説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】ポンプ室からポンプ駆動軸の外周面に沿って軸方向に漏洩する油の量を制限することが可能なハイブリッド駆動装置を実現する。
【解決手段】クラッチケースを軸方向一方側で径方向に支持する第一軸受51と、クラッチケースを軸方向他方側で径方向に支持する第二軸受と、を備え、回転電機のロータは、クラッチケースにより支持され、第一軸受51は、外輪51a、内輪51b、及び外輪51aと内輪51bとの間に介在する転動体51cを備え、ポンプ駆動軸10の外周面と駆動軸挿通孔90cの内周面との間の空隙が、ポンプ室18aから第一軸受51へ流れる油の流通路Lとされ、流通路Lが、油の流量を制限する絞り部として機能するように、当該流通路L内におけるポンプ駆動軸10の外周面の径φaと駆動軸挿通孔90cの内周面の径φcとの差である流通路径差が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される第一軸と、変速機構に駆動連結される第二軸と、第一軸と第二軸とを選択的に駆動連結するクラッチと、回転電機と、クラッチ及び回転電機を収容するケースと、を備えたハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなハイブリッド駆動装置として、例えば下記の特許文献1の図7に示された装置が既に知られている。当該特許文献1の図7に示されているように、このハイブリッド駆動装置では、エンジン2(内燃機関)に駆動連結されるエンジンインプットシャフト10(第一軸)と、ベルト式無段変速機(変速機構)に駆動連結されるトランスミッションインプットシャフト45(第二軸)とが、クラッチ49を介して選択的に駆動連結可能に構成されている。クラッチ49は、フロントカバー24とリヤカバー102とを接合してなるケーシング内に収容されている。そして、リヤカバー102が備える円筒部38が、オイルポンプ34のボデー35を貫通してポンプ室に配設されたロータ37と係合するように配設されており、ケーシングの回転によりオイルポンプ34が駆動される。すなわち、円筒部38が、オイルポンプ34を駆動するポンプ駆動軸となっている。なお、円筒部38は、円筒部38の外周面とボデー35の内周面との間に配設されたブッシュによりボデー35に対して回転可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−1127号公報(図7等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の図7に示される構成においては、円筒部38がボデー35を貫通してポンプ室まで延びているとともに、円筒部38の外周面とボデー35の内周面との間には隙間があるため、ポンプ室内において圧力が高められた油の一部は、当該隙間を通って軸方向におけるブッシュ側に漏洩することになる。このような油の漏洩は、ポンプ室から吐出室を介して排出される油の量に影響を与えるため、上記隙間を介した油の漏洩量を制限できる構成とすることが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1には、上記ブッシュに対して軸方向におけるポンプ室とは反対側にオイルシール39を配設することで、モータ・ジェネレータ3(回転電機)が配置されている空間に油が漏洩することを防止することが記載されているものの、ポンプ室から円筒部38の外周面とボデー35の内周面との間の隙間を通って漏洩する油の量を制限することに言及した記載はない。そのため、当然ながら、上記特許文献1には、上記隙間を介した油の漏洩量を制限するための手段について何ら示されていない。
【0006】
そこで、ポンプ室からポンプ駆動軸の外周面に沿って軸方向に漏洩する油の量を制限することが可能なハイブリッド駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、内燃機関に駆動連結される第一軸と、変速機構に駆動連結される第二軸と、前記第一軸と前記第二軸とを選択的に駆動連結するクラッチと、回転電機と、前記クラッチ及び前記回転電機を収容するケースと、を備えたハイブリッド駆動装置の特徴構成は、前記第一軸及び前記第二軸の何れか一方に駆動連結されると共に前記クラッチを収容するクラッチケースと、前記ケースに固定されると共に内部にポンプ室を形成するポンプケースと、前記ポンプ室内に回転可能に配置されるポンプロータとを備え、前記クラッチケースと同軸状に当該クラッチケースに対して軸方向一方側に配置されるオイルポンプと、前記クラッチケースを軸方向一方側で前記ケースに対して径方向に支持する第一軸受と、前記クラッチケースを軸方向他方側で前記ケースに対して径方向に支持する第二軸受と、を備え、前記回転電機のロータは、前記クラッチケースにより支持され、前記第一軸受は、外輪、内輪、及び前記外輪と前記内輪との間に介在する転動体を備え、前記クラッチケースは、軸方向一方側へ延びて前記ポンプロータに駆動連結されるポンプ駆動軸を備え、前記ポンプ駆動軸は、前記第一軸受及び前記ポンプケースを介して前記ケースに支持され、前記ポンプケースは、前記第一軸受と前記ポンプロータとの間を仕切る仕切り壁を備え、前記仕切り壁は、前記ポンプ駆動軸が挿通される駆動軸挿通孔を備え、前記ポンプ駆動軸の外周面と前記駆動軸挿通孔の内周面との間の空隙が、前記ポンプ室から前記第一軸受へ流れる油の流通路とされ、前記流通路が、油の流量を制限する絞り部として機能するように、当該流通路内における前記ポンプ駆動軸の外周面の径と前記駆動軸挿通孔の内周面の径との差である流通路径差が設定されている点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、ポンプ室からポンプ駆動軸の外周面に沿って油が軸方向に漏洩する際の油の経路である流通路が油の流路を制限する絞り部として機能するように、流通路径差が設定されている。よって、ポンプ室からポンプ駆動軸の外周面に沿って軸方向に漏洩する油の量を制限することができ、ポンプ室から吐出室を介して排出される油の量を適切に確保することができる。なお、流通路に油の流量を制限するための専用の部材を配設する必要がないため、ハイブリッド駆動装置の軸方向における大型化やコストの増大を抑制することも可能となっている。
さらに、上記の特徴構成によれば、ポンプ駆動軸を備えるクラッチケースは、第一軸受及び第二軸受により、軸方向の両側でケースに対して径方向に支持されている。さらに、クラッチケースのポンプ駆動軸が設けられる側である軸方向一方側を支持する第一軸受は、外輪、内輪、及び転動体を備えた軸受であり、転動体を備えない軸受に比べ径方向の支持精度が高い軸受が採用されている。よって、クラッチケースを径方向に精度良く支持することが可能な構成となっており、クラッチケースが備えるポンプ駆動軸の外周面の径方向の変位を比較的狭い範囲内に抑えることが容易な構成となっている。また、流通路を径方向に区画するもう一方の部材である駆動軸挿通孔は、ケースに固定されたポンプケースに備えられている。すなわち、ポンプ駆動軸の外周面と駆動軸挿通孔の内周面との間の空隙の径方向幅を、流通路径差に応じて定まる値を中心とした比較的狭い範囲内に維持することが可能な構成となっている。従って、ポンプ駆動軸の外周面と駆動軸挿通孔の内周面との接触を抑制しつつ、流通路径差を流通路が絞り部として適切に機能するような微小な値とすることが容易な構成となっている。
【0009】
ここで、前記流通路径差が、前記第一軸受により支持された前記ポンプ駆動軸が径方向に変位し得る量の最大値より大きく設定されていると共に、前記流通路の流路断面積が、前記仕切り壁と前記ポンプロータとの隙間により形成されて前記流通路に連通するポンプ内流路の流路断面積より小さくなるように、前記流通路径差が設定されていると好適である。
【0010】
この構成によれば、流通路径差が、第一軸受により支持されたポンプ駆動軸が径方向に変位し得る量の最大値より大きく設定されているため、ポンプ駆動軸の外周面と駆動軸挿通孔の内周面との接触を確実に抑制することができる。また、流通路の流路断面積がポンプ内流路の流路断面積より小さいため、吐出室から排出されずにポンプ内流路を流通する油の一部のみを流通路内に排出することが可能な構成となっている。従って、ポンプ駆動軸の外周面と駆動軸挿通孔の内周面との接触を抑制しつつ、流通路を絞り部として適切に機能させることができる。
【0011】
また、前記ポンプ駆動軸は、軸方向一方側が小径部、軸方向他方側が大径部となる段付形状に形成されるとともに、前記駆動軸挿通孔の内周面が前記小径部の外周面と対向するように配置され、前記第一軸受は、前記大径部の外周面に接して配置され、前記大径部の径と前記小径部の径との差をポンプ軸段差幅とし、前記流通路径差は、前記第一軸受により支持された前記ポンプ駆動軸が径方向に変位し得る量の最大値より大きく、前記ポンプ軸段差幅より小さい値に設定されていると好適である。
【0012】
