ナビゲーション装置
【課題】装置筐体に取り付けられた3軸加速度センサを用いて、距離センサによる走行距離の検出精度を高める。
【解決手段】ナビゲーション演算装置3は、車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ車両が静止していることを条件に、車両に取り付けられたナビゲーション装置筐体の傾きを3軸加速度センサ4の前後、左右、鉛直方向の検出軸の出力として検出してその出力値を取付姿勢の基準値として記憶する。車両の走行中、3軸加速度センサ4の出力値の平均値と現在設定されている基準値とを加重平均することにより、基準値を車両水平状態での値に補正する。3軸加速度センサ4の出力値と補正した基準値とに基づいて車両の傾きを求め、その車両の傾きにより距離センサ6の出力による走行距離を補正する。
【解決手段】ナビゲーション演算装置3は、車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ車両が静止していることを条件に、車両に取り付けられたナビゲーション装置筐体の傾きを3軸加速度センサ4の前後、左右、鉛直方向の検出軸の出力として検出してその出力値を取付姿勢の基準値として記憶する。車両の走行中、3軸加速度センサ4の出力値の平均値と現在設定されている基準値とを加重平均することにより、基準値を車両水平状態での値に補正する。3軸加速度センサ4の出力値と補正した基準値とに基づいて車両の傾きを求め、その車両の傾きにより距離センサ6の出力による走行距離を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載されるナビゲーション装置に関し、特に自車両の地図上の位置を自立航法により検出するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用ナビゲーション装置は、自動車等の車両の現在位置に応じた地図データをDVD−ROM、ハードディスク等の外部記憶装置から読出し、その地図データに基づいて地図をディスプレイ画面に表示するとともに、自車両の位置を自車位置マークとしてディスプレイ画面の一定の位置(例えば画面の中央位置もしくは中央下方位置)に固定表示し、自車両の走行に従ってディスプレイ画面上の地図をスクロールするようになっている。
【0003】
このような車載用ナビゲーション装置においては、自車両の現在位置を検出する検出手段が必要である。このような検出手段としては、距離センサとジャイロセンサまたは地磁気センサ等の方位センサとを用いた自立(推測)航法もしくは衛星からの電波を受信するGPS(Global Positioning System)受信機を用いるGPS航法が採用されている。
【0004】
この場合、GPS航法は、衛星からの電波により自車両の絶対位置を算出できるので、正確な車両の位置を検出することができるが、反面、都会のビル空間、高架道路下、屋内駐車場等のGPS衛星の電波を受信できない状況では、正確な車両の位置を検出できないという問題点がある。このような問題点を解決するため、近年においては、自立航法とGPS航法とを併用し、GPS電波が受信できない場合は自立航法を用いて車両の位置を検出するナビゲーション装置も供されている。
【0005】
しかしながら、ナビゲーション装置に正確な経路案内を行わせるには、複雑な道路形状をもつ都心のビル街、複雑に立体交差する高速道路のインターチェンジ及びジャンクション、上下で併走する高架道路と地上道路、地下駐車場及び屋内駐車場等のように、GPS電波の受信ができない状況が増加している現在では、誤差の少ない自立航法手段の開発が必要になってきている。
【0006】
自立航法を行うためには、車両の走行距離と方位を検出する必要がある。車両の走行距離は、車両に設けられた距離(速度)センサにより検出でき、方位は、振動ジャイロ、ガスレートジャイロ、光ファイバージャイロ等の角速度を検出するジャイロセンサにより検出することができる。ところが、このような自立航法においては、勾配のある路面を車両が走行した場合、路面の傾きにより2次元地図上での距離に誤差が生じる。また、車両の傾きによりジャイロセンサの角速度検出軸が傾き、検出される方位にも誤差が生じる問題がある。この問題に対して、3軸の加速度センサを用いて道路の勾配による傾きを求め、車両の距離と方位の誤差を補正する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−125689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、車両の自立航法の高精度化のために、車両のヨー方向とピッチ方向の角速度を検出する角速度センサと、車両の前後方向軸、左右方向軸、鉛直方向軸のうち少なくとも2軸の加速度を検出する加速度センサとを備え、車両の走行距離と方位を補正するようにしている。この場合、角速度センサと加速度センサが固定される筐体の車両への取付角を検出する必要がある。この取付角の検出は、車両が水平な状態で行う必要があるため、左右車高センサや振り子式の傾斜角計を用いて車両の傾斜を検出している。しかしながら、この構成では多数のセンサが必要となり、構成が複雑化する問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ナビゲーション装置筐体に取り付けられた3軸加速度センサを用いて距離センサによる走行距離の検出精度を高めることができるナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明によれば、補正手段は、車両に対するナビゲーション装置筐体の傾きを3軸加速度センサの前後方向軸、左右方向軸、鉛直方向軸の出力として検出してその出力値を取付姿勢の基準値として記憶する。車両が水平状態から傾いている状態で取得された基準値を用いると、その後の走行中に当該基準値と3軸加速度センサの出力値とに基づいて求めた車両の傾きに誤差が生じる。
【0010】
車両が通行する道路には上り勾配、下り勾配、左右の傾き(バンク)などがあるが、例えば目的地までを往復する場合のように比較的長い距離で見ると、道路の平均的な傾きは零つまり車両は水平状態となる。この点に着目し、補正手段は、車両の走行中、3軸加速度センサの出力値の平均値に基づいて基準値を補正する。そして、この補正した基準値と3軸加速度センサの出力値とに基づいて車両の走行時の傾きを求め、距離センサの出力値に基づいて得られる走行距離を上記車両の傾きにより補正する。
【0011】
これにより、車両の傾きを検出する車高センサまたは傾斜角計を用いなくても、そして最初に記憶した基準値が車両傾斜状態のものであっても、基準値は、車両が走行するに従って水平状態における理想的な値に徐々に補正される。その結果、構成が複雑化することなく走行距離の検出精度を高められ、車両位置演算手段は車両の現在位置を高精度に検出可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ナビゲーション装置筐体の車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ車両が静止していることを条件に取付姿勢の基準値を取り込むようにした。これにより、車両にナビゲーション装置を取り付けた工場等において車両を水平位置に停止させて電源を投入すれば、車両の水平状態に対応した正しい基準値を記憶させることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、車両のドライバー等が車両が水平位置にあることを確認した後に操作手段を用いて指示したことに応じて、補正手段は取付姿勢の基準値を取り込む。これにより、車両がほぼ水平の位置にある状態における基準値を記憶させることができる。この記憶された取付姿勢の基準値は、請求項2の発明で得られる基準値と比較して正確であることが期待できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、車両の走行中、3軸加速度センサの出力値の平均値と現在設定されている基準値とを加重平均することにより基準値を補正する。これにより3軸加速度センサの出力値に対するフィルタ作用が得られ、該フィルタを通過した3軸加速度センサの出力値により基準値が徐々に補正される。3軸加速度センサの出力値の平均データ数および加重平均における加重割合は、車両が走行する道路の平均的な傾きをほぼ零と見なすことができる程度のフィルタ作用が得られる値に設定すればよい。
【0015】
請求項5の発明によれば、3軸加速度センサの出力値の平均値を求めるに際し、距離センサから得られる走行距離と走行時間とに基づいて車両の加減速に係る加速度を算出し、3軸加速度センサの出力値から車両の加減速に係る加速度を減算しておく。これにより、走行中の加減速に係る加速度(外乱)に起因する影響を排除でき、基準値を車両の水平状態に対応したより正しい値に補正することができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、現在設定されている基準値に対し所定範囲内にある値(3軸加速度センサの出力値または3軸加速度センサの出力値から車両の加減速に係る加速度を減算した値)を対象として平均値を求める。基準値に対し所定範囲内にない場合には、車両が急勾配や大きくバンクした道路、敷石のある道路、路面電車の軌道を横切る道路、大きい段差のある道路などを走行中であって、3軸加速度センサの出力値に大きな誤差要因(外乱)が含まれている。こうした誤差要因を含む値を排除して平均値を求めるので、基準値を車両の水平状態に対応したより正しい値に補正することができる。
【0017】
請求項7の発明によれば、請求項3の発明である操作手段を用いた指示に応じて行う基準値の補正における加重平均の平均値の加重割合は、請求項2の発明であるナビゲーション装置筐体の車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ車両が停止しているときに行う基準値の補正における加重平均の平均値の加重割合よりも小さく設定されている。請求項3の発明の基準値は請求項2の発明の基準値に比べ正確となる傾向があるため、フィルタ作用における時定数を大きく設定して、その正確な基準値の変化率を小さくしている。これにより、請求項3の発明で得られた正確な基準値が、かえって悪化することを防止することができる。
【0018】
請求項8の発明によれば、3軸加速度センサの出力値に基づいてナビゲーション装置筐体の傾きを検出し、ジャイロセンサの出力値に基づいて得られる方位をナビゲーション装置筐体の傾きにより補正する。これにより、車両位置演算手段は車両の現在位置をより高精度に検出可能となる。
【0019】
請求項9の発明によれば、位置検出精度が高く、表示手段を一体化したナビゲーション装置が得られる。なお、表示手段は、ナビゲーション装置本体に対し別体としてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施例)
以下、本発明の第1の実施例を図1ないし図9に基づいて説明する。
