説明

テープ状成形品およびボールチェーン用ベルト

【課題】テープ状成形品およびボールチェーン用ベルトを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂テープ状射出成形品であって、該成形品の長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に、該テープ状成形品を構成する樹脂2と同質の樹脂よりなるあらかじめ延伸した繊維状物1を内蔵してなる合成樹脂テープ状成形品、ならびに該テープ状成形品に、更に等間隔直線状に設けたボール嵌め込み穴3およびその周囲の保持部4を設けてなるボールチェーン用ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ状成形物および複数のボールまたはローラーなどの転動体(以下、代表的に「ボール」と記す)の回転を利用して軌道上の直線運動案内装置に用いるボールチェーン用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂テープ状成形物は種々存在するが、テープ状の平面部に多数の穴部を設けその穴部に他の物体を保持させるベルトの成形に適したテープ状成形物の提案は殆どない。テープ状の平面部に多数の穴を設けそこに他の物体を保持させるベルトとしては、例えば、軌道上を直線運動案内装置におけるボールを回転自在に保持させる無端ベルトがある。このようなベルトは、例えば特開平5−52217号公報に記載されているように、所定間隔に一列に配列される複数の各ボールの間に介在するボール保持部と、各ボール保持部間を連結する可撓性連結部材からなる。
【0003】
このようなボールチェーン用ベルトの製造には、押出し成形したテープ状成形物に所定のボール保持穴を設けて製造する方法と、テープ状成形物を経ることなく直接射出成形による方法とがある。前者の一つの例は、特開2001−74048号公報に記載されるように、予め平帯状の長尺のテープ状成形物(ベルト部材)を押出成形し、このベルト部材を所定の長さに切断してボールを遊嵌する保持穴を一列に穿ち、この保持穴内にボールを中子として用いながら、互いに隣接する保持穴の間にボールを保持するためのスペーサー部を射出成形する。このように合成樹脂を押出成形してテープ状成形物(ベルト部材)を成形した後、ボール保持穴を設けボールを回転自在に保持させる場合、これを無端ベルトとして摺動させる使用に適した充分な強度が得にくい。また、射出成形によって成形したスペーサー部とベルト部材との接着が不充分でスペーサー部の脱落が発生する。そのため、特開2001−74048号公報には、さらに、ベルト部材に引張強度、曲げ強度を確保するために、2台の押出機を用いて補強材となる樹脂と補強材を被覆しテープ状部を形成する樹脂とを共通のダイから押出す方法、あるいは平帯状ベルトの長手方向に平行な両端部にガラス繊維、または炭素繊維、セラミック繊維等の補強剤を内蔵させる押出成形法も開示されている。しかし、前述の2種の樹脂の共押出しによって補強材部を形成させても充分な引張強度は得られず、強度を上げるためにその延伸倍率を大きくすると熱収縮率が大きくなり、例えば直線運動案内装置におけるボールを回転自在に保持させる無端ベルトのような使用には適さない。また、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維等のベルト形成材料とは異質の材質からなる繊維は、ベルト形成材料と充分強固に結合され得ず、使用中における種々の負荷により両者の間に間隙が生じ易く、間隙が生じると急激にその強度が低下してくるおそれがあり、耐久性に問題がある。
【0004】
また、ボールチェーン用ベルトを製造する別の方法は、例えば、特開平11−247856号公報に記載されている方法は、合成樹脂の射出成形を行う金型に、ボールチェーンに使用するボールの直径より大きな径のボール型を所定の間隔で突起配置し、かかる金型内に合成樹脂を射出することによって、ボール型が配列された連結体ベルトを成形し、連結体を金型から取り出した後、成形体のボール型部に所定のボールを押し込むことによって、ボールを回転可能に保持させる方法である。このような方法では、十分な寸法精度を発現することが非常に難しく、仮に十分な精度が得られたとしても金型の製造コストが非常に高価になるばかりでなく、金型からの製品の取外しが難しく穴周辺部にバリができるなど不良品の発生率が高くなり好ましくない。
【0005】
他の方法、例えば、特開平5−196037号公報に開示されている方法は、複数の各ボールの間に介在させるボールピースと各ボールピース間を連結しかつボールが挿入されるボール穴を備えた連結バンドとが射出成形によって一体成形される。射出成形では、各ゲートから射出される樹脂がゲート間の中間部で接合することになる。この樹脂の接合をウェルドといい、この部分は強度が低下し易い。
【0006】
上記したように、テープ状の平面部に多数の穴部を設け他の物体を保持させるベルトの成形に適したテープ状成形物は提供されていない。また、上述したような方法によるベルト部材の製造は煩雑であり、また所望の強度が得にくい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、テープ状の平面部に多数の穴部を設け穴部に他の物体を保持させるベルトの成形に適した引張強度の大なるテープ状成形物またボールを一列に回転自在に配した引張強度の大なるボールチェーン用ベルトとして引張強度の大なる成形物をえることを課題として研究し、本発明に到った。
