説明

トラクタ

【課題】隔壁の剛性を強くすると共に、支持腕を短く形成できるようにして、支持腕に大きな剛性が要求されないようにする。
【解決手段】ボンネット内と操縦部側とを仕切る隔壁が設けられ、隔壁の後方にステアリングハンドルが設けられ、ステアリングハンドルのハンドル軸と該ハンドル軸を回転自在に保持するハンドルポストとが、隔壁の後方に前下がりに傾斜して配置されたトラクタにおいて、
前記隔壁に、後方に膨出した支持凸部が設けられ、支持凸部に支持腕を介してハンドルポストが支持され、隔壁後方の支持凸部の下方に、パワステコントローラが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタには、ボンネット内と操縦部側とを仕切る隔壁が設けられ、隔壁の後方にステアリングハンドルが設けられ、ステアリングハンドルのハンドル軸と該ハンドル軸を回転自在に保持するハンドルポストとが、隔壁の後方に前下がりに傾斜して配置され、隔壁に、支持腕を介してハンドルポストが支持されたものがある。
この種の従来のトラクタでは、ボンネット内と操縦部側とを仕切る隔壁は、上下に凹凸のない板状に形成され、ハンドルポストを支持するための支持腕を、隔壁から大きく後方突出していた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−206096号公報
【特許文献2】特開2000−247240号公報
【特許文献3】特開平10−166882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、隔壁が凹凸のない板状であったため隔壁の剛性が弱くなるという問題があった。また、隔壁から支持腕を大きく後方突出し、その後方突出した後端側にハンドルポストを固着しているので、支持腕の基端側に大きな曲げモーメントがかかるため、支持腕にも大きな剛性が要求されることとなった。
本発明は上記問題点に鑑み、隔壁の剛性を強くすると共に、支持腕を短く形成できるようにして、支持腕に大きな曲げモーメントがかからないようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、ボンネット内と操縦部側とを仕切る隔壁が設けられ、隔壁の後方にステアリングハンドルが設けられ、ステアリングハンドルのハンドル軸と該ハンドル軸を回転自在に保持するハンドルポストとが、隔壁の後方に前下がりに傾斜して配置されたトラクタにおいて、
前記隔壁に、後方に膨出した支持凸部が設けられ、支持凸部に支持腕を介してハンドルポストが支持され、隔壁後方の支持凸部の下方に、パワステコントローラが設けられている点にある。
【0005】
また、本発明の他の技術的手段は、前記パワステコントローラは、支持凸部の後壁よりも前方に突出するように、ハンドル軸の下端部の下方前方に配置され、パワステコントローラの入力軸とハンドル軸とは、自在継ぎ手により接続されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、隔壁の支持凸部に左右一対の支持腕が前方突設され、ステアリングハンドルをチルト可能にするように、支持腕間に、ハンドルブラケットが左右軸廻りに揺動自在に支持されると共に、ハンドルブラケットに、ハンドルポストが固着されている点にある。
【0006】
また、本発明の他の技術的手段は、前記ハンドルブラケットは、左右一対の側壁と該側壁の上端間を連結する上壁とをコの字状に有し、ハンドルポストの下端部及びハンドル軸の下端部は、ハンドルブラケットの上壁を貫通して側壁間に配置され、ハンドルポストの下部がハンドルブラケットの上壁に固着されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記ハンドルブラケットを、前記左右一対の支持腕に対して左右軸廻りに揺動調整するためのチルト機構が設けられている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、隔壁の後方であって支持凸部及び支持腕の上方に操縦用計器が設けられ、隔壁の後方に、操縦パネルが、前記支持凸部、支持腕及び操縦用計器の周囲を覆うように設けられ、操縦パネルに、操縦用計器の後面側を露出させるように開口窓が設けられている