〜0.3重量%とすべきである。本発明者らは、油相の乳化およびアルコキシシランを用いる反応の際に低濃度の陽イオン性または両性界面活性剤を使用すると、マイクロカプセルからの油相の拡散または浸出に対してより耐性のあるマイクロカプセルがもたらされることを見出した。
【0034】
補助的な界面活性剤、および特に非イオン性界面活性剤を、水中油型エマルションの形成の際に添加することができる。好適な非イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル〔例えば、ポリエチレングリコール長鎖(12〜14C)アルキルエーテルなど〕、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレンアルコキシレートエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、エチレングリコールプロピレングリコールコポリマー、ポリビニルアルコール、およびアルキル多糖類〔例えば、構造R−O−(RO)−(G)(式中、Rは、直鎖または分枝鎖のアルキル基、直鎖または分枝鎖のアルケニル基、またはアルキルフェニル基を表し、Rは、アルキレン基を表し、Gは還元糖を表し、mは0または正の整数を示し、nは正の整数を表す)の化合物(米国特許第5,035,832号に記載されている)〕が挙げられるが、この非イオン性界面活性剤のリストに限定されない。
【0035】
陽イオン性または両性界面活性剤の水溶液は、追加的/任意的な成分を、これらが水溶性であることを条件として含有していてよい。例えば、水混和性の有機溶媒、例えば、アルコールまたはラクタムなどを添加することができる。さらに、パーソナルケア配合物において一般に用いられる他の水溶性成分を、水相に添加することもできる。このような成分には、さらなる界面活性剤、増粘剤、保存料、抗菌剤、および水に可溶性の活性剤および香料が含まれる。
【0036】
油相と、陽イオン性または両性界面活性剤の水溶液とを一緒に混合して、水中油型エマルションを形成させる。混合およびエマルション形成は、エマルションの分野で公知の任意の技術を用いて行うことができる。典型的には、油相と、陽イオン性または両性界面活性剤の水溶液とを、単純な撹拌技術を用いて混ぜ合わせてエマルションを形成させる。次いで、水中油型エマルションの粒径を、テトラアルコキシシランの添加前に、当分野で公知の任意の乳化装置によって縮小させる。本発明において有用な乳化装置は、ホモジナイザー、ソノレーター(Sonolator)(超音波混合機)、ローターステータータービン、コロイドミル、マイクロフルイダイザー、ブレード、ヘリックス、およびこれらの組合せであってよいが、この乳化装置のリストに限定されない。このさらなる加工工程によって、出発陽イオン性水中油型エマルションの粒径が、0.2〜500マイクロメーターの範囲の値、典型的には、0.5マイクロメーター〜100マイクロメーターの範囲の値に縮小される。
【0037】
エマルジョンにおける水相に対する油相の重量比は、一般に、40:1〜1:50とすることができるが、高比率の水相は、特にマイクロカプセルの懸濁液を形成させる場合には経済的に不利である。通常、水相に対する油相の重量比は2:1〜1:3である。油相組成物が高粘性である場合は、油相を、界面活性剤および少量、例えば油相に対して2.5〜10重量%の水と混合して油中水型エマルジョンを形成させ、これに剪断を与えて水中油型エマルジョンに転換させる転相法を用いてもよい。次いで、さらに水を添加してエマルジョンを所望の濃度に希釈することができる。
【0038】
[エマルションの油/水界面でのテトラアルコキシシランの添加および重合]
本方法の第二および第三の工程は、テトラアルコキシシランを含む、水との反応性を有するケイ素化合物を、前記水中油型エマルションに添加する工程、および、エマルションの油/水界面で前記テトラアルコキシシランを重合させる工程を含む。いかなる理論に拘束されることも望まないが、本発明者らは、本方法の第三の工程により「系外のエマルション重合」が達成され、これによってテトラアルコキシシラン前駆体が油/水界面で加水分解および縮合し、この前駆体の転相によってコア−シェルマイクロカプセルの形成がもたらされると考える。
【0039】
テトラエトキシシラン(TEOS)などのテトラアルコキシシランは、モノマー形態で、あるいは液状部分縮合物として用いることができる。テトラアルコキシシランを、少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種のSi-OH基またはケイ素に結合した加水分解性基を有する1種以上の他の水反応性ケイ素化合物、例えば、メチルトリメトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、またはアルキルトリアルコキシシランの液状縮合物と併せて用いてもよい。
