説明

ナノ多孔質積層体

有機樹脂の水素活性基と熱不安定性基を含む化合物とを反応させることによって有機樹脂の幹上に熱不安定性官能基をグラフトさせ;次いで有機樹脂上にグラフトされ前記不安定性基を熱分解して、ナノ多孔質積層板を形成することによる、電気用積層板中のマトリックスのような、ナノ多孔質基材の製造方法。このナノ多孔質電気用積層板は、有利なことに、積層板マトリックス中に存在するナノ細孔のために、低い誘電率(Dk)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低誘電率を有する電気用積層体のようなナノ多孔質基材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化材及びエポキシ含有マトリックスのような有機マトリックス樹脂から電気用積層体及び他の複合材料を製造することは公知である。適当な方法の例は通常、以下の工程を含む:
(1)エポキシ含有配合物を、ロール、浸漬、噴霧、他の公知方法及び/又はそれらの組合せによって、基材(substrate)に適用するか又は基材中に含浸させる。
【0003】
(2)含浸された基材を、エポキシ配合物中の溶剤を取り除くのに充分な且つ場合によってはエポキシ配合物を部分硬化させるのに充分な温度に加熱することによって「Bステージ化」して、含浸基材を容易に取り扱えるようにする。「Bステージ化」工程は通常、90℃〜210℃の温度で1分〜15分間実施する。Bステージ化によって得られる含浸基材は、「プリプレグ」と称される。温度は通常、複合材料に関しては100℃、電気用積層体に関しては130℃〜200℃である。
【0004】
(3)プリプレグの1層又はそれ以上のシートを積み重ねるか、あるいは電気用積層体が望ましい場合には銅箔のような導電体の1層又はそれ以上のシートとの交互層としてレイアップする。
【0005】
(4)レイアップされたシートを、樹脂を硬化させ且つ積層体を形成するのに充分な高い温度及び圧力において充分な時間プレスする。この貼り合わせ工程の温度は通常は100℃〜230℃で、ほとんどの場合は165℃〜190℃である。貼り合わせ工程はまた、100℃〜150℃の第1段階及び165℃〜190℃の第2段階というように、2又はそれ以上の段階で実施できる。圧力は通常、50N/cm2〜500N/cm2である。貼り合わせ工程は通常は1分〜200分間、ほとんどの場合は45分〜90分間実施される。貼り合わせ工程は場合によっては、これより高温においてこれより短時間で(例えば連続貼り合わせ法の場合)又はこれより低温においてこれより長時間で(例えば低エネルギープレス法の場合)実施できる。
【0006】
場合によっては、得られる積層体、例えば銅張り積層体を、高温及び周囲圧力で一定の時間加熱することによって後処理することができる。後処理の温度は通常、120℃〜250℃である。後処理の時間は通常、30分〜12時間である。
【0007】
電気用積層体の業界の最近の傾向は、より低い誘電率(Dk)及び損失率(Df)を含む改善された誘電特性;高いガラス転移温度(Tg)及び分解温度(Td)を含む優れた熱的性質;並びに良好な加工性を有する材料を必要としている。
【0008】
これまで、エポキシ含有樹脂組成物から製造される電気用積層体の誘電率を改善しようとして、種々の方法、例えば、エポキシ含有樹脂組成物へのポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)又はアリル化ポリフェニレンエーテル(APPE)のような種々の熱可塑性添加剤の添加が用いられてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有機樹脂から製造される電気用積層体の誘電率を低下させる新しい経路を得ることが望まれる。更に詳しくは、硬化時にナノ多孔質マトリックスを生じる熱不安定性基を有する、エポキシ含有樹脂のような改質有機樹脂を製造することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、有機樹脂の水素活性基を熱不安性(thermolabile)基を含む化合物と反応させることによって有機樹脂の幹(backbone)上に熱不安定性官能基をグラフトさせ;次いで有機樹脂上にグラフトされた熱不安定性基を、ナノ多孔質マトリックスが製造されるように熱分解することによって、電気用積層体中のナノ多孔質マトリックスを製造する方法に関する。このようなナノ細孔は、ナノ細孔中に存在する空気のために低い誘電率を示し、最低の誘電率は空気の場合である。
【発明の効果】
【0011】
一実施態様において、本発明はエポキシ樹脂のヒドロキシル基の反応によって熱不安定性基でエポキシ樹脂の幹を改質し、次いで前記熱不安定性基を熱分解させることよる、エポキシを基材とするナノ多孔質電気用積層体を製造する方法に関する。このナノ多孔質電気用積層体は、有利なことに、マトリックス中に存在するナノ細孔のために低い誘電率(Dk)を有する。本発明の方法は、また、ナノ細孔の分散が制御されたナノ細孔マトリックス;制御されたナノ細孔の大きさ;閉気孔率;及び積層体の標準的加工性のような利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、エポキシを基材とするナノ多孔質電気用積層体の層間破壊面(樹脂の多い領域)を示す走査型電子顕微鏡検査(SEM)像である。
【0013】
一般に、本発明の方法は、第1工程として、(a)水素活性基を有する有機樹脂と(b)熱不安定性基を含む化合物とを反応させることによって、熱不安定性基を含む化合物と有機樹脂の水素活性基との反応によって有機樹脂の幹上に熱不安性基をグラフトさせることを含む。
【0014】
第2工程において、熱不安定性基の熱分解に充分な温度、典型的には約120℃〜約220℃の温度に改質有機樹脂を供することによって熱不安定性基を分解し、それによって有機樹脂マトリックス中にナノサイズの気孔を生じる。積層体の製造において、熱不安定性基分解のための有機樹脂の加熱は典型的に、積層体のプレス工程の間に実施する。
【0015】
本発明の一実施態様において、有機樹脂はエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、炭化水素樹脂及びそれらの混合物から選ばれることができる。水素活性基は、例えばアミン、フェノール、チオール、ヒドロキシル又はアルコール、アミド、ラクタム、カルバメート、ピロール、メルカプタン、イミダゾール及びグアニジンから選ばれることができる。
【0016】
本発明の別の実施態様において、熱不安定性基を含む化合物はジカーボネート及びその誘導体、カルバゼート(carbazate)及びその誘導体並びにtert−ブチルカーボネートを含む他の化合物であることができる。熱不安定性基を含む化合物の例はジ−tert−ブチルジカーボネート、ジ−tert−アミルジカーボネート、ジアリルピロカーボネート、ジエチルピロカーボネート、ジメチルジカーボネート、ジベンジルジカーボネート、tert−ブチルカルバゼート及びそれらの混合物であるがこれらに限定されるものではない。tert−ブチルカーボネート熱不安性基は、有利なことに、多くの求核試薬に対して安定であり、塩基性条件下で加水分解されないが、中酸性(mid−acidic)条件下において又は加熱分解によって容易に開裂させることができる。
【0017】
本発明の一例において、ヒドロキシル基を含むエポキシ樹脂又はフェノール樹脂が有機樹脂として有利に使用できる。これは、エポキシ樹脂が電気用積層体の業界において広く使用されていることと、エポキシ樹脂が良好な加工性を提供することによる。ジ−tert−ブチルジカーボネートは、大容量で市販されているので、熱不安定性基含有化合物として便利に使用できる。
【0018】
本発明において、使用する最初の非改質エポキシ樹脂は、その予想性能、例えば臭素化又は臭素非含有標準若しくは高Tg標準、又は低Dk標準などから選ばれる任意の公知エポキシ樹脂であることができる。熱不安定性基(「発泡剤」とも称する)は、ヒドロキシル基との反応によってエポキシ骨格上にグラフトされる。改質樹脂は、周囲温度において安定である。重合の間に、不安的性基は分解し、ガスを発生させ、それが次に、重合エポキシ樹脂マトリックス中に気孔を生じる。発泡剤はエポキシ分子に直接グラフトされるので、気孔の統計的再分配が非グラフト化発泡剤の添加に比較して非常に改善される。その結果、エポキシマトリックス中の気孔はより小さくなり(例えば気孔直径は200nm未満であることができる)、積層体内における分散状態が良好である。連続エポキシマトリックスは系に耐熱性及び機械的結着性を与えるのに対して、気孔は誘電率を低下させ、その結果、低Dk電気用積層体が得られる。例えば、一般に、1GHzにおいて測定されたDkが5未満の積層体を得ることができ、また一方、1GHzにおいて測定されたDkが4.2未満、好ましくは4.0未満、より好ましくは3.8未満、更に好ましくは3.5未満の積層体を得ることができる。
【0019】
本発明の一実施態様においては、エポキシ樹脂を非プロトン性溶媒中で直接、熱不安定性基を含む化合物と反応させて改質エポキシ樹脂を形成する。
【0020】
本発明の別の実施態様において、熱不安定性基は、最初にフェノール化合物と反応させ、次いで、得られる反応生成物、改質フェノール化合物を硬化剤として用いて、エポキシ樹脂と反応させることによって、例えば、熱不安定性基をエポキシ樹脂中に取り入れて改質エポキシ樹脂を形成する。
【0021】
熱不安定性基の使用量は、最終配合物又はワニス組成物中の熱不安定性基の重量%が約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約2.5重量%であるように選択する。前記組成物の重量百分率は固形分に基づいて示してある。
【0022】
場合によっては、熱不安定性基を含む化合物と有機樹脂の水素活性基との間の反応を促進するために組成物に触媒を添加することができる。例えば、ヒドロキシルアミンは、室温(約25℃)においてアルキルアミンのtert−ブトキシカルボニル化を触媒することが知られている。別の例においては、ジメチルアミノピリジンが、室温におけるヒドロキシル基又はフェノール類とジ−tert−ブチルジカーボネートとの間の反応の触媒として働く。本発明において有用な他の触媒としては、例えば、トリエチルアミン又はN,N−ジイソプルピルエチルアミンのような補助塩基が挙げられる。
【0023】
本発明の改質エポキシ樹脂を製造するためには、分子当たり平均で1個より多いエポキシ基及び分子当たり平均でゼロ個より多いヒドロキシル基を有するエポキシ樹脂を使用できる。エポキシ樹脂は、(1)分子当たり平均1個より多いエポキシ基を有するエポキシ樹脂及び分子当たり平均1個又はそれ以上のヒドロキシル基を有するエポキシ樹脂、(2)(1)と分子当たり平均1個より多いエポキシ基を有するがヒドロキシル基を有さないエポキシ樹脂との混合物から選ぶことができる。エポキシ樹脂成分の正確な選択は、最終生成物の目的とする性質から決定される。本発明において使用する適当なエポキシ樹脂としては、例えばエポキシ当量約170〜約3,500を有するものが挙げられる。このようなエポキシ樹脂は、例えば、米国特許第4,251,594号;第4,661,568号;第4,710,429号;第4,713,137号;及び第4,868,059号、並びにThe Handbook of Epoxy Resins(H.Lee及びK.Neville,McGraw−Hill(New York)によって1967年に発行)によく記載されている。これらの文献全てを引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0024】
本発明において1つのエポキシ樹脂成分として使用できるエポキシ樹脂は、一般式(I)で表すことができる。
式I
【0025】
【化1】

