説明

トナー濃度の変動に応じて迅速に画像濃度を補正可能な画像形成装置及びその制御方法

【課題】トナー濃度が変動したことを検知した場合に、迅速に画像濃度を補正し、安定して高品位の画像形成を可能とする。
【解決手段】トナー補給の制御手段110は、現像器内の現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段14の検知結果がトナー濃度を制限する上限側リミット値を越えたとき、またはトナー濃度検知手段の検知結果がトナー濃度を制限する下限側リミット値を下回ったときにトナー補給を制限する。画像濃度の制御手段は、画像濃度検知手段12の検知結果が、トナー濃度を制限する上限側リミット値よりも下側の制御切替えのリミット値を上回ったときに、トナー補給制御から現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を高める。画像濃度検知手段の検知結果が、トナー濃度を制限する下限側リミット値よりも上側の制御切替えのリミット値を下回ったときに、トナー補給制御から現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ等の画像形成装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式の画像形成装置では、感光体等の像担持体の感光面を帯電装置で一様に帯電し、帯電された感光面上に潜像形成装置によって画像情報に応じた静電潜像を形成する。そして、その静電潜像を現像装置により現像剤で現像したものを転写装置で記録紙に転写して画像を形成している。
【0003】
画像形成装置は、装置が設置される環境の変動や装置内の環境の変動に起因する短期的な変動及び感光体や現像剤の経時変化(経時劣化)に起因する長期的な変動等の影響で、出力画像の濃度や濃度階調性が原稿画像の濃度や階調性と異なる場合が生じる。
【0004】
そこで、画像形成装置では、出力画像の濃度や階調性を原稿画像の濃度や階調性に合わせるためにそれらの様々な変動を考慮して随時画像形成条件を補正する必要がある。
【0005】
このような画像形成装置では、画像品質を安定化させるために極めて重要な要素の一つとして、二成分現像剤のトナー濃度(キャリア及びトナーの合計(デベロッパー)の重量(D)に対するトナーの重量(T)の割合:T/D比)が挙げられる。現像剤のトナー濃度は、トナーが消費される現像時に減少する。このため画像形成装置では、濃度制御装置、即ち、現像剤濃度制御装置又は画像濃度制御装置を使用して現像剤のトナー濃度又は感光体、中間転写体、もしくは記録紙上に形成されるテスト画像の濃度を検出する。そして、濃度制御装置は、検出した現像剤のトナー濃度又はパターン画像の濃度の変化に応じてトナー保持部から現像器に対してトナー補給を行う。このような制御によって、現像剤のトナー濃度又は画像濃度が可及的に一定に制御され、画像の品位が保持される。
【0006】
トナー濃度を制御するための方式として、例えば、現像剤反射ATR(Auto Toner Replenishment)方式がある。この現像剤反射ATR方式の濃度制御装置では、トナー濃度センサにより現像器内の現像剤のトナー濃度をトナーに照射された光の反射光量を検出することにより光学的に検知し、その検知結果に応じてトナー補給量を制御する。
【0007】
また、トナー濃度制御するための方式として、パターン画像の濃度を検出する方式いわゆるパッチ検ATR方式がある。このパッチ検ATR方式の濃度制御装置では、電子写真感光体(感光体)上に参照用に画像濃度検知用パターン画像(パッチ画像)を作像する。そして、そのパターン画像の濃度を感光体に対向して設置した画像濃度センサ等のセンサにより検知して、検知結果に応じてトナー補給量を制御する。
【0008】
さらに、トナー濃度制御するための方式として、いわゆるビデオカウントATR方式がある。これは、ビデオカウンタからの画素毎のデジタル画像信号の出力レベルから消費されるトナー量を算出し、消費されるトナー量を補給する制御方式である。
【0009】
前述した各制御方式による濃度制御装置では、得られた情報に基づいてトナー補給装置を駆動するモータの回転等を制御して、トナー保持部から現像器内の現像剤へのトナーの補給量を制御する。これにより濃度制御装置は、現像剤のトナー濃度又は画像濃度を目標とする各所定濃度に保つようにする。
【0010】
しかしながら、上述のような濃度制御装置には、以下のような問題があった。まず、現像剤反射ATRの場合では、現像器内の現像剤のトナー濃度を直接検知するために、現像剤のトナー濃度を一定に保つことが可能である。ところがトナーの摩擦帯電量(トリボ)は、現像剤中の磁性キャリアの変質や環境の変動により変化し、現像性が変化してくる。このため、現像剤のトナー濃度を一定に維持できても、キャリアの変質や環境の変動があった場合には、トナーの帯電量が所定の帯電量にならないことによって画像が所望の濃度で形成されないことがある。
【0011】
また、ビデオカウントATRの場合では、原稿画像の濃度情報をビデオカウント数に変換し、この値からトナー消費量を予測して、予測される現像剤のトナー濃度の初期設定値からの変動分のトナー補給を行う。そのため、実際に消費したトナー量とビデオカウント数から予測されたトナー消費量に相違が生じた場合には、消費したトナー量に対応すべきトナー補給量にズレが生じることになる。このような場合には、現像剤のトナー濃度が初期設定値からずれていくことがある。
【0012】
さらに、パッチ検ATRの場合では、感光体上のパッチ画像の濃度を検知して制御するため、画像濃度を所定の目標値に保つことが可能である。
【0013】
しかし、パッチ検ATRのみでトナー濃度を制御すると次のような課題が生じる。即ち、湿度が低い環境状態においてトナーの摩擦帯電量(トリボ)が上昇することによって静電潜像へのトナーの付着量が減少する場合、パッチ検ATRにおいて低いパッチ画像の濃度が検知されるので、トナーの補給状態が継続されるよう制御される。T/D比が高いような場合にパッチ検ATRの結果に基づいてトナー補給を行うと、現像器内にトナーが過剰に補給されることとなって充満し、現像剤のあふれや、かぶりを生じることになる。
【0014】
一方、湿度が高い環境状態においてトナーの摩擦帯電量(トリボ)が低下することによって静電潜像へのトナーの付着量が増加する場合、パッチ画像の濃度が高い濃度で検出されるので、トナーの補給を停止する状態を続行するように制御される。T/D比が低いような場合にパッチ検ATRの結果に基づいてトナー補給を停止すると、現像器内のトナー量が減少し、その現像剤担持体上への現像剤のコート量が減り、画像劣化を引き起こすことがある。
【0015】
そのため、現像剤反射ATR、ビデオカウントATRを行うことによってトナー濃度を極力均一に制御すると共に、出力画像が所望の濃度(所望の最大濃度、及び所望の階調性)で形成されるようにパッチ検ATRによるトナー濃度制御を行っている。
【0016】
従来の画像形成装置では、上記のATR制御によって現像剤のトナー濃度の制御に規制をかけて画像形成を行っていた(例えば、特許文献1参照)。この従来の画像形成装置は、現像剤反射ATRによって検出される現像剤のトナー濃度とパッチ検ATRによって形成されるパッチの画像濃度に基づいて、トナー濃度制御にパッチ検ATRの結果を反映させるか否かを決定していた。また、パッチ検ATRの結果を反映させずに現像剤反射ATRとビデオカウントATRの結果に基づいてトナー濃度制御を行うと共に、出力画像の濃度変動を抑制するための現像コントラスト電圧の制御を同時に行うようにしていた。ここで、現像コントラスト電圧とは、現像バイアスの直流成分の電位と、感光体の露光部分である明部電位(画像部電位)との電位差を指す。従来の画像形成装置では、現像剤反射ATRによって検出されるT/D比が所定の値以上になり、かつパッチ検ATRにより画像濃度が所定の範囲に収まらず濃い状態である場合には、現像コントラスト電圧を上げる制御を実行する。現像剤反射ATRによって検出されるT/D比が所定の値未満になり、かつパッチ検ATRにより画像濃度が所定の範囲に収まらず薄い状態である場合には、現像コントラスト電圧を下げる制御を実行する。それによって、T/D比が良好でない場合における画像濃度を所望の濃度に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007−78896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
つまり従来の画像形成装置では、T/D比が適正範囲の上下のリミットにあるときには、出力画像の濃度の振れの検知結果を現像コントラスト電圧にフィードバックするように制御していた。
【0019】
