説明

データ通信システム及び通信端末装置

【課題】 データ通信システム及び通信端末装置に関し、利用者が記憶手段の残記憶容量を把握できない場合でも、ダウンロードによる新規データの保存を可能とする。
【解決手段】 データ送受信手段及びダウンロードしたデータを記憶する記憶部12等の記憶手段を含む移動端末装置等の通信端末装置と、データ伝送を行う上り及び下り回線の回線速度変更が可能のネットワークと、通信端末装置の記憶手段に保持している既存データを、上り回線を介してアップロードにより保存するデータ保存サーバ等のデータ保存手段とを含み、通信端末装置の記憶手段の残記憶容量と上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、ネットワーク側のデータ保存手段に対するアップロードと、ネットワーク側からのダウンロードとによる記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度とするように、回線速度変更要求をネットワーク側に送出する手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介してデータを送受信するデータ通信システム及びデータ送受信機能と、データを記憶する記憶部とを含む構成の通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信システムに於いては、従来の音声通信に加え、非音声通信であるデータ通信の割合が急増し、回線速度の高速化及び転送データの大容量化が進んでいる。特に、移動通信システムに於いて、その進化は著しいものがある。この移動通信システムに於ける移動端末装置の多機能化に伴って、音楽や映像、更には各種アプリケーション等の大容量データを移動端末装置にダウンロードして保存する場合がある。又移動端末装置は、カメラ機能の追加やその高画素化等により、それ自体にて生成及び保存されるデータも大容量化している。このような点から、通信端末装置の記憶部の大容量化が進んでいる。然しながら、通信端末装置の記憶容量には限界があり、特に、移動端末装置に於いては、その携帯性の為に記憶容量は制限されている。従って、新規データを保存する時に、通信端末装置の記憶部の残記憶容量が不足することがしばしば発生する。
【0003】
このような記憶部の保存可能容量が不足する状態となった時、次の何れかの手段を適用することになる。
(a)移動端末装置等の通信端末装置に保存されている既存データに上書きして新規データの保存処理を継続する。
(b)移動端末装置等の通信端末装置に保存されている既存データを保持し、新規データの保存処理については中止する。
【0004】
又新規データを保存する為の記憶部の残記憶容量が不足することが予め判明している場合、次のような手段が考えられる。
(c)移動端末装置等の通信端末装置の記憶部に保存されている既存データを予め削除して、新規データを保存する為の残記憶容量を確保する。
(d)移動端末装置等の通信端末装置の記憶部に保存されている既存データを予め外部記憶装置に待避させて、新規データを保存する為の残記憶容量を確保する。
(e)移動端末装置等の通信端末装置の記憶部に保存されている既存データを予めデータ通信網に接続されたデータ保存サーバに待避させて、新規データを保存する為の残記憶容量を確保する。
なお、移動端末装置の利用者は、移動しながら利用することから、外部記憶装置を所有しない機会が多いものであるから、前記(e)のように、既存データを待避させる外部記憶装置として、データ通信網に位置するデータ保存サーバを利用することが多くなると考えられる。
【0005】
図7は、データ通信システムとして、移動通信システムの概要を示すものであり、移動端末装置101と、基地局102と、データ通信網103と、音声通信網104と、データ保存サーバ111と、データ配信サーバ112とを含む場合を示す。移動端末装置101と基地局102との間は無線回線で接続され、基地局102とデータ通信網103及び音声通信網104との間は有線回線で接続される。無線回線区間は、例えば、周波数分割多重(FDMA)、時分割多重(TDMA)、符号分割多重(CDMA)等の通信方式が適用される。一般に、移動端末装置毎の回線速度は、周波数分割多重では周波数チャネル数、時分割多重ではタイムスロット数、符号分割多重では拡散符号数又は拡散率により決定される。
【0006】
基地局102は、移動端末装置101とデータ通信網103及び音声通信網104との間に位置し、無線信号と有線信号との間の変換及び中継を行うものであり、又無線回線及び有線回線の制御や管理も行うものである。即ち、無線区間の通信方式に従い、移動端末装置101に対して周波数チャネルやタイムスロット更に拡散符号の割当てを行う手段を備えることになる。又データ通信網103ではデータが、音声通信網104では音声がそれぞれ転送される。データ通信網103としては、インターネットやLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)等の各種の伝送方式に従った構成とすることができるものであり、又データ通信網103には、複数の通信端末装置やサーバ等が接続される。データ保存を主な役割とするデータ保存サーバ111や、データ配信を主な役割とするデータ配信サーバ112もデータ通信網103に接続される装置の一つである。