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、支持凸部に、後方突出した支持部材を介して、左右方向のブレーキ軸が回転自在に支持され、このブレーキ軸に、左ブレーキペダルと右ブレーキペダルとがブレーキ軸廻りに回転自在に支持され、支持凸部の前側に、左ブレーキを作動させるための左ブレーキシリンダと、右ブレーキを作動させるための右ブレーキシリンダとが配置され、左ブレーキペダルの踏み込み動作により左ブレーキシリンダが作動するように、左ブレーキペダルは左ブレーキシリンダに連結され、右ブレーキペダルの踏み込み動作により右ブレーキシリンダが作動するように、右ブレーキペダルは右ブレーキシリンダに連結されている点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、支持凸部に、後方突出した支持部材を介して、左右方向のクラッチ軸が回転自在に支持され、このクラッチ軸に、クラッチペダルがクラッチ軸廻りに回転自在に支持されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記隔壁の支持凸部上方に、前方突出した支持ブラケットが設けられ、支持ブラケットに、左右方向の連結軸が設けられ、
ボンネットの後端部上側に係合片が設けられ、係合片に、前記連結軸が挿通される係合溝が設けられ、前記連結軸が係合溝に挿通されることにより、ボンネットが連結軸廻りに上方に開閉自在に支持されている点にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持凸部によって隔壁に凹凸が形成されて、隔壁の剛性を強くすることができる。支持凸部が後方に膨出している長さ分だけ、支持腕が短くて済むようになり、このため、ステアリングハンドルの重量による支持腕の基端側にかかる曲げモーメントを小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜5において、1はトラクタ車体で、エンジン2、フライホイールハウジング3、クラッチハウジング4、ミッションケース5、前車軸フレーム6等を直結して構成され、トラクタ車体1に前輪7と後輪8とが設けられている。
トラクタ車体1の前部にエンジン1等を覆うボンネット9が設けられ、トラクタ車体1の後部側に運転席11が設けられ、運転席11の前側が操縦部12とされている。トラクタ車体1の中央部に、ボンネット9内と操縦部12側とを仕切る隔壁13が設けられている。トラクタ車体1の両側にステップ14が設けられている。
【0011】
隔壁13の後方であって運転席11の前方に、ステアリングハンドル15が設けられ、ステアリングハンドル15のハンドル軸16と該ハンドル軸16を回転自在に保持するハンドルポスト17とが、隔壁13の後方に前下がりに傾斜して配置されている。
前記クラッチハウジング4及びミッションケース5内には、エンジン2からの動力を前輪7又は後輪8に伝達する走行伝達系とPTO伝達系のトランスミッションが内蔵されている。トランスミッションの走行伝達系は前後進切換装置と変速装置とを有する。前後進切換装置はエンジン動力を、前進回転と後進回転とに変換するものである。変速装置は、3段又は4段に変速する主変速装置、これを更に減速する副変速装置、超減速装置等を具備するものである。前後進切換装置及び変速装置は、共に油圧クラッチを有し、それぞれ前後進制御弁、変速制御弁によって制御される油圧切り換え式となっている。
【0012】
図6、図8、図16〜図19に示すように、隔壁13の上下方向中途部に、後方に膨出した支持凸部21が設けられ、支持凸部21に左右一対の支持腕23,24(左支持腕23,右支持腕24)が後方突設され、左右一対の支持腕23,24は、連結杆25により互いに連結されている。支持腕23,24の下部側はそれぞれ連結板部27,28を介してそれぞれ隔壁13の支持凸部21下方に連結されている。支持凸部21における支持腕23,24の右側に、コの字状の支持部材31が後方突設され、支持腕23,24の左側に支持部材32,33が後方突設されている。
【0013】
