説明

トナー搬送量制御装置

【課題】
撹拌部材の回転によって現像室へトナーを送り込み過ぎると、現像室内でトナーが凝固(パッキング)してしまい、現像室内の現像ローラへトナーが供給されにくくなる。一方、トナーの送り込みが不足すると現像室の現像ローラへのトナー供給不足が起こり、何れの場合も画像濃度が低下する可能性がある。
【解決手段】
トナー収容室と現像室の間に存在する境界部にコイル形状の導線を設けて電流を流しトナー収容室から現像室に向かう磁界を発生させる。その磁界により固定攪拌速度の撹拌部材によるトナー室から現像室へのトナー搬送力に磁界拘束力を与えトナー室から現像室へのトナー搬送量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー収納室から現像室へトナーを供給するためのトナー撹拌部を備える現像装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
現像装置としては、現像剤であるトナーを内包したトナー室と、現像剤担持体としての現像ローラにトナーを供給する現像室と、現像剤層厚規制部材としての現像ブレードとで構成されるものが実用化されている。そして、この現像装置には、トナー収納室に封入されているトナーを現像室へ搬送するための撹拌部材が設けられている。この撹拌部材は、撹拌軸と撹拌シートで構成されており、回転しながらトナー収納室のトナーを撹拌してトナー収納室と現像室の間の境界部を通過させて現像室内の現像ローラの方向へ搬送する。トナー収納室から現像室へ搬送するトナーの搬送量を調整する機構として撹拌部材を別駆動にて攪拌速度を可変する技術も存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に撹拌部材の回転によって現像室へトナーを送り込み過ぎると、現像室内でトナーが凝固(パッキング)してしまい、現像室内の現像ローラへトナーが供給されにくくなる。
一方、トナーの送り込みが不足すると現像室の現像ローラへのトナー供給不足が起こり、何れの場合も画像濃度が低下する可能性があることが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、磁性トナーを攪拌搬送するトナー攪拌部材有し、磁性トナーを収容するトナー収容室と、搬送される前記磁性トナーを受け、トナー現像を行う現像室を備えた現像装置において、
前記トナー収容室と前記現像室との境界部に前記トナー収容室から前記現像室に向かう磁界を発生させ、前記トナー収容室から前記現像室へ搬送された磁性トナーに磁界拘束力を与える磁界発生装置を備え、前記磁力発生装置により前記磁性トナーの搬送を制御することを特徴とする現像装置。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載の現像装置において、前記コイル形状の導線に流す電流量の変化が前記磁界拘束力を可変させることを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1,2に記載の現像装置において、前記コイル形状の導線に流す電流量は、現像装置内の残磁性トナー量と湿度とにより変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、現像装置内のトナー送り量を固定回転速度で変化させない攪拌機構の元に磁界の強さによる拘束力だけで制御したため、簡単な攪拌ギア構成でどのような使用環境下でもトナー循環が滞ることなく画像濃度の低下を防止し、安定的に高画質の画像を出力することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0009】
先ず、本実施例における画像形成装置1とプロセスカートリッジ2の全体構成を図1及び図2に基づいて説明する。尚、図1はプロセスカートリッジ2を装着した画像形成装置1の全体構成を示す断面図、図2はプロセスカートリッジ2の断面図である。
【0010】
図1に示す画像形成装置1は、露光装置3から画像情報に応じたレーザー光をプロセスカートリッジ2に設けられた像担持体である感光体ドラム(以下、感光体ドラム)4に照射して潜像を形成し、この潜像に現像してトナー像を形成するものである。
【0011】
画像形成プロセスにおいては、トナー像の形成と同期して記録材Pを給紙カセット5から給紙ローラ6、搬送ローラ7等から成る搬送手段によって搬送し、前記感光体ドラム4に形成されたトナー像を転写手段としての転写ローラ8に電圧を印加することによって記録材Pに転写する。
