説明

トレッド製造装置及びトレッド製造方法

【課題】台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッドの製造に要する時間を短縮して生産性を向上させる。
【解決手段】トレッド製造装置は、未加硫トレッド90の押出機10と、未加硫トレッド90が配置される剛体コア2と、加硫モールド内で未加硫トレッド90を加硫する加硫装置とを備えている。押出機10により未加硫トレッド90を押出成形して、剛体コア2の外周に、押出成形された未加硫トレッド90を環状に配置する。環状の未加硫トレッド90を剛体コア2とともに加硫モールドに収納して、加硫装置により未加硫トレッド90を加硫し、台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッドを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛体コアを使用して環状の未加硫トレッドを加硫し、台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッドを製造するトレッド製造装置とトレッド製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造後のタイヤを有効に活用して省資源化を推進するため、使用後のタイヤのトレッドゴムを更生した更生タイヤが使用されており、特に、大型車両用タイヤでタイヤの更生が広く普及している。更生タイヤは、例えば、予め加硫したプレキュアトレッドを、トレッドゴムを除去した台タイヤの外周面に貼り付けて製造される。このプレキュアトレッドを製造する装置として、従来、支持物にリボン状のゴムを積層して環状の未加硫トレッドを成形し、未加硫トレッドを加硫して環状のプレキュアトレッドを製造する製造装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ただし、この従来の製造装置では、ゴムを複数のローラで延ばしてから積層等を行うため、装置内の部品数が多くなり、装置の構成が複雑になる、という問題がある。また、ゴムの積層に伴い、未加硫トレッドの成形に要する手間や時間が増加して、環状のプレキュアトレッドの製造時間が長くなる傾向があり、生産性の向上が求められる。更に、積層されたゴム間にエアが入り込んだときには、未加硫トレッド内にエア入りやベアが発生する虞もあり、プレキュアトレッドに発生する欠陥をより確実に抑制する観点からも改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0191346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッドに欠陥が発生するのを抑制するとともに、プレキュアトレッドの製造に要する時間を短縮して生産性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、未加硫トレッドを加硫して台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッドを製造するトレッド製造装置であって、未加硫トレッドを押出成形する押出機と、押出成形された未加硫トレッドが外周に環状に配置される剛体コアと、環状の未加硫トレッドを剛体コアとともに加硫モールドに収納して加硫し、プレキュアトレッドを形成する加硫装置と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明は、未加硫トレッドを加硫して台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッドを製造するトレッド製造方法であって、未加硫トレッドを押出成形する工程と、剛体コアの外周に、押出成形された未加硫トレッドを環状に配置する工程と、環状の未加硫トレッドを剛体コアとともに加硫モールドに収納して加硫し、プレキュアトレッドを形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッドに欠陥が発生するのを抑制できるとともに、プレキュアトレッドの製造に要する時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のトレッド成形装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】口金の開口部を図1の矢印X方向から見た正面図である。
【図3】本実施形態の加硫装置の要部を示す断面図である。
【図4】未加硫トレッドを環状に配置した剛体コアを示す側面図である。
【図5】未加硫トレッドの接合部を拡大して示す図である。
