説明

ナビサーバ

【課題】偶発的事態が発生した道路区間における以後の交通状態に鑑みて適当な誘導支援情報を迅速に生成かつナビ装置に認識させうるナビサーバを提供する。
【解決手段】本発明のナビサーバ100によれば、対象道路区間において偶発的事態が発生した後、第1時刻t1における対象道路区間の交通量(第1交通状態変数)Q1の値に基づき、第1期間にわたる第2位置x2における累積交通量(第2交通状態変数)CQの変化態様g2(t)が推定される。また、第1位置x1における累積交通量CQの標準的な変化態様g1(t)と、当該推定結果としての第2位置x1における累積交通量CQの変化態様g2(t)とに基づいて第1期間にわたる1次誘導支援情報(第1位置x1および第2位置x2の間の自動車の推定移動コストτ(t))が生成される。そして、1次誘導支援情報またはこれに基づく2次誘導支援情報がナビ装置200により認識される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビ装置との通信に基づき、当該ナビ装置による誘導を支援するナビサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
自由走行状態と渋滞走行状態とのそれぞれにおける交通流データに基づいて渋滞交通流に存在する粗密波を分析し、渋滞流特有の交通現象を把握するための技術的手法が提案されている(特許文献1参照)。一のセクションにおける交通密度の実績値と、このセクションより1つ下流側のセクションにおける交通密度の実績値とに基づく学習演算によりニューラルネットワークを構築し、当該ニューラルネットワークにしたがって交通密度を推定する技術的手法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2529215号公報
【特許文献2】特許第3157953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、高速道路等の道路において一時的な通行止め等の偶発的事態が発生した場合、それ以後の当該道路における交通渋滞状況等の交通状態は流動的である。このため、偶発的事態の発生後における道路交通状態を高精度で推定するためにはそのような流動的な因子が考慮されたモデル演算が必要になる。このモデル演算の内容が複雑になるとそれに要する情報処理量が過多となり、演算が完了するまでに長時間を要する可能性がある。しかるに、このような状況は偶発的事態の発生後に道路交通状態を迅速に推定し、かつ、当該推定結果またはこれに基づく誘導支援情報をナビ装置に迅速に提供する観点から好ましくない。
【0004】
そこで、本発明は、偶発的事態が発生した道路区間における以後の交通状態に鑑みて適当な誘導支援情報を迅速に生成かつナビ装置に認識させうるナビサーバを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明のナビサーバは、ナビ装置との通信により、当該ナビ装置による誘導を支援するナビサーバであって、交通渋滞発生の有無および程度に応じて値が変化する第1交通状態変数および時間の関数である第2交通状態変数の値の対象道路区間の第1位置における標準的な変化態様が第1道路交通情報として格納されている道路交通情報格納部と、前記対象道路区間において偶発的事態が発生した後の第1時刻における当該対象道路区間の前記第1交通状態変数の値を認識し、当該認識結果に基づき、当該第1時刻を始期とし、かつ、第2時刻を終期とする第1期間にわたる当該偶発的事態が発生した第2位置における前記第2交通状態変数の値の変化態様を推定する第1支援処理部と、前記第2道路交通情報としての前記第1位置における前記第2交通状態変数の値の変化態様と、前記第1支援処理部による推定結果としての前記第2位置における前記第2交通状態変数の値の変化態様とに基づいて前記第1期間にわたる当該第1位置および当該第2位置の間の交通状態を表わす1次誘導支援情報を生成する第2支援処理部と、前記ナビ装置との通信により、前記第2支援処理部により生成された前記1次誘導支援情報を当該ナビ装置に認識させる、または、前記第2支援処理部により生成された前記1次誘導支援情報に基づいて2次誘導支援情報を生成し、前記ナビ装置との通信により、当該2次誘導支援情報を当該ナビ装置に認識させる第3支援処理部とを備えていることを特徴とする。
【0006】