図1は、本発明の車載用ナビゲーション装置の構成を概略的に示すブロック図である。この図1において、自動車等の車両1(図3参照)に搭載されるナビゲーション装置2は、ナビゲーション演算装置3を備えている。このナビゲーション演算装置3は、マイクロコンピュータ及びその他の電子部品で構成されている。機能別のブロック図で示すと、ナビゲーション装置筐体13(図2参照)の取付姿勢の傾斜を演算し後述する補正を行う取付姿勢演算部3a(補正手段に相当)、車両位置演算部3b(車両位置演算手段に相当)、自立航法演算部3c及び地図画像描画部3d(地図画像描画手段に相当)を含んで構成されている。
【0021】
3軸加速度センサ4は、ナビゲーション装置筐体13の傾きを検出し、ジャイロセンサ5(方位センサ)は、車両1の進行方位を検出するようになっている。これらは、ナビゲーション演算装置3に接続されている。なお、3軸加速度センサ4及びジャイロセンサ5は、後述するようにナビゲーション装置筐体13内に取り付けられている。
【0022】
距離センサ6は、車両1側に取り付けられており、車両1の走行距離を検出するようになっている。GPSアンテナ7は、GPS航法を行う場合にGPS電波を受信するようになっている。これらも、ナビゲーション演算装置3に接続されている。
【0023】
外部記憶装置8は、地図データ等のナビゲーションに必要なデータを記憶するもので、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等によって構成されている。この外部記憶装置8も、ナビゲーション演算装置3に接続されている。操作手段たる操作部9は、ナビゲーション装置2を外部から操作する目的で設けられたもので、キースイッチ、タッチスイッチ、リモコンスイッチ等により構成されている。操作手段たる音声マイク10は、音声にてナビゲーション装置2を操作する目的で設けられたものである。これらの操作部9及び音声マイク10も、ナビゲーション演算装置3に接続されている。なお、地図データ等のナビゲーションに必要なデータは、外部記憶装置8(データ記憶手段)から入力する他、インターネットなどを介してサービスセンター(データ記憶手段)からダウンロードしてもよい。
【0024】
表示手段たるディスプレイ11は、車両1の現在地周辺の地図に重ねて自車位置マークを表示したり、目的地までの推奨経路、経路案内、目的地検索情報等を表示するためのもので、例えばカラー液晶表示装置により構成されている。音声出力部12は、利用者に経路案内を音声にて行うものであり、これらもナビゲーション演算装置3に接続されている。
【0025】
図2は、ナビゲーション装置2の概略構造を示す分解斜視図である。この図2において、ナビゲーション装置2の一部をなすナビゲーション装置筐体13内には、前記ナビゲーション演算装置3を構成するプリント基板14が当該筐体の底面と平行となるように配設されている。このプリント基板14上には、当該基板と同一平面上となるように前述の3軸加速度センサ4及びジャイロセンサ5が取り付けられている。ナビゲーション装置筐体13の正面側には、上記操作部9とディスプレイ11が取り付けられたフロントパネル15が装着されている(ディスプレイ一体型ナビゲーション装置)。
【0026】
図2に示す4xは3軸加速度センサ4の前後方向の検出軸、4yは3軸加速度センサ4の左右方向の検出軸、4zは3軸加速度センサ4の鉛直方向の検出軸である。また、5zはジャイロセンサ5の検出軸であり、角速度は5ωのようにこの検出軸5zを中心として検出される。
【0027】
本実施例では、説明を簡単にするため、ナビゲーション装置2(ナビゲーション装置筐体13)の車両1への取付軸x、y、z(後述する図3参照)の向きと、3軸加速度センサ4の検出軸4x、4y、4z(ジャイロセンサ5の検出軸5z)の向きとがそれぞれ等しいものとする。ただし、ナビゲーション装置2の取付軸x、y、zに対して3軸加速度センサ4とジャイロセンサ5の検出軸にオフセットを持たせてもよい。
【0028】
図3は、ナビゲーション装置2の車両取付状態を示している。ここで、(a)は車両1の上面から取付状態を見た図、(b)は車両1の側面から見た図、(c)は車両1の背面から見た図である。
この図3において、Xは車両1の前後方向の基準軸を示し、xはナビゲーション装置2の前後方向の取付軸(及び3軸加速度センサ4の検出軸4x)を示す。Yは車両1の左右方向の基準軸を示し、yはナビゲーション装置2の左右方向の取付軸(及び3軸加速度センサ4の検出軸4y)を示す。同様に、Zは車両1の鉛直方向の基準軸を示し、zはナビゲーション装置2の鉛直方向の取付軸(及び3軸加速度センサ4の検出軸4z、ジャイロセンサ5の検出軸5z)を示す。
【0029】
通常、ナビゲーション装置2は、車両1のドライバー席に向けて取り付けられることが多く、取付軸x(検出軸4x)は車両1の前後方向の基準軸Xに対してα度、取付軸y(検出軸4y)は車両1の左右方向の基準軸Yに対してβ度傾いて取り付けられる。これにより、ナビゲーション装置2の鉛直方向の取付軸z(検出軸4z、検出軸5z)は、車両1の鉛直方向の基準軸Zに対して前後方向にγ′度及び左右方向にγ″度傾くことになる。なお、取付軸x、y、zは互いに直交しているので、取付軸xの傾き角αと取付軸zの傾き角γ′は等しく、取付軸yの傾き角βと取付軸zの傾き角γ″も等しい。
【0030】
図4には、車両1の前後、左右、鉛直方向の基準軸X、Y、Zに対してナビゲーション装置2が前述のように前後方向でα度、左右方向でβ度、鉛直方向でγ度傾いて取り付けられたときの車両1の基準軸X、Y、Zに対する3軸加速度センサ4の検出軸4x、4y、4zとジャイロセンサ5の検出軸5zの関係が示されている。
【0031】
図5おいて、(a)は3軸加速度センサ4による傾斜検出の原理を示す図、(b)は3軸加速度センサ4の出力特性を示す図である。この図5(a)から明らかなように、3軸加速度センサ4が水平位置にある場合には、3軸加速度センサ4の検出軸4xに対して重力加速度gは作用せず、検出軸4xの出力は「0」となる。一方、検出軸4zには重力加速度gがそのまま作用するので、検出軸4zの出力は「1G」となる。
【0032】
ここで、3軸加速度センサ4が基準軸Xに対してα度傾くと、重力加速度gの印加軸に対して3軸加速度センサ4の検出軸4zが傾いて、図5(a)に示すように検出軸4xに出力が生ずる。この出力を測定することにより、3軸加速度センサ4の傾きを検出できる。なお、3軸加速度センサ4は、正負の加速度を検出するので、センサ出力電圧の中央値に「0G」がくるように設定されて図5(b)に示すような直線性を持った信号を出力する。検出軸4y、4zの出力およびセンサ特性についても同様となる。
【0033】
図6は、ナビゲーション装置2が傾いて搭載された車両1の状態を示している。(a)は車両1が水平にある状態を示し、(b)は車両1が左右の勾配(勾配角θr)を持つ道路を走行している状態を示し、(c)は車両1が登り勾配(勾配角θp)の道路を走行している状態を示している。3軸加速度センサ4の検出軸4xの傾き角をα、出力をaとし、検出軸4yの傾き角をβ、出力をbとし、検出軸4zの傾き角をγ、出力をcとすると、出力a、b、cの一般式は、それぞれ以下の(1)式、(2)式、(3)式で表すことができる。
【0034】
検出軸4xの出力a=g・sin(α+θp) …(1)
検出軸4yの出力b=g・sin(β+θr)・cos(α+θp) …(2)
検出軸4zの出力c=g・cos(α+θp)・cos(β+θr) …(3)
なお、図6(a)に示すように、車両1の加減速による加速度Gh、車両1の上下方向の振動による加速度Gvが加わっている場合には、出力a、b、cにはそれぞれ加速度Gh、Gvの各検出軸4x、4y、4zの成分が加わる。
【0035】
次に、以上のような構成に基づく本実施例の作用について図7ないし図9も参照して説明する。
図7は、ナビゲーション装置2に電源が投入されたときのナビゲーション演算装置3(以下、単に演算装置3と称する)の動作を示すフローチャートである。演算装置3は、電源が投入(ON)されると動作を開始し、この電源投入が、ナビゲーション装置2の車両1への取り付け後最初の電源投入であるか否かを判断する(判断ステップS1)。演算装置3は、最初の電源投入と判断したときには(判断ステップS1で「YES」)、距離センサ6の距離データの有無から車両1が静止状態にあるか否かを判断する(判断ステップS2)。
【0036】
演算装置3は、車両1が静止状態にあると判断したときには(判断ステップS2で「YES」)、3軸加速度センサ4の検出軸4x、4y、4zの出力a、b、cを取り込み(処理ステップS3)、これらを取付姿勢の基準値A、B、Cとして例えば不揮発性メモリ(図示しないEEPROMやフラッシュメモリ)に記憶させる(処理ステップS4)。併せて、ナビゲーション装置2の車両1への取り付け後最初の電源投入により車両1の取付姿勢の基準値A、B、Cが記憶されたことを示す処理データを不揮発性メモリに記憶させる(処理ステップS5)。
【0037】
取付姿勢の基準値A、B、Cは、車両1が水平状態にあるときの車両1へのナビゲーション装置筐体13の取付角に相当するものであり、車両1の走行中における走行距離の補正に必要となる(図9参照)。このため、基準値A、B、Cは、車両1が水平状態にあるときに取得される必要がある。従って、車両メーカーやディーラーなどの工場で車両1にナビゲーション装置2を取り付けた後、車両1を水平位置に停止させて電源を投入することが好ましい。
【0038】
しかしながら、実際には、処理ステップS3、S4で基準値A、B、Cが取り込まれ記憶される際に、車両1が常に水平状態とされているとは限らない。例えば、ユーザが自らナビゲーション装置2を取り付ける場合には、取り付けた後に車両1が傾いた状態で電源を投入してしまう場合もあり得る。従って、処理ステップS3、S4の取り込み、記憶時点においては、記憶された基準値A、B、Cが、車両1が水平状態にあるときに取得されたものか否か不明である。
そこで、演算装置3は、後述するように車両1の走行中に基準値A、B、Cを補正する。演算装置3は、この補正に用いる補正係数kとして電源投入時の値k1を設定して不揮発性メモリに記憶させ(処理ステップS6)、基準値記憶処理を終了する。
【0039】
なお、処理ステップS5で不揮発性メモリに記憶された処理データは、ナビゲーション装置2に次に電源が投入されたときに、演算装置3が既に基準値記憶処理を終了していることを示す。従って、電源の再投入時には、判断ステップS1で「NO」と判断して基準値記憶処理を終了する。また、演算装置3は、車両1が走行中であるときにも、判断ステップS2で「NO」と判断して基準値記憶処理を終了する。
【0040】
以上の基準値記憶処理の具体的な例を説明する。一般的には、車両1に対するナビゲーション装置2の取付角は、ドライバーの目の位置とナビゲーション装置2の取付位置の関係で決定され、前後方向は大きく、左右方向は小さく設定される。例えば、前後方向の取付角αが20度、左右方向の取付角βが0度と仮定すると、車両1が水平状態にあるときの取付姿勢の基準値A(a)、B(b)、C(c)は、前記(1)式、(2)式、(3)式より以下のようになる。
