デバイス実装構造の製造方法
【課題】電極配置の異なる二つのデバイスについて、互いの電極同士を、位置精度良く、電気的に接続した実装構造を製造することが可能な、デバイス実装構造の製造方法を提供する。
【解決手段】基板に、基板の一方の主面側において、第1のデバイスを構成する複数の電極と対向する複数の位置に、個々に、精度良く露呈する一端と、基板の他方の主面側において第2のデバイスを構成する複数の電極と対向する複数の位置に、個々に、精度良く露呈する他端とを有する複数の改質部を形成する工程A1と、改質部が形成された領域に貫通孔を形成する工程A2と、貫通孔に導体を充填又は成膜して貫通配線を形成する工程A3と、基板の一方の主面側から第1のデバイスの電極を貫通配線の一端に位置整合させて接合し、基板の他方の主面側から第2のデバイスの電極を貫通配線の他端に位置整合させて接合する工程A4とを有する。
【解決手段】基板に、基板の一方の主面側において、第1のデバイスを構成する複数の電極と対向する複数の位置に、個々に、精度良く露呈する一端と、基板の他方の主面側において第2のデバイスを構成する複数の電極と対向する複数の位置に、個々に、精度良く露呈する他端とを有する複数の改質部を形成する工程A1と、改質部が形成された領域に貫通孔を形成する工程A2と、貫通孔に導体を充填又は成膜して貫通配線を形成する工程A3と、基板の一方の主面側から第1のデバイスの電極を貫通配線の一端に位置整合させて接合し、基板の他方の主面側から第2のデバイスの電極を貫通配線の他端に位置整合させて接合する工程A4とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を貫通する貫通配線を有する貫通配線基板の両面にデバイスを実装してなるデバイス実装構造を製造するためのデバイス実装構造の製造方法に関する。
本願は、2009年10月23日に、日本に出願された特願2009−244395号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の両面にそれぞれ実装されたデバイス同士を電気的に接続する方法として、基板を貫通する貫通配線を設ける方法がよく用いられている。
【0003】
基板の主面と垂直な方向に形成されている従来の貫通配線を備えた貫通配線基板では、複数の基板を積層配置した場合に、接合外力によるダメージによって貫通配線電極の抜け落ちや界面の剥離が起こることがある。
この問題を解決するために、基板の主面と垂直な方向に対して傾けて形成されている貫通配線を備えた貫通配線基板が特許文献1に開示されている。
【0004】
また、基板の両面に実装されるデバイスの種類が互いに異なる場合、デバイスごとに必要な電極の配置が異なる。このため、その差異を解消するための表面配線を用いることがある。しかしながら、基板の主面に表面配線を設ける場合、主面における表面配線の占有面積が増大する。また、配線同士が短絡したり配線を流れる電気信号が干渉したりするのを避けるため、配線同士の間には所定の間隔(スペース)を設ける必要がある。その結果、基板上におけるデバイス配置の設計自由度が小さいという問題がある。また、配線長が長いと、信号遅延が発生したり、高周波特性が劣化したりする場合がある等の問題もある。
【0005】
さらに、各デバイスが基板と対向する面に有する電極の数が多い場合、上記のような表面配線だけでは対応できない。この場合、配線層を多層にし、各層を層間ビアで接続した多層配線構造にする必要がある。そのため、多層配線にすることによる配線長の増大、及びそれに伴う高周波特性の劣化等の問題が発生し、また、基板作製プロセスも煩雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特許第3896038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
貫通配線基板の両主面に実装されたデバイスが互いに異なる電極配置を有するデバイスであり、電極が高密度に配置されている場合、該貫通配線基板に配された貫通配線が両主面に有する開口部は高い位置精度で設けられることが要求される。
しかしながら、基板の主面と垂直な方向に対して傾けて形成されている貫通配線を備えた貫通配線基板では、高い位置精度で前記開口部を設けることが困難なことがある。例えば、図17に示すように、貫通配線基板の製造に用いる基板の元の厚さにばらつきがある場合や、該基板の研磨工程における加工精度による厚さのばらつきが生じた場合に、貫通配線基板の厚みが当初の設計した厚さT1ではなく、厚さT2又は厚さT3となることがある。このとき、当該貫通配線の基板の幅方向の長さは、当初の設計した長さL1ではなく、長さL2又は長さL3となってしまう。この場合、図17に示す主面112において、複数の貫通配線による複数の開口部115の相対的な位置関係もずれてしまう。この結果、該主面112に実装すべきデバイスの電極配置と、それに接続すべき該主面112に設けられた開口部115の配置とが、許容範囲以上にずれてしまうことがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電極が高密度かつ異なるレイアウトで配置されたデバイスに対して、多層配線構造にすることなく、貫通配線基板の両面に実装したデバイスの電極同士を自由自在に精度良く接続することができる、デバイス実装構造の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は以下を採用している。すなわち、本発明の第一の態様に係るデバイス実装構造の製造方法は、基板に形成された貫通孔に導体を充填又は成膜した貫通配線を有する貫通配線基板を介して、電極配置が互いに異なる第1のデバイスおよび第2のデバイスを各々配置し、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとを電気的に接続するデバイス実装方法であって、前記基板にレーザー光を照射することにより、前記基板の一方の主面側において前記第1のデバイスの電極と整合する位置に露呈する一端と、前記基板の他方の主面側において前記第2のデバイスの電極と整合する位置に露呈する他端とを有する改質部を形成する工程A1と、前記改質部が形成された領域に貫通孔を形成する工程A2と、前記貫通孔に導体を充填又は成膜して貫通配線を形成する工程A3と、前記第1のデバイスを前記基板の一方の主面側に配置して前記第1のデバイスの電極を前記貫通配線の一端に位置整合させて接合するとともに、前記第2のデバイスを前記基板の他方の主面側に配置して前記第2のデバイスの電極を前記貫通配線の他端に位置整合させて接合することにより、前記第1のデバイスの複数の電極と前記第2のデバイスの複数の電極とを、複数の前記貫通配線を介して電気的に接続する工程A4とを有し、前記工程A1は、該複数の前記貫通配線をなす各々の前記貫通孔となる前記改質部に、前記一方の主面及び前記他方の主面のうち少なくとも片方の主面に対して垂直に揃って開口する直線部分を設けるステップと、他の片方の主面に対して傾いて延び、前記直線部分に連結された部分を設けるステップとからなる。
【0010】
前記改質部は、フェムト秒レーザーを用いて形成されていてもよい。
また、前記基板は石英ガラスからなっていてもよい。
また、前記工程A3は、前記直線部分と前記傾いて延びる部分とに、前記導体を同時に充填又は成膜してもよい。
また、前記工程A1、A2、又はA3の後に、前記直線部分が設けられた側の主面を物理的又は化学的手段を用いて研磨することにより、前記直線部分の範囲において、前記基板の厚みを薄くしてもよい。
【0011】
さらに、前記基板に対し、前記貫通配線をなす前記貫通孔の他に、冷却用流体の流路として用いられる貫通孔を形成する工程A5を有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデバイス実装構造の製造方法によれば、貫通配線基板の両面に実装したデバイスの電極同士を、表面配線を介することなく電気的に接続することができるので、電極が高密度に配置された小型のデバイスであっても自由自在に接続することが可能になる。また、貫通配線基板の両面に実装したデバイスの高密度に配置された電極同士を自由自在に接続する際、該貫通配線基板の製造に用いる基板の元の厚さにばらつきがある場合や、該基板の研磨工程における加工精度による厚さのばらつきが生じた場合でも、該貫通配線基板の主面に設けられた開口部の位置は変動しない。この結果、該接続を精度良く、かつ歩留まり良く実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の一形態例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図1B】図1AのA−A線に沿う断面図である。
【図2A】図1A及び1Bに示すデバイス実装構造に用いられる貫通配線基板の平面図である。
【図2B】図2AのB−B線に沿う断面図である。
【図3】図2A及び2Bに示す貫通配線基板の斜視図である。
【図4A】基板に貫通孔及び貫通配線を形成する工程の最初の段階を示す断面図である。
【図4B】図4Aに続く段階を示す断面図である。
【図4C】図4Bに続く段階を示す断面図である。
【図4D】図4Cに続く段階を示す断面図である。
【図5A】同形態例の第1変形例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図5B】図5AのA−A線に沿う断面図である。
【図6A】同形態例の第2変形例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図6B】図6AのC−C線に沿う断面図である。
【図7A】同形態例の第3変形例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図7B】図7AのD−D線に沿う断面図である。
【図8A】同形態例の第4変形例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図8B】図8AのE−E線に沿う断面図である。
【図9】図8A及び8Bに示すデバイス実装構造の左下4分の1の部分における電極の接続関係を模式的に示す部分平面図である。
【図10】本発明に係るデバイス実装構造にバンプを設けた一例を示す断面図である。
【図11】本発明に係るデバイス実装構造にモールド樹脂層を設けた一例を示す断面図である。
【図12】本発明に係るデバイス実装構造にキャビティー付き保護部材を設けた一例を示す断面図である。
【図13A】流路を有する貫通配線基板の第1例を示す平面図である。
【図13B】図13AのI−I線に沿う断面図である。
【図13C】図13AのJ−J線に沿う断面図である。
【図14A】流路を有する貫通配線基板の第2例を示す平面図である。
【図14B】図14AのK−K線に沿う断面図である。
【図14C】図14AのL−L線に沿う断面図である。
【図15A】流路を有する貫通配線基板の第3例を示す平面図である。
【図15B】図15AのM−M線に沿う断面図である。
【図15C】図15AのN−N線に沿う断面図である。
【図16A】流路として用いられる貫通孔を有する貫通配線基板の製造方法の最初の段階を示す断面図である。
【図16B】図16Aに続く段階を示す断面図である。
【図16C】図16Bに続く段階を示す断面図である。
【図16D】図16Cに続く段階を示す断面図である。
【図16E】図16Dに続く段階を示す断面図である。
【図16F】図16Eに続く段階を示す断面図である。