図6、図7、図10、図12、図15において、支持腕23,24の後端部間にハンドルブラケット35が設けられている。ハンドルブラケット35は、左右一対の側壁37,38(左側壁37、右側壁38)と該側壁37,38の上端間を連結する上壁39とをコの字状に有し、ハンドルポスト17の下端部及びハンドル軸16の下端部は、ハンドルブラケット35の上壁39を貫通して側壁37,38間に配置され、ハンドルポスト17の下部がハンドルブラケット35の上壁39に溶接等により固着されている。ハンドルブラケット35の一対の側壁37,38が、ボルトナット等の取付具41,42により、一対の支持腕23,24の後端部にそれぞれ左右軸(取付具41,42の軸)廻りに揺動自在に支持されている。これにより、ハンドルポスト17は、ハンドルブラケット35に固着され、ハンドルポスト17乃至ステアリングハンドル15は、ハンドルブラケット35及び左右一対の支持腕23,24を介して、支持凸部21に左右軸廻りに揺動自在に支持されて、前記左右軸廻りにチルト可能とされている。
【0014】
ステアリングハンドル15のパワステコントローラ43が、隔壁13後方の支持凸部21の下方に設けられている。パワステコントローラ43は、支持凸部21の後壁21aよりも前方に突出するように、ハンドル軸16の下端部の下方前方に配置され、図14にも示すように、支持腕23,24間に取付板46を介して取り付けられている。パワステコントローラ43の入力軸44とハンドル軸16とは、自在継ぎ手45により接続されている。
隔壁13の後方であって支持凸部21の上方に操縦用計器47が設けられ、操縦用計器47は前上がりに傾斜して配置され、操縦用計器47の一部が支持凸部21の後壁21aよりも前方に突出されている。操縦用計器47は、取付部材48,49等を介して隔壁13及び支持腕23,24等に取り付けられている。隔壁13の後方に、操縦パネル51が設けられている。操縦パネル51は、取付部材50等を介して隔壁13に取り付けられ、支持凸部21、左右一対の支持腕23,24及び操縦用計器47の周囲を覆っている。操縦パネル47に、操縦用計器47の後面側を露出させるように開口窓52が設けられている。操縦パネル51の後方側に、ハンドルポスト17及びハンドルブラケット37等を覆うようにハンドルカバー53が設けられている。
【0015】
図6、図8、図14において、支持凸部21に、支持部材31を介して左右方向のブレーキ軸54が回転自在に支持されている。ブレーキ軸54に筒体55,56を介して左ブレーキペダル57と右ブレーキペダル58とがブレーキ軸54廻りに回転自在に支持されている。支持凸部21の前側に、左ブレーキを作動させるための左ブレーキシリンダ59と、右ブレーキを作動させるための右ブレーキシリンダ60とが設けられている。左ブレーキペダル57の踏み込み動作により左ブレーキシリンダ59が作動するように、左ブレーキペダル57は左ブレーキシリンダ59に連結され、右ブレーキペダル58の踏み込み動作により右ブレーキシリンダ60が作動するように、右ブレーキペダル58は右ブレーキシリンダ60に連結されている。
【0016】
支持凸部21に、後方突出した支持部材32,33を介して、左右方向のクラッチ軸61が回転自在に支持され、このクラッチ軸61に、クラッチペダル62が筒体63を介してクラッチ軸61廻りに回転自在に支持され、クラッチペダル62の踏み込み動作によりクラッチが作動するように、クラッチペダル62はV字状の連動体65及び連動ケーブル66を介してクラッチに連結されている。なお、68はクラッチペダル62の揺動を規制するストッパーで、支持凸部21に突設され、連動体65が上側から接当することにより、省略のバネに抗してクラッチペダル62の揺動を規制している。
【0017】
図6、図7、図9、図10、図15において、ハンドルポスト17の左側に、シャトルレバー軸71がハンドルポスト17と略平行に設けられている。ハンドルポスト17とハンドルブラケット35に、上支持板73と下支持板74とがそれぞれ左側方に突設され、これら支持板73,74に、シャトルレバー軸71が軸受け75等を介して軸心廻り回転自在に支持されている。シャトルレバー軸71の上端部に、シャトルレバー76がボルトナット等の締結具77により前後軸廻りに上下揺動自在に連結されている。シャトルレバー76の基部の後端に、ロック軸78が下方に突設されている。