【0007】
図8は、従来の移動端末装置の説明図であり、移動端末装置101は、無線送受信部201、制御部211、記憶部212、マイク部221、スピーカ部222、キー入力部223、画面表示部224を含む構成を有するものであり、カメラ部やラジオ/テレビ受信部を有する移動端末装置も知られている。
【0008】
制御部211は、各部を制御するもので、データ通信網103と音声通信網104により伝送されるデータ及び音声は、基地局102を経由して、無線送受信部201により受信される。又受信された音声はスピーカ部222から出力され、又データは記憶部212に保存される。又マイク部221から入力される音声は、無線送受信部201から無線信号として音声通信網104に送信される。同様に、記憶部212に保存されている既存データは、画面表示部224に表示又はデータ通信網103を介して例えばデータ保存サーバ111に送信することができる。
【0009】
図9は、図8に於ける画面表示部224の表示内容の説明図であり、移動端末装置が待受け状態の時、利用者は、キー入力部223及び画面表示部224を使用して、新規データ及び既存データに対する設定を行うことができる。即ち、新規データ設定画面302は、待受け画面301から移行する。この新規データ設定画面302では、新規データの保存途中に残記憶容量が不足した場合、保存される既存データに上書きして新規データの保存を継続するか否かの設定を行うことができる。即ち、上書きOFFかONかを設定し、確定を選択する。
【0010】
一方、保存データ一覧画面321は、待受け画面301より移行し、保存される既存データを選択すると、そのデータに対する各設定を行うことができる。例えば、待避先設定画面323では、既存データの待避先となるデータ通信網103に接続されているデータ保存サーバ111(図7参照)を指定することができる。この時、データ保存サーバ111に対するアカウントやパスワードを設定する方式とすることもできる。又この待避先は、全ての既存データに対して共通とすることもできる。一方、保護設定画面324は、新規データの保存を継続する為に、保存されている既存データに対して上書きする時に、そのデータを保護するか否かの設定を行うことができる。これらの設定は、記憶部212に保持される。
【0011】
移動端末装置に保存される既存データに対して上書きして新規データの保存を継続する場合、利用者は、新規データ設定画面302に於いて、上書きONにより、その設定を有効にする。又保護設定画面324に於いて、上書きされたくない既存データを、保護ONの設定を行うと、新規データの保存途中に残記憶容量が不足した場合、移動端末装置に保存されているそれ以外の既存データは上書きされ、新規データの保存は継続される。又全ての既存データを保護する設定の場合、新規データの保存途中に残記憶容量が不足すると、新規データの保存は中止される。又保護されない複数の既存データが存在し、新規データの保存途中に残記憶容量が不足する時、最も古くに生成されたデータや最もアクセス頻度の少ないデータ、更に最も古くにアクセスされたデータ等が選択され上書きされるように設定することも可能である。この選択は、利用者が設定を行うことができるようにしても、又予め移動端末装置にて設定されてもよい。
【0012】
又移動端末装置に保存される既存データを、予めデータ通信網103に位置するデータ保存サーバ111に待避させる時、利用者は、保存データ一覧画面321により、待避したい既存データを選択する。次に、待避先設定画面323により、待避先となるデータ保存サーバ111を指定する。そして、保存データ設定画面322により、待避を選択すると、呼接続が行われる。呼接続が完了すると、選択された既存データが待避先として指定したデータ保存サーバ111にアップロードされる。
【0013】
又移動端末装置から通信速度とコンテンツとをサーバに対してデータ通信網を介して要求することにより、サーバに於いて保存しているコンテンツを、要求内容に従って選択して、要求された通信速度で移動端末装置に送信するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−236641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述の例えば図7に示す通信システムに於いて、外部記憶装置を所有しない利用者は、通信端末装置としての移動端末装置101に保存される既存データを、予めデータ通信網103に接続されているデータ保存サーバ111に待避させ、新規データを保存する為の残記憶容量を確保することができる。然しながら、新規データ量が不明な場合、移動端末装置101の記憶部の残記憶容量を予め確保しておくことは困難である。又上下回線速度が異なる通信システムの場合は、ダウンロードによる新規データの保存途中に、アップロードにより既存データを待避させようとしても、上り回線速度が下り回線速度より遅い場合、移動端末装置101の記憶部の残記憶容量が減少し続け、新規データの保存が中止される状態となる問題がある。
