説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】触媒暖機時のバッテリ消費を適切に低減させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関、モータジェネレータ、触媒、及び触媒を加熱する加熱手段を有する。触媒暖機手段は、触媒の暖機要求があった際において、走行要求パワーが所定の判定値よりも高い場合に、加熱手段によって触媒を暖機させる。この場合、制御手段は、走行要求パワーを満たすように内燃機関の出力を制御する。基本的には、加熱手段に必要なエネルギーは、EV走行を行う場合の走行エネルギーよりも小さい。そのため、加熱手段によって触媒を暖機させることで、内燃機関の排気ガスによって触媒を暖機する場合と比較して、触媒暖機時のバッテリ消費を適切に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路上に電気加熱式触媒を備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排気通路上に配設された電気加熱式触媒(以下、「EHC(Electrically Heated Catalyst)」とも呼ぶ。)を用いて排気ガスを浄化する技術が知られている。例えば、特許文献1には、エンジン及びモータジェネレータを車両の駆動源として有すると共に、排気通路上にEHCが設けられたハイブリッド車両が記載されている。具体的には、このハイブリッド車両では、触媒が活性化するまでは、エンジンを始動させずに、電動モータの出力によって車両を走行させている、つまりEV走行を行わせている。そして、触媒が活性した後に、電動モータを停止すると共にエンジンを始動させ、エンジンの出力によって車両を走行させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−274926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、特許文献1に記載された技術では触媒暖機中にEV走行を行うが、このようなEV走行は、ある程度のエミッション性能を確保可能な状態に触媒が活性化されるまで継続される。そのため、バッテリを多く搭載するのが望ましいため、コストや重量体格が嵩む可能性があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、触媒暖機時のバッテリ消費を適切に低減させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、内燃機関と、バッテリの電力により作動するモータジェネレータと、前記内燃機関の排気通路上に設けられた触媒と、前記バッテリの電力を利用して前記触媒を加熱する加熱手段と、を有するハイブリッド車両の制御装置は、前記触媒の暖機要求があった際において、ドライバからの走行要求パワーが所定の判定値よりも高い場合、前記加熱手段によって前記触媒を暖機させる触媒暖機手段と、前記触媒暖機手段が前記加熱手段によって前記触媒を暖機する場合に、前記走行要求パワーを満たすように前記内燃機関の出力を制御する制御手段と、を備える。
【0007】
上記のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関及びモータジェネレータを車両の駆動源として有すると共に、触媒と、バッテリの電力を利用して当該触媒を加熱する加熱手段とを有する。例えば、加熱手段はヒータであり、触媒及び加熱手段は電気加熱式触媒(EHC)を構成する。触媒暖機手段は、触媒の暖機要求があった際において、ドライバからの走行要求パワーが所定の判定値よりも高い場合、加熱手段によって触媒を暖機させる。この場合、制御手段は、走行要求パワーを満たすように内燃機関の出力を制御する。つまり、内燃機関の出力を用いてハイブリッド車両を走行させる。基本的には、触媒暖機のために加熱手段に必要なエネルギーは、EV走行を行う場合の走行エネルギーよりも小さいと言える。そのため、上記のように加熱手段によって触媒を暖機させることで、内燃機関の排気ガスによって触媒を暖機する場合と比較して、触媒暖機時のバッテリ消費を適切に低減することが可能となる。なお、本明細書において、「バッテリ消費」はバッテリの電力消費を意味するものとする。
【0008】
上記のハイブリッド車両の制御装置の一態様では、前記触媒暖機手段は、前記走行要求パワーが前記判定値以下である場合、前記加熱手段の代わりに、前記内燃機関による排気ガスによって前記触媒を暖機させ、前記制御手段は、前記触媒暖機手段が前記排気ガスによって前記触媒を暖機する場合に、前記走行要求パワーを満たすように前記モータジェネレータの出力を制御する。
【0009】