加水分解性基は、例えば、ケイ素に結合したアルコキシ基またはアシルオキシ基であってよい。水との反応性を有するケイ素化合物は、例えば、75〜100重量%のテトラアルコキシシランおよび0〜25%のトリアルコキシシランを含んでいてもよい。テトラアルコキシシランまたは他のシラン類のアルキル基およびアルコキシ基は、好ましくは炭素原子数が1〜4であり、最も好ましくは炭素原子数が1または2である。テトラアルコキシシラン、および他の水反応性ケイ素化合物(使用する場合)は、加水分解および縮合して、網目状ポリマー、すなわちケイ素をベースとする三次元網目状の物質を、親油性活性物質組成物の乳化液滴の周囲に形成する。水反応性ケイ素化合物は、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは90〜100%のテトラアルコキシシランからなる。本発明者らは、テトラアルコキシシランが、不浸透性マイクロカプセルを形成し、SiO4/2単位から実質的になる三次元網目を形成することを見出した。
【0040】
テトラアルコキシシラン、および他の水反応性ケイ素化合物(使用する場合)は、希釈していない液体として、あるいは有機溶媒中の溶液として、あるいはエマルジョン形態で、活性物質組成物のエマルジョンに添加することができる。テトラアルコキシシランと、水中油型エマルジョンとを、添加中および次の重合中に混合して、乳化液滴の表面上にケイ素系ポリマーシェルを形成させる。混合は、典型的には、攪拌により行う。通常の撹拌技術が、出発水中油型エマルションの粒径を保持しながら油/水界面でのテトラアルコキシシランの重合および縮合を引き起こすのに典型的には十分である。
【0041】
工程II)で添加したテトラアルコキシシランの(重量に基づく)量は、エマルション中に存在する油相の重量に基づいて、典型的には、6/1〜1/13、あるいは1/3.6〜1/6.1の範囲である。
【0042】
油/水界面でのテトラアルコキシシランの重合は、典型的には、酸性、中性、または塩基性のpHで行なうことができる縮合反応である。この縮合反応は、一般に、周囲温度および圧力で行なうが、高温(例えば最高で95℃まで)、高圧または低圧(例えば真空下)で、縮合反応中に生成する揮発性アルコール溶媒を揮散(strip)させて行ってもよい。
【0043】
テトラアルコキシシランの重合を促進することが知られている任意の触媒を、工程III)に添加して、マイクロカプセルのシェルを形成させることができる。この触媒は、典型的には、油溶性有機金属化合物、例えば有機スズ化合物〔特に、オルガノスズ化合物(例えば、ジオルガノスズジエステル、例えば、ジメチルスズジ(ネオデカノエート)、ジブチルスズラウレート、またはジブチルスズジアセテートなど)、あるいは、スズカルボキシレート(例えば、スズ(II)オクトエートなど)〕または有機チタン化合物(例えば、チタン酸テトラブチルなど)である。有機スズ触媒は、例えば、テトラアルコキシシランに基づいて0.05〜2重量%で用いることができる。有機スズ触媒は、中性pHで有効な触媒であるという利点を有する。この触媒を、典型的には、乳化した油相液滴の表面でのテトラアルコキシシランの縮合を促進するため、乳化前に油相成分と混合する。あるいは、触媒を、テトラアルコキシシランの添加前、またはテトラアルコキシシランと同時、またはテトラアルコキシシランの添加後にエマルジョンに添加して、形成されたケイ素系ポリマーのシェルを硬化し、より不浸透性にすることができる。しかし、封入は、触媒を用いることなく達成することができる。触媒は、使用する場合には、希釈しないで添加することができ、あるいは炭化水素、アルコール、もしくはケトンなどの有機溶媒中の溶液として添加することができ、あるいははエマルジョンもしくは懸濁液などの多相系として添加することができる。
【0044】
工程III)における重合反応は、マイクロカプセルのシェルが少なくとも18ナノメーターの厚さを形成するように、あるいはシェルが18〜150ナノメートル、あるいは18〜100ナノメートルの範囲の厚さを有するように進行させることができる。
【0045】
シェルの厚さは、得られる懸濁液中のマイクロカプセルの粒径(PS)と、マイクロカプセルを調製するための工程で用いた油相およびテトラアルコキシシランの量とから以下のように決定することができる:
シェル厚さ(nm)=[(PS/2)−[(PS/2)×(ペイロード/100)1/3]]×1000
(式中、PSは、マイクロメートルで表された粒径(Dv 0.5)であり、
ペイロード=油相の体積×100/(油相の体積+シェルの体積)、
油相の体積=油相の質量/油相の密度、
シェルの体積=シェルの質量/シェルの密度
である)。
【0046】
この方程式は、球状の形をしたマイクロカプセルであって、その平均粒径(Dv 0.5)によって決定された平均直径を有するものに基づく。したがって、シェル厚さは、マイクロカプセルの半径と、マイクロカプセル中のコア物質の半径との間の差である。
シェル厚さ=rマイクロカプセル−rコア
(式中、rマイクロカプセル=(PS/2)、
コア=(PS/2)×(ペイロード/100)1/3
である)。
【0047】
ペイロードは、コア物質によって占められているマイクロカプセルのパーセンテージを表し、エマルション中に存在する油相の量によって決定される。したがって、ペイロードは、以下の関係によって算出される:
ペイロード=油相の体積×100/(油相の体積+シェルの体積)
【0048】