【0026】
[式中、Aは、独立して、二価化学結合、炭素数が適当には1〜約10、好ましくは1〜約5、より好ましくは1〜約3である二価炭化水素基、−S−、−S−S−、−SO−、−SO2−、−CO−又は−O−であり;各Rは、独立して、水素原子又は炭素数が適当には1〜約3のアルキル基であり;各Xは、独立して、水素原子又は炭素数が適当には1〜約10、好ましくは1〜約5、より好ましくは1〜約3のアルキル基又はハロゲン化原子、例えばBr若しくはClであり;nは約12未満の数である]。
【0027】
耐熱性を更に改善するために、本発明に使用するエポキシ樹脂成分は、分子当たり得平均2個よりも多いエポキシ基を有する多官能価エポキシ樹脂を含むことができる。好ましい多官能価エポキシ樹脂としては例えば以下のものが挙げられる:クレゾール−ホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラックエポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン及びそれらの混合物。得られる反応生成物が高粘度を有さないためには、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン及びテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンが好ましい。コストパフォーマンスを考慮すると、クレゾール−ホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂及びビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂が好ましい。誘電性能を考慮すると、ジシクロペンタジエンフェノールノボラックエポキシ樹脂が好ましい。更に、狭い分子量分布(例えばMw/Mn値約1.5〜約3.0)を有する多官能価エポキシ樹脂を使用するのが好ましい。
【0028】
場合によっては、樹脂の粘度を低下させるために、本発明の改質有機樹脂の製造の間に適当な有機溶媒を使用できる。本発明において有用な適当な有機溶媒としては、水素活性基を含まない溶媒が挙げられる。好ましくは、非プロトン性溶媒、例えばケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、及びメチルイソブチルケトン;グリコールエーテルのアセテート、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DOWANOL PMA);芳香族有機溶媒、例えばトルエン及びキシレン;脂肪族炭化水素;環状エーテル;ハロゲン化炭化水素;並びにそれらの混合物を都合良く使用できる。
【0029】
説明のための1つの具体的実施態様において、熱不安定性t−ブチルオキシカルボニル基は、ヒドロキシル基との反応によってエポキシの幹上にグラフトさせることができる。例えば臭素化エポキシ樹脂、例えばD.E.R.560又はD.E.R.539−EK80及び非臭素化エポキシ樹脂、例えばD.E.R.669E(全て、The Dow Chemical Companyから市販されている)は、工業用溶媒、例えばMEK又はDOWANOL PMA中で成功裡に改質できる。
【0030】
別の具体的実施態様において、フェノール樹脂及びフェノール誘導体も本発明に従って改質できる。市販フェノール樹脂のほんの一例として、クレゾールノボラック;ビスフェノールAノボラック、例えば、BPN17(Arakawaから市販されている);及びそれらの混合物が挙げられる。フェノール誘導体の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、ヒドロキノン及びそれらの混合物が挙げられる。本発明において有用な二価フェノール類、ハロゲン化二価フェノール類、多価フェノール類及びハロゲン化多価フェノール類を含む他のフェノール樹脂及びフェノール誘導体は、PCT 出願のWO 01/42359A1及びThe Handbook of Epoxy Resins(H.Lee及びK.Neville,McGraw−Hill(New York)によって1967年に発行)に記載されている。これらの文献全てを引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0031】
有機樹脂が一般に改質後に有機溶剤中でより低い粘度を示すことは注目に値すべきである。理論によって拘束するつもりはないが、より低い溶液粘度は、ヒドロキシル官能価との反応による熱不安定性基のグラフト化による水素結合作用の低下のためと考えられる。
【0032】
説明のための別の具体的実施態様においては、エポキシ樹脂を、例えばCO2圧下で例えば80℃のような適当な温度において適当なイオン交換樹脂を用いて炭酸塩化することによって、エポキシカーボネート樹脂に部分改質又は全改質する。このようなエポキシカーボネート樹脂は熱不安定性基を有する改質エポキシ樹脂を得るためのエポキシ樹脂成分として使用できる。
【0033】
改質エポキシ樹脂は積層体の製造への使用に有利である。積層体のプレス段階において、例えば180℃において熱安定性基は分解して、揮発性生成物を生成し、それが積層体内部に多孔質マトリックスを形成し、その結果、誘電率の低下した積層体が得られる。本発明を用いる系の基本性質のほとんど、例えばワニス反応性、プレプレグ加工性及び積層体性能、例えば熱的性質、難燃性、穿孔性、化学洗浄及びエッチングなどは、改質樹脂によって変化しなかった。しかし、有利なことに、得られた積層体の誘電率は低下した。本発明のナノ多孔質積層体は、ナノ細孔を含まない同じエポキシ系と比較して、20%以下の改良を示すことができる。発泡剤をエポキシ分子上に直接グラフトさせるため、気孔は小さく(例えば60nm又はそれ以下)、積層体内によく分散されている。加工条件の最適化のため、得られた積層体は均質であり、配合物によって、透明であるか、乳白光を発するか又は不透明であることができる。細孔が積層体内に充分に分散される場合及び細孔直径が最適化される場合には、積層体の靭性はナノ細孔を含まない同じ有機系に比較して改良することができる。理論に拘束するつもりはないが、ナノ気孔は、細孔の大きさが適当な場合に亀裂最前部の半径を増加させることによって、亀裂のためのエネルギーディスパーザーとして働くことができる。樹脂マトリックスはナノ多孔質構造によって変わらないので、ガラス転移温度は悪影響を受けないはずである。
【0034】
本発明の改質エポキシ樹脂を使用する貼り合わせ機に関する更なる利点は、貼り合わせ機が、改良された誘電率を有する積層体を製造できると同時に、以前から存在していたエポキシ製品の場合に生み出されたノウハウ、即ち、同じ材料取り扱い要件、同じ配合技術及び同じ製造条件を続行できることである。更に、貼り合わせ機は、現在のガラス繊維強化材及び銅箔を使用できる。積層体の位置あわせは、引き続き同じである。
【0035】
本発明の改質エポキシ樹脂を組み込むプリント回路基板の製造業者にとっての更なる利点は、製造業者が以前から存在していたエポキシ系と同様な製造条件を使用できることである。製造業者はまた、気孔率のレベルによって同じ基材の誘電率を調整できるので、システム設計においてより高い柔軟性を得ることができる。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、任意成分として、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤のヒドロキシル基との反応を触媒するための触媒を含むことができる。このような触媒は、例えば以下の米国特許中に記載されている:第3,306,872号;第3,341,580号;第3,379,684号;第3,477,990号;第3,547,881号;第3,637,590号;第3,843,605号;第3,948,855号;第3,956,237号;第4,048,141号;第4,093,650号;第4,131,633号;第4,132,706号;第4,171,420号;第4,177,216号;第4,302,574号;第4,320,222号;第4,358,578号;第4,366,295号;及び第4,389,520号。
【0037】
適当な触媒の例は、イミダゾール、例えば2−メチルイミダゾール;2−フェニルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール、;第三アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン及びトリブチルアミン;ホスホニウム塩、例えばエチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド及びエチルトリフェニル−ホスホニウムアセテート;及びアンモニウム塩、例えばベンジルトリメチルアンモニウムクロリド及びベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、並びにそれらの混合物である。本発明における触媒使用量は、一般に反応混合物の総重量に基づき、約0.001重量%〜約2重量%、そして好ましくは約0.01〜約0.5重量%の範囲である。
【0038】