しかしながら、上記従来技術には、制御自体の時間遅れによって、短期的なチャージアップによる濃度変動に間に合わない場合に、画像濃度が減少して画像品位が低下するという問題がある。 本発明の目的は、パッチ画像の濃度が変動したことを検知した場合に、迅速に画像濃度を補正し、安定して高品位の画像形成を可能とした画像形成装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1記載の画像形成装置は、静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体上の静電潜像との間に電位差を形成する現像コントラスト電圧によって静電潜像にトナーを供給してトナー像とする現像器と、前記現像器にトナーを補給するトナー補給手段と、前記像担持体に形成された画像濃度制御用の基準静電潜像が前記現像器により現像されることにより形成された画像濃度制御用の基準トナー像の濃度を検知する画像濃度検知手段と、前記現像器内の現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段と、前記トナー濃度検知手段の検知結果がトナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値を上回ったときに前記トナー補給手段によるトナー補給の量を調整し、前記トナー濃度検知手段の検知結果がトナー補給を制限するための下側トナー補給制限リミット値を下回ったときに前記トナー補給手段によるトナー補給の量を調整するよう制御するトナー補給制御手段と、前記画像濃度検知手段の検知結果が、前記トナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値よりも下側に設定された上側制御切替リミット値を上回ったときに、トナー補給制御から現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を高めるように制御すると共に、前記画像濃度検知手段の検知結果が、前記トナー補給を制限するための下側トナー補給制限リミット値よりも上側に設定された下側制御切替リミット値を下回ったときに、前記トナー補給制御から前記現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を低くするように制御する画像濃度制御手段と、を有することを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するために、請求項3記載の画像形成装置の制御方法は、静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体上の静電潜像との間に電位差を形成する現像コントラスト電圧によって静電潜像にトナーを供給してトナー像とする現像器と、前記現像器にトナーを補給するトナー補給手段と、前記像担持体に形成された画像濃度制御用の基準静電潜像が前記現像器により現像されることにより形成された画像濃度制御用の基準トナー像の濃度を検知する画像濃度検知手段と、前記現像器内の現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段と、前記トナー濃度検知手段の検知結果に基づいて前記トナー補給手段を駆動してトナー補給を実行するトナー補給制御手段と、前記画像濃度検知手段の検知結果に基づいて、トナー補給制御と現像コントラスト制御とを切り替えて画像濃度を調整するように制御する画像濃度制御手段と、を備えた画像形成装置の制御方法であって、前記トナー補給の制御手段が、前記トナー濃度検知手段の検知結果がトナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値を上回ったときに前記トナー補給手段によるトナー補給を調整し、前記トナー濃度検知手段の検知結果がトナー補給を制限するための下側トナー補給制限リミット値を下回ったときに前記トナー補給手段によるトナー補給を調整し、前記画像濃度検知手段の検知結果が、前記トナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値よりも下側に設定された上側制御切替リミット値を上回ったときに、トナー補給制御から現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を高め、前記画像濃度検知手段の検知結果が、前記トナー補給を制限するための下側トナー補給制限リミット値よりも上側に設定された上側制御切替リミット値を下回ったときに、前記トナー補給制御から前記現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を低くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、現像剤のトナー濃度を検知してトナー補給制御の制限が行われる領域(補給制御制限領域)において画像濃度の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略図である。
【図2】図1に示す画像形成装置のリーダ画像処理部における画像信号の流れの説明図である。
【図3】画像形成装置のリーダ画像処理部における各制御信号のタイミングの説明図である。
【図4】画像形成装置におけるトナー補給制御に係る要部を示す概略制御ブロック図である。
【図5】画像形成装置における制御切替処理のフローチャートである。
【図6】画像形成装置におけるパッチ画像の形成方法を説明するための模式図である。
【図7】画像形成装置における画像濃度センサの出力信号を処理する回路構成を例示するブロック図である。
【図8】画像形成装置において、パッチ画像の濃度を段階的に変えたときの画像濃度センサの出力と出力画像の濃度との関係を示すグラフである。
【図9】従来のトナー濃度センサによるトナー濃度の検知結果と改良されたトナー濃度センサによるトナー濃度の検知結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳述する。
【0025】
まず、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1は、画像形成装置の概略縦断面図である。本実施の形態の画像形成装置100は、電子写真方式の4色フルカラーのプリンタである。画像形成装置100は、リーダ部(読取装置)Aとプリンタ部Bとを備えている。
【0026】
このリーダ部Aにおいて、101は原稿、102は原稿台ガラス、103は光源、104は光学系、105はCCDセンサ、106は基準白色板、107は突き当て部材である。このリーダ部AのCCDセンサ105によって得られた画像信号は、リーダ画像処理部108において画像処理された後、プリンタ部Bに送られ、プリンタ制御部(プリンタ画像処理部)109で画像処理される。
【0027】
このリーダ画像処理部108は、図2の画像信号の流れを示すブロック図に示すように構成されている。図2の画像信号の流れを示すブロック図で、201はアナログ信号処理部、202はA/Dコンバータ、203はシェーディング補正部である。また、図2で、211はクロック発生部、212は主走査アドレスカウンタ、213はデコーダである。図2で、204はラインディレイ回路、205は入力マスキング部、206は光量/画像濃度変換部(LOG変換部)、207はライン遅延メモリ、208はマスキング及びUCR回路である。図2で、209はγ補正回路、210は空間フィルタ処理部(出力フィルタ)、220はビデオカウンタである。
【0028】
リーダ部Aにおけるγ補正回路209は、プリンタ部Bの理想的な階調特性に合わせるべく画像濃度補正を行う。γ補正回路209は、例えば、256バイトのRAM等で構成されたLUT(階調補正テーブル)を用いて濃度変換を行う。また、空間フィルタ処理部(出力フィルタ)210は、エッジ強調又はスムージング処理を行う。一方で、M2、C2、Y2、K2の信号は、ビデオカウンタ220にも送られ、そこで画素単位の画像濃度値を積算し、各画像のビデオカウント値を算出する。
【0029】
このようにリーダ部Aで処理されたM4、C4、Y4、K4の面順次の画像信号は、プリンタ部Bのプリンタ制御部109に送られる。そして、プリンタ部Bでは、PWM(パルス幅変調)により濃度階調を有する画像記録が行われる。つまり、プリンタ制御部109のパルス幅変調回路191(図4参照)は、入力される画素画像信号毎に、そのレベルに対応した幅(時間幅)のレーザー駆動パルスを形成して出力する。即ち、高濃度の画素画像信号に対してはより幅の広い駆動パルスを形成し、低濃度の画素画像信号に対してはより幅の狭い駆動パルスを形成し、中間濃度の画素画像信号に対しては中間幅の駆動パルスを形成する。パルス幅変調回路191から出力されたレーザー駆動パルスは、露光手段としてのレーザースキャナ3の半導体レーザーに供給され、半導体レーザーを、そのパルス幅に対応する時間だけ発光させる。これにより半導体レーザーは、高濃度画素に対してより長い時間駆動され、低濃度画素に対してより短い時間駆動されることになる。
【0030】