【0008】
本発明は、テープ状の平面部に多数の穴部を設けたベルトあるいはその穴部に他の物体を保持させるベルトの成形に適したテープ状成形物、およびボール保持力に優れ耐久性のあるボールチェーン用ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に、あらかじめ延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物(以下、延伸繊維状物、と云う)を内蔵してなる熱可塑性樹脂テープ状の成形品に関する。特に、延伸繊維状物が該テープ状成形品を構成する繊維状物以外の樹脂と同一のまたは主成分を同一とする合成樹脂よりなり、長手方向引張強度が250MPa以上で熱収縮率が1%以下、好ましくは長手方向引張強度が300MPa以上で熱収縮率が0.5%以下であることを特徴とする合成樹脂テープ状成形物である。
【0010】
また本発明は、延伸繊維状物をインサートして該延伸繊維状物と同一のまたは主成分を同一とする接着性の良い熱可塑性樹脂を射出成形してなる合成樹脂テープ状の成形品であって、長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に位置する内蔵された延伸繊維状物、等間隔直線状に設けたボール嵌め込み穴、およびその穴の両側にボール保持用部材(保持しなくとも、隣り合うボール同士が直接接触しないようにする事が出来ればよい)を設けてなるボールチェーン用ベルトに関する。本発明のボールチェーン用ベルトは、延伸繊維状物が該ベルトを構成する繊維状物以外の樹脂と同一のまたは主成分を同一とすることにより成形可能な接着性の良い合成樹脂よりなり、引張強度が100MPa以上、ボール嵌め込み穴にボールを嵌め込んだときのボール保持力が30MPa以上、熱収縮率が1%以下である、好ましくは引張強度150MPa以上ボール嵌め込み穴にボールを嵌め込んだときのボール保持力が45MPa以上、かつ、熱収縮率が0.5%以下である。このような場合、延伸繊維状物は嵌め込み穴より外側の部分にあればよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のテープ状成形品を示す斜視図である。
【図2】本発明のボールチェーン用ベルトを示すものであり、(a)は平面図、(b)は縦側面図、(c)は横側面図である。
【図3】本発明のテープ状成形品の成形の金型内に延伸繊維状物をセットした状態を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図4】比較のための延伸繊維状物を含まないテープ状成形品を示す斜視図である。
【図5】比較のための共押出し芯入り複合テープ状成形品を示す。
【図6】本発明のテープ状成形品にボール嵌め込み穴開けした図を示す。
【図7】本発明のボールチェーン用ベルト成形のために金型内に延伸繊維状物とボールをセットした図を示す。
【図8】比較のためのボールチェーン用ベルト(延伸繊維状物なし)を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図9】比較のためのボールチェーン用ベルト(芯入り複合ベルト)を示すものであり、(a)は平面図、(b)は縦側面図、(c)は横側面図である。
【図10】比較のための延伸繊維状物を含まないテープ状成形品にボール嵌め込み穴開けした図である。
【図11】本発明のローラー型ボールチェーン用ベルト成形のために金型内にローラーをセットした図である。
【図12】本発明のローラー型ボールチェーン用ベルト図であって、(a)は平面図、(b)は縦側面図、(c)は横側面図である。
【図13】本発明のボールチェーンを組み込んだ直線運動案内装置を示す斜視図である。
【図14】本発明のローラー型ボールチェーンを組み込んだ直線運動案内装置を示す斜視図である。
【図15】本発明のボールチェーンを組み込んだボールネジを示す断面図である。
【符号の説明】
【0012】
1 延伸繊維状物
2 テープ状部
3 ボール保持用穴
4 ボール保持用部材
5 成形用ボール
6 芯
7 ボールを嵌め込んだ状態を示す
8 金型
9 ローラー保持用穴
10 ローラー保持用部材
11 直線運動案内装置
12 軌道レール
13 移動ブロック本体
14 ボールチェーン
15 直線運動案内装置
16 軌道レール
17 移動ブロック本体
18 ボーラー型ボールチェーン
19 ボールネジ
20 ネジ軸
21 ナット部材
22 リターンパイプ
23 ボールチェーン(ボールベルトとボール)
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明のテープ状成形物は、延伸繊維状物1とインサートする樹脂2からなる図1に示すような成形物であり、金型内に予め延伸繊維状物1を成形物の長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に内蔵されるようにセットし、延伸繊維状物1と成形可能な接着性の良い樹脂を射出成形することによって、延伸繊維状物1と一体となったテープ状部(射出成形樹脂部)2を形成させ、長手方向引張強度が250MPa以上で熱収縮率が1%以下、好ましくは長手方向引張強度が300MPa以上で熱収縮率が0.5%以下である樹脂テープ状成形品を得ることができる。なお、熱収縮率は、40℃(乾熱)中に無緊張の状態で24時間放置した後に測定した。
