説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】コンデンサにおける回生電力の蓄電機能を向上させる。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置(100)は、内燃機関(200)、第1電動機(MG1)及び第2電動機(MG2)と、電源手段(12)と、第1及び第2電動機の各々に対応するインバータ(710,720)及びコンデンサ(c1,c2)とを備えたハイブリッド車両を制御するものであり、回生を行うべき状態であるか否かを判定する回生判定手段(110)と、電源手段の蓄電量又は温度が所定の閾値以上であるか否かを判定する電源状態判定手段(120)と、一方の電動機で回生を行うと共に、他方の電動機の回転数をゼロに近づけるように制御する電動機制御手段(130)と、電源手段から他方の電動機に対応するインバータへの電力供給を遮断し、回生電力を他方の電動機に対応するコンデンサに蓄電させる蓄電制御手段(140)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関及び電動機を備えるハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のハイブリッド車両として、内燃機関に加えて、2つの電動機(例えば、モータジェネレータ等)を動力源として備えるものが知られている。電動機は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えている。各電動機は、例えばインバータやコンデンサ等の各種回路を介してバッテリと並列に接続されており、車両の運転状況等に応じて効率的な動作を実現可能とされている(例えば、特許文献1から4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−050764号公報
【特許文献2】特開2008−199782号公報
【特許文献3】特開2001−045607号公報
【特許文献4】特開平8−308025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動機と接続されたコンデンサは、例えば整流機能を有する平滑コンデンサとして動作するが、バッテリと同様に電力を蓄電するという機能も有している。具体的には、一の電動機に対応するコンデンサは、他の電動機が回生することによって得られる回生電力を蓄電することが可能である。
【0005】
しかしながら、他の電動機から十分な回生電力が得られている状態であっても、蓄電されるコンデンサが対応する一の電動機が回転している場合には、適切な電位差が発生せず、結果的にコンデンサにおける蓄電量が減少してしまうおそれがある。即ち、各電動機の動作状況によっては、コンデンサへの蓄電が適切に行えない場合がある。このように、特許文献1から4に係る技術には、仮にコンデンサが備えられていたとしても、その蓄電機能を十分に発揮させることができないおそれがあるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、コンデンサにおける回生電力の蓄電機能を向上させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は上記課題を解決するために、内燃機関、第1電動機及び第2電動機を含む動力要素と、前記第1電動機及び前記第2電動機の各々に動力としての電力を供給可能であると共に、前記第1電動機及び前記第2電動機の各々で得られた回生電力を蓄電可能な電源手段と、前記第1電動機及び前記第2電動機の各々に対応するように設けられたインバータ及びコンデンサとを備えたハイブリッド車両を制御する装置であって、前記第1電動機及び前記第2電動機のいずれかによって回生を行うべき状態であるか否かを判定する回生判定手段と、前記回生を行うべき状態であると判定された場合に、前記電源手段の蓄電量が第1閾値以上であるか否か、又は前記電源手段の温度が第2閾値以上であるか否かを判定する電源状態判定手段と、前記電源手段の蓄電量が前記第1閾値以上である、又は前記電源手段の温度が前記第2閾値以上であると判定された場合に、前記第1電動機及び前記第2電動機のうち一方の電動機で回生を行うように制御すると共に、回生を行わない他方の電動機の回転数をゼロに近づけるように制御する電動機制御手段と、前記電動機制御手段による制御後に、前記電源手段から前記他方の電動機に対応する前記インバータへの直流電力の供給を遮断し、前記一方の電動機の回生によって得られた電力を、前記他方の電動機に対応する前記コンデンサに蓄電させる蓄電制御手段とを備える。
【0008】
本発明に係るハイブリッド車両は、駆動軸に対し動力を供給可能な動力要素として、例えば燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、吸排気系の構成及び気筒配列等を問わない各種の態様を採り得る内燃機関、並びにモータジェネレータ等の電動発電機として構成され得る第1電動機及び第2電動器を少なくとも備えた車両である。
【0009】