【図17】従来の貫通配線基板における貫通配線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1A〜3に本発明の一形態例に係るデバイス実装構造を示す。このデバイス実装構造は、単体の基板10と、この基板10の一方の主面(以下「第1主面」という。)11から他方の主面(以下「第2主面」という。)12に向けて基板10を貫通する複数の貫通孔13の内部に形成された貫通配線16とを有する貫通配線基板19と;複数の電極3を有してかつ、これら電極3が第1主面11に対向するように配置された第1のデバイス1と;第1のデバイス1の各電極3の配置とは配置が異なる複数の電極4を有してかつ、これら電極4が第2主面に対向するように配置された第2のデバイス2と;を備え、各貫通孔13は、第1主面11の、第1のデバイス1の電極3と対応する位置に設けられた第1の導通部214と、第2主面12の、第2のデバイス2の電極4と対向する位置に設けられた第2の導通部215とを有し、第1のデバイス1の各電極3は、第1の導通部214に電気的に接続され、第2のデバイス2の各電極4は、第2の導通部215に電気的に接続されている。
【0015】
また、貫通配線16となる貫通孔13は、屈曲部41を有し、開口部15から屈曲部41まで延びた直線部分41aと、屈曲部41から開口部14まで延びた、第1主面11及び第2主面12に対して斜めに延びた直線部分とからなる。直線部分41aは、第2主面12に対して垂直な方向、すなわち基板10の厚み方向、に延びている。また、屈曲部41は、第2主面12からt1’の深さに位置する。すなわち、直線部分41aの長さはt1’である。
貫通孔13は、屈曲部41から第1主面11及び第2主面のうち少なくとも片方の主面に対して垂直に揃って開口する直線部分41aと、屈曲部41から第1主面11及び第2主面12のうち他の片方の主面に対して傾いて延びる部分とを有する。
なお、垂直に延びて開口する直線部分41aに充填又は成膜された導体と、傾いて延びた部分に充填又は成膜される導体とは、一体である。
【0016】
貫通配線基板19により、第1のデバイス1の複数の電極3と第2のデバイス2の複数の電極4とが、複数の貫通配線16を介して電気的に接続される。これらの電極3,4間を貫通配線16によりできるだけ短くつなぐためには、t1’ができるだけ短い方が好ましい。さらに、屈曲部41と開口部14との間(第1主面11及び第2主面12に対して傾いて延びた部分)が、直線形成を有することが好ましい。
屈曲部41の形状は、基板の厚み方向に沿った断面の形状が角を有するものであってもよく、角を有さない略円弧状のものであってもよい。
【0017】
上述したように、t1’の長さはできるだけ短い方が好ましい。t1’の長さは、ロットごとに生じ得る元の基板厚さのばらつきや、貫通配線基板19の製造工程において発生し得る基板10の厚みの加工ばらつきを考慮し、必ず直線部分41aが設けられるように適宜設計される。
【0018】
さらに、図4A〜5Bを参照して説明する。図4A〜4Dは、基板10に貫通配線16を形成する方法の一例を示す断面図である。
まず、図4Aに示すように、後述するレーザー法等により、後に貫通孔13となる領域に改質部46を形成する(工程A1)。改質部46の一端は、後に貫通孔13の開口部14となる。改質部46の他端は、後に貫通孔13の開口部15となる。改質部46は、屈曲部41を有し、該他端から屈曲部41まで延びた直線部分41aと、屈曲部41から該一端まで延びた、第1主面11及び第2主面12に対して傾いて延びた部分とからなる。直線部分41aは、第2主面12に対して垂直な方向、すなわち基板10の厚み方向、に延びている。また、屈曲部41は、第2主面12からt1の深さに位置する。すなわち、直線部分41aの長さは、t1である。
【0019】
次に、改質部46を形成した基板10をエッチング液(薬液)に浸漬して、改質部46をエッチング(ウェットエッチング)により基板10から除去する。その結果、図4Bに示すように、改質部46が存在した部分に、貫通孔13が形成される(工程A2)。
つづいて、後述するめっき法等により、貫通孔13に導体を充填又は成膜して、図4Cに示すように、第1主面11側に露出する第1の導通部114と前記2主面12側に露出する第2の導通部115とを有する貫通配線16を形成する(工程A3)。なお、前記工程A3においては、直線部分41aと傾いて延びる部分とに、導体を同時に充填又は成膜することができる。
そして、例えば機械的研磨法等により、直線部分41aが形成された側の主面である第2主面12側から基板10を研磨して、直線部分41aの範囲において、基板10を所望の厚さにする(工程A5)。このとき、開口部15において第2主面12に露出する前記導体が、研磨によって該第2主面12とともに平坦化される。また、直線部分41aの長さt1は、研磨によって短くなり、t1’となる。その結果、図4Dに示す貫通配線基板19が得られる。
【0020】
ここで、基板10に厚みの変動があった場合、例えば基板10の元の厚みが想定した厚みよりも薄かった場合、又は基板10の研磨が想定よりも進み過ぎた場合には、製造された貫通配線基板19の厚みは想定した厚みT1ではなく、T2になることがある(図4D参照)。この場合であっても、貫通配線基板19には直線部分41が存在するために、第2主面12における開口部15の位置は変動しない。よって、後述の工程A4において、第2のデバイス2の電極4と該導通部215との接続を精度良く、確実に、歩留まり良く行うことができる。
また、基板10に厚みの変動が生じる別の場合として、例えば基板10の元の厚みが想定した厚みよりも厚かった場合、又は基板10の研磨が想定よりも進まなかった場合には、製造された貫通配線基板19の厚みは想定した厚みT1ではなく、T3になることがある(図4D参照)。この場合であっても、貫通配線基板19には、直線部分41が存在するために、第2主面12における開口部15の位置は変動しない。よって、後述の工程A4において、第2のデバイス2の電極4と該導通部215との接続を精度良く、確実に、歩留まり良く行うことができる。
【0021】
上記の例では、貫通配線16の形成する工程A3の後に、基板10の第2主面12を研磨する工程A5を行ったが、改質部43を形成する工程A1、又は貫通孔13を形成する工程A2の後に該工程A5を行ってもよい。いずれの場合であっても、製造される貫通配線基板19を所望の厚みにすることができる。
工程A3の後に工程A5を行った場合は、開口部15において第2主面12に露出する前記導体が、研磨によって該第2主面12とともに平坦化されるので好ましい。
また、工程A1の後に工程A5を行った場合は、その後の工程A2におけるエッチング処理等の時間と、工程A3における導体の成膜又は充填等の処理時間とを短くすることができる。さらに、工程A3における導体の使用量を減らすことができる。
また、工程A2の後に工程A5を行った場合は、その後の工程A3における導体の成膜又は充填等の処理時間を短くすることができる。さらに、工程A3における導体の使用量を減らすことができる。
【0022】
また、上記の例では、第2主面12を研磨する場合を説明したが、第1主面11側に直線部分42aを設けて(図5B参照)、該第1主面11を研磨することによって、基板10の厚みを所望のものとしてもよい。この場合にも、上記の第2主面12を研磨する場合と同様の効果が得られる。
なお、図5Bでは、直線部分42aは、第1主面11に対して垂直な方向、すなわち基板10の厚み方向に延びている。また、屈曲部42は、第1主面11からt2’の深さに位置する。すなわち、直線部分42aの長さはt2’である。
【0023】
前述のような基板10の厚みの意図しない変動が起きた場合でも、該変動の大きさは、通常1μm〜50μmの範囲内に収まる。よって、工程A1において形成される改質部43の有する直線部分41a又は42aの長さは、見込まれる変動の大きさよりも長ければよい。なお、貫通配線16が長くなると、デバイス間の信号遅延や、高周波特性の劣化が生じる場合があるので、前記長さt1’及びt2’は短い程より好ましい。
【0024】
単一の貫通配線16における長さt1’とt2’とは、同じであっても異なっていても良い。
また、貫通配線基板19の有する複数の貫通配線16のうちの、個々の貫通配線の前記t1’同士及びt2’同士の長さは、同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
上記のようにして製造された本発明に係る貫通配線基板19では、複数の貫通配線16をなす各々の貫通孔13は、第1主面11及び第2主面12のうちの少なくとも片方の同一主面側に揃って垂直に開口する直線部分41a及び/又は直線部分42aを有する。
また、本発明に係る貫通配線基板19では、該複数の貫通配線16をなす各々の貫通孔13は、第1主面11及び第2主面12のうちの少なくとも片方の同一主面側に揃って垂直に開口する同じ長さの直線部分41a及び/又は直線部分42aを有することが好ましい。この場合、全ての貫通孔が同一の主面側に同じ長さの直線部分を有するので、基板10の厚みに変動が生じたとしても、該直線部分をもつ貫通孔と該直線部分が無くなってしまった貫通孔とが、該貫通配線基板19において混在することが無い。このため、接続が精度良く、確実に行われる。
【0026】
本発明において、デバイスの電極配置(レイアウト)とは、当該デバイスの貫通配線基板の主面に対向する面内において貫通配線と接続される電極の二次元配置を意味する。つまり、単にデバイス全体を平行移動させて、すべての電極の位置を同じ方向に同じ距離ずらしただけでは、当該デバイスの電極配置は変化しない。2つのデバイス間で、対応する2つの電極間の距離や、対応する3つの電極間の角度等が、少なくとも1箇所で相違する場合、これら2つのデバイスの電極配置は互いに異なる。例えば、2つのデバイスの電極配置が、電極間ピッチのみが異なる相似の関係にある場合も、これら2つのデバイスの電極配置は互いに異なる。また、2つのデバイスの電極が、全く同じレイアウトを持つ複数のブロックからなる場合でも、これらブロックの位置が2つのデバイス間で異なる場合には、2つのデバイスの電極配置は互いに異なる。更に、当該電極配置においては、貫通配線と接続されない電極は、もしあったとしても除外され、貫通配線と接続される電極のみが考慮される。
【0027】
両面に実装されるデバイスの電極配置が同一であれば、すべての貫通配線を基板の主面に垂直に形成し、あるいは斜めであってもすべての貫通配線を同じ方向に(平行に)形成すれば、これらの貫通配線を介して両デバイスの電極同士を一対一の対応関係で接続することができる。しかし、本発明においては、両デバイスの電極配置が互いに異なる。このため、すべての貫通配線が基板の主面に対して垂直に形成され、または斜めであっても互いに平行になるように形成されている場合には、少なくとも一方のデバイスの電極と導通部との位置が一致せず、表面配線が必要になる。本発明では、デバイス間の接続のための表面配線を不要にするために、第1主面11上における第1の導通部214(第1の開口部14)の配置と、第1のデバイス1の電極配置とを一致させるとともに、第2主面12上における第2の導通部215(第2の開口部15)の配置と、第2のデバイス2の電極配置とを一致させている。これにより、貫通配線基板19に表面配線を設けることなく、デバイス1,2間を接続することができる。
【0028】
図1A〜3,5A,5Bに示す例では、両デバイス1,2の電極配置が、デバイス1,2の周縁部に電極3,4が並ぶペリフェラル配置である。しかも、両デバイス1,2の寸法(基板10の主面11,12に沿う方向の長さや面積等)が互いに異なる。貫通配線基板19の貫通配線16は、寸法が小さいデバイス1の電極3から寸法が大きいデバイス2の電極4へ向けて形成されている。つまり、第1の導電部214は基板10の第1主面11の中心部にあり、第2の導電部215は基板10の第2主面12の外周寄りにあり、貫通配線16は略放射状に延びている。
【0029】
このように、本形態例の貫通配線基板19では、貫通配線16が設けられる貫通孔13がいずれも非平行である(直線部分41a及び直線部分42aは除く)。このため、貫通孔13の形成方法は、後述するように、任意の向きに貫通孔13を形成することが可能な方法が採用される。
なお、貫通孔13の向きは、基板10の主面11,12に対して垂直な方向から見た平面視によるのではなく、基板10の厚さ方向を含めて三次元的に理解される。例えば図2Aで基板10の中心に対して向かい合った貫通孔13同士は、平面視では向きが同じであるが、図3に示すように、三次元的には第1主面11側から第2主面12側に向かう向きが異なっており、互いに非平行である。