図11にも示すように、上支持板73にロック軸78が挿通される挿通窓79とロック溝80とが連続状に設けられ、ロック軸78は、上支持板73に挿通窓79又はロック溝80を介して上下方向に挿通され、図7及び図9に実線で示すように、シャトルレバー76を上方に揺動させたときに、ロック軸80がロック溝80から挿通窓79に戻り、これにより、シャトルレバー76がシャトルレバー軸71廻りに中立位置Nから前進位置F及び後進位置Rに左右揺動可能になり、図9に鎖線で示すように、シャトルレバー76を下方に揺動させたときに、ロック軸78が挿通窓79からロック溝80に入り、ロック軸78のロック溝80への係合により、シャトルレバー76が中立位置Nから前進位置F及び後進位置Rに左右揺動不能になるようにロックされる。
【0018】
また、シャトルレバー軸71は、突出片82、連結レバー83、揺動レバー84、連動ケーブル85等を介して前記前後進切換装置の前後進制御弁に連結されており、シャトルレバー76をシャトルレバー軸71廻りに、中立位置Nから前進位置Fに揺動することにより、シャトルレバー軸71を、軸心廻りに図10に示す矢印a方向に回動させ、前記前後進切換装置の前後進制御弁を操作して前進走行に切り換え、また、シャトルレバー76をシャトルレバー軸71廻りに、中立位置Nから後進位置Rに揺動することにより、シャトルレバー軸71を、軸心廻りに図10に示す矢印b方向に回動させて、前記前後進切換装置の前後進制御弁を操作して後進走行に切り換えるように構成されている。
【0019】
ハンドルポスト17又は上支持板73にレバーガード87が突設されている。レバーガード87は、シャトルレバー76に物等が衝当して不測に操作されないようにシャトルレバー76を保護している。
図6、図7、図12、図15において、前記左支持腕23とハンドルブラケット35との間に、ハンドルブラケット35乃至ステアリングハンドル15を左右軸廻りに揺動調整するためのチルト機構89が設けられている。チルト機構89は、固定板91とロック片92と係止片93とチルト操作ペダル(チルト操作ペダル)94とを備え、固定板91は右支持腕24との間で、ハンドルブラケット35の右側壁38の下部と、ロック片92と、係止片93とを左右に挟むように配置されると共に、右支持腕24に対して固定されている。
【0020】
ハンドルブラケット35の右側壁38の下端縁に鋸歯状の凹凸部96が形成され、ロック片92の上縁部に前記凹凸部96に対応する鋸歯状の凹凸部97が形成され、左側壁37とロック片92とは凹凸部96,97を介して互いに噛合するように構成されている。ロック片92の後端部は、ボルトナット等の締結具98により固定板91に左右軸廻り(矢印f方向及び矢印g方向)に揺動自在に連結され、ロック片92は、左右軸廻りの揺動により、右側壁38に対して接離移動して右側壁38に噛合及び噛合解除可能になっている。
【0021】
図13にも示すように、チルト操作ペダル94の基部に左右方向の支持軸100が突設され、支持軸100は右支持腕24及び固定板91に対して軸廻り回動自在に挿通されて、ナット102の螺合により抜け止めされている。支持軸100に係止片93が外嵌固定され、チルト操作ペダル94の支持軸100廻りの揺動操作により、支持軸100と共に係止片93が支持軸100廻りに揺動するように構成されている。
ロック片92の前端部下側に、係合溝103が設けられ、係止片93に、係合溝103に係合する係合凸部104が設けられ、ロック片92と係止片93とは係合溝103及び係合凸部104を介して互いに係合されている。係止片93と固定板91との間に、バネ105が連結されており、バネ105は、係止片93を支持軸100廻りに図12に示す矢印d方向に付勢している。バネ105の付勢によって、チルト操作ペダル94及び係止片93が実線で示す如く矢印d方向(後方)に揺動し、このとき、係止片93は、係合凸部104及び係合溝103を介してロック片92を左右軸廻りに図12に示す矢印f方向(上方)に押圧して、ロック片92を左支持腕23に噛合させ、これにより、ハンドルブラケット35、ハンドルポスト17乃至ステアリングハンドル15を、左右軸廻りに揺動不能にロックするように構成されている。また、チルト操作ペダル94を、バネ105の付勢に抗して、鎖線で示す如く図12に示す矢印e方向(前方)に揺動させると、係止片93が同方向(矢印e方向)に揺動し、これにより、係止片93が、係合凸部104及び係合溝103を介して、ロック片92を、左右軸廻りに図12に示す矢印g方向(下方)に揺動させ、これにより、ロック片92の左支持腕23への噛合を解除し、ハンドルブラケット35、ハンドルポスト17乃至ステアリングハンドル15を、左右軸廻りに揺動可能にするように構成されている。