説明のための別の具体的実施態様においては、熱不安定性基を含む化合物によってイミダゾールを部分改質又は全改質して、潜在性触媒を形成できる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は公知の硬化剤を含むことができる。適当な硬化剤としては、例えばアミン硬化剤、例えばジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルホン;無水物、例えばヘキサヒドロキシフタル酸無水物及びスチレン−マレイン酸無水物コポリマー;イミダゾール類;並びにフェノール系硬化剤、例えばフェノールノボラック樹脂;並びにそれらの混合物が挙げられる。このような硬化剤は、硬化の直前に組成物に添加することもできるし、あるいはそれらが潜在性である場合には、最初から組成物中に含ませることができる。硬化剤の使用量は通常、エポキシ成分のエポキシ当量当たり、約0.3〜約1.5当量、好ましくは約0.5〜約1.1当量の範囲であることができる。
【0040】
イミダゾール類は、エポキシホモ重合の促進に使用できる。ワニス組成物によっては、純粋なホモ重合エポキシ網状構造を得ることもできるし、あるいはホモ重合エポキシ及びエポキシ/硬化剤(hardner)網状構造の間にハイブリッド網状構造を形成することもできる。
【0041】
エポキシ樹脂組成物はエポキシ樹脂ワニスの取り扱いをより簡単にするのに適当な有機溶剤成分を含むこともでき、そのような溶剤は前記組成物の粘度を低下させるために添加する。公知有機溶剤を使用できる。本発明において有用な溶剤としては、例えばケトン、例えばアセトン及びメチルエチルケトン;アルコール、例えばメタノール及びエタノール:グリコールエーテル、例えばエチレングリコールメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル;グリコールエーテルのアセテート、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;アミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミド;芳香族有機溶剤、例えばトルエン及びキシレン;脂肪族炭化水素;環状エーテル;並びにハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0042】
本発明の実施において、有機溶剤の使用量は、前記エポキシ樹脂組成物100重量部に基づき約10〜約60重量部、そして好ましくは約20〜約40重量部の範囲であることができる。
【0043】
貯蔵安定性を改善するために、本発明のエポキシ樹脂組成物は適当な安定剤を含むことができる。本発明において使用する適当な安定剤としては、例えばアルキルフェニルスルホネート又はハロゲン化アルキルフェニルスルホネート、例えばメチル−p−トルエンスルホネート、エチル−p−トルエンスルホネート及びメチル−p−クロロベンゼンスルホネートが挙げられる。本発明に使用するのに好ましい適当な安定剤は、メチル−p−トルエンスルホネートである。安定剤は、適当には組成物の総量に基づき、約0.001〜約10重量%、より適当には約0.01〜約2重量%の量で使用できる。
【0044】
所望であれば、本発明のエポキシ樹脂組成物は、有効量の他のよく使用されるエポキシ樹脂用添加剤、例えば反応促進剤、顔料、染料、充填剤、界面活性剤、粘度調整剤、流れ調整剤、難燃剤及びそれらの混合物を含むことができる。
【0045】
本発明の有機樹脂組成物を用いた電気用積層体の製造方法を以下に記載する。
【0046】
第1工程において、適当量の有機樹脂を熱不安性基及び任意の添加剤、例えば溶剤及び触媒と接触させ;そして混合物を反応させて有機樹脂を改質して、有機樹脂の幹中に熱不安定性基を導入し、それによって改質有機樹脂を得ることによって、本発明の有機樹脂組成物を製造する。
【0047】
前記反応の反応条件は、熱不安定性基を含む化合物と有機樹脂の水素活性基との効果的な反応を保証するように選ぶ。反応温度は通常、熱不安定性化合物の熱安定性によって限定される。反応は一般に、およそ室温(約25℃)で行われるが、約10℃〜約50℃、好ましくは約15℃〜約40℃、より好ましくは約20℃〜約35℃において約0.1時間(h)〜約72時間(h)、好ましくは約0.2h〜約24h、より好ましくは約0.5h〜約12hの時間であることができる。
【0048】
次の工程において、前記改質有機樹脂、硬化剤及び他の所望の添加剤を混合して、ワニスを製造する。次いで、このワニスを基材又はウェブ中に含浸させる。得られた含浸基材は、例えば約90℃〜約210℃、好ましくは約130℃〜約200℃において約0.5分〜約60分、好ましくは約0.5分〜約30分乾燥させて、有機樹脂を基材とするプリプレグを得る。本発明において使用する基材としては、例えばガラスクロス、ガラス繊維、ガラスペーパー、紙及び同様な有機基材、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド繊維及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維が挙げられる。
【0049】
本発明の1つの具体的実施態様において、含浸基材はグラフトされた熱不安定性基の分解温度未満で乾燥させる。その結果として、乾燥段階においては発泡は起こらないかごくわずかしか起こらず、表面的性質が改良されたプリプレグが得られる。
【0050】
得られたプリプレグを次に、所望の大きさに切断する。切断プリプレグを1つだけ又は複数の切断プリプレグ(所望の数、例えば2〜10個の断片)を貼り合わせ、例えば約120℃〜約220℃の温度において、例えば約1kgf/cm2〜約50kgf/cm2、好ましくは約2kgf/cm2〜約40kgf/cm2の圧力で、例えば約0.5時間〜約3時間の間プレスに供して、積層体を得る。この加熱工程の間に、熱不安定性基は分解し、積層体中にナノ細孔が形成される。
【0051】
一実施態様において、貼り合わせ時に多段プレスを有利に使用できる。実例として、最初に例えば約120℃〜約160℃の比較的低い温度において、例えば約1kgf/cm2〜約10kgf/cm2の比較的低い圧力を、例えば約0.1時間〜約1時間の間に適用できる。次に、例えば約5kgf/cm2〜約50kgf/cm2の全圧を、例えば約160℃〜約220℃の比較的高い圧力において、例えば約0.5時間〜約2時間の間適用できる。多段階プレスを用いて、ナノ多孔質積層体の形態を制御することができる。一般に、所定の体積分率の気孔に関しては、小さく且つ良好である分散細孔の方が、大きく且つ数の多い集合細孔よりも低いDkを生じることが観察された。
【0052】
導電性材料によって積層体上に導電層を形成できる。本発明において使用する適当な導電性材料としては、例えば、導電性金属、例えば銅、金、銀、白金及びアルミニウムが挙げられる。
【0053】
本発明の別の具体的実施態様においては、金属箔、例えば銅箔に、本発明の有機樹脂ワニスを被覆できる。次いで、ワニスは部分硬化させ(Bステージ)又は全硬化させて(Cステージ)、樹脂被覆金属箔、例えば、樹脂被覆銅箔を得ることができる。
【0054】
前述のようにして製造した電気用積層体は、好ましくは電気及び電子装置用の多層プリント回路基板及び銅張り積層体として使用できる。
【実施例】
【0055】
本発明を、以下の実施例及び比較例に関して更に詳細に説明するが、これらは限定的に解してはならない。特に断らない限り、「部」は「重量部」を意味する。
【0056】
以下の実施例中で化学改質及びワニス配合物のために使用する原料は、以下の通りである:
D.E.R.560は、The Dow Chemical Companyから市販されているエポキシ当量(EEW)が450の臭素化エポキシ樹脂である。
【0057】
MEKはメチルエチルケトンを表す。
【0058】
D.E.R.539−EK80は、The Dow Chemical Companyから市販されているEEWが450の臭素化エポキシ樹脂(MEK中の不揮発分(N.V.)80%)である。
【0059】
DIBOCは、ジ−tert−ブチルジカーボネートを表し、Aldrichから市販されている。
【0060】
DMAPは、ジメチルアミノピリジンを表し、Aldrichから市販されている。
【0061】
DOWANOL PMは、The Dow Chemical Companyから市販されているプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0062】
DOWANOL PMAは、The Dow Chemical Companyから市販されているプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0063】
DMFはジメチルホルムアミドを表す。
【0064】
MeOHはメタノールを表す。
【0065】
DICYは、ジシアンジアミド(DOWANOL PM/DMF 50/50中N.V.10%)を表す。
【0066】
2−MIは、2−メチルイミダゾール(MeOH中N.V. 20%)を表す。
【0067】
2E−4MIは、2−エチル−4−メチルイミダゾール(MEK又はMeOH中N.V. 20%)を表す。
【0068】
2−PhIは、2−フェニルイミダゾール(MeOH中N.V. 20%)を表す。
【0069】
硼酸(H3BO3)は、MeOH中N.V. 20%として使用する。
【0070】
Perstorp 85.36,28は、Perstorpから市販されている、ヒドロキシル当量(HEW)が104のフェノールノボラック(n=4.5〜5)(DOWANOL PMA中N.V. 50%)である。
【0071】
D.E.N. 438は、The Dow Chemical Companyから市販されているEEWが180のエポキシノボラック(n=3.6)(MEK中N.V. 80%)である。
【0072】
EPPN502Hは、日本化薬株式会社から市販されている、EEWが170のエポキシノボラック(MEK中N.V. 80%)である。
【0073】