この態様では、触媒暖機手段は、走行要求パワーが判定値以下である場合、例えば軽負荷走行時、加熱手段を用いずに、内燃機関による排気ガスによって触媒を暖機させる。この場合、制御手段は、走行要求パワーを満たすようにモータジェネレータの出力を制御する。つまり、ハイブリッド車両をEV走行させる。走行要求パワーが判定値以下である場合には、内燃機関の排気ガスによって触媒暖機を行ったほうが、つまり触媒暖機時にEV走行を行ったほうが、加熱手段によって触媒暖機を行うよりも、バッテリ消費が小さくなる傾向にあると言える。そのため、触媒暖機手段は、走行要求パワーが判定値以下である場合に、加熱手段の代わりに内燃機関の排気ガスによって触媒を暖機させる。これにより、触媒暖機時のバッテリ消費をより低減することができる。
【0010】
上記のハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記触媒暖機手段が前記排気ガスによって前記触媒を暖機する場合には、少なくとも、排気ガス温度の上昇を優先した制御を前記内燃機関に対して行い、前記触媒暖機手段が前記加熱手段によって前記触媒を暖機する場合には、少なくとも、前記排気ガス温度の上昇よりも燃費を優先した制御を前記内燃機関に対して行う手段を更に備える。
【0011】
この態様によれば、内燃機関本体の熱効率向上のほか、触媒暖機中のバッテリアシスト電力をより低減することが可能となる。
【0012】
上記のハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記触媒の暖機時において、前記ハイブリッド車両が発するNVが所定値以上である場合に、前記NVが前記所定値未満である場合に比して、前記判定値を小さくする判定値設定手段を更に備える。
【0013】
この態様では、判定値設定手段は、ハイブリッド車両が発するNV(ノイズ・バイブレーション、言い換えると騒音及び/又は振動に相当する。)が所定値以上である場合に、NVが当該所定値未満である場合に比して、走行要求パワーの判定に用いられる判定値を小さく設定する。ここで、ハイブリッド車両が発するNVとは、例えば、電池ファンノイズや、キャリアノイズや、こもり音や、ガラ音などであり、これらはEV走行時や内燃機関の軽負荷時やアイドル時において乗員が不快に感じる場合がある。また、NVの判定に用いる所定値は、例えば乗員が不快に感じるNVの閾値などに基づいて設定される。
【0014】
上記のようにハイブリッド車両が発するNVが所定値以上である場合に判定値を小さく設定することで、加熱手段による触媒暖機が行われ易くなり、内燃機関の出力を用いた走行が実行され易くなる。そのため、内燃機関は通常の出力が可能となるため、車両が発する各種のNVを紛らわせることができる。よって、車両が発する各種のNVによる乗員の不快感を適切に抑制することが可能となる。
【0015】
好適には、前記判定値設定手段は、前記ハイブリッド車両が発生する各種ノイズの音圧に基づいて、前記ハイブリッド車両が発するNVが前記所定値以上であるか否かを判定する。この場合、判定値設定手段は、ハイブリッド車両が発生する各種ノイズの音圧[dB]が、例えば官能上許容できるノイズ閾値[dB]よりも大きくなることが予測される場合に、上記した判定値を小さくする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態におけるハイブリッド車両の概略構成図を示す。
【図2】本実施形態におけるエンジンの概略構成図を示す。
【図3】第1実施形態に係る制御処理を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る制御処理を示すフローチャートである。
【図5】第3実施形態に係る制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
[装置構成]
図1は、本実施形態におけるハイブリッド車両100の概略構成図を示す。なお、図1中の破線矢印は、信号の入出力を示している。
【0018】
ハイブリッド車両100は、主に、エンジン(内燃機関)1と、車軸20と、駆動輪30と、第1のモータジェネレータMG1と、第2のモータジェネレータMG2と、動力分割機構40と、インバータ50a、50bと、バッテリ60と、ECU(Electronic Control Unit)70と、を備える。
【0019】
車軸20は、エンジン1及び第2のモータジェネレータMG2の動力を車輪30に伝達する動力伝達系の一部である。車輪30は、ハイブリッド車両100の車輪であり、説明の簡略化のため、図1では特に左右前輪のみが表示されている。エンジン1は、例えばガソリンエンジンで構成され、ハイブリッド車両100の主たる推進力を出力する動力源として機能する。エンジン1は、ECU70によって種々の制御が行われる。
【0020】