この構成によれば、流通路径差が、第一軸受により支持されたポンプ駆動軸が径方向に変位し得る量の最大値より大きく設定されているため、ポンプ駆動軸の外周面と駆動軸挿通孔の内周面との接触を確実に抑制することができる。また、流通路径差が、ポンプ軸段差幅より小さい値に設定されているため、駆動軸挿通孔の内周面を小径部の外周面に対して径方向外側に近接した位置に配置することが容易な構成となっている。よって、駆動軸挿通孔の内周面と小径部の外周面との間の空隙を微小な空間とすることができ、ポンプ駆動軸の外周面と駆動軸挿通孔の内周面との接触を抑制しつつ、流通路を絞り部として適切に機能させることができる。
【0013】
また、前記ポンプ駆動軸は、前記クラッチに油を供給するための供給油路を内部に備え、前記ポンプケースは、前記ポンプロータに対して軸方向における前記仕切り壁とは反対側に配置されて前記ポンプ室の軸方向一方側を区画する区画壁を備え、前記区画壁と前記ポンプロータとの隙間により形成される区画壁側ポンプ内流路が、前記供給油路と連通していると好適である。
【0014】
この構成によれば、流通路が絞り部として機能することにより当該流通路に排出されなかった油を、クラッチに油を供給するための供給油路に積極的に導くことができる。よって、吐出室から排出されずにポンプ室内を流通する油の排出先を確保することで、流通路に排出される油の量を適切に制限することができるとともに、吐出室から排出されずにポンプ室内を流通する油を有効に利用することができる。
【0015】
また、前記クラッチケースは、前記クラッチの軸方向一方側に配置されて径方向に延びるとともに径方向内側端部に前記ポンプ駆動軸が設けられている一方側径方向延在部と、前記クラッチの軸方向他方側に配置されて径方向に延びる他方側径方向延在部と、前記クラッチの径方向外側に配置されて軸方向に延びる円筒状の軸方向延在部と、を備え、前記回転電機は、前記クラッチケースと同軸状に配置されるとともに、当該回転電機の前記ロータが、前記軸方向延在部の外周面に接して固定され、前記他方側径方向延在部と前記軸方向延在部とは一体的に形成され、前記一方側径方向延在部と前記軸方向延在部とは、溶接により接合されて一体化されており、前記溶接による接合部は、前記ロータの内周面よりも径方向外側に位置すると好適である。
【0016】
この構成によれば、溶接による接合部を、ポンプ駆動軸から径方向に離れた位置とすることができる。よって、溶接時の熱により、ポンプ駆動軸やポンプ駆動軸が径方向内側端部に設けられた一方側径方向延在部が変形するのを抑制することができる。従って、ポンプ駆動軸の外周面と駆動軸挿通孔の内周面との空隙が周方向に不均一になったり、局所的に過大或いは過小になったりすることを抑制することができ、連通路の絞り部としての機能を所望のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の部分断面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るハイブリッド駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。ハイブリッド駆動装置1は、車両の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方を用いるハイブリッド車両用の駆動装置である。このハイブリッド駆動装置1は、いわゆる1モータパラレルタイプのハイブリッド駆動装置として構成されている。
【0019】
本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、図1に示すように、内燃機関に駆動連結される入力軸Iと、回転電機MGと、変速機構TMに駆動連結される中間軸Mと、入力軸Iと中間軸Mとを選択的に駆動連結するクラッチCLと、クラッチCL及び回転電機MGを収容するケース2と、を備えている。このような構成において、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、クラッチケースCHが軸方向の両側でケース2に対して径方向に支持されている点(図2参照)、及び、ポンプ駆動軸10の外周面と駆動軸挿通孔90cの内周面との間の空隙により形成される流通路L(図3参照)が、油の流量を制限する絞り部として機能するように構成されている点に特徴を有する。これにより、ポンプ室18aからポンプ駆動軸10の外周面に沿って軸方向に漏洩する油の量を制限することが可能となっている。以下、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1について、詳細に説明する。
【0020】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、同軸上に配置される入力軸I及び中間軸Mの回転軸を基準として、「軸方向」、「周方向」、「径方向」を定義している。これらの回転軸は、クラッチCLが備える各回転要素、クラッチケースCH、オイルポンプ18が備えるインナロータ18b、及び回転電機MGが備えるロータRoの回転軸に一致している。また、以下の説明では、特に断らない限り、図2における左側を「軸方向一方側」とし、図2における右側を「軸方向他方側」とする。
【0021】
1.ハイブリッド駆動装置の全体構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、このハイブリッド駆動装置1は、車両の第一の駆動力源としての内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、車両の第二の駆動力源としての回転電機MGと、変速機構TMと、回転電機MGに駆動連結されると共に変速機構TMに駆動連結される中間軸Mと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、を備えている。また、ハイブリッド駆動装置1は、入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられるクラッチCLと、カウンタギヤ機構Cと、出力用差動歯車装置DFと、を備えている。これらの各構成は、駆動装置ケースとしてのケース2内に収容されている。本実施形態においては、入力軸I及び中間軸Mが、それぞれ、本発明における「第一軸」及び「第二軸」に相当する。
【0022】
なお、「駆動連結」は、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、「駆動力」はトルクと同義で用いている。また、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0023】
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す装置であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、内燃機関Eのクランクシャフト等の内燃機関出力軸EoがダンパDを介して入力軸Iに駆動連結されている。また、入力軸IはクラッチCLを介して回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結されており、入力軸IはクラッチCLにより選択的に回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結される。このクラッチCLの係合状態では、入力軸Iを介して内燃機関Eと回転電機MGとが駆動連結され、クラッチCLの解放状態では内燃機関Eと回転電機MGとが分離される。
【0024】
回転電機MGは、ステータStとロータRoとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、回転電機MGは、不図示の蓄電装置と電気的に接続されている。本例では、蓄電装置としてバッテリが用いられている。なお、蓄電装置としてキャパシタ等を用いても好適である。回転電機MGは、バッテリから電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関Eが出力するトルクや車両の慣性力により発電した電力をバッテリに供給して蓄電させる。回転電機MGのロータRoは、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。この中間軸Mは、変速機構TMの入力軸(変速入力軸)となっている。
【0025】
変速機構TMは、中間軸Mの回転速度を所定の変速比で変速して変速出力ギヤGへ伝達する装置である。このような変速機構TMとして、本実施形態では、シングルピニオン型及びラビニヨ型の遊星歯車機構とクラッチ、ブレーキ及びワンウェイクラッチ等の複数の係合装置とを備えて構成され、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動変速機構が用いられている。なお、変速機構TMとして、その他の具体的構成を備えた自動変速機構や、変速比を無段階に変更可能な自動の無段変速機構、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた手動式の有段変速機構等を用いても良い。変速機構TMは、各時点における所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、変速出力ギヤGへ伝達する。
【0026】