MDIは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)を表す。
【0074】
XZ 92505は、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEWが850のエポキシ/MDI流れ調整剤(DMF中N.V. 50%)である。
【0075】
XZ 92528は、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEWが325の臭素非含有エポキシ樹脂(MEK/DOWANOL PM中N.V. 75%)である。
【0076】
SMA 3000は、Atofinaから市販されている無水物当量(AnhEW)が393のスチレン−マレイン酸無水物コポリマー溶液(DOWANOL PMA/MEK中N.V. 50%)である。
【0077】
RICON 130MA13は、Sartomerから市販されている、平均分子量(Mn)が2900でAnhEWが762のマレイン化ポリブタジエンである。
【0078】
SBM 1A17は、Atofinaから市販されているスチレン−ブタジエン−メチルメタクリレートトリブロックポリマーである。
【0079】
E.R.L.4299は、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEWが195の脂環式エポキシ樹脂である。
【0080】
EPN17は、Arakawa Chemicalsから市販されている、フェノール当量が120のビスフェノールAフェノールノボラックである。
【0081】
E−BPAPNは、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEWが197(固形分に基づく)の、アセトン中固形分79.6%のエポキシ化ビスフェノール−Aフェノールノボラックである。
【0082】
TBBAは、テトラブロモビスフェノール−Aを表す。
【0083】
D.E.R.330は、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEWが180のビスフェノール−Aのジグリシジルエーテルである。
【0084】
D.E.R.6615は、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEWが550の固体エポキシ樹脂である。
【0085】
XZ−92535は、The Dow Chemical Companyから市販されているヒドロキシル当量(OHEW)が104の、DOWANOL PMA中固形分が50%のフェノールノボラック溶液である。
【0086】
D.E.R.592−A80は、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEWが360(固形分に基づく)の、アセトン中固形分80%の臭素化エポキシ樹脂溶液である。
【0087】
D.E.R.669Eは、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEWが3245の高分子量のビスフェノール−Aジグリシジルエーテルである。
【0088】
XZ−92567.01は、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEWが385の臭素化エポキシ樹脂溶液である。
【0089】
XZ−92568.01は、The Dow Chemical Companyから市販されている、EWが398の無水物硬化剤溶液である。
【0090】
DMTAは、動的機械熱分析(Dynamic Mechanical Thermal Analysis)を表す。
【0091】
例中で使用する無水物硬化剤溶液(「AH1」)は、以下のようにして製造した:
無水物硬化剤溶液(AH1)を、機械的撹拌機及び加熱ジャケット並びにN2注入口及び添加用漏斗を装着した10Lステンレス鋼反応器中で製造した。3671.9gのDOWANOL PMA及び3623.2gの固体SMA 3000を反応器に装入し、混合物を90℃に加熱した。完全に希釈後、得られた溶液中に730.7gのRICON 130MA13を混和した。得られた溶液は白濁した。30分後、得られた溶液を80℃まで冷まし、974.2gのMEK中SBM 1A17溶液(不揮発分15%)を80℃において反応器中の溶液に投入した。周囲温度において完全に冷却後、得られた無水物硬化剤溶液は、濁っており、白っぽく、均質であった。無水物の理論当量は439(固形分に基づく)であった。
【0092】
得られた積層体の性質を、以下の試験法及び装置を用いて試験した:
(a)誘電測定
Hewlett Packard Analyzerを用いて、Dk及びDfを空気中で周囲温度において1MHzから1GHzまで測定した。サンプルの大きさは、約10cm×10cmで、厚さは約1.5mmであった。
【0093】
(b)核磁気共鳴(NMR)測定
250MHzで動作するBrucker装置を用いて、1H−及び13C−NMRスペクトルを測定した。
【0094】
(c)熱重量分析(TGA)
DuPont装置TGA V5.1Aを用いて、周囲温度から300℃までにおける改質エポキシ樹脂の減量を測定した。
【0095】
(d)光学顕微鏡法
回転ダイアモンドソーを用いて、100μmの薄片を製造した。この薄片を、透過光線及びNomarski微分干渉コントラストで動作するLEICA POLYVAR2光学顕微鏡を用いて調べた。像は、Polaroid DMCデジタルカメラで取り込んだ。
【0096】
(e)透過電子顕微鏡法(TEM)
ガラス繊維を含まないエポキシ領域を、45度ダイアモンドナイフを用いてLEICA ULTRACUT E超ミクロトームによってガラス繊維束に垂直に切断した。切片の厚さは120nmであった(設定)。切片を、120kVで動作するCM12透過電子顕微鏡によって調べた。切片を、清浄な300メッシュ銅グリッド上に集めた。画像を、100kVにおいて日立H−600 TEM中にデジタル記録した。TEM顕微鏡写真は、切片の代表的に領域から得た。
【0097】
(f)モード1積層体破壊靭性
モード1積層体破壊靭性を、ASTM D5528に従って亀裂生長制御によって測定した。靭性は、形状寸法に依存しない固有材料特性である歪みエネルギー開放率GIcによって測定した。サーボ液圧MTS810テストフレームを用いて試験を実施した。破面解析をSEMによって行った。
【0098】
(g)走査電子顕微鏡検査法(SEM)
サンプルを、日立S−4100 FEG SEM機器を用いて4pi/NIH Imageデジタル画像収集によって調べた。サンプルは以下のようにして製造した:モード1積層体は怪人性サンプルの破壊領域を、糸のこぎりを用いて剥離試験片から切り離し、面の1つをSEM用に選択した。これらの比較的小さい破面片を、カーボンテープ及びカーボンペイントを用いてアルミニウムSEMスタブ上に取り付けた。マウントには、SEMによる画像化前にCrをスパッターコートした。画像は、5KVにおいてデジタル収集した。
【0099】
いくつかの性質を測定するために例中で用いた標準方法は、以下の通りである:
IPC試験法 測定する性質
IPC−TM−650−2.3.10B 積層体の燃焼性[UL94]
IPC−TM−650−2.3.16.1C 処理重量によるプレプレグの樹脂含量[樹 脂含量]
IPC−TM−650−2.3.17D プレプレグの樹脂流れ%[樹脂流れ]
IPC−TM−650−2.3.18A プレプレグ材料のゲル化時間[プレプレグ ゲル化時間]
IPC−TM−650−2.3.40 熱安定性[Td]
IPC−TM−650−2.4.8C 金属張り積層体の剥離強度[銅剥離強度]
IPC−TM−650−2.4.24C 熱機械分析(TMA)によるガラス転移温 度及びz軸熱膨張[熱膨張係数(CTE) ]
IPC−TM−650−2.4.24.1 層間剥離までの時間(TMA法)[T26 0,T288,T300]
IPC−TM−650−2.4.25C DSCによるガラス転移温度及び硬化ファ クター[Tg]
IPC−TM−650−2.5.5.9. 1MHzから1.5GHzまでの誘電率及 び誘電正接,平行平板[Dk/Df測定]
IPC−TM−650−2.6.8.1. 積層体の熱応力[はんだフロート試験]
IPC−TM−650−2.6.16 ガラスエポキシ積層体結着性に関する圧力 容器法[高圧釜試験(HPCT)]
【0100】
実施例1
臭素化エポキシ樹脂、D.E.R.560を以下の組成を用いてジ−tert−ブチルジカーボネート基で化学的に改質した。
【0101】
成分
D.E.R.560 250g
DIBOC 30.4g
DAMP 1.01g
ジクロロメタン 200g
【0102】
A.化学改質の方法
エポキシ樹脂を最初に、電磁撹拌機を装着した三角フラスコ中において25℃でジクロロメタン(CH2Cl2)中に溶解させた。完全に希釈後、得られた溶液に固体ジ−tert−ブチルジカーボネートを添加した。次いで、ジメチルアミノピリジンのジクロロメタン中溶液をフラスコ中の溶液にゆっくりと装入した。得られた溶液を周囲温度で約18時間撹拌して、完全な転化を保証した。
【0103】
ROTAVAPOR中で真空下において周囲温度から50℃まで、ジクロロメタンを蒸発させた。乾燥樹脂は室温で固体であった。
【0104】
B.改質臭素化エポキシ樹脂の核磁気共鳴(NMR)による特性決定
1H−NMR及び13C−NMRスペクトルは、臭素化エポキシ樹脂の化学的改質及び樹脂へのジ−tert−ブチルジカーボネート基のグラフト化が起こったことを確認した。
1H−NMR
・3.02ppmの−OHの消失
13C−NMR
・69.6ppmの炭素:
【0105】
【化2】