第1のモータジェネレータMG1は、主としてバッテリ60を充電するための発電機、或いは第2のモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電機として機能するように構成されており、エンジン1の出力により発電を行う。第2のモータジェネレータMG2は、主としてエンジン1の出力をアシスト(補助)する電動機として機能するように構成されている。これらのモータジェネレータMG1、MG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。
【0021】
動力分割機構40は、サンギヤやリングギヤなどを有して構成されるプラネタリギヤ(遊星歯車機構)に相当し、エンジン1の出力を第1のモータジェネレータMG1及び車軸20へ分配することが可能に構成されている。
【0022】
インバータ50aは、バッテリ60と第1のモータジェネレータMG1との間の電力の入出力を制御する直流交流変換機であり、インバータ50bは、バッテリ60と第2のモータジェネレータMG2との間の電力の入出力を制御する直流交流変換機である。例えば、インバータ50aは、第1のモータジェネレータMG1によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ60に供給し、インバータ50bは、バッテリ60から取り出した直流電力を交流電力に変換して第2のモータジェネレータMG2に供給する。
【0023】
バッテリ60は、第1のモータジェネレータMG1及び/又は第2のモータジェネレータMG2を駆動するための電源として機能することが可能に構成されると共に、第1のモータジェネレータMG1及び/又は第2のモータジェネレータMG2が発電した電力を充電可能に構成された蓄電池である。
【0024】
なお、以下では、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2のことを単に「モータジェネレータMG」と表記する。
【0025】
ECU70は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備え、ハイブリッド車両100内の各構成要素に対して種々の制御を行う。詳細は後述するが、ECU70は、本発明における触媒暖機手段及び制御手段として機能する。
【0026】
次に、図2を参照して、エンジン1について説明する。図2は、エンジン1の概略構成図を示す。図2においては、実線矢印はガスの流れの一例を示しており、破線矢印は信号の入出力を示している。
【0027】
エンジン1は、主に、吸気通路3と、スロットルバルブ4と、燃料噴射弁5と、気筒6aと、吸気弁7と、排気弁8と、点火プラグ9と、可変バルブタイミング機構10と、排気通路12と、電気加熱式触媒(EHC)13と、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置14と、を有する。なお、図2においては、説明の便宜上、1つの気筒6aのみを示しているが、実際にはエンジン1は複数の気筒6aを有する。
【0028】
吸気通路3には外部から導入された吸気(空気)が通過し、スロットルバルブ4は吸気通路3を通過するガスの流量を調整する。スロットルバルブ4は、ECU70から供給される制御信号S4によって、開度などが制御される。吸気通路3を通過した吸気は、燃焼室6bに供給される。また、燃焼室6bには、燃料噴射弁5によって噴射された燃料が供給される。
【0029】
燃焼室6bには、吸気弁7と排気弁8とが設けられている。吸気弁7は、開閉することによって、吸気通路3と燃焼室6bとの連通/遮断を制御する。吸気弁7は、可変バルブタイミング機構10によって、バルブタイミングが制御される。具体的には、開きタイミング及び閉じタイミングが制御される。可変バルブタイミング機構10は、吸気弁7の作用角(言い換えるとリフト量)又は位相を変化させることが可能に構成されている。可変バルブタイミング機構10は、ECU70から供給される制御信号S10によって、例えば吸気弁7と排気弁8とのバルブタイミングの位相などが制御される。一方、排気弁8は、開閉することによって、燃焼室6bと排気通路12との連通/遮断を制御する。
【0030】
なお、図2では、吸気弁7のみバルブタイミングを可変に構成した例を示しているが、これに限定はされず、吸気弁7だけでなく排気弁8もバルブタイミングを可変に構成しても良い。
【0031】
燃焼室6b内では、上記のように供給された吸気と燃料との混合気が、点火プラグ9によって点火されることで燃焼される。点火プラグ9は、ECU70から供給される制御信号S9によって、点火時期などが制御される。このような燃焼によってピストン6cが往復運動し、当該往復運動がコンロッド6dを介してクランク軸(不図示)に伝達され、クランク軸が回転する。燃焼室6bでの燃焼により発生した排気ガスは、排気通路12より排出される。
【0032】