油相の体積=油相の質量/油相の密度である。この式中の油相の質量は、マイクロカプセルを調製するために工程(工程I)で用いた量に等しい。本発明の一実施態様では、油相は、1.011 g/mLの密度を有するエチルヘキシルメトキシシンナメート(EHMC)である。
【0049】
シェルの体積=シェルの質量/シェルの密度である。このシェルを構成するケイ素系ポリマーは、経験的な式:SiO2 の平均化学組成を有すると予想される。したがって、このシェルの密度は、シリカ(SiO2)の密度に近似する2 g/mLであると見積もられる。シェルの質量は、工程(工程II)で添加したテトラアルコキシシランの量から算出される。より特に、シェルの質量は、この工程において用いるテトラアルコキシシランの種類および量を考慮して期待される、経験的な式SiO2を有するシリコン系のポリマーの化学量論的収率に基づく。本発明の一実施態様では、テトラアルコキシシランは、0.934 g/mLの密度を有するテトラエトキシシラン(TEOS)である。この実施態様では、1 gのTEOSの完全な加水分解および縮合により、0.288 gのSiO2ポリマー(シリカ)が生成することが想定される。
【0050】
工程IIIによって形成されたマイクロカプセルは、典型的には懸濁液中で保持される。水性連続相は、水混和性有機溶媒を含んでいてよく、例えば、それは、通常、Siに結合したアルコキシ基の加水分解により生成したエタノールなどのアルコールを含有する。水をベースとする調製品、例えば、化粧品用、化学薬品用、または医薬品用製品では、このマイクロカプセルの懸濁液を、懸濁液からマイクロカプセルを分離することなく使用することが有利な場合がある。特に、カプセル封入されたサンスクリーンの懸濁液を、日焼け止めローションまたはクリームに直接組み入れることができ、あるいは懸濁液自体をサンスクリーンローションとして使用することもできる。カプセル封入されたサンスクリーンの懸濁液は、所望により、他のサンスクリーンと併用して使用することができる。例えば、メトキシケイ皮酸オクチルなどのカプセル封入されたUV−B吸収剤を、アボベンゾンなどのUV−A吸収剤および任意で他のサンスクリーンと共に配合することができる。このような配合物中のUV−A吸収剤は遊離であってもよく、またはカプセル封入されていてもよい。
【0051】
多くの用途では、例えば、後で異なる媒質中に分散するために、懸濁液からマイクロカプセルを回収することが望ましい場合がある。カプセル封入されたサンスクリーンを、例えば、水系化粧品用調製物中に、好ましくは化粧品用調製物中のサンスクリーン含量が0.1〜10重量%となるような割合で分散させることができる。あるいは、マイクロカプセルを、場合により添加剤(例えば、界面活性剤および/またはポリマーなど)と共に、有機溶媒中に再分散させることができる。マイクロカプセルの回収は、任意の公知の液体除去技術、例えば、噴霧乾燥、噴霧冷却、濾過、オーブン乾燥、または凍結乾燥により達成することができる。
【0052】
本発明はさらに、上述した方法にしたがって調製したマイクロカプセルの水性懸濁液、および単離されたマイクロカプセルに関する。
【0053】
本発明はさらに、0.2〜10マイクロメートルの範囲の粒径を有するマイクロカプセルおよびその水性懸濁液であって、
A) テトラアルコキシシランの重合によって調製される、ケイ素系ポリマーを含むシェルと、
B) 油相コアと
を含み、
前記油相コアの前記シェルに対する重量比が、10/1より大きく、あるいは50/1より大きく、あるいは90/1より大きく、かつ、前記シェルが、少なくとも18ナノメートルの厚さを有する
マイクロカプセルを提供する。
このようなマイクロカプセルおよびその懸濁液は、上述した方法によって得られる。しかし、他の方法を用いることもできる。
【0054】
サンスクリーン剤は、それらが封入されていても、有害なUV照射を排除するそれらの機能を発揮することができる。本マイクロカプセルのシェルを形成するケイ素系ポリマーは、UVを吸収せず、サンスクリーン剤の効果を損なう効果を全く有さず、光分解に対する保護を潜在的に向上させることができる。
【0055】
サンスクリーン剤組成物を含有する本発明のマイクロカプセルは、良好な皮膚付着性を有する。このマイクロカプセルは、サンスクリーン剤と皮膚との間の接触を最小限に抑え、皮膚浸透の減少およびその結果として刺激およびアレルギーの可能性の低下をもたらす。このマイクロカプセルのエマルジョンは、サンスクリーン剤の水分散液と比べ、高濃度(高いペイロード(pay load))のサンスクリーン剤を有することができ、界面活性剤基剤製品における親油性サンスクリーン剤の使用の容易さを増大させ、サンスクリーン剤調製物が、噴霧可能であり得る液状性の高い製品形態を有することを可能にする。カプセル封入により、親油性サンスクリーン剤に伴うべたつき感が解消され、スキンケア製品における忍容性および用途が増大する。マイクロカプセルは、カプセル封入されたサンスクリーン剤の光安定性にほとんど影響しないかあるいは全く影響しない。マイクロカプセルのシェルを形成するケイ素系ポリマーは、一般に、界面活性剤の存在下であっても水不溶性のままであり、そのため、カプセル封入された化粧品用活性物質は、ヘアシャンプー、コンディショナーまたは染料、固形石鹸、口紅、マスカラ、織物用柔軟剤、洗剤、またはシャワージェルなどの界面活性剤基剤製品を含む水系洗面化粧品用調製物中で使用することができる。