【0015】
又移動端末装置からダウンロードの速度を指定する前述の従来例に於いても、データを保存する記憶部の残記憶容量を利用者が把握できない場合は、アップロードによりデータを待避させて、残記憶容量を確保することが実際上困難である問題がある。
【0016】
本発明は、前述の従来例の問題点を解決するものであり、利用者が記憶手段の残記憶容量を把握できない場合でも、ダウンロードによる新規データの保存を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のデータ通信システムは、データ送受信手段及びダウンロードしたデータを記憶する記憶手段を含む通信端末装置と、この通信端末装置と接続されてデータ伝送を行う上り回線及び下り回線との回線速度変更が可能のネットワークと、通信端末装置のデータの記憶手段に保持している既存データを、上り回線を介してアップロードにより保存するデータ保存手段とを含む通信システムに於いて、通信端末装置は、記憶手段の残記憶容量と上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、記憶手段からデータ保存手段に対する上り回線を介したアップロードと、記憶手段に対する下り回線を介したダウンロードとによる記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度とするように、回線速度変更要求をネットワーク側に送出する手段を備えている。
【0018】
又データ通信システムの通信端末装置は、記憶手段の残記憶容量と上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、記憶手段からデータ保存手段に対する上り回線を介したアップロードと、記憶手段に対する下り回線を介したダウンロードとによる記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度を求めて、その回線速度の情報を含む回線速度変更要求をネットワーク側へ送出する手段を備えることができる。
【0019】
又データ通信システムの通信端末装置にダウンロードする新規データ量をネットワーク側から通知し、通信端末装置は、記憶手段の残記憶容量と新規データ量と上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、記憶手段からデータ保存手段に対する上り回線を介したアップロードと、記憶手段に対する下り回線を介したダウンロードとによる記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度とするように、ネットワーク側に回線速度変更要求を送出する手段を備えることができる。
【0020】
又本発明の通信端末装置は、ネットワーク側から下り回線を介してダウンロードしたデータを記憶手段に保持し、且つ記憶手段に保持したデータをネットワーク側へ上り回線を介してアップロードする手段を含む通信端末装置に於いて、記憶手段の残記憶容量を管理する記憶容量管理部と、この記億容量管理部による残記憶容量と上り回線及び下り回線の回線速度を管理する回線速度管理部と、記憶容量管理部による残記憶容量と回線速度とを基に回線速度の変更の要否を判定し、回線速度変更が必要な場合に、ネットワーク側へ回線速度変更要求を送出する制御を行う制御部とを備えている。
【0021】
又通信端末装置の回線速度管理部は、記憶手段の残記憶容量と現在の回線速度と変更要求する回線速度とを対応させた管理テーブルを有し、制御部は、管理テーブルを基にネットワーク側への回線速度変更要求に新たな回線速度の情報を付加して、ネットワーク側へ送出する制御を行う構成を有するものである。
【発明の効果】
【0022】