排気通路12上には、EHC13が設けられている。EHC13は、排気ガス中のNOxやSOxなどを浄化可能な触媒や、通電されることで触媒を加熱可能なヒータ(詳しくは電気ヒータ)などを備える。EHC13内のヒータは、加熱手段に相当し、バッテリ60の電力を利用して触媒を加熱する。また、ヒータは、ECU70から供給される制御信号S13によって、その作動が制御される。なお、以下では、「触媒」の文言を用いた場合にはEHC13が有する触媒を指すものとし、「ヒータ」の文言を用いた場合にはEHC13が有するヒータを指すものとする。
【0033】
エンジン1には、排気ガスを吸気側に還流させることが可能に構成されたEGR装置14が設けられている。具体的には、EGR装置14は、一端が排気通路12に接続され、他端が吸気通路3に接続されたEGR通路14aと、吸気側に還流させるEGRガス量を調整するEGRバルブ14bと、を有する。EGRバルブ14bは、ECU70から供給される制御信号S14bによって、開度などが制御される。
【0034】
ECU70は、車速センサ18が検出した車速に対応する検出信号S18及びアクセル開度センサ19が検出したアクセル開度に対応する検出信号S19を取得し、これらに基づいて、ハイブリッド車両100内の各構成要素(エンジン1内の構成要素を含む)に対して制御を行う。
【0035】
[制御方法]
次に、本実施形態においてECU70が行う制御方法について説明する。
【0036】
(第1実施形態)
第1実施形態では、ECU70は、始動時などにおいて触媒の暖機要求があった際において、ドライバからの走行要求パワーと所定の判定値とを比較することで、触媒を暖機するための制御を行う。具体的には、ECU70は、判定値としてヒータを作動させるのに必要な電力に相当する値(以下、「EHC作動判定値」と呼ぶ。)を用いて、走行要求パワーとEHC作動判定値とを比較する。ECU70は、走行要求パワーがEHC作動判定値よりも高い場合には、ヒータによって触媒を暖機する(以下、「ヒータによる触媒暖機」と呼ぶ。)。この場合には、ECU70は、走行要求パワーを満たすようにエンジン1の出力を制御する。つまり、エンジン1の出力を用いてハイブリッド車両100を走行させる。
【0037】
これに対して、ECU70は、走行要求パワーがEHC作動判定値以下である場合には、ヒータを用いずに、エンジン1の排気ガスによって触媒を暖機する(以下、「エンジン1による触媒暖機」と呼ぶ。)。つまり、排気ガスの熱によって触媒を暖機する。この場合には、ECU70は、走行要求パワーを満たすようにモータジェネレータMGの出力を制御する。つまり、モータジェネレータMGの出力を用いてハイブリッド車両100をEV走行させる。なお、エンジン1による触媒暖機を行う場合には、ECU70は、エンジン1に対してアイドル運転相当の運転を行わせる。
【0038】
このような制御を行う理由は以下の通りである。ヒータによる触媒暖機を行わずにエンジン1による触媒暖機のみを行う場合を考えると、この場合には、基本的にはエンジン出力を用いずにバッテリ電力を用いてEV走行を行うこととなる。このようなEV走行は、ある程度のエミッション性能を確保可能な状態に触媒が活性化されるまで継続される。そのため、バッテリを多く搭載するのが望ましいため、コストや重量体格が嵩む傾向にあると考えられる。
【0039】
一方で、ヒータによる触媒暖機を行う場合を考えると、この場合には、基本的には、触媒暖機のためにヒータに必要なエネルギー(EHC作動判定値に相当する。以下同様とする。)は、EV走行を行うための走行エネルギーよりも小さい。そのため、ヒータによる触媒暖機を行うと、エンジン1による触媒暖機を行う場合と比較して、バッテリを小型化することができると言える。つまり、バッテリ消費を低減することができる。したがって、バッテリ消費低減の観点から、基本的には、ヒータによって触媒を暖機することが望ましいと考えられる。
【0040】
しかしながら、走行要求によっては(例えば軽負荷である場合)、走行エネルギーがヒータに必要なエネルギーよりも小さくなる場合がある。この場合にヒータによる触媒暖機を行うと、エンジン1による触媒暖機を行う場合よりも、バッテリ消費が大きくなる傾向にあると言える。これは、ヒータを作動させるためのバッテリ電力が、EV走行を行うためのバッテリ電力よりも大きくなるからである。このような場合には、バッテリ電力を、ヒータに用いるよりも、EV走行に用いるほうが望ましいと言える。即ち、走行エネルギーがヒータに必要なエネルギーよりも小さい場合には、バッテリ消費低減の観点から、ヒータによる触媒暖機よりも、エンジン1による触媒暖機を行うほうが望ましいと考えられる。
【0041】
以上のことから、第1実施形態では、ECU70は、ヒータに必要なエネルギーに相当するEHC作動判定値を用いて、走行要求パワーとEHC作動判定値とを比較することで、ヒータによって触媒暖機を行うのか、或いはエンジン1の排気ガスによって触媒暖機を行うのかを決定する。具体的には、ECU70は、触媒の暖機要求があった際において、走行要求パワーがEHC作動判定値よりも高い場合にはヒータによる触媒暖機を行い、走行要求パワーがEHC作動判定値以下である場合にはエンジン1による触媒暖機を行う。これにより、触媒暖機時のバッテリ消費パワーを最小化することが可能となる。