カウンタギヤ機構Cは、変速出力ギヤGの回転及びトルクを車輪W側へ伝達する。このカウンタギヤ機構Cは、カウンタ軸Csと第一ギヤC1と第二ギヤC2とを有して構成されている。第一ギヤC1は変速出力ギヤGに噛み合っている。第二ギヤC2は、出力用差動歯車装置DFが有する差動入力ギヤDiに噛み合っている。出力用差動歯車装置DFは、差動入力ギヤDiの回転及びトルクを複数の車輪Wに分配して伝達する。本例では、出力用差動歯車装置DFは、互いに噛み合う複数の傘歯車を用いた差動歯車機構とされており、カウンタギヤ機構Cの第二ギヤC2を介して差動入力ギヤDiに伝達されるトルクを分配して、それぞれ出力軸Oを介して左右2つの車輪Wに伝達する。これにより、ハイブリッド駆動装置1は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させる。
【0027】
なお、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1では、入力軸Iと中間軸Mとが同軸上に配置されると共に、カウンタ軸Csと出力軸Oとが、それぞれ入力軸I及び中間軸Mとは異なる軸上に互いに平行に配置されている。このような構成は、例えばFF(Front Engine Front Drive)車両に搭載されるハイブリッド駆動装置1の構成として適している。
【0028】
2.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の各部の構成について説明する。図2に示すように、ケース2は、その内部に収容される回転電機MGや変速機構TM等の各収容部品の外周を覆うケース周壁3と、当該ケース周壁3の軸方向他方側(内燃機関E側)の開口を塞ぐ第一支持壁4と、当該第一支持壁4よりも軸方向一方側(内燃機関Eとは反対側、すなわち変速機構TM側)において軸方向で回転電機MGと変速機構TMとの間に配置される第二支持壁7と、を備えている。更に、このケース2は、ケース周壁3の軸方向一方側端部を塞ぐ端部支持壁(不図示)を備えている。
【0029】
第一支持壁4は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第一支持壁4には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される入力軸Iが第一支持壁4を貫通してケース2内に挿入されている。第一支持壁4は、軸方向一方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部5を一体的に備えている。本例では、第一支持壁4は、入力軸Iが貫通されている部分において、径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向一方側に位置するように、軸方向一方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有する壁部とされている。第一支持壁4は、後述するクラッチケースCHに対して軸方向他方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、第一支持壁4には、その内部に排出油路72が形成された油路形成部材71が、径方向に沿って取り付けられている。
【0030】
第二支持壁7は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第二支持壁7には軸方向の貫通孔が形成されている。具体的には、第二支持壁7は、その径方向内側端部に、軸方向に延びる全体として円筒状(ボス状)の円筒状部7aを一体的に備え、当該円筒状部7aの内周面が、第二支持壁7に形成される上記貫通孔の外縁を規定している。この円筒状部7aは、後述するように、レゾルバ19のセンサステータを固定するためのレゾルバ固定部として機能するとともに、オイルポンプ18のポンプケース8(本例では、ポンプボディ90)を径方向に位置決めする位置決め部としても機能する。また、第二支持壁7は、クラッチケースCHに対して軸方向一方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。
【0031】
オイルポンプ18は、径方向に関して、第二支持壁7の径方向内側に備えられている。また、オイルポンプ18は、軸方向に関して、変速機構TMとクラッチケースCHとの間、言い換えれば、変速機構TMと回転電機MGとの間に備えられている。オイルポンプ18は、入力軸I及び中間軸Mと同軸状に配置されている。また、後述するように、クラッチケースCHも、入力軸I及び中間軸Mと同軸状に配置されている。そして、変速機構TMは、クラッチケースCHに対して軸方向一方側に配置されている。よって、オイルポンプ18は、クラッチケースCHと同軸状に当該クラッチケースCHに対して軸方向一方側に配置されているといえる。
【0032】
オイルポンプ18は、ケース2に固定されると共に内部にポンプ室18aを形成するポンプケース8と、ポンプ室18a内に回転可能に配置されるインナロータ18bと、同じくポンプ室18a内に回転可能に配置されるアウタロータ18cと、を備えている。ポンプケース8は、軸方向他方側に配置されるポンプボディ90と、軸方向一方側に配置されるポンプカバー91とを、互いに接合することで形成されている。そして、ポンプケース8(具体的には、ポンプカバー90とポンプケース91との双方)には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される中間軸Mがポンプケース8(オイルポンプ18)を貫通している。本実施形態では、インナロータ18bが、本発明における「ポンプロータ」に相当する。
【0033】
ポンプボディ90は、径方向及び周方向に延在する円環板状部材とされ、軸方向他方側端部に、軸方向他方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部90bを一体的に備えている。このような軸方向突出部90bを備えることで、ポンプボディ90は、軸方向他方側が全体として円筒状に膨出した形状とされ、軸方向においてクラッチケースCH及び回転電機MG側に突出した形状を有する。また、ポンプボディ90の軸方向一方側端面には、ポンプ室18aを形成するための凹部が、軸方向から見て断面円形状に形成されている。
【0034】
ポンプボディ90は、図2に示すように、当該ポンプボディ90の外周面が第二支持壁7の円筒状部7aの内周面に嵌合することで径方向に位置決めされている。具体的には、ポンプボディ90は、当該ポンプボディ90の外周面と円筒状部7aの内周面とが対向するように配置され、ポンプボディ90の外周面と円筒状部7aの内周面との間には第四シール部材64が介装されている。本例では、第四シール部材64は、Oリングとされており、ポンプボディ90の外周面に形成された周方向に延びる凹溝に装着されている。このように第四シール部材64を間に介在させることで、ポンプボディ90の外周面と第二支持壁7の円筒状部7aの内周面との間が油密状(液密状)にシールされることになる。すなわち、ポンプボディ90は、円筒状部7aに対して第四シール部材64を介して油密状に内嵌されて、第二支持壁7に位置決め保持されている。
【0035】
ポンプカバー91は、径方向及び周方向に延在する円環板状部材とされている。そして、ポンプボディ90の軸方向一方側端面とポンプカバー91の軸方向他方側端面とが接合されることで、ポンプボディ90及びポンプカバー91の内部に、インナロータ18b及びアウタロータ18cを収容するためのポンプ室18aが形成されている。具体的には、ポンプ室18aは、ポンプボディ90が備える上記の断面円形状の凹部と、ポンプカバー91の軸方向他方側端面により形成されている。本例では、ポンプボディ90とポンプカバー91とは不図示の締結ボルトにより互いに締結固定されている。また、ポンプカバー91が締結ボルト81によりケース2に対して締結固定されることで、ポンプケース8はケース2に対して固定されている。
【0036】
本実施形態においては、オイルポンプ18は、インナロータ18bとアウタロータ18cとを有する内接型のギヤポンプとされている。これらのインナロータ18bとアウタロータ18cとは、上記のポンプ室18a内に、互いに偏心された状態で回転可能に収容されている。インナロータ18bは、中間軸Mと同軸配置されたポンプギヤであり、その径方向の中心部で後述するポンプ駆動軸10と一体回転するように駆動連結されている。本例では、図3に示すように、インナロータ18bの内周面から突出した一対のキー18dが、ポンプ駆動軸10の軸方向一方側端部に形成されたキー溝10dに係合して、インナロータ18bとポンプ駆動軸10とが駆動連結されている。なお、インナロータ18bとポンプ駆動軸10とがスプライン連結された構成とすることもできる。そして、詳細は後述するが、ポンプ駆動軸10は、クラッチケースCHを構成する部材(一方側径方向延在部45)に一体的に備えられており、クラッチケースCHと一体回転する。
【0037】