【図6】プレキュアトレッドと台タイヤを結合する過程を示す斜視図である。
【図7】プレキュアトレッドを結合する前後のタイヤを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のトレッド製造装置とトレッド製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態のトレッド製造装置とトレッド製造方法は、剛体コアを使用して環状の未加硫トレッドを加硫し、台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッド(加硫済のトレッド部材)を製造する。また、トレッド製造装置は、剛体コアに環状の未加硫トレッドを成形するトレッド成形装置と、剛体コア上の未加硫トレッドを加硫してプレキュアトレッドを形成する加硫装置とを備え、各装置を順に経て、プレキュアトレッドを製造する。
【0010】
図1は、本実施形態のトレッド成形装置の概略構成を示す側面図であり、押出機10の一部を透視して、内部構成を点線で示している。
トレッド成形装置1は、図示のように、軸線が水平に配置された剛体コア2と、剛体コア2の半径方向外側に設けられた押出機10とを備えている。トレッド成形装置1は、剛体コア2に、押出機10で押出成形した未加硫トレッド90を配置して、環状の未加硫トレッド90(図1では二点鎖線で示す)を成形する。
【0011】
剛体コア2は、環状の未加硫トレッド90の成形時に、未加硫トレッド90を支持する支持体であり、かつ、加硫時に、未加硫トレッド90の内面を型付けして、プレキュアトレッドの内面形状を規定する内型でもある。そのため、剛体コア2は、製造するプレキュアトレッドの内面形状に応じた外面形状を有する。また、剛体コア2は、駆動装置(図示せず)により軸線周りに回転可能に支持され、駆動装置に設けられたモータ等の駆動源と、その回転動力の伝達機構により回転駆動され、所定の回転速度で回転(図の矢印R)して任意の回転角で停止する。剛体コア2は、回転しつつ、押出成形された未加硫トレッド90が外周に巻き付けられて、未加硫トレッド90が外周に環状に配置され、環状の未加硫トレッド90を同芯状に保持する。
【0012】
ここで、未加硫トレッド90は、帯状に形成された未加硫ゴム部材であり、押出機10により、製造するプレキュアトレッドの断面形状に応じた断面形状に成形された後、剛体コア2の外周に1周配置される。また、本実施形態では、剛体コア2の外周の所定範囲に、アラミド繊維等からなる有機繊維コードを有する補強部材(図示せず)を予め配置し、その外周に未加硫トレッド90を巻き付ける。これにより、内周側に周方向に延びる有機繊維コード(周方向コード)が複数並列した環状の未加硫トレッド90を形成する。
【0013】
押出機10は、未加硫トレッド90の供給手段であり、未加硫ゴムを加熱混練して押し出す押出機本体11(図1では先端のみ示す)と、押出機本体11のゴムを押し出す先端部に設けられたギアポンプ12とを備えている。また、押出機10は、ギアポンプ12のゴム吐出口に取り付けられた口金20を備え、口金20の先端が、剛体コア2の上端に向けて配置されている。押出機10は、押出機本体11を稼動して、内部の未加硫ゴムを口金20まで流動させ、未加硫ゴムを、口金20の開口部(ゴム押出口)から所定量ずつ連続して押し出す。これにより、帯状の未加硫トレッド90を押出成形して、剛体コア2に所定速度で供給する。
【0014】
その際、押出機10は、押出機本体11から、ギアポンプ12の内部に未加硫ゴムを順次送り込む。また、ギアポンプ12に内蔵された一対の噛み合い歯車12A、12Bを、駆動装置(図示せず)により、互いに逆方向(図1の矢印で示すゴム吐出方向)に同期して回転させる。ギアポンプ12は、未加硫ゴムを回転する歯車12A、12Bにより搬送して、加圧した未加硫ゴムを定量で連続して吐き出し、口金20の開口部に向けて、所定圧力に加圧した未加硫ゴムを供給する。押出機10は、この未加硫ゴムを口金20の開口部から押し出して、未加硫トレッド90を、開口部の開口形状に応じた所定の断面形状に一体に成形する。
【0015】
図2は、口金20の開口部を図1の矢印X方向から見た正面図である。
開口部21は、ギアポンプ12の内部に連通するとともに、図示のように、口金20の端面に開口して、少なくとも端面側で、成形すべき未加硫トレッド90の断面形状に応じた開口形状に形成されている。ここでは、開口部21は、幅方向の両端部22間の部分が横長な矩形状をなし、端部22が、下方に突出して、かつ、先端に向かって次第に狭くなるように先細り形状に形成されている。その結果、開口部21は、両側の端部22が、幅方向の中央部23に比べて、上下方向に広く開口して開口高さが部分的に高くなっている。押出機10は、ゴム押出方向の先端部に備える口金20により、開口部21から未加硫ゴムを押し出して未加硫トレッド90を成形する。これにより、未加硫トレッド90を、設定されたコンターで一体に押し出して、一度の押し出しで所定の断面形状に成形する。