回線速度を変更可能としたデータ通信システムに於いて、ダウンロードによる新規データの保存及びアップロードによる既存データの待避を同時に行うことができる。即ち、通信端末装置の記憶手段の残記憶容量の不足による新規データの保存の中止を回避でき、利用者の無駄なデータ通信料金を削減することができる。又以前に通信端末装置に保存された有料の既存データを廃棄することがなくなる。更に、利用者が通信端末の残記憶容量を予め確保する手間を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のデータ通信システムは、図1を参照して説明すると、データ送受信部1等によるデータ送受信手段及びダウンロードしたデータを記憶する記憶部12等の記憶手段を含む移動端末装置等の通信端末装置と、この通信端末装置と接続されてデータ伝送を行う上り回線及び下り回線との回線速度変更が可能のデータ通信網等のネットワークと、通信端末装置のデータの記憶手段に保持している既存データを、上り回線を介してアップロードにより保存するデータ保存サーバ等のデータ保存手段とを含む通信システムに於いて、通信端末装置は、記憶手段の残記憶容量と上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、記憶手段からデータ保存サーバ等のデータ保存手段に対する上り回線を介したアップロードと、記憶手段に対する下り回線を介したダウンロードとによる記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度とするように、回線速度変更要求をデータ通信網等のネットワーク側に送出する手段を備えている。
【0024】
又本発明の通信端末装置は、データ通信網等のネットワーク側から下り回線を介してダウンロードしたデータを記憶部12等の記憶手段に保持し、且つこの記憶手段に保持したデータをネットワーク側のデータ保存サーバ等のデータ保存手段へ上り回線を介してアップロードする手段を含む通信端末装置に於いて、記憶手段の残記憶容量を管理する記憶容量管理部31と、この記億容量管理部31による残記憶容量と上り回線及び下り回線の回線速度を管理する回線速度管理部41と、記憶容量管理部による残記憶容量と回線速度とを基に回線速度の変更の要否を判定し、回線速度変更が必要な場合に、ネットワーク側へ回線速度変更要求を送出する制御を行う制御部11とを備えている。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1の通信端末装置としての移動端末装置の説明図であり、1はデータ送受信部、11は制御部、12は記憶手段としての記憶部、21はマイク部、22はスピーカ部、23はキー入力部、24は画面表示部、31は記憶容量管理部、41は回線速度管理部を示す。又32は記憶容量管理部31に於ける記憶部12の領域番号と残記憶容量とのテーブルを示し、42は回線速度管理部41の管理テーブルを示す。この管理テーブル42は、記憶容量管理部31のテーブル32の内容に対応して、現在の下り回線速度(現)と上り回線速度(現)と、変更する場合の新規の下り回線速度(新)と上り回線速度(新)とを示すものである。
【0026】
通常、現在の下り回線速度が速い程、記憶部12の残記憶容量が減少する速度も速い為、記憶容量管理部31は、回線速度管理部41に通知を行う閾値となる残記憶容量も大きい値とする。又新規の回線速度に於いて、上り回線速度は下り回線速度より速くする場合を示している。即ち、ネットワーク側のデータ保存手段として、例えば、図7に示すデータ保存サーバに対する上り回線速度を大きくして、記憶部12の残記憶容量が閾値以上に増加しないようにする場合を示している。
【0027】
図2は、画面表示部24(図1参照)の表示内容の説明図であり、501は待受け画面を示し、この待受け画面501から例えばキー入力部22による新規データ設定選択入力により、新規データ設定画面511に移行し、新規データの保存途中に、記憶部12(図1参照)の残記憶容量が不足した場合、保存された既存データに対して上書きして新規データの保存を継続するか否かの設定、更に保存された既存データをデータ通信網に接続されたデータ保存サーバに、自動待避を選択するか否かの設定を行うことができる。
【0028】
保存された既存データを、例えば、図7に示すデータ通信網等のネットワーク側に接続されたデータ保存手段としてのデータ保存サーバに、自動で待避する設定を有効にすると、保存されている既存データに対して、上書きにより新規データの保存を継続するか否かの設定は不要であるが、ある要因により既存データをデータ保存サーバに待避することができない時、その設定は必要となる。なお、データ保存サーバへの待避は移動端末装置が自動的にて行うことができるが、利用者が手動により行うこともできる。これらの設定は、記憶部12に保持される。又既存データを待避させる為に、データ保存サーバ以外に、類似したネットワーク側の既存データの保存手段を用いることも可能である。
【0029】
又保存データ一覧画面521と、保存データ設定画面522と、待避先設定画面523と、保護設定画面524とは、前述の従来例の図9に示す画面内容と同様な表示画面とすることができるもので、移動端末装置に保存された既存データを、データ通信網等のネットワーク側に接続されたデータ保存サーバに待避させる時、利用者は、保存データ一覧画面521により、データ名と保護のON,OFFを選択して設定する。又待避先設定画面523により、待避先アドレス、待避先アカウント、待避先パスワード等を選択入力し、待避先となるデータ保存サーバを指定する。又保存データ設定画面522により、待避を選択すると、呼接続が行われる。呼接続が完了すると、選択された既存データが待避先として指定したデータ保存サーバ111に上り回線を介してアップロードされる。その場合の保護設定画面523により保護の要否を設定することができる。
