説明

ナビゲーションシステム

【課題】従来のシステムは、高速道路と一般道路が並走している場合、判定基準とする位置および方位に差が無いので誤動作する可能性がある。また、別のシステムは、一般道路では光ビーコンのみを受信し、高速道路では電波ビーコンのみを受信するもので、一般道路に電波ビーコンが設置されている個所ではこれを受信できないという問題がある。
【解決手段】ビーコン情報に含まれるビーコン位置の道路種別と、地図データからマッチングの際に判別する自車位置の道路種別とを比較判定し、両道路種別が一致する場合にはビーコン情報を採用し、両道路種別が不一致の場合にはビーコン情報を不採用とするように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両に搭載され自車の現在位置を検出してモニタ上の地図に表示し、路側などに配置されたビーコンからのビーコン情報を受信して音声で発音したり、モニタ表示するナビゲーションシステムに係り、特にビーコン情報受信時に自車に不要なビーコン情報については排除するようにしたナビゲーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビーコンには、概して一般道路に設置される光ビーコンと高速道路に設置される電波ビーコンがあるが、道路の所轄により異なる場合があり、その種別は必ずしも一定ではない。ビーコンからは、現在位置情報、行先案内、分岐情報、渋滞情報、規制情報、事故情報、駐車場情報、文字情報、簡易図形情報等の複数のビーコン情報が提供されている。これらのビーコン情報は、「情報種別」(光ビーコン)または「大区分ID」(電波ビーコン)と呼ばれるデータで識別できるようになっている。例えば、行先案内や分岐情報などは、走行している道路に直接関係する情報となっているので、一般道路走行中に近くの高速道路に設置されたビーコン情報を受信してしまった場合には表示しても意味が無く、むしろ表示しない方が運転上の妨げとならないと考えられている。
【0003】
上述のような課題を解決する従来のナビゲーションシステムとしては特開平5−142996号公報に記載されたものがある。これは、ビーコン情報から得られる位置情報と自車の方位情報とを判定基準とし、高速道路の電波ビーコンからのビーコン情報を一般道路で受信した場合にはそのビーコン情報を不採用とし、その表示を行わないようにするものである。
【0004】
また、従来の他のナビゲーションシステムとして特開平9−16888号公報に記載されたものがある。これは、走行中の道路種別に応じて受信メディアを限定するというもので、一般道路走行中は光ビーコンからのビーコン情報のみを受信して電波ビーコンからのビーコン情報を受信せず、高速道路走行中は逆に電波ビーコンからのビーコン情報のみを受信して光ビーコンからのビーコン情報を受信しないようにするものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のナビゲーションシステムは以上のように構成されているので、次のような道路構成に対しては誤動作する恐れがあり、目的に対応してビーコン情報を的確に処理できないなどの課題があった。
高速道路と一般道路が並走している場合、例えば首都高速渋谷線と国道246号線や、阪神高速神戸線と国道43号線のような並走区間では、判定基準とする位置および方位に差が無いので、特開平5−142996号公報に記載されたシステムでは誤動作する可能性がある。
【0006】
このケースについて、図4に示す道路構成を用いて説明する。図4において、G1は一般道路の上り線、G2は一般道路の下り線、H11は高速道路の上り線、H12は高速道路の下り線、R13,R14はランプ、B20は電波ビーコン、B21は電波ビーコンの受信範囲である。
このように一般道路と高速道路とが並走している区間を走行していて電波ビーコンB20からのビーコン情報を受信する場合を想定する。電波ビーコンB20は高速道路の上り線H11に対して設置され、送出される信号の受信範囲B21に入る車両に対し高速道路を走行する車両向けにビーコン情報を提供している。ところが、一般道路を走行する車両でも受信範囲B21内を通過すれば、電波ビーコンB20の漏れ電波を受信する可能性がある。この場合、一般道路の上り線G1を走行する車両のナビゲーションシステムは、高速道路に関する渋滞情報や行先情報を表示することになる。つまり、一般道路の上り線G1を走行する車両の運転者に対して、誤った、あるいは不必要な情報が提供されることになり、ナビゲーションシステムによる情報提供が適正に行われなくなるという問題が起こる。また、図4のように電波ビーコンB20がカーブしている区間の途中に設置されているような場合には、高速道路を走行している車両にとっても、自車の方位が変化していくため、誤って受信情報を採用しなくなる可能性が生じるという問題がある。