【0012】
そして、感光体ドラム4からトナー像の転写を受けた記録材Pを不図示のガイド板でガイドしながら定着手段9へ搬送する。ここで、定着手段9はヒータを内蔵しており、記録材Pに熱及び圧力を印加して転写トナー像を記録材Pに定着する。この定着手段9によってトナー像の定着を受けた記録材Pは、排出ローラ10によって搬送されて排出トレイ11へ排出される。
【0013】
一方、図2に示す前記プロセスカートリッジ2は、ドラムユニット12と現像装置13とに分離可能である。ドラムユニット12は感光体ドラム4と帯電ローラ14、クリーニングブレード15、廃トナーボックス16とによって構成される。
【0014】
現像装置13はトナーを内蔵するトナー収納室17と現像ローラ18を内蔵した現像室19とによって構成され、現像ローラ18には現像ブレード20が当接されている。
【0015】
現像装置13のトナー収納室17にはトナーTを現像室19へ搬送するトナー攪拌部材21が設けられており、トナーTをトナー攪拌部材21によって現像室19に搬送し、この現像室19に設けた固定磁石22を内蔵した現像ローラ18を回転させるとともに、現像ブレード20によって摩擦帯電電荷を付与したトナー層を現像ローラ18の表面に形成する。
【0016】
そしてトナーTを感光体ドラム4上の帯電ローラ14による帯電と露光装置3からの画像情報に応じたレーザー光により形成された潜像に現像してトナー像を形成する。
【0017】
そして現像に寄与されなかった現像室19内のトナーTの一部が現像室攪拌部材24によりトナー収納室17へ搬送される。トナー収納室17と現像室19間のトナー流動がトナー収納室17、現像室19間の境界部25を介して行なわれる。
【0018】
また現像装置13内のトナーTの残量を検知する手段として図示していない現像室19内に長手方向に設けた導電性棒状部材に誘起される電流値で検知する静電容量方式を採用する。(特開昭63-210870参照)
【0019】
又、転写ローラ8に前記トナー像と逆極性の電圧を印加してトナー像を記録材Pに転写した後は、ドラムユニット12内のクリーニングブレード15によって感光体ドラム4に残留したトナーTを掻き落とす。
【0020】
尚、この掻き落とされたトナーTは廃トナーボックス16へ集められて回収される。上記画像形成プロセスにおいて温湿度センサ23を画像形成装置に取り付け画像形成使用時の温湿度により転写ローラ8に印加する電圧等の画像形成プロセス条件を可変する。
【0021】
次に、現像ローラ18と現像ブレード20の構成について説明する。
【0022】
上記現像ローラ18はアルミニウム合金やステンレス鋼等のパイプで構成された非磁性スリーブであり、その内部には、複数の磁極が形成された固定磁石22が配設されており、この現像ローラ18は現像室19内の側壁に回動可能に支持されている。
【0023】
尚、現像ローラ18の表面は、所望量のトナーTが搬送できるように適切な表面粗さに加工されている。
【0024】
又、前記現像ブレード20は、現像ローラ18の表面上のトナー層厚規制を行うため、例えばウレタンゴムやシリコーンゴム等の弾性部材を支持板金に固定して構成されており、これは現像ローラ18に対して所定の圧力で当接されている。
【0025】
而して、固定磁石22の磁力によって現像ローラ18に引き付けられたトナーTは、現像ローラ18と現像ブレード20との間での摺擦によって摩擦帯電及び層厚規制され、適切な電荷を与えられて現像領域へと搬送される。
【0026】
図3は従来技術による現像装置13内のトナー循環を模した図である。トナー循環、つまりトナー収納室17から現像室19へのトナー搬送量と現像室19からトナー収納室17への搬送量を適切にするためにトナー攪拌部材21、現像室攪拌部材24の攪拌速度、攪拌位置、攪拌シート構成、境界部25幅、位置等を最適設定している。
【0027】
しかし現像装置13内のトナーTの量が多い時、さらには高湿環境下で上記画像形成装置1が使用された時にはトナーTの凝集度が高くなり現像室19内領域Dのトナー流動性が悪くなってしまう。
【0028】
領域Dのトナー流動性が悪くなっている事、トナー収納室17のトナーTも凝集気味になっている為にトナー攪拌部材21での現像室19へのトナー搬送量が多くなってしまう事等の理由により現像室19内領域DのトナーTは凝固(以後パッキング)してしまう。
【0029】
パッキングを起こすと現像ローラ18と現像ブレード20とのニップ間にトナーTを供給できず現像領域での現像ローラ18上のトナーTのコート層が薄くなり画像濃度が薄くなってしまう。