【0042】
図3は、第1実施形態に係る制御処理を示すフローチャートである。この処理は、例えばエンジン1の始動時において、ECU70によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0043】
まず、ステップS101では、ECU70は、車速センサ18が検出した車速及びアクセル開度センサ19が検出したアクセル開度を取得し(それぞれ検出信号S18、S19に対応する)、ドライバの走行要求パワーを算出する。そして、処理はステップS102に進む。
【0044】
ステップS102では、ECU70は、触媒暖機要求があるか否かを判定する。例えば、ECU70は、触媒の温度などに基づいて当該判定を行う。触媒暖機要求がある場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS103に進み、触媒暖機要求がない場合(ステップS102;No)、処理は終了する。
【0045】
ステップS103では、ECU70は、ハイブリッド車両100のシステム状態を取得する。具体的には、ECU70は、触媒暖機の許可に関する判定(次のステップS104の判定)を行うために必要なシステム状態を取得する。例えば、ECU70は、バッテリ60の出力制限(Wout)やバッテリ60の充電状態(SOC)やバッテリ60の電圧などを、当該システム状態として取得する。そして、処理はステップS104に進む。
【0046】
ステップS104では、ECU70は、ステップS103で取得されたシステム状態に基づいて、触媒暖機を許可しても良いか否かを判定する。例えば、ECU70は、触媒を暖機させるための制御を行うと、バッテリ60の出力制限(Wout)やバッテリ60の充電状態(SOC)やバッテリ60の電圧などの制限値によって制限を受けるような場合には、触媒暖機を許可しない。触媒暖機を許可できる場合(ステップS104;Yes)、処理はステップS105に進み、触媒暖機を許可できない場合(ステップS104;No)、処理は終了する。
【0047】
ステップS105では、ECU70は、ステップS101で算出された走行要求パワーがEHC作動判定値よりも高いか否かを判定する。EHC作動判定値は、予め設定された値であり、例えば固定値が用いられる。
【0048】
走行要求パワーがEHC作動判定値よりも高い場合(ステップS105;Yes)、つまり中高負荷走行が要求されている場合、処理はステップS106に進む。ステップS106では、ECU70は、ヒータによる触媒暖機を行う。この場合には、ECU70は、エンジン1の出力を用いてハイブリッド車両100を走行させる。そして、処理は終了する。
【0049】
これに対して、走行要求パワーがEHC作動判定値以下である場合(ステップS105;No)、つまり軽荷走行が要求されている場合、処理はステップS107に進む。ステップS107では、ECU70は、エンジン1による触媒暖機を行う。この場合には、ECU70は、モータジェネレータMGの出力を用いてハイブリッド車両100をEV走行させる。また、ECU70は、エンジン1に対してアイドル運転相当の運転を行わせる。そして、処理は終了する。
【0050】
以上説明した第1実施形態によれば、走行要求パワーに応じて、ヒータによる触媒暖機及びエンジン1による触媒暖機のいずれかを適切に選択することができ、触媒暖機時のバッテリ消費を最小化することが可能となる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、ECU70は、第1実施形態で示した制御に加えて、以下のような制御を実行する。
【0052】
第2実施形態では、ECU70は、エンジン1による触媒暖機を行う場合に、少なくとも、排気ガス温度の上昇を優先した制御を行う。具体的には、ECU70は、排気ガス温度を上昇させるために、点火時期を遅角させる制御、及び吸気弁7と排気弁8とのバルブタイミングの位相(以下、「VVT位相」と呼ぶ。)を遅角させる制御を行う。加えて、ECU70は、このようにエンジン1による触媒暖機を行う場合に、燃焼安定のためにEGR装置14の作動を禁止すると共に、燃料気化促進のためにスロットルバルブ4の閉じ込み制御を行う。このような制御を行うことで、触媒を早期に適切に暖機させることができ、EV走行を行う時間を短縮することができるので、触媒暖機中のバッテリアシスト電力をより低減することが可能となる。
【0053】