第1電動機及び第2電動機の各々は、例えばバッテリ等である電源手段から供給される電力を利用して動力を出力可能に構成されている。また、内燃機関等の他の動力要素から得られる動力を利用して回生を行うことも可能とされている。電源手段は、第1電動機及び第2電動機で得られた回生電力を蓄電可能に構成されている。
【0010】
第1電動機及び第2電動機には更に、各々に対応するように、電源を変換するインバータ及び整流機能を有するコンデンサがそれぞれ設けられている。具体的には、第1電動機は、一のインバータ及び一のコンデンサを介して電源手段に電気的に接続されている。一方、第2電動機は、他のインバータ及び他のコンデンサを介して電源手段に電気的に接続されている。
【0011】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、このようなハイブリッド車両を制御する制御装置であって、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
【0012】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の動作時には、先ず回生判定手段によって、第1電動機及び第2電動機のいずれかによって回生を行うべき状態であるか否かが判定される。尚、ここでの「回生を行うべき状態」とは、電動機で回生を行う方が運転効率を向上できると推定されるような状態であり、車両の走行状況(例えば、車速や要求トルク、アクセルのオンオフ等)に応じて判定される。尚、具体的にどのような場合に回生を行うか(即ち、どのような状態を「回生を行うべき状態」とするか)は、適宜設定可能である。
【0013】
回生判定手段において回生を行うべき状態であると判定されると、電源状態判定手段によって、電源手段の蓄電量が第1閾値以上であるか否か、又は電源手段の温度が第2閾値以上であるか否かが判定される。尚、ここでの「第1閾値」は、更なる蓄電を行えば電源手段が劣化してしまうと考えられる程度に蓄電量が高い状態であるか否かを判定するための閾値であり、理論的、実験的或いは経験的に求められ予め設定されている。また「第2閾値」は、入力制限がかかってしまう程度に電源手段の温度が高い状態であるか否かを判定するための閾値であり、第1閾値と同様、理論的、実験的或いは経験的に求められ予め設定されている。
【0014】
電源状態判定手段において、電源手段の蓄電量が第1閾値以上である、又は電源手段の温度が第2閾値以上であると判定されると、第1電動機及び第2電動機のうち一方の電動機が、電動機制御手段によって回生を行うように制御される。即ち、一方の電動機は、他の動力要素からの動力を電力へと変換するように動作する。一方で、回生を行わない他方の電動機は、電動機制御手段によって回転数がゼロに近づくように(好ましくは、完全にゼロとなるように)制御される。
【0015】
電動機制御手段による制御が実行されると、電源手段から他方の電動機に対応するインバータへの直流電力の供給が遮断される。具体的には、インバータのスイッチング動作が停止されることで、電源手段からインバータへの電力供給が遮断される。これにより、他方の電動機の負荷が小さくなり、他方の電動機側のコンデンサの電位が低くなる。より具体的には、他方の電動機に対応するコンデンサ側の電位が、一方の電動機に対応するコンデンサ側及び電源手段側の電位より低くなる。よって、一方の電動機の回生によって得られた電力は、他方の電動機に対応するように設けられたコンデンサに効率的に蓄電される。
【0016】
このように、電源手段に代えてコンデンサへの蓄電を可能とすることで、電源手段の負担を軽減することができる。具体的には、例えば過大入力時の電源手段の保護や、回生電力取りこぼしによる燃費悪化の抑制が実現できる。このような効果を高めるためにも、コンデンサの容量値は比較的大きなものとされることが好ましい。
【0017】
尚、例えば電圧を変化させるコンバータ等を用いることでも、上述したようなコンデンサへの蓄電が可能であると考えられる。しかしながら、コンバータ等を用いる方法では、回生を行わない他方の電動機が動作している場合、他方の電動機側の電位を低くする制御時の耐圧性能に問題が生じるおそれがあり、制御的にも困難であると考えられる。また、専用のコンバータを追加する必要があるため、装置の複雑化や製造コストの増加を招いてしまう。
【0018】
しかるに本発明では、一方の電動機による回生が行われる際に、回生を行わない他方の電動機の回転数がゼロに近づくように制御することで、コンデンサへの蓄電を実現する。従って、比較的簡単な装置構成で、コンデンサへの効率的な蓄電を実現することが可能である。
【0019】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図2】ハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図3】エンジンの一断面構成を例示する模式図である。
【図4】モータジェネレータ及びバッテリ間の構成を示す回路図である。
【図5】実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図7】回生時のモータジェネレータの制御方法を示す共線図(その1)である。