【0030】
基板10の材料は、ガラス、プラスチック、セラミックス等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。半導体基板の場合は、貫通孔13の内壁や主面11,12等に絶縁層を形成することが望ましい。絶縁性基板の場合は、貫通孔13の内壁にさらに絶縁層を形成する必要がない。
なお、電子デバイスの基材と、電子デバイスが実装される基板との間の線膨張係数差が大きい場合には、実装時の温度によって両者の伸び量が大きく異なるため、電子デバイスの電極とこの電極が接続される基板上の導電部との間に位置ずれが生じやすい。この結果、両者間の精度の高い接続が困難になり、又は、両者間の接続そのものが困難になる場合がある。
これに対し、本発明によれば、基板10の材料としてシリコンやガラスを用いることができる。したがって、たとえば、シリコン基材を用いた電子デバイス1,2を基板10の両主面上に実装する場合、上述した線膨張係数差を小さくすることができる。この結果、電子デバイス1,2の電極と基板10上の導通部との位置ずれが抑制され、両者を位置精度良く接続することができる。
【0031】
貫通配線16は、上述したように、基板10の第1主面11の、第1のデバイス1の電極3と対向する位置に開口した第1の開口部14と、基板10の第2主面12の、第2のデバイス2の電極4と対向する位置に開口した第2の開口部15と、を有する貫通孔13に、導体を充填または成膜して設けられる。
【0032】
貫通孔13の形成には、石英ガラス製の基板に対して特に適した方法であるフェムト秒レーザーによる改質とウェットエッチングとを併用する方法や、NCドリル等の機械的手法をさらに併用した方法を用いることができる。フェムト秒レーザーを用いて改質をおこなうと、レーザーが照射された部分の基板材質が変化し、エッチャントに対する耐性が、レーザーが照射されてない部分と比べて低下するので、容易に孔を形成することができる。
【0033】
貫通配線16に用いる導体としては、銅(Cu)やタングステン(W)等の金属、金錫(Au−Sn)等の合金、ポリシリコン等の非金属の導体が挙げられる。作製方法は、めっき法、スパッタ法、溶融金属充填法、CVD、超臨界成膜法、あるいはこれらを組み合わせた手法など、適宜用いることができる。
なお、貫通配線16は、貫通孔13内部に導体が完全に充填されて成ることが望ましい。
【0034】
本発明のデバイス実装構造では、貫通配線16となる貫通孔13の開口部14及び15に対向するようにデバイスの電極3及び4がそれぞれ配置される。そのため、貫通配線16は、貫通孔13内部に導体が完全に充填された中実構造であると、貫通孔13の内壁のみに導体層が形成された中空構造である場合に比べて、機械的にも電気的にも接続の安定性が増大するので好ましい。
この際、貫通孔内部に導体を完全に充填する方法として、上述しためっき法、スパッタ法、溶融金属充填法、CVD、超臨界成膜法などのうちいずれか一つの方法を採用することができる。または、これらの方法を適宜組み合わせて用いてもよい。特に孔の長さが長く、形状が複雑である場合には、CVDまたは超臨界成膜法などの孔の深部まで成膜できる方法により導体薄膜を形成すればよい。当該導体薄膜をシード層や接着層として、引き続きめっき法や溶融金属充填法により効率的に貫通孔内部に導体を完全充填することができる。
【0035】
デバイス1,2としては、メモリー(記憶素子)やロジック(論理素子)等の集積回路(IC)、センサなどのMEMSデバイス、発光素子や受光素子などの光学デバイスが挙げられる。デバイス1,2は、電極配置が異なるものであれば、機能が相違するものでも機能が同一のものでも構わない。特に、異種デバイスを高密度で集積することで、3次元システムインパッケージ(SiP)を実現することが可能である。
本形態例の場合、図1Bに示すように、第1主面11側で複数のデバイス1が基板10上に積層されている。このように本形態例によれば、さらなる高密度化が可能である。
【0036】
貫通配線基板19の製造においては、それぞれのデバイス1,2の電極配置に対応した開口部14,15を有する貫通孔13となる改質部43を基板10内に形成し(工程A1)、該改質部43を基板10から除いて貫通孔13を形成し(工程A2)、この貫通孔13内に導体を充填または成膜することにより、第1主面11側に露出する第1の導通部214と前記2主面12側に露出する第2の導通部215とを有する貫通配線16を形成し(工程A3)、さらに第1のデバイス1を基板10の第1主面11に対向するように配置してその電極3を対応する第1の導通部214に接合するとともに、第2のデバイス2を基板10の第2主面12に対向するように配置してその電極4を対応する第2の導通部215に接合することにより、両デバイス1,2を貫通配線基板19の両面に実装する(工程A4)。これにより、第1のデバイス1の複数の電極3と第2のデバイス2の複数の電極4とが、複数の貫通配線16を介して電気的に接続される。より詳しくは、第1のデバイス1の複数の電極3が貫通配線16の一端に位置整合した状態で接合されるとともに、第2のデバイス2の複数の電極4が貫通配線16の他端に位置整合した状態で接合される。
【0037】
本発明のデバイス実装構造の製造方法において、前記工程A1では、複数の貫通配線16をなす各々の貫通孔13となる改質部43に、第1主面11及び第2主面12のうちの少なくとも片方の同一主面に対して垂直に延びる直線部分41a及び/又は直線部分42aを設けるステップと、各々の直線部に連結されていて、第1主面11及び第2主面12に対して傾いて延びる部分を設けるステップとを有する。ここで、該傾いて延びる部分は、例えば、図1Bにおける屈曲部41から開口部14までの部分である。別の例では、該傾いて延びる部分は、図5Bにおける屈曲部41から屈曲部42までの部分である。前記二つのステップは、同一の方法で連続的に行ってもよいし、異なる方法で非連続的に行ってもよい。
【0038】
例えば、まず、レーザー法等を用いて、前記直線部と前記傾いて延びる部分とを順に改質する。つづいて、ウェットエッチング法を用いて、改質された前記直線部分と改質された前記傾いて延びる部分とを順に除去する。このようにして、これら二つのステップを連続的に行ってもよい。また、前記直線部分をNCドリル等の機械的方法で形成する。その後、前記傾いて延びる部分をレーザー法及びウェットエッチング法で形成する。これら二つのステップを非連続的に行ってもよい。
【0039】
本発明のデバイス実装構造の製造方法では、図4A〜4Dを用いて前述したように、前記工程A5において、前記直線部分が設けられた側の主面を物理的又は化学的手段を用いて研磨することにより、前記基板の厚みを薄くすることができる。
前記物理的手段としては、細かい粒径の研磨剤を含む研磨液によって機械的に研磨する方法が挙げられる。また、前記化学的手段としては、基板を腐食することができる溶液やガスを用いてエッチングする方法が挙げられる。
【0040】
本発明のデバイス実装構造の製造方法における前記工程A4では、第1のデバイス1を基板10の第1主面11側に配置して第1のデバイス1の電極3を貫通配線16に接合するとともに、第2のデバイス2を基板10の第2主面12側に配置して第2のデバイス2の電極4を貫通配線16に接合する。これにより、第1のデバイス1の複数の電極3と第2のデバイス2の複数の電極4とを、複数の貫通配線16を介して電気的に接続することができる。このように接続することができる方法であれば、他の方法を用いてもよい。
例えば、本形態例の場合、各デバイス1,2の電極3,4と貫通配線16との間は、貫通孔13の開口部14,15に設けられた導電性のランド部17,18と、このランド部17,18上に設けられた、導体(はんだや導電性バンプ等)である接合材5,6によって接続されている。本発明においては、ランド部17,18や接合材5,6は省略しても良い。例えば、電極3,4と貫通配線16とを直接はんだなどで接合しても構わない。
【0041】
図1A〜3に示すデバイス実装構造において、デバイス1,2の電極配置は、デバイス1,2の周縁部に電極3,4が並ぶペリフェラル配置である。
また、図6A及び6Bに示す本形態例の第2変形例に係るデバイス実装構造において、第1のデバイス1の電極配置は、十字状に電極3が並ぶ配置であり、第2のデバイス2の電極配置は、デバイス2の周縁部に電極4が並ぶペリフェラル配置である。
また、図7A及び7Bに示す本形態例の第3変形例に係るデバイス実装構造において、第1のデバイス1の電極配置は、周辺部および十字状に電極3が並ぶ格子型配置であり、第2のデバイス2の電極配置は、デバイス2の周縁部に電極4が並ぶペリフェラル配置である。
【0042】
また、図8A及び8Bに示す本形態例の第4変形例に係るデバイス実装構造において、第1のデバイス1の電極配置は、縦横に電極3が並ぶエリアアレイ配置であり、第2のデバイス2の電極配置は、デバイス2の周縁部に電極4が並ぶペリフェラル配置である。なお、図9に、図8A及び8Bに示すデバイス実装構造の左下4分の1の部分における電極の接続関係を模式的に示す。
ここで、符号A1〜A9は、第1のデバイス1の電極3に接続される第1主面11上のランド部17を表す。また、符号B1〜B9は、第2のデバイス2の電極4に接続される第2主面12上のランド部18を表す。また、符号C1〜C9は、A1〜A9とB1〜B9とを各々接続する貫通配線16を表す。
また、本発明は、以上の例示のみに限定されるものではなく、他の電極配置を組み合わせても構わない。
【0043】
図1A〜図3及び図5A〜図9に示す例では、説明の便宜上、第2のデバイス2の平面視での寸法が第1のデバイス1より大きい。また、第2のデバイス2の電極4がペリフェラルに配置されている。しかし、本発明においては、以上の例のように第2のデバイス2の電極4が基板10に対する平面視で第1のデバイス1に重なる位置に配置されていても構わない。また、第1のデバイス1の平面視での寸法が第2のデバイス2と同一でも構わない。
このように、両デバイス1,2の電極3,4が、それぞれのデバイス1,2上でどのような電極配置(レイアウト)になっていようとも、ほぼ最短で電極3,4間を接続することができるため、デバイスの高速化に寄与する。また、ビルドアップ基板のように多層化をすることなく、貫通配線基板19,19’,19A,19B,19Cの内部で配線間のピッチを変換できるため、効率よく両デバイス1,2の電極3,4間を接続することができる。
【0044】
本発明のデバイス実装構造では、図10に示すように、はんだ等からなるバンプ21を設けることができる。図10に示す例では、貫通配線基板19が基板10の第2主面12側に半田バンプ等の接続端子21を有している。貫通配線16や回路20を介して、デバイス1,2とプリント回路基板等の外部基板(図示せず)とを電気的に接続することが可能である。また、第1主面11側ではデバイス1が積層されている。
【0045】
また、本発明のデバイス実装構造では、図11に示すようにデバイス1をモールド樹脂層22で被覆したり、図12に示すようにキャビティー付き保護部材23でデバイス1を覆ったりすることができる。これにより、デバイス1を保護することができる。
【0046】
また、本発明のデバイス実装構造では、図13A〜15Cに示すように、流路31を基板10の内部に設けることができる。流路31は、例えば水などの冷却用流体を流通させる流路として用いられる。その他、流路31は、DNA(核酸)、タンパク質、脂質等の生体溶液を流通させる流路として用いることもできる。
流路31を、冷却用流体を流通させる流路として用いる場合、図13A〜15Cに示す流路付き貫通配線基板30,30A,30Bの第1主面11側に第1のデバイスを、第2主面12側に第2のデバイスを、それぞれ実装することにより、流路付き貫通配線基板30,30A,30Bを冷却することができる。これにより、第1のデバイス及び/又は第2のデバイスの電極が高密度に配置されている場合であっても、流路付き貫通配線基板30,30A,30Bの温度上昇を効果的に低減することが可能になる。以下、流路31を、冷却用流体を流通させる流路として用いる場合について説明する。