クラッチケースCHの回転に伴い、オイルポンプ18は吸入室92からポンプ室18aに油を吸入して油圧を発生させ、不図示の吐出室に油を吐出する。そして、吐出室に吐出された油は、クラッチCLや変速機構TM等に供給される。すなわち、オイルポンプ18は、クラッチCL及び変速機構TMを動作させるための油圧を発生する。なお、ポンプケース8(ポンプボディ90、ポンプカバー91)及び中間軸M等の内部には、それぞれ油路が形成されており、オイルポンプ18により吐出された油は、不図示の油圧制御装置及びこれらの油路を流通して、油供給対象となる各部位に供給される。
【0038】
そして、本実施形態では、図2に示すように、径方向及び周方向に延在する第二支持壁7と、同じく径方向及び周方向に延在するポンプケース8(ポンプボディ90、ポンプカバー91)とにより、ケース2内の空間が軸方向に区画されている。すなわち、第二支持壁7とポンプケース8とが協同で、径方向及び周方向に延在する壁部を形成し、この壁部によりケース2内の空間が軸方向に区画されている。ここで、ケース内におけるこの壁部に対して軸方向他方側に位置する空間を第一室とし、軸方向一方側に位置する空間を第二室とすると、クラッチCLと回転電機MGとレゾルバ19とは第一室に収容されており、変速機構TMは第二室に収容されているといえる。なお、本実施形態では、上記のように、ポンプボディ90の外周面と第二支持壁7の円筒状部7aの内周面との間は油密状にシールされているため、第一室と第二室との間での油路を介さない油の流通は基本的には禁止されている。これにより、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、第一室内におけるクラッチケースCHの内部を除く空間を、油が流通しないドライ状態とすることが可能な構成となっている。
【0039】
ところで、後述するように、ポンプケース8(ポンプボディ90)は、第一軸受51を介してクラッチケースCHを支持している。そして、この第一軸受51には、ポンプ室18aからポンプボディ90とポンプ駆動軸10との間を通って軸方向他方側に漏洩する油が供給される。ポンプボディ90及びポンプカバー91には、第一軸受51を潤滑した油を排出するための排出油路9が形成されている。なお、ポンプ室18aから軸方向他方側に漏洩する油の量に応じて、オイルポンプ18から図示しない吐出室を介して排出される油の量が減少するため、ポンプ室18aからの油の漏洩量は、第一軸受51を適切に潤滑できる程度の量に制限することが望ましい。本発明では、油の漏洩量を制限するための専用の部材(シール部材等)を配置することなく、ポンプ室18aから軸方向他方側に漏洩する油の量を制限することが可能となっている。この点については、第3節で詳細に説明する。
【0040】
入力軸Iは、内燃機関Eのトルクをハイブリッド駆動装置1に入力するための軸であり、軸方向他方側端部において内燃機関Eに駆動連結されている。ここで、入力軸Iは、第一支持壁4を貫通する状態で配設されており、図2に示すように、第一支持壁4の軸方向他方側でダンパDを介して内燃機関Eの内燃機関出力軸Eoと一体回転するように駆動連結されている。ダンパDは、内燃機関出力軸Eoの捩れ振動を減衰させつつ、当該内燃機関出力軸Eoの回転を入力軸Iに伝達する装置であり、各種公知のものを用いることができる。本実施形態では、ダンパDは、周方向に沿って配置された複数のコイルスプリングを有して構成されており、内燃機関出力軸Eoに固定されるドライブプレートDPに固定一体化されると共に、入力軸Iにスプライン連結されている。ダンパDは、全体としてドライブプレートDPよりも小径に形成されており、ドライブプレートDPの軸方向一方側に配置されている。また、入力軸Iと第一支持壁4とに亘って、これらの間を液密状態として軸方向他方側(ダンパD及び内燃機関E側)への油の漏出を抑制するための第三シール部材63が配設されている。
【0041】
本実施形態では、入力軸Iの軸方向一方側端部の内径部には、軸方向に延びる軸端孔部12が形成されている。この軸端孔部12には、中間軸Mの軸方向他方側端部が軸方向に進入される。また、入力軸Iは、その軸方向一方側端部に、当該入力軸Iの本体部(軸方向に延びる部分)から径方向に延びるフランジ部11を一体的に備えている。フランジ部11は、クラッチケースCH内に進入して、当該クラッチケースCH内に収容されるクラッチCLのクラッチハブ21に連結されている。フランジ部11の軸方向他方側には、第四軸受54が配設されると共に、フランジ部11の径方向外側であってかつクラッチCLが有するクラッチハブ21の軸方向一方側には、第三軸受53が配設されている。
【0042】
中間軸Mは、回転電機MGのトルク及びクラッチCLを介する内燃機関Eのトルクの一方又は双方を変速機構TMに入力するための軸であり、クラッチケースCHにスプライン連結されている。図2に示すように、この中間軸Mは、オイルポンプ18を貫通する状態で配設されている。上記のとおり、ポンプケース8の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔を介して中間軸Mがオイルポンプ18を貫通している。中間軸Mは、オイルポンプ18に対して回転可能な状態で径方向に支持されている。言い換えれば、オイルポンプ18のポンプケース8は、変速機構TMの入力軸(変速入力軸)である中間軸Mを回転可能に支持している。また、中間軸Mの軸方向他方側端部は入力軸Iの軸端孔部12に軸方向に進入されている。このとき、中間軸Mの軸方向他方側の端面と入力軸Iの軸端孔部12における軸方向の底部を規定する面との間には、所定の隙間が形成されている。本実施形態においては、中間軸Mはその内径部に供給油路15及び排出油路16を含む複数の油路を有する。供給油路15は、中間軸Mの軸方向他方側において、軸方向に延びると共にクラッチCLの作動油室37に連通するように軸方向の所定位置で径方向に延びて中間軸Mの外周面に開口している。排出油路16は、中間軸Mの軸方向他方側において、供給油路15とは周方向の異なる位置を軸方向に延びて軸方向他方側の端面に開口している。
【0043】
クラッチCLは、上記のとおり入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられ、内燃機関Eと回転電機MGとを選択的に駆動連結する摩擦係合装置である。本実施形態では、クラッチCLは、油が供給される空間内で動作する湿式多板クラッチ機構として構成されている。図2に示すように、クラッチCLは、入力側部材であるクラッチハブ21、出力側部材であるクラッチドラム26、複数の摩擦プレート31、及びピストン36を備えて構成されている。
【0044】
クラッチハブ21は、円筒状に形成され複数の摩擦プレート31を径方向内側から保持する円筒状部22と、当該円筒状部22の軸方向他方側端部から径方向内側に延びる円環板状部24と、を有する。クラッチハブ21は、入力軸Iと一体回転するように当該入力軸Iのフランジ部11に連結されており、クラッチドラム26に対して径方向内側に配置されている。上記のように、入力軸Iは内燃機関Eに駆動連結されている。よって、クラッチハブ21は、入力軸Iを介して内燃機関Eに駆動連結されている。クラッチドラム26は、円筒状に形成されており、複数の摩擦プレート31を径方向外側から保持している。クラッチドラム26は、クラッチケースCHを介して中間軸Mと一体回転するように連結されている。上記のように、中間軸Mは変速機構TMに駆動連結されている。よって、クラッチドラム26は、クラッチケースCH及び中間軸Mを介して変速機構TMに駆動連結されている。言い換えれば、中間軸Mは、クラッチドラム26と変速機構TMとを駆動連結している。クラッチハブ21及びクラッチドラム26に、複数の摩擦プレート31が、それぞれ軸方向に摺動自在に保持されている。複数の摩擦プレート31に対して軸方向他方側には、当該複数の摩擦プレート31同士を係合させる際の押さえ部材として機能するバッキングプレート32が保持されている。このバッキングプレート32は、スナップリング33により軸方向の移動が規制された状態で保持されている。ピストン36は、リターンスプリングにより軸方向一方側に付勢された状態で複数の摩擦プレート31に対して軸方向一方側に配置されている。
【0045】
本実施形態では、クラッチドラム26と一体化されたクラッチケースCHとピストン36との間には液密状態の作動油室37が形成される。作動油室37は、クラッチCLの係合状態(完全係合、完全解放、又はこれらの間の部分係合)を制御するための油室である。この作動油室37には、オイルポンプ18により吐出され、不図示の油圧制御装置により所定の油圧に調整された圧油が、中間軸Mに形成された供給油路15及びクラッチケースCHに形成された連絡油路48を介して供給される。作動油室37の油圧が上昇してリターンスプリングの付勢力よりも大きくなると、ピストン36は作動油室37の容積を広げる方向(本例では、軸方向他方側)に移動して、バッキングプレート32との協働により複数の摩擦プレート31同士を互いに係合させる。その結果、入力軸Iから伝達された内燃機関EのトルクがクラッチCLを介して回転電機MG及び中間軸Mに伝達される。一方、ピストン36に対して作動油室37とは反対側には、循環油室38が形成される。循環油室38は、主にクラッチCLを冷却するための油が循環する油室である。この循環油室38には、オイルポンプ18により吐出され、不図示の油圧制御装置により所定の油圧に調整された圧油が、クラッチケースCH及びポンプ駆動軸10の双方に軸方向に連続して形成された循環油路47を介して供給される。すなわち、ポンプ駆動軸10は、クラッチCLに油を供給するための油路である循環油路47を内部に備えている。本実施形態では、循環油路47が、本発明における「供給油路」に相当する。