【0014】
また、第2の発明のボールチェーン用ベルトは、図2((a):平面図(b):縦側面図、(c):横側面図)に示すようにテープ状成形物の長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に延伸繊維状物1、テープ状部(射出成形樹脂>2の中央部に等間隔に多数のボール嵌め込み穴3、嵌め込み穴と嵌め込み穴の間にボール保持用部材4よりなる。このような場合、延伸繊維状物は嵌め込み穴より外側の部分にあればよい。なお、図2中、破線7はボールを嵌め込んだ状態を示す。
【0015】
上述の本発明のボールチェーン用ベルトは以下のようにして製造することができる。すなわち、上述のようにして製造した延伸繊維状物を含むテープ状成形品(図1)に、図6に示すように、保持させるボール(またはローラー)よりやや大きい径の穴3を等間隔に穴開け加工し、この穴3に成型用ボールを嵌め込み、該穴の周囲にボール保持用部材4を突起状に射出成形する。あるいは、テープ状成形品を経ることなく金型8内に、図7に示すように、保持させるボールより径のやや大きい成形用ボール5および延伸繊維状物1を配して所定の樹脂の射出成形により、テープ状部2および保持部4を一体成形する。こうして長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に延伸繊維状物を内蔵し、ボール中央部を固定した成形物を得、成形用ボールを取外してボールチェーン用ベルトを得ることができる。これを用いたボールチェーンの製造は、保持させる所定のボールをそれぞれの穴に嵌め込むことによって、回転自在にボールを保持させたボールチェーンとすることができる。
【0016】
ここで、あらかじめ延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物とは、未延伸繊維状物を紡糸した後、未延伸繊維状物を延伸することによって、分子鎖が配向した繊維状物を云う。延伸の方法は、特に限定するものではなく、繊維状物の配向を高めることができればよい。例えば、未延伸から連続的に延伸工程を行う方法でも良い、
また未延伸繊維状物を得た後、別工程で延伸を行う方法でもよい。延伸は、1段延伸でも2段以上の多段延伸でもよく、熱処理等の工程を経ても良い。延伸媒体は、気体でも液体でも熱板でも良く、特に限定されるものではない。また、紡糸口金から吐出した樹脂にドラフトをかける直接紡糸延伸を行う方法でも良い。あらかじめ延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物としては、通常の延伸条件で延伸して得られる引張強度300MPa以上、好ましくは450〜1000MPaの延伸繊維であって、モノフィラメント、マルチフィラメントでも良い。また、複合構造繊維(例えば芯鞘構造)でも、組紐状繊維、撚り糸状繊維、異型状繊維等であっても良く、射出成形樹脂と充分な強度で接着状態を保持できる構造であればこれらに限定されるものではない。あらかじめ延伸した熱可塑性樹脂の延伸繊維状物としては、好ましくは、射出成形する樹脂と同質のモノフィラメント(芯鞘型複合糸を含む)を用いる。
【0017】
本発明においては、成形可能な接着性の良い樹脂として、射出成形樹脂と、全く同一の樹脂あるいは、主成分が同一の樹脂が用いられる。またこれら同一の樹脂あるいは主成分を同一とする樹脂からなる延伸繊維状物の表層に化学的および物理的処理を施してもよい。また、射出成形に使用する樹脂としては、射出成形可能なものであれば限定されるものではないが、各種のエラストマー(例えば、ポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、アクリル系、フッ素樹脂系)、あるいは各種の合成樹脂(例えば、ポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、アクリル系、フッ素樹脂系等)等を用いることができる。
【0018】
なお、延伸繊維状物とこれと同一のまたは主成分を同一とする成形可能な接着性の良い樹脂とから射出成形して得られるテープ状成形物における、長手方向に直交する断面に占める延伸繊維状物の比率は10〜70%、好ましくは20〜60%であることが望ましい。この比率は、テープ状成形物の大きさ、所望の強度などによって変わり得る。
【0019】
本発明のテープ状成形品において、繊維状物以外の成形部の配向は、繊維状物より低く、かつテープ状成形品の熱収縮率が1%以下が好ましく、さらに好ましくは0.5%以下になる程度である。
【0020】
本発明のテープ状成形品は、その長手方向に直交する断面の形状が四辺形になるものに限られるものではなく、三角形、多角形あるいはその一辺または複数の辺が曲線であるもの、楕円形あるいは楕円形を2分割した形状等のものも含まれる。
【0021】
また、本発明のテープ状成形品は、上記の断面における最大厚みと幅との比が1:50〜1:1、好ましくは1:20〜1:1、さらに好ましくは1:15〜1:2の範囲にある。特に好ましくは、上記の断面における最大厚みと幅との比が1:15〜1:2である長方形をなす成形品である。
【0022】