【0041】
A(a)=g・sin20=0.342G
B(b)=g・sin0・cos(20)=0G
C(c)=g・cos20・cos(0)=0.94G
【0042】
図8は、図7の処理ステップS4で不揮発性メモリに設定記憶された取付姿勢の基準値A、B、Cを補正するときの演算装置3の動作を示すフローチャートである。車両1が通行する道路には上り勾配、下り勾配、左右の傾きなどがあるが、例えば目的地までを往復する場合のように比較的長い距離で見ると、道路の平均的な傾きは零つまり車両1の平均的な傾きは零(水平状態)となる。この点に着目し、演算装置3は、車両1の走行中、3軸加速度センサ4の出力a、b、cの平均値を用いて基準値A、B、Cを補正する。なお、車両1の停止中には基準値A、B、Cの補正を行わない。停止中は、走行中と異なり車両1が傾いた状態が継続する場合があり、却って基準値A、B、Cが車両1の傾斜状態に対応した値に補正されてしまう虞があるからである。
【0043】
図8において、演算装置3は、車両1が走行中であることを条件に(判断ステップT1で「NO」)、3軸加速度センサ4の出力a、b、cを取り込む(処理ステップT2)。車両1の走行時には、前述したように、車両1の加速、減速による加速度Ghが検出軸4xの出力aに、車両1の上下方向の振動による加速度Gvが検出軸4zの出力cに、道路の左右方向の傾きによる重力加速度gの軸成分が検出軸4yの出力bにそれぞれ加わる。そこで、車両1の走行時に加わる上記各方向の加速度の影響を除去する。
【0044】
すなわち、演算装置3は、車両1の前後方向に対しては、距離センサ6の出力である走行距離データと走行時間により車両1の加減速に係る加速度Ghを求め、3軸加速度センサ4の検出軸4xの出力aから車両1の加速度Ghを除いた出力a′を求める(処理ステップT3)。車両1の左右方向は、通常の道路の左右勾配があまり大きくないので、3軸加速度センサ4の出力bをそのまま用いる。車両1の鉛直方向は、車両1のサスペンションの効果によりあまり大きな上下振動は発生しないので、3軸加速度センサ4の出力cをそのまま用いる(ただし、大きな上下振動については後述する判断ステップT4で排除する)。これにより、取付姿勢の基準値A、B、Cに近い値を持つ出力(加速度データ)a′、b、cを取り込む。
【0045】
演算装置3は、取り込んだ出力a′、b、cが、取付姿勢の基準値A、B、Cに対して車両1の加速、減速、サスペンションによる上下振動の吸収特性に基づいて予め設定された取付姿勢の補正制限値±Ai、±Bi、±Ciの範囲外の場合には(判断ステップT4で「NO」)、その出力にはカーブでの道路のバンク、道路の段差による上下振動等の外乱が含まれる可能性があるため、その出力データを捨てて新しい加速度データを取得する。
【0046】
これに対し、演算装置3は、出力a′、b、cが、取付姿勢の基準値A、B、Cに対して補正制限値±Ai、±Bi、±Ciの範囲内の場合には(判断ステップT4「YES」)、以上の手順を繰り返し(判断ステップT5で「NO」)、その後、複数個(n個)の出力データを取得した時点で(判断ステップT5で「YES」)、その平均値を求める(処理ステップT6)。
【0047】
そして、演算装置3は、処理ステップT6で求めたa′、b、cの各平均値と現在設定されている取付姿勢の基準値A、B、Cとをそれぞれ加重平均することにより基準値A、B、Cを補正する。上述した補正係数k(本実施例ではk1)は、この加重平均における平均値の加重割合である。この加重平均は、出力a′、b、cに対するフィルタとして作用し、補正係数kに応じて基準値A、B、Cが徐々に補正される。
【0048】
演算装置3は、次の(4)式により基準値Aを補正する。基準値B、Cの補正も同様である。
【数1】
【0049】
出力a′、b、cの外乱判定を行う補正制限値Ai、Bi、Ciは、例えば取付姿勢の基準値A、B、Cの数%程度の値に設定されており、外乱が含まれた出力データが排除される。また、平均化を行うデータ数nは、例えば数千〜数万個に設定される。さらに、取付姿勢の基準値A、B、Cを補正する補正係数k(この実施例ではk1)は、数%程度に設定されている。
【0050】
図9は、上述したように補正された取付姿勢の基準値A、B、Cを基に、演算装置3が車両1の現在位置を算出する処理を行うときのフローチャートである。演算装置3は、車両1が走行中であることを条件に自車位置の検出を行う(判断ステップU1で「YES」)。演算装置3は、車両1の走行時に規定された単位毎、例えば10msec〜100msec程度の時間間隔または数m〜十数mの走行距離毎に3軸加速度センサ4の出力a、b、c(a、b、cはn個の平均値に相当する)と、ジャイロセンサ5の角速度出力ω(方位データ)及び距離センサ6に基づく距離データD(演算装置3の別ルーチンによる演算結果)を取り込み(処理ステップU2)、出力aから車両1の加減速に係る加速度Ghを除いた出力a′を求める(処理ステップU3)。
【0051】
演算装置3は、3軸加速度センサ4の検出軸4zの出力cの値と取付姿勢の基準値Cとの差が車両1の加速、減速、サスペンションによる上下振動の吸収特性により予め設定された走行時の補正制限値±Cjの範囲内ならば車両1に上下振動が生じていないと判断する(判断ステップU4で「YES」)。そして、3軸加速度センサ4の検出軸4yの出力bの値と取付姿勢の取付姿勢の基準値Bとの差が予め設定された走行時の補正制限値±Bjの範囲内ならば(判断ステップU5で「YES」)、道路の左右勾配による影響が小さいため、出力cの値で角速度出力ωを補正し(処理ステップU6)、出力a′と取付姿勢の基準値Aとに基づいて距離データDを補正する(処理ステップU7)。
【0052】
一方、出力cの値と取付姿勢の基準値Cとの差が補正制限値±Cjの範囲外ならば上下振動があると判断し(判断ステップU4で「NO」)、出力bの値と取付姿勢の基準値Bとの差が補正制限値±Bjの範囲外ならば左右勾配による影響があると判断する(判断ステップU5で「NO」)。これらの場合には、今回取得した出力a′、cは使用せずに、直近に得られた上下振動や左右勾配の影響のない正しい出力a′、cをメモリから読み出す(処理ステップU8)。これら正しい出力a′、cは、少なくとも次に正しい出力a′、cが得られるまでの間メモリに記憶されている。そして、読み出した出力cの値で角速度出力ωを補正し(処理ステップU9)、読み出した出力a′と取付姿勢の基準値Aとに基づいて距離データDを補正する(処理ステップU10)。
【0053】
車両1の方位角はジャイロセンサ5の角速度出力ωを時間積分することにより求まる。角速度出力ωは検出軸5zが傾くと感度(値)が劣化することが知られており、角速度検出軸5zが鉛直よりγ度傾いたときの角速度出力ωは、
ω=ωv・cosγ …(5)
になる。ここで、ωvは、検出軸5zが鉛直のときのジャイロセンサ5の角速度出力である。
【0054】
ナビゲーション装置2は車両1に傾いて取り付けられているので、車両1が図6(a)に示す水平な道路を走行している場合においても、ジャイロセンサ5の角速度出力ωは(5)式で表される感度の劣化が生じる。例えば、ナビゲーション装置2が車両1に対して取付角20度傾いて取り付けられている場合、ジャイロセンサ5の角速度出力ωは約6%低下する。すなわち、車両1が90度曲がったときにもジャイロセンサ5の出力は84.5度曲がったという角速度を出力し、これが方位誤差となる。そこで、上記処理ステップU6、U9では、(3)式に示した3軸加速度センサ4の検出軸4zの出力cの大きさに基づいて傾き角γ(またはcosγ)を算出し、さらに(5)式に基づいて角速度出力ωつまり方位データを補正する。
【0055】
また、取付姿勢の基準値Aは、車両1に対するナビゲーション装置2の取付角αに相当し、出力a′は、取付角αと車両1が位置している道路の勾配角θpとの加算角度に相当する。従って、(1)式に基づいて、基準値Aに対する傾き角αおよび出力a′に対する傾き角(α+θp)を求め、これらの傾き角の差分を求めれば車両1の位置する道路の勾配角θp(車両1の傾き)が求まる。そして、この勾配角θpにより、坂道を走行する際の実際の走行距離とナビゲーション装置2のディスプレイ11に表示される2次元地図上の走行距離との誤差を補正できる。
【0056】
このように本実施例によれば、車両1に対するナビゲーション装置筐体13の傾きを3軸加速度センサ4の前後方向の検出軸4x、左右方向の検出軸4y、鉛直方向の検出軸4zの出力a、b、cとして検出し、その出力値を取付姿勢の基準値A、B、Cとして記憶する。車両1の傾きを正確に求めるためには、車両1が水平状態にある場合の基準値A、B、Cが必要となる。本実施例では、車両1にナビゲーション装置2を取り付けた後、車両1を水平位置に停止させて最初に電源を投入することにより、車両1の水平状態に対応した正しい基準値A、B、Cを記憶させることができる。
【0057】
また、基準値A、B、Cが、車両1が水平状態にあるときに取得されたものでない場合でも、3軸加速度センサ4を用いて基準値A、B、Cを水平状態での正しい値に補正することができる。すなわち、車両1が走行する道路は、平坦な道のみならず坂道や左右に傾斜した道路もあるが、比較的長い走行距離で見ると道路の平均的な傾きつまり車両1の傾きは零となる。本実施例では、車両1の走行中、3軸加速度センサ4の出力a、b、cの平均値と現在の基準値A、B、Cとを加重平均することにより、フィルタ作用(平均化作用)を得て基準値を徐々に正しい値に補正することができる。
【0058】
従って、本実施例では車両1の傾きを検出する専用のセンサ例えば車高センサや傾斜角計を備える必要がなく、従来よりも簡単で低コストの構成でありながら、車両1の傾きを正確に求めることができる。その結果、車両1の傾きを用いて距離データDを補正することができ、自立航法の下で坂道を走行する場合にも、2次元地図に対応した正しい現在位置を算出してディスプレイ11に表示することができる。また、3軸加速度センサ4の出力cを用いて角速度出力ω(方位データ)を補正するので、方位についても精度を高められ、より高精度に現在位置を求めることができる。
【0059】
さらに、取付姿勢の基準値A、B、Cの補正処理においては、3軸加速度センサ4の出力aから車両1の加減速に係る加速度Ghを減算している。また、基準値A、B、Cに対し所定範囲内にない3軸加速度センサ4の出力a′、b、cは、大きな誤差要因(外乱)が含まれているので排除している。これらの処理により外乱による誤差を低減でき、基準値A、B、Cを車両1の水平状態に対応したより正しい値に補正することができる。
なお、ナビゲーション装置2が高さの情報を加味した3次元の地図データを備える場合には、車両1の走行時の道路勾配から車両1の高さ方向の位置を容易に求めることができるので、3次元地図に対しても正確な位置情報を表示できる。
【0060】
(第2の実施例)
図10は、本発明の第2の実施例を示す図7相当のフローチャートであり、以下、説明の便宜上、図1をも参照して説明する。