【0106】
の消失と炭素:
【0107】
【化3】

【0108】
へのシフト
・27.84ppmの−tertio―ブチル:
【0109】
【化4】

【0110】
からのメチル基の出現
・82.44ppmの第四炭素:
【0111】
【化5】

【0112】
の出現
・152.79ppmのカルボニル:
【0113】
【化6】

【0114】
の出現
カルボニルは152.8ppmではなく146.5ppmに現れるであろうから、これらのピークは遊離ジ−tert−ブチルジカーボネートによるものではない。
【0115】
C.改質臭素化エポキシ樹脂の熱特性決定
熱特性決定は、TGAによって行った。
改質前には、D.E.R.560は、200℃超まで安定であった。D.E.R.560は、臭素基の普通の加熱分解のために230℃〜250℃あたりで分解し始めた。
【0116】
改質D.E.R.560は、熱不安定性基のために、より低温で分解し始めた。臭素基に分解前に、170℃〜220℃においてかなりの減量が見られた(4.77%)。この減量は、樹脂の幹にグラフトされた熱不安定性カーボネート基の熱分解によるものであり、これにより、CO2及びイソブテンが蒸発した。より高温(T>230〜250℃)で、最終的に臭素基の普通の熱分解が起こった。
【0117】
異なる等温線プロフィールで、3つの他のTGAランを行った。樹脂の減量を等温線の最後に測定した:
・(1)180℃の等温線の最後の4分間において、減量は0.72%であり;
・(2)185℃の等温線の最後の60分間において、減量は4.48%であり;
・(3)160℃の等温線の最後の60分間において、減量は1.14%であった。
【0118】
実施例2A〜2D
以下の表Iに示した組成を用いた以外は実施例1に使用したのと同一の化学的改質法を用いて、臭素化エポキシ樹脂D.E.R.560をジ−tert−ブチルジカーボネート基で改質した。
【0119】
【表1】

【0120】
MEK又はDOWANOL PMA中の改質樹脂は、反応溶媒のストリッピングを行わずに、改質後に直接使用できた。
【0121】
乾燥サンプルに関するTGA及びNMRの結果は、エポキシ樹脂の改質を確認した。
【0122】
実施例3
以下の組成を用いる以外は実施例1に使用したのと同一の化学的改質法を用いて、臭素化エポキシ樹脂D.E.R.560をジ−tert−ブチルジカーボネート基で化学的に改質した。
【0123】
成分
D.E.R.560 2452.4g
DIBOC 147.2g
DAMP 0.41g
DOWANOL PMA 1400.1g
周囲温度において3時間以内でジ−tert−ブチルジカーボネートを反応器に装入し、次いで溶液を周囲温度に4時間保った。
【0124】
更に精製せずに且つDOWANOL PMAを樹脂からストリッピングせずに、改質樹脂を用いた。
【0125】
実施例4A及び4B
以下の表IIに示した組成を用いて、臭素化エポキシ樹脂D.E.R.539−EK80をジ−tert−ブチルジカーボネート基で部分改質した。
【0126】
【表2】

【0127】
NMRスペクトルは、化学的改質が成功したこと及び溶液中には残留ジ−tert−ブチルジカーボネートが残っていないことを示した。NMRスペクトルはまた、ジ−tert−ブチルジカーボネートが化学量論量以下であることにより、未反応の第2ヒドロキシル基の部分を示した。
【0128】
実施例5
この実施例においては、フェノール化合物、ビスフェノールAを、実施例1に記載した方法に従ってジ−tert−ブチルジカーボネート基で化学的に改質した。使用した組成は以下の通りであった。
【0129】
成分
ビスフェノール−A 114g
DIBOC 109g
DAMP 3.66g
ジクロロメタン 200g
NMR、DSC及びTGAによる特性決定は、220℃への加熱後にビスフェノール−Aが再生されたこと及びカーボネート基の分解が起こったことを確認した。
【0130】
実施例6
この実施例においては、多官能価フェノールノボラック樹脂、Perstorp 85.36,28を、実施例1に記載した方法を用いてMEK中でジ−tert−ブチルジカーボネート基で化学的に改質した。ジ−tert−ブチルジカーボネートは化学量論比以下で投入したので、フェノール基は一部しか改質されなかった。組成は以下の通りであった。
【0131】
成分
Perstorp 85.36,28 2.03g
DIBOC 0.24g
DAMP 0.67mg
MEK 2.9g
NMR測定によって、改質の成功が確認された。220℃への加熱及びカーボネート基の分解後、フェノールの−OH基が再生された。
【0132】
比較例I及びII
これらの比較例においては、公知発泡剤、アゾジカルボンアミドを追加発泡剤として用い、有機樹脂へのグラフト化は行わず;アゾジカルボンアミドを含まない基準材料又は以下の表IIIに記載した他の発泡剤と比較した。
【0133】
アゾジカルボンアミドを発泡剤として樹脂に混和すると、不安定なワニス(一晩で沈澱)及び不均質な積層体(層間剥離を引き起こすマクロ気泡)が生じる。
【0134】
【表3】