【0016】
成形後の未加硫トレッド90(図1参照)は、配置装置(図示せず)により、又は、人手により、先端が剛体コア2まで誘導されて、剛体コア2の外周に押し付けて圧着される。また、トレッド成形装置1は、剛体コア2を回転させて、未加硫トレッド90を剛体コア2に巻き付けて周方向に配置し、未加硫トレッド90を剛体コア2の外面や下層の部材に貼り付ける。剛体コア2は、押出機10から供給される未加硫トレッド90が、周方向に沿って1周に亘り巻き付けられて外周の全体に配置され、外周に、環状の未加硫トレッド90が成形される。その後、環状の未加硫トレッド90は、トレッド製造装置が備える搬送装置(図示せず)により、剛体コア2とともにトレッド成形装置1から取り外されて加硫装置へ搬送される。
【0017】
図3は、加硫装置30の要部を示す断面図であり、剛体コア2の幅方向に対応する方向の断面を示している。また、図3は、型閉めした状態の加硫装置30を切断して、左右方向の中央線を挟んだ一方側(左側)を示す半断面図である。
なお、加硫装置30についての説明で、単に周方向、半径方向、中心線方向というときには、それぞれ環状の加硫モールド40の周方向、半径方向(図3では左右方向)、半径方向に直交する中心線方向(図3では上下方向)のことをいう。
【0018】
加硫装置30は、図示のように、剛体コア2を内部に収納する加硫モールド40を備え、加硫モールド40内で未加硫トレッド90を加熱して加硫し、プレキュアトレッド91を形成する。加硫モールド40は、上下に対向して配置された一対のサイドモールド41、42と、それらの半径方向外側に配置され、周方向に複数に分割された分割モールド(セクターモールド)43とを有する。加硫モールド40は、プレキュアトレッド91の外面形状を規定する外型であり、複数の分割モールド43が半径方向に移動可能に、かつ、一対のサイドモールド41、42が接近及び離間する方向に相対移動可能に構成されている。
【0019】
加硫装置30は、これら各モールド41、42、43を、互いに離間した開放(型開き)位置と、所定位置に組み合わせて合体(密着)させた閉鎖(型閉め)位置(図3に示す位置)との間で移動させる。加硫装置30は、この型閉め位置への移動により、加硫モールド40内に剛体コア2と未加硫トレッド90とを収納する。また、各モールド41、42、43と剛体コア2間に、形成するプレキュアトレッド91の形状に応じたキャビティを区画し、その中に未加硫トレッド90を収納して加硫成型する。その際、各サイドモールド41、42で、プレキュアトレッド91の幅方向両側の端部形状を、分割モールド43で、プレキュアトレッド91の端部を除いた外面形状を、それぞれ成型(型付け)して所定形状に形成する。以下、これら各モールド41、42、43を含む装置各部について具体的に説明する。
【0020】
サイドモールド41、42は、環状をなし、加硫モールド40内に収納された剛体コア2の両側面に当接して、剛体コア2を上下方向から挟み込む。また、下サイドモールド42は、下プレート31(例えば下プラテン)の上面に取り付けられ、加硫モールド40内での位置が固定されている。これに対し、上サイドモールド41は、下プレート31の上方で上下方向に移動可能な上プレート32(例えば上プラテン)の下面に取り付けられている。上プレート32は、その上方に垂直に設置されたピストン・シリンダ機構等の昇降手段(図示せず)により上下方向に移動(昇降)し、上サイドモールド41を下サイドモールド42に離間及び接近させる。この各方向への変位に伴い、加硫モールド40が開放及び閉鎖され、剛体コア2の内部への収納と取り出しとが行われる。
【0021】
また、サイドモールド41、42には、環状の端部用モールド41A、42Aが、互いの対向面の外周にネジ等により着脱可能(交換可能)に取り付けられて、分割モールド43の内周面と剛体コア2の側面に当接して配置されている。これら端部用モールド41A、42Aは、加硫時に、未加硫トレッド90の幅方向両側の端部(側縁部)に接して、プレキュアトレッド91の端部形状を規定する着脱セグメントである。即ち、端部用モールド41A、42Aは、プレキュアトレッド91の端部を接触面で成形して、プレキュアトレッド91の端部の表面形状や長さを含む端部形状を所定形状に形成する。また、端部用モールド41A、42Aは、プレキュアトレッド91の端部形状を、結合される台タイヤの結合位置の形状(サイド部形状)に合わせて調整する端部形状調整用モールドとして機能する。そのため、端部用モールド41A、42Aは、各プレキュアトレッド91を結合する台タイヤの形状に応じて予め交換され、プレキュアトレッド91の端部形状を、台タイヤの結合位置の形状に合わせて形成する。