第1の実施例では、ナビゲーション装置2に最初に電源が投入され且つ車両1が静止しているという特定の条件下において自動的にナビゲーション装置2の取付姿勢の基準値(以下、自動取付姿勢基準値と称す)A、B、Cを取り込むように構成した。従って、その取込時点で車両1が水平位置にあるか否かは不明であって、取り込まれた自動取付姿勢基準値A、B、Cは誤差を含んでいる場合がある。
【0061】
本実施例では、車両1のドライバー等が車両1が水平状態にあることを確認したことを条件として、取付姿勢の基準値を記憶するように構成されている。すなわち、演算装置3は、ドライバー等が車両1が水平状態に有ることを確認してナビゲーション装置2の操作スイッチ、タッチパネル等の操作部9または音声マイク10に対して取付姿勢の基準値を記憶する操作の開始を指示する(判断ステップS7で「YES」)。
【0062】
演算装置3は、車両1が停止していることを距離センサ6の出力により確認した後(判断ステップS2で「YES」)、3軸加速度センサ4の検出軸4x、4y、4zの出力a、b、cを取付姿勢の基準値(以下、操作取付姿勢基準値と称す)A、B、Cとして記憶する(処理ステップS3、S4)。演算装置3は、人為操作によって取付姿勢の基準値が記憶されたことを示す処理データを不揮発性メモリに記憶させる(処理ステップS8)。続いて、補正係数kとして水平な状態で操作取付姿勢基準値A、B、Cが記憶されたときの値k2を設定して不揮発性メモリに記憶させ(処理ステップS9)、基準値記憶処理を終了する。
【0063】
従って、この第2の実施例では、取付姿勢の基準値を記憶するための特定の操作条件とは、操作部9または音声マイク10がドライバー等により指示操作され且つ車両1が静止していることである。これにより、第1の実施例では、ナビゲーション装置2に電源が最初に投入されたときの1回のみ自動取付姿勢基準値A、B、Cが設定されるが、本実施例では、人為的な操作により何回でも操作取付姿勢基準値A、B、Cを設定できるようになる。
【0064】
本実施例における演算装置3のその後の動作は、第1の実施例と同様に図8及び図9のフローチャートにより行われる。ただし、取付姿勢の基準値A、B、Cを補正するフローチャートを示す図8において、演算装置3が実行する処理ステップT7では、加重平均の補正係数kとしてk2が用いられる。この値k2は、図10の処理ステップS4で得られた操作取付姿勢基準値A、B、Cの数%よりさらに1桁以上小さい値に設定されている。
【0065】
上述したように、第1の実施例では、基準値記憶処理において車両1が水平位置にあるか否かが不明であるために、自動取付姿勢基準値A、B、Cは誤差を含んでいる場合がある。従って、図8のフローチャートによる自動取付姿勢基準値A、B、Cの補正において、加重平均における平均値の加重割合(補正係数k1)を比較的大きく設定して誤差の収束速度を速める必要がある。
【0066】
これに対し、本実施例では、車両1のドライバー等が車両1が水平状態にあることを確認することを条件に操作取付姿勢基準値A、B、Cを取り込むようにしているので、操作取付姿勢基準値A、B、Cの誤差は小さい。従って、図8のフローチャートによる操作取付姿勢基準値A、B、Cの補正において、加重平均における平均値の加重割合(補正係数k2)を比較的小さく設定しても、距離データDひいては車両1の現在位置の誤差は小さい。
【0067】
なお、本実施例では、操作部9または音声マイク10がドライバー等により指示操作され且つ車両1が静止しているという特定の操作条件の下に操作取付姿勢基準値A、B、Cを取り込むようにしたが、車両1が静止しているという条件を省略してもよい。
【0068】
(第3の実施例)
図11は、本発明の車載用ナビゲーション装置の概略ブロック図である。この図11において、図1と同一構成部分には同一符号を付している。
ナビゲーション装置16は、ディスプレイ別体型ナビゲーション装置であって、ディスプレイ11と音声出力部12とを具備していない点を除き、図1に示すナビゲーション装置2と同じ構成を有している。表示装置17は、ディスプレイ11と音声出力部12を備えており、車室内においてナビゲーション装置16と分離して設置されている。ナビゲーション装置16と表示装置17とは、直接または車内ネットワークを介して有線または無線により接続されている。
【0069】
本実施例によれば、ナビゲーション装置16を座席の下部、トランクルームなどに収容でき、車室内における設置位置の自由度を高められる。また、表示装置17をナビゲーション装置16に着脱可能に構成し、必要に応じて表示装置17を車室内で移動させて使用することもできる。
【0070】
(その他の実施例)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す各実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張が可能である。
第1の実施例と第2の実施例とを組み合わせ、ナビゲーション装置2の車両1への取り付け後最初に電源が投入された時および指示操作され且つ車両1が静止している時に基準値A、B、Cを取り込み記憶するように構成してもよい。
【0071】
基準値A、B、Cの補正処理は、車両1の走行中、3軸加速度センサ4の出力値a(a′)、b、cの各平均値を用いて補正する処理であればよい。これは、上述したように比較的長い走行距離で見ると、その平均値は車両水平状態での値に近付くと考えられるからである。従って、必ずしも加重平均を用いた補正処理に限定されず、他のデジタルフィルタ処理を行ってもよい。また、加重平均において、出力a′、b、cの平均値のデータ数nおよび補正係数k(加重割合)は、上述した具体的な数値に限定されず、車両1が走行する道路の平均的な傾きをほぼ零と見なすことができる程度のフィルタ作用が得られる値に設定すればよい。
【0072】
基準値A、B、Cを設定した後、走行距離が増加するに従って(つまり誤差が減少する従って)補正係数kを変化(例えば低減)させてもよい。また、外乱が多い道路を走行する場合などには、基準値A、B、Cの補正処理を一時的に停止してもよい。例えば、演算装置3は、地図データに基づいて山間部を走行中であると判断した場合には、山間部を抜けるまでの期間、一時的に補正処理を停止する構成が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施例を示すナビゲーション装置の概略的ブロック図
【図2】ナビゲーション装置の概略構成を示す分解斜視図
【図3】ナビゲーション装置の車両への取付状態を示す構成図
【図4】車両の前後、左右、鉛直方向の基準軸と車両に傾いてナビゲーション装置が搭載された場合の3軸加速度センサ、ジャイロセンサの検出軸の関係を表した説明図
【図5】3軸加速度センサの検出原理と動作特性を示す説明図
【図6】ナビゲーション装置を搭載した車両の挙動を示した動作説明図
【図7】取付姿勢の基準値を取り込む動作を説明するためのフローチャート
【図8】取付姿勢の基準値を補正する動作を説明するためのフローチャート
【図9】取付姿勢の基準値により方位の誤差及び走行距離の誤差を補正する動作を説明するためのフローチャート
【図10】本発明の第2の実施例を示す図7相当図
【図11】本発明の第3の実施例を示す図1相当図
【符号の説明】
【0074】
図面中、1は車両、2、16はナビゲーション装置、3はナビゲーション演算装置、3aは取付姿勢演算部(補正手段)、3bは車両位置演算部(車両位置演算手段)、3cは自立航法演算部、3dは地図画像描画部(地図画像描画手段)、4は3軸加速度センサ、5はジャイロセンサ、6は距離センサ、7はGPSアンテナ、8は外部記憶装置、9は操作部(操作手段)、10は音声マイク(操作手段)、11はディスプレイ(表示手段)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載されるナビゲーション装置に関し、特に自車両の地図上の位置を自立航法により検出するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用ナビゲーション装置は、自動車等の車両の現在位置に応じた地図データをDVD−ROM、ハードディスク等の外部記憶装置から読出し、その地図データに基づいて地図をディスプレイ画面に表示するとともに、自車両の位置を自車位置マークとしてディスプレイ画面の一定の位置(例えば画面の中央位置もしくは中央下方位置)に固定表示し、自車両の走行に従ってディスプレイ画面上の地図をスクロールするようになっている。
【0003】
このような車載用ナビゲーション装置においては、自車両の現在位置を検出する検出手段が必要である。このような検出手段としては、距離センサとジャイロセンサまたは地磁気センサ等の方位センサとを用いた自立(推測)航法もしくは衛星からの電波を受信するGPS(Global Positioning System)受信機を用いるGPS航法が採用されている。
【0004】
この場合、GPS航法は、衛星からの電波により自車両の絶対位置を算出できるので、正確な車両の位置を検出することができるが、反面、都会のビル空間、高架道路下、屋内駐車場等のGPS衛星の電波を受信できない状況では、正確な車両の位置を検出できないという問題点がある。このような問題点を解決するため、近年においては、自立航法とGPS航法とを併用し、GPS電波が受信できない場合は自立航法を用いて車両の位置を検出するナビゲーション装置も供されている。
【0005】
しかしながら、ナビゲーション装置に正確な経路案内を行わせるには、複雑な道路形状をもつ都心のビル街、複雑に立体交差する高速道路のインターチェンジ及びジャンクション、上下で併走する高架道路と地上道路、地下駐車場及び屋内駐車場等のように、GPS電波の受信ができない状況が増加している現在では、誤差の少ない自立航法手段の開発が必要になってきている。
【0006】
自立航法を行うためには、車両の走行距離と方位を検出する必要がある。車両の走行距離は、車両に設けられた距離(速度)センサにより検出でき、方位は、振動ジャイロ、ガスレートジャイロ、光ファイバージャイロ等の角速度を検出するジャイロセンサにより検出することができる。ところが、このような自立航法においては、勾配のある路面を車両が走行した場合、路面の傾きにより2次元地図上での距離に誤差が生じる。また、車両の傾きによりジャイロセンサの角速度検出軸が傾き、検出される方位にも誤差が生じる問題がある。この問題に対して、3軸の加速度センサを用いて道路の勾配による傾きを求め、車両の距離と方位の誤差を補正する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−125689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、車両の自立航法の高精度化のために、車両のヨー方向とピッチ方向の角速度を検出する角速度センサと、車両の前後方向軸、左右方向軸、鉛直方向軸のうち少なくとも2軸の加速度を検出する加速度センサとを備え、車両の走行距離と方位を補正するようにしている。この場合、角速度センサと加速度センサが固定される筐体の車両への取付角を検出する必要がある。この取付角の検出は、車両が水平な状態で行う必要があるため、左右車高センサや振り子式の傾斜角計を用いて車両の傾斜を検出している。しかしながら、この構成では多数のセンサが必要となり、構成が複雑化する問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ナビゲーション装置筐体に取り付けられた3軸加速度センサを用いて距離センサによる走行距離の検出精度を高めることができるナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明によれば、補正手段は、車両に対するナビゲーション装置筐体の傾きを3軸加速度センサの前後方向軸、左右方向軸、鉛直方向軸の出力として検出してその出力値を取付姿勢の基準値として記憶する。車両が水平状態から傾いている状態で取得された基準値を用いると、その後の走行中に当該基準値と3軸加速度センサの出力値とに基づいて求めた車両の傾きに誤差が生じる。