一方で、ECU70は、ヒータによる触媒暖機を行う場合には、エンジン1による触媒暖機を行う場合と異なり、排気ガスによって触媒を暖機するわけではないので、排気ガス温度の上昇よりも燃費を優先した制御を行う。具体的には、ECU70は、燃費を最適にするために、エンジン1による触媒暖機を行う場合よりも、点火時期及びVVT位相を進角させる制御を行う。加えて、ECU70は、このようにヒータによる触媒暖機を行う場合に、EGR装置14の作動を許可すると共に、スロットルバルブ4の閉じ込みを低減する制御を行う、つまりスロットルバルブ4の閉じ込み制御を禁止する。このような制御を行うことで、ヒータによる触媒暖機時における燃費を最適にすることが可能となる。
【0054】
図4は、第2実施形態に係る制御処理を示すフローチャートである。この処理も、例えばエンジン1の始動時において、ECU70によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0055】
ステップS201〜S207の処理は、それぞれ、前述したステップS101〜S107の処理と同様であるため(図3参照)、その説明を省略する。ここでは、ステップS208、S209の処理のみ説明する。
【0056】
ステップS208の処理は、ステップS206の処理の後に実行される、つまりヒータによる触媒暖機を行う場合に実行される。ステップS208では、ECU70は、燃費を最適にするために、エンジン1による触媒暖機を行う場合よりも、点火時期及びVVT位相を進角させる制御を行う。また、ECU70は、EGR装置14の作動を許可すると共に(具体的にはEGRバルブ14bを開き側に制御する)、スロットルバルブ4の閉じ込みを低減する制御を行う。そして、処理は終了する。
【0057】
一方、ステップS209の処理は、ステップS207の処理の後に実行される、つまりエンジン1による触媒暖機を行う場合に実行される。ステップS209では、ECU70は、排気ガス温度を上昇させるために、点火時期及びVVT位相を遅角させる制御を行う。また、ECU70は、EGR装置14の作動を禁止すると共に(具体的にはEGRバルブ14bを閉に制御する)、スロットルバルブ4の閉じ込み制御を行う。そして、処理は終了する。
【0058】
以上説明した第2実施形態によれば、エンジン1本体の熱効率向上のほか、触媒暖機中のバッテリアシスト電力をより低減することが可能となる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、ECU70は、判定値設定手段として機能し、車両側で発生される各種のNV(「ノイズ・バイブレーション」を意味する。以下同様とする。)も考慮に入れて、ヒータによって触媒暖機を行うのか或いはエンジン1の排気ガスによって触媒暖機を行うのかを決定する点で、第1及び第2実施形態と異なる。ここで、車両側の各種NVには、例えば、電池ファンノイズや、キャリアノイズや、こもり音や、ガラ音などが挙げられ、これらは車両が発生する騒音や振動における振幅及び周波数に関係するものである。このような各種NVは、EV走行時やエンジン軽負荷時やアイドル時において、エンジンノイズが低くなるために、乗員が不快に感じる場合がある。
【0060】
具体的には、ECU70は、車両側の各種NVが大きい場合に、ヒータによる触媒暖機を優先的に実行する。詳しくは、ECU70は、車両側の各種NVが大きい場合に、各種NVが小さい場合に比して、走行要求パワーの判定に用いるEHC作動判定値を小さくする。より詳しくは、ECU70は、ハイブリッド車両100が発生する各種ノイズの音圧[dB]が、人間が官能上許容できるノイズ閾値[dB]よりも大きくなることが予測される場合に、EHC作動判定値を小さくする。なお、官能上許容できるノイズ閾値[dB]は、例えば車格や走行条件などによって変化するものであるため、これらを考慮して設定される。
【0061】
このようにEHC作動判定値を小さくすることで、EHC作動判定値を小さくしない場合と比較して、走行要求パワーがEHC作動判定値よりも高くなる可能性が高くなる。そのため、ヒータによる触媒暖機が行われ易くなり、エンジン1の出力を用いた走行が実行され易くなる。これにより、エンジン1は通常の出力が可能となるため、この際のエンジンノイズによって車両側の各種NVを紛らわせることができる。つまり、ハイブリッド車両100が発生する各種ノイズの音圧[dB]からエンジン1が発生するノイズの音圧[dB]を減算することで得られる音圧[dB]が、官能上許容できるノイズ閾値[dB]よりも小さくなる。言い換えると、車室内の乗員へ到達するNVの振幅が低下される。よって、車両側の各種NVによる乗員の不快感を抑制することが可能となる。
【0062】
更に、第3実施形態では、ECU70は、ハイブリッド車両100の静かな走行が優先される場合には、エンジン1による触媒暖機を優先的に実行する。具体的には、ECU70は、静かな走行が優先される場合には、静かな走行が優先されない場合に比して、走行要求パワーの判定に用いるEHC作動判定値を大きくする。こうすることで、EHC作動判定値を大きくしない場合と比較して、走行要求パワーがEHC作動判定値以下になる可能性が高くなる。そのため、エンジン1による触媒暖機が行われ易くなり、EV走行が実行され易くなる。これにより、静かな走行が優先される状況において、静かな走行を適切に実現することが可能となる。