【0056】
本発明のカプセル封入されたサンスクリーンの別の用途は、織布の処理におけるものであり、例えば、マイクロカプセルの懸濁液または分離したマイクロカプセルを、その後の織布の色褪せを抑制するために繊維柔軟剤に組み入れることができ、あるいは使用時に日光またはUV光に曝露されるように設計されるプラスチック組成物または被覆剤に組み入れることができる。
【実施例】
【0057】
これらの実施例は、本発明を当業者に例証することを意図するものであり、請求項に記載した発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。測定および実験はいずれも、特に指定しない限り、23℃にて行った。
【0058】
本発明の方法を用いて、以下の実施例の、サンスクリーンであるエチルヘキシルメトキシシンナメート(EHMC)(Parsol MCX(登録商標))を含有するマイクロカプセルの懸濁液を調製した。EHMCを、マイクロカプセルの代表的なコア成分(すなわち出発水中油型エマルションの油相成分)として選択して、本発明の方法に従って調製した形成されたマイクロカプセルの有用性および堅牢性を実証した。EHMCは、それが他の多くの化合物と反応性であること(したがって、そのUV吸収およびサンスクリーンの有効性が低下すること)を理由として選択した。特に、エチルヘキシルメトキシシンナメート(EHMC)は、照射直後に、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(BMDBM)と光相互作用によって反応して1:1付加生成物を形成する。この結果、吸収能力が損なわれ、これをUVスペクトルによって測定することができる。したがって、この光反応を利用して、マイクロカプセルから外へのEHMCのいかなる拡散をも確認することができる。BMDBMおよびEHMCの回収を測定することによって、サンスクリーン剤をマイクロカプセル内に保持する効率を測定することができる。
【0059】
以下の実施例において、懸濁液の光安定性は、43℃での数週間の貯蔵の前後に、G. BersetおよびH. Gonzenbach (COLIPA Task force)による「Proposed Protocol for Determination of Photostability, PartI: Cosmetic UV-filters」、Int. J.Cosmet.Sci. 18, 167-188 (1996)に記載された方法にしたがって、Atlas Suntest XLS+を使用して測定した。照射時間は5.5時間であった。
【0060】
[実施例1]
350 gのEHMC(Parsol MCX(登録商標))を、1.4 gのPareth-3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、0.9 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する540.9 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.25%であった。粗エマルションを、100 bar(10 MPa)で作動している「Rannie Mini Lab 8.30 H」ホモジナイザーに1回通した。10.46%のTEOSを、このエマルションに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルションを形成させた。平均体積粒径(Dv 0.5)3.05マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造された。
【0061】
[実施例2]
350 gのEHMC(Parsol MCX(登録商標))を、1.4 gのPareth-3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、0.9 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する540.9 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.25%であった。粗エマルションを、100 bar(10 MPa)で作動している「Rannie Mini Lab 8.30 H」ホモジナイザーに1回通した。10.46%のTEOSを、このエマルションに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルションを形成させた。平均体積粒径(Dv 0.5)3.55マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造された。
【0062】
[実施例3]