【0007】
また、特開平9−16888号公報に記載されたシステムを用いた場合、一般道路走行中は光ビーコンからのビーコン情報のみを受信し、高速道路走行中は逆に電波ビーコンからのビーコン情報のみを受信するようにしているので、例えば電波ビーコンが一般道路と高速道路の両方に設置されている地域では、一般道路の電波ビーコンからのビーコン情報を受信できないという問題がある。
【0008】
さらに、前述の従来の両システムの場合、ビーコン情報の採否決定手段において採否を一律に決定しており、走行している道路との依存性が低いが共通して重要な情報、例えば緊急メッセージ情報のような情報も採用されなくなるなどの不都合が生じる問題がある。
【0009】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、道路の如何なる構成に対してもビーコン情報の採用・不採用の判断が的確に行われるナビゲーションシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るナビゲーションシステムは、車両に搭載され自車位置を検出してモニタ上の地図に表示し、路側などに配置された電波ビーコンや光ビーコンからのビーコン情報を受信し、自車に不要なビーコン情報については再生表示を不採用とするようにしたナビゲーションシステムにおいて、ビーコン情報に含まれるビーコン位置の道路種別と、地図データからマッチングの際に判別する自車位置の道路種別とを比較判定し、両道路種別が一致する場合にはビーコン情報を採用し、両道路種別が不一致の場合にはビーコン情報を不採用とするものである。
【0011】
この発明に係るナビゲーションシステムは、ビーコン情報に含まれる情報の種別を識別し、予め指定された種別を検出したときは、比較判定が不一致の場合でも、前記予め指定された種別の情報のみは採用するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、ビーコン情報に含まれるビーコン位置の道路種別と、地図データからマッチングの際に判別する自車位置の道路種別とを比較判定し、両道路種別が一致する場合にはビーコン情報を採用し、両道路種別が不一致の場合にはビーコン情報を不採用とするように構成したので、自車の走行している道路と異なる道路に設置されているビーコンからのビーコン情報を受信し、ドライバに対して不必要な情報提供をしてしまうことを防止し、適正なビーコン情報を提供することができるという効果がある。
【0013】
この発明によれば、ビーコン情報に含まれる情報の種別を識別し、予め指定された種別を検出したときは、比較判定が不一致の場合でも、前記予め指定された種別の情報のみは採用するように構成したので、ビーコン情報の中で走行している道路とは無関係に重要な情報については採用でき、ドライバに逸早く重要情報を提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムの主要機能を示す機能ブロック図である。図1において、100は道路の所定位置に設置された電波ビーコンや光ビーコンからの送信されるビーコン情報を受信するビーコン受信手段、130は地図・経路の表示、自車位置を道路上に正確に表示するマップマッチング処理、経路計算、経路案内、受信したビーコン情報の表示等に使用されるデータが格納された地図データである。200は各種センサの出力や地図データ130に基づき自車位置を推定する位置検出手段である。300は比較手段で、ビーコン受信手段100からのビーコン位置の道路種別を表すビーコン位置情報と位置検出手段200からの自車位置の道路種別を表す自車位置情報とを比較し、一致・不一致の判定を行うものである。ここで、道路種別としては都市間道路、都市内高速道路、一般道路等がある。310は採否決定手段で、比較手段300からの「一致」あるいは「不一致」の判定情報に基づきビーコン情報の採用・不採用を制御するものである。500は表示手段、400は採否決定手段310からのビーコン情報と地図データ130とに基づく情報を表示手段500に表示するために加工処理する情報加工手段である。
【0015】
次に動作について説明する。
道路を走行していて、路側に設置された電波ビーコンや光ビーコンの受信範囲に入ると、ビーコンから送信されたビーコン情報がビーコン受信手段100により受信され、比較手段300に与えられる。一方、位置検出手段200により地図データ130から読み出される地図情報と各種センサの出力により逐次自車位置が推定され、自車位置の道路種別を含む自車位置情報が取り出されて比較手段300に与えられる。