第1発明のナビサーバによれば、対象道路区間において偶発的事態が発生した後、第1時刻における対象道路区間の第1交通状態変数の値に基づき、第1期間にわたる第2位置における第2交通状態変数の値の変化態様が推定される。そして、第1位置における第2交通状態変数の値の標準的な変化態様と、当該推定結果としての第2位置における第2交通状態変数の値の変化態様とに基づいて第1期間にわたる1次誘導支援情報が生成される。1次誘導支援情報または1次誘導支援情報に基づく2次誘導支援情報がナビ装置により認識される。第1時刻における第1交通状態変数の値は、偶発的事態の発生後の対象道路区間における渋滞の有無および程度の指標となる。また、第2交通状態変数は第1交通状態変数および時間の関数であり、その値は複雑な演算モデルを用いずに簡単に導出されうる。したがって、偶発的事態の発生後の対象道路区間における渋滞の有無および程度に鑑みて適当な誘導支援情報を迅速に生成しかつナビ装置に認識させることができる。
【0007】
第2発明のナビサーバは、第1発明のナビサーバにおいて、前記第1支援処理部が前記第1道路交通情報に基づき、前記第2時刻を始期とする第2期間にわたる前記第2交通状態変数の値の変化態様を推定し、前記第2支援処理部が前記対比結果に基づいて前記第2期間にわたる前記第1位置および前記第2位置のうち一方または両方に関する前記1次誘導支援情報を生成することを特徴とする。
【0008】
第2発明のナビサーバによれば、第1時刻から第1期間が経過することにより対象道路区間における偶発的事態の発生による交通状態への影響が解消されているという推定に基づき、第1期間終了後の第2期間にわたる第2位置における第2交通状態変数の変化態様が偶発的事態の発生後ただちに推定されうる。したがって、対象道路区間における渋滞の有無および程度に鑑みて適当な誘導支援情報を迅速に生成しかつナビ装置に認識させることができる。
【0009】
第3発明のナビサーバは、第1または第2発明のナビサーバにおいて、前記第1支援処理部が前記第1交通状態変数の値として自動車の交通量を認識し、前記第2交通状態変数の値の変化態様として自動車の累積交通量の変化態様を推定し、前記第2支援処理部が前記第1位置および前記第2位置の間の自動車の移動コストを推定し、当該推定結果を前記1次誘導支援情報として生成することを特徴とする。
【0010】
第3発明のナビサーバによれば、偶発的事態の発生後の対象道路区間の交通状態を表わす累積交通量の変化態様が迅速かつ高精度で推定される。さらに、この推定結果に基づき、第1位置および第2位置の間の推定移動コストが1次誘導支援情報として生成される。したがって、対象道路区間における渋滞の有無および程度に鑑みて適当な誘導支援情報を迅速に生成しかつナビ装置に認識させることができる。
【0011】
第4発明のナビサーバは、第1または第2発明のナビサーバにおいて、自動車の第1走行状態変数および前記第1交通状態変数の相関関係が第1道路交通情報として前記道路交通情報格納部に格納され、前記第1支援処理部が前記第1時刻における前記対象道路区間の前記第1走行状態変数の値を認識し、当該認識結果と前記第1道路交通情報とに基づいて当該第1時刻における前記第1交通状態変数の値を認識することを特徴とする。
【0012】
第4発明のナビサーバによれば、第1時刻における対象道路区間にある自動車の第1走行状態変数の値に基づき、第1時刻における対象道路区間の第1交通状態変数が認識される。第1時刻における第1走行状態変数の値には、偶発的事態の発生後の対象道路区間における交通状態が正確に反映されている。したがって、偶発的事態の発生後の対象道路区間における渋滞の有無および程度の正確な指標として第1交通状態変数が認識されうる。そして、前記のように偶発的事態の発生後の対象道路区間における渋滞の有無および程度に鑑みて適当な道路交通情報を迅速に生成しかつナビ装置に認識させることができる。
【0013】
第5発明のナビサーバは、第4発明のナビサーバにおいて、前記第1支援処理部が前記第1走行状態変数の値として自動車の移動速度を認識し、前記第1交通状態変数の値として自動車の交通量を認識し、前記第2交通状態変数の値の変化態様として自動車の累積交通量の変化態様を推定し、前記第2支援処理部が前記第1位置および前記第2位置の間の自動車の移動コストを推定し、当該推定結果を前記1次誘導支援情報として生成することを特徴とする。
【0014】