350 gのEHMC(Parsol MCX(登録商標))を、1.4 gのPareth-3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、0.9 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する540.9 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.25%であった。粗エマルションを、40 bar(4 MPa)で作動している「APV Model 1000」ホモジナイザーに1回通した。10.46%のTEOSを、このエマルションに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルションを形成させた。平均体積粒径(Dv 0.5)3.94マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造された。
【0063】
[実施例4]
350 gのEHMC(Parsol MCX(登録商標))を、1.4 gのPareth-3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、0.9 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する540.9 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.25%であった。粗エマルションを、40 bar(4 MPa)で作動している「APV Model 1000」ホモジナイザーに1回通した。10.46%のTEOSを、このエマルションに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルションを形成させた。平均体積粒径(Dv 0.5)4.15マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造された。
【0064】
[実施例5]
350 gのEHMC(Parsol MCX(登録商標))を、1.4 gのPareth-3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、0.9 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する540.9 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.25%であった。粗エマルションを、40 bar(4 MPa)で作動している「APV Model 1000」ホモジナイザーに1回通した。10.46%のTEOSを、このエマルションに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルションを形成させた。平均体積粒径(Dv 0.5)3.62マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造された。
【0065】
[実施例6](比較)
700 gのEHMC(Parsol MCX(登録商標))を、2.8gのPareth-3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、1.8 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する1080.8 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.25%であった。粗エマルションを、900 bar(90 MPa)で作動している「Rannie Mini Lab 8.30 H」ホモジナイザーに1回通した。13.14%のTEOSを、このエマルションに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルションを形成させた。平均体積粒径(Dv 0.5)1.07マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造されたが、18ナノメートル未満のシェル厚さを有していた。
【0066】
[実施例7](比較)
700 gのEHMC(Parsol MCX(登録商標))を、2.8gのPareth-3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、1.8 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する1080.8 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.25%であった。粗エマルションを、900 bar(90 MPa)で作動している「Rannie Mini Lab 8.30 H」ホモジナイザーに1回通した。13.14%のTEOSを、このエマルションに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルションを形成させた。平均体積粒径(Dv 0.5)1.12マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造されたが、18ナノメートル未満のシェル厚さを有していた。
【0067】