【0046】
クラッチケースCHは、クラッチCLを収容するケースであり、軸方向一方側へ延びてインナロータ18bに駆動連結されるポンプ駆動軸10を備えている。クラッチケースCHは、入力軸Iに対して相対回転すると共に中間軸Mと一体回転する状態で、入力軸Iと中間軸Mとに亘って配設されている。すなわち、本実施形態では、クラッチケースCHは、入力軸I及び中間軸Mの内の中間軸Mに駆動連結されている。そして、クラッチケースCHは、同軸上に配置される入力軸I及び中間軸Mの径方向外側で、クラッチCLの軸方向両側及び径方向外側を包囲してクラッチCLを収容している。そのため、クラッチケースCHは、クラッチCLの軸方向他方側に配置されて径方向に延びる他方側径方向延在部41と、クラッチCLの軸方向一方側に配置されて径方向に延びる一方側径方向延在部45と、クラッチCLの径方向外側に配置されて軸方向に延びる円筒状の軸方向延在部49と、を有して構成されている。軸方向延在部49は、一方側径方向延在部45と他方側径方向延在部41とをこれらの径方向外側端部で軸方向に連結している。
【0047】
他方側径方向延在部41は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。他方側径方向延在部41は、循環油室38の軸方向他方側を区画している。他方側径方向延在部41の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される入力軸Iが他方側径方向延在部41を貫通してクラッチケースCH内に挿入されている。他方側径方向延在部41は、その径方向内側端部に、軸方向他方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部42を一体的に備えている。軸方向突出部42は、入力軸Iの周囲を取り囲むように形成されている。軸方向突出部42と入力軸Iとの間には第五軸受55が配設されている。他方側径方向延在部41における軸方向突出部42を除く部分を本体部とすると、本例では、他方側径方向延在部41の本体部は、全体として径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向一方側に位置するように、軸方向一方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有する部材とされている。
【0048】
他方側径方向延在部41は、第一支持壁4に対して軸方向一方側に所定間隔を空けて隣接すると共に、軸方向突出部42が第一支持壁4の軸方向突出部5に対して径方向内側に所定間隔を空けて隣接する状態で配置されている。更に、他方側径方向延在部41は、クラッチハブ21及び入力軸Iのフランジ部11に対して軸方向他方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。そして、軸方向突出部42と第一支持壁4の軸方向突出部5とに亘って、第二軸受52と、これらの間を液密状態として軸方向一方側(回転電機MG側)への油の漏出を抑制するための第二シール部材62と、が配設されている。すなわち、第二軸受52は、クラッチケースCHを構成する他方側径方向延在部41を、非回転部材であるケース2に対して相対回転可能に支持している。第二軸受52は、図2に示すように、軸方向突出部42の外周面に形成された段差部42a(外径が変化する部分)に軸方向他方側から当接する状態で配設されている。
【0049】
本実施形態では、第二軸受52は、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に介在する転動体とを備えた軸受(ころがり軸受)とされている。具体的には、第二軸受52は、転動体が玉である玉軸受とされており、径方向荷重及び軸方向荷重の双方を受けることが可能に構成されている。すなわち、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、クラッチケースCHを軸方向他方側でケース2に対して径方向及び軸方向に支持する第二軸受52を備えている。そして、図2に示すように、第二軸受52は、他方側径方向延在部41(具体的には、他方側径方向延在部41の径方向外側部分)と軸方向に重複して配置されている。言い換えれば、第二軸受52は、径方向から見て他方側径方向延在部41(具体的には、他方側径方向延在部41の径方向外側部分)と重複して配置されている。第二軸受52は、少なくともクラッチケースCHを軸方向他方側で径方向に支持できるものであれば良く、玉軸受以外の軸受としても良い。例えば、第二軸受52を、転動体をころとしたころ軸受とすることができる。なお、本明細書では、2つの部材の配置に関して、ある方向に「重複」とは、当該方向の配置に関して2つの部材が同じ位置となる部分を少なくとも一部に有することを指す。
【0050】
軸方向延在部49は、クラッチCLの径方向外側を包囲する円筒型の形状を有し、本実施形態では他方側径方向延在部41の径方向外側端部から軸方向一方側に向かって延在している。軸方向延在部49は、循環油室38の径方向外側を区画している。本例では、軸方向延在部49は他方側径方向延在部41と一体的に形成されている。また、本実施形態では、軸方向延在部49は、クラッチドラム26の径方向外側に、当該クラッチドラム26との間に所定間隔を空けて配置されている。すなわち、軸方向延在部49の内周面とクラッチドラム26の外周面とが径方向に所定間隔を空けて対向するように、軸方向延在部49が配置されている。
【0051】
また、軸方向延在部49は、図2に示すように、軸方向一方側に向かうに従って全体として径方向外側に段階的に向かう段付形状に形成されている。そして、軸方向延在部49における軸方向他方側に位置する部分の外周面が、回転電機MGのロータRoの内周面を径方向内側から当接支持する第一当接部49aとされている。すなわち、本例では、回転電機MGのロータRoは、クラッチケースCHにより支持されている。また、軸方向延在部49における第一当接部49aに対して軸方向一方側に位置する部分の内周面が、一方側径方向延在部45の外周面と当接する第二当接部49bとされている。なお、本実施形態では、第二当接部49bは、第一当接部49aに対して径方向外側に位置する。
【0052】
一方側径方向延在部45は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。一方側径方向延在部45は、ピストン36よりも径方向内側部分及び作動油室37よりも径方向外側部分で、循環油室38の軸方向一方側を区画している。一方側径方向延在部45の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される中間軸Mが一方側径方向延在部45を貫通してクラッチケースCH内に挿入されている。一方側径方向延在部45は、その径方向内側端部に、軸方向一方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部46を一体的に備えている。軸方向突出部46は、中間軸Mの周囲を取り囲むように形成されている。一方側径方向延在部45(軸方向突出部46)は、径方向内側端部においてその内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。一方側径方向延在部45における軸方向突出部46を除く部分を本体部とすると、本例では、一方側径方向延在部45の本体部は、全体として径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向他方側に位置するように、径方向内側部分が径方向外側部分に対して軸方向他方側にオフセットされた形状を有する板状部材とされている。
【0053】
一方側径方向延在部45の径方向内側端部には、軸方向一方側へ延びてインナロータ18bに駆動連結されるポンプ駆動軸10が設けられている。本例では、図2に示すように、ポンプ駆動軸10は、一方側径方向延在部45に一体的に形成されており、具体的には、ポンプ駆動軸10の軸方向他方側端部と軸方向突出部46の軸方向一方側端部とが一体的に連結されている。そして、ポンプ駆動軸10は、中間軸Mと一体回転するようにスプライン連結されている。なお、図2に示すように、軸方向突出部46の外径は、ポンプ駆動軸10の外径よりも大きい。そのため、軸方向突出部46とポンプ駆動軸10との境界である連結部において、軸方向突出部46の軸方向一方側端面が形成する円環状の面と、ポンプ駆動軸10の外周面が形成する円筒状の面とが、互いに直交する位置関係で形成されており、後述する第一軸受51を適切に固定することが可能となっている。
【0054】