このため、後述の感光ドラム1は、レーザースキャナ3が備える光学系によって、高濃度画素に対しては主走査方向により長い範囲が露光され、低濃度画素に対しては主走査方向により短い範囲が露光される。つまり、画素の濃度に対応して静電潜像のドットサイズが異なることになる。このようなことから、高濃度画素に対応するトナー消費量は、低濃度画素に対する消費量よりも大きくなる。
【0031】
この画像形成装置100では、図2に示すように、リーダ部A内の制御を、CPU214、RAM215、ROM216を備えた制御部230が司る。他方、図1に示すように、プリンタ部B内の制御は、制御部110が司る。また、この画像形成装置100の本体には、図2に示すように、表示器218を備えた操作部217が設けられている。この操作部217は、リーダ部AのCPU214と、プリンタ部Bの制御部110のCPU111などに接続され、使用者の指令を入力可能に構成されている。
【0032】
この画像形成装置100におけるリーダ部Aのリーダ画像処理部108では、各制御信号が図3に示すタイミングで制御される。この図3において、VSYNC信号は、副走査方向の画像有効区間信号であり、論理“1”の区間において、画像読み取り(スキャン)を行って、順次、M、C、Y、Kの出力信号を形成する。また、VE信号は、主走査方向の画像有効区間信号であり、論理“1”の区間において主走査開始位置のタイミングをとり、主にライン遅延のライン計数制御に用いられる。そして、CLOCK信号は、画素同期信号であり、“0”→“1”の立ち上がりタイミングで画像データを転送するのに用いられる。
【0033】
次に、この画像形成装置100におけるプリンタ部Bについて説明する。この画像形成装置100では、使用者が、操作部217を操作して画像の種類や枚数等の諸印刷条件を入力する。プリンタ部Bは、使用者の指令に応じて画像形成を行う。
【0034】
画像形成装置100は、像担持体であるドラム状の電子写真感光体である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、駆動装置(図示せず)により図中矢印方向(反時計回り)に回転駆動される。感光ドラム1は、回転過程で、一次帯電手段としての一次帯電器2により表面が一様に帯電される。この画像形成装置100では、一次帯電器2として、スコロトロン帯電器を用いた。スコロトロン帯電器は、高圧電圧が印加されるワイヤと、アースにつながれたシールド部と、所望の電圧が印加されるグリッド部とを有する。一次帯電器2のワイヤには、帯電バイアス出力手段としての帯電バイアス電源(図示せず)から、所定の帯電バイアスが印加される。一次帯電器2のグリッド部には、グリッドバイアス出力手段としてのグリッドバイアス電源21(図4に図示)から、所定のグリッドバイアスが印加される。そして、感光ドラム1は、ワイヤに印加される電圧に依存するが、略グリッド部に印加された電圧に帯電する。
【0035】
このようにして表面に帯電された感光ドラム1に対して、露光手段(画像書き込み手段)としての露光装置(レーザースキャナ)3により、第1色目の、例えばイエローの画像パターンに従ったレーザー光が照射される。これにより、感光ドラム1の表面には、第1色目の画像の静電潜像が形成される。このレーザースキャナ3は、所望の画像濃度レベルが得られるように、γ補正回路209の階調補正テーブル(LUT)を介して生成された駆動信号(レーザー出力信号)に従ってレーザーを出力する。予め求められたレーザー出力信号と画像濃度レベルとの関係から、所望の画像濃度が形成できるレーザー出力信号の値が、階調補正テーブル(LUT)としてγ補正回路209に記憶されている。レーザースキャナ3は、そのテーブルに則ってレーザー出力信号の値を決定する。
【0036】
このようにして感光ドラム1に形成された静電潜像は、回転式現像装置40によって現像される。この回転式現像装置40は、現像手段として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色用の現像器4Y、4M、4C、4Kを有する。各現像器4Y、4M、4C、4Kには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーを備えた二成分現像剤が充填されている。各現像器4Y、4M、4C、4Kは、図1に示すように、回転支持体(ロータリードラム)5に一体的に装着されている。
【0037】
この回転式現像装置40は、感光ドラム1上の静電潜像の形成のタイミングに同期して回転支持体5を回転し、現像工程に先立って所要の色の現像器が、感光ドラム1に対向する位置(現像位置)にセットされる。そして、現在の例では、感光ドラム1上に形成されたイエロー画像の静電潜像は、感光ドラム1の回転に伴って、予め感光ドラム1に対向されているイエロー用の現像器4Yにより、イエローの可視画像(トナー像)として現像される。
【0038】
このようにして感光ドラム1上に形成されたイエローのトナー像は、ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト6上に、一次転写手段としての一次転写ローラ7aの作用により転写(一次転写)される。この時、一次転写ローラ7aには、一次転写バイアス出力手段としての一次転写バイアス電源(図示せず)より、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の一次転写バイアスが印加される。これと共に中間転写ベルト6は、感光ドラム1と略同速で図中矢印方向(時計回り)に周回移動(回転)して転写(一次転写)が行われる。
【0039】
この回転式現像装置40では、前述した帯電、露光、現像、一次転写の工程を、イエローに続き、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対して行なう。これにより、中間転写ベルト6上には、各色のトナー像が重ね合わされたフルカラートナー像が形成される。
【0040】
次に、この中間転写ベルト6上に重畳した4色のトナー像は、二次転写手段としての二次転写ローラ7bの作用により、一括して、転写材Pの表面に転写(二次転写)される。この時、二次転写ローラ7bには、二次転写バイアス出力手段としての二次転写バイアス電源(図示せず)より、トナーの正規の帯電極性と逆極性の二次転写バイアスが印加される。これと共に、中間転写ベルト6と二次転写ローラ7bとの当接部には、転写材Pが、ピックアップローラ9などの転写材搬送装置によって所定のタイミングで送られて、転写処理される。
【0041】
4色のトナー像が転写された転写材Pは、搬送ベルト10によって定着装置11に送られる。定着装置11では、不図示の加熱ユニットを備えた定着ローラ11aと、定着ローラに圧接する加圧ローラ11bとの間に転写材Pを挟んで転動しながら加熱及び加圧することによりトナーが転写材Pに溶融固着され、最終的なフルカラー画像が定着される。このようにしてトナー像が加熱定着されて画像が形成された転写材Pは、機外に排出される。
【0042】
また、一次転写後に感光ドラム1上に残ったトナーは、その後、クリーニング手段としてのクリーナ13が備えるクリーニングブレード8によって掻き取られて回収される。
【0043】
なお、この画像形成装置100では、フルカラー画像形成時を例として説明したが、例えば、ブラック単色画像等の単色画像も形成することができる。その場合には、感光ドラム1上に形成された所望の色の画像の静電潜像を、所望の色用の現像器によって現像する。さらに、この場合には、感光ドラム1上に形成された所望の色のトナー像を最終的に転写材Pに転写し、定着処理して、所望の単色画像を形成する。
【0044】
ここで、現像器4Y、4M、4C、4Kの詳細な構成について説明する。なお、本実施の形態では、各現像器4Y、4M、4C、4Kの構成及び動作が、使用するトナーの色が異なることを除いて、実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合には、いずれの色用のものであるかを示すために符号4に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して総括的に説明する。
【0045】
本実施の形態で用いる現像器4は、二成分現像剤を使用する二成分現像方式を採用する。この現像器4は、現像処理時に、感光ドラム1に対向する現像位置に配置される。この現像器4の内部は、現像位置において垂直方向に延在する隔壁45によって、第1室(現像室)45aと第2室(攪拌室)45bとに区画されている。第1室45aには、現像剤担持体としての非磁性の現像スリーブ41が配置されている。この現像スリーブ41内には、磁界発生手段としての不図示のマグネットが固定配置されている。
【0046】