【0022】
従って、ステアリングハンドル15をチルト調整するには、チルト操作ペダル94を、鎖線で示す如く矢印e方向(前方)に押圧揺動して、ロック片92の左支持腕23への噛合を解除し、ハンドルポスト17乃至ステアリングハンドル15を、左右軸廻りに揺動調整した後に、チルト操作ペダル94の前方への押圧揺動を解除すればよく、バネ105の付勢によって、チルト操作ペダル94及び係止片93が実線で示す如く矢印d方向(後方)に揺動し、ロック片92が左支持腕23に噛合して、ハンドルポスト17乃至ステアリングハンドル15が揺動調整した位置で、左右軸廻りに揺動不能にロックされる。
【0023】
図20に示すように、前記隔壁13の支持凸部21上方に、前方突出した支持ブラケット107が設けられ、支持ブラケット107に、左右方向の連結軸108が設けられている。ボンネット9の後端部上側に係合片109が設けられ、係合片109に、前記連結軸108が挿通される係合溝110が設けられている。係合片109の下端部前端側に、係合溝110が下方に向けて開口する開口部112が設けられ、前記係合溝110は、開口部112から前方に没入した下横溝部113と下横溝部113の前端から上方に没入した縦溝部114と、縦溝部114の上端から前方に没入した上横溝部115とを有している。
【0024】
ボンネット9内に、油圧シリンダ等により構成した伸縮自在のアクチュエータ117が設けられ、アクチュエータ117の一端はトラクタ車体1側に連結され、アクチュエータ117の他端はボンネット9の基端側の中途部に連結されており、係合片109の係合溝110に連結軸108を挿通した状態で、アクチュエータ117を伸長させることにより、ボンネット9が連結軸108を支点に上方揺動するように構成されている。
そして、アクチュエータ117の伸長によって、ボンネット9を前上がりに傾斜させた状態で、前記連結軸108を開口部112から係合溝103に挿脱自在に挿入した後に、ボンネット9を、連結軸108を支点に下方揺動して水平状態にしたときに、連結軸108が係合溝110の上横溝部115の前端部に係合されると共に、連結軸108が係合溝110から開口部112を通して抜けなくなるように、ボンネット9後端乃至係合片109の後端がスペーサ等を介して隔壁13に接当されてボンネット9が後方移動不能になるように構成されている。
【0025】
上記実施の形態によれば、隔壁13に、後方に膨出した支持凸部21が設けられ、支持凸部21に支持腕23,24を介してハンドルポスト17が支持されているので、支持凸部21によって隔壁13に凹凸が形成されて、隔壁13の剛性が強くなる。しかも、支持凸部21が後方に膨出している長さ分だけ、支持腕23,24が短くて済むようになり、このため、ステアリングハンドル15の重量による支持腕23,24の基端側にかかる曲げモーメントが小さくなり、支持腕23,24を比較的剛性の弱いもので形成しても、支持腕23,24によってステアリングハンドル15を不測に曲がるおそれがなくなる。また、隔壁13後方の支持凸部21の下方に、パワステコントローラ43が設けられているので、パワステコントローラ43を、支持凸部21の後壁21aよりも前方に突出するように配置することができて、隔壁13からステアリングハンドル15の後端までの前後幅を極力小さくして、運転席11周辺の居住空間を広げることができる。
【0026】
また、隔壁13の後方であって支持凸部21及び支持腕23,24の上方に操縦用計器47が設けられているので、支持凸部21及び支持腕23,24の上方の空間を有効に利用して、ステアリングハンドル15の前方側に操縦用計器47をコンパクトに収納することができる。