【0022】
複数の分割モールド43は、それぞれ平面視弧状をなし、周方向に組み合わされて全体として環状モールドを形成する。また、分割モールド43は、内周面(図3では右側面)に、プレキュアトレッド91の表面形状に合わせた凹部43Dが形成され、未加硫トレッド90を凹部43D内に収納して、トレッドパターンを含む所定形状に形成する。更に、複数の分割モールド43は、それぞれ半径方向外側の背面に、半径方向の移動を案内する傾斜面(傾斜ガイド部43A)が形成され、全体として、上方に向けて次第に縮径する円錐台形状に形成されている。これら複数の分割モールド43の半径方向外側には、それらを囲んで、分割モールド43を半径方向に同期して移動させるための移動部材である円筒状のアウターリング33が、加硫モールド40の中心線方向に移動可能に設けられている。
【0023】
アウターリング33は、上端部が、上プレート32の上方で上下方向に移動するボルスタープレート34の下面に、スペーサリング35を挟んで取り付けられている。ボルスタープレート34は、ピストン・シリンダ機構等の昇降手段(図示せず)により上下方向に移動(昇降)して、アウターリング33を中心線方向(図の矢印J、K方向)に移動させる。また、アウターリング33は、内周面の傾斜面33Aが、分割モールド43の傾斜ガイド部43Aと同一勾配で傾斜して形成されている。傾斜面33Aには複数のガイド溝(図示せず)が形成され、各ガイド溝が、各傾斜ガイド部43Aに固定されたスライドレール(図示せず)に連結されて、それらが傾斜方向に摺動可能に係合している。従って、アウターリング33が上下方向に移動すると、傾斜面33Aと傾斜ガイド部43Aとが傾斜方向に沿って摺動し、傾斜面33Aから分割モールド43に半径方向の内外方向の力が作用する。これにより、複数の分割モールド43が、アウターリング33の傾斜面33Aの傾斜に応じて半径方向に変位し、下ガイドプレート36に沿って半径方向の内側又は外側に移動(拡縮)する。
【0024】
このように、本実施形態の加硫装置30では、複数の分割モールド43の背面側に設けられた傾斜ガイド部43A、及び、アウターリング33(移動部材)等により分割モールド43の移動機構を構成する。この移動機構は、アウターリング33を加硫モールド40の中心線方向に移動させて、傾斜ガイド部43Aを介して複数の分割モールド43を半径方向に移動させる。また、移動機構は、加硫モールド40を加圧する加圧機構でもあり、複数の分割モールド43を半径方向に移動させて加硫モールド40を型締めして、未加硫トレッド90の加硫中に加硫モールド40を加圧する。その際、移動機構は、アウターリング33を下降させて、複数の分割モールド43を同期して半径方向の内側端まで移動させた後、アウターリング33により押圧して加硫モールド40を締め付ける。
【0025】
加硫装置30は、剛体コア2を囲んで、両サイドモールド41、42を型閉め位置に配置するとともに、複数の分割モールド43を半径方向内側に移動させて、分割モールド43を互いに当接させて加硫モールド40を型閉めする。また、アウターリング33を下方に所定圧力で押し付け、傾斜ガイド部43Aを介して、分割モールド43に半径方向内側の力を作用させ、分割モールド43を半径方向内側に締め付ける。これにより、加硫モールド40を所定圧力で締め付けて加圧し、同時に、未加硫トレッド90を内外面側から加熱して、未加硫トレッド90の加硫成型を進行させる。このように、加硫装置30は、環状の未加硫トレッド90を剛体コア2とともに加硫モールド40に収納して加硫し、環状のプレキュアトレッド91を形成する。加硫終了後は、複数の分割モールド43と両サイドモールド41、42を離間させて型開きし、加硫モールド40内から剛体コア2を取り出して、その外周から形成後のプレキュアトレッド91を取り外す。
【0026】
次に、以上説明したトレッド製造装置により、プレキュアトレッド91を製造する手順や動作、及び、トレッド製造方法の各工程と、タイヤの製造方法について説明する。以下の手順等は、制御装置(図示せず)により制御され、装置各部を予め設定されたタイミングや条件で関連動作させて実行される。
【0027】