【0010】
車両が通行する道路には上り勾配、下り勾配、左右の傾き(バンク)などがあるが、例えば目的地までを往復する場合のように比較的長い距離で見ると、道路の平均的な傾きは零つまり車両は水平状態となる。この点に着目し、補正手段は、車両の走行中、3軸加速度センサの出力値の平均値に基づいて基準値を補正する。そして、この補正した基準値と3軸加速度センサの出力値とに基づいて車両の走行時の傾きを求め、距離センサの出力値に基づいて得られる走行距離を上記車両の傾きにより補正する。
【0011】
これにより、車両の傾きを検出する車高センサまたは傾斜角計を用いなくても、そして最初に記憶した基準値が車両傾斜状態のものであっても、基準値は、車両が走行するに従って水平状態における理想的な値に徐々に補正される。その結果、構成が複雑化することなく走行距離の検出精度を高められ、車両位置演算手段は車両の現在位置を高精度に検出可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ナビゲーション装置筐体の車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ車両が静止していることを条件に取付姿勢の基準値を取り込むようにした。これにより、車両にナビゲーション装置を取り付けた工場等において車両を水平位置に停止させて電源を投入すれば、車両の水平状態に対応した正しい基準値を記憶させることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、車両のドライバー等が車両が水平位置にあることを確認した後に操作手段を用いて指示したことに応じて、補正手段は取付姿勢の基準値を取り込む。これにより、車両がほぼ水平の位置にある状態における基準値を記憶させることができる。この記憶された取付姿勢の基準値は、請求項2の発明で得られる基準値と比較して正確であることが期待できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、車両の走行中、3軸加速度センサの出力値の平均値と現在設定されている基準値とを加重平均することにより基準値を補正する。これにより3軸加速度センサの出力値に対するフィルタ作用が得られ、該フィルタを通過した3軸加速度センサの出力値により基準値が徐々に補正される。3軸加速度センサの出力値の平均データ数および加重平均における加重割合は、車両が走行する道路の平均的な傾きをほぼ零と見なすことができる程度のフィルタ作用が得られる値に設定すればよい。
【0015】
請求項5の発明によれば、3軸加速度センサの出力値の平均値を求めるに際し、距離センサから得られる走行距離と走行時間とに基づいて車両の加減速に係る加速度を算出し、3軸加速度センサの出力値から車両の加減速に係る加速度を減算しておく。これにより、走行中の加減速に係る加速度(外乱)に起因する影響を排除でき、基準値を車両の水平状態に対応したより正しい値に補正することができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、現在設定されている基準値に対し所定範囲内にある値(3軸加速度センサの出力値または3軸加速度センサの出力値から車両の加減速に係る加速度を減算した値)を対象として平均値を求める。基準値に対し所定範囲内にない場合には、車両が急勾配や大きくバンクした道路、敷石のある道路、路面電車の軌道を横切る道路、大きい段差のある道路などを走行中であって、3軸加速度センサの出力値に大きな誤差要因(外乱)が含まれている。こうした誤差要因を含む値を排除して平均値を求めるので、基準値を車両の水平状態に対応したより正しい値に補正することができる。
【0017】
請求項7の発明によれば、請求項3の発明である操作手段を用いた指示に応じて行う基準値の補正における加重平均の平均値の加重割合は、請求項2の発明であるナビゲーション装置筐体の車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ車両が停止しているときに行う基準値の補正における加重平均の平均値の加重割合よりも小さく設定されている。請求項3の発明の基準値は請求項2の発明の基準値に比べ正確となる傾向があるため、フィルタ作用における時定数を大きく設定して、その正確な基準値の変化率を小さくしている。これにより、請求項3の発明で得られた正確な基準値が、かえって悪化することを防止することができる。
【0018】
請求項8の発明によれば、3軸加速度センサの出力値に基づいてナビゲーション装置筐体の傾きを検出し、ジャイロセンサの出力値に基づいて得られる方位をナビゲーション装置筐体の傾きにより補正する。これにより、車両位置演算手段は車両の現在位置をより高精度に検出可能となる。
【0019】
請求項9の発明によれば、位置検出精度が高く、表示手段を一体化したナビゲーション装置が得られる。なお、表示手段は、ナビゲーション装置本体に対し別体としてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施例)
以下、本発明の第1の実施例を図1ないし図9に基づいて説明する。
図1は、本発明の車載用ナビゲーション装置の構成を概略的に示すブロック図である。この図1において、自動車等の車両1(図3参照)に搭載されるナビゲーション装置2は、ナビゲーション演算装置3を備えている。このナビゲーション演算装置3は、マイクロコンピュータ及びその他の電子部品で構成されている。機能別のブロック図で示すと、ナビゲーション装置筐体13(図2参照)の取付姿勢の傾斜を演算し後述する補正を行う取付姿勢演算部3a(補正手段に相当)、車両位置演算部3b(車両位置演算手段に相当)、自立航法演算部3c及び地図画像描画部3d(地図画像描画手段に相当)を含んで構成されている。
【0021】
3軸加速度センサ4は、ナビゲーション装置筐体13の傾きを検出し、ジャイロセンサ5(方位センサ)は、車両1の進行方位を検出するようになっている。これらは、ナビゲーション演算装置3に接続されている。なお、3軸加速度センサ4及びジャイロセンサ5は、後述するようにナビゲーション装置筐体13内に取り付けられている。
【0022】
距離センサ6は、車両1側に取り付けられており、車両1の走行距離を検出するようになっている。GPSアンテナ7は、GPS航法を行う場合にGPS電波を受信するようになっている。これらも、ナビゲーション演算装置3に接続されている。
【0023】
外部記憶装置8は、地図データ等のナビゲーションに必要なデータを記憶するもので、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等によって構成されている。この外部記憶装置8も、ナビゲーション演算装置3に接続されている。操作手段たる操作部9は、ナビゲーション装置2を外部から操作する目的で設けられたもので、キースイッチ、タッチスイッチ、リモコンスイッチ等により構成されている。操作手段たる音声マイク10は、音声にてナビゲーション装置2を操作する目的で設けられたものである。これらの操作部9及び音声マイク10も、ナビゲーション演算装置3に接続されている。なお、地図データ等のナビゲーションに必要なデータは、外部記憶装置8(データ記憶手段)から入力する他、インターネットなどを介してサービスセンター(データ記憶手段)からダウンロードしてもよい。
【0024】
表示手段たるディスプレイ11は、車両1の現在地周辺の地図に重ねて自車位置マークを表示したり、目的地までの推奨経路、経路案内、目的地検索情報等を表示するためのもので、例えばカラー液晶表示装置により構成されている。音声出力部12は、利用者に経路案内を音声にて行うものであり、これらもナビゲーション演算装置3に接続されている。
【0025】
図2は、ナビゲーション装置2の概略構造を示す分解斜視図である。この図2において、ナビゲーション装置2の一部をなすナビゲーション装置筐体13内には、前記ナビゲーション演算装置3を構成するプリント基板14が当該筐体の底面と平行となるように配設されている。このプリント基板14上には、当該基板と同一平面上となるように前述の3軸加速度センサ4及びジャイロセンサ5が取り付けられている。ナビゲーション装置筐体13の正面側には、上記操作部9とディスプレイ11が取り付けられたフロントパネル15が装着されている(ディスプレイ一体型ナビゲーション装置)。
【0026】
図2に示す4xは3軸加速度センサ4の前後方向の検出軸、4yは3軸加速度センサ4の左右方向の検出軸、4zは3軸加速度センサ4の鉛直方向の検出軸である。また、5zはジャイロセンサ5の検出軸であり、角速度は5ωのようにこの検出軸5zを中心として検出される。
【0027】
本実施例では、説明を簡単にするため、ナビゲーション装置2(ナビゲーション装置筐体13)の車両1への取付軸x、y、z(後述する図3参照)の向きと、3軸加速度センサ4の検出軸4x、4y、4z(ジャイロセンサ5の検出軸5z)の向きとがそれぞれ等しいものとする。ただし、ナビゲーション装置2の取付軸x、y、zに対して3軸加速度センサ4とジャイロセンサ5の検出軸にオフセットを持たせてもよい。
【0028】
図3は、ナビゲーション装置2の車両取付状態を示している。ここで、(a)は車両1の上面から取付状態を見た図、(b)は車両1の側面から見た図、(c)は車両1の背面から見た図である。
この図3において、Xは車両1の前後方向の基準軸を示し、xはナビゲーション装置2の前後方向の取付軸(及び3軸加速度センサ4の検出軸4x)を示す。Yは車両1の左右方向の基準軸を示し、yはナビゲーション装置2の左右方向の取付軸(及び3軸加速度センサ4の検出軸4y)を示す。同様に、Zは車両1の鉛直方向の基準軸を示し、zはナビゲーション装置2の鉛直方向の取付軸(及び3軸加速度センサ4の検出軸4z、ジャイロセンサ5の検出軸5z)を示す。
【0029】