[実施例8](比較)
350 gのEHMC(Parsol MCX(登録商標))を、1 gのPareth-3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤と、1.13 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する541.6 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.32%であった。粗エマルションを、50 bar(5 MPa)で作動している「APV Model 1000」ホモジナイザーに1回通した。13.14%のTEOSを、このエマルションに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルションを形成させた。平均体積粒径(Dv 0.5)3.4マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造されたが、18ナノメートル未満のシェル厚さを有していた。
【0068】
[実施例9](比較)
この実施例では、乳化前にTEOSを油相(ETMC相)に添加する、米国特許第6,303,149(B1)号に記載された通りの方法を用いた。
276 gのETMC(Parsol MCX(登録商標))を、24 gのTEOSと混合し、このブレンドを、1.6 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する230 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.58%であった。粗エマルションを、IKA Ultra-Turrax Basic T25を9600 rpmにて5分間使用して、乳化させた。
平均体積粒径(Dv 0.5)4.5マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造された。
【0069】
[実施例10](比較)
この実施例では、CTAC/ETMC比が的確であっても、TEOSを、油相(ETMC相)ではなく、水相に添加することの重要性を実証する。
242 gのETMC(Parsol MCX(登録商標))を、24 gのTEOSと混合し、このブレンドを、0.62 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する181 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.26%であった。粗エマルションを、IKA Ultra-Turrax Basic T25を9600 rpmにて5分間使用して、乳化させた。
平均体積粒径(Dv 0.5)6.3マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造された。
【0070】
[実施例11](比較)
この実施例では、CTAC/ETMC比が的確であり、シェル厚さが的確であっても、TEOSを、油相(ETMC相)ではなく、水相に添加することの重要性を実証する。
242 gのETMC(Parsol MCX(登録商標))を、24 gのTEOSと混合し、このブレンドを、0.62 gのセチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)陽イオン性界面活性剤とを含有する181 gの水中で乳化させた。この時、CTAC/ EHMC比は、0.26%であった。粗エマルションを、IKA Ultra-Turrax Basic T25を9600 rpmにて5分間使用して、乳化させた。
平均体積粒径(DV 0.5)4マイクロメートルのマイクロカプセルが、懸濁液中で製造された。
【0071】
標準的なサンケア調製品の形態の3つの対照組成物(対照例A、B、およびC)を調製した。
対照例Aは、5%のETMC、2%のBDMBM、1.8%のOC(オクトクリレン)を含有していた。
対照例Bは、5%のETMCを含有していた。
対照例Cは、2%のBDMBM、1.8%のOCを含有していた。
相当する量の封入されたEHMC、2%のBDMBM、1.8%のOCを含有する試料も調製した。EHMC、BDMBM、およびOCを含有するマイクロカプセルの調製は、上述した通りである。次いで、対照例と、マイクロカプセルを含有する試料とを、標準的な局所用組成物に組み込んだ。試験した組成物の成分を、表1にまとめた。これらは、以下の手順にしたがって調製した。A)部分とB)部分とを攪拌しながら85℃に加熱する。さらなる非封入UV-Aおよび/またはUV-Bおよび/または広範囲のスクリーンを、それらの水相または油相への溶解性に基づいて所望の濃度で添加する。均一である場合には、B)部分をA)部分に激しく撹拌しながら添加する。撹拌しながら45℃に冷却し、次いで、C)部分を添加する。撹拌しながら周囲温度に冷却する。小さい粒径を達成するために、再びホモジナイズする。
【0072】