【図8】回生時のモータジェネレータの制御方法を示す共線図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず、本実施形態に係るハイブリッド車両の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、ハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0023】
図1において、本実施形態に係るハイブリッド車両1は、ハイブリッド駆動装置10、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、アクセル開度センサ13、車速センサ14及びECU100を備えて構成されている。
【0024】
ECU100は、CPU、ROM及びRAM等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットである。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従って、ハイブリッド車両1における各種制御を実行可能に構成されている。
【0025】
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給する。また、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給することが可能な不図示のインバータを含んでいる。即ち、PCU11は、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御可能に構成された電力制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。PCU11のより具体的な構成については、後に詳述する。
【0026】
バッテリ12は、本発明の「電源手段」の一例であり、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する充電可能な蓄電手段である。バッテリ12の蓄電量は、ECU100等において検出可能とされている。また、バッテリ12の温度も、ECU100等において検出可能とされている。
【0027】
アクセル開度センサ13は、ハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
【0028】
車速センサ14は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出可能に構成されたセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
【0029】
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1のパワートレインとして機能する動力ユニットである。ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0030】
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、主にエンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、入力軸400、駆動軸500、減速機構600を備えて構成されている。
【0031】
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能するように構成されている。ここで、図3を参照し、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、エンジンの一断面構成を例示する模式図である。
【0032】
尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば2サイクル又は4サイクルレシプロエンジン等を含み、少なくとも一の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。係る概念を満たす限りにおいて、本発明に係る内燃機関の構成は、エンジン200のものに限定されず各種の態様を有してよい。また、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図3においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。
【0033】
図3において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介して、クランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。
【0034】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転数NEが算出される構成となっている。
【0035】
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210を介して吸気バルブ211の開弁時に気筒201内部へ導かれる。一方、吸気ポート210には、インジェクタ212の燃料噴射弁が露出しており、吸気ポート210に対し燃料を噴射することが可能な構成となっている。インジェクタ212から噴射された燃料は、吸気バルブ211の開弁時期に前後して吸入空気と混合され、上述した混合気となる。