通常、ナビゲーション装置2は、車両1のドライバー席に向けて取り付けられることが多く、取付軸x(検出軸4x)は車両1の前後方向の基準軸Xに対してα度、取付軸y(検出軸4y)は車両1の左右方向の基準軸Yに対してβ度傾いて取り付けられる。これにより、ナビゲーション装置2の鉛直方向の取付軸z(検出軸4z、検出軸5z)は、車両1の鉛直方向の基準軸Zに対して前後方向にγ′度及び左右方向にγ″度傾くことになる。なお、取付軸x、y、zは互いに直交しているので、取付軸xの傾き角αと取付軸zの傾き角γ′は等しく、取付軸yの傾き角βと取付軸zの傾き角γ″も等しい。
【0030】
図4には、車両1の前後、左右、鉛直方向の基準軸X、Y、Zに対してナビゲーション装置2が前述のように前後方向でα度、左右方向でβ度、鉛直方向でγ度傾いて取り付けられたときの車両1の基準軸X、Y、Zに対する3軸加速度センサ4の検出軸4x、4y、4zとジャイロセンサ5の検出軸5zの関係が示されている。
【0031】
図5おいて、(a)は3軸加速度センサ4による傾斜検出の原理を示す図、(b)は3軸加速度センサ4の出力特性を示す図である。この図5(a)から明らかなように、3軸加速度センサ4が水平位置にある場合には、3軸加速度センサ4の検出軸4xに対して重力加速度gは作用せず、検出軸4xの出力は「0」となる。一方、検出軸4zには重力加速度gがそのまま作用するので、検出軸4zの出力は「1G」となる。
【0032】
ここで、3軸加速度センサ4が基準軸Xに対してα度傾くと、重力加速度gの印加軸に対して3軸加速度センサ4の検出軸4zが傾いて、図5(a)に示すように検出軸4xに出力が生ずる。この出力を測定することにより、3軸加速度センサ4の傾きを検出できる。なお、3軸加速度センサ4は、正負の加速度を検出するので、センサ出力電圧の中央値に「0G」がくるように設定されて図5(b)に示すような直線性を持った信号を出力する。検出軸4y、4zの出力およびセンサ特性についても同様となる。
【0033】
図6は、ナビゲーション装置2が傾いて搭載された車両1の状態を示している。(a)は車両1が水平にある状態を示し、(b)は車両1が左右の勾配(勾配角θr)を持つ道路を走行している状態を示し、(c)は車両1が登り勾配(勾配角θp)の道路を走行している状態を示している。3軸加速度センサ4の検出軸4xの傾き角をα、出力をaとし、検出軸4yの傾き角をβ、出力をbとし、検出軸4zの傾き角をγ、出力をcとすると、出力a、b、cの一般式は、それぞれ以下の(1)式、(2)式、(3)式で表すことができる。
【0034】
検出軸4xの出力a=g・sin(α+θp) …(1)
検出軸4yの出力b=g・sin(β+θr)・cos(α+θp) …(2)
検出軸4zの出力c=g・cos(α+θp)・cos(β+θr) …(3)
なお、図6(a)に示すように、車両1の加減速による加速度Gh、車両1の上下方向の振動による加速度Gvが加わっている場合には、出力a、b、cにはそれぞれ加速度Gh、Gvの各検出軸4x、4y、4zの成分が加わる。
【0035】
次に、以上のような構成に基づく本実施例の作用について図7ないし図9も参照して説明する。
図7は、ナビゲーション装置2に電源が投入されたときのナビゲーション演算装置3(以下、単に演算装置3と称する)の動作を示すフローチャートである。演算装置3は、電源が投入(ON)されると動作を開始し、この電源投入が、ナビゲーション装置2の車両1への取り付け後最初の電源投入であるか否かを判断する(判断ステップS1)。演算装置3は、最初の電源投入と判断したときには(判断ステップS1で「YES」)、距離センサ6の距離データの有無から車両1が静止状態にあるか否かを判断する(判断ステップS2)。
【0036】
演算装置3は、車両1が静止状態にあると判断したときには(判断ステップS2で「YES」)、3軸加速度センサ4の検出軸4x、4y、4zの出力a、b、cを取り込み(処理ステップS3)、これらを取付姿勢の基準値A、B、Cとして例えば不揮発性メモリ(図示しないEEPROMやフラッシュメモリ)に記憶させる(処理ステップS4)。併せて、ナビゲーション装置2の車両1への取り付け後最初の電源投入により車両1の取付姿勢の基準値A、B、Cが記憶されたことを示す処理データを不揮発性メモリに記憶させる(処理ステップS5)。
【0037】
取付姿勢の基準値A、B、Cは、車両1が水平状態にあるときの車両1へのナビゲーション装置筐体13の取付角に相当するものであり、車両1の走行中における走行距離の補正に必要となる(図9参照)。このため、基準値A、B、Cは、車両1が水平状態にあるときに取得される必要がある。従って、車両メーカーやディーラーなどの工場で車両1にナビゲーション装置2を取り付けた後、車両1を水平位置に停止させて電源を投入することが好ましい。
【0038】
しかしながら、実際には、処理ステップS3、S4で基準値A、B、Cが取り込まれ記憶される際に、車両1が常に水平状態とされているとは限らない。例えば、ユーザが自らナビゲーション装置2を取り付ける場合には、取り付けた後に車両1が傾いた状態で電源を投入してしまう場合もあり得る。従って、処理ステップS3、S4の取り込み、記憶時点においては、記憶された基準値A、B、Cが、車両1が水平状態にあるときに取得されたものか否か不明である。
そこで、演算装置3は、後述するように車両1の走行中に基準値A、B、Cを補正する。演算装置3は、この補正に用いる補正係数kとして電源投入時の値k1を設定して不揮発性メモリに記憶させ(処理ステップS6)、基準値記憶処理を終了する。
【0039】
なお、処理ステップS5で不揮発性メモリに記憶された処理データは、ナビゲーション装置2に次に電源が投入されたときに、演算装置3が既に基準値記憶処理を終了していることを示す。従って、電源の再投入時には、判断ステップS1で「NO」と判断して基準値記憶処理を終了する。また、演算装置3は、車両1が走行中であるときにも、判断ステップS2で「NO」と判断して基準値記憶処理を終了する。
【0040】
以上の基準値記憶処理の具体的な例を説明する。一般的には、車両1に対するナビゲーション装置2の取付角は、ドライバーの目の位置とナビゲーション装置2の取付位置の関係で決定され、前後方向は大きく、左右方向は小さく設定される。例えば、前後方向の取付角αが20度、左右方向の取付角βが0度と仮定すると、車両1が水平状態にあるときの取付姿勢の基準値A(a)、B(b)、C(c)は、前記(1)式、(2)式、(3)式より以下のようになる。
【0041】
A(a)=g・sin20=0.342G
B(b)=g・sin0・cos(20)=0G
C(c)=g・cos20・cos(0)=0.94G
【0042】
図8は、図7の処理ステップS4で不揮発性メモリに設定記憶された取付姿勢の基準値A、B、Cを補正するときの演算装置3の動作を示すフローチャートである。車両1が通行する道路には上り勾配、下り勾配、左右の傾きなどがあるが、例えば目的地までを往復する場合のように比較的長い距離で見ると、道路の平均的な傾きは零つまり車両1の平均的な傾きは零(水平状態)となる。この点に着目し、演算装置3は、車両1の走行中、3軸加速度センサ4の出力a、b、cの平均値を用いて基準値A、B、Cを補正する。なお、車両1の停止中には基準値A、B、Cの補正を行わない。停止中は、走行中と異なり車両1が傾いた状態が継続する場合があり、却って基準値A、B、Cが車両1の傾斜状態に対応した値に補正されてしまう虞があるからである。
【0043】
図8において、演算装置3は、車両1が走行中であることを条件に(判断ステップT1で「NO」)、3軸加速度センサ4の出力a、b、cを取り込む(処理ステップT2)。車両1の走行時には、前述したように、車両1の加速、減速による加速度Ghが検出軸4xの出力aに、車両1の上下方向の振動による加速度Gvが検出軸4zの出力cに、道路の左右方向の傾きによる重力加速度gの軸成分が検出軸4yの出力bにそれぞれ加わる。そこで、車両1の走行時に加わる上記各方向の加速度の影響を除去する。
【0044】
すなわち、演算装置3は、車両1の前後方向に対しては、距離センサ6の出力である走行距離データと走行時間により車両1の加減速に係る加速度Ghを求め、3軸加速度センサ4の検出軸4xの出力aから車両1の加速度Ghを除いた出力a′を求める(処理ステップT3)。車両1の左右方向は、通常の道路の左右勾配があまり大きくないので、3軸加速度センサ4の出力bをそのまま用いる。車両1の鉛直方向は、車両1のサスペンションの効果によりあまり大きな上下振動は発生しないので、3軸加速度センサ4の出力cをそのまま用いる(ただし、大きな上下振動については後述する判断ステップT4で排除する)。これにより、取付姿勢の基準値A、B、Cに近い値を持つ出力(加速度データ)a′、b、cを取り込む。
【0045】
演算装置3は、取り込んだ出力a′、b、cが、取付姿勢の基準値A、B、Cに対して車両1の加速、減速、サスペンションによる上下振動の吸収特性に基づいて予め設定された取付姿勢の補正制限値±Ai、±Bi、±Ciの範囲外の場合には(判断ステップT4で「NO」)、その出力にはカーブでの道路のバンク、道路の段差による上下振動等の外乱が含まれる可能性があるため、その出力データを捨てて新しい加速度データを取得する。
【0046】
これに対し、演算装置3は、出力a′、b、cが、取付姿勢の基準値A、B、Cに対して補正制限値±Ai、±Bi、±Ciの範囲内の場合には(判断ステップT4「YES」)、以上の手順を繰り返し(判断ステップT5で「NO」)、その後、複数個(n個)の出力データを取得した時点で(判断ステップT5で「YES」)、その平均値を求める(処理ステップT6)。
【0047】
そして、演算装置3は、処理ステップT6で求めたa′、b、cの各平均値と現在設定されている取付姿勢の基準値A、B、Cとをそれぞれ加重平均することにより基準値A、B、Cを補正する。上述した補正係数k(本実施例ではk1)は、この加重平均における平均値の加重割合である。この加重平均は、出力a′、b、cに対するフィルタとして作用し、補正係数kに応じて基準値A、B、Cが徐々に補正される。
【0048】
演算装置3は、次の(4)式により基準値Aを補正する。基準値B、Cの補正も同様である。
【数1】
【0049】
出力a′、b、cの外乱判定を行う補正制限値Ai、Bi、Ciは、例えば取付姿勢の基準値A、B、Cの数%程度の値に設定されており、外乱が含まれた出力データが排除される。また、平均化を行うデータ数nは、例えば数千〜数万個に設定される。さらに、取付姿勢の基準値A、B、Cを補正する補正係数k(この実施例ではk1)は、数%程度に設定されている。
【0050】
図9は、上述したように補正された取付姿勢の基準値A、B、Cを基に、演算装置3が車両1の現在位置を算出する処理を行うときのフローチャートである。演算装置3は、車両1が走行中であることを条件に自車位置の検出を行う(判断ステップU1で「YES」)。演算装置3は、車両1の走行時に規定された単位毎、例えば10msec〜100msec程度の時間間隔または数m〜十数mの走行距離毎に3軸加速度センサ4の出力a、b、c(a、b、cはn個の平均値に相当する)と、ジャイロセンサ5の角速度出力ω(方位データ)及び距離センサ6に基づく距離データD(演算装置3の別ルーチンによる演算結果)を取り込み(処理ステップU2)、出力aから車両1の加減速に係る加速度Ghを除いた出力a′を求める(処理ステップU3)。