また、支持凸部21に、後方突出した支持部材31を介して、左右方向のブレーキ軸54が回転自在に支持され、このブレーキ軸54に、左ブレーキペダル57と右ブレーキペダル58とがブレーキ軸54廻りに回転自在に支持されているので、剛性が高くなった隔壁13の支持凸部21を利用して、左ブレーキペダル57及び右ブレーキペダル58を、良好に支持することができる。また、支持凸部21の前側に、左ブレーキを作動させるための左ブレーキシリンダ59と、右ブレーキを作動させるための右ブレーキシリンダ60とが配置されているので、後方に膨出した支持凸部21の前方側の空間を、左ブレーキシリンダ59及び右ブレーキシリンダ60の収納場所として有効に利用することができ、ブレーキシリンダ59,60乃至ブレーキペダル57,58の連動部分を隔壁13の前後にコンパクトに配置することができる。
【0027】
さらに、支持凸部21に、後方突出した支持部材32,33を介して、左右方向のクラッチ軸61が回転自在に支持され、このクラッチ軸61に、クラッチペダル62がクラッチ軸61廻りに回転自在に支持されているので、剛性が高くなった隔壁13の支持凸部21を利用して、クラッチペダル62を、良好に支持することができる。
また、隔壁13の支持凸部21上方に、前方突出した支持ブラケット107が設けられ、支持ブラケット107に、左右方向の連結軸108が設けられ、ボンネット9の後端部上側に係合片109が設けられ、係合片109に、前記連結軸108が挿通される係合溝110が設けられ、前記連結軸108が係合溝110に挿通されることにより、ボンネット9が連結軸108廻りに上方に開閉自在に支持されているので、剛性が高くなった隔壁13の支持凸部21の上方を利用して、ボンネット9を良好に支持することができる。
【0028】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示すトラクタの左側面図である。
【図2】同トラクタの操縦部部分の左側面図である。
【図3】同トラクタの操縦部部分の右側面図である。
【図4】同トラクタの操縦部部分の平面図である。
【図5】同トラクタの操縦部部分の背面図である。
【図6】同ステアリングハンドル部分の側面図である。
【図7】同ステアリングハンドル部分の背面図である。
【図8】同ステアリングハンドル部分の平面図ある。
【図9】同シャトルレバー部分の背面図である。
【図10】同シャトルレバー部分の平面図である。
【図11】同上支持板の平面図である。
【図12】同チルト機構部分の側面図である。
【図13】同チルト操作ペダルの背面図である。
【図14】同トラクタの操縦部部分の斜視図である。
【図15】同トラクタの操縦部部分の斜視図である。
【図16】同隔壁部分の背面図である。
【図17】同隔壁部分の右側面図である。
【図18】同隔壁部分の左側面図である。
【図19】同隔壁部分の平面図である。
【図20】同トラクタのボンネット部分の側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 トラクタ車体
9 ボンネット
11 運転席
12 操作部
15 ステアリングハンドル
16 ハンドル軸
17 ハンドルポスト
21 支持凸部
21a 後壁
23 支持腕
24 支持腕
35 ハンドルブラケット
37 側壁
38 側壁
39 上壁
43 パワステコントローラ
44 入力軸
45 自在継ぎ手
47 操縦用計器
51 操縦パネル
52 開口窓
54 ブレーキ軸
57 左ブレーキペダル
58 右ブレーキペダル
59 左ブレーキシリンダ
60 右ブレーキシリンダ
61 クラッチ軸
62 クラッチペダル
89 チルト機構
107 支持ブラケット
108 連結ピン
109 係合片
110 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネット(9)内と操縦部(12)側とを仕切る隔壁(13)が設けられ、隔壁(13)の後方にステアリングハンドル(15)が設けられ、ステアリングハンドル(15)のハンドル軸(16)と該ハンドル軸(16)を回転自在に保持するハンドルポスト(17)とが、隔壁(13)の後方に前下がりに傾斜して配置されたトラクタにおいて、
前記隔壁(13)に、後方に膨出した支持凸部(21)が設けられ、支持凸部(21)に支持腕(23,24)を介してハンドルポスト(17)が支持され、隔壁(13)後方の支持凸部(21)の下方に、パワステコントローラ(43)が設けられていることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記パワステコントローラ(43)は、支持凸部(21)の後壁(21a)よりも前方に突出するように、ハンドル軸(16)の下端部の下方前方に配置され、パワステコントローラ(43)の入力軸(44)とハンドル軸(16)とは、自在継ぎ手(45)により接続されていることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