【0036】
燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に供給される構成となっている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり、吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
【0037】
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的には不図示のアクセルペダルの開度(即ち、上述したアクセル開度Ta)に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
【0038】
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出される排気中のNOx(窒素酸化物)を還元すると同時に、排気中のCO(一酸化炭素)及びHC(炭化水素)を酸化可能に構成された触媒装置である。尚、触媒装置の採り得る形態は、このような三元触媒に限定されず、例えば三元触媒に代えて或いは加えて、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)或いは酸化触媒の各種触媒が設置されていてもよい。
【0039】
排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。これら空燃比センサ217及び水温センサ218は、夫々ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比及び冷却水温は、夫々ECU100により一定又は不定の検出周期で把握される構成となっている。
【0040】
図2に戻り、モータジェネレータMG1は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた電動発電機である。モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた電動発電機である。尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有するが、他の構成を有していてもよい。モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、本発明に係る「第1電動機」及び「第2電動機」の一例である。
【0041】
動力分割機構300は、中心部に設けられたサンギヤS1と、サンギヤS1の外周に同心円状に設けられた、リングギヤR1と、サンギヤS1とリングギヤR1との間に配置されてサンギヤS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギヤP1と、これら各ピニオンギヤの回転軸を軸支するキャリアC1とを備えている。
【0042】
ここで、サンギヤS1は、サンギヤ軸310を介してMG1のロータRT1に連結されており、その回転数はMG1の回転数Nmg1(以下、適宜「MG1回転数Nmg1」と称する)と等価である。また、リングギヤR1は、クラッチ710、駆動軸500及び減速機構600を介してMG2のロータRT2に結合されており、その回転数はMG2の回転数Nmg2(以下、適宜「MG2回転数Nmg2」と称する)と一義的な関係にある。更に、キャリアC1は、エンジン200の先に述べたクランクシャフト205に連結された入力軸400と連結されており、その回転数は、エンジン200の機関回転数NEと等価である。尚、ハイブリッド駆動装置10において、MG1回転数Nmg1及びMG2回転数Nmg2は、夫々レゾルバ等の回転センサにより一定の周期で検出されており、ECU100に一定又は不定の周期で送出されている。
【0043】
一方、駆動軸500は、ハイブリッド車両1の駆動輪たる右前輪FR及び左前輪FLを夫々駆動するドライブシャフトSFR及びSFLと、各種減速ギヤ及び差動ギヤを含む減速装置としての減速機構600を介して連結されている。従って、モータジェネレータMG2から駆動軸500に供給されるモータトルクTmg2は、減速機構600を介して各ドライブシャフトへと伝達され、各ドライブシャフトを介して伝達される各駆動輪からの駆動力は、同様に減速機構600及び駆動軸500を介してモータジェネレータMG2に入力される。従って、MG2回転数Nmg2は、ハイブリッド車両1の車速Vと一義的な関係にある。
【0044】
動力分割機構300は、係る構成の下で、エンジン200からクランクシャフト205を介して入力軸400に供給されるエンジントルクTeを、キャリアC1とピニオンギヤP1とによってサンギヤS1及びリングギヤR1に所定の比率(各ギヤ相互間のギヤ比に応じた比率)で分配し、エンジン200の動力を2系統に分割することが可能となっている。
【0045】