第5発明のナビサーバによれば、偶発的事態の発生後の対象道路区間における自動車の移動速度に基づき、以後の対象道路区間の交通状態の指標となる第2位置における累積交通量の変化態様が迅速かつ高精度で推定される。したがって、当該推定結果に基づき、対象道路区間における渋滞の有無および程度に鑑みて適当な道路交通情報を迅速に生成しかつナビ装置に認識させることができる。
【0015】
第6発明のナビサーバは、第1または第2発明のナビサーバにおいて、前記第1支援処理部が前記第1時刻における前記対象道路区間の自動車の第2走行状態変数の値を認識し、当該認識結果と前記第2道路交通情報とに基づき、当該第1時刻における前記第2位置の前記第2交通状態変数の値を推定することを特徴とする。
【0016】
第6発明のナビサーバによれば、第1時刻における対象道路区間にある自動車の第2走行状態変数の値に基づき、第1時刻における対象道路区間の第2交通状態変数が認識される。第1時刻における第2走行状態変数の値には、偶発的事態の発生後の対象道路区間における交通状態が正確に反映されている。したがって、偶発的事態の発生後の対象道路区間における渋滞の有無および程度の正確な指標として第2交通状態変数の変化態様が推定されうる。そして、前記のように偶発的事態の発生後の対象道路区間における渋滞の有無および程度に鑑みて適当な道路交通情報を迅速に生成しかつナビ装置に認識させることができる。
【0017】
第7発明のナビサーバは、第6発明のナビサーバにおいて、前記第1支援処理部が前記第2走行状態変数の値として前記第1位置および前記第2位置の間の自動車の移動コストを認識し、前記第1交通状態変数の値として自動車の交通量を認識し、前記第2交通状態変数の値の変化態様として自動車の累積交通量の変化態様を推定し、前記第2支援処理部が前記第1位置および前記第2位置の間の自動車の移動コストを推定し、当該推定結果を前記1次誘導支援情報として生成することを特徴とする。
【0018】
第7発明のナビサーバによれば、偶発的事態の発生後の第1位置および第2位置の間の自動車の移動コストに基づき、以後の対象道路区間の交通状態の指標となる第2位置における交通量が認識され、かつ、累積交通量が迅速かつ高精度で推定される。したがって、当該推定結果に基づき、対象道路区間における渋滞の有無および程度に鑑みて適当な道路交通情報を迅速に生成しかつナビ装置に認識させることができる。
【0019】
第8発明のナビサーバは、第1〜第7発明のうちいずれか1つのナビサーバにおいて、前記第3支援処理部が前記ナビ装置との通信により当該ナビ装置のユーザの出発位置および目的位置を認識し、当該出発位置および当該目的位置を結ぶ支援ルートを構成するリンク群を表わす情報を前記2次誘導支援情報として生成することを特徴とする。
【0020】
第8発明のナビサーバによれば、対象道路区間における偶発的事態の発生後における交通状態と、ユーザの出発位置および目的位置に鑑みて適当な2次誘導支援情報を迅速に生成しかつナビ装置に認識させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のナビサーバの実施形態について説明する。図1に示されているナビサーバ100は自動車等の移動機能を有する装置に搭載されているまたはユーザにより携帯されうる装置に搭載されているナビ装置200との通信機能を有する。ナビサーバ100等のコンピュータの構成要素が情報を「認識する」とは、構成要素が外部から入力される情報を受信すること、構成要素が情報を外部のデータベースから検索すること、構成要素が情報を記憶装置から読み取ること、構成要素が入力、受信、読み取り等された基礎情報を演算処理することによって情報を測定、推定、算定等すること、構成要素が情報を記憶装置に記憶させること等の情報処理を実行することを意味する。
【0022】
ナビサーバ100は、道路交通情報格納部102と、支援マップ格納部104と、第1支援処理部110と、第2支援処理部120と、第3支援処理部130とを備えている。
【0023】