【0047】
流路31は、その両端に冷却用流体を出し入れする出入口32,33を有する。
例えば、図13A〜13Cに示すように、流路31が複数本であっても良い。
また、図14Aに示すように、1本の流路31が基板10全体を冷却できるように蛇行していても良い。
また、図15A〜15Cに示すように、流路31の出入口32,33が基板10の主面12に開口されていても良い。
また、流路31のパターン(経路)や断面形状は、以上の例示のみに限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0048】
流路31は、貫通配線16を有する貫通孔13と連通しないように、3次元的に面方向または厚み方向において、貫通孔13と所定の間隔を有することが好ましい。
本形態例において、図13A等に示すように基板10の主面11,12に平行な流路31が平面視で貫通孔13と重なり合っているように見えても、貫通孔13と流路31とは連通していない。すなわち、基板10の厚さ方向における位置が互いにずれていれば、貫通孔13と流路31とがつながり合うことはない。
【0049】
また、本発明においては、基板10の厚みが変動しうることを想定しているので、流路31として用いられる貫通孔は、主面11及び12からそれぞれ直線部42a及び直線部41aの長さより離れて、基板10の厚みの中央部に形成されることが好ましい。
【0050】
流路31は、貫通配線16を形成する貫通孔13の他に、冷却用流体の流路31として用いられる貫通孔を形成する工程A5において形成される。
ここで、前記工程A5は、前記工程A1及びA2と並行して行うと、当該貫通配線基板の製造効率を高められる。この場合の貫通配線基板30の製造方法の一例を、図16A〜16Fに示す。
【0051】
まず、図16A及び16Bに示すように、基板10にレーザー光34を照射して基板10内に基板10の材料が改質されてなる改質部35,36を形成する。改質部35は、貫通孔13が形成される領域に設けられ、改質部36は、流路31として用いられる貫通孔が形成される領域に設けられる。
【0052】
本形態例においてはレーザー光34の光源としてフェムト秒レーザーを用い、基板10内部に焦点を結ぶようにレーザービームを照射して、例えば径が数μm〜数十μmの改質部35,36を得る。基板10内部におけるレーザー光34の焦点位置を制御することにより、所望の形状を有する改質部35,36を形成することができる。なお、一般に改質部35,36では、基板10の材料に比べて屈折率が変化する。
【0053】
流路31となる改質部36は、図16A〜16Fに示すように、基板10の主面11,12に対して平行に形成してもよい。このとき、レーザー光34の照射範囲(特にレーザー光源から基板10内部の焦点までの範囲)が貫通孔13となる改質部35と重なり合うときには、改質部35の屈折率変化のために、レーザー光34と改質部35とが重なり合う範囲でレーザー光34の焦点位置がずれるおそれがある。このように、すでに形成された他の改質部35との重なり合いを避けるために、レーザー光34を第1主面11側から照射するだけでなく、場所によってはレーザー光34を第2主面12側から照射しても良い。
【0054】
つづいて、改質部35,36を形成した基板10をエッチング液(薬液)に浸漬して、改質部35,36をエッチング(ウェットエッチング)により基板10から除去する。その結果、図16Cに示すように、改質部35,36が存在した部分に、貫通孔13および流路31として用いられる貫通孔が形成される。本形態例では基板10の材料として石英を用い、エッチング液としてフッ酸(HF)を主成分とする溶液を用いた。このエッチングは、基板10の改質されていない部分に比べて改質部35,36が非常に速くエッチングされることを利用するものであり、結果として改質部35,36の形状に応じた貫通孔13および流路31として用いられる貫通孔を形成することができる。
【0055】
本形態例において、貫通孔13の孔径は50μmとした。貫通孔13の孔径は、貫通配線16の用途に応じて10μm程度から300μm程度まで適宜設定することができる。流路31として用いられる貫通孔の孔径は、貫通孔13の孔径と同程度でも、より小さく(細く)、あるいはより大きく(太く)ても良い。流路31として用いられる貫通孔の孔径は、特に限定されるものではないが、例えば10μm程度から500μm程度とすることができる。また、流路31として用いられる貫通孔の孔径が部分的に細い部分や部分的に太い部分を有しても構わない。
【0056】
なお、エッチング液はフッ酸に限定されず、例えばフッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸や水酸化カリウム等のアルカリ性水溶液も用いることができる。また、基板10材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0057】
基板10の材料は、石英ガラス(シリカガラス)に限定されるものではなく、例えばサファイア等の絶縁基板や、アルカリ成分等を含んだ他の他成分ガラス基板を用いることができ、その厚さも150μm〜1mm程度まで適宜設定できる。
【0058】
次に、図16Dに示すように、貫通孔13に導体を充填又は成膜して貫通配線16を形成する。該導体の充填又は成膜には、めっき法、スパッタ法、溶融金属充填法、CVD、超臨界成膜法など、適宜用いることができる。この際、流路31として用いられる貫通孔内に導体が侵入しないように、流路31の出入口32,33となる位置に、予めレジスト等の保護層を設けておくことが好ましい。レジストは、樹脂レジストや無機系材料の薄膜などを用いることができる。
【0059】
その後、機械的研磨法等により、直線部分41aが形成された第2主面12側から基板10を研磨して、基板10を所望の厚さにする(図16E)。
さらに必要に応じて、図16Fに示すように、貫通配線16の上下にランド部17,18を形成する。ランド部17,18の形成方法は、めっき法、スパッタ法など、適宜用いることができる。
【0060】
このように、貫通孔13と流路31とを同時に形成すれば、製造工程が簡略化でき、コストを低減することができる。また、貫通孔13と流路31との位置関係を制御するのが容易であるので、誤って貫通孔13と流路31とが連結することを防ぐことができる。
なお、複数の改質部35,36を形成した後に、すべての改質部35,36をエッチングして貫通孔13や流路31として用いられる貫通孔を形成する必要はない。例えば、一部の改質部35,36をその両端にレジスト等の保護層を設けるなどしてエッチングされないよう保護し、エッチングされる改質部35,36を選択することもできる。これにより、必要な位置にのみ貫通孔13や流路31として用いられる貫通孔を形成することができる。
例えば、あらかじめデバイス1,2のすべての電極3,4に対応するように改質部35を形成した後に、デバイス1,2の使用態様などに応じて電極3,4の一部について貫通配線16を設ける必要がなくなった場合には、その貫通配線16が不要な箇所に対応する改質部35をエッチングされないように保護して、貫通孔13を開口しないようにすることもできる。このように、改質部35を形成する段階では一律に改質部35を形成した後に、エッチングする段階で貫通配線16を形成する位置を選択することができるので、改質部35を形成するレーザー光の照射位置の制御が容易になる。
【0061】
また、上記では、貫通孔(微細孔)13及び/又は流路31の形成過程において、フェムト秒レーザーからのレーザー光の焦点位置を制御することにより、基板10の内部に所望の形状を有する改質部35,36を形成する方法を説明したが、本発明はこれのみに限定されない。
たとえば、改質部35,36の所望の形状に対応するパターンが記録されたホログラムをフェムト秒レーザーと基板との間に配置し、ホログラムを通してレーザー光を基板に照射することにより、基板の内部に所望の形状を有する改質部を一括形成することができる。その後、当該改質部をエッチングすることで、所望の貫通孔(微細孔)及び/又は流路を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、基板を貫通する貫通配線を有する貫通配線基板を用いてその両面にデバイスを実装するために広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・第1のデバイス、2・・・第2のデバイス、3,4・・・電極、10・・・基板、
11・・・第1主面(一方の主面)、12・・・第2主面(他方の主面)、
13・・・貫通孔、14・・・第1の開口部、15・・・第2の開口部、
16・・・貫通配線、19,19’,19A,19B,19C・・・貫通配線基板、
30,30A,30B・・・流路付き貫通配線基板、31・・・流路、
35,36・・・改質部、41,42・・・屈曲部、41a,42a・・・直線部、
43,46・・・改質部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を貫通する貫通配線を有する貫通配線基板の両面にデバイスを実装してなるデバイス実装構造を製造するためのデバイス実装構造の製造方法に関する。
本願は、2009年10月23日に、日本に出願された特願2009−244395号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の両面にそれぞれ実装されたデバイス同士を電気的に接続する方法として、基板を貫通する貫通配線を設ける方法がよく用いられている。
【0003】
基板の主面と垂直な方向に形成されている従来の貫通配線を備えた貫通配線基板では、複数の基板を積層配置した場合に、接合外力によるダメージによって貫通配線電極の抜け落ちや界面の剥離が起こることがある。
この問題を解決するために、基板の主面と垂直な方向に対して傾けて形成されている貫通配線を備えた貫通配線基板が特許文献1に開示されている。
【0004】
また、基板の両面に実装されるデバイスの種類が互いに異なる場合、デバイスごとに必要な電極の配置が異なる。このため、その差異を解消するための表面配線を用いることがある。しかしながら、基板の主面に表面配線を設ける場合、主面における表面配線の占有面積が増大する。また、配線同士が短絡したり配線を流れる電気信号が干渉したりするのを避けるため、配線同士の間には所定の間隔(スペース)を設ける必要がある。その結果、基板上におけるデバイス配置の設計自由度が小さいという問題がある。また、配線長が長いと、信号遅延が発生したり、高周波特性が劣化したりする場合がある等の問題もある。
【0005】
さらに、各デバイスが基板と対向する面に有する電極の数が多い場合、上記のような表面配線だけでは対応できない。この場合、配線層を多層にし、各層を層間ビアで接続した多層配線構造にする必要がある。そのため、多層配線にすることによる配線長の増大、及びそれに伴う高周波特性の劣化等の問題が発生し、また、基板作製プロセスも煩雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特許第3896038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
貫通配線基板の両主面に実装されたデバイスが互いに異なる電極配置を有するデバイスであり、電極が高密度に配置されている場合、該貫通配線基板に配された貫通配線が両主面に有する開口部は高い位置精度で設けられることが要求される。