【0063】
なお、静かな走行が優先される場合とは、例えば、ドライバからの要求がある場合や、住宅街などを走行する場合などが挙げられる。一例としては、ECU70は、EV走行を行わせるスイッチ(以下「EVスイッチ」と呼ぶ。)のオン/オフをドライバからの要求として用いて、静かな走行が優先されるか否かを判断する。
【0064】
図5は、第3実施形態に係る制御処理を示すフローチャートである。この処理も、例えばエンジン1の始動時において、ECU70によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0065】
ステップS301〜304の処理は、それぞれ、前述したステップS101〜S104の処理と同様であるため(図3参照)、その説明を省略する。
【0066】
ステップS305では、ECU70は、車両側の各種NVが大きいか否か、言い換えると各種NVが所定値以上であるか否かを判定する。具体的には、ECU70は、各種NVの発生源となる構成要素(NVの直接的な発生源である構成要素に限られず、NVの発生源となる構成要素に接続された構成要素も含むものとする)への指令値などに基づいて、当該判定を行う。例えば、ECU70は、電池ファンの駆動要求や、キャリヤ周波数や、NVラインや、ガラ音ラインなどに基づいて、車両側の各種NVが大きいか否かを判断する。この場合、ECU70は、電池ファンの駆動要求が大きい場合や、キャリヤ周波数が小さい場合に、各種NVが大きいものと判断する。また、ECU70は、ステップS305での判定に用いる所定値を、人間が官能上許容できるノイズ閾値[dB]に基づいて設定する。例えば、ECU70は、車格や走行条件などを考慮して当該所定値を設定する。
【0067】
各種NVが大きい場合(ステップS305;Yes)、処理はステップS306に進む。ステップS306では、ECU70は、ヒータによる触媒暖機を優先的に実行すべく、EHC作動判定値を小さくする。具体的には、ECU70は、基準となるEHC作動判定値(例えば初期に設定されたEHC作動判定値)から所定値αを減算した値を、以降の処理で用いるEHC作動判定値に設定する。そして、処理はステップS309に進む。
【0068】
これに対して、各種NVが小さい場合(ステップS305;No)、処理はステップS307に進む。ステップS307では、ECU70は、静かな走行が優先されるか否かを判定する。具体的には、ECU70は、ドライバからの静かな走行についての要求があるか否かや、ハイブリッド車両100が住宅街などを走行しているか否かなどを判定することで、当該判定を行う。例えば、ECU70は、EVスイッチのオン/オフや、ハイブリッド車両100の現在位置に関する位置情報などに基づいて、このような判定を行う。この場合、ECU70は、EVスイッチがオンである場合、或いは、取得された位置情報よりハイブリッド車両100が住宅街などを走行していると判断される場合に、静かな走行が優先されると判定する。
【0069】
静かな走行が優先される場合(ステップS307;Yes)、処理はステップS308に進む。ステップS308では、ECU70は、エンジン1による触媒暖機を優先的に実行すべく、EHC作動判定値を大きくする。具体的には、ECU70は、基準となるEHC作動判定値(例えば初期に設定されたEHC作動判定値)に所定値βを加算した値を、以降の処理で用いるEHC作動判定値に設定する。そして、処理はステップS309に進む。
【0070】
これに対して、静かな走行が優先されない場合(ステップS307;No)、処理はステップS309に進む。この場合には、ECU70は、基準となるEHC作動判定値(例えば初期に設定されたEHC作動判定値)を以降の処理で用いる。
【0071】
ステップS309〜S311の処理は、それぞれ、前述したステップS105〜S107の処理と同様であるため(図3参照)、その説明を省略する。
【0072】
以上説明した第3実施形態によれば、車両側の各種NVが大きい場合に、ヒータによる触媒暖機を優先することで、エンジン1の出力を用いた走行を優先的に実行させることができ、エンジンノイズによって車両側の各種NVを紛らわせることが可能となる。つまり、車両側の各種NVによる乗員の不快感を抑制することが可能となる。また、第3実施形態によれば、静かな走行が優先される場合に、エンジン1による触媒暖機を優先することで、EV走行を優先的に実行させることができ、静かな走行を適切に実現することが可能となる。
【0073】