本発明のテープ状成形品にボールを嵌合してなるボールチェーンは、ボール等の無限循環路を備えた直線運動案内装置、また例えば特開平11−37246号公報に記載されるボールネジ装置のボール連結体として好ましく使用することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例および比較例をあげて本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
なお、以下の実施例、比較例における熱収縮率、引張強度、伸度の測定条件はつぎの通りである。
【0025】
〔測定方法および測定条件〕
(1)熱収縮率:
温度:40℃(乾熱)、時間:24時間にて測定した。
【0026】
(2)引張強伸度測定方法:
温度23℃の環境下で、テンシロンUCT=100型(オリエンテック社製)を用いて、長さ50mmの試験片を引張速度50mm/分で測定した。
【0027】
(3)ボールチェーン用ベルトのボール保持部強度:
ボールチェーン用ベルトの端から3番目の穴にボールを入れてボールを挟み、引張強度と同様にして測定した。
【0028】
ボールチェーン用ベルトはベルトに丸穴が開けられており、各部位によって断面積が異なるが、破断は最も断面積の小さい部分で発生する。ボール保持部強度は最小断面積より算出した。
【0029】
また、各実施例および各比較例で製造した製品の物性は表1および表2に纏めた。
【0030】
実施例1
MFR10のポリエステルエラストマーを50mmφの押出機で樹脂温度240℃で紡糸し、未延伸糸を得た。この未延伸糸を150℃の熱風槽で5.8倍に延伸し、続いて180℃の熱風槽で10%緩和して200μmの延伸糸を得た。この延伸糸の引張強度は470MPaで、伸度は86%であった。
【0031】
っぎに、この延伸糸を射出成形金型内に図3に示すようにセットし、延伸糸と同一の樹脂を280℃で金型内にインサートし、幅0.65mm、厚さ0.24mmの図1に示すテープ状成形品を得た。長手方向に直交する断面に占める延伸糸の比率は40%であった。この成形品は、物性を表1に示したように引張強度が高く、熱収縮率が小さく寸法安定性が良い。接着性がよく延伸糸の剥離も生じない。
【0032】
比較例1
比較例1−1
実施例1と同じ樹脂を用い、延伸糸をセットしなかったことを除いて、実施例1と同様にして幅0.65mm、厚さ0.24mmの図4に示すテープ状成形品を得た。このものの引張強度は61MPaで、実施例1の成形品に比べて非常に小さい。
【0033】
比較例1−2
MFR10のポリエステルエラストマーを50mmφの押出機で樹脂温度240℃で紡糸し、200μmの未延伸糸を得た。次に、実施例1と同様に、この未延伸糸を射出成形金型内に図3に示すようにセットし、未延伸糸と同一の樹脂を金型内にインサートし、幅0.65mm、厚さ0.24mmの図1に示すテープ状成形品を得た。このものの引張強度は65MPaで、実施例1の成形品に比べて非常に小さい。
【0034】
これら比較例から、実施例1において延伸繊維状物を内蔵させることの有効性が理解できる。
【0035】
比較例2
実施例1の成形品と異なり延伸繊維状物を含まないテープ状成形品を押出し成形により製造した。
【0036】
比較例2−1 実施例1の射出成形に代えて、50mmφの押出機を用いて図4に示すテープ状成形品を得た。
【0037】
比較例2−2 上記比較例2−1と同様にしてテープ状成形品を押出し、引き続いて150℃の熱風槽で5.8倍に延伸したあと、180℃の熱風槽で10%緩和して図4に示すテープ状成形品を得た。
【0038】
比較例2−3 上記2−1と同様にしてテープ状成形品を押出し、引き続いて180℃の熱風槽で6.25倍に延伸したあと、220℃の熱風槽で30%緩和して図4に示すテープ状成形品を得た。
【0039】
比較例2−4 延伸倍率を6.9倍にした以外は比較例2−2と同様にして図4に示すテープ状成形品を得た。
【0040】
これら比較例2−1〜2−4から、延伸糸を含まない押出成形によるテープ状成形品は引張強度が小さい。押出成形品はさらに延伸工程を経ることにより引張強度は大きくなるが、延伸倍率が大きくなると、成形品の熱収縮率が大きくなり好ましくない。またいずれの場合も、実施例1の成形品に比べ、充分な強度が得られなかった。
【0041】
実施例2
MFR10のポリエステルエラストマーを芯に、MFR17のポリエステルエラストマーを鞘にした芯鞘型複合糸(芯/鞘比率=80/20容量%)を樹脂温度240℃で紡糸し未延伸糸を得た。この未延伸糸を150℃の熱風槽で5.8倍に延伸し、続いて180℃の熱風槽で10%緩和し200μmの延伸糸を得た。この延伸糸の引張強度は437MPaで、伸度は71%であった。この延伸糸およびMFR10のポリエステルエラストマーを用いて実施例1と同様にして、図1に示す幅0.65mm、厚み0.24mmのテープ状成形品を得た。長手方向に直交する断面に占める延伸糸の比率は40%であった。この成形品も実施例1で得られた成形品と同様の優れた物性を示した。
【0042】
比較例3
実施例2における延伸糸に相当する芯6部を有するテープ状成形品(図5)を共押出により製造した。
【0043】
比較例3−1 実施例2の射出成形に代えて、MFR10のポリエステルエラストマーが成形テープの両端部に直径0.2mmの芯を形成するように、MFR17のポリエステルエラストマーと共押出して、図5に示す芯6入りテープ状成形品(幅0.65mm、厚み0.24mm、芯直径0.2mm)を製造した。
【0044】