しかしながら、基板の主面と垂直な方向に対して傾けて形成されている貫通配線を備えた貫通配線基板では、高い位置精度で前記開口部を設けることが困難なことがある。例えば、図17に示すように、貫通配線基板の製造に用いる基板の元の厚さにばらつきがある場合や、該基板の研磨工程における加工精度による厚さのばらつきが生じた場合に、貫通配線基板の厚みが当初の設計した厚さT1ではなく、厚さT2又は厚さT3となることがある。このとき、当該貫通配線の基板の幅方向の長さは、当初の設計した長さL1ではなく、長さL2又は長さL3となってしまう。この場合、図17に示す主面112において、複数の貫通配線による複数の開口部115の相対的な位置関係もずれてしまう。この結果、該主面112に実装すべきデバイスの電極配置と、それに接続すべき該主面112に設けられた開口部115の配置とが、許容範囲以上にずれてしまうことがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電極が高密度かつ異なるレイアウトで配置されたデバイスに対して、多層配線構造にすることなく、貫通配線基板の両面に実装したデバイスの電極同士を自由自在に精度良く接続することができる、デバイス実装構造の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は以下を採用している。すなわち、本発明の第一の態様に係るデバイス実装構造の製造方法は、基板に形成された貫通孔に導体を充填又は成膜した貫通配線を有する貫通配線基板を介して、電極配置が互いに異なる第1のデバイスおよび第2のデバイスを各々配置し、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとを電気的に接続するデバイス実装方法であって、前記基板にレーザー光を照射することにより、前記基板の一方の主面側において前記第1のデバイスの電極と整合する位置に露呈する一端と、前記基板の他方の主面側において前記第2のデバイスの電極と整合する位置に露呈する他端とを有する改質部を形成する工程A1と、前記改質部が形成された領域に貫通孔を形成する工程A2と、前記貫通孔に導体を充填又は成膜して貫通配線を形成する工程A3と、前記第1のデバイスを前記基板の一方の主面側に配置して前記第1のデバイスの電極を前記貫通配線の一端に位置整合させて接合するとともに、前記第2のデバイスを前記基板の他方の主面側に配置して前記第2のデバイスの電極を前記貫通配線の他端に位置整合させて接合することにより、前記第1のデバイスの複数の電極と前記第2のデバイスの複数の電極とを、複数の前記貫通配線を介して電気的に接続する工程A4とを有し、前記工程A1は、該複数の前記貫通配線をなす各々の前記貫通孔となる前記改質部に、前記一方の主面及び前記他方の主面のうち少なくとも片方の主面に対して垂直に揃って開口する直線部分を設けるステップと、他の片方の主面に対して傾いて延び、前記直線部分に連結された部分を設けるステップとからなる。
【0010】
前記改質部は、フェムト秒レーザーを用いて形成されていてもよい。
また、前記基板は石英ガラスからなっていてもよい。
また、前記工程A3は、前記直線部分と前記傾いて延びる部分とに、前記導体を同時に充填又は成膜してもよい。
また、前記工程A1、A2、又はA3の後に、前記直線部分が設けられた側の主面を物理的又は化学的手段を用いて研磨することにより、前記直線部分の範囲において、前記基板の厚みを薄くしてもよい。
【0011】
さらに、前記基板に対し、前記貫通配線をなす前記貫通孔の他に、冷却用流体の流路として用いられる貫通孔を形成する工程A5を有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデバイス実装構造の製造方法によれば、貫通配線基板の両面に実装したデバイスの電極同士を、表面配線を介することなく電気的に接続することができるので、電極が高密度に配置された小型のデバイスであっても自由自在に接続することが可能になる。また、貫通配線基板の両面に実装したデバイスの高密度に配置された電極同士を自由自在に接続する際、該貫通配線基板の製造に用いる基板の元の厚さにばらつきがある場合や、該基板の研磨工程における加工精度による厚さのばらつきが生じた場合でも、該貫通配線基板の主面に設けられた開口部の位置は変動しない。この結果、該接続を精度良く、かつ歩留まり良く実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の一形態例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図1B】図1AのA−A線に沿う断面図である。
【図2A】図1A及び1Bに示すデバイス実装構造に用いられる貫通配線基板の平面図である。
【図2B】図2AのB−B線に沿う断面図である。
【図3】図2A及び2Bに示す貫通配線基板の斜視図である。
【図4A】基板に貫通孔及び貫通配線を形成する工程の最初の段階を示す断面図である。
【図4B】図4Aに続く段階を示す断面図である。
【図4C】図4Bに続く段階を示す断面図である。
【図4D】図4Cに続く段階を示す断面図である。
【図5A】同形態例の第1変形例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図5B】図5AのA−A線に沿う断面図である。
【図6A】同形態例の第2変形例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図6B】図6AのC−C線に沿う断面図である。
【図7A】同形態例の第3変形例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図7B】図7AのD−D線に沿う断面図である。
【図8A】同形態例の第4変形例に係るデバイス実装構造を示す平面図である。
【図8B】図8AのE−E線に沿う断面図である。
【図9】図8A及び8Bに示すデバイス実装構造の左下4分の1の部分における電極の接続関係を模式的に示す部分平面図である。
【図10】本発明に係るデバイス実装構造にバンプを設けた一例を示す断面図である。
【図11】本発明に係るデバイス実装構造にモールド樹脂層を設けた一例を示す断面図である。
【図12】本発明に係るデバイス実装構造にキャビティー付き保護部材を設けた一例を示す断面図である。
【図13A】流路を有する貫通配線基板の第1例を示す平面図である。
【図13B】図13AのI−I線に沿う断面図である。
【図13C】図13AのJ−J線に沿う断面図である。
【図14A】流路を有する貫通配線基板の第2例を示す平面図である。
【図14B】図14AのK−K線に沿う断面図である。
【図14C】図14AのL−L線に沿う断面図である。
【図15A】流路を有する貫通配線基板の第3例を示す平面図である。
【図15B】図15AのM−M線に沿う断面図である。
【図15C】図15AのN−N線に沿う断面図である。
【図16A】流路として用いられる貫通孔を有する貫通配線基板の製造方法の最初の段階を示す断面図である。
【図16B】図16Aに続く段階を示す断面図である。
【図16C】図16Bに続く段階を示す断面図である。
【図16D】図16Cに続く段階を示す断面図である。
【図16E】図16Dに続く段階を示す断面図である。
【図16F】図16Eに続く段階を示す断面図である。
【図17】従来の貫通配線基板における貫通配線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1A〜3に本発明の一形態例に係るデバイス実装構造を示す。このデバイス実装構造は、単体の基板10と、この基板10の一方の主面(以下「第1主面」という。)11から他方の主面(以下「第2主面」という。)12に向けて基板10を貫通する複数の貫通孔13の内部に形成された貫通配線16とを有する貫通配線基板19と;複数の電極3を有してかつ、これら電極3が第1主面11に対向するように配置された第1のデバイス1と;第1のデバイス1の各電極3の配置とは配置が異なる複数の電極4を有してかつ、これら電極4が第2主面に対向するように配置された第2のデバイス2と;を備え、各貫通孔13は、第1主面11の、第1のデバイス1の電極3と対応する位置に設けられた第1の導通部214と、第2主面12の、第2のデバイス2の電極4と対向する位置に設けられた第2の導通部215とを有し、第1のデバイス1の各電極3は、第1の導通部214に電気的に接続され、第2のデバイス2の各電極4は、第2の導通部215に電気的に接続されている。
【0015】
また、貫通配線16となる貫通孔13は、屈曲部41を有し、開口部15から屈曲部41まで延びた直線部分41aと、屈曲部41から開口部14まで延びた、第1主面11及び第2主面12に対して斜めに延びた直線部分とからなる。直線部分41aは、第2主面12に対して垂直な方向、すなわち基板10の厚み方向、に延びている。また、屈曲部41は、第2主面12からt1’の深さに位置する。すなわち、直線部分41aの長さはt1’である。
貫通孔13は、屈曲部41から第1主面11及び第2主面のうち少なくとも片方の主面に対して垂直に揃って開口する直線部分41aと、屈曲部41から第1主面11及び第2主面12のうち他の片方の主面に対して傾いて延びる部分とを有する。
なお、垂直に延びて開口する直線部分41aに充填又は成膜された導体と、傾いて延びた部分に充填又は成膜される導体とは、一体である。
【0016】
貫通配線基板19により、第1のデバイス1の複数の電極3と第2のデバイス2の複数の電極4とが、複数の貫通配線16を介して電気的に接続される。これらの電極3,4間を貫通配線16によりできるだけ短くつなぐためには、t1’ができるだけ短い方が好ましい。さらに、屈曲部41と開口部14との間(第1主面11及び第2主面12に対して傾いて延びた部分)が、直線形成を有することが好ましい。
屈曲部41の形状は、基板の厚み方向に沿った断面の形状が角を有するものであってもよく、角を有さない略円弧状のものであってもよい。
【0017】
上述したように、t1’の長さはできるだけ短い方が好ましい。t1’の長さは、ロットごとに生じ得る元の基板厚さのばらつきや、貫通配線基板19の製造工程において発生し得る基板10の厚みの加工ばらつきを考慮し、必ず直線部分41aが設けられるように適宜設計される。
【0018】
さらに、図4A〜5Bを参照して説明する。図4A〜4Dは、基板10に貫通配線16を形成する方法の一例を示す断面図である。
まず、図4Aに示すように、後述するレーザー法等により、後に貫通孔13となる領域に改質部46を形成する(工程A1)。改質部46の一端は、後に貫通孔13の開口部14となる。改質部46の他端は、後に貫通孔13の開口部15となる。改質部46は、屈曲部41を有し、該他端から屈曲部41まで延びた直線部分41aと、屈曲部41から該一端まで延びた、第1主面11及び第2主面12に対して傾いて延びた部分とからなる。直線部分41aは、第2主面12に対して垂直な方向、すなわち基板10の厚み方向、に延びている。また、屈曲部41は、第2主面12からt1の深さに位置する。すなわち、直線部分41aの長さは、t1である。
【0019】
次に、改質部46を形成した基板10をエッチング液(薬液)に浸漬して、改質部46をエッチング(ウェットエッチング)により基板10から除去する。その結果、図4Bに示すように、改質部46が存在した部分に、貫通孔13が形成される(工程A2)。
つづいて、後述するめっき法等により、貫通孔13に導体を充填又は成膜して、図4Cに示すように、第1主面11側に露出する第1の導通部114と前記2主面12側に露出する第2の導通部115とを有する貫通配線16を形成する(工程A3)。なお、前記工程A3においては、直線部分41aと傾いて延びる部分とに、導体を同時に充填又は成膜することができる。
そして、例えば機械的研磨法等により、直線部分41aが形成された側の主面である第2主面12側から基板10を研磨して、直線部分41aの範囲において、基板10を所望の厚さにする(工程A5)。このとき、開口部15において第2主面12に露出する前記導体が、研磨によって該第2主面12とともに平坦化される。また、直線部分41aの長さt1は、研磨によって短くなり、t1’となる。その結果、図4Dに示す貫通配線基板19が得られる。