【0135】
実施例7A及び7B
これらの実施例においては、改質臭素化エポキシ樹脂、改質D.E.R.560を用いて、以下の表4に記載したような電気用積層体の配合物を製造した。
【0136】
【表4】

【0137】
前記結果は、実施例1に従って製造された改質D.E.R.560が樹脂の反応性を変化させず且つTgが依然として同様であったことを示す。また、全硬化積層体サンプルの230℃までのDSC走査時には熱分解は観察されなかった。これは、プレス段階の間に全ての熱不安定性基が分解されたことを意味する。改質D.E.R.560の量を増加させることによって、積層体の外観は白っぽく半透明から白濁に変わった。これは、細孔がより大きくなり且つ細孔数が増加したためであった。
【0138】
実施例8A及び8B並びに比較例III
これらの例においては、以下の表Vに記載したように、種々の改質D.E.R.560を樹脂配合物中に用いた。
【0139】
【表5】

【0140】
前記結果は、実施例1に従って製造された改質D.E.R.560の使用がワニスの反応性を変化させず且つ熱安定性が依然として同様であったことを示す。改質臭素化エポキシ樹脂D.E.R.560は依然として有効な難燃剤として作用した(UL94 V−0)。改質D.E.R.560の増加は、積層体の外観を、明澄な黄色から白濁に変化させた。これは、細孔がより大きくなり且つ細孔数が増加したためであった。実施例8A及び8Bのナノ多孔質材料の誘電率は、比較例IIIの基準材料よりもはるかに低かった。
【0141】
実施例8Bの気泡は、光学顕微鏡下で見ることができる。これらの気泡は、直径が約10〜100μmである。他の2つのサンプル中の気泡はこれらの条件下では見ることができなかった。
【0142】
実施例8Aの透過電子顕微鏡検査は、0.01μm〜0.15μmの範囲の非常に小さい気泡を示し、個数平均の平均径(number mean average diameter)が0.059μmであった。基準の比較例IIIは、これらの条件下で気泡を示さない。
【0143】
実施例8Aの積層体の細孔の直径は以下の通りであった:
【0144】
【表6】

平均径:Dn=0.059μm;Da=0.065μm;Dv=0.069μm
【0145】
実施例9及び比較例IV
これらの例においては、表VIに記載したようにして、実施例2Dに従って製造された改質D.E.R.560を本発明の配合物中に使用し、改質D.E.R.560を含まない比較例VIと比較した。
【0146】
【表7】

【0147】
前記結果は、実施例2Dに従って製造された改質D.E.R.560の使用がワニスの反応性を変化させず;且つTg、熱安定性及び難燃性が依存として同様であったことを示す。実施例9のナノ多孔質材料の誘電率は、比較例IVの基準よりもはるかに低かった。
【0148】
実施例10A及び10B並びに比較例V
D.E.R.560を、実施例2Dに記載した方法に従って改質し、以下の表VIIに記載した配合物中に用いた。
【0149】
薄い(厚さ0.40mm)積層体を、真空を適用して及び適用せずにプレスした。真空下でプレスされた積層体及び真空を用いずにプレスされた積層体は、同様な厚さ及び樹脂含量を示した。
【0150】
【表8】

【0151】
実施例11A及び11B並びに比較例VI
D.E.R.560を、実施例3に記載した方法に従って改質し、以下の表VIIIに記載した配合物中に使用した。種々の量の改質D.E.R.560を用いた結果を以下の表VIIIに記載する。
【0152】
【表9】

【0153】
実施例12A及び12B並びに比較例VII
これらの実施例においては、実施例4Bに記載した方法に従って製造された種々の量の改質D.E.R.539を用いた。以下の表IXに示す通り、改質D.E.R.539の使用はワニスの反応性を変化させず、Tgは依然として同様であった。改質D.E.R.539の増加は、積層体の外観を、明澄な黄色から白濁に変化させた。これは、細孔が大きくなったか又は気泡の体積分率が高くなったためであった。
【0154】
【表10】

【0155】
実施例13
以下の表Xに記載した組成を用いた以外は実施例3に記載した方法に従って、D.E.R.560を改質した。この組成に関して実施した測定の結果もまた、以下の表Xに記載した。
【0156】
【表11】

【0157】
実施例14
機械的撹拌機及び加熱ジャケット並びにN2注入口及び添加用漏斗を装着した5Lガラス反応器中で、改質臭素化エポキシ樹脂溶液を製造した。1225.4gのDOWANOL PMA、2275.8gの固体D.E.R.560及び310.3gのE.R.L.4299をを反応器に装入し、溶液を90℃に加熱した。完全に希釈後、溶液を25℃まで冷ました。この溶液にジ−tert−ブチルジカーボネート136.5g及びジメチルアミノピリジン0.38gを2時間にわたって4回に分けて添加した。ジ−tert−ブチルジカーボネート及びジメチルアミノピリジンの複数回の装入後に発泡が起こった。ジ−tert−ブチルジカーボネート及びジメチルアミノピリジンを全て添加後、溶液を25℃において更に2時間攪拌した。この時間の後には発泡は認められなかった。溶液は透明であった。次いで、溶液に硼酸溶液(メタノール中不揮発分20%)51.7gを添加した。溶液を更に1時間撹拌した。得られた樹脂に関するエポキシの理論当量は401(固形分に基づく)であった。
【0158】
実施例15A〜15D
機械的撹拌機及び加熱ジャケット並びにN2注入口及び添加用漏斗を装着したガラス反応器中で、改質ビスフェノール−Aフェノールノボラック溶液を製造した。BPN17の改質%は、以下の表XIに示すように、実施例15A、15B、15C及び15Dに関してそれぞれ5.3%、10%、50%及び100%であった。BPN17の溶液を反応器に装入し、溶液中にジ−tert−ブチルジカーボネート及びジメチルアミノピリジンを2時間にわたって少しずつ混和した。ジ−tert−ブチルジカーボネート及びジメチルアミノピリジンの複数回の装入材料を投入した後に、発泡が起こった。ジ−tert−ブチルジカーボネート及びジメチルアミノピリジンを全て反応器に混和した後に、溶液を更に2時間撹拌した。この時間の後には発泡は認められなかった。溶液は透明であった。
【0159】
【表12】

【0160】
実施例16A〜16D並びに比較例VIII
これらの例においては、種々の濃度の熱不安定性基を用いて、以下の表XIIに記載したような配合物を製造した。
【0161】
【表13】

【0162】
この例は、エポキシマトリックスの最終形態が熱不安定性基の濃度によって異なることを示している。
【0163】
実施例17A〜17D及び比較例IX
これらの例において、種々の濃度の熱不安定性基を用いて、以下の表XIIIに記載した配合物を製造した。
【0164】
【表14】

【0165】
この例は、エポキシマトリックスの最終形態が熱不安定性基の濃度によって異なることを示している。実施例16と実施例17との比較は、エポキシマトリックスの最終形態が、加工条件、例えば、硬化温度によって異なることを示している。
実施例18及び比較例X
これらの実施例においては、以下の表XIVに記載した配合物を比較した。
【0166】
【表15】