【0030】
図3は、本発明の実施例1のシーケンス説明図であり、データ通信システムに於ける移動端末と、基地局と、データ配信サーバと、データ保存サーバとについて示し、移動端末は、データ通信システムを示す図7の移動端末装置101に対応し、基地局はデータ通信網103に接続した基地局102に対応し、データ配信サーバ及びデータ保存サーバは、データ通信網103に接続したデータ配信サーバ112及びデータ保存サーバ111に対応する。
【0031】
ネットワーク側のデータ配信サーバから下り回線を介してダウンロードする新規データの保存途中に、ネットワーク側のデータ保存サーバに上り回線を介してアップロードによって既存データを待避させる場合、利用者は、新規データ設定画面511(図2参照)により、待避により保存する既存データの自動待避をONに設定し、待避先設定画面522により、待避先となるデータ保存サーバを設定する。この時に、データ保存サーバに対するアカウントやパスワードの設定を行う手順を設けることも可能である。又保護設定画面524により、待避させたくない既存データを指定し、且つ保護の設定を行うこともできる。
【0032】
そして、利用者は、ネットワーク側のデータ配信サーバからデータをダウンロードする為の操作を行う。それにより、移動端末とデータ配信サーバとの間は、基地局及び図示を省略しているデータ通信網を介して接続される。この場合のデータ通信網は、上り回線と下り回線との回線速度をそれぞれ設定可能のシステム構成を有するものであり、例えば、上り回線速度<下り回線速度として示すように、上り回線速度より下り回線速度が高い状態に於いて、移動端末からデータ配信サーバにダウンロード開始要求を行い、それに対応してデータ配信サーバからダウンロード開始応答があり、下り回線を介してダウンロードが開始され、移動端末に新規データの保存が開始される。この場合のダウンロード開始応答に、新規データ量の情報を含ませることもできる。
【0033】
移動端末は、記憶容量管理部31(図1参照)による残記憶容量の検出と、この残記憶容量の検出結果に対応して、回線速度管理部41による回線速度の変更の要否の判定、又は制御部11による判定を行い、記憶部12の残記憶容量が閾値以下となった場合に、保存される既存データの待避処理を行うと共に、回線速度変更が必要と判定する。このように、回線速度変更が必要となった場合には、ネットワーク側の基地局に、回線速度変更要求をデータ送受信部1から送信する。この実施例1に於いては、回線速度変更要求に、要求回線速度の情報を含めない場合であり、基地局は、移動端末からの回線速度変更要求により、管理している現在の上り回線速度に対して、下り回線速度と同一又は高速になるように、上り回線のみ、又は下り回線のみ、又は上下回線の何れかの回線速度変更を行った回線速度情報を含む回線速度変更指示を移動端末に送信する。
【0034】
移動端末は、この回線速度変更指示を受信すると、それに対する応答を基地局に送信し、この応答に対する基地局からの回線速度変更完了通知により、上り回線速度≧下り回線速度の回線速度の関係に設定され、移動端末は、記憶部12に保存している既存データのネットワーク側の保存先の例えばデータ保存サーバに対してアップロード開始要求を行い、それに対する応答を受信すると、アップロードを開始する。従って、既存データのアップロードの速度を、ダウンロードの速度と同一又は高速とすることにより、新規データを保存する記憶部12の残記憶容量は、少なくとも減少することがなくなり、確実に新規データのダウンロードの継続が可能となる。このアップロードを行う既存データの指定や、新規データにより上書きしてもよい既存データの指定等については、図2の画面表示内容に従った操作により実施することができる。
【実施例2】
【0035】
図4は、本発明の実施例2のシーケンス説明図であり、図3に示す実施例1のシーケンスと類似したものであり、移動端末からネットワーク側の基地局に回線速度変更要求を送信する時に、移動端末の回線速度管理部41に於いて管理テーブル42を参照し、残記憶容量と現在の回線速度との関係に基づいて判定した回線速度情報を含めるものである。基地局は、移動端末からの回線速度変更要求に付加されている要求回線速度の情報を基に、その要求回線速度に変更することが可能か否かを判定し、可能の場合は、新規回線速度の決定を行い、移動端末に、回線速度変更指示を送信し、移動端末は、回線速度変更応答を基地局に送信し、基地局は、上り回線速度<下り回線速度の関係を、上り回線速度≧下り回線速度の関係となる回線速度変更の処理を行って、移動端末に対して回線速度変更完了を通知する。