まず、トレッド成形装置1(図1参照)に剛体コア2をセットし、押出機10により、ギアポンプ12を作動させて、未加硫ゴムを口金20の開口部21から押し出して連続して成形する。これにより、未加硫トレッド90を押出成形して、剛体コア2の外周に、押出成形された未加硫トレッド90を巻き付けて環状に配置する。その際、ここでは、剛体コア2の外周に上記した補強部材(図示せず)を配置した後、補強部材を配置した剛体コア2の外周に未加硫トレッド90を配置する。また、剛体コア2の外周で、未加硫トレッド90の対向する端部同士を突き合わせて、又は、重ね合わせて接合(ここでは突き合わせて接合)する。
【0028】
図4は、未加硫トレッド90を環状に配置した剛体コア2を示す側面図である。
未加硫トレッド90(図4A参照)は、剛体コア2の外周に連続して1周巻き付けられて、1箇所の接合部Sで、先端部と後端部が接合される。或いは、未加硫トレッド90(図4B参照)は、複数(図4Bでは2つ)に分割されて、剛体コア2の外周に順に配置される。未加硫トレッド90を分割するときには、本実施形態では、未加硫トレッド90を剛体コア2の周方向に偶数(2×N:Nは1以上の自然数)に分割する。また、未加硫トレッド90の偶数の分割位置を、剛体コア2の周方向に沿って等間隔に設けて、分割位置を剛体コア2の軸線を中心に点対称になるように配置する。このように、未加硫トレッド90を剛体コア2の外周に1周分配置した後、分割された未加硫トレッド90の端部同士を、各分割位置(接合部S)で接合する。
【0029】
図5は、未加硫トレッド90の接合部Sを拡大して示す図である。
未加硫トレッド90の端部は、図示のように、厚さ方向に傾斜して切断され(図5A参照)、又は、傾斜せずに切断される(図5B参照)。未加硫トレッド90は、接合部Sで、切断された端部を剛体コア2の外周で対向させて配置し、それらの端面を突き合わせて圧着することで、端部同士が接合される。
【0030】
トレッド成形装置1は、未加硫トレッド90を剛体コア2の周方向に配置するとともに、1以上の接合部Sで、未加硫トレッド90を切断して端部同士を接合する。これにより、未加硫トレッド90を環状に形成した後、押出機10の稼動と未加硫トレッド90の押し出しを停止させる。次に、剛体コア2をトレッド成形装置1から取り外して加硫装置30(図3参照)へ搬送する。
【0031】
加硫装置30では、まず、各モールド41、42、43を互いに離間させて型開き位置に移動させ、下サイドモールド42上に剛体コア2を載置する。続いて、上サイドモールド41を下降させつつ、アウターリング33を下降させて各分割モールド43を半径方向内側に移動させ、各モールド41、42、43を互いに当接させて組み合わせる。これにより、未加硫トレッド90と剛体コア2を、加硫モールド40に収納して、未加硫トレッド90を、各モールド41、42、43と剛体コア2との間のキャビティに収納する。
【0032】
次に、加硫装置30は、上記した加圧機構により、加硫モールド40を型締めして加圧しつつ、スチーム等の加熱媒体の供給装置(図示せず)から剛体コア2内等に加熱媒体を供給して、剛体コア2と未加硫トレッド90を加熱する。これにより、未加硫トレッド90を加硫温度に加熱する。また、加硫モールド40と剛体コア2間の閉鎖空間内で未加硫トレッド90を熱膨張させて加硫圧力を発生させ、未加硫トレッド90を周囲の各面に押し付けて加硫成型を進行させる。このように、加硫装置30は、環状の未加硫トレッド90を剛体コア2とともに加硫モールド40に収納して加硫し、所定形状のプレキュアトレッド91を形成する。その後、加硫モールド40を上記と逆の手順で開いて開放し、剛体コア2を取り出して、プレキュアトレッド91を取り外し、環状のプレキュアトレッド91を台タイヤに結合してタイヤを製造する。
【0033】
図6は、プレキュアトレッド91と台タイヤ92を結合する過程を示す斜視図である。
結合時には、プレキュアトレッド91(図6A参照)を、台タイヤ92の軸線方向に同芯状に移動させ、接着用のクッションゴムや接着剤を挟んで、台タイヤ92の外周面に配置する(図6B参照)。また、プレキュアトレッド91の端部を台タイヤ92のサイド部に合わせて配置し、それらを加硫して接着する等して、プレキュアトレッド91を台タイヤ92に結合する。これにより、更生タイヤや新品タイヤ等の各種のタイヤを製造する。
【0034】
図7は、プレキュアトレッド91を結合する前後のタイヤを示す断面図であり、図7Aに結合前の、図7Bに結合後のタイヤ幅方向の断面を示す。また、図7では、トラック及びバス用ラジアルプライタイヤを例に、タイヤ赤道面を挟んだ一方側の断面構造を示している。