道路交通情報格納部102には自動車の移動速度(第1走行状態変数)vおよび交通量(第1交通状態変数)Qの相関関係を表わす関数Q=f(K(v))(K:交通密度)が第1道路交通情報として格納されている(図3参照)。また、道路交通情報格納部102には任意の第1位置x1における累積交通量(第2交通状態変数)CQの標準的な1日の変化態様(時刻tの関数)g1(t)が第2道路交通情報として格納されている(図4参照)。累積交通量CQは交通量Qの時間積分であり、交通量Qは交通渋滞発生の有無および程度に応じて変化し、自動車の移動速度vに基づいて算定されうる。第1および第2道路交通情報は、プローブカーまたはフローティングカーに搭載されているプローブ装置からナビサーバ100に送信されたプローブ情報(各時刻における個々のプローブカーの位置)に基づいて第1支援処理部110により生成された道路交通情報であってもよい。また、第1および第2道路交通情報は、道路交通情報センターのサーバ等からナビサーバ100に送信された道路交通情報であってもよく、当該送信された道路交通情報に基づいて第1支援処理部110により生成された道路交通情報であってもよい。
【0024】
支援マップ格納部104には支援マップ情報が格納されている。支援マップ情報において、道路を構成する各リンクの位置、形状および姿勢等が、座標((緯度、経度)または(緯度、経度、高度))の列により表現されている。また、各リンクには当該各リンクを識別するためのリンク識別情報や、道路種類を表すデータが付されている。
【0025】
第1支援処理部110は対象道路区間において一時的な交通規制等の偶発的事態が発生した後の第1時刻t1における当該偶発的事態が発生した第2位置x2の交通量Q1を認識する。また、第1支援処理部110は当該認識結果に基づき、第1期間および第2期間にわたる第2位置x2における累積交通量CQの変化態様(時刻tの関数)g2(t)を推定する。第1期間は第1時刻t1を始期とし、第2時刻t2を周期とする期間である。第2期間は第2時刻t2を始期とし、1日の終了時刻またはこれより手前の任意の時刻を終期とする期間である。第1期間および第2期間のそれぞれは一定であってもよく、第1時刻t1以後の道路交通情報に基づいて第1支援処理部110により可変的に設定されてもよい。
【0026】
第2支援処理部120は道路交通情報格納部102に第1道路交通情報として格納されている第1位置x1における累積交通量CQの変化態様g1(t)と、第1支援処理部110による推定結果としての第2位置x2における累積交通量CQの変化態様g2(t)とに基づき、第1期間および第2期間にわたる第1位置x1および第2位置x2の間の自動車の移動コストτ(t)を推定し、当該推定結果を1次誘導支援情報として生成する。
【0027】
第3支援処理部130は第2支援処理部120により生成された1次誘導支援情報に基づいて2次誘導支援情報を生成し、ナビ装置200との通信によりこの2次誘導支援情報を当該ナビ装置200に認識させる。なお、第3支援処理部130はナビ装置200との通信により、第2支援処理部120により生成された1次誘導支援情報をこのナビ装置200に認識させてもよい。
【0028】
ナビ装置200は入力装置201と、出力装置202と、ナビマップ格納部204と、第1処理部210と、第2処理部220とを備えている。
【0029】
入力装置201は自動車2のセンターコンソール等に配置された操作ボタンやマイクロフォンにより構成されており、ユーザの操作または発話による種々の設定を可能とする。出力装置202は自動車2のセンターコンソールに配置されたディスプレイ装置であり、ナビマップ情報等を表示または出力する。ナビマップ格納部204には出力装置202に出力されるナビマップ情報等が格納されている。ナビマップ情報において、道路を構成する各リンクの位置、形状および姿勢等が、座標列により表現され、かつ、各リンクには当該各リンクを識別するためのリンク識別情報が付されている。ナビマップ情報と支援マップ情報とのスペックやデータ構造が異なるため、各マップ情報における座標列の定義等が異なっていても、同一のリンクに共通のリンク識別情報が付されることにより、リンクのマッチングが可能とされている。
【0030】
第1処理部210はナビサーバ100との通信により、自動車の出発位置p1および目的位置p2を当該ナビサーバ100に認識させる。第2処理部220はナビサーバ100により設定された、出発位置p1および目的位置p2を結ぶ支援ルートRの一部を構成するリンク群を、ナビサーバ100との通信に基づいて2次支援誘導情報として認識する。第2処理部220は当該リンク群とナビマップ格納部204に格納されているナビマップ情報とに基づきナビルートrを設定かつ出力装置202に出力する。なお、第2処理部220はナビサーバ100との通信により1次誘導支援情報を認識し、1次誘導支援情報または1次誘導支援情報に基づいて設定されたナビルートr等の誘導情報を出力装置202に出力してもよい。情報の出力とは、当該情報の表示、音声出力等、人間がその視覚、聴覚等、五感を通じて認識しうるあらゆる形態で情報を出力することを意味する。