【0036】
移動端末は、この回線速度変更完了の通知に従って、ネットワーク側のデータ保存サーバにアップロード開始要求を行い、それに対する応答受信により、既存データを、上り回線を介して、データ保存サーバにアップロードして待避させ、ネットワーク側のデータ配信サーバから下り回線を介してダウンロードした新規データを保存する為の記憶部12の残記憶容量を確保することができる。
【実施例3】
【0037】
図5は、本発明の実施例3のシーケンス説明図であり、図3及び図4に示す実施例1,2と類似したシーケンスを示すものであるが、この実施例3は、移動端末からのネットワーク側へのダウンロード開始要求に対して、ネットワーク側のデータ配信サーバからのダウンロード開始応答に、新規データのデータ量の情報を含む場合について示すものである。それにより、移動端末は、ダウンロードする新規データのデータ量を認識できるから、回線速度管理部41(図1参照)は、記憶容量管理部31により管理する記憶部12の残記憶容量の検出結果と、現在の回線速度とを基に、新規データのダウンロードがそのまま実行できるか否か、又はダウンロードの過程に於いて、上書き可能の領域を含む残記憶容量の不足が発生するか否かを容易に判定することができる。
【0038】
残記憶容量の不足が発生すると判定すると、回線速度変更要求をネットワーク側の基地局に送信し、基地局は、管理している回線速度を基に、移動端末に対して割当てることが可能の回線速度を選択して、基地局から移動端末に対して、変更する回線速度の情報を含む回線速度変更指示を送信する。移動端末は、回線速度変更応答を基地局に送信し、これに対する基地局からの回線速度変更完了を受信すると、回線速度を変更して、ネットワーク側のデータ保存サーバに対してアップロード開始要求を送信し、その応答を受信することにより、記憶部12から既存データのアップロードを開始して、少なくとも記憶部12の残記憶容量を新規データのダウンロードに確保することができる。
【実施例4】
【0039】
図6は、本発明の実施例4のシーケンス説明図であり、図3〜図5に示すシーケンスと基本的には類似したシーケンスを示す。この実施例は、移動端末に対するネットワーク側のデータ配信サーバからのダウンロード開始応答に、新規データのデータ量の情報を含め、又移動端末がネットワーク側のデータ配信サーバから新規データのダウンロード過程で、記憶容量管理部31により記憶部12の残記憶容量を検出し、回線速度管理部41により管理テーブル42を参照して、回線速度管理部41又は制御部22に於いて回線速度の変更の要否を判定し、回線速度の変更が必要な場合は、管理テーブル42を参照して変更後の回線速度を求めて、この変更後の回線速度の情報を含む回線速度変更要求を、ネットワーク側の基地局に送信する。
【0040】
基地局は、移動端末からの回線速度変更要求に付加されている要求回線速度の情報を基に、その要求回線速度に変更することが可能か否かを判定し、不可能の場合は、その旨を移動端末に通知し、又可能の場合は、新規回線速度の変更決定を行い、移動端末に、回線速度変更指示を送信し、移動端末は、回線速度変更応答を基地局に送信し、基地局は、上り回線速度<下り回線速度の関係を、例えば、上り回線速度≧下り回線速度の関係となる回線速度変更の処理を行って、移動端末に対して回線速度変更完了を通知する。
【0041】
移動端末は、この回線速度変更完了の通知に従って、ネットワーク側のデータ保存サーバにアップロード開始要求を行い、それに対する応答受信により、既存データを、ネットワーク側のデータ保存サーバに、上り回線を介してアップロードすることにより待避させ、ネットワーク側のデータ配信サーバから下り回線を介してダウンロードした新規データを保存する為の記憶部12の残記憶容量を確保することができる。
【0042】
前述の各実施例に於ける回線速度変更要求、回線速度変更指示、回線変更応答及び回線速度変更完了については、例えば、3GPP(3rd Generation Partnership Project)による“Modify PDP Context Request”、“Radio Bearer/Transport Channel/Physical Channel Reconfiguration”,“Radio Bearer/Transport Channel/Physical Channel Reconfiguration Complete”及び“Modify PDP Context Accept”等のメッセージを用いることができる。
【0043】
又移動端末装置を用いるデータ通信システムについて説明したが、データ通信網等のネットワークと有線回線で接続された通信端末装置を用いるデータ通信システムにも適用することが可能であり、又データの記憶手段としての記憶部に保持している既存データの待避先としては、データ保存サーバ以外のネットワーク側の各種のデータ保存手段を適用することも可能である。又回線速度変更に伴って、例えば、ネットワーク側のデータ配信サーバに対しても回線速度変更通知を行って、通信端末装置に対するダウンロードのデータ伝送速度を変更する手段を適用することも可能である。