一方側径方向延在部45は、第二支持壁7及びオイルポンプ18(ポンプボディ90)に対して軸方向他方側に所定間隔を空けて隣接すると共に、軸方向突出部46及びポンプ駆動軸10がポンプボディ90が備える軸方向突出部90bに対して径方向内側に所定間隔を空けて隣接する状態で配置されている。更に、一方側径方向延在部45は、その径方向内側の部位においてクラッチハブ21及び入力軸Iのフランジ部11に対して軸方向一方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。そして、ポンプ駆動軸10とポンプボディ90の軸方向突出部90bとに亘って第一軸受51が配設され、軸方向突出部46とポンプボディ90の軸方向突出部90bとに亘って、これらの間を液密状態として軸方向他方側(回転電機MG側)への油の漏出を抑制するための第一シール部材61が配設されている。すなわち、ポンプ駆動軸10は、第一軸受51を介してポンプボディ90(ポンプケース8)に支持されている。なお、上述したように、ポンプケース8はケース2に対して固定されている。よって、ポンプ駆動軸10は、第一軸受51及びポンプケース8を介してケース2に支持されている。第一軸受51は、図2に示すように、軸方向突出部46の軸方向一方側端面に軸方向一方側から当接する状態で配設されている。
【0055】
なお、上記のように、ポンプ駆動軸10は、クラッチケースCHを構成する一方側径方向延在部45と一体的に形成されているため、一方側径方向延在部45は、第一軸受51を介してポンプボディ90(ポンプケース8)に支持されているといえる。すなわち、第一軸受51は、クラッチケースCHを構成する一方側径方向延在部45を、非回転部材であるポンプケース8及び当該ポンプケース8が固定されたケース2に対して相対回転可能に支持している。
【0056】
本実施形態では、第一軸受51は、外輪51aと、内輪51bと、外輪51aと内輪51bとの間に介在する転動体51cとを備えた軸受(ころがり軸受)とされている(図3参照)。具体的には、第一軸受51は、転動体が玉である玉軸受とされており、径方向荷重及び軸方向荷重の双方を受けることが可能に構成されている。すなわち、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、クラッチケースCHを軸方向一方側でケース2に対して径方向及び軸方向に支持する第一軸受51を備えている。以上より、本例では、クラッチケースCHは、第一軸受51及び第二軸受52により、軸方向の両側でケース2に対して径方向及び軸方向に支持されている。そして、第一軸受51及び第二軸受52の双方が、外輪と内輪と転動体とを備えたころがり軸受(本例では、玉軸受)とされている。これにより、クラッチケースCHを径方向に精度良く支持することが可能な構成となっており、クラッチケースCHが備えるポンプ駆動軸10の外周面の径方向の変位を比較的狭い範囲内に抑えることが容易な構成となっている。
【0057】
なお、第一軸受51の外輪51aは、軸方向突出部90bの内周面に嵌合(本例では、圧入によるしまりばめ)されて径方向に位置決め固定されており、内輪51bは、ポンプ駆動軸10の外周面に嵌合(本例では、外輪51aの嵌合に比べてしめしろの小さなしまりばめ、又はすきまばめ)されて径方向に位置決め固定されている。また、図2に示すように、第一軸受51は、一方側径方向延在部45(具体的には、一方側径方向延在部45の径方向外側部分)と軸方向に重複して配置されている。言い換えれば、第一軸受51は、径方向から見て一方側径方向延在部45(具体的には、一方側径方向延在部45の径方向外側部分)と重複して配置されている。第一軸受51は、少なくともクラッチケースCHを軸方向一方側で径方向に支持できるものであれば良く、玉軸受以外のころがり軸受としても良い。例えば、第一軸受51を、転動体をころとしたころ軸受とすることができる。
【0058】
また、一方側径方向延在部45は、径方向外側端部の近傍において軸方向延在部49の軸方向一方側の部位と連結されている。具体的には、一方側径方向延在部45は、図2に示すように、軸方向延在部49の第二当接部49bに嵌合(本例では、圧入によるしまりばめ)された状態で、溶接により接合されている。すなわち、一方側径方向延在部45と軸方向延在部49とは、溶接により接合されて一体化されている。なお、溶接は、軸方向延在部49の内周面(第二当接部49b)と一方側径方向延在部45の外周面との当接部位に対して軸方向一方側から行われるため、溶接による接合部85は、第二当接部49bと同一の径方向位置を中心に形成される。上記のように、第二当接部49bは、ロータRoの内周面を径方向内側から当接支持する第一当接部49aに対して径方向外側に位置する。よって、接合部85は、ロータRoの内周面よりも径方向外側に位置することになる。これにより、溶接による接合部85を、ポンプ駆動軸10から径方向に離れた位置とすることができ、溶接時の熱により、ポンプ駆動軸10やポンプ駆動軸10が径方向内側端部に設けられた一方側径方向延在部45が変形するのが抑制されている。
【0059】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、一方側径方向延在部45の径方向外側部位と軸方向延在部49の軸方向一方側部位とは、互いに径方向に対向する面と、互いに軸方向に対向する面と、の双方の面が当接した状態で溶接により接合されている。これにより、溶接時の熱が、一方側径方向延在部45と軸方向延在部49とのいずれか一方の部材のみに集中して伝熱されることが抑制されており、一方側径方向延在部45や軸方向延在部49の温度が過大になって変形するのが抑制されている。なお、軸方向延在部49の熱容量が一方側径方向延在部45の熱容量よりも大きく形成されていると、溶接時の熱の多くを軸方向延在部49に逃がすことができるので好適である。
【0060】
なお、本実施形態においては、この一方側径方向延在部45にクラッチドラム26が一体的に形成されている。より具体的には、一方側径方向延在部45の径方向外側端部近傍において、当該一方側径方向延在部45から軸方向他方側に向かって延在するように円筒状のクラッチドラム26が一体形成されている。また、本実施形態においては、一方側径方向延在部45の径方向内側部分とピストン36との間に作動油室37が形成されている。また、一方側径方向延在部45には、供給油路15と作動油室37とを連通するように、径方向に対して軸方向他方側に向かって僅かに傾斜しつつ全体として径方向に延びる連絡油路48が、軸方向突出部46に形成されている。
【0061】
クラッチケースCHの内部に形成される空間のうち、作動油室37を除いた大部分を占める空間が、先に説明した循環油室38となる。そして、本実施形態においては、オイルポンプ18により吐出されて所定の油圧に調整された油が、ポンプ駆動軸10及び軸方向突出部46内を軸方向に延びるように形成された循環油路47を介して循環油室38に供給される。本実施形態においては、他方側径方向延在部41に形成された軸方向突出部42と入力軸Iとの間に配設される第五軸受55は、ある程度の液密性が確保可能に構成されたシール機能付軸受(ここでは、シールリング付ニードルベアリング)とされている。更に、一方側径方向延在部45(軸方向突出部46)は、径方向内側端部においてその内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。そのため、循環油路47を介して油が循環油室38に供給されることにより、クラッチケースCH内の循環油室38は、基本的には常時油で満たされた状態となる。
【0062】
なお、基本的には常時油で満たされた状態を維持しながらも、循環油室38には油が流通する。この流れを、図2において破線矢印で示している。すなわち、循環油路47から循環油室38に供給された油は、まず一方側径方向延在部45とフランジ部11との間、及びピストン36とクラッチハブ21との間を通って径方向外側に向かって流れ、複数の摩擦プレート31の冷却を行う。そして、複数の摩擦プレート31の冷却を行った油は、クラッチハブ21及びフランジ部11と他方側径方向延在部41との間を通って径方向内側に向かって流れ、フランジ部11の基端部に到達する。その後、油は、循環油室38から排出される。これにより、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1では、クラッチCLに備えられる複数の摩擦プレート31を、循環油室38に常時満たされる多量の油で効果的に冷却することが可能となっている。
【0063】
さらに、詳細な説明は省略するが、本実施形態では、径方向内側から供給される油を効率的に摩擦プレート31間の隙間に導入すべく、クラッチハブ21の円筒状部22には、径方向に貫通する貫通孔23(本例ではスリット状貫通孔)が形成されている。また、摩擦プレート31間の隙間に導入された油を当該隙間から適切に排出すべく、クラッチドラム26には、径方向に貫通する貫通孔27(本例ではスリット状貫通孔)が形成されている。これにより、径方向内側から供給される油は効率的に摩擦プレート31間の隙間に導入され、複数の摩擦プレート31の冷却効率を向上させることが可能となっている。なお、油が同時に周方向に流れる場合も当然あり得るが、油の主な流れは上記のようになる。
【0064】