以上説明したハイブリッド駆動装置10によれば、動力分割機構300の状態を変化させることで、様々な動力伝達モードを実現することが可能である。具体的には、例えばエンジン200を停止させてモータジェネレータMG2から出力される動力のみを出力するモード、エンジン200、モータジェネレータMG1及びMG2から夫々動力を出力するモード、エンジン200から出力された動力をモータジェネレータMG1又はMG2で回生するモード等を実現することができる。このような複数の動力伝達モードは、例えばハイブリッド車両1の走行状況に応じて適宜切替えられる。これにより、運転効率を向上させることが可能である。
【0046】
次に、モータジェネレータMG1及びMG2と、バッテリ12との間に設けられるPCU11の具体的な構成について、図4を参照して説明する。ここに図4は、モータジェネレータ及びバッテリ間の構成を示す回路図である。
【0047】
図4において、モータジェネレータMG1は、電力を変換するための第1インバータ710に接続されている。また、第1インバータ710には、整流機能を有する第1平滑コンデンサc1が接続されている。尚、第1平滑コンデンサc1に印加される電圧は、電圧センサ810によって検出されている。検出された電圧は、制御部150に伝達される。
【0048】
他方、モータジェネレータMG2は、電力を変換するための第2インバータ720に接続されている。また、第2インバータ720には、整流機能を有する第2平滑コンデンサc2が接続されている。尚、第2平滑コンデンサc2に印加される電圧は、電圧センサ820によって検出されている。検出された電圧は、制御部150に伝達される。
【0049】
モータジェネレータMG1及びMG2は、上述した第1インバータ710及び第2インバータ720、並びに第1平滑コンデンサc1及び第2平滑コンデンサc2を介して、昇圧コンバータ730に接続されている。昇圧コンバータ730は、リアクトルR、フィルタコンデンサcf、電圧センサ830及び電流センサ840を備えている。電圧センサ830は、フィルタコンデンサcfに印加される電圧を検出し、制御部150に伝達する。電流センサ840は、昇圧コンバータ730内を流れる電流を検出し、制御部150に伝達する。昇圧コンバータ730は、モータジェネレータMG1及びMG2と接続される側とは反対側において、バッテリ12に接続されている。
【0050】
制御部150は、PCU11の各部位と接続されており、PCU11における各種制御を実行可能とされている。制御部150は、図に示すように第1インバータ710、第2インバータ720、昇圧コンバータ730に共通する1つのユニットとして設けられていてもよいし、第1インバータ710、第2インバータ720、昇圧コンバータ730の各々に対応するように個別に設けられてもよい。即ち、制御部150は、複数設けられていても構わない。
【0051】
尚、上述した電圧センサ810、820及び830、並びに電流センサ840は、制御系を構築する際に一般的に用いられるものであるが、本実施形態に必須の構成ではない。
【0052】
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成について、図5を参照して説明する。ここに図5は、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
【0053】
図5において、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置900は、上述したECU100及びPCU11における制御部150の一部又は全部を含むものとして構成されている。ハイブリッド車両の制御装置900は、回生判定部110と、バッテリ状態判定部120と、MG制御部130と、インバータ制御部140とを備えて構成されている。
【0054】
回生判定部110は、本発明の「回生判定手段」の一例であり、入力されるハイブリッド車両1の走行状況を示す情報に基づいて、モータジェネレータMG1又はMG2における回生を行うべきか否かを判定する。ここでの判定結果は、バッテリ状態判定部120及びMG制御部130へと伝達される。
【0055】
バッテリ状態判定部120は、本発明の「電源状態判定手段」の一例であり、入力されるバッテリ12の状態を示す情報(具体的には、バッテリ12の蓄電量や温度等)に基づいて、バッテリ12への蓄電を行うべきか否かを判定する。ここでの判定結果は、MG制御部130へと伝達される。
【0056】
MG制御部130は、本発明の「電動機制御手段」の一例であり、モータジェネレータMG1及びMG2の動作を制御可能に構成されている。本実施形態に係るMG制御部130は特に、回生によって得られた電力の蓄電先が切替えられるように、モータジェネレータMG1及びMG2の回転数をそれぞれ制御する。回生時の具体的な制御方法については、後に詳述する。
【0057】
インバータ制御部140は、本発明の「蓄電制御手段」の一例であり、モータジェネレータMG1又はMG2における回生時において、第1インバータ710又は第2インバータ720(図4参照)の開放を制御する。即ち、バッテリ12から第1インバータ710又は第2インバータ720への直流電力の供給を遮断することが可能とされている。
【0058】