【0051】
演算装置3は、3軸加速度センサ4の検出軸4zの出力cの値と取付姿勢の基準値Cとの差が車両1の加速、減速、サスペンションによる上下振動の吸収特性により予め設定された走行時の補正制限値±Cjの範囲内ならば車両1に上下振動が生じていないと判断する(判断ステップU4で「YES」)。そして、3軸加速度センサ4の検出軸4yの出力bの値と取付姿勢の取付姿勢の基準値Bとの差が予め設定された走行時の補正制限値±Bjの範囲内ならば(判断ステップU5で「YES」)、道路の左右勾配による影響が小さいため、出力cの値で角速度出力ωを補正し(処理ステップU6)、出力a′と取付姿勢の基準値Aとに基づいて距離データDを補正する(処理ステップU7)。
【0052】
一方、出力cの値と取付姿勢の基準値Cとの差が補正制限値±Cjの範囲外ならば上下振動があると判断し(判断ステップU4で「NO」)、出力bの値と取付姿勢の基準値Bとの差が補正制限値±Bjの範囲外ならば左右勾配による影響があると判断する(判断ステップU5で「NO」)。これらの場合には、今回取得した出力a′、cは使用せずに、直近に得られた上下振動や左右勾配の影響のない正しい出力a′、cをメモリから読み出す(処理ステップU8)。これら正しい出力a′、cは、少なくとも次に正しい出力a′、cが得られるまでの間メモリに記憶されている。そして、読み出した出力cの値で角速度出力ωを補正し(処理ステップU9)、読み出した出力a′と取付姿勢の基準値Aとに基づいて距離データDを補正する(処理ステップU10)。
【0053】
車両1の方位角はジャイロセンサ5の角速度出力ωを時間積分することにより求まる。角速度出力ωは検出軸5zが傾くと感度(値)が劣化することが知られており、角速度検出軸5zが鉛直よりγ度傾いたときの角速度出力ωは、
ω=ωv・cosγ …(5)
になる。ここで、ωvは、検出軸5zが鉛直のときのジャイロセンサ5の角速度出力である。
【0054】
ナビゲーション装置2は車両1に傾いて取り付けられているので、車両1が図6(a)に示す水平な道路を走行している場合においても、ジャイロセンサ5の角速度出力ωは(5)式で表される感度の劣化が生じる。例えば、ナビゲーション装置2が車両1に対して取付角20度傾いて取り付けられている場合、ジャイロセンサ5の角速度出力ωは約6%低下する。すなわち、車両1が90度曲がったときにもジャイロセンサ5の出力は84.5度曲がったという角速度を出力し、これが方位誤差となる。そこで、上記処理ステップU6、U9では、(3)式に示した3軸加速度センサ4の検出軸4zの出力cの大きさに基づいて傾き角γ(またはcosγ)を算出し、さらに(5)式に基づいて角速度出力ωつまり方位データを補正する。
【0055】
また、取付姿勢の基準値Aは、車両1に対するナビゲーション装置2の取付角αに相当し、出力a′は、取付角αと車両1が位置している道路の勾配角θpとの加算角度に相当する。従って、(1)式に基づいて、基準値Aに対する傾き角αおよび出力a′に対する傾き角(α+θp)を求め、これらの傾き角の差分を求めれば車両1の位置する道路の勾配角θp(車両1の傾き)が求まる。そして、この勾配角θpにより、坂道を走行する際の実際の走行距離とナビゲーション装置2のディスプレイ11に表示される2次元地図上の走行距離との誤差を補正できる。
【0056】
このように本実施例によれば、車両1に対するナビゲーション装置筐体13の傾きを3軸加速度センサ4の前後方向の検出軸4x、左右方向の検出軸4y、鉛直方向の検出軸4zの出力a、b、cとして検出し、その出力値を取付姿勢の基準値A、B、Cとして記憶する。車両1の傾きを正確に求めるためには、車両1が水平状態にある場合の基準値A、B、Cが必要となる。本実施例では、車両1にナビゲーション装置2を取り付けた後、車両1を水平位置に停止させて最初に電源を投入することにより、車両1の水平状態に対応した正しい基準値A、B、Cを記憶させることができる。
【0057】
また、基準値A、B、Cが、車両1が水平状態にあるときに取得されたものでない場合でも、3軸加速度センサ4を用いて基準値A、B、Cを水平状態での正しい値に補正することができる。すなわち、車両1が走行する道路は、平坦な道のみならず坂道や左右に傾斜した道路もあるが、比較的長い走行距離で見ると道路の平均的な傾きつまり車両1の傾きは零となる。本実施例では、車両1の走行中、3軸加速度センサ4の出力a、b、cの平均値と現在の基準値A、B、Cとを加重平均することにより、フィルタ作用(平均化作用)を得て基準値を徐々に正しい値に補正することができる。
【0058】
従って、本実施例では車両1の傾きを検出する専用のセンサ例えば車高センサや傾斜角計を備える必要がなく、従来よりも簡単で低コストの構成でありながら、車両1の傾きを正確に求めることができる。その結果、車両1の傾きを用いて距離データDを補正することができ、自立航法の下で坂道を走行する場合にも、2次元地図に対応した正しい現在位置を算出してディスプレイ11に表示することができる。また、3軸加速度センサ4の出力cを用いて角速度出力ω(方位データ)を補正するので、方位についても精度を高められ、より高精度に現在位置を求めることができる。
【0059】
さらに、取付姿勢の基準値A、B、Cの補正処理においては、3軸加速度センサ4の出力aから車両1の加減速に係る加速度Ghを減算している。また、基準値A、B、Cに対し所定範囲内にない3軸加速度センサ4の出力a′、b、cは、大きな誤差要因(外乱)が含まれているので排除している。これらの処理により外乱による誤差を低減でき、基準値A、B、Cを車両1の水平状態に対応したより正しい値に補正することができる。
なお、ナビゲーション装置2が高さの情報を加味した3次元の地図データを備える場合には、車両1の走行時の道路勾配から車両1の高さ方向の位置を容易に求めることができるので、3次元地図に対しても正確な位置情報を表示できる。
【0060】
(第2の実施例)
図10は、本発明の第2の実施例を示す図7相当のフローチャートであり、以下、説明の便宜上、図1をも参照して説明する。
第1の実施例では、ナビゲーション装置2に最初に電源が投入され且つ車両1が静止しているという特定の条件下において自動的にナビゲーション装置2の取付姿勢の基準値(以下、自動取付姿勢基準値と称す)A、B、Cを取り込むように構成した。従って、その取込時点で車両1が水平位置にあるか否かは不明であって、取り込まれた自動取付姿勢基準値A、B、Cは誤差を含んでいる場合がある。
【0061】
本実施例では、車両1のドライバー等が車両1が水平状態にあることを確認したことを条件として、取付姿勢の基準値を記憶するように構成されている。すなわち、演算装置3は、ドライバー等が車両1が水平状態に有ることを確認してナビゲーション装置2の操作スイッチ、タッチパネル等の操作部9または音声マイク10に対して取付姿勢の基準値を記憶する操作の開始を指示する(判断ステップS7で「YES」)。
【0062】
演算装置3は、車両1が停止していることを距離センサ6の出力により確認した後(判断ステップS2で「YES」)、3軸加速度センサ4の検出軸4x、4y、4zの出力a、b、cを取付姿勢の基準値(以下、操作取付姿勢基準値と称す)A、B、Cとして記憶する(処理ステップS3、S4)。演算装置3は、人為操作によって取付姿勢の基準値が記憶されたことを示す処理データを不揮発性メモリに記憶させる(処理ステップS8)。続いて、補正係数kとして水平な状態で操作取付姿勢基準値A、B、Cが記憶されたときの値k2を設定して不揮発性メモリに記憶させ(処理ステップS9)、基準値記憶処理を終了する。
【0063】
従って、この第2の実施例では、取付姿勢の基準値を記憶するための特定の操作条件とは、操作部9または音声マイク10がドライバー等により指示操作され且つ車両1が静止していることである。これにより、第1の実施例では、ナビゲーション装置2に電源が最初に投入されたときの1回のみ自動取付姿勢基準値A、B、Cが設定されるが、本実施例では、人為的な操作により何回でも操作取付姿勢基準値A、B、Cを設定できるようになる。
【0064】
本実施例における演算装置3のその後の動作は、第1の実施例と同様に図8及び図9のフローチャートにより行われる。ただし、取付姿勢の基準値A、B、Cを補正するフローチャートを示す図8において、演算装置3が実行する処理ステップT7では、加重平均の補正係数kとしてk2が用いられる。この値k2は、図10の処理ステップS4で得られた操作取付姿勢基準値A、B、Cの数%よりさらに1桁以上小さい値に設定されている。
【0065】
上述したように、第1の実施例では、基準値記憶処理において車両1が水平位置にあるか否かが不明であるために、自動取付姿勢基準値A、B、Cは誤差を含んでいる場合がある。従って、図8のフローチャートによる自動取付姿勢基準値A、B、Cの補正において、加重平均における平均値の加重割合(補正係数k1)を比較的大きく設定して誤差の収束速度を速める必要がある。
【0066】
これに対し、本実施例では、車両1のドライバー等が車両1が水平状態にあることを確認することを条件に操作取付姿勢基準値A、B、Cを取り込むようにしているので、操作取付姿勢基準値A、B、Cの誤差は小さい。従って、図8のフローチャートによる操作取付姿勢基準値A、B、Cの補正において、加重平均における平均値の加重割合(補正係数k2)を比較的小さく設定しても、距離データDひいては車両1の現在位置の誤差は小さい。
【0067】
なお、本実施例では、操作部9または音声マイク10がドライバー等により指示操作され且つ車両1が静止しているという特定の操作条件の下に操作取付姿勢基準値A、B、Cを取り込むようにしたが、車両1が静止しているという条件を省略してもよい。
【0068】
(第3の実施例)
図11は、本発明の車載用ナビゲーション装置の概略ブロック図である。この図11において、図1と同一構成部分には同一符号を付している。
ナビゲーション装置16は、ディスプレイ別体型ナビゲーション装置であって、ディスプレイ11と音声出力部12とを具備していない点を除き、図1に示すナビゲーション装置2と同じ構成を有している。表示装置17は、ディスプレイ11と音声出力部12を備えており、車室内においてナビゲーション装置16と分離して設置されている。ナビゲーション装置16と表示装置17とは、直接または車内ネットワークを介して有線または無線により接続されている。
【0069】
本実施例によれば、ナビゲーション装置16を座席の下部、トランクルームなどに収容でき、車室内における設置位置の自由度を高められる。また、表示装置17をナビゲーション装置16に着脱可能に構成し、必要に応じて表示装置17を車室内で移動させて使用することもできる。
【0070】
(その他の実施例)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す各実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張が可能である。