【0031】
前記構成のナビサーバの機能について説明する。対象道路区間で一時的な交通規制等の偶発的事態が発生した場合、道路交通情報センターのサーバやフローティングカー等からこの偶発的事態に関する情報がナビサーバ100に送信される。これに応じて、第1支援処理部110は、偶発的事態が発生した対象道路区間の始点(第1位置)x1、偶発的事態が発生した位置(第2位置)x2、偶発的事態が発生した後の時刻(第1時刻)t1および第1時刻t1における第2位置x2付近の自動車の移動速度(第1走行状態変数)v=v(t1)を認識する(図2/S111)。また、第1支援処理部110は支援マップ格納部104に格納されている支援マップ情報に基づき、対象道路区間に沿った第1位置x1および第2位置x2の距離dを認識する。その上で第1支援処理部110は式(1)にしたがって第1時刻t1における第1位置x1から第2位置x2までの自動車の移動コスト(第2走行状態変数)τ(t1)を算定する(図2/S112)。なお、この移動コストτ(t1)がフローティングカー等からナビサーバ100に送信される偶発的事態に関する情報に含まれていてもよい。
【0032】
τ(t1)=d/v(t1) ‥(1)
さらに、第1支援処理部110はこの移動コストτ(t1)と、道路交通情報格納部102に格納されている第2道路交通情報とに基づき、式(2)にしたがって第1時刻t1における第2位置x2の累積交通量CQ1を推定する(図2/S113)。すなわち、第1時刻t1における第2位置x2の累積交通量CQ1が、図4に示されている第1位置x1の累積交通量CQの変化態様g1(t)の、第1時刻t1より当該移動コストτ(t1)だけ前の時刻t1−τ(t1)における値として推定される。
【0033】
CQ1=g1(t1−τ(t1)) ‥(2)
また、第1支援処理部110は第1時刻t1における第2位置x2付近の自動車の移動速度v(t1)と、道路交通情報格納部102に格納されている第1道路交通情報とに基づき、式(3)にしたがって第1時刻t1における第2位置x2の交通量Q1を推定する(図2/S114)。すなわち、図3に実線で示されている曲線Q=f(K)と、図3に破線で示されている、第1時刻t1における自動車の移動速度v(t1)、交通密度Kおよび交通量Qの相関関係を表わす直線Q=v(t1)・Kとの交点における交通量Qが、第1時刻t1における第2位置x2の交通量Q1として推定される。
【0034】
1=f(K1),(K1=(f(K1)/v(t1))) ‥(3)
さらに、第1支援処理部110は当該推定結果に基づき、式(4)にしたがって第1期間(t1〜t2)にわたる第2位置x2における累積交通量CQの変化態様g2(t)を推定する(図2/S115)。すなわち、第1期間にわたる第2位置x2における累積交通量CQは、図5(a)に示されているように第1時刻t1における第2位置x2の交通量Q1を第1比例係数として時刻tに比例して増加すると推定される。
【0035】
2(t)=Q1・(t−t1)+CQ1,(t1≦t≦t2)‥(4)
また、第1支援処理部110は第1期間に続く第2期間(t2〜)にわたる第2位置x2における累積交通量CQの変化態様g2(t)を式(5)にしたがって推定する(図2/S116)。すなわち、第2期間にわたる第2位置x2における累積交通量CQは、図5(b)に示されているように第1比例係数Q1よりも大きい第2比例係数Q2で時刻tに比例して増加すると推定される。
【0036】
2(t)=Q0・(t−t2)+CQ2,(t2≦t)
(Q1<Q2,CQ2=Q1・(t2−t1)+CQ1) ‥(5)
第2支援処理部120は第2道路交通情報として格納されている第1位置x1における累積交通量CQの変化態様g1(t)と、第1支援処理部110による推定結果としての第2位置x2における累積交通量CQの変化態様g2(t)の変化態様とに基づき、1次誘導支援情報を生成する(図2/S122)。具体的には、第1位置x1から第2位置x2までの自動車の移動コストτ(t)を式(6)にしたがって推定し、当該推定結果を1次誘導支援情報として生成する。すなわち、移動コストτ(t)は図5(c)に示されているように共通の累積交通量CQにおける2つの関数g1(t)およびg2(t)の時間偏差として推定される。1次誘導支援情報は補完的な道路交通情報として道路交通情報格納部102に格納される。なお、1次誘導支援情報には、移動コストτ(t)が図5(c)に示されているように0となる(または閾値以下となる)と予測される時刻(渋滞収束予測時刻)t3が含まれていてもよい。