【0044】
(付記1)データ送受信手段及びダウンロードしたデータを記憶する記憶手段を含む通信端末装置と、該通信端末装置と接続されてデータ伝送を行う上り回線及び下り回線との回線速度変更が可能のネットワークと、前記通信端末装置のデータの記憶手段に保持している既存データを、前記上り回線を介してアップロードにより保存するデータ保存手段とを含む通信システムに於いて、前記通信端末装置は、前記記憶手段の残記憶容量と前記上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、前記記憶手段から前記データ保存手段に対する前記上り回線を介したアップロードと、前記記憶手段に対する前記下り回線を介したダウンロードとによる前記記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度とするように、回線速度変更要求を前記ネットワーク側に送出する手段を備えたことを特徴とするデータ通信システム。
【0045】
(付記2)前記データ通信システムの前記通信端末装置は、前記記憶手段の残記憶容量と前記上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、前記記憶手段から前記データ保存手段に対する前記上り回線を介したアップロードと、前記記憶手段に対する前記下り回線を介したダウンロードとによる前記記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度を求め、該回線速度の情報を含む回線速度変更要求を前記ネットワーク側に送出する手段を備えたことを特徴とする付記1記載のデータ通信システム。
(付記3)前記データ通信システムの通信端末装置にダウンロードする新規データ量を前記ネットワーク側から通知し、該通信端末装置は、前記記憶手段の残記憶容量と前記新規データ量と前記上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、前記記憶手段から前記データ保存手段に対する前記上り回線を介したアップロードと、前記記憶手段に対する前記下り回線を介したダウンロードとによる前記記憶手段の残記憶容量を確保するように、前記ネットワーク側に回線速度変更要求を送出する手段を備えたことを特徴とする付記1記載のデータ通信システム。
(付記4)前記データ通信システムの通信端末装置にダウンロードする新規データ量を前記ネットワーク側から通知し、該通信端末装置は、前記記憶手段の残記憶容量と前記新規データ量と前記上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、前記記憶手段から前記データ保存手段に対する前記上り回線を介したアップロードと、前記記憶手段に対する前記下り回線を介したダウンロードとによる前記記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度を求め、該回線速度の情報を含む回線速度変更要求を前記ネットワーク側へ送出する手段を備えたことを特徴とする付記1記載のデータ通信システム。
【0046】
(付記5)ネットワーク側から下り回線を介してダウンロードしたデータを記憶手段に保持し、且つ該記憶手段に保持したデータを前記ネットワーク側へ上り回線を介してアップロードする手段を含む通信端末装置に於いて、前記記憶手段の残記憶容量を管理する記憶容量管理部と、該記億容量管理部による前記残記憶容量と前記上り回線及び前記下り回線の回線速度を管理する回線速度管理部と、前記記憶容量管理部による前記残記憶容量と前記回線速度とを基に回線速度の変更の要否を判定し、回線速度変更が必要な場合に前記ネットワーク側へ回線速度変更要求を送出する制御を行う制御部とを備えたことを特徴とする通信端末装置。
【0047】
(付記6)前記回線速度管理部は、前記記憶手段の残記憶容量と現在の回線速度と変更要求する回線速度とを対応させた管理テーブルを有し、前記制御部は、前記管理テーブルを基に前記ネットワーク側への回線速度変更要求に新たな回線速度の情報を付加して前記ネットワーク側へ送出する制御を行う構成を有することを特徴とする付記5記載の通信端末装置。
(付記7)前記回線速度管理部は、前記記憶手段の残記憶容量と現在の回線速度と変更要求する回線速度とを対応させた管理テーブルを有し、前記制御部は、前記ネットワーク側からダウンロードする新規データ量と前記管理テーブルとを基に、前記記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度求め、該回線速度の情報を含む回線速度変更要求を前記ネットワーク側へ送出する制御構成を有することを特徴とする付記5記載の通信端末装置。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1の移動端末装置の説明図である。