台タイヤ92は、図示のように、一対の環状のビードコア93と、ビードコア93間をトロイダル状に延びるカーカス94と、カーカス94の外周に配置されたベルト95とを有する。プレキュアトレッド91は、台タイヤ92の外周全体を覆うように結合されて、製造後のタイヤTでトレッドゴムを構成する。また、ここでは、プレキュアトレッド91と台タイヤ92の間に、上記した周方向に延びる有機繊維コードCを有する補強部材が配置されて、タイヤTのベルト95の外周側に、補強部材からなる補強層96が設けられる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のトレッド製造装置とトレッド製造方法では、押出成形した未加硫トレッド90を剛体コア2に環状に配置し、それらを加硫モールド40に収納して未加硫トレッド90を加硫し、環状のプレキュアトレッド91を形成する。そのため、例えば、リボン状のゴムを剛体コア2に積層して環状の未加硫トレッド90を成形するときと比べて、未加硫トレッド90を成形する手順や動作が簡単になり、装置の構成も比較的単純になって装置内の部品数を低減できる。また、押出成形した未加硫トレッド90を剛体コア2に1周配置して環状に成形するため、環状の未加硫トレッド90を短時間で容易に成形でき、その成形に要する手間や時間を削減できる。その結果、プレキュアトレッド91の製造時間も短縮できる。更に、未加硫トレッド90を一体に押出成形するため、未加硫トレッド90内にエア入りやベア等の欠陥が生じ難くなり、環状の未加硫トレッド90を、安定した品質で、かつ、一定の断面形状を維持して成形できる。
【0036】
従って、本実施形態によれば、台タイヤ92に結合する環状のプレキュアトレッド91に欠陥が発生するのを抑制できるとともに、プレキュアトレッド91の製造に要する時間を短縮して生産性を向上させることができる。また、補強部材を配置した剛体コア2の外周に未加硫トレッド90を配置することで、トレッド部に補強層96を有するタイヤTを容易に製造できる。
【0037】
このトレッド成形装置1では、押出機10が備えるギアポンプ12により、口金20の開口部21に向けて未加硫ゴムを供給し、開口部21から未加硫ゴムを押し出して未加硫トレッド90を成形する。このギアポンプ12により、未加硫ゴムの種類等に関わらず、所定の圧力及び量の未加硫ゴムを安定して正確に供給できるため、未加硫トレッド90を開口部21からバラツキを少なくして押し出すことができる。これにより、環状の未加硫トレッド90や、プレキュアトレッド91の寸法、形状、及び重量の精度を高めて、タイヤのユニフォーミティや品質を、より向上させることができる。
【0038】
加硫装置30による加硫時には、加硫モールド40と剛体コア2により区画した閉鎖空間で未加硫トレッド90を熱膨張させて、未加硫トレッド90に圧力を発生させるため、高い加硫圧力を安定して発生させることができる。また、上記した加圧機構を作動させて、加硫モールド40の中心線方向に移動するアウターリング33により、傾斜ガイド部43Aを介して、複数の分割モールド43を半径方向に移動させて加硫モールド40を型締めして加圧する。これにより、加硫モールド40に強い締付力を作用させて確実に型締めした状態に維持できるとともに、未加硫トレッド90に、より高い加硫圧力を作用させることもできる。同時に、未加硫トレッド90に対して、複数の分割モールド43を、半径方向外側から均一に押し付けることもできる。その結果、加硫不良の発生を抑制して未加硫トレッド90を精度よく加硫成型でき、加硫後のプレキュアトレッド91にベア等の欠陥が生じるのを一層抑制して、タイヤTの品質をより向上できる。
【0039】
なお、未加硫トレッド90は、製造するプレキュアトレッド91の断面形状に応じて、細長い矩形状や台形状に成形する等、上記した形状(図2参照)と異なる形状に形成してもよい。また、未加硫トレッド90を分割して剛体コア2の外周に配置するときには、未加硫トレッド90を剛体コア2の周方向に偶数に分割して、分割位置を剛体コア2の周方向に等間隔に設けるのが好ましい。このようにすると、未加硫トレッド90の分割位置と接合部Sを、剛体コア2の周方向にバランスよく配置できるため、プレキュアトレッド91やタイヤTの周方向の均一性を向上できる。
【0040】
また、環状の未加硫トレッド90に、上記した補強部材等の他の部材を設けるときには、有機繊維コードからなる部材、又は、有機繊維コードとゴムからなる部材を設けるのが好ましい。この場合には、有機繊維コードは多少伸長するので、人手により、プレキュアトレッド91を剛体コア2から剥離させて取り外すことができる。そのため、剛体コア2に、プレキュアトレッド91を取り外すための拡縮機構を設ける必要がなく、剛体コア2の製造コストを削減しつつ、その構造や機構を単純にして取り扱いを容易にできる。
【0041】