【0037】
τ(t)=g2-1(CQ)−g1-1(CQ) ‥(6)
第3支援処理部130はナビ装置200との通信に基づき、ナビ装置200が搭載されている自動車の出発位置p1および目的位置p2をこの自動車の識別子とともに認識する(図2/S132)。自動車の目的位置p2は、ユーザによって入力装置201を通じて設定かつナビ装置200に入力された上でナビサーバ100に送信される。自動車の出発位置p1はナビ装置200において、第1処理部210により、通信機器により受信されたGPS信号や、車載の加速度センサおよびレートセンサ等の出力に基づいてある時刻における現在位置として測定された上でナビサーバ100に送信される。
【0038】
また、第3支援処理部130は支援マップ格納部104に格納されている支援マップ情報に基づき、自動車の出発位置p1および目的位置p2を結ぶ一または複数の支援ルートRを設定する(図2/S134)。これにより、たとえば、図6(a)に示されているように出発位置p1および目的位置p2を結ぶ第1支援ルートR1および第2支援ルートR2が設定される。
【0039】
さらに、第3支援処理部120は支援ルートRの一部を構成するリンク群を表わすリンク識別子を2次誘導支援情報として生成しかつナビ装置200との通信によりこのナビ装置200に認識させる(図2/S136)。たとえば、図6(a)に示されている2つの支援ルートR1およびR2のそれぞれの移動コストが、道路交通情報格納部102に格納されている、1次誘導支援情報を含む道路交通情報(各リンクまたは道路区間の移動コスト)に基づいて評価される。そして、移動コストの観点から最適な支援ルートの一部(または全部)を構成するリンク群に包含される各リンクの識別子が、前記の自動車の識別子により識別される自動車に搭載されているナビ装置200に送信される。これにより、ナビサーバ100における一連の処理が終了する。なお、第3支援処理部130により1次誘導支援情報がそのまま任意のナビ装置200に対して配信または放送されてもよい。さらに、支援ルートRを包含するエリア(メッシュ群)に偶発的事態が発生後、第1期間および第2期間が経過していない対象道路区間が包含されるか否かが判定され、当該判定結果が肯定的である場合に当該対象道路区間における1次誘導支援情報がナビサーバ100からナビ装置200に送信されてもよい。
【0040】
その後、ナビ装置200において第2処理部22により、2次誘導支援情報と、ナビマップ格納部204に格納されているナビマップ情報とに基づき、自動車の出発位置p1および目的位置p2を結ぶナビルートrが設定かつ出力装置202に出力される。図6(a)に示されている第1支援ルートR1に偶発的事態が発生してから間もない対象道路区間が含まれているため、第2支援ルートR2の移動コストが第1支援ルートR1の移動コストよりも低い場合、第2支援ルートR2と同一またはほぼ同一の図6(b)に示されているようなナビルートrが設定かつ出力装置202に表示される。一方、図6(a)に示されている第1支援ルートR1に偶発的事態が発生してから間もない対象道路区間が含まれているものの、第1支援ルートR1の移動コストが第2支援ルートR2の移動コストよりも低い場合、第1支援ルートR1と同一またはほぼ同一の図6(c)に示されているようなナビルートrが設定かつ出力装置202に表示される。
【0041】
前記機能を発揮するナビサーバによれば、対象道路区間において偶発的事態が発生した後、第1時刻t1における第2位置x2付近の交通量(第1交通状態変数)Q=Q1に基づき、第1期間にわたる第2位置x2における累積交通量(第2交通状態変数)CQの変化態様g2(t)が推定される(図2/S111〜116、図5(a)参照)。また、第1時刻t1から第1期間が経過することにより対象道路区間における偶発的事態の発生による交通状態への影響が解消または軽減されているという推定に基づき、第1期間終了後の第2期間にわたる第2位置における累積交通量CQの変化態様g2(t)が推定される(図2/S116、図5(b)参照)。