【0016】
図3は比較手段300の動作手順を示すフローチャートである。
ビーコン受信手段100によりビーコン情報を受信すると(ステップST1)、ビーコン情報からビーコン位置の道路種別Xを判定する(ステップST2)。さらに位置検出手段200からの自車位置情報に基づき自車位置の道路種別Yを判定する(ステップST3)。次に両道路種別XとYの比較判定を行い(ステップST4)、一致していれば採否決定手段310に「一致」出力を与える(ステップST5)。また、不一致であれば、「不一致」出力を採否決定手段310に与える(ステップST6)。
【0017】
次に、採否決定手段310は、比較手段300からの判定情報が「一致」であればビーコン受信手段100からのビーコン情報を情報加工手段400に送り、逆に判定情報が「不一致」であればビーコン情報を情報加工手段400に送らないように動作する。判定情報が「一致」のときには、情報加工手段400において、ビーコン情報と地図データ130とに基づく情報を表示手段500に表示すべく加工処理される。
【0018】
図2はビーコン受信機を備えたナビゲーションシステムの構成を示すブロック図であり、図1の機能構成を具体化したものである。
1はビーコン受信機で、図1のビーコン受信手段100に対応するものである。10はCD−ROMまたはDVD−ROMで、11はこれらのROM媒体に記憶された情報を読み取るCD/DVDドライブであり、これらは図1の地図データ130に相当する。30はメインCPUで、図1における位置検出手段200、比較手段300および採否決定手段310の機能処理を行うと共に、描画IC31により情報加工手段400の処理も行うものである。21は車速パルス発生器、22はジャイロ、23はGPS受信機で、これらはメインCPU30が位置検出を行う際のセンサーデータを出力するものである。50はモニタで、図1における表示手段500に相当する。
なお、ナビゲーションシステムの一般的動作については周知であるので、説明を省略する。
【0019】
以上のように、この実施の形態1によれば、ビーコン情報に含まれるビーコン位置の道路種別と、自車位置の道路種別を比較し判定するようにしたので、図4に示すような道路構成の状況下であってもビーコン情報の採用・不採用判断が的確に行われ、その結果適正な情報の表示が行える効果が得られる。
【0020】
実施の形態2.
実施の形態1では道路種別を判定基準にして比較判定するシステムを示したが、これに代わって路線名称を使用することも考えられる。この場合、図4に示した道路構成だけでなく、図5(イ)および図5(ロ)に示すような道路構成に対しても有効となる。
図5(イ)において、a,b,cは路線上の各地点であり、路線Aは分岐点bで路線Bと路線Cに分岐する。簡略化のため、a→bの向きの車線のみを図示し、逆向きの車線は省略する。分岐点bの近くの路線C側にビーコンB1が設置されている場合、路線Bを走行している車両は受信範囲B2に入り、漏れ電波を受信する可能性がある。この場合、路線Bと路線Cは同一の道路種別なので、実施の形態1の機能構成ではビーコン情報の誤った表示を行う恐れがある。また、図5(ロ)のように分岐点bの近くの路線B側にビーコンB1が設置されている場合、路線Cの走行時に同様な問題が発生する。
【0021】
そこで、道路種別に代わって路線名称で比較判定するようにする。すなわち、図1の機能構成において、ビーコン受信手段100により受信したビーコン情報に含まれるビーコン位置の路線名称と、地図データ130から得られるデータ上で位置検出手段200により認識される自車位置の路線名称とを比較手段300により比較し、両者の一致・不一致を判定するように設定する。こうすることによって、図5に示す同一種別の道路が分岐するような場所にビーコンの設置がある場合でも適正な情報の表示が行える効果が得られる。また、正式な路線名称の代わりに、路線を特定できるもの、例えば路線毎にユニークな番号、記号などを予め定義して、それを用いて比較判定するようにしても同様な効果が得られる。
【0022】
実施の形態3.
道路種別や路線名称の代わりに、ビーコン情報に含まれるビーコン位置の地名情報、すなわち住所と、ナビゲーションシステムが認識している自車位置の地名情報を比較判定するようにしてもよく、実施の形態1および実施の形態2と同様な効果が得られる。なお、この場合の地名情報としては、住所に対応して路線に沿って適当な間隔で符号、番号を予め設定した識別記号も含むものとする。
【0023】
実施の形態4.