【0020】
ここで、基板10に厚みの変動があった場合、例えば基板10の元の厚みが想定した厚みよりも薄かった場合、又は基板10の研磨が想定よりも進み過ぎた場合には、製造された貫通配線基板19の厚みは想定した厚みT1ではなく、T2になることがある(図4D参照)。この場合であっても、貫通配線基板19には直線部分41が存在するために、第2主面12における開口部15の位置は変動しない。よって、後述の工程A4において、第2のデバイス2の電極4と該導通部215との接続を精度良く、確実に、歩留まり良く行うことができる。
また、基板10に厚みの変動が生じる別の場合として、例えば基板10の元の厚みが想定した厚みよりも厚かった場合、又は基板10の研磨が想定よりも進まなかった場合には、製造された貫通配線基板19の厚みは想定した厚みT1ではなく、T3になることがある(図4D参照)。この場合であっても、貫通配線基板19には、直線部分41が存在するために、第2主面12における開口部15の位置は変動しない。よって、後述の工程A4において、第2のデバイス2の電極4と該導通部215との接続を精度良く、確実に、歩留まり良く行うことができる。
【0021】
上記の例では、貫通配線16の形成する工程A3の後に、基板10の第2主面12を研磨する工程A5を行ったが、改質部43を形成する工程A1、又は貫通孔13を形成する工程A2の後に該工程A5を行ってもよい。いずれの場合であっても、製造される貫通配線基板19を所望の厚みにすることができる。
工程A3の後に工程A5を行った場合は、開口部15において第2主面12に露出する前記導体が、研磨によって該第2主面12とともに平坦化されるので好ましい。
また、工程A1の後に工程A5を行った場合は、その後の工程A2におけるエッチング処理等の時間と、工程A3における導体の成膜又は充填等の処理時間とを短くすることができる。さらに、工程A3における導体の使用量を減らすことができる。
また、工程A2の後に工程A5を行った場合は、その後の工程A3における導体の成膜又は充填等の処理時間を短くすることができる。さらに、工程A3における導体の使用量を減らすことができる。
【0022】
また、上記の例では、第2主面12を研磨する場合を説明したが、第1主面11側に直線部分42aを設けて(図5B参照)、該第1主面11を研磨することによって、基板10の厚みを所望のものとしてもよい。この場合にも、上記の第2主面12を研磨する場合と同様の効果が得られる。
なお、図5Bでは、直線部分42aは、第1主面11に対して垂直な方向、すなわち基板10の厚み方向に延びている。また、屈曲部42は、第1主面11からt2’の深さに位置する。すなわち、直線部分42aの長さはt2’である。
【0023】
前述のような基板10の厚みの意図しない変動が起きた場合でも、該変動の大きさは、通常1μm〜50μmの範囲内に収まる。よって、工程A1において形成される改質部43の有する直線部分41a又は42aの長さは、見込まれる変動の大きさよりも長ければよい。なお、貫通配線16が長くなると、デバイス間の信号遅延や、高周波特性の劣化が生じる場合があるので、前記長さt1’及びt2’は短い程より好ましい。
【0024】
単一の貫通配線16における長さt1’とt2’とは、同じであっても異なっていても良い。
また、貫通配線基板19の有する複数の貫通配線16のうちの、個々の貫通配線の前記t1’同士及びt2’同士の長さは、同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
上記のようにして製造された本発明に係る貫通配線基板19では、複数の貫通配線16をなす各々の貫通孔13は、第1主面11及び第2主面12のうちの少なくとも片方の同一主面側に揃って垂直に開口する直線部分41a及び/又は直線部分42aを有する。
また、本発明に係る貫通配線基板19では、該複数の貫通配線16をなす各々の貫通孔13は、第1主面11及び第2主面12のうちの少なくとも片方の同一主面側に揃って垂直に開口する同じ長さの直線部分41a及び/又は直線部分42aを有することが好ましい。この場合、全ての貫通孔が同一の主面側に同じ長さの直線部分を有するので、基板10の厚みに変動が生じたとしても、該直線部分をもつ貫通孔と該直線部分が無くなってしまった貫通孔とが、該貫通配線基板19において混在することが無い。このため、接続が精度良く、確実に行われる。
【0026】
本発明において、デバイスの電極配置(レイアウト)とは、当該デバイスの貫通配線基板の主面に対向する面内において貫通配線と接続される電極の二次元配置を意味する。つまり、単にデバイス全体を平行移動させて、すべての電極の位置を同じ方向に同じ距離ずらしただけでは、当該デバイスの電極配置は変化しない。2つのデバイス間で、対応する2つの電極間の距離や、対応する3つの電極間の角度等が、少なくとも1箇所で相違する場合、これら2つのデバイスの電極配置は互いに異なる。例えば、2つのデバイスの電極配置が、電極間ピッチのみが異なる相似の関係にある場合も、これら2つのデバイスの電極配置は互いに異なる。また、2つのデバイスの電極が、全く同じレイアウトを持つ複数のブロックからなる場合でも、これらブロックの位置が2つのデバイス間で異なる場合には、2つのデバイスの電極配置は互いに異なる。更に、当該電極配置においては、貫通配線と接続されない電極は、もしあったとしても除外され、貫通配線と接続される電極のみが考慮される。
【0027】
両面に実装されるデバイスの電極配置が同一であれば、すべての貫通配線を基板の主面に垂直に形成し、あるいは斜めであってもすべての貫通配線を同じ方向に(平行に)形成すれば、これらの貫通配線を介して両デバイスの電極同士を一対一の対応関係で接続することができる。しかし、本発明においては、両デバイスの電極配置が互いに異なる。このため、すべての貫通配線が基板の主面に対して垂直に形成され、または斜めであっても互いに平行になるように形成されている場合には、少なくとも一方のデバイスの電極と導通部との位置が一致せず、表面配線が必要になる。本発明では、デバイス間の接続のための表面配線を不要にするために、第1主面11上における第1の導通部214(第1の開口部14)の配置と、第1のデバイス1の電極配置とを一致させるとともに、第2主面12上における第2の導通部215(第2の開口部15)の配置と、第2のデバイス2の電極配置とを一致させている。これにより、貫通配線基板19に表面配線を設けることなく、デバイス1,2間を接続することができる。
【0028】
図1A〜3,5A,5Bに示す例では、両デバイス1,2の電極配置が、デバイス1,2の周縁部に電極3,4が並ぶペリフェラル配置である。しかも、両デバイス1,2の寸法(基板10の主面11,12に沿う方向の長さや面積等)が互いに異なる。貫通配線基板19の貫通配線16は、寸法が小さいデバイス1の電極3から寸法が大きいデバイス2の電極4へ向けて形成されている。つまり、第1の導電部214は基板10の第1主面11の中心部にあり、第2の導電部215は基板10の第2主面12の外周寄りにあり、貫通配線16は略放射状に延びている。
【0029】
このように、本形態例の貫通配線基板19では、貫通配線16が設けられる貫通孔13がいずれも非平行である(直線部分41a及び直線部分42aは除く)。このため、貫通孔13の形成方法は、後述するように、任意の向きに貫通孔13を形成することが可能な方法が採用される。
なお、貫通孔13の向きは、基板10の主面11,12に対して垂直な方向から見た平面視によるのではなく、基板10の厚さ方向を含めて三次元的に理解される。例えば図2Aで基板10の中心に対して向かい合った貫通孔13同士は、平面視では向きが同じであるが、図3に示すように、三次元的には第1主面11側から第2主面12側に向かう向きが異なっており、互いに非平行である。
【0030】
基板10の材料は、ガラス、プラスチック、セラミックス等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。半導体基板の場合は、貫通孔13の内壁や主面11,12等に絶縁層を形成することが望ましい。絶縁性基板の場合は、貫通孔13の内壁にさらに絶縁層を形成する必要がない。
なお、電子デバイスの基材と、電子デバイスが実装される基板との間の線膨張係数差が大きい場合には、実装時の温度によって両者の伸び量が大きく異なるため、電子デバイスの電極とこの電極が接続される基板上の導電部との間に位置ずれが生じやすい。この結果、両者間の精度の高い接続が困難になり、又は、両者間の接続そのものが困難になる場合がある。
これに対し、本発明によれば、基板10の材料としてシリコンやガラスを用いることができる。したがって、たとえば、シリコン基材を用いた電子デバイス1,2を基板10の両主面上に実装する場合、上述した線膨張係数差を小さくすることができる。この結果、電子デバイス1,2の電極と基板10上の導通部との位置ずれが抑制され、両者を位置精度良く接続することができる。
【0031】
貫通配線16は、上述したように、基板10の第1主面11の、第1のデバイス1の電極3と対向する位置に開口した第1の開口部14と、基板10の第2主面12の、第2のデバイス2の電極4と対向する位置に開口した第2の開口部15と、を有する貫通孔13に、導体を充填または成膜して設けられる。
【0032】
貫通孔13の形成には、石英ガラス製の基板に対して特に適した方法であるフェムト秒レーザーによる改質とウェットエッチングとを併用する方法や、NCドリル等の機械的手法をさらに併用した方法を用いることができる。フェムト秒レーザーを用いて改質をおこなうと、レーザーが照射された部分の基板材質が変化し、エッチャントに対する耐性が、レーザーが照射されてない部分と比べて低下するので、容易に孔を形成することができる。
【0033】
貫通配線16に用いる導体としては、銅(Cu)やタングステン(W)等の金属、金錫(Au−Sn)等の合金、ポリシリコン等の非金属の導体が挙げられる。作製方法は、めっき法、スパッタ法、溶融金属充填法、CVD、超臨界成膜法、あるいはこれらを組み合わせた手法など、適宜用いることができる。
なお、貫通配線16は、貫通孔13内部に導体が完全に充填されて成ることが望ましい。
【0034】
本発明のデバイス実装構造では、貫通配線16となる貫通孔13の開口部14及び15に対向するようにデバイスの電極3及び4がそれぞれ配置される。そのため、貫通配線16は、貫通孔13内部に導体が完全に充填された中実構造であると、貫通孔13の内壁のみに導体層が形成された中空構造である場合に比べて、機械的にも電気的にも接続の安定性が増大するので好ましい。
この際、貫通孔内部に導体を完全に充填する方法として、上述しためっき法、スパッタ法、溶融金属充填法、CVD、超臨界成膜法などのうちいずれか一つの方法を採用することができる。または、これらの方法を適宜組み合わせて用いてもよい。特に孔の長さが長く、形状が複雑である場合には、CVDまたは超臨界成膜法などの孔の深部まで成膜できる方法により導体薄膜を形成すればよい。当該導体薄膜をシード層や接着層として、引き続きめっき法や溶融金属充填法により効率的に貫通孔内部に導体を完全充填することができる。
【0035】
デバイス1,2としては、メモリー(記憶素子)やロジック(論理素子)等の集積回路(IC)、センサなどのMEMSデバイス、発光素子や受光素子などの光学デバイスが挙げられる。デバイス1,2は、電極配置が異なるものであれば、機能が相違するものでも機能が同一のものでも構わない。特に、異種デバイスを高密度で集積することで、3次元システムインパッケージ(SiP)を実現することが可能である。
本形態例の場合、図1Bに示すように、第1主面11側で複数のデバイス1が基板10上に積層されている。このように本形態例によれば、さらなる高密度化が可能である。
【0036】