隔壁(13)の支持凸部(21)に左右一対の支持腕(23,24)が前方突設され、ステアリングハンドル(15)をチルト可能にするように、支持腕(23,24)間に、ハンドルブラケット(35)が左右軸廻りに揺動自在に支持されると共に、ハンドルブラケット(35)に、ハンドルポスト(17)が固着されていることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項4】
前記ハンドルブラケット(35)は、左右一対の側壁(37,38)と該側壁(37,38)の上端間を連結する上壁(39)とをコの字状に有し、ハンドルポスト(17)の下端部及びハンドル軸(16)の下端部は、ハンドルブラケット(35)の上壁(39)を貫通して側壁(37,38)間に配置され、ハンドルポスト(17)の下部がハンドルブラケット(35)の上壁(39)に固着されていることを特徴とする請求項3に記載のトラクタ。
【請求項5】
前記ハンドルブラケット(35)を、前記左右一対の支持腕(23,24)に対して左右軸廻りに揺動調整するためのチルト機構(89)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のトラクタ。
【請求項6】
隔壁(13)の後方であって支持凸部(21)及び支持腕(23,24)の上方に操縦用計器(47)が設けられ、隔壁(13)の後方に、操縦パネル(51)が、前記支持凸部(21)、支持腕(23,24)及び操縦用計器(47)の周囲を覆うように設けられ、操縦パネル(51)に、操縦用計器(47)の後面側を露出させるように開口窓(52)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項7】
支持凸部(21)に、後方突出した支持部材(31)を介して、左右方向のブレーキ軸(54)が回転自在に支持され、このブレーキ軸(54)に、左ブレーキペダル(57)と右ブレーキペダル(58)とがブレーキ軸(54)廻りに回転自在に支持され、支持凸部(21)の前側に、左ブレーキを作動させるための左ブレーキシリンダ(59)と、右ブレーキを作動させるための右ブレーキシリンダ(60)とが配置され、左ブレーキペダル(57)の踏み込み動作により左ブレーキシリンダ(59)が作動するように、左ブレーキペダル(57)は左ブレーキシリンダ(59)に連結され、右ブレーキペダル(58)の踏み込み動作により右ブレーキシリンダ(60)が作動するように、右ブレーキペダル(58)は右ブレーキシリンダ(60)に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項8】
支持凸部(21)に、後方突出した支持部材(32,33)を介して、左右方向のクラッチ軸(61)が回転自在に支持され、このクラッチ軸(61)に、クラッチペダル(62)がクラッチ軸(61)廻りに回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項9】
前記隔壁(13)の支持凸部(21)上方に、前方突出した支持ブラケット(107)が設けられ、支持ブラケット(107)に、左右方向の連結軸(108)が設けられ、
ボンネット(9)の後端部上側に係合片(109)が設けられ、係合片(109)に、前記連結軸(108)が挿通される係合溝(110)が設けられ、前記連結軸(108)が係合溝(110)に挿通されることにより、ボンネット(9)が連結軸(108)廻りに上方に開閉自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−327379(P2006−327379A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152903(P2005−152903)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】