【0167】
実施例19
機械的撹拌機及び加熱ジャケット並びにN2注入口及び添加用漏斗を装着した5Lガラス反応器中で、改質臭素化エポキシ樹脂溶液を製造した。1131.9gのDOWANOL PMA及び2102.1gの固体D.E.R.560を反応器中に装入し、溶液を90℃に加熱した。完全に希釈後、溶液を35℃まで冷却した。ジ−tert−ブチルジカーボネート(トルエン中固形分80%)254.6g及びジメチルアミノピリジン溶液(MEK中固形分5%)11.4gを30分にわたって溶液に滴加した。ジ−tert−ブチルジカーボネート及びジメチルアミノピリジンを全て反応器中に混和した後に、溶液を35℃において更に1時間撹拌した。この時間の後には発泡は認められなかった。得られた生成物のエポキシの理論当量は470であった(固形分に基づく)。
【0168】
実施例20A〜20E及び比較例XI
608gのD.E.R.330,392gのD.E.R.6615及び420gのアセトンをブレンドすることによって、エポキシ樹脂溶液を製造した(ここでは「エポキシブレンド」と称する)。エポキシブレンド樹脂溶液28.4gをガラス瓶中に量り入れた。磁気撹拌機をガラス瓶中に入れ、温度を22℃に制御した。この溶液にジカーボネート及びジメチルアミノピリジンを30分にわたって混和した。以下の表に、使用した組成を記載してある。溶液を22℃において24時間撹拌した。この時間の後に、真空オーブン中で22℃において24時間、溶媒を除去した。最終的に、明澄で、非常に粘稠な液体が得られた。
【0169】
減量1重量%の際の温度を、熱重量分析(TGA)によって測定した。結果を、以下の表XVに示す。
【0170】
【表16】

【0171】
実施例20Cは190℃への加熱時にゲル化した。これは、熱不安定基の切断時に放出される分解生成物から生じる反応性多官能価分子によると考えられた。
【0172】
実施例21A及び21B
これらの実施例においては、以下の表中に記載した配合物を製造し;それらから製造されたプリプレグ及び積層体の性質を測定した。結果を以下の表XVIに示す。
【0173】
【表17】

【0174】
実施例22A〜22D
これらの実施例においては、以下の表中に記載した配合物を製造し;それらから製造されたプリプレグ及び積層体の性質を測定した。結果を以下の表XVIIに示す。
【0175】
【表18】

【0176】
実施例23
磁気撹拌機を装着したガラス瓶中で、改質2−エチル−4−メチルイミダゾール溶液を製造した。2−エチル−4−メチルイミダゾール溶液(DOWANOL PMA中固形分20%)11.0gをガラス瓶に量り入れ;この溶液にジ−tert−ブチルジカーボネート溶液(トルエン中固形分80%)5.45gを20℃において5分間にわたって1滴ずつ混和した。ジ−tert−ブチルジカーボネートの混和時に発泡が起こった。ジ−tert−ブチルジカーボネート全てをガラス瓶中に混和した後、溶液を20℃において48時間撹拌した。この時間の後には発泡は認められなかった。溶液は透明であった。
実施例24A〜24F及び比較例XII〜XIV
これらの例においては、以下の表中に記載した配合物を製造した。測定された性質を以下の表XVIII及びXIXに示す。
【0177】
【表19】

【0178】
【表20】

【0179】
この例は、実施例23からの改質2−エチル−4−メチルイミダゾール溶液が潜在性/封鎖(blocked)触媒として作用することを示す。アンブロッキング温度より低温では、実施例23からの改質2−エチル−4−メチルイミダゾール溶液は触媒活性を示さないか、又は2−エチル−4−メチルイミダゾールよりはるかに低い触媒活性を示す。温度がアンブロッキング温度に達すると、実施例23からの改質2−エチル−4−メチルイミダゾール溶液の触媒活性は増加する。更に、実施例23からの改質2−エチル−4−メチルイミダゾール溶液は、アンブロッキング温度より高温では2−エチル−4−メチルイミダゾールとほとんど同じ触媒効率を示す。
【0180】
実施例25
磁気撹拌機を装着したガラス瓶中で、改質フェノールノボラック溶液を製造した。XZ−92535フェノールノボラック樹脂溶液(DOWANOL PMA中固形分50%)21.51gをガラス瓶中に量り入れた。全てのフェノール基をキャップするために、フェノールノボラック樹脂を化学量論量のジ−tert−ブチルジカーボネートで改質した。この溶液中にジ−tert−ブチルジカーボネート溶液(トルエン中固形分80%)28.15g及びジメチルアミノピリジン(固体)0.38gを20℃において1時間にわたって攪拌しながら5回に分けて混和した。ジ−tert−ブチルジカーボネートの混和時に発泡が起こった。ジ−tert−ブチルジカーボネート全てをガラス瓶中に混和した後、溶液を20℃において18時間撹拌した。この時間の後に発泡は認められなかった。溶液は透明で、低粘度であった。
【0181】
XZ−92535のCannon―Fenske粘度は1166.1cStであり;改質XZ−92535のCannon―Fenske粘度は29.1cStであった。
【0182】
この実施例は、tert−ブチルカーボネート基によるフェノールノボラック樹脂のフェノール基のキャッピングは、溶液粘度を大幅に低下させることを示す。これはおそらく、水素結合作用が低下したためである。
実施例26
磁気撹拌機を装着したガラス瓶中で、改質臭素化エポキシ樹脂溶液を製造した。D.E.R.560臭素化エポキシ樹脂溶液(DOWANOL PMA中固形分70%)139.3gをガラス瓶中に量り入れた。この溶液中にジ−tertブチルジカーボネート溶液(トルエン中固形分80%)10.6g及びジメチルアミノピリジン(固体)0.143gを25℃において15分にわたって攪拌しながら少しずつ混和した。ジ−tert−ブチルジカーボネートの混和時に発泡が起こった。ジ−tert−ブチルジカーボネート全てをガラス瓶中に混和した後、溶液を25℃において48時間撹拌した。この時間の後に発泡は認められなかった。溶液は透明で、低粘度であった。
【0183】
D.E.R.560臭素化エポキシ樹脂溶液のCannon―Fenske粘度は262.3cStであり;改質D.E.R.560臭素化エポキシ樹脂溶液のCannon―Fenske粘度は198.0cStであった。
【0184】
この実施例は、tert−ブチルカーボネート基による臭素化エポキシ樹脂の第2ヒドロキシル基のキャッピングは、溶液粘度を低下させることを示す。これはおそらく、水素結合作用が低下したためである。
【0185】
実施例27
この実施例中においては、改質を行うために、凝縮器、機械的撹拌機、N2注入口、添加用漏斗及び熱電対を装着した、5口取り付けリッドを有する12L丸底フラスコを用いた。固形分80%のD.E.R.592溶液(10kg,暗褐色溶液)をフラスコ中に装入し、次いでアセトン(589g)を添加して、溶液粘度を低下させた。次いで、ジ−tert−ブチルジカーボネート(168.7g,無色液体)を反応器に添加し、この溶液を40℃に加熱した。ジメチルアミノピリジン(0.48g,白色結晶固体)をアセトンに溶解させ、溶液に滴加した。反応器中の発泡量を減少させるために、添加は30分にわたって続けた。添加完了後、溶液を更に3時間攪拌した。この時間の初めに、溶液は色が暗褐色で、気泡でいっぱいであった。完了後、気泡は残っていなかった。
【0186】
実施例28A〜28D
これらの実施例においては、以下の表に記載した配合物を製造した。測定した性質を以下の表XX及びXXIに示す。
【0187】
【表21】