また、ビーコン情報に含まれるビーコン位置のリンク(VICSリンク等)番号と、ナビゲーションシステムが認識している自車位置のリンク番号を比較判定するようにしてもよい。
図5(イ)に示した道路は、ナビゲーションシステムの中では図6に示すノードN1〜N6およびリンクL1〜L5で構成されたネットワークで表現される。この場合、ビーコンB1からのビーコン情報として、ビーコン位置のリンクL3の番号が提供されるので、リンクL3上に自車があれば、ビーコンB1からのビーコン情報を採用し、また自車位置のリンクがL3以外の場合は不採用とすることが可能であり、適正なビーコン情報の表示を行える効果が得られる。
ここで、車両側のビーコン受信処理のタイミングが実際のビーコン位置より前後する可能性を考慮して、リンクL3を走行する車両が通りうるリンクL1,L4,L5に自車位置がある場合にもビーコンB1からのビーコン情報が採用できるように、ビーコン位置のリンクL3から所定の範囲内にある前後のリンクを検索し、そのいずれかに自車位置があれば採用とするようにするのが実用的と考えられる。
【0024】
実施の形態5.
実施の形態1乃至実施の形態4において、ビーコン位置と自車位置を比較して一致しない場合にはビーコン情報を一括して不採用とする機能構成について述べてきた。しかし、ビーコン周辺を走行中のすべての車両にとって、他の道路向けに出されているビーコン情報であっても共有して有効な情報となりえるものもある。例えば、緊急メッセージ情報などは、地震警戒宣言発令中などの場合に情報提供することを想定しているので必要な情報となる。この種の情報がビーコンにより提供されている場合、ビーコン位置と異なる道路を走行している車両で受信表示されないと不都合が生じる。そこで、ビーコン情報の中に緊急情報のような所定情報が含まれる場合、予めナビゲーションシステムに所定情報についてはビーコン位置と自車位置の比較判定結果にかかわらず破棄しない処理機能を備えさせておく。
【0025】
例えば、受信したビーコン情報の内容の種別を識別する機能を図1のビーコン受信手段100または後段に設け、必要とする情報の種別を識別できるようにする。比較手段300の比較判定結果が「不採用」である場合に、所定情報の種別についての識別信号が検出されたときには、採否決定手段310において、所定情報のみは採用する処理を行わせる。
こうすることによって、自車にとって必要・不必要なビーコン情報を明確に振り分けることができ、さらに適正な情報の表示を行える効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムの主要機能を示す機能ブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムの比較手段の動作手順を示すフローチャートである。
【図4】道路構成の1例を示す説明図である。
【図5】道路構成の他の例を示す説明図で、(イ)および(ロ)はビーコンの設置位置の例を示す図である。
【図6】道路構成をネットワークで表現した説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ビーコン受信機、10 CD−ROMまたはDVD−ROM、11 CD/DVDドライブ、21 車速パルス発生器、22 ジャイロ、23 GPS受信機、30 メインCPU、31 描画IC、50 モニタ、100 ビーコン受信手段、130 地図データ、200 位置検出手段、300 比較手段、310 採否決定手段、400 情報加工手段、500 表示手段、B20 電波ビーコン、B21 受信範囲、G1 一般道路の上り線、G2 一般道路の下り線、H11 高速道路の上り線、H12 高速道路の下り線、L1〜L5 リンク、N1〜N6 ノード、R13,R14 ランプ、a,b,c 路線上の各地点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され自車位置を検出してモニタ上の地図に表示し、路側などに配置された電波ビーコンや光ビーコンからのビーコン情報を受信し、自車に不要な前記ビーコン情報については再生表示を不採用とするようにしたナビゲーションシステムにおいて、前記ビーコン情報に含まれるビーコン位置の道路種別と、地図データからマッチングの際に判別する前記自車位置の道路種別とを比較判定し、両道路種別が一致する場合には前記ビーコン情報を採用し、前記両道路種別が不一致の場合には前記ビーコン情報を不採用とすることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
ビーコン情報に含まれる情報の種別を識別し、予め指定された種別を検出したときは、比較判定が不一致の場合でも、前記予め指定された種別の情報のみは採用することを特徴とする請求項1記載のナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−305430(P2008−305430A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204524(P2008−204524)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【分割の表示】特願2001−37621(P2001−37621)の分割
【原出願日】平成13年2月14日(2001.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】