貫通配線基板19の製造においては、それぞれのデバイス1,2の電極配置に対応した開口部14,15を有する貫通孔13となる改質部43を基板10内に形成し(工程A1)、該改質部43を基板10から除いて貫通孔13を形成し(工程A2)、この貫通孔13内に導体を充填または成膜することにより、第1主面11側に露出する第1の導通部214と前記2主面12側に露出する第2の導通部215とを有する貫通配線16を形成し(工程A3)、さらに第1のデバイス1を基板10の第1主面11に対向するように配置してその電極3を対応する第1の導通部214に接合するとともに、第2のデバイス2を基板10の第2主面12に対向するように配置してその電極4を対応する第2の導通部215に接合することにより、両デバイス1,2を貫通配線基板19の両面に実装する(工程A4)。これにより、第1のデバイス1の複数の電極3と第2のデバイス2の複数の電極4とが、複数の貫通配線16を介して電気的に接続される。より詳しくは、第1のデバイス1の複数の電極3が貫通配線16の一端に位置整合した状態で接合されるとともに、第2のデバイス2の複数の電極4が貫通配線16の他端に位置整合した状態で接合される。
【0037】
本発明のデバイス実装構造の製造方法において、前記工程A1では、複数の貫通配線16をなす各々の貫通孔13となる改質部43に、第1主面11及び第2主面12のうちの少なくとも片方の同一主面に対して垂直に延びる直線部分41a及び/又は直線部分42aを設けるステップと、各々の直線部に連結されていて、第1主面11及び第2主面12に対して傾いて延びる部分を設けるステップとを有する。ここで、該傾いて延びる部分は、例えば、図1Bにおける屈曲部41から開口部14までの部分である。別の例では、該傾いて延びる部分は、図5Bにおける屈曲部41から屈曲部42までの部分である。前記二つのステップは、同一の方法で連続的に行ってもよいし、異なる方法で非連続的に行ってもよい。
【0038】
例えば、まず、レーザー法等を用いて、前記直線部と前記傾いて延びる部分とを順に改質する。つづいて、ウェットエッチング法を用いて、改質された前記直線部分と改質された前記傾いて延びる部分とを順に除去する。このようにして、これら二つのステップを連続的に行ってもよい。また、前記直線部分をNCドリル等の機械的方法で形成する。その後、前記傾いて延びる部分をレーザー法及びウェットエッチング法で形成する。これら二つのステップを非連続的に行ってもよい。
【0039】
本発明のデバイス実装構造の製造方法では、図4A〜4Dを用いて前述したように、前記工程A5において、前記直線部分が設けられた側の主面を物理的又は化学的手段を用いて研磨することにより、前記基板の厚みを薄くすることができる。
前記物理的手段としては、細かい粒径の研磨剤を含む研磨液によって機械的に研磨する方法が挙げられる。また、前記化学的手段としては、基板を腐食することができる溶液やガスを用いてエッチングする方法が挙げられる。
【0040】
本発明のデバイス実装構造の製造方法における前記工程A4では、第1のデバイス1を基板10の第1主面11側に配置して第1のデバイス1の電極3を貫通配線16に接合するとともに、第2のデバイス2を基板10の第2主面12側に配置して第2のデバイス2の電極4を貫通配線16に接合する。これにより、第1のデバイス1の複数の電極3と第2のデバイス2の複数の電極4とを、複数の貫通配線16を介して電気的に接続することができる。このように接続することができる方法であれば、他の方法を用いてもよい。
例えば、本形態例の場合、各デバイス1,2の電極3,4と貫通配線16との間は、貫通孔13の開口部14,15に設けられた導電性のランド部17,18と、このランド部17,18上に設けられた、導体(はんだや導電性バンプ等)である接合材5,6によって接続されている。本発明においては、ランド部17,18や接合材5,6は省略しても良い。例えば、電極3,4と貫通配線16とを直接はんだなどで接合しても構わない。
【0041】
図1A〜3に示すデバイス実装構造において、デバイス1,2の電極配置は、デバイス1,2の周縁部に電極3,4が並ぶペリフェラル配置である。
また、図6A及び6Bに示す本形態例の第2変形例に係るデバイス実装構造において、第1のデバイス1の電極配置は、十字状に電極3が並ぶ配置であり、第2のデバイス2の電極配置は、デバイス2の周縁部に電極4が並ぶペリフェラル配置である。
また、図7A及び7Bに示す本形態例の第3変形例に係るデバイス実装構造において、第1のデバイス1の電極配置は、周辺部および十字状に電極3が並ぶ格子型配置であり、第2のデバイス2の電極配置は、デバイス2の周縁部に電極4が並ぶペリフェラル配置である。
【0042】
また、図8A及び8Bに示す本形態例の第4変形例に係るデバイス実装構造において、第1のデバイス1の電極配置は、縦横に電極3が並ぶエリアアレイ配置であり、第2のデバイス2の電極配置は、デバイス2の周縁部に電極4が並ぶペリフェラル配置である。なお、図9に、図8A及び8Bに示すデバイス実装構造の左下4分の1の部分における電極の接続関係を模式的に示す。
ここで、符号A1〜A9は、第1のデバイス1の電極3に接続される第1主面11上のランド部17を表す。また、符号B1〜B9は、第2のデバイス2の電極4に接続される第2主面12上のランド部18を表す。また、符号C1〜C9は、A1〜A9とB1〜B9とを各々接続する貫通配線16を表す。
また、本発明は、以上の例示のみに限定されるものではなく、他の電極配置を組み合わせても構わない。
【0043】
図1A〜図3及び図5A〜図9に示す例では、説明の便宜上、第2のデバイス2の平面視での寸法が第1のデバイス1より大きい。また、第2のデバイス2の電極4がペリフェラルに配置されている。しかし、本発明においては、以上の例のように第2のデバイス2の電極4が基板10に対する平面視で第1のデバイス1に重なる位置に配置されていても構わない。また、第1のデバイス1の平面視での寸法が第2のデバイス2と同一でも構わない。
このように、両デバイス1,2の電極3,4が、それぞれのデバイス1,2上でどのような電極配置(レイアウト)になっていようとも、ほぼ最短で電極3,4間を接続することができるため、デバイスの高速化に寄与する。また、ビルドアップ基板のように多層化をすることなく、貫通配線基板19,19’,19A,19B,19Cの内部で配線間のピッチを変換できるため、効率よく両デバイス1,2の電極3,4間を接続することができる。
【0044】
本発明のデバイス実装構造では、図10に示すように、はんだ等からなるバンプ21を設けることができる。図10に示す例では、貫通配線基板19が基板10の第2主面12側に半田バンプ等の接続端子21を有している。貫通配線16や回路20を介して、デバイス1,2とプリント回路基板等の外部基板(図示せず)とを電気的に接続することが可能である。また、第1主面11側ではデバイス1が積層されている。
【0045】
また、本発明のデバイス実装構造では、図11に示すようにデバイス1をモールド樹脂層22で被覆したり、図12に示すようにキャビティー付き保護部材23でデバイス1を覆ったりすることができる。これにより、デバイス1を保護することができる。
【0046】
また、本発明のデバイス実装構造では、図13A〜15Cに示すように、流路31を基板10の内部に設けることができる。流路31は、例えば水などの冷却用流体を流通させる流路として用いられる。その他、流路31は、DNA(核酸)、タンパク質、脂質等の生体溶液を流通させる流路として用いることもできる。
流路31を、冷却用流体を流通させる流路として用いる場合、図13A〜15Cに示す流路付き貫通配線基板30,30A,30Bの第1主面11側に第1のデバイスを、第2主面12側に第2のデバイスを、それぞれ実装することにより、流路付き貫通配線基板30,30A,30Bを冷却することができる。これにより、第1のデバイス及び/又は第2のデバイスの電極が高密度に配置されている場合であっても、流路付き貫通配線基板30,30A,30Bの温度上昇を効果的に低減することが可能になる。以下、流路31を、冷却用流体を流通させる流路として用いる場合について説明する。
【0047】
流路31は、その両端に冷却用流体を出し入れする出入口32,33を有する。
例えば、図13A〜13Cに示すように、流路31が複数本であっても良い。
また、図14Aに示すように、1本の流路31が基板10全体を冷却できるように蛇行していても良い。
また、図15A〜15Cに示すように、流路31の出入口32,33が基板10の主面12に開口されていても良い。
また、流路31のパターン(経路)や断面形状は、以上の例示のみに限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0048】
流路31は、貫通配線16を有する貫通孔13と連通しないように、3次元的に面方向または厚み方向において、貫通孔13と所定の間隔を有することが好ましい。
本形態例において、図13A等に示すように基板10の主面11,12に平行な流路31が平面視で貫通孔13と重なり合っているように見えても、貫通孔13と流路31とは連通していない。すなわち、基板10の厚さ方向における位置が互いにずれていれば、貫通孔13と流路31とがつながり合うことはない。
【0049】
また、本発明においては、基板10の厚みが変動しうることを想定しているので、流路31として用いられる貫通孔は、主面11及び12からそれぞれ直線部42a及び直線部41aの長さより離れて、基板10の厚みの中央部に形成されることが好ましい。
【0050】
流路31は、貫通配線16を形成する貫通孔13の他に、冷却用流体の流路31として用いられる貫通孔を形成する工程A5において形成される。
ここで、前記工程A5は、前記工程A1及びA2と並行して行うと、当該貫通配線基板の製造効率を高められる。この場合の貫通配線基板30の製造方法の一例を、図16A〜16Fに示す。
【0051】
まず、図16A及び16Bに示すように、基板10にレーザー光34を照射して基板10内に基板10の材料が改質されてなる改質部35,36を形成する。改質部35は、貫通孔13が形成される領域に設けられ、改質部36は、流路31として用いられる貫通孔が形成される領域に設けられる。
【0052】
本形態例においてはレーザー光34の光源としてフェムト秒レーザーを用い、基板10内部に焦点を結ぶようにレーザービームを照射して、例えば径が数μm〜数十μmの改質部35,36を得る。基板10内部におけるレーザー光34の焦点位置を制御することにより、所望の形状を有する改質部35,36を形成することができる。なお、一般に改質部35,36では、基板10の材料に比べて屈折率が変化する。
【0053】
流路31となる改質部36は、図16A〜16Fに示すように、基板10の主面11,12に対して平行に形成してもよい。このとき、レーザー光34の照射範囲(特にレーザー光源から基板10内部の焦点までの範囲)が貫通孔13となる改質部35と重なり合うときには、改質部35の屈折率変化のために、レーザー光34と改質部35とが重なり合う範囲でレーザー光34の焦点位置がずれるおそれがある。このように、すでに形成された他の改質部35との重なり合いを避けるために、レーザー光34を第1主面11側から照射するだけでなく、場所によってはレーザー光34を第2主面12側から照射しても良い。
【0054】
つづいて、改質部35,36を形成した基板10をエッチング液(薬液)に浸漬して、改質部35,36をエッチング(ウェットエッチング)により基板10から除去する。その結果、図16Cに示すように、改質部35,36が存在した部分に、貫通孔13および流路31として用いられる貫通孔が形成される。本形態例では基板10の材料として石英を用い、エッチング液としてフッ酸(HF)を主成分とする溶液を用いた。このエッチングは、基板10の改質されていない部分に比べて改質部35,36が非常に速くエッチングされることを利用するものであり、結果として改質部35,36の形状に応じた貫通孔13および流路31として用いられる貫通孔を形成することができる。
【0055】