比較例3−2 比較例3−1と同様にして共押出成形した芯入りテープ状成形品を、引き続いて150℃の熱風槽で5.8倍に延伸したあと、さらに180℃の熱風槽で10%緩和して図5に示す芯入り延伸テープ状成形品(幅0.65mm、厚み0.24mm、芯直径0.2mm)を製造した。
【0045】
比較例3−3 比較例3−2と同様にして押出成形した芯入りテープ状成形品を、引き続いて180℃の熱風槽で6.25倍に延伸したあと、さらに220℃の熱風槽で30%緩和して図5に示す芯入り延伸テープ状成形品(幅0.65mm、厚み0.24mm、芯直径0.2mm)を製造した。
【0046】
比較例3−4 延伸倍率を6.7倍にしたほかは、比較例3−2と同様にして共押出成形して図5に示す芯入りテープ状成形品(幅0.65mm、厚み0.24mm、芯直径0.2mm)を製造した。
【0047】
これら比較例3−1〜3−4から、押出成形によって芯を形成する樹脂を両端部に内蔵させたテープ状成形物を得た後、延伸した芯入り延伸テープ状成形品は、延伸糸を用いて射出成形した場合に比べて充分な強度が得られず、強度を上げるためにさらに延伸倍率を上げると熱収縮率が大きくなり、糸とテープ部分とが剥離し易い不都合が見られる。
【0048】
実施例3
相対粘度3.5の6/66共重合ナイロン樹脂を50mmφの押出機で樹脂温度230℃で紡糸し、未延伸糸を得た。この未延伸糸を85℃の温水浴中で3.6倍に1段延伸し、続いて185℃の熱風槽で1.5倍に2段延伸し、さらに165℃の熱風槽で15%緩和して200μmの延伸糸を得た。この延伸糸の引張強度は815MPaで伸度は45%であった。つぎに、実施例1と同様に、この延伸糸を射出成形金型内に図3に示すようにセットし、延伸糸と同一の樹脂を金型内にインサートし240℃で射出成形して図1に示すテープ状成形品を得た。長手方向に直交する断面に占める延伸糸の比率は40%であった。この成形品は引張強度は581MPaと大きく、熱収縮率は0.3%と小さく優れた物性を示した。
【0049】
実施例4
ηinh=1.0のポリ弗化ビニリデン樹脂(呉羽化学工業社製KF#1000)を50mmφの押出機で樹脂温度260℃で紡糸し、未延伸糸を得た。この未延伸糸を165℃のグリセリン浴中で5.6倍に1段延伸し、続いて170℃のグリセリン浴中で1.15倍に2段延伸し、さらに160℃グリセリン浴中で10%緩和して200μmの延伸糸を得た。この延伸糸の引張強度は752MPaで伸度は35%であった。次に、実施例1と同様に、この延伸糸を射出成形金型内にセットし、延伸糸と同一の樹脂を240℃で射出成形して図1に示すテープ状成形品を得た。長手方向に直交する断面に占める延伸糸の比率は40%であった。この成形品も実施例3で得られた成形品と同様の優れた物性を示した。
【0050】
比較例5A
実施例3と同様の6/66共重合ナイロン樹脂を使用して、2段延伸倍率を1.4倍にした以外は、実施例3と同様にして200μmの延伸糸を得た。この延伸糸の引張強度は761MPaであった。次に、実施例1と同様に、この延伸糸を射出成形金型内にセットし、実施例4と同一の樹脂を240℃で射出成形して図1に示すテープ状成形品を得た。長手方向に直交する断面に占める延伸糸の比率は40%であった。この成形品も優れた物性を示した。
【0051】
実施例4も比較例5Aもともに優れた物性を示したが、この二つの例において、延伸糸の強度が殆ど同じであるにもかかわらず、実施例4のテープ状成形品のほうが物性が優れている。これは、延伸糸の樹脂と射出成形樹脂の接着性の違いによるものである。延伸糸と射出成形樹脂の接着性が良いと、延伸糸の物性を一層効果的にテープ状成形品に発現できる。
【0052】
実施例6
ポリエステル樹脂(IV=1.0)を使用し50mmφの押出機で樹脂温度275℃で紡糸し、未廷伸糸を得た。この未延伸糸を倍率5.5倍に延伸し、続いて10%緩和熱処理して200μmの延伸糸を得た。この延伸糸の引張強度は653MPaで伸度は38%であった。次に、実施例1で使用した樹脂を使用して、実施例1と同様にこの延伸糸を射出成形金型内にセジトし、実施例1と同一の樹脂を280℃で射出成形して図1に示すテープ状成形品を得た。長手方向に直交する断面に占める延伸糸の比率は40%であった。この成形品も実施例3で得られた成形品と同様の優れた物性を示した。
【0053】
比較例4
延伸糸と異なる樹脂をインサートして延伸糸含有テープ状製品を製造した。
【0054】
比較例4−1 実施例6で使用したポリエステル樹脂が、成形テープの両端部の芯を形成するように、MFR10のポリエステルエラストマーと共押出して、芯入り未延伸テープを得た。そのあと、実施例6と同様に延伸および緩和熱処理を行い、図5に示す芯入り延伸テープ状成形品(幅0.65mm、厚み0.24mm、芯直径0.2mm)を製造した。物性は表1に示すように、強度は充分に発現したが、熱収縮が大きく、寸法安定性に欠けるものであった。
【0055】
比較例4−2 実施例4と同様にして得たポリ弗化ビニリデン樹脂の延伸糸と、実施例1で使用したMFR10のポリエステルエラストラマーとを使用して、実施例1と同様にしてテープ状の成形品を成形したが、ポリ弗化ビニリデン樹脂の延伸糸はインサート成形時に溶融してしまった。
【表1】

【0056】
次に、ボールチェーン用ベルトの製造の例を挙げる。
【0057】
実施例7