第1の実施例と第2の実施例とを組み合わせ、ナビゲーション装置2の車両1への取り付け後最初に電源が投入された時および指示操作され且つ車両1が静止している時に基準値A、B、Cを取り込み記憶するように構成してもよい。
【0071】
基準値A、B、Cの補正処理は、車両1の走行中、3軸加速度センサ4の出力値a(a′)、b、cの各平均値を用いて補正する処理であればよい。これは、上述したように比較的長い走行距離で見ると、その平均値は車両水平状態での値に近付くと考えられるからである。従って、必ずしも加重平均を用いた補正処理に限定されず、他のデジタルフィルタ処理を行ってもよい。また、加重平均において、出力a′、b、cの平均値のデータ数nおよび補正係数k(加重割合)は、上述した具体的な数値に限定されず、車両1が走行する道路の平均的な傾きをほぼ零と見なすことができる程度のフィルタ作用が得られる値に設定すればよい。
【0072】
基準値A、B、Cを設定した後、走行距離が増加するに従って(つまり誤差が減少する従って)補正係数kを変化(例えば低減)させてもよい。また、外乱が多い道路を走行する場合などには、基準値A、B、Cの補正処理を一時的に停止してもよい。例えば、演算装置3は、地図データに基づいて山間部を走行中であると判断した場合には、山間部を抜けるまでの期間、一時的に補正処理を停止する構成が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施例を示すナビゲーション装置の概略的ブロック図
【図2】ナビゲーション装置の概略構成を示す分解斜視図
【図3】ナビゲーション装置の車両への取付状態を示す構成図
【図4】車両の前後、左右、鉛直方向の基準軸と車両に傾いてナビゲーション装置が搭載された場合の3軸加速度センサ、ジャイロセンサの検出軸の関係を表した説明図
【図5】3軸加速度センサの検出原理と動作特性を示す説明図
【図6】ナビゲーション装置を搭載した車両の挙動を示した動作説明図
【図7】取付姿勢の基準値を取り込む動作を説明するためのフローチャート
【図8】取付姿勢の基準値を補正する動作を説明するためのフローチャート
【図9】取付姿勢の基準値により方位の誤差及び走行距離の誤差を補正する動作を説明するためのフローチャート
【図10】本発明の第2の実施例を示す図7相当図
【図11】本発明の第3の実施例を示す図1相当図
【符号の説明】
【0074】
図面中、1は車両、2、16はナビゲーション装置、3はナビゲーション演算装置、3aは取付姿勢演算部(補正手段)、3bは車両位置演算部(車両位置演算手段)、3cは自立航法演算部、3dは地図画像描画部(地図画像描画手段)、4は3軸加速度センサ、5はジャイロセンサ、6は距離センサ、7はGPSアンテナ、8は外部記憶装置、9は操作部(操作手段)、10は音声マイク(操作手段)、11はディスプレイ(表示手段)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備える距離センサの出力値とナビゲーション装置筐体に備える3軸加速度センサ及びジャイロセンサの出力値とに基づいて前記車両の現在位置を算出する車両位置演算手段を備えたナビゲーション装置において、
前記車両に取り付けられたナビゲーション装置筐体の傾きを前記3軸加速度センサの前後、左右、鉛直方向の3軸の出力として検出してその出力値を取付姿勢の基準値として記憶し、その後の前記車両の走行中、前記3軸加速度センサの出力値の平均値に基づいて前記基準値を補正し、この補正した基準値と前記3軸加速度センサの出力値とに基づいて前記車両の走行時の傾きを求め、前記距離センサの出力値に基づいて得られる走行距離を前記車両の傾きにより補正する補正手段を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記ナビゲーション装置筐体の前記車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ前記車両が停止しているときに、前記3軸加速度センサの3軸の出力値を前記基準値として記憶することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
操作手段を備え、
前記補正手段は、前記車両が水平位置にあると判断したドライバー等によって操作される前記操作手段を用いた指示により、前記3軸加速度センサの3軸の出力値を前記基準値として記憶することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記車両の走行中、前記3軸加速度センサの出力値の平均値と現在設定されている前記基準値とを加重平均することにより前記基準値を補正することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記距離センサに基づいて得られる走行距離と走行時間とに基づいて前記車両の加減速に係る加速度を算出し、前記3軸加速度センサの出力値から前記車両の加減速に係る加速度を減算した値について前記平均値を求めることを特徴とする請求項4記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記補正手段は、現在設定されている基準値に対し所定範囲内にある値を対象として前記平均値を求めることを特徴とする請求項4または5記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記操作手段を用いた指示に応じて行う前記基準値の補正における前記加重平均の前記平均値の加重割合は、前記ナビゲーション装置筐体の前記車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ前記車両が停止しているときに行う前記基準値の補正における前記加重平均の前記平均値の加重割合よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項4記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記3軸加速度センサの出力値に基づいて前記ナビゲーション装置筐体の傾きを検出し、前記ジャイロセンサの出力値に基づいて得られる方位を前記ナビゲーション装置筐体の傾きにより補正することを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
地図を表示可能な表示手段と、
前記車両位置演算手段により算出された前記車両の現在位置の周辺の地図画像を自車位置マークとともに描画して前記表示手段に画像表示させる地図画像描画手段とを備えたことを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項1】
車両に備える距離センサの出力値とナビゲーション装置筐体に備える3軸加速度センサ及びジャイロセンサの出力値とに基づいて前記車両の現在位置を算出する車両位置演算手段を備えたナビゲーション装置において、
前記車両に取り付けられたナビゲーション装置筐体の傾きを前記3軸加速度センサの前後、左右、鉛直方向の3軸の出力として検出してその出力値を取付姿勢の基準値として記憶し、その後の前記車両の走行中、前記3軸加速度センサの出力値の平均値に基づいて前記基準値を補正し、この補正した基準値と前記3軸加速度センサの出力値とに基づいて前記車両の走行時の傾きを求め、前記距離センサの出力値に基づいて得られる走行距離を前記車両の傾きにより補正する補正手段を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記ナビゲーション装置筐体の前記車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ前記車両が停止しているときに、前記3軸加速度センサの3軸の出力値を前記基準値として記憶することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
操作手段を備え、
前記補正手段は、前記車両が水平位置にあると判断したドライバー等によって操作される前記操作手段を用いた指示により、前記3軸加速度センサの3軸の出力値を前記基準値として記憶することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記車両の走行中、前記3軸加速度センサの出力値の平均値と現在設定されている前記基準値とを加重平均することにより前記基準値を補正することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記距離センサに基づいて得られる走行距離と走行時間とに基づいて前記車両の加減速に係る加速度を算出し、前記3軸加速度センサの出力値から前記車両の加減速に係る加速度を減算した値について前記平均値を求めることを特徴とする請求項4記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記補正手段は、現在設定されている基準値に対し所定範囲内にある値を対象として前記平均値を求めることを特徴とする請求項4または5記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記操作手段を用いた指示に応じて行う前記基準値の補正における前記加重平均の前記平均値の加重割合は、前記ナビゲーション装置筐体の前記車両への取り付け後最初に電源が投入され且つ前記車両が停止しているときに行う前記基準値の補正における前記加重平均の前記平均値の加重割合よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項4記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記3軸加速度センサの出力値に基づいて前記ナビゲーション装置筐体の傾きを検出し、前記ジャイロセンサの出力値に基づいて得られる方位を前記ナビゲーション装置筐体の傾きにより補正することを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
地図を表示可能な表示手段と、
前記車両位置演算手段により算出された前記車両の現在位置の周辺の地図画像を自車位置マークとともに描画して前記表示手段に画像表示させる地図画像描画手段とを備えたことを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載のナビゲーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−329972(P2006−329972A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61289(P2006−61289)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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