本形態例において、貫通孔13の孔径は50μmとした。貫通孔13の孔径は、貫通配線16の用途に応じて10μm程度から300μm程度まで適宜設定することができる。流路31として用いられる貫通孔の孔径は、貫通孔13の孔径と同程度でも、より小さく(細く)、あるいはより大きく(太く)ても良い。流路31として用いられる貫通孔の孔径は、特に限定されるものではないが、例えば10μm程度から500μm程度とすることができる。また、流路31として用いられる貫通孔の孔径が部分的に細い部分や部分的に太い部分を有しても構わない。
【0056】
なお、エッチング液はフッ酸に限定されず、例えばフッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸や水酸化カリウム等のアルカリ性水溶液も用いることができる。また、基板10材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0057】
基板10の材料は、石英ガラス(シリカガラス)に限定されるものではなく、例えばサファイア等の絶縁基板や、アルカリ成分等を含んだ他の他成分ガラス基板を用いることができ、その厚さも150μm〜1mm程度まで適宜設定できる。
【0058】
次に、図16Dに示すように、貫通孔13に導体を充填又は成膜して貫通配線16を形成する。該導体の充填又は成膜には、めっき法、スパッタ法、溶融金属充填法、CVD、超臨界成膜法など、適宜用いることができる。この際、流路31として用いられる貫通孔内に導体が侵入しないように、流路31の出入口32,33となる位置に、予めレジスト等の保護層を設けておくことが好ましい。レジストは、樹脂レジストや無機系材料の薄膜などを用いることができる。
【0059】
その後、機械的研磨法等により、直線部分41aが形成された第2主面12側から基板10を研磨して、基板10を所望の厚さにする(図16E)。
さらに必要に応じて、図16Fに示すように、貫通配線16の上下にランド部17,18を形成する。ランド部17,18の形成方法は、めっき法、スパッタ法など、適宜用いることができる。
【0060】
このように、貫通孔13と流路31とを同時に形成すれば、製造工程が簡略化でき、コストを低減することができる。また、貫通孔13と流路31との位置関係を制御するのが容易であるので、誤って貫通孔13と流路31とが連結することを防ぐことができる。
なお、複数の改質部35,36を形成した後に、すべての改質部35,36をエッチングして貫通孔13や流路31として用いられる貫通孔を形成する必要はない。例えば、一部の改質部35,36をその両端にレジスト等の保護層を設けるなどしてエッチングされないよう保護し、エッチングされる改質部35,36を選択することもできる。これにより、必要な位置にのみ貫通孔13や流路31として用いられる貫通孔を形成することができる。
例えば、あらかじめデバイス1,2のすべての電極3,4に対応するように改質部35を形成した後に、デバイス1,2の使用態様などに応じて電極3,4の一部について貫通配線16を設ける必要がなくなった場合には、その貫通配線16が不要な箇所に対応する改質部35をエッチングされないように保護して、貫通孔13を開口しないようにすることもできる。このように、改質部35を形成する段階では一律に改質部35を形成した後に、エッチングする段階で貫通配線16を形成する位置を選択することができるので、改質部35を形成するレーザー光の照射位置の制御が容易になる。
【0061】
また、上記では、貫通孔(微細孔)13及び/又は流路31の形成過程において、フェムト秒レーザーからのレーザー光の焦点位置を制御することにより、基板10の内部に所望の形状を有する改質部35,36を形成する方法を説明したが、本発明はこれのみに限定されない。
たとえば、改質部35,36の所望の形状に対応するパターンが記録されたホログラムをフェムト秒レーザーと基板との間に配置し、ホログラムを通してレーザー光を基板に照射することにより、基板の内部に所望の形状を有する改質部を一括形成することができる。その後、当該改質部をエッチングすることで、所望の貫通孔(微細孔)及び/又は流路を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、基板を貫通する貫通配線を有する貫通配線基板を用いてその両面にデバイスを実装するために広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・第1のデバイス、2・・・第2のデバイス、3,4・・・電極、10・・・基板、
11・・・第1主面(一方の主面)、12・・・第2主面(他方の主面)、
13・・・貫通孔、14・・・第1の開口部、15・・・第2の開口部、
16・・・貫通配線、19,19’,19A,19B,19C・・・貫通配線基板、
30,30A,30B・・・流路付き貫通配線基板、31・・・流路、
35,36・・・改質部、41,42・・・屈曲部、41a,42a・・・直線部、
43,46・・・改質部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された貫通孔に導体を充填又は成膜した貫通配線を有する貫通配線基板を介して、電極配置が互いに異なる第1のデバイスおよび第2のデバイスを各々配置し、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとを電気的に接続するデバイス実装方法であって、
前記基板にレーザー光を照射することにより、前記基板の一方の主面側において前記第1のデバイスの電極と整合する位置に露呈する一端と、前記基板の他方の主面側において前記第2のデバイスの電極と整合する位置に露呈する他端とを有する改質部を形成する工程A1と、
前記改質部が形成された領域に貫通孔を形成する工程A2と、
前記貫通孔に導体を充填又は成膜して貫通配線を形成する工程A3と、
前記第1のデバイスを前記基板の一方の主面側に配置して前記第1のデバイスの電極を前記貫通配線の一端に位置整合させて接合するとともに、前記第2のデバイスを前記基板の他方の主面側に配置して前記第2のデバイスの電極を前記貫通配線の他端に位置整合させて接合することにより、前記第1のデバイスの複数の電極と前記第2のデバイスの複数の電極とを、複数の前記貫通配線を介して電気的に接続する工程A4とを有し、
前記工程A1は、該複数の前記貫通配線をなす各々の前記貫通孔となる前記改質部に、前記一方の主面及び前記他方の主面のうち少なくとも片方の主面に対して垂直に揃って開口する直線部分を設けるステップと、他の片方の主面に対して傾いて延び、前記直線部分に連結された部分を設けるステップとからなることを特徴とするデバイス実装構造の製造方法。
【請求項2】
前記改質部は、フェムト秒レーザーを用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス実装構造の製造方法。
【請求項3】
前記基板は石英ガラスからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイス実装方法。
【請求項4】
前記工程A3は、前記直線部分と前記傾いて延びる部分とに、前記導体を同時に充填又は成膜することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のデバイス実装構造の製造方法。
【請求項5】
前記工程A1、A2、又はA3の後に、前記直線部分が設けられた側の主面を物理的又は化学的手段を用いて研磨することにより、前記直線部分の範囲において、前記基板の厚みを薄くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のデバイス実装構造の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記基板に対し、前記貫通配線をなす前記貫通孔の他に、冷却用流体の流路として用いられる貫通孔を形成する工程A5を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のデバイス実装構造の製造方法。
【請求項1】
基板に形成された貫通孔に導体を充填又は成膜した貫通配線を有する貫通配線基板を介して、電極配置が互いに異なる第1のデバイスおよび第2のデバイスを各々配置し、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとを電気的に接続するデバイス実装方法であって、
前記基板にレーザー光を照射することにより、前記基板の一方の主面側において前記第1のデバイスの電極と整合する位置に露呈する一端と、前記基板の他方の主面側において前記第2のデバイスの電極と整合する位置に露呈する他端とを有する改質部を形成する工程A1と、
前記改質部が形成された領域に貫通孔を形成する工程A2と、
前記貫通孔に導体を充填又は成膜して貫通配線を形成する工程A3と、
前記第1のデバイスを前記基板の一方の主面側に配置して前記第1のデバイスの電極を前記貫通配線の一端に位置整合させて接合するとともに、前記第2のデバイスを前記基板の他方の主面側に配置して前記第2のデバイスの電極を前記貫通配線の他端に位置整合させて接合することにより、前記第1のデバイスの複数の電極と前記第2のデバイスの複数の電極とを、複数の前記貫通配線を介して電気的に接続する工程A4とを有し、
前記工程A1は、該複数の前記貫通配線をなす各々の前記貫通孔となる前記改質部に、前記一方の主面及び前記他方の主面のうち少なくとも片方の主面に対して垂直に揃って開口する直線部分を設けるステップと、他の片方の主面に対して傾いて延び、前記直線部分に連結された部分を設けるステップとからなることを特徴とするデバイス実装構造の製造方法。
【請求項2】
前記改質部は、フェムト秒レーザーを用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス実装構造の製造方法。
【請求項3】
前記基板は石英ガラスからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイス実装方法。
【請求項4】
前記工程A3は、前記直線部分と前記傾いて延びる部分とに、前記導体を同時に充填又は成膜することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のデバイス実装構造の製造方法。
【請求項5】
前記工程A1、A2、又はA3の後に、前記直線部分が設けられた側の主面を物理的又は化学的手段を用いて研磨することにより、前記直線部分の範囲において、前記基板の厚みを薄くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のデバイス実装構造の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記基板に対し、前記貫通配線をなす前記貫通孔の他に、冷却用流体の流路として用いられる貫通孔を形成する工程A5を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のデバイス実装構造の製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図17】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図17】
【公開番号】特開2012−178611(P2012−178611A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129375(P2012−129375)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2011−518611(P2011−518611)の分割
【原出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2011−518611(P2011−518611)の分割
【原出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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