【0030】
逆にトナーTの量が少ない時、さらには低湿環境下で上記画像形成装置1が使用された時にはトナーTの凝集度が低くなり現像室19領域Dのトナーの流動性が良くなる。
【0031】
領域Dのトナー流動性が良い事、トナー収納室17内のトナーTの凝集度が低い為にトナー攪拌部材21とトナー収納室17壁の隙間からトナーTが逃げ易くなる等の理由によりトナー収納室17から現像室19へのトナー搬送量が低下する。
【0032】
現像室19へのトナー搬送量が低下し、現像ローラ18から感光体ドラム4へのトナー消費量と現像ローラ18と現像ブレード20ニップへのトナー供給量のバランスが崩れると現像領域での現像ローラ18上のトナーTのコート層が薄くなり画像濃度が薄くなってしまう。
【0033】
図4は本実施例における現像装置13内の構成と現像装置13内のトナー循環を模した図である。基本的な構成は従来技術の構成と同じであるが本実施例では境界部25にコイル状導線部材(以後磁界発生装置)26を境界部25に沿って配置する。図5は境界部25の斜視図である。
【0034】
現像ローラ18側から境界部25を見た図である。図5ではまだ磁界発生装置26を設置していない状態である。
【0035】
本実施例の境界部25の境界構成は縦(h)10mm、横(l)200mm、幅(w)5mmの境界壁に板金Bを設けて、プロセスカートリッジ2を画像形成装置1に挿入時に板金Bは画像形成装置1に設けてある接点バネB'と接触する構成となっている。
【0036】
接点バネB'は画像形成装置1内の高圧電源27から電流Iが供給される。高圧電源27から出力される電流Iは可変可能である。
【0037】
また板金Bが設置されている境界部25壁と対面する境界部25壁に板金Cを設ける。板金Cもプロセスカートリッジ2を画像形成装置1に挿入時に画像形成装置1に設けてある接点バネC'と接触する構成となっている。接点バネC'は画像形成装置1のアース接点に接続されている。
【0038】
図6は図5のS部分を拡大した図である。境界部25には幅(e)4mm、深さ(d)1mmの溝が境界部25全域に設けてある。この溝は磁界発生装置26の挿入溝28として設けてある。
【0039】
図7は磁界発生装置26の構成を示した図である。直径1mm,の導電性部材を縦(h’)10mm、横(l’)200mm、幅(w’)4mmになるように4巻きしてコイル状にする。本実施例ではコイルの巻き方向は現像室から見て反時計方向で奥側へ巻いていく方向である。図10は現像装置13のトナー収容室17と現像室25との境界部25に磁性発生装置26を取り付ける状態を斜視図に示したものである。
【0040】
本磁界発生装置26を境界部25に設けた磁界発生装置26の挿入溝28に挿入する。その際境界部25の壁に設けた板金B、板金Cに磁界発生装置26つまりコイル両端がそれぞれ接続されるような配置にする。
【0041】
本実施例では上記構成において磁界発生装置26に直流を印加する事により磁界を発生させる。
【0042】
図4にもどってトナーTの流動を説明すると、磁界発生装置26による発生させる磁界の強さ(H)により磁性体であるトナーTに磁界による拘束力(fc)を与えてトナー室17から現像室19へのT攪拌部材21によるトナー搬送力(fa)を制御する。
【0043】
発生させる磁界の強さ(H)は現像装置13内のトナーTの残量と湿度で決定される。トナーTの残量はトナー残量検知方式の1つである静電容量方式の出力値を用い、湿度は画像形成装置1に設置している温湿度センサ23の出力値を用いる。
【0044】
図8は本実施例での上記現像装置13内のトナーTの残量と温湿度センサ23の湿度出力値の組み合わせによる、現像室19へのトナーT送り込み過剰によるパッキングと送り込み不足によるトナー供給不足現象の関係表である。
【0045】
図のようにパッキングが発生するのはトナー残量が多い時且つ湿度が80%以上の時であり、トナー供給不足が発生するのはトナー残量が少ない時且つ湿度が15%以下の時である。
【0046】
トナー残量出力値は誘起電流を電圧表示に変換しており電圧値が大きいとトナー残量が多い事を意味する。
【0047】
本発明ではトナー残量出力値が2.0Vでトナー残量が少なくなってくるので画像形成装置1の表示部に「トナーLOW」が表示される。
【0048】