第1室45a、第2室45bには、それぞれ現像剤攪拌搬送手段としての、第1及び第2のスクリュー42、43が配置されている。第1のスクリュー42は、第1室45a中の現像剤を攪拌搬送する。また、第2のスクリュー43は、トナー補給槽33からのトナー搬送スクリュー32の回転によって供給されたトナーと、すでに現像器内にある現像剤とを攪拌搬送し、現像剤のトナー濃度を均一化する。また、第1室45aと第2室45bとの間の隔壁45には、図1における手前側と奥側の端部において第1室45aと第2室45bとを相互に連通させる不図示の現像剤通路が形成されている。
【0047】
このように構成された現像器4では、第1、第2スクリュー42、43の搬送力により、現像によってトナーが消費されて現像剤のトナー濃度が低下した第1室45a内の現像剤が一方の通路から第2室45bへ移動される。さらに、第2室45b内で現像剤のトナー濃度の回復した現像剤は、他方の通路から第1室45a内へ移動される。
【0048】
現像器4内の二成分現像剤は、マグネットの磁力により現像スリーブ41上に担持される。次いで、現像剤スリーブ41上の現像剤は、現像剤規制部材としての不図示のブレードにより層厚が均一化され、現像スリーブ41の回転に伴って感光ドラム1と対向した現像領域に搬送される。そして、現像領域において現像剤は、感光ドラム1上の静電潜像の現像に供される。
【0049】
この現像器4では、現像効率(潜像へのトナー付与率)を向上させるために、現像スリーブ41に現像バイアス出力手段としての現像バイアス電源44(図4に図示)から所定の現像バイアスが印加される。この現像器4では、現像スリーブ41に、現像バイアス電源44から、直流電圧を交流電圧に重畳した現像バイアス電圧が印加される。
【0050】
このように構成された各現像器4Y、4M、4C、4Kには、それぞれトナー補給槽33Y、33M、33C、33Kからトナーが補給される。このトナー補給槽33Y、33M、33C、33Kは、回転式現像装置40の上部に配置されている。
【0051】
各トナー補給槽33Y、33M、33C、33Kには、補給用トナーが収容されている。各補給槽33Y、33M、33C、33Kの下部には、駆動源としてのモータ31Y、31M、31C、31Kにより回転駆動されるトナー搬送スクリュー32Y、32M、32C、32Kが設置されている。
【0052】
トナー搬送スクリュー32Y、32M、32C、32Kは、それぞれ補給用トナーを、トナー搬送路(図示せず)を通して搬送し、各現像器4Y、4M、4C、4K内に供給する。トナー搬送スクリュー32Y、32M、32C、32Kによるトナーの供給は、制御部110のCPU111が、モータ駆動回路(図示せず)を介してモータ31Y、31M、31C、31Kの回転制御により制御する。このため、CPU111に接続されたRAM112には、モータ駆動回路に供給する制御データ等が記憶されている。
【0053】
上述したトナー補給槽33Y、33M、33C、33K、モータ31Y、31M、31C、31K、及びトナー搬送スクリュー32Y、32M、32C、32Kなどが、トナー補給装置(トナー補給手段)30を構成する。なお、トナー補給装置30のそれぞれの色の部材の構成及び動作は、補給するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。
【0054】
上述のようにして、静電潜像の現像処理を行うと、トナーが消費されて現像器4内の現像剤のトナー濃度が低下する。そのため、本実施の形態においては、濃度制御装置300により、トナー補給槽33からトナーを現像器4に補給する制御(トナー補給制御)を行う。このトナー補給制御では、現像剤のトナー濃度を可及的に一定になるよう制御し、又は各階調レベルにおいて画像データに基づく画像濃度が可及的に所定の目標値になるように現像剤のトナー濃度を制御する。
【0055】
この画像形成装置100の濃度制御装置300は、感光ドラム1上に参照用にパッチ画像を作像し、その画像濃度を感光ドラム1に対向設置した画像濃度センサ(パッチ検ATRセンサ)12により検知してトナー濃度を制御するパッチ検ATRでトナー補給制御を行うことができるようによう構成されている。また、この濃度制御装置300は、トナー濃度センサ(現像剤反射ATRセンサ)14により現像器4内の現像剤のトナー濃度を検知してトナー濃度を制御する現像剤反射ATRの方式によるトナー補給制御も行うことができるようによう構成されている。さらに、濃度制御装置300は、ビデオカウンタ220からの画素毎のデジタル画像信号の出力レベルから必要な即ち消費されるトナー量を演算してトナー濃度を制御するビデオカウントATR方式によるトナー補給制御も行うことができるようによう構成されている。
【0056】
このように、本実施の形態の画像形成装置100では、3つの方式を用いる濃度制御装置300を利用してトナー補給制御を実行する。パッチ検ATRでは、画像濃度検知手段としての画像濃度センサ12を用いて、所定の出力画像(パッチ)の濃度の変動を検知し、その検知結果に基づいてトナー補給制御を行う。パッチの形成は所定枚数の記録材に画像が形成される毎に行われる(例えば、24枚毎にパッチを形成する。)現像剤反射ATRでは、トナー濃度検知手段としてのトナー濃度センサ14を用いて、現像器4内の現像剤のトナー濃度を直接検知し、その検知結果に基づいてトナー補給制御を行う。ビデオカウントATRでは、トナー濃度検知手段としてのビデオカウンタ220を用いて、ビデオカウント数から予測されるトナー消費量に基づいてトナー補給制御を行う。なお、それぞれの方式に基づく濃度制御装置300の動作については、後述する。
【0057】
次に、この画像形成装置100における濃度制御装置300の制御について、図4を参照して説明する。
【0058】
この画像形成装置100の濃度制御装置300は、プリンタ部Bの動作を統括的に制御する制御部110を有する。この制御部110は、CPU111と、RAM112と、ROM113と、を有する。さらに、この制御部110は、後述する現像コントラスト電圧制御手段の機能を兼ね備える。この制御部110は、特に、トナー濃度センサ14、画像濃度センサ12及びビデオカウンタ220(図2参照)からの信号に基づいて、補給トナー量を制御するモータ31を制御する。そして、制御部110は、制御信号に基づいて、一次帯電器2にグリッドバイアスを出力するグリッドバイアス電源21と、現像器4の現像スリーブ41に現像バイアスを出力する現像バイアス電源44と、を制御し、現像コントラスト電圧を制御する。
【0059】
この画像形成装置100では、感光ドラム1に形成された画像濃度制御用の基準静電潜像を、現像器4で現像して画像濃度制御用の基準トナー像(パッチ画像、トナーパターン)を感光ドラム1に形成する。画像濃度センサ12は、LED等の発光素子を備える発光部12aと、フォトダイオード(PD)等の受光素子を備える受光部12bとを有する。この画像形成装置100では、発光部12aから画像濃度制御用の基準トナー像(パッチ画像)に光を照射し、その反射光を受光部12bによって受光する。CPU111は受光部12bが受光する反射光の光量から基準トナー像の濃度を検出する。
【0060】
また、この画像形成装置100は、現像器4内の現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段としてのトナー濃度センサ14及びビデオカウンタ220を有する。そして、少なくともトナー濃度検知センサ14又は220(ビデオカウンタ)の検知結果に基づいてトナー補給装置30から現像器4へのトナー補給動作を行う。
【0061】
さらに、この制御部110は、トナー濃度検知結果とパッチ画像濃度検知結果に応じて、現像コントラスト電圧を制御するか、トナー補給を制御するか、又は現像コントラスト電圧とトナー補給とを制御するかを切り替える機能を有する。
【0062】
そしてこの画像形成装置100の制御部110は、トナー濃度検知センサ14又は220の結果と、画像濃度検知手段としての画像濃度センサ12の結果に対応して、現像コントラスト電圧の制御とトナー補給動作の制御とを切り替えて実行可能に構成されている。
【0063】
次に、連続画像形成中の画像濃度検知及び画像階調制御について説明する。
【0064】
先ず、パッチ検ATRについて説明する。まず、CPU111は、連続画像形成中に、図6に示すように、感光ドラム1上の出力する画像の先端と後端に挟まれた非画像領域に、画像濃度検知用画像パターン(パッチ画像)Qを形成する。なお、以下、パッチ画像の静電潜像を「パッチ潜像」という。このため図4に示すように、プリンタ制御部109は、予め定められた濃度に対する信号レベルを有するパッチ画像信号を発生するパッチ画像信号発生回路(パターンジェネレータ)192を備える。
【0065】
このプリンタ制御部109は、パターンジェネレータ192からのパッチ画像信号を、パルス幅変調回路191に供給し、予め定められた濃度に対するパルス幅を有するレーザー駆動パルスを発生させるよう制御する。次に、このプリンタ制御部109は、レーザー駆動パルスをレーザースキャナ3の半導体レーザーに供給して半導体レーザーをそのパルス幅に対応する時間だけ発光させて、感光ドラム1を走査露光するよう制御する。このようにして予め定められた濃度に対するパッチ潜像が、感光ドラム1に形成される。次に、このパッチ潜像は、現像器4によって現像される。このようにして形成された感光ドラム1上のパッチ画像Qは、画像濃度センサ12で、反射光量が測定される。