図7に示すように、金型内にボールを等間隔にセットし、実施例1で製造した延伸糸を成形物の長手方向に平行な両端部に内蔵される位置に配置し、延伸糸と同一の樹脂(MFR10のポリエステルエラストマー)を金型内にインサートし、幅2.24mm、厚さ0.24mm、穴径1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.73mmの図2に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。長手方向に直交する断面に占める延伸糸の比率はボールを保持する部分(スペーサー部)で5%、穴の直径部で43%であった。このボールチェーン用ベルトはその物性を表2に示したように引張強度が高く、ボール保持する部分の強度も高く、熱収縮率が小さく寸法安定性が良い。糸は剥離もなく接着性が良い。
【0058】
比較例5
実施例7と異なり、延伸糸を用いなかったことを除き、実施例7と同様にして図8に示すようなボールチェーン用ベルト(幅2.24mm、厚さ0.24mm、穴径1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.73mm)を射出成形で得た。図8中、破線7はボールをはめ込んだ状態を示す。
【0059】
実施例8
実施例1と同様にして製造した幅2.24mm、厚さ0.24mmのテープに、図10のように穴開け加工(穴径1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.73mm)をした。その後この穴開きテープ状成形品および該穴に成型用ボールを嵌め込み金型内にセットし、MFR10のポリエステルエラストマーをインサート成形を行って、図2に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。
【0060】
比較例6
押出成形した延伸倍率の異なるテープ状成形品に、実施例8と同様に穴開け加工およびインサート成形してボールチェーン用ベルトを製造した。
【0061】
比較例6−1 実施例7と同一の樹脂(MFR10のポリエステルエラストマー)を使用して、50mmφの押出機で幅2.24mm、厚さ0.24mmの図4のようなテープ状成形品を押出した後、図6のように穴あけ加工(穴径1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.73mm)をした。その後この穴開きテープ状成形品および該穴に成型用ボールを嵌め込み金型内にセットし、インサート成形を行って、図8に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。
【0062】
比較例6−2 実施例7と同一の樹脂を使用して、比較例6−1と同様にしてテープ状成形品を押出した後、150℃の熱風槽で5.8倍に延伸したあと180℃の熱風槽で10%緩和し、延伸テープを得た。このテープを用いて比較例6−1と同様に穴開け加工とインサート成形を行って、図8に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。
【0063】
比較例6−3 延伸倍率を6.9倍にした以外は、比較例6−2と同様にしてボールチェーン用ベルトを得た。
【0064】
比較例6−4 実施例7と同一の樹脂を使用して、比較例6−1と同様にしてテープ状成形品を押出した後、180℃の熱風槽で6.25倍に延伸した後、220℃の熱風槽で30%緩和し、延伸テープを得た。その後、比較例6−1と同様に穴開け加工とインサート成形を行い、図8に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。
【0065】
比較例6−1〜6−4においては、インサート成形した際に、スペーサー部に樹脂の充填不足や穴開けした部分に樹脂が入り込む「バリ」などの成形不良が発生した。
【0066】
実施例9
実施例2で得た芯鞘型複合糸を用いて、実施例7と同様にしてインサート成形で図2に示すようなボールチェーン用ベルトを製造した。
【0067】
比較例7
MFR10のポリエステルエラストマーを芯6にしてMFR17のポリエステルエラストマーと共押出して芯入り複合テープを用いて、図9に示すようなボールチェーン用ベルトを製造した。なお、図9中、破線7はボールを嵌め込んだ状態を示す。
【0068】
比較例7−1 MFR10のポリエステルエラストマーを芯にしてMFR17のポリエステルエラストマーと共押出して芯6入り複合テープを得た。このテープを用いて比較例6と同様に穴開け加工とインサート成形を行って、図9のボールチェーン用ベルトを得た。
【0069】
比較例7−2 MFR10のポリエステルエラストマーを芯にしてMFR17のポリエステルエラストマーと共押出して芯入り複合テープを得、さらに引き続き150℃の熱風槽で5.8倍に延伸し、さらに180℃の熱風槽で10%緩和して、延伸テープを得た。このテープを用いて比較例6と同様に穴開け加工とインサート成形を行って、図9に示すボールチェーン用ベルトを得た。
【0070】
比較例7−3 上記比較例7−2で延伸倍率を6.7倍にした以外は比較例7−2と同様にして図9に示すボールチェーン用ベルトを得た。
【0071】
比較例7−4 MFR10のポリエステルエラストマーを芯にしてMFR17のポリエステルエラストマーと共押出して芯入り複合テープを得、さらに引き続き180℃の熱風槽で6.25倍に延伸し、さらに220℃の熱風槽で30%緩和して、延伸テープを得た。このテープを用いて比較例6と同様に穴開け加工とインサート成形を行って、図9に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。