なお、上記では、ステップS305の判定を行った後にステップS307の判定を行う例を示したが、他の例では、ステップS307の判定を行った後にステップS305の判定を行うことができる。つまり、当該例では、静かな走行が優先されるか否かの判定を行った後に、車両側の各種NVが大きいか否かの判定を行うことができる。この場合には、静かな走行が優先されないと判定された場合に、車両側の各種NVが大きいか否かの判定を行うことができる。具体的には、「ステップS307;Yes」の場合にステップS308の処理を行い、「ステップS307;No」の場合にステップS305の判定を行い、「ステップS305;Yes」の場合にステップS306の処理を行うこととなる。
【0074】
また、上記では、ステップS305の判定及びステップS307の判定の両方を行う例を示したが、他の例では、ステップS307の判定を行わずに、ステップS305の判定のみを行うことができる。つまり、当該例では、静かな走行が優先されるか否かの判定を行わずに、車両側の各種NVが大きいか否かの判定のみを行うことができる。この場合には、ステップS307及びS308の処理が行われずに、ステップS305及びS306の処理のみが行われる。
【0075】
更に他の例では、ステップS305の判定を行わずに、ステップS307の判定のみを行うことができる。つまり、当該例では、車両側の各種NVが大きいか否かの判定を行わずに、静かな走行が優先されるか否かの判定のみを行うことができる。この場合には、ステップS305及びS306の処理が行われずに、ステップS307及びS308の処理のみが行われる。
【0076】
更に、第3実施形態は、前述した第2実施形態と組み合わせて実行しても良い。つまり、エンジン1による触媒暖機を行う場合に、点火時期及びVVT位相を遅角させる制御、EGR装置14の作動の禁止、及び、スロットルバルブ4の閉じ込み制御を行うことができる。また、ヒータによる触媒暖機を行う場合に、エンジン1による触媒暖機を行う場合よりも点火時期及びVVT位相を進角させる制御、EGR装置14の作動の許可、及び、スロットルバルブ4の閉じ込みを低減する制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 エンジン
4 スロットルバルブ
6a 気筒
7 吸気弁
8 排気弁
9 点火プラグ
12 排気通路
13 電気加熱式触媒(EHC)
14 EGR装置
18 車速センサ
19 アクセル開度センサ
60 バッテリ
70 ECU
100 ハイブリッド車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、バッテリの電力により作動するモータジェネレータと、前記内燃機関の排気通路上に設けられた触媒と、前記バッテリの電力を利用して前記触媒を加熱する加熱手段と、を有するハイブリッド車両の制御装置であって、
前記触媒の暖機要求があった際において、ドライバからの走行要求パワーが所定の判定値よりも高い場合、前記加熱手段によって前記触媒を暖機させる触媒暖機手段と、
前記触媒暖機手段が前記加熱手段によって前記触媒を暖機する場合に、前記走行要求パワーを満たすように前記内燃機関の出力を制御する制御手段と、を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記触媒暖機手段は、前記走行要求パワーが前記判定値以下である場合、前記加熱手段の代わりに、前記内燃機関による排気ガスによって前記触媒を暖機させ、
前記制御手段は、前記触媒暖機手段が前記排気ガスによって前記触媒を暖機する場合に、前記走行要求パワーを満たすように前記モータジェネレータの出力を制御する請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記触媒暖機手段が前記排気ガスによって前記触媒を暖機する場合には、少なくとも、排気ガス温度の上昇を優先した制御を前記内燃機関に対して行い、
前記触媒暖機手段が前記加熱手段によって前記触媒を暖機する場合には、少なくとも、前記排気ガス温度の上昇よりも燃費を優先した制御を前記内燃機関に対して行う手段を更に備える請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記触媒の暖機時において、前記ハイブリッド車両が発するNVが所定値以上である場合に、前記NVが前記所定値未満である場合に比して、前記判定値を小さくする判定値設定手段を更に備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記判定値設定手段は、前記ハイブリッド車両が発生する各種ノイズの音圧に基づいて、前記ハイブリッド車両が発するNVが前記所定値以上であるか否かを判定する請求項4に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−162077(P2011−162077A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27483(P2010−27483)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】