【0066】
画像濃度センサ12は、感光ドラム1上の非画像領域に形成されたパッチ画像Qが画像濃度センサ12の下を通過するタイミングを見計らって、反射光量を測定する。この測定結果に係る信号は、CPU111に入力される。その後、CPU111は、所望の所定濃度(反射光量)が得られると推定される補給トナー量の補正量(後述)を求める。
【0067】
次に、画像濃度センサ12で反射光量を測定する具体的な手段について、図7の画像濃度センサ12の出力信号を処理する回路構成を例示するブロック図によって説明する。
【0068】
画像濃度センサ12に入力される感光ドラム1からの反射光(近赤外光)は、0〜5Vの電気信号に変換される。この0〜5Vの電気信号は、制御部110に設けられるA/D変換回路15により、8ビットのデジタル信号に変換される。そして、このデジタル信号は、制御部110に設けられる濃度変換回路16によって濃度情報に変換される。
【0069】
本実施の形態では、使用するトナーが、スチレン系共重合樹脂をバインダとして、各色の色材を分散させたものとしている。ここで用いられる感光ドラム1は、近赤外光(960nm)の反射率が約40%のOPC感光体である。なお。反射率が同程度であるアモルファスシリコン系の感光体などであっても構わない。また、この画像濃度センサ12は、感光ドラム1からの正反射光のみを検出するよう構成されている。
【0070】
画像濃度センサ12で反射光量を測定した結果は、図8に示すごとくなる。図8は、感光ドラム1上に形成したパッチ画像Qの濃度を各色の面積階調により段階的に変えた時の、画像濃度センサ12の出力と出力画像の濃度との関係を示している。なお、トナーが感光ドラム1に付着していない状態の画像濃度センサ12の出力を5V、つまり255レベルに設定する。
【0071】
図8に示されるように、各トナーによる面積被覆率が大きくなり、画像濃度が大きくなるのに従い画像濃度センサ12の出力が小さくなる。このような画像濃度センサ12の特性に基づき、画像濃度センサ12の出力から濃度信号に変換する各色専用のテーブル16aを予め用意する。このテーブル16aは、濃度変換回路16の記憶部に記憶されている。これにより、濃度変換回路16は、各色とも、精度よく画像濃度を読み取ることができる。濃度変換回路16は、濃度情報をCPU111へと出力する。
【0072】
なお、本実施の形態では、パッチ画像Qを形成する際のレーザー出力として、各色とも64レベルの濃度信号を用いる。その際、階調補正テーブル(LUT)を用いてレーザー出力が決まるのは前述のとおりである。
【0073】
本実施の形態では、通常の画像形成中に非画像領域にパッチ画像Qを形成し、その濃度を検出して、補給トナー量を随時補正するように制御する。これにより理想的には、パッチ検ATR方式によるトナー補給制御によってパッチ画像Qの濃度信号が64レベルに亘って検出されるように補正される。しかし、画像形成装置100の画像特性は常に変化を起こす可能性がある。そのため、画像濃度センサ12によりパッチ画像Qの濃度が常に64レベルに亘って検出されるわけではない。
【0074】
従って、CPU111は、初期設定時に得られたパッチ画像Qの基準濃度信号と、測定結果とのずれΔDに基づき、補給トナー量を補正するΔDが正であれば、補給トナー量を減らし、ΔDが負であれば補給トナー量を増やす。
【0075】
基準濃度信号は、RAM112に記憶されている。これにより、ある程度のリップルは有するものの、良好な一定の濃度推移が得られる。
【0076】
次に、ビデオカウントATRを用いたトナー補給制御について説明する。本実施の形態では、ビデオカウントATRとパッチ検ATRとにより、下記式(1)から補給トナー量Msumが求められる。
補給トナー量Msum=Mv+(Mp/パッチ検ATR頻度) ...(1)
Mv:ビデオカウントATRにより求まった補給トナー量
Mp:パッチ検ATRにより求まった補給トナー量
上記Mp(以下、「補給補正量」という。)は、上述のように、初期の現像剤でのパッチ画像Qの濃度の検知値を基準として、その基準値と測定結果との差分ΔDから求まる。すなわち、例えば、現像器4内のトナーの量がその基準値より1g(基準量)分変化した時のパッチ画像Qの濃度の測定結果の変化を変化量ΔDrateとして予め求めておく。このΔDrateは、ROM113に記憶されている。これにより、CPU111は、下記式(2)から補給補正量Mpを求める。
【0077】
Mp=ΔD/ΔDrate ...(2)
ここで、補給補正量Mp分のトナー補給は、色味変動の低減のために、パッチ検ATRの実行間隔内でなるべく平均して処理することが理想的である。そのため、補給補正量Mpをパッチ検ATRの実行間隔で均等に分割して処理する。従って、式1において、補給補正量Mpを、パッチ検ATRの実行頻度で割っている。補給補正量Mpをパッチ検ATRの実行頻度で割らない場合、例えば、パッチ検ATRの実行後の1枚目の画像形成時に、大幅なトナー補給制御が行なわれて、オーバーシュートが起こることがある。
【0078】
ビデオカウントATRにより決定される上記Mv(以下、「基礎補給量」という。)は、リーダ部Aから読み込んだ画像信号、或いはコンピュータ等から送られてきた画像信号から求められる。これら画像信号の処理を行なう回路構成は、図2のブロック図に示したとおりである。
【0079】
前述のように、ビデオカウンタ220に画像信号が送られる。そして、ビデオカウンタ220により、画素単位の濃度値を積算し、各画像のビデオカウント値が算出される。
【0080】
このビデオカウント値は、予め求められたビデオカウント値と補給トナー量との関係を示すテーブルを用いて、基礎補給量Mvへと換算される。このテーブルは、ROM113に記憶されている。こうして、画像形成を行うごとに各画像の基礎補給量Mvが算出される。
【0081】
以上のようにして、制御部110のCPU111は、式1により補給トナー量Msumを求める。
【0082】
すなわち、本実施の形態では、感光ドラム1上の静電潜像はデジタル方式で形成される。トナー補給動作は、感光ドラム1上に形成される静電潜像の画素毎のデジタル画像信号の出力レベルに基づいて行われ、画像濃度センサ12の検知結果に基づいて修正される。
【0083】
次に、現像剤反射ATRについて説明する。本実施の形態では、現像剤反射ATRは、トナー補給制御の制限を行うトナー濃度の領域(補給制御制限領域)を判断するのに使用される。トナー濃度センサ14は、現像器4の現像スリーブ41の対向部に配置されている。本実施の形態では、現像色が変わるときに現像器4を担持している回転支持体5が回転することで、トナー濃度センサ14に対向する現像器4が変わる。これにより、トナー濃度センサ14は、全色用の現像器4内の現像剤のトナー濃度を測定することが可能となる。トナー濃度センサ14は、LED等の発光素子を備える発光部14aと、フォトダイオード(PD)等の受光素子を備える受光部14bと、を有する。
【0084】
現像器4内の現像剤のトナー濃度T/D(トナー/現像剤比)は、CPU111が、トナー濃度センサ14の測定結果などから、下記式により求める。
T/D=(SGNL値−SGNLi値)/Rate+初期T/D ...(3)
SGNL値:トナー濃度センサの測定値
SGNLi値:トナー濃度センサの初期測定値(初期値)
また、Rateは、トナー濃度センサ14の特性として、ΔSGNLのT/Dへの感度を予め測定したものである。初期T/D、SGNLi値は、初期設置時に測定したものを使用し、これら初期T/D、SGNLi値、Rateは、制御部110のRAM112に記憶されている。
【0085】
各トナー濃度T/Dの領域におけるトナー補給制御、又はトナー補給制御制限の方法自体は、表1に示すとおりである。
【0086】
【表1】

【0087】
上述のようにして求められた現像剤のトナー濃度T/D、並びに、基礎補給量Mv、補給補正量Mpによって、例えば、表1に従ってトナー補給制御が行なわれる。
【0088】
即ち、表1に示すように、トナー濃度T/Dが11%を超える場合(領域A、B、C)、たとえパッチ検ATRの結果として画像濃度が薄いと判断されても、これ以上トナー濃度T/Dを上げるとあふれや、かぶりなどの危険がある。そのため、CPU111は、トナー補給に規制をかける。領域Cでは、パッチ検ATRにより画像濃度が薄いと判断されると、ビデオカウントATRのみによりトナー補給を行う。領域Bでは、パッチ検ATRの結果によらず、トナー補給を停止する。領域Aでは、パッチ検ATRの結果によらず、ATRエラーとして、トナー補給制御に問題があることを示す情報を操作部217の表示器218等を介して使用者に報知する。