図2に示すように、本例では、循環油室38からの油の排出経路は2系統に分かれている。第一の排出経路は、入力軸Iの外周面に開口する径方向の連通孔及び中間軸Mの内径部に形成された排出油路16を介するものである。本実施形態では、中間軸Mの軸方向他方側端部の外径は入力軸Iの軸端孔部12の内径よりも僅かに小さくなるように形成されており、また中間軸Mの軸方向他方側の端面と入力軸Iの軸端孔部12における軸方向の底部を規定する面との間には、所定の隙間が形成されている。これにより、入力軸Iに形成される径方向の連通孔を通って循環油室38から排出される油を、中間軸Mと入力軸Iの軸端孔部12との間に形成される径方向の隙間及び軸方向の隙間を介して排出油路16へと適切に導くことが可能となっている。第二の排出経路は、第五軸受55から軸方向に漏出する油を対象とし、第一支持壁4に取り付けられた油路形成部材71の内部の排出油路72を介するものである。このような第二の排出経路は、入力軸Iと第一支持壁4との間に配設される第三シール部材63、及びクラッチケースCHの軸方向突出部42と第一支持壁4の軸方向突出部5との間に配設される第二シール部材62により画定される。これにより、第五軸受55から軸方向に漏出する油を、排出油路72へと適切に導くことが可能となっている。
【0065】
図2に示すように、回転電機MGは、クラッチケースCHの径方向外側に、中間軸Mと同軸配置されている。回転電機MGは、ケース2に固定されたステータStと、このステータStの径方向内側に回転自在に支持されたロータRoと、を有する。すなわち、回転電機は、ロータRoをステータStに対して径方向内側に備えている。ステータStは、円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体として構成されて第一支持壁4に固定されるステータコアと、当該ステータコアに巻装されるコイルと、を備えている。なお、コイルのうち、ステータコアの軸方向両側に突出する部分がコイルエンド部Ceである。回転電機MGのロータRoは、円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体として構成されたロータコアと、当該ロータコアに埋め込まれた永久磁石と、を備えている。
【0066】
本実施形態においては、回転電機MGは、クラッチケースCHと軸方向に重複して、クラッチケースCHと同軸状に配置されている。すなわち、回転電機MGは、径方向から見てクラッチケースCHと重複して配置されている。本例では特に、回転電機MGのロータRoが、クラッチケースCHを構成する軸方向延在部49の外周部に固定されている。具体的には、回転電機MGのロータRoは、軸方向延在部49が備える上記の第一当接部49aに固定されている。すなわち、ロータRoのロータコアを構成する複数の電磁鋼板のそれぞれの内周面が、軸方向延在部49の外周面(第一当接部49a)に接した状態で固定されている。これにより、クラッチケースCHはロータRoを支持するロータ支持部材としても機能し、本実施形態ではクラッチケースCHとロータ支持部材とが共通化されて形成されていることになる。なお、上記のようにクラッチケースCHは、第一軸受51及び第二軸受52により、軸方向の両側でケース2に対して径方向及び軸方向に支持されている。さらに、第一軸受51及び第二軸受52の双方は、外輪と内輪と転動体とを備えたころがり軸受(本例では、玉軸受)とされている。これにより、回転電機MGのロータRoを高精度に支持することが可能となっている。そして、上記のように、クラッチドラム26は、このように回転電機MGのロータRoと一体回転するクラッチケースCHに一体的に形成されている。すなわち、回転電機MGは、クラッチケースCHを介して、クラッチCLの出力側部材であるクラッチドラム26に駆動連結されている。
【0067】
また、本実施形態においては、第一支持壁4の軸方向他方側に所定の隙間を空けて、ダンパDが配置されている。ダンパDは、軸方向一方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有して形成された第一支持壁4の、軸方向他方側から見て軸方向一方側に引退した空間に配置されている。本例では、更にダンパDは、回転電機MGのステータStの軸方向他方側(内燃機関E側)のコイルエンド部Ceの径方向内側に、当該コイルエンド部Ceと軸方向に重複して配置されている。すなわち、ダンパDは、径方向から見てコイルエンド部Ceと重複して配置されている。
【0068】
そして、回転電機MGのステータStに対するロータRoの回転角度(回転位相)を検出するためのセンサであるレゾルバ19(回転センサの一例)が、ケース2内に配置されている。本実施形態においては、図2に示すように、レゾルバ19は、クラッチケースCHの軸方向一方側で、ケース2の第二支持壁7及び一方側径方向延在部45の双方に隣接して配置されている。本例では、レゾルバ19は、センサステータをセンサロータに対して径方向内側に備えたアウタロータ型のレゾルバとされている。そして、第二支持壁7が備える円筒状部7aにレゾルバ19のセンサステータが固定され、軸方向延在部49の軸方向一方側端部の内周面にレゾルバ19のセンサロータが固定されている。
【0069】
3.ポンプ室からの油の漏洩抑制構造
上述したように、クラッチケースCHを軸方向一方側で径方向(本例では、径方向及び軸方向)に支持する第一軸受51には、ポンプ室18aからポンプボディ90とポンプ駆動軸10との間を通って軸方向他方側に漏洩した油が供給されるが、本発明では、油の漏洩を制限するための専用の部材(シール部材等)を配置することなく、ポンプ室18aから軸方向他方側に漏洩する油の量を制限することが可能となっている。ここでは、本実施形態に係るポンプ室18aからの油の漏洩抑制構造について、図3に基づいて詳細に説明する。
【0070】
図3に示すように、ポンプケース8(本例では、ポンプボディ90)は、第一軸受51とインナロータ18bとの間を仕切る仕切り壁90aを備えている。すなわち、ポンプ室18aは、仕切り壁90aにより軸方向他方側を区画されている。また、ポンプ室18aの軸方向一方側は、ポンプケース8(本例では、ポンプカバー91)が備える区画壁91aにより区画されている。区画壁91aは、インナロータ18bに対して軸方向における仕切り壁90aとは反対側に配置されている。仕切り壁90aは、ポンプ駆動軸10が挿通される駆動軸挿通孔90cを備えている。ここで、駆動軸挿通孔90cの内周面の径(直径)を「φc」とする。そして、ポンプ駆動軸10の外周面と駆動軸挿通孔90cの内周面との間の空隙が、ポンプ室18aから第一軸受51へ流れる油の流通路Lとされている。すなわち、流通路Lは、ポンプ室18aからポンプ駆動軸10の外周面に沿って軸方向他方側に漏洩する油の流路とされている。
【0071】
本実施形態では、図3に示すように、ポンプ駆動軸10は、第一軸受51を当該ポンプ駆動軸10に対して軸方向一方側から組み付ける際の引き摺り距離を低減すべく、軸方向一方側が小径部10a、軸方向他方側が大径部10bとなる段付形状に形成されている。ここで、小径部10aの外周面の径(直径)を「φa」とし、大径部10bの外周面の径(直径)を「φb」とする。小径部10aの軸方向一方側端部には、インナロータ18bが備えるキー18dと係合するキー溝10dが形成されている。そして、ポンプ駆動軸10は、駆動軸挿通孔90cの内周面が小径部10aの外周面と対向するように配置されている。また、第一軸受51は、大径部10bの外周面に接して配置されている。
【0072】
ところで、インナロータ18bやアウタロータ18cをポンプ室18a内で回転可能とすべく、インナロータ18bやアウタロータ18cの軸方向幅は、ポンプ室18aの軸方向幅よりわずかに小さく設定されている。よって、図3に示すように、インナロータ18bやアウタロータ18cと、ポンプ室18aを区画する壁(仕切り壁90aや区画壁91a)と、の間には隙間が存在する。そのため、ポンプ室18a内において圧力が高められた油は、全てが不図示の吐出室を介して排出されるのではなく、一部はこの隙間を通ってポンプ室18a内においてより低圧の部分に流れることになる。すなわち、このような隙間により、ポンプ室18a内における油の流路であるポンプ内流路が形成されている。
【0073】
ここで、仕切り壁90aとインナロータ18bとの隙間により形成されるポンプ内流路を、第一ポンプ内流路L1とする。また、区画壁91aとインナロータ18bとの隙間により形成されるポンプ内流路を、第二ポンプ内流路L2とする。図3に示すように、第一ポンプ内流路L1は、軸方向幅が「δ」とされ、その径方向内側端部において、連通路Lに連通している。なお、本実施形態では、第一ポンプ内流路L1は、インナロータ18bの内周面に対して径方向内側に形成された空間(以下、「対象空間」という。)にも連通している。この対象空間は、図示しない吐出口(吐出室)に近い位置に位置する第一ポンプ内流路L1に対して低圧の空間であるため、図3に示すように、第一ポンプ内流路L1から対象空間を経て流通路Lに向かう油の流通経路が形成される。本実施形態では、第一ポンプ内流路L1が、本発明における「ポンプ内流路」に相当する。
【0074】