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作について、図6から図8を参照して説明する。ここに図6は、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による一連の動作を示すフローチャートである。また図7は、回生時のモータジェネレータの制御方法を示す共線図(その1)であり、図8は、回生時のモータジェネレータの制御方法を示す共線図(その2)である。
【0059】
図6において、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置900の動作時には、先ず回生判定部110において、回生を行うべき状態であるか否かが判定される(ステップS01)。この判定は、例えば、車速や要求トルク、アクセルのオンオフ等に基づいて行われ、回生を行うべき状態であると判定されると回生要求が出される。
【0060】
回生要求が出されると(ステップS01:YES)、バッテリ状態判定部120において、バッテリ12の蓄電量(即ち、SOCレベル)が、所定の閾値以上であるか否かが判定される(ステップS02)。ここでの閾値は、本発明の「第1閾値」の一例であり、更なる蓄電を行えばバッテリ12が劣化してしまうと考えられる程度に蓄電量が高い状態であるか否かを判定するために設定されている。
【0061】
また、バッテリ状態判定部120では、上述した蓄電量についての判定に代えて、バッテリ12の温度を用いた判定を行うようにしてもよい。この場合、バッテリ状態判定部120では、バッテリ12の温度が、所定の閾値以上であるか否かが判定される。この場合の閾値は、本発明の「第2閾値」の一例であり、入力制限がかかってしまう程度にバッテリ12の温度が高い状態であるか否かを判定するために設定される。
【0062】
以上のように、バッテリ状態判定部120では、回生によって得られた電力をバッテリ12に蓄電すべきか否か(即ち、バッテリ12に回生電力を蓄電することで不都合が発生しないか否か)が判定される。以下では、バッテリ状態判定部120において、蓄電量に対する判定が行われたものとして説明を進める。
【0063】
バッテリ12の蓄電量が所定の閾値以上でないと判定された場合(ステップS02:NO)、通常の回生制御が開始され(ステップS03)、回生によって得られた電力は、バッテリ12へと蓄電される(ステップS09)。一方で、バッテリ12の蓄電量が所定の閾値以上であると判定された場合(ステップS02:YES)、MG制御部130によってモータジェネレータMG1の回転数がゼロになるよう制御される(ステップS04)。即ち、モータジェネレータMG1は動作が停止させられる。
【0064】
図7において、例えば動力分割機構300側の出力回転数と、モータジェネレータMG2側の出力回転数とが同じになるシステムにおいては、動力分割機構300における各部位の回転数が、図中の実線出示すような動作から破線で示すような動作へと切替えられる。即ち、駆動軸500への出力回転数が保たれたまま、キャリアC1の回転数がわずかに上昇し、MG1の回転数がゼロとされる。
【0065】
図8において、例えば動力分割機構300側と、モータジェネレータMG2側とが切り離されるようなシステム(具体的には、例えば動力分割機構300に動力伝達を切り離すクラッチ等を備えるシステム)においては、動力分割機構300における各部位の回転数が、図中の実線出示すような動作から破線で示すような動作へと切替えられる。即ち、キャリアC1の回転数及びMG1の回転数が共にゼロとされる。
【0066】
尚、ここでのMG1は、本発明の「他方の電動機」の一例であり、回生を行わない方のモータジェネレータである。よって、本実施形態における回生は、本発明の「一方の電動機」の一例であるモータジェネレータMG2で行われることになる。
【0067】
図6に戻り、モータジェネレータMG1の回転数がゼロとされると、インバータ制御部140によって、MG1に対応する第1インバータ710が開放される(ステップS05)。即ち、第1インバータ710のスイッチング動作が停止され、バッテリ12から第1インバータ710への直流電力の供給が遮断される。第1インバータ710が開放されると、モータジェネレータMG2による回生が開始される(ステップS06)。
【0068】
ここで本実施形態では特に、上述したように、回生が開始される前に、MG1の回転数がゼロとされると共にMG1に対応する第1インバータ710が開放される。これにより、MG1の負荷はゼロとなり、MG1に対応する第1平滑コンデンサc1の電位が低くなる。より具体的には、MG1に対応する第1平滑コンデンサc1側の電位が、MG2に対応する第2平滑コンデンサc2側及びバッテリ12の電位より低くなる。従って、MG2の回生によって得られた電力は、MG1に対応する第1平滑コンデンサc1に入力される(ステップS07)。
【0069】
ここで仮に、上述したMG1の回転数制御及び第1インバータ710の開放が行われなかったとすると、第1平滑コンデンサc1の電位は十分に低くされない。よって、第1平滑コンデンサc1への効率的な蓄電を実現するためには、例えばコンバータ等を用いて、第1平滑コンデンサc1の電位を強制的に低くするような制御が必要となってしまう。これに対し本実施形態では、MG1及び第1インバータ710を制御するだけで、第1平滑コンデンサc1への効率的な蓄電を実現できる。