【0089】
同様に、トナー濃度T/Dが6%以下である場合(領域E、F、G)、たとえパッチ検ATRの結果として画像濃度が濃いと判断されても、これ以上トナー濃度T/Dを下げると現像剤担持体への現像剤のコート不良などの危険がある。そのため、CPU111は、トナー補給に規制をかける。領域Eでは、パッチ検ATRにより画像濃度が濃いと判断されると、ビデオカウントATRのみによりトナー補給を行う。領域Fでは、パッチ検ATRの結果によらず、所定量のトナーを強制的に補給する。領域Gでは、パッチ検ATRの結果によらず、ATRエラーとして、トナー補給制御に問題があることを示す情報を操作部217の表示器218等を介して使用者に報知する。
【0090】
ここで、ビデオカウントATRのみ(パッチ結果無視)とは、Msum=Mvとすることを意味する。
【0091】
これにより、領域Dでは、非常に良好な濃度推移が得られる。また、領域B、領域C、並びに、領域E、領域Fでは、濃度推移としては振れが見られるものの、現像剤のあふれや、かぶり、或いは現像スリーブ41への現像剤のコート不良が発生するトナー濃度T/Dの領域へ至らないように制御することが可能である。従って、領域A、領域Gのように、ATRエラーが発生することがなく、またトナー補給制御不良により画像形成装置100の損傷に至ることは無い。
【0092】
このように、トナー補給制御に所定のリミットを設け、トナー濃度T/Dの検知結果がその所定のリミットを超えた場合に、パッチ検ATRにおけるパッチ画像Qの濃度の検出結果をトナー補給制御にフィードバックしない領域(補正制御制限領域)がある。
【0093】
表2は、従来行っていた、トナー濃度T/Dとパッチ検ATRの結果に応じてどのような現像コントラスト電圧制御を行うかを示す。
【0094】
【表2】

【0095】
トナー濃度T/Dが適正範囲(表2における領域D)を外れた場合、出力画像の濃度の振れの検知結果を現像コントラスト電圧にフィードバックする。領域B、領域C、並びに、領域E、領域Fのように、トナー補給に制限が加わった時でも良好な濃度で画像が形成されるように、現像コントラスト電圧を補正する。
【0096】
このため、画像形成装置100は、感光ドラム1に形成された画像濃度制御用の基準静電潜像(パッチ潜像)を現像器4により現像して形成された画像濃度制御用の基準トナー像(パッチ画像)の濃度を検知する画像濃度センサ12を有する。さらに、画像形成装置100は、現像器4内の現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度センサ14を有する。画像形成装置100は、画像濃度センサ12またはトナー濃度センサ14の検知結果に基づいてトナー補給装置30から現像器4へのトナー補給動作を行う。
【0097】
ここで、画像形成装置100は、トナー補給動作がトナー濃度センサ14の検知結果に基づいて制限される現像剤のトナー濃度領域である補給制御制限領域を有する。これと共に、この画像形成装置100は、トナー補給動作がトナー濃度センサ14の検知結果に基づいて制限されない現像剤のトナー濃度領域である通常補給領域を有する。そして、この画像形成装置100では、トナー濃度センサ14によって検知された現像器4内の現像剤のトナー濃度が補給制御制限領域(表2のトナー濃度領域B,C,E,F)にある時に、画像濃度センサ(パッチ検ATRセンサ)12の検知結果に基づいて現像コントラスト電圧を可変制御する。
【0098】
この現像コントラスト電圧は、現像スリーブ41に印加する現像バイアスの直流成分の電位と、感光ドラム1上の明部電位(画像部電位)との電位差である。本実施の形態では、現像コントラスト電圧Vcontを、一次帯電器2のグリッドに印加するグリッドバイアスVgと、現像器4の現像スリーブ41に印加する現像バイアスのDC成分Vdcとを制御することで制御する。
【0099】
すなわち、本実施の形態では、現像コントラスト電圧を、感光ドラム1の帯電電位及び現像スリーブ41の電位を変更することで変更する。なお、現像コントラスト電圧の制御方法は、これに限定されるものではなく、レーザーパワーを制御するなどの他の方法を採用しても構わない。また、現像コントラスト電圧の制御方法は、一次帯電器2のグリッドに印加するグリッドバイアスVgと、現像器4の現像スリーブ41に印加する現像バイアスのDC成分Vdcとのいずれかを制御することで制御する方法を用いても良い。
【0100】
本実施の形態で現像コントラスト電圧を上下させる場合に、制御部110のCPU111は、下記式(4),(5)に従ってVgとVdcとを変化させる。
Vg=Vg_ref+α×Vg_ref ...(4)
Vdc=Vdc_ref+α×Vg_ref ...(5)
Vg_ref:現像コントラスト電圧制御を行なう前のVg
Vdc_ref:現像コントラスト電圧制御を行う前のVdc
α:現像コントラスト電圧制御指数
ここで、現像コントラスト電圧制御指数αは、下記式のように積算されていく:
α=前回のα+今回のα(αは積算。初期値は0。) ...(6)
領域B、領域Cにおいて、現像コントラスト電圧を上げる場合には、現像コントラスト電圧制御指数αを大きくしていく。逆に、領域E、領域Fで現像コントラスト電圧を下げる場合には、現像コントラスト電圧制御指数αを負の方向に大きくしていく。
【0101】
また、現像コントラスト電圧制御指数αは、パッチ検ATRの結果に依存する。よって、CPU111は、VgとVdcがそれぞれ1V変化した時の、パッチ検ATRによるパッチ画像Qの濃度の検知結果の変化を変化量ΔDrate2として予め求めておくことで、上述の式(2)のように、下記式により「今回のα」を求める。
【0102】
今回のα=ΔD/ΔDrate2 ...(7)
一方、表1において通常のトナー補給を行う領域では、現像コントラスト電圧を戻す。
【0103】
通常のトナー補給は、領域B及び領域Cにおいてパッチ検ATRで画像濃度が適正又は濃いと判断されている場合に、領域D、及び領域E及び領域Fにおいてパッチ検ATRで画像濃度が適正又は薄いと判断されている場合に行われる。この現像コントラスト電圧を戻す領域では、αの絶対値が減る方向にのみ制御する。そして、αが0になった場合には、現像コントラスト電圧を変更しない。これは、通常のトナー濃度T/Dでは、なるべく現像コントラスト電圧を一定として、トナー補給制御で現像性を一定とするためである。これにより、現像剤そのものの現像性が一定、すなわち、トナーの帯電量が一定となり、転写性の変化につながらない。
【0104】
しかしながら表2に示すものでは、トナー補給を制限するためのリミット値(トナー補給制限リミット値)と、トナー濃度の状態に応じて、画像濃度検知用パッチ濃度により現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える制御切替リミット値と、が同一のもの(上限側T/D11%、下限側T/D6%)とされている。ここで、トナーの補給を制限するためのトナー補給制限リミット値は、現像剤のあふれや、かぶり、或いは現像剤担持体への現像剤のコート不良を防止し、画像品位の低下、ひいては、機械の損傷を防ぐために設けられたリミット値である。
【0105】
トナー補給を制限するためのリミット値(トナー補給制限リミット値)と、トナー濃度の状態に応じて、画像濃度検知用パッチ濃度により現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える制御切替リミット値と、が同一であると次のような課題が生じる。
【0106】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置100の要部について、表3を参照して説明する。
【0107】
【表3】

【0108】
この表3に示すように、この画像形成装置100では、画像濃度検知用パッチ濃度により現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える上側制御切替リミット値(表3ではT/D値10.9%)は、トナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値(表3ではT/D値11%)よりも下側に設定している。また画像濃度検知用パッチ濃度により現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える下側制御切替リミット値(表3ではT/D値6.1%)は、トナー補給を制限するための下制限側リミット値(表3ではT/D値6%)よりも上側に設定している。
【0109】
次に、これら2種類のリミット値が同一であった場合、即ち、上側制御切替リミット値と上側トナー補給制限リミット値が同一であり、下側制御切替リミット値と下側トナー補給制限リミット値が同一であった場合と、そうでなかった場合について、それぞれ説明する。
【0110】