さらに、第1道路交通情報としての第1位置x1における累積交通量CQの標準的な変化態様g1(t)と、当該推定結果としての第2位置x2における累積交通量CQの変化態様g2(t)とに基づいて第1および第2期間にわたる1次誘導支援情報(第1位置x1から第2位置x2までの予測移動コストτ(t))が生成される(図2/S122、図5(c)参照)。第1時刻t1における第2位置x2の交通量Q1は、偶発的事態の発生後の対象道路区間における渋滞の有無および程度等、交通状態の指標となる。また、累積交通量CQは交通量Qおよび時間の関数であり、複雑な演算モデルを用いずに簡単に導出されうる。したがって、偶発的事態の発生後の対象道路区間における渋滞の有無および程度に鑑みて適当な誘導支援情報が迅速に生成されうる。そして、対象道路区間における偶発的事態の発生後における交通状態と、自動車(ひいてはユーザ)の出発位置p1および目的位置p2に鑑みて適当な2次誘導支援情報を迅速にナビ装置200に認識させることができる(図2/S132〜S136、図6(a)参照)。
【0042】
ここで、対象道路区間において偶発的事態が発生した場合、第1位置x1から第2位置x2までの自動車の移動コストτ(t)の推定精度の評価結果について説明する。図7には対象道路区間に設置されたセンサの出力信号に基づく実際の移動コストτの測定結果と、たとえば、交通量に関する過去の蓄積データを利用した従来のマッチング方法および本発明の手法のそれぞれによる移動コストτの推定結果とが示されている。図7から明らかなように実際の移動コストτとの偏差に鑑みて、当該従来手法よりも本発明の手法のほうが移動コストτの推定精度が高い。
【0043】
なお、第1交通状態変数の値として交通量Qのほかに道路交通状態を表わすあらゆる変数の値が認識されてもよい。また、第2交通状態変数として累積交通量CQのほかに第1交通状態変数および時間の関数として表現されるあらゆる変数の値が認識されてもよい。さらに、移動コストの推定結果のほか、第1位置および第2位置のそれぞれにおける第2交通状態変数の差異に基づいて導出されるあらゆる変数の値の推定結果が1次誘導支援情報として生成されてもよい。
【0044】
また、第1時刻t1における自動車の移動速度(第1走行変数)v=v(t1)が認識され、この移動速度vに基づいて第1時刻t1における第2位置x2の交通量Q1が推定されたが(図2/S111,S114、図3参照)、第1時刻t1における第2位置x2の交通量Q1が偶発的事態に関する情報の一部としてナビサーバ100に送信されかつ第1支援処理部110により認識されてもよい。さらに、第1時刻t1における第1位置x1から第2位置2までの自動車の移動コスト(第2走行状態変数)τ=τ(t1)が算定され、この移動コストτに基づいて第1時刻t1における第2位置x2の累積交通量CQ1が推定されたが(図2/S112,S113、図4参照)、第1時刻t1における第2位置x2の累積交通量cQ1が偶発的事態に関する情報の一部としてナビサーバ100に送信されかつ第1支援処理部110により認識されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のナビサーバの構成説明図
【図2】本発明のナビサーバの機能説明図
【図3】第1道路交通情報に関する説明図
【図4】第2道路交通情報に関する説明図
【図5】1次誘導支援情報としての移動コストの推定方法に関する説明図
【図6】支援ルートおよびナビルートに関する説明図
【図7】移動コストの推定精度の評価に関する説明図
【符号の説明】
【0046】
100‥ナビサーバ、102‥道路交通情報格納部、110‥第1支援処理部、120‥第2支援処理部、130‥第3支援処理部、200‥ナビ装置、204‥ナビマップ格納部、210‥第1処理部、220‥第2処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビ装置との通信により、当該ナビ装置による誘導を支援するナビサーバであって、
交通渋滞発生の有無および程度に応じて値が変化する第1交通状態変数および時間の関数である第2交通状態変数の値の対象道路区間の第1位置における標準的な変化態様が第2道路交通情報として格納されている道路交通情報格納部と、
前記対象道路区間において偶発的事態が発生した後の第1時刻における当該対象道路区間の前記第1交通状態変数の値を認識し、当該認識結果に基づき、当該第1時刻を始期とし、かつ、第2時刻を終期とする第1期間にわたる当該偶発的事態が発生した第2位置における前記第2交通状態変数の値の変化態様を推定する第1支援処理部と、