以上、環状のプレキュアトレッド91を形成する例を説明したが、他の環状部材も同様に形成することができる。また、プレキュアトレッド91は、更生対象のタイヤからトレッドゴム等を除去してバフがけした台タイヤ92に結合してもよく、或いは、少なくともトレッドゴムを除いた部材からなる新品の台タイヤ92に結合してもよい。従って、プレキュアトレッド91を用いて、更生タイヤだけでなく、新品タイヤも製造できる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・トレッド成形装置、2・・・剛体コア、10・・・押出機、11・・・押出機本体、12・・・ギアポンプ、20・・・口金、21・・・開口部、22・・・端部、23・・・中央部、30・・・加硫装置、31・・・下プレート、32・・・上プレート、33・・・アウターリング、34・・・ボルスタープレート、35・・・スペーサリング、36・・・下ガイドプレート、40・・・加硫モールド、41・・・上サイドモールド、41A・・・端部用モールド、42・・・下サイドモールド、42A・・・端部用モールド、43・・・分割モールド、43A・・・傾斜ガイド部、43D・・・凹部、90・・・未加硫トレッド、91・・・プレキュアトレッド、92・・・台タイヤ、93・・・ビードコア、94・・・カーカス、95・・・ベルト、96・・・補強層、S・・・接合部、T・・・タイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫トレッドを加硫して台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッドを製造するトレッド製造装置であって、
未加硫トレッドを押出成形する押出機と、
押出成形された未加硫トレッドが外周に環状に配置される剛体コアと、
環状の未加硫トレッドを剛体コアとともに加硫モールドに収納して加硫し、プレキュアトレッドを形成する加硫装置と、
を備えたことを特徴とするトレッド製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたトレッド製造装置において、
押出機が、未加硫ゴムを開口部から押し出して未加硫トレッドを成形する口金を備えたことを特徴とするトレッド製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたトレッド製造装置において、
押出機が、口金の開口部に向けて未加硫ゴムを供給するギアポンプを備えたことを特徴とするトレッド製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたトレッド製造装置において、
加硫モールドが、半径方向に移動可能な複数の分割モールドを備え、
加硫装置が、複数の分割モールドの背面側に設けられた傾斜ガイド部、及び、加硫モールドの中心線方向に移動して傾斜ガイド部を介して複数の分割モールドを半径方向に移動させる移動部材を有する加圧機構を備え、加圧機構により複数の分割モールドを半径方向に移動させて加硫モールドを型締めすることを特徴とするトレッド製造装置。
【請求項5】
未加硫トレッドを加硫して台タイヤに結合する環状のプレキュアトレッドを製造するトレッド製造方法であって、
未加硫トレッドを押出成形する工程と、
剛体コアの外周に、押出成形された未加硫トレッドを環状に配置する工程と、
環状の未加硫トレッドを剛体コアとともに加硫モールドに収納して加硫し、プレキュアトレッドを形成する工程と、
を有することを特徴とするトレッド製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載されたトレッド製造方法において、
未加硫トレッドを環状に配置する工程が、未加硫トレッドを剛体コアの周方向に偶数に分割して、かつ、分割位置を剛体コアの周方向に沿って等間隔に設けて、未加硫トレッドを剛体コアの外周に配置する工程と、分割された未加硫トレッドの端部同士を各分割位置で接合する工程と、を有することを特徴とするトレッド製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載されたトレッド製造方法において、
剛体コアの外周に補強部材を配置する工程を有し、
未加硫トレッドを環状に配置する工程が、補強部材を配置した剛体コアに未加硫トレッドを配置することを特徴とするトレッド製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−251488(P2011−251488A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127622(P2010−127622)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】