図9は、トナー濃度センサ14の従来品によるトナー濃度の検知結果とトナー濃度センサ14の改良品によるされたトナー濃度の検知結果を示すグラフである。この図9では、トナー濃度のリミットを11%としている。その場合、従来品では、11%を超えている回数は30回の検知回数のうち15回あった。一方、改良品では、7回に改善されている。すなわち改良品では、検知結果が、トナー補給の制限値を超える回数を、約半減させることができた。
【0111】
1.同一であった場合(従来例)
同一とした場合のリミット値は、現像剤のあふれや、かぶり、或いは現像剤担持体への現像剤のコート不良を防止し、画像品位の低下、ひいては、機械の損傷を防ぐために設けられたトナー濃度制御を制限するためのリミット値としている。その理由は、トナー濃度を最大限使用できる領域でトナー帯電量をなるだけ一定にでき、機械の損傷が起きない領域を使用するためである。なお、2つのリミット値が同一である場合には、どの位置にリミットを設定したとしても、下記に示したのと同様の課題が生じる。
【0112】
ここでは、トナー濃度が制限リミット近傍で推移している場合を例にとって説明する。トナー濃度が上側制限リミット下側近傍で推移している状態では、図9に示すようにトナー濃度の検知バラツキが生じる。これは、画像濃度検知用パッチ濃度に基づいて現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える制御切替リミット値を検知結果が超える頻度が変化することを意味している。
【0113】
ここでは、トナー濃度の検知バラツキが大きい方が、現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える制御切替リミット値を越える頻度は多い。一方でトナー濃度の検知バラツキが小さい方が、現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える制御切替リミット値を越える頻度は少ない。
【0114】
制御切替リミット値を越えている頻度が多い場合には、制御切替リミット値を越えている状態で画像濃度検知用パッチ濃度が薄いと検知すれば、現像コントラストにフィードバックし、可及的に速く画像濃度を補正する頻度が高い。
【0115】
一方、トナー濃度検知バラツキが小さい場合には、制御切替リミット値を超えている頻度が低いために、画像濃度検知用パッチ濃度が薄いと検知すると、パッチ検ATRによりトナー補給動作する頻度が高い。パッチ検ATRによる補給制御は、フィードバック制御自体の時間遅れだけでなく、トナー補給による現像剤内トナーの移動のための時間も要し、実画像に効果として表れるまで現像コントラスト制御に比べて、時間遅れが生じる。その間、パッチ検ATRによるトナー補給制御では、現像動作を続行しているのでトナーの消費が進み、トナー帯電量のチャージアップがおき易くなる。その結果、パッチ検ATRによるトナー補給制御では、現像されるトナー量が低下し、短期的に画像濃度が低下する事態を引き起こし易くなる。
【0116】
このようにトナー補給を制限するためのトナー補給制限リミット値と、画像濃度検知用パッチ濃度により現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える制御切替リミット値を同一とした場合には、トナー濃度センサ14によるトナー濃度検知バラツキの大小によって濃度変動が生じ易くなる。
【0117】
2.同一でない場合(本実施の形態)
前記2種類のリミット値が同一でない場合には、各リミット値に関して、トナー濃度センサ14によって検知された現像器4内の現像剤のトナー濃度について設定される、トナー補給を制限するための上側及び下側トナー補給制限リミット値は、前記2種類のリミット値が同一である場合の状態と同じ値とする。これは画像不良を防止するという観点から決定されている値であるためである。
【0118】
一方、トナー濃度センサ14によるトナー濃度の検知バラツキによって濃度変動の差が生じ易くなる不具合を解消するために、上記の画像濃度検知用パッチ濃度により現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える上側制御切替リミット値は、トナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値よりも下側とする。これと共に、画像濃度検知用パッチ濃度により現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える下側制御切替リミット値は、トナー補給の制限をするための下側トナー補給制限リミット値よりも上側とする。
【0119】
本実施の形態では、トナー濃度の検知バラツキによって濃度変動の差が生じ易くなる不具合を解消するために、画像濃度検知用パッチ濃度により現像コントラスト制御と補給制御とを切り替えるリミット値を、表3に示すように、トナー濃度の検知バラツキ内(誤検知幅内)に収まるように設定した。
【0120】
次に、トナー濃度が制限リミット近傍で推移している場合における制御について説明する。トナー濃度が下側トナー補給制限リミット値近傍で推移している状態の場合には、トナー濃度の検知バラツキ内とすることで、画像濃度検知用パッチ濃度が薄いと検知すれば、現像コントラストにフィードバックする可能性を高くすることができる。つまりこの場合の制御では、トナー濃度の検知結果にバラツキがある限り、現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える制御切替リミット値をトナー補給の制限に使用するトナー補給制限リミット値と同一とせず、トナー濃度の検知バラツキ内(誤検知幅内)に制御切替リミット値を設定する。
【0121】
これにより、この場合の制御では、適切な頻度で現像コントラスト制御を動作させることができる。なお、この場合の制御では、トナー濃度T/Dの検知結果が領域Eや領域Fにあるときには、領域Cや領域Bにあるときの現像コントラスト電圧を上昇させるのとは、制御の方向性が逆で、現像コントラスト電圧を下降させるが、実質的に制御方法は同様である。
【0122】
このように本実施の形態によれば、二成分現像剤におけるトナー濃度が適正範囲を超えないようトナー補給制御にリミットを設け、現像剤のあふれや、かぶり、或いは現像スリーブ41への現像剤のコート不良の発生を防止することができる。さらに、トナー濃度の適正範囲のリミット近傍では、現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える制御切替リミット値を、トナー補給の制限に使用するトナー補給制限リミット値と同一とせず、トナー濃度の検知バラツキ内に設定する。そしてパッチ画像Qの濃度である出力画像の濃度の振れの検知結果は、現像コントラスト電圧にフィードバックされる。
【0123】
よって、本実施の形態では、現像剤のあふれや、かぶり、或いは現像剤担持体への現像剤のコート不良の発生を防止しつつ、現像性の確保、延いては、画像濃度や色味の一定性も確保することができる。従って、本実施の形態によれば、補給制御制限領域における画像濃度の安定化を図ることができ、高品位の画像形成が可能となる。
【0124】
なお、本実施の形態では、トナー補給の制限に使用するトナー補給制限リミット値に対応して、現像コントラスト制御か補給制御かを切り替える制御切替リミット値を定める基準を以下のようにしている。
【0125】
トナー補給の制限に使用する上側トナー補給制限リミット値に対する、制御切り替えの上側制御切替リミット値は、トナー濃度の検知センサの誤検知幅内(誤差量の範囲)で設定することが望ましい。例えば、制御切り替えの上側制御切替リミット値は、トナー濃度の検知センサの誤差量の最小値の量だけ、トナー補給の制限に使用する上側トナー補給制限リミット値から引き下げる。これにより、現像器4内におけるトナー濃度の変動量の変動の幅を最小にするようにして、トナー濃度の安定化を図ることができる。
【0126】
また、トナー補給の制限に使用する下側トナー補給制限リミット値に対する、制御切り替えの下側制御切替リミット値は、上述した制御切り替えの上側制御切替リミット値と同様にして設定する。
【0127】
以下、画像形成装置100の制御部110による、現像コントラスト電圧の制御とトナー補給動作の制御とを切り替える制御切替処理について、図5を参照して説明する。
【0128】
本制御切替処理は画像形成装置100が画像を形成する際に制御部110が実行する。画像形成が開始されると、制御部110は、トナー濃度センサによってT/D比を検出する(ステップS501)。次に、制御部110は画像データからビデオカウント値を求め、ビデオカウント値からトナー消費量を算出する(ステップS502)。ステップS501の検出結果及びステップS502の算出結果に基づいて、制御部110はトナー補給が必要か否かを判定する(ステップS503)。ステップS503においてトナー補給が必要と判定された場合、制御部110はトナー搬送スクリュー32を駆動することによってトナー補給を行う(ステップS504)。この時のトナー補給量はT/D比とビデオカウント値とに基づく。ステップS503においてトナー補給が必要ないと判定された場合、制御部110は制御をステップS501に戻す。