前記第2道路交通情報としての前記第1位置における前記第2交通状態変数の値の変化態様と、前記第1支援処理部による推定結果としての前記第2位置における前記第2交通状態変数の値の変化態様とに基づいて前記第1期間にわたる当該第1位置および当該第2位置の間の道路状態に関する1次誘導支援情報を生成する第2支援処理部と、
前記ナビ装置との通信により、前記第2支援処理部により生成された前記1次誘導支援情報を当該ナビ装置に認識させる、または、前記第2支援処理部により生成された前記1次誘導支援情報に基づいて2次誘導支援情報を生成し、前記ナビ装置との通信により、当該2次誘導支援情報を当該ナビ装置に認識させる第3支援処理部とを備えていることを特徴とするナビサーバ。
【請求項2】
請求項1記載のナビサーバにおいて、
前記第1支援処理部が前記第2道路交通情報に基づき、前記第2時刻を始期とする第2期間にわたる前記第2交通状態変数の値の変化態様を推定し、
前記第2支援処理部が前記対比結果に基づいて前記第2期間にわたる前記第1位置および前記第2位置のうち一方または両方に関する前記1次誘導支援情報を生成することを特徴とするナビサーバ。
【請求項3】
請求項1または2記載のナビサーバにおいて、
前記第1支援処理部が前記第1交通状態変数の値として自動車の交通量を認識し、前記第2交通状態変数の値の変化態様として自動車の累積交通量の変化態様を推定し、
前記第2支援処理部が前記第1位置および前記第2位置の間の移動コストを推定し、当該推定結果を前記1次誘導支援情報として生成することを特徴とするナビサーバ。
【請求項4】
請求項1または2記載のナビサーバにおいて、
自動車の第1走行状態変数および前記第1交通状態変数の相関関係が第1道路交通情報として前記道路交通情報格納部に格納され、
前記第1支援処理部が前記第1時刻における前記対象道路区間の前記第1走行状態変数の値を認識し、当該認識結果と前記第1道路交通情報とに基づいて当該第1時刻における前記第1交通状態変数の値を認識することを特徴とするナビサーバ。
【請求項5】
請求項4記載のナビサーバにおいて、
前記第1支援処理部が前記第1走行状態変数の値として自動車の移動速度を認識し、前記第1交通状態変数の値として自動車の交通量を認識し、前記第2交通状態変数の値の変化態様として自動車の累積交通量の変化態様を推定し、
前記第2支援処理部が前記第1位置および前記第2位置の間の自動車の移動コストを推定し、当該推定結果を前記1次誘導支援情報として生成することを特徴とするナビサーバ。
【請求項6】
請求項1または2記載のナビサーバにおいて、
前記第1支援処理部が前記第1時刻における前記対象道路区間の自動車の第2走行状態変数の値を認識し、当該認識結果と前記第2道路交通情報とに基づき、当該第1時刻における前記第2位置の前記第2交通状態変数の値を推定することを特徴とするナビサーバ。
【請求項7】
請求項6記載のナビサーバにおいて、
前記第1支援処理部が前記第2走行状態変数の値として前記第1位置および前記第2位置の間の自動車の移動コストを認識し、前記第1交通状態変数の値として自動車の交通量を認識し、前記第2交通状態変数の値の変化態様として自動車の累積交通量の変化態様を推定し、
前記第2支援処理部が前記第1位置および前記第2位置の間の自動車の移動コストを推定し、当該推定結果を前記1次誘導支援情報として生成することを特徴とするナビサーバ。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1つに記載のナビサーバにおいて、
前記第3支援処理部が前記ナビ装置との通信により当該ナビ装置のユーザの出発位置および目的位置を認識し、当該出発位置および当該目的位置を結ぶ支援ルートを構成するリンク群を表わす情報を前記2次誘導支援情報として生成することを特徴とするナビサーバ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−92469(P2009−92469A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262124(P2007−262124)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】