【0188】
【表22】

【0189】
実施例29A〜29E
これらの実施例においては、下記表に記載した配合物を製造した。測定した性質を以下の表XXIIに示す。
【0190】
【表23】

【0191】
実施例30
機械的撹拌機及び加熱ジャケット並びにN2注入口及び添加用漏斗を装着した1Lガラス反応器中で改質高分子量エポキシ樹脂溶液を製造した。316.6gのD.E.R.669E溶液[DOWANOL PMA中NV40%]を反応器中に装入し、温度を25℃〜30℃に制御した。この溶液に、ジ−tert−ブチルジカーボネート溶液[トルエン中NV80%]118.8g及びジメチルアミノピリジン溶液[MEK中N.V. 10%]5.32gを2時間にわたって滴加した。ジ−tert−ブチルジカーボネート及びジメチルアミノピリジンの混和の間に発泡が起こった。ジ−tert−ブチルジカーボネート及びジメチルアミノピリジン全てを溶液中に混和した後、溶液を25℃において更に2時間攪拌した。溶液は透明だった。エポキシの理論当量は4179であった(固形分に基づく)。
【0192】
次いで、改質D.E.R.669E溶液を電気用積層体配合物中にエポキシ官能性発泡剤として用いた。
【0193】
D.E.R.669E溶液[N.V.40%]の25℃におけるCannon−Fenske粘度は1542cSt、改質D.E.R.669E溶液[N.V.40.4%]の25℃におけるCannon−Fenske粘度は743cStであった。
【0194】
実施例31及び比較例XV
この実施例において、下記表に記載した配合物を製造した。測定した性質を以下の表XXIIIに示す。
【0195】
【表24】

【0196】
実施例31のナノ多孔質積層体の誘電率Dkは、ナノ多孔質添加剤以外は同一のマトリックス組成を有する非孔質の比較例XVに比較して、7.5%低下した。損失率Dfもまた、18%低下した。ナノ多孔質構造にもかかわらず、水吸水量及び耐はんだ性は未変化のままであった。実施例31のナノ多孔質積層体の歪みエネルギー開放率GIcは、ナノ多孔質添加剤以外は同一のマトリックス組成を有する非孔質の比較例XVに比較して32%以上増加した。実施例31の扇形破壊領域(図1参照)は、エポキシ樹脂を多く含む領域の延性変形を示す。理論によって拘束するつもりはないが、ナノ気孔は、細孔径が適当な場合に亀裂最前部の半径を増加させることによって、亀裂のためのエネルギーディスパーザーとして働くことができる。より高い靭性にもかかわらず、ガラス転移温度は未変化のままであった。より高い倍率では、1ミクロン未満の大きさのドメイン又はキャビティがエポキシ中に認められた。平均細孔径は約100nmであり、30nm未満〜200nm未満の範囲のようである。サンプルのゆがみのため、細孔の大きさの正確な分析は、SEM写真では行われなかった。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】エポキシを基材とするナノ多孔質電気用積層体の層間破壊面(樹脂の多い領域)を示す走査型電子顕微鏡検査(SEM)像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機樹脂の水素活性基と熱不安定性基を含む化合物とを反応させることによって、有機樹脂の幹上に熱不安定性官能基をグラフトさせ;
(b)熱不安定性基を含む有機樹脂と少なくとも1種の硬化剤とをブレンドすることによって組成物を製造し;そして
(c)有機樹脂上にグラフトされた熱不安定性基を熱分解して、ナノ多孔質基材を生成せしめる
工程を含んでなる、ナノ多孔質基材の製造方法。
【請求項2】
前記基材が積層体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機樹脂がエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、炭化水素樹脂及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機樹脂がエポキシ樹脂である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機樹脂が臭素化エポキシ樹脂である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機樹脂が燐含有エポキシ樹脂である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機樹脂が500より高いエポキシ当量を有するエポキシ樹脂である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水素活性基がアミン、フェノール、チオール、ヒドロキシル、アルコール、アミド、ラクタム、カルバメート、ピロール、メルカプタン、イミダゾール、グアニジン及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
熱不安定性基を含む前記化合物がジカーボネート、ジカーボネート誘導体、カルバゼート、カルバゼート誘導体及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記の、熱不安定性基を含む化合物がtert−ブチルジカーボネートである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記熱不安定性基がカーボネートである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記熱不安定性基がtert−ブチルカーボネートである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記熱不安定性基が組成物中に、ワニス中の熱不安定性基の重量%が固形分に基づき、約0.01重量%と約10重量%との間になるような量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
溶剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記溶剤がケトン、グリコールエーテルのアセテート又はそれらの混合物である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶剤が約10部〜約60部の量で存在する請求項14に記載の方法。
【請求項17】
有機樹脂と熱不安定性基を含む化合物との間の反応用触媒を含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒がジメチルアミノピリジンである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
有機樹脂と熱不安定性基を含む化合物との反応を約15℃〜約45℃の温度において行う請求項1に記載の方法。
【請求項20】
誘電率を低下させるために熱可塑性化合物をワニスに添加することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記熱可塑性化合物がポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド又はアリル化ポリフェニレンエーテルである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(a)有機樹脂;
(b)熱不安定性基を含む化合物;及び
(c)場合によっては溶剤
を含んでなる有機樹脂組成物。
【請求項23】
前記有機樹脂がエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、炭化水素樹脂及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記有機樹脂が臭素化エポキシ樹脂、燐含有エポキシ樹脂、エポキシ当量が500より高いエポキシ樹脂及びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記熱不安定性基がカーボネートである請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
前記熱不安定性基がtert−ブチルカーボネートである請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
前記熱不安定性基が、樹脂組成物中の熱不安定性基の重量%が固形分に基づき、約0.01重量%〜約70重量%となるような量で存在する請求項22に記載の組成物。
【請求項28】
前記溶剤がケトン、グリコールエーテルのアセテート又はそれらの混合物である請求項22に記載の組成物。
【請求項29】
前記溶剤が約10部〜約60部の量で存在する請求項22に記載の組成物。
【請求項30】
請求項22に記載の組成物を、硬化剤を含む所望の添加剤とブレンドすることによって製造されるワニス。
【請求項31】
請求項22に記載の有機樹脂組成物を含む繊維強化複合材料製品。
【請求項32】
電気回路用の積層板又はプリプレグである請求項31に記載の繊維強化複合材料製品。
【請求項33】
請求項32に記載の有機樹脂組成物の絶縁被覆を有する電気回路部品。
【請求項34】
製品に請求項22に記載の有機樹脂を被覆し、そして被覆された製品を加熱して前記有機樹脂を硬化させることを含んでなる被覆製品の製造方法。
【請求項35】
前記製品が金属箔である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記金属箔が銅箔又はアルミニウム箔である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
(a)織布;及び(b)請求項22に記載の有機樹脂組成物を含んでなるプリプレグ。
【請求項38】
(a)請求項22に記載の有機樹脂組成物を含む基材;及び(b)前記基材の少なくとも一方の面に配置された金属の層を含んでなる積層体。
【請求項39】
前記基材がガラス織布の強化材を更に含み、有機樹脂及び硬化剤がガラス織布上に含浸された請求項38に記載の積層体。
【請求項40】
請求項38の積層板から製造されたプリント配線基板(PWB)。
【請求項41】
非改質有機樹脂溶液と比較して少なくとも20%低下された粘度を有する請求項22に記載の有機樹脂溶液。
【請求項42】
請求項31に記載の繊維強化複合材料製品から製造された軽量複合材料。
【請求項43】
前記反応性基が熱不安定性基でキャップされた請求項22に記載の繊維有機樹脂組成物から製造された封鎖硬化剤。
【請求項44】
前記反応性基が熱不安定性基でキャップされた請求項22に記載の有機樹脂組成物から製造された潜在性触媒。
【請求項45】
有機樹脂及び請求項43に記載の封鎖硬化剤から製造された貯蔵安定性ワンパック型樹脂システム。
【請求項46】
熱不安定性基の開裂時に反応性副生物成分を導入する請求項22に記載の有機樹脂溶液。
【請求項47】
熱不安定性基を含む化合物を含まない非改質有機樹脂組成物に比較して少なくとも20%又はそれ以上の改良された靭性を有する請求項30に記載の有機樹脂組成物。
【請求項48】
前記組成物が繊維強化材を更に含み、有機樹脂及び硬化剤が前記繊維強化材中に含浸された請求項47に記載の有機樹脂組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−526347(P2007−526347A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514903(P2006−514903)
【出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/015772
【国際公開番号】WO2004/113427
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.POLAROID
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】