【0129】
次に、制御部110は、前回パッチを形成してから所定枚数(例えば、24枚)の記録材に画像が形成されたか否かを判定する(ステップS505)。ステップS505において所定枚数の記録材に画像が形成されていないと判定された場合、制御部110は制御をステップS501に戻す。一方、ステップS505において所定枚数の記録材に画像が形成されたと判定された場合、パッチを形成する(ステップS506)。続いて、制御部110は、パッチの濃度を検出し(ステップS507)、パッチ形成時に検出されるT/D比とパッチ濃度とに基づいて、トナー補給制御及び現像コントラスト電圧制御を実行する(ステップS508)。ステップS508の後、制御部110は、画像形成を終了するか否かを判定し(ステップS509)、画像形成を継続する場合には制御をステップS501に戻し、画像形成を終了する場合には本制御を終了させる。
【0130】
以上、本発明を具体的な実施の形態に則して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。
【0131】
例えば、上述の実施の形態では、単一の像担持体上に複数色のトナー像を順次に形成し、このトナー像を順に中間転写体上に転写する画像形成を例にして説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、各々が像担持体を備える画像形成部を複数有し、各画像形成部の像担持体上に形成したトナー像を、中間転写体上に順次に転写する、所謂、タンデム型の画像形成装置としてもよい。
【0132】
また、上述の実施の形態では、画像形成装置は、中間転写体を有する中間転写方式の画像形成装置として説明したが、転写材担持体を備えた直接転写方式の画像形成装置にも、本発明は等しく適用し得るものである。周知のように、直接転写方式の画像形成装置は、単一又は複数の像担持体(感光体等)上に形成されたトナー像を、転写材担持体としての搬送ベルト等の上に担持された転写材に転写することで、転写材上に単色又は複数色の画像を形成する。
【0133】
上述の実施の形態は、フルカラー画像などを形成可能なカラー画像形成装置において好適に作用するものであるが、単色の画像を形成する単色画像形成装置にも適用し得るものである。
【0134】
上述の実施の形態では、トナー濃度センサ14とビデオカウンタ220とを用いた。そして、トナー濃度センサ14の結果は補給制御制限領域の判断(補給動作の選択)に用い、ビデオカウンタ220の結果は、画像濃度センサ12の結果と共に補給トナー量の算出に用いた。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、トナー濃度検知センサとしていずれか一つを用いてもよい。例えば、トナー濃度検知手段としてトナー濃度センサ14を用いる場合には、その検知結果に基づいてトナー濃度T/Dが所定値となるように補給トナー量を求める。これと共に、上述した実施の形態と同様にその検知結果に基づいて補給動作を選択することができる。
【0135】
また例えば、トナー濃度検知手段としてビデオカウンタ220を用いる場合には、上述した実施の形態と同様にその検知結果に基づいて補給トナー量を求めると共に、その検知結果に基づいてトナー濃度T/Dを求めて補給動作を選択することができる。
【0136】
上述した実施の形態では、画像濃度センサは、感光ドラム上でパッチ画像の濃度を検知するよう構成したものについて説明したが、これに限定されるものではない。パッチ画像は、中間転写体、転写材担持体などの感光ドラムからトナー像が転写される被転写体上に転写した後、その上で濃度を検知するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0137】
12 画像濃度センサ(画像濃度検知手段)
14 トナー濃度センサ(トナー濃度検知手段)
30 トナー補給手段
220 ビデオカウンタ(トナー濃度検知手段)
110 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体上の静電潜像との間に電位差を形成する現像コントラスト電圧によって静電潜像にトナーを供給してトナー像とする現像器と、
前記現像器にトナーを補給するトナー補給手段と、
前記像担持体に形成された画像濃度制御用の基準静電潜像が前記現像器により現像されることにより形成された画像濃度制御用の基準トナー像の濃度を検知する画像濃度検知手段と、
前記現像器内の現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段と、
前記トナー濃度検知手段の検知結果がトナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値を上回ったときに前記トナー補給手段によるトナー補給の量を調整し、前記トナー濃度検知手段の検知結果がトナー補給を制限するための下側トナー補給制限リミット値を下回ったときに前記トナー補給手段によるトナー補給の量を調整するよう制御するトナー補給制御手段と、
前記画像濃度検知手段の検知結果が、前記トナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値よりも下側に設定された上側制御切替リミット値を上回ったときに、トナー補給制御から現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を高めるように制御すると共に、前記画像濃度検知手段の検知結果が、前記トナー補給を制限するための下側トナー補給制限リミット値よりも上側に設定された下側制御切替リミット値を下回ったときに、前記トナー補給制御から前記現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を低くするように制御する画像濃度制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値よりも下側に設定された上側制御切替リミット値と、前記トナー補給を制限するための下側トナー補給制限リミット値よりも上側に設定された下側制御切替リミット値とは、それぞれ前記トナー濃度検知手段の誤検知幅内で設定されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体上の静電潜像との間に電位差を形成する現像コントラスト電圧によって静電潜像にトナーを供給してトナー像とする現像器と、
前記現像器にトナーを補給するトナー補給手段と、
前記像担持体に形成された画像濃度制御用の基準静電潜像が前記現像器により現像されることにより形成された画像濃度制御用の基準トナー像の濃度を検知する画像濃度検知手段と、
前記現像器内の現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段と、
前記トナー濃度検知手段の検知結果に基づいて前記トナー補給手段を駆動してトナー補給を実行するトナー補給制御手段と、
前記画像濃度検知手段の検知結果に基づいて、トナー補給制御と現像コントラスト制御とを切り替えて画像濃度を調整するように制御する画像濃度制御手段と、
を備えた画像形成装置の制御方法であって、
前記トナー補給の制御手段が、前記トナー濃度検知手段の検知結果がトナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値を上回ったときに前記トナー補給手段によるトナー補給を調整し、
前記トナー濃度検知手段の検知結果がトナー補給を制限するための下側トナー補給制限リミット値を下回ったときに前記トナー補給手段によるトナー補給を調整し、
前記画像濃度検知手段の検知結果が、前記トナー補給を制限するための上側トナー補給制限リミット値よりも下側に設定された上側制御切替リミット値を上回ったときに、トナー補給制御から現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を高め、
前記画像濃度検知手段の検知結果が、前記トナー補給を制限するための下側トナー補給制限リミット値よりも上側に設定された上側制御切替リミット値を下回ったときに、前記トナー補給制御から前記現像コントラスト制御へ切り替えて画像濃度を低くすることを特徴とする画像形成装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−3246(P2012−3246A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104368(P2011−104368)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】