【0072】
比較例7−1〜7−4のいずれの場合も、成形困難で成形不良品が多く発生し、また正常に得られた成形品は引張強度、保持部強度ともに小さく使用に耐えるものではなかった。
【0073】
実施例10
実施例3で得たナイロン延伸糸を、射出成形金型内に実施例7と同様に図7のようにセットし、延伸糸と同一の樹脂を金型内にインサートし、幅2.24mm、厚さ0.24mm、穴径1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.73mmの図2に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。
【0074】
実施例11
実施例4で得たポリ弗化ビニリデン樹脂の延伸糸を、射出成形金型内に実施例7と同様に図7のようにセットし、延伸糸と同一の樹脂を金型内にインサートし、幅2.24mm、厚さ0.24mm、穴径1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.73mmの図2に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。
【0075】
比較例12A
比較例5Aで用いたナイロン延伸糸を実施例7と同様に図7のように金型内にセットし、実施例4と同一の樹脂を240℃で射出成形して、幅2.24mm、厚さ0.24mm、穴径1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.73mmの図2に示すボールチェーン用ベルトを得た。長手方向に直交する断面に占める延伸糸の比率は、保持する部分(スペーサー部)で5%、穴直径部で43%であった。
【0076】
実施例11も比較例12Aも優れた物性が得られた。実施例11のほうがより優れているのは、実施例4、比較例5Aの場合と同様に延伸糸と射出成形樹脂の接着性が実施例11のほうが良いことによる。
【0077】
比較例8
実施例4で得たポリ弗化ビニリデン樹脂の延伸糸を、射出成形金型内に実施例7と同様に図7のようにセットし、MFR10のポリエステルエラストマーを金型内にインサートし、幅2.24mm、厚さ0.24mm、穴径1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.73mmの図2に示すようなボールチェーン用ベルトを製造したが、ポリ弗化ビニリデン樹脂がインサート成形時に溶融した。
【0078】
実施例13
実施例6で得たポリエステルの延伸糸を、射出成形金型内に、実施例7と同様に、図7のようにセットし、MFR10のポリエステルエラストマーを金型内にインサートし、幅2.24mm、厚さ0.24mm、穴径1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.73mmの図2に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。
【0079】
上記実施例7〜10および13で得られたボールチェーン用ベルトはいずれも引張強度、保持部強度ともに充分大きく、ボールチェーン用ベルトとして優れた性能を示した。
【0080】
比較例9
ボビンに捲かれたガラス繊維(マルチフィラメント9.4μmφ120本束)をダイス内に供給し、実施例7で使用したポリエステルエラストマーを押出機で240℃に加熱してダイス内に押出してガラス繊維を被覆するようにして、図5の芯入り複合テープ状成形品を得た。続いて比較例6と同様に穴開け加工とインサート成形を行って、図9に示すようなボールチェーン用ベルトを得た。ガラス繊維とポリエステルエラストマーとの接着が不充分でガラス繊維の剥離や単糸切れが発生した。
【0081】
比較例10
比較例9のガラス繊維に代えてカーボン繊維(マルチフィラメント10μmφ 80本束)を使用した以外は比較例9と同様にして図9のボールチェーン用ベルトを得た。カーボン繊維とポリエステルエラストマーとの接着が不充分でカーボン繊維の剥離や単糸切れが発生した。
【表2】

【0082】
実施例14
図11に示すように、金型内にローラーを等間隔にセットし、実施例1で製造した延伸糸を成形物の長手方向に平行な両端部に内蔵される位置に配置し、延伸糸と同一の樹脂(MFR10のポリエステルエラストマー)を金型内にインサートし、幅2.24mm、厚さ0.24mm、幅方向の穴長1.63mmφ、穴と穴のピッチ1.72mmの図12(a)、(b)、(c)に示すようなローラー型ボールチェーン用ベルトを得た。長手方向に直交する断面に占める延伸糸の比率はボールを保持する部分(スペーサー部)で5%、穴の直径部で43%であった。
【0083】
このローラー型ボールチェーン用ベルトは、引張強度が高く、ローラーを保持する部分の強度も高く、熱収縮率が小さく寸法安定性が良い。糸は剥離もなく接着性が良い。
【0084】
実施例15
実施例7と同様にして得たボールチェーン用ベルトにボールを嵌入してボールチェーンを作成した。このベルトを用いて、図13に示すような軌道レール12、移動ブロック本体13、およびボールチェーンよりなる直線運動案内装置を作成した。
【0085】
実施例16