【0070】
このように、バッテリ12に代えて第1平滑コンデンサc1への蓄電を可能とすることで、バッテリ12の負担を軽減することができる。具体的には、例えば過大入力時のバッテリ12の保護や、回生電力取りこぼしによる燃費悪化の抑制が実現できる。このような効果を高めるためにも、第1平滑コンデンサc1の容量値は比較的大きなものとされることが好ましい。具体的には、第1平滑コンデンサは、回路において発生し得るサージ電圧を吸収可能な容量値とされることが好ましい。
【0071】
第1平滑コンデンサc1への蓄電が行われている間は、第1平滑コンデンサc1の蓄電量が容量の上限となっていないか監視が行われる(ステップS08)。そして、第1平滑コンデンサc1の蓄電量が容量の上限となっている場合(ステップS08:YES)、回生によって得られた電力の蓄電先が、第1平滑コンデンサc1からバッテリ12へと変更される(ステップS09)。このように、最終的にバッテリ12への蓄電が行われることになったとしても、第1平滑コンデンサc1へ蓄電が行われる分、バッテリ12の負担は確実に軽減される。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置900によれば、コンデンサへの効率的な蓄電を実現することができるため、回生電力の蓄電をより好適に行うことが可能である。
【0073】
尚、上述した実施形態では、モータジェネレータMG2で回生する場合について説明したが、MG1において回生を行うようにしてもよい。この場合、回生前には、MG2の回転数がゼロとなるように制御され、MG2に対応する第2インバータ720が開放される。即ち、第2インバータ720のスイッチング動作が停止され、バッテリ12から第2インバータ720への直流電力の供給が遮断される。その結果、MG1における回生によって得られた電力は、MG2に対応する第2平滑コンデンサc2に蓄電される。
【0074】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置900は、上述したハイブリッド車両1に限定して適用されるものではなく、2つのモータジェネレータ、並びにそれらに対応するインバータ及びコンデンサを備えるハイブリッド車両であれば、どのようなハイブリッド車両にも適用可能である。
【0075】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
1…ハイブリッド車両、10…ハイブリッド駆動装置、11…PCU、12…バッテリ、13…アクセル開度センサ、14…車速センサ、100…ECU、110…回生判定部、120…バッテリ状態判定部、130…MG制御部、140…インバータ制御部、150…制御部、200…エンジン、300…動力分割機構、S1…サンギヤ、C1…キャリア、R1…リングギヤ、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、400…入力軸、500…駆動軸、600…減速機構、710…第1インバータ、720…第2インバータ、730…昇圧コンバータ、810,820,830…電圧センサ、840…電流センサ、c1…第1平滑コンデンサ、c2…第2平滑コンデンサ、cf…フィルタコンデンサ、R…リアクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関、第1電動機及び第2電動機を含む動力要素と、
前記第1電動機及び前記第2電動機の各々に動力としての電力を供給可能であると共に、前記第1電動機及び前記第2電動機の各々で得られた回生電力を蓄電可能な電源手段と、
前記第1電動機及び前記第2電動機の各々に対応するように設けられたインバータ及びコンデンサと
を備えたハイブリッド車両を制御する装置であって、
前記第1電動機及び前記第2電動機のいずれかによって回生を行うべき状態であるか否かを判定する回生判定手段と、
前記回生を行うべき状態であると判定された場合に、前記電源手段の蓄電量が第1閾値以上であるか否か、又は前記電源手段の温度が第2閾値以上であるか否かを判定する電源状態判定手段と、
前記電源手段の蓄電量が前記第1閾値以上である、又は前記電源手段の温度が前記第2閾値以上であると判定された場合に、前記第1電動機及び前記第2電動機のうち一方の電動機で回生を行うように制御すると共に、回生を行わない他方の電動機の回転数をゼロに近づけるように制御する電動機制御手段と、
前記電動機制御手段による制御後に、前記電源手段から前記他方の電動機に対応する前記インバータへの直流電力の供給を遮断し、前記一方の電動機の回生によって得られた電力を、前記他方の電動機に対応する前記コンデンサに蓄電させる蓄電制御手段と
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171403(P2012−171403A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33182(P2011−33182)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】