【図2】本発明の実施例1の画面表示内容の説明図である。
【図3】本発明の実施例1のシーケンス説明図である。
【図4】本発明の実施例2のシーケンス説明図である。
【図5】本発明の実施例3のシーケンス説明図である。
【図6】本発明の実施例4のシーケンス説明図である。
【図7】移動通信システムの説明図である。
【図8】従来の移動端末装置の説明図である。
【図9】従来の移動端末装置の画面表示内容の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 データ送受信部
11 制御部
12 記憶部
21 マイク部
22 スピーカ部
23 キー入力部
24 画面表示部
31 記憶容量管理部
32 テーブル
41 回線速度管理部
42 管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ送受信手段及びダウンロードしたデータを記憶する記憶手段を含む通信端末装置と、該通信端末装置と接続されてデータ伝送を行う上り回線及び下り回線との回線速度変更が可能のネットワークと、前記通信端末装置のデータの記憶手段に保持している既存データを、前記上り回線を介してアップロードにより保存するデータ保存手段とを含む通信システムに於いて、
前記通信端末装置は、前記記憶手段の残記憶容量と前記上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、前記記憶手段から前記データ保存手段に対する前記上り回線を介したアップロードと、前記記憶手段に対する前記下り回線を介したダウンロードとによる前記記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度とするように、回線速度変更要求を前記ネットワーク側に送出する手段を備えた
ことを特徴とするデータ通信システム。
【請求項2】
前記データ通信システムの前記通信端末装置は、前記記憶手段の残記憶容量と前記上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、前記記憶手段から前記データ保存手段に対する前記上り回線を介したアップロードと、前記記憶手段に対する前記下り回線を介したダウンロードとによる前記記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度を求め、該回線速度の情報を含む回線速度変更要求を前記ネットワーク側へ送出する手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のデータ通信システム。
【請求項3】
前記データ通信システムの通信端末装置にダウンロードする新規データ量を前記ネットワーク側から通知し、該通信端末装置は、前記記憶手段の残記憶容量と前記新規データ量と前記上り回線及び下り回線の回線速度とを基に、前記記憶手段から前記データ保存手段に対する前記上り回線を介したアップロードと、前記記憶手段に対する前記下り回線を介したダウンロードとによる前記記憶手段の残記憶容量を確保する回線速度とするように、前記ネットワーク側に回線速度変更要求を送出する手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のデータ通信システム。
【請求項4】
ネットワーク側から下り回線を介してダウンロードしたデータを記憶手段に保持し、且つ該記憶手段に保持したデータを前記ネットワーク側へ上り回線を介してアップロードする手段を含む通信端末装置に於いて、
前記記憶手段の残記憶容量を管理する記憶容量管理部と、
該記億容量管理部による前記残記憶容量と前記上り回線及び前記下り回線の回線速度を管理する回線速度管理部と、
前記記憶容量管理部による前記残記憶容量と前記回線速度とを基に回線速度の変更の要否を判定し、回線速度変更が必要な場合に前記ネットワーク側へ回線速度変更要求を送出する制御を行う制御部と
を備えたことを特徴とする通信端末装置。
【請求項5】
前記回線速度管理部は、前記記憶手段の残記憶容量と現在の回線速度と変更要求する回線速度とを対応させた管理テーブルを有し、前記制御部は、前記管理テーブルを基に前記ネットワーク側への回線速度変更要求に新たな回線速度の情報を付加して前記ネットワーク側へ送出する制御を行う構成を有することを特徴とする請求項4記載の通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−165721(P2006−165721A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350638(P2004−350638)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】