実施例14と同様にして得たローラー型ボールチェーン用ベルトにボールを嵌入してボールチェーンを作成した。このベルトを用いて、図14に示すような軌道レール16、移動ブロック本体17、およびローラー型ボールチェーン18よりなる直線運動案内装置15を作成した。
【0086】
実施例17
実施例7と同様にして得たボールチェーン用ベルトにボールを嵌入してボールチェーンを作成した。このベルトを用いて、図15に示すようなボールネジ19を作成した。図中、20はネジ軸、21はナット部材、22はリターンパイプ、23はボールチェーンを示す。
【0087】
実施例14、15で作成した直線運動案内装置、および実施例17で作成したボールネジはいずれも長期間の使用に耐えることが明らかになり、本発明ボールチェーン用ベルト、ボールチェーンは、直線運動案内装置やボールネジ装置の優れた部材となり得ることが証明された。
【産業上の利用の可能性】
【0088】
延伸繊維状物を金型内にセットし該延伸繊維状物と同一のまたは主成分を同一となる樹脂を射出成形する本発明によれば、従来の押出し成形品、単に射出成形した製品では得ることのできない強度の大きいテープ状成形品が得られる。
【0089】
また、このようなテープに穴開け加工して、転動体(例えばボール、ローラー)保持部を射出成形することによって、強度の大きいボールチェーン用ベルトあるいは延伸繊維状物と成形用ボールを金型内にセットし該延伸繊維状物と同一のまたは主成分を同一となる樹脂を射出成形して得られるボールチェーン用ベルトは、(共)押出成形したボールチェーン用ベルトでは得ることのできない強度の大きい製品となる。また、延伸繊維状物を成形品の両端に配置することにより、延伸繊維状物自体が強度へ寄与するだけでなく、ウェルド部の補強をなし、かっ成形不良が著しく改善される。
【0090】
上述のようにして得られる本発明のボールチェーン用ベルトに所定のボール(またはローラー)を嵌め込みボールチェーンベルトが作成される。このボールチェーンベルトは無限循環路を備えた直線案内装置、またはボールネジ等に利用され、優れた性能を発揮させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂テープ状射出成形品であって、該成形品の長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に、該テープ状成形品を構成する樹脂と同一のまたは主成分を同一とする樹脂よりなるあらかじめ延伸した繊維状物を内蔵してなることを特徴とする合成樹脂テープ状成形品。
【請求項2】
前記繊維状物がモノフィラメントである請求項1記載の合成樹脂テープ状成形品。
【請求項3】
長手方向引張強度が250MPa以上で熱収縮率が1%以下である請求項1または2記載の合成樹脂テープ状成形品。
【請求項4】
合成樹脂テープ状射出成形品であって、該テープ状成形品の長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に位置する、該テープ状成形品を構成する樹脂と同一のまたは主成分を同一とする樹脂よりなるあらかじめ延伸した繊維状物、等間隔直線状に設けたボール嵌め込み穴からなるボールチェーン用ベルト。
【請求項5】
合成樹脂テープ状射出成形品であって、該テープ状成形品の長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に位置する、該テープ状成形品を構成する樹脂と同一のまたは主成分を同一とする樹脂よりなるあらかじめ延伸した繊維状物、等間隔直線状に設けたボール嵌め込み穴およびその周囲の保持部からなるボールチェーン用ベルト。
【請求項6】
前記繊維状物がモノフィラメントである請求項4または5記載のボールチェーン用ベルト。
【請求項7】
引張強度が100MPa以上で熱収縮率が1%以下である請求項4または5記載のボールチェーン用ベルト。
【請求項8】
金型内に、成形物の中央部に直線状に保持させるボールより径のやや大きい成形用ボール、及びあらかじめ延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物を該成形物の長手方向に平行な両端部またはそれに近い部分に内蔵される位置にセットし、該延伸繊維状物と同一のまたは主成分を同一とする成形可能な樹脂を射出成形することにより、テープ状部および保持部を一体成形して後成形用ボールを取り外すことを特徴とするボールチェーン用ベルトの製造方法。
【請求項9】
前記繊維状物がモノフィラメントである請求項8記載のボールチェーン用ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−280215(P2010−280215A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116660(P2010−116660)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【分割の表示】特願2003−578116(P2003−578116)の分割
【原出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【出願人】(390009830)クレハ合繊株式会社 (8)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】