ちなみに「トナーLOW」表示時の現像装置13内の残トナー量は50gである。温湿度センサ23の湿度出力値の1.28Vは湿度80%、0.56Vは湿度15%である。なお本実施例における湿度センサの出力値は0V〜3.4Vであり高湿度ほど値が大きくなる。本実施例における高湿環境の湿度とは湿度80%以上であり、低湿環境の湿度とは湿度15%以下である。
【0049】
図9は本実施例におけるトナー残量出力値と温湿度センサ23の湿度出力値の組み合わせによる磁界発生装置26に発生させる磁界の強さ(H)とその磁界を発生させる為に印加する電流の関係を表した図である。
【0050】
トナー残量が多い時且つ湿度が80%以上の時にはトナー室17から現像室19へのトナー送り量を抑える、つまり磁界の強さをあげる必要がある。
【0051】
逆にトナー残量が少ない時且つ湿度が15%以下の時にはトナー室17から現像室21へのトナー送り量を増やす、つまり磁界の強さを小さくもしくはゼロにする必要がある。
【0052】
本実施例ではトナー残量が多い時且つ湿度が80%以上である時の磁界の強さ(H)は0.8[mT](印加電流I=200μA)、トナー残量が少ない時且つ湿度が15%以下の時の磁界の強さ(H)は0[mT](印加電流I=0μA)、上記以外の時の磁界の強さ(H)は0.3[mT](印加電流I=75μA)の磁界を磁界発生装置26で発生させる。
【0053】
従って、現像装置13内のトナーTが多い時且つ高湿度環境時には現像室19がパッキングしないように搬送し、又、現像装置13内のトナーTが少ない時且つ低湿度環境時には現像室19へトナーTを十分搬送して画像の濃度低下を防ぐことができ、いかなる場合にも高品質な画像を安定して出力することができる。
【0054】
以上、本発明者によりなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施例における画像形成装置にプロセスカートリッジを挿入した図
【図2】本実施例におけるプロセスカートリッジの構成図
【図3】従来技術による現像装置構成と現像装置内のトナー循環を模した図
【図4】本実施例による現像装置構成と現像装置内のトナー循環を模した図
【図5】トナー収容室と現像室との境界部の斜図
【図6】トナー収容室と現像室との境界部の拡大図
【図7】導電性部材をコイル状にした磁界発生装置の図
【図8】トナー循環不良による濃度低下現象とトナー残量、湿度との関係図
【図9】トナー残量、湿度と磁界発生装置で発生させる磁界との関係図
【図10】トナー収容室と現像室との境界部に磁界発生装置の取り付けを示す斜視図
【符号の説明】
【0056】
1 画像形成装置
2 プロセスカートリッジ
3 露光装置
4 感光体ドラム(像担持体)
5 給紙カセット
6 給紙ローラ
7 搬送ローラ
8 転写ローラ
9 定着手段
10 排出ローラ
11 排出トレイ
12 ドラムユニット
13 現像装置
14 帯電ローラ
15 クリーニングブレード
16 廃トナーボックス
17 トナー収納室
18 現像ローラ
19 現像室
20 現像ブレード
21 トナー攪拌部材
22 固定磁石
23 温湿度センサ
24 現像室攪拌部材
25 境界部
26 磁界発生装置
27 高圧電源
28 挿入溝
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性トナーを攪拌搬送するトナー攪拌部材有し、磁性トナーを収容するトナー収容室と、搬送される前記磁性トナーを受け、トナー現像を行う現像室を備えた現像装置において、
前記トナー収容室と前記現像室との境界部に前記トナー収容室から前記現像室に向かう磁界を発生させ前記トナー収容室から前記現像室へ搬送された磁性トナーに磁界拘束力を与える磁界発生装置を備え、前記磁力発生装置により前記磁性トナーの搬送を制御することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記コイル形状の導線に流す電流量の変化が前記磁界拘束力を可変させることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記コイル形状の導線に流す電流量は、現像装置内の残磁性トナー量と湿度とにより変化させることを特徴とする請求項1、2に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−61070(P2010−61070A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229449(P2008−229449)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】