懸濁液の光安定性を、上述した通りに測定および評価する。試料中のEHMCおよびBDMBMの回収率は、効果的な保持を実証するためには対照例BおよびCの回収率と同等でなければならない。この値が時間と共に減少する場合、あるいは対照例Aの値と同等である場合には、サンスクリーン剤のマイクロカプセル中での保持は不十分であると考えられる。エージング過程を促進するために、組成物を43℃で貯蔵する。
【0073】
【表1】

【0074】
シェルの厚さは、以下のように決定した:
シェル厚さ(nm)=[(PS/2)−(PS/2)×(ペイロード/100)1/3]×1000
(式中、PSは、マイクロメートルで表された粒径(Dv 0.5)であり、
ペイロード=サンスクリーン剤の体積×100/(サンスクリーン剤の体積+シェルの体積)、
サンスクリーン剤の体積=EHMCの重量/1.011、
シェルの体積=シェルの重量/2
である)。
【0075】
粒径の測定は、Malvern Instruments Ltd., UKの「Mastersizer 2000」を使用してレーザー回折技術によって行った。(粒径測定についてのさらなる情報は、「Basic Principles of Particle Size Analytics」、Dr. Alan Rawle, Malvern Instruments Limited, WR 14 IXZ, UK、および「Manual of Malvrem Particle Size Analyser」に記載されている)。特に、1994年11月に発行された、ユーザーマニュアル番号MNA 0096, Issuel.1.0を参照されたい。本明細書に記載した全ての粒径は、D(v、0.5)に準拠した中央平均粒径であり、Malvrem Mastersizerを使用して測定される。
【0076】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルの調製方法であって、
I) 油相と陽イオン性界面活性剤の水溶液とを混合して水中油型エマルションを形成させる工程、
II) テトラアルコキシシランを含む、水との反応性を有するケイ素化合物を、前記水中油型エマルションに添加する工程、
III) 前記エマルションの油/水界面で前記テトラアルコキシシランを重合させて、油を含有するコアとシェルとを有するマイクロカプセルを形成させる工程
を含み、
工程I)の前記エマルションにおける前記油相に対する陽イオン性界面活性剤の重量%が、0.1重量%〜0.3重量%の範囲であり、かつ、前記マイクロカプセルのシェルの厚さが少なくとも18ナノメートルである、方法。
【請求項2】
前記油相が、サンスクリーンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンスクリーンが、エチルヘキシルメトキシシンナメートである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記テトラアルコキシシランが、テトラエトキシシランである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記陽イオン性界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムクロライドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記重合が、系外(ex-situ)での重合である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法にしたがって調製されたマイクロカプセル。
【請求項8】
0.2〜10マイクロメートルの範囲の粒径を有するマイクロカプセルであって、
A) テトラアルコキシシランの重合によって調製される、ケイ素系ポリマーを含むシェルと、
B) 油相コアと
を含み、
前記油相コアの前記シェルに対する重量比が、10/1より大きく、かつ、前記シェルが、少なくとも18ナノメートルの厚さを有する、マイクロカプセル。
【請求項9】
前記油相が、サンスクリーンを含む、請求項8に記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
前記サンスクリーンが、エチルヘキシルメトキシシンナメートである、請求項9に記載のマイクロカプセル。
【請求項11】
前記テトラアルコキシシランが、テトラエトキシシランである、請求項8に記載のマイクロカプセル。
【請求項12】
請求項8に記載のマイクロカプセルの水性懸濁液であって、
C) 陽イオン性界面活性剤
を含む、水性懸濁液。
【請求項13】
前記陽イオン性界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムクロライドである、請求項12に記載の水性懸濁液。

【公表番号】特表2009−542667(P2009−542667A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518261(P2009−518261)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/014989
【国際公開番号】WO2008/002637
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】