また、第二ポンプ内流路L2は、ポンプ駆動軸10の軸方向一方側に形成されている空間(図3において符号L3で示す空間)に連通している。この空間は、円環状に形成されており、図2に示すように、循環油路47に連通している。すなわち、この空間は、第二ポンプ内流路L2と循環油路47とを連通する連通路L3となっている。言い換えれば、第二ポンプ内流路L2は、連通路L3を介して循環油路47と連通している。なお、連通路L3は、図示しない吐出口(吐出室)に近い位置に位置する第二ポンプ内流路L2に対して低圧の空間であるため、図3に示すように、第二ポンプ内流路L2から連通路L3へ向かう油の流通経路、及び、連通路L3から循環油路47(図2参照)へ向かう油の流通経路が形成される。このように、循環油路47には、基本的には、オイルポンプ18により吐出され、不図示の油圧制御装置により所定の油圧に調整された圧油が供給されるが、ポンプ室18aから漏洩した油も併せて供給されるように構成されている。本実施形態では、第二ポンプ内流路L2が、本発明における「区画壁側ポンプ内流路」に相当する。
【0075】
なお、インナロータ18bのポンプ室18a内における軸方向位置に応じて第一ポンプ内流路L1と第二ポンプ内流路L2の軸方向幅は変化する。そして、インナロータ18bは、吸入室92や不図示の吐出室の構成によっては、ポンプ室18aの軸方向中央位置に対して軸方向外側にずれて位置することもあり得るが、定常状態においては、軸方向中央位置に近い位置に位置する。よって、第二ポンプ内流路L2の軸方向幅は、第一ポンプ内流路L1の軸方向幅δと同じ又はそれに近い値となる。
【0076】
そして、連通路Lが油の流量を制限する絞り部として機能するように、当該流通路L内におけるポンプ駆動軸10の外周面の径と駆動軸挿通孔90cの内周面の径との差である流通路径差が設定されている。なお、本実施形態では、ポンプ駆動軸10の小径部10aが、駆動軸挿通孔90cの内周面と対向するため、流通路L内におけるポンプ駆動軸10の外周面は、小径部10aの外周面となる。よって、本例では、流通路径差は「φc−φa」となる。
【0077】
具体的には、オイルポンプ駆動軸10の大径部10bの径と小径部10aの径との差をポンプ軸段差幅として、流通路径差は、ポンプ軸段差幅より小さい値に設定されている。例えば、流通路径差を、ポンプ軸段差幅の2分の1や4分の1の値とすることができる。なお、ポンプ軸段差幅は「φb−φa」と表されるため、「φc−φa」(流通路径差)が「φb−φa」(ポンプ軸段差幅)より小さくなっている。すなわち、「φb>φc>φa」の関係が満たされるように、流通路径差が設定されている。
【0078】
さらに、本実施形態では、流通路Lの流路断面積が、第一ポンプ内流路L1の流路断面積より小さくなるように、流通路径差が設定されている。例えば、流通路Lの流路断面積を、第一ポンプ内流路L1の流路断面積の2分の1や4分の1の値とすることができる。ここで、図3に示すように、インナロータ18bにおけるキー18dより軸方向他方側部分の内周面の径(直径)を「φd」とすると、第一ポンプ内流路L1の流路断面積を、直径が「φd」であって軸方向幅が「δ」の円筒面の面積「π×φd×δ」として簡略化して捉えることができる。また、流通路Lの流路断面積は、内径が「φa」であって外径が「φc」の円筒の軸心直交断面積「π×φc×φc/4−π×φa×φa/4」として簡略化して捉えることができる。よって、本例では、「π×φc×φc/4−π×φa×φa/4」が「π×φd×δ」より小さくなるように、流通路径差が設定されている。このように流通路Lの流路断面積を第一ポンプ内流路L1の流路断面積より小さく設定することで、流通路Lが絞り部として適切に機能とし、吐出室から排出されずに第一ポンプ内流路L1を流通する油の一部のみを流通路L内に導くことが可能に構成されている。すなわち、ポンプ室18aからポンプ駆動軸10の外周面に沿って軸方向に漏洩する油の量を制限することができ、ポンプ室18aから図示しない吐出室を介して排出される油の量を適切に確保することが可能となっている。
【0079】
なお、上記のように、インナロータ18bに対して軸方向における第一ポンプ内流路L1の反対側には、第二ポンプ内流路L2が形成されている。そして、第一ポンプ内流路L1と第二ポンプ内流路L2とは、インナロータ18bの外歯とアウタロータ18cの内歯との間の隙間を介して互いに連通している。また、上記の対象空間と連通路L3とは、インナロータ18bとポンプ駆動軸10との間の隙間(キー18dとキー溝10dとの間の隙間等)を介して互いに連通している。そのため、流通路Lが絞り部として機能することにより流通路Lに排出されなかった油は、第二ポンプ内流路L2や上記隙間を介して連通路L3に流れ、循環油路47に供給される。これにより、流通路Lが絞り部として機能することにより当該流通路Lに排出されなかった油を、クラッチCLに油を供給するための循環油路47に積極的に導くことが可能な構成となっている。
【0080】
また、流通路径差(φc−φa)は、第一軸受51により支持されたポンプ駆動軸10が径方向に変位し得る量の最大値より大きく設定されている。例えば、流通路径差を、当該最大値とほぼ同じ値に設定したり、当該最大値の2倍の値に設定したりすることができる。これにより、ポンプ駆動軸10の外周面と駆動軸挿通孔90cの内周面との接触が抑制されている。なお、ポンプ駆動軸10の径方向における変位量(振れ量)は、少なくとも、ポンプ駆動軸10の大径部10bと、ポンプボディ90の軸方向突出部90bと、の間に固定された状態における第一軸受51の径方向隙間(ラジアル隙間)に応じて定まる。なお、第一軸受51の径方向隙間とは、第一軸受51の内部に存在するクリアランスにより許容される外輪51aと内輪51bとの間の径方向における相対変位量である。
【0081】
また、ポンプ駆動軸10の径方向における変位量は、第一軸受51自身が径方向に変位し得る量にも依存する。例えば、第一軸受51の外輪51aの外周面と、当該外輪51aを嵌合支持する軸方向突出部90bの内周面と、の間の隙間や、第一軸受51の内輪51bの内周面と、当該内輪51bを嵌合支持する大径部10bの外周面と、の間の隙間により、第一軸受51自身は径方向に変位し得る。なお、ポンプ駆動軸10の径方向への変位の要因となるこれらの各要因の程度は、各部材の寸法公差や取付位置の公差等に応じて定まる。
【0082】
なお、上記のように、本実施形態では、クラッチケースCHは、第一軸受51及び第二軸受52により、軸方向の両側でケース2に対して径方向及び軸方向に支持されている。そして、第一軸受51及び第二軸受52の双方が、外輪と内輪と転動体とを備えたころがり軸受(本例では、玉軸受)とされている。これにより、クラッチケースCHを径方向に精度良く支持することが可能な構成となっており、流通路径差の下限値を定める量である、第一軸受51により支持されたポンプ駆動軸10が径方向に変位し得る量の最大値を、上記のような要因により定まる程度の低い値に抑えることが容易な構成となっている。すなわち、ポンプ駆動軸10の外周面と駆動軸挿通孔90cの内周面との接触を抑制しつつ、流通路径差を流通路Lが絞り部として適切に機能するような微小な値とすることが容易な構成となっている。
【0083】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係るハイブリッド駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される特徴構成は、その実施形態でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される特徴構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0084】
(1)上記の実施形態では、流通路径差が、ポンプ軸段差幅より小さい値に設定されているとともに、流通路Lの流路断面積が、第一ポンプ内流路L1の流路断面積より小さくなるように設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、流通路径差は、第一軸受51が潤滑のために必要となる油量等に応じて、適宜変更可能である。例えば、ポンプ軸段差幅より小さい値に流通路径差を設定するとともに、流通路Lの流路断面積が第一ポンプ内流路L1の流路断面積より大きくなるように流通路径差を設定することができる。また、ポンプ軸段差幅より大きい値に流通路径差を設定するとともに、流通路Lの流路断面積が第一ポンプ内流路L1の流路断面積より小さくなるように流通路径差を設定することもできる。さらに、ポンプ軸段差幅より大きい値に流通路径差を設定するとともに、流通路Lの流路断面積が第一ポンプ内流路L1の流路断面積より大きくなるように流通路径差を設定することも可能である。
【0085】
(2)上記の実施形態では、流通路径差が、第一軸受51により支持されたポンプ駆動軸10が径方向に変位し得る量の最大値より大きく設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、流通路径差は、第一軸受51が潤滑のために必要となる油量や、ハイブリッド駆動装置1の使用状態におけるポンプ駆動軸10の径方向位置の傾向等に応じて、適宜変更可能である。例えば、流通路径差を、第一軸受51により支持されたポンプ駆動軸10が径方向に変位し得る量の最大値より小さく設定することも可能である。例えば、流通路径差を、第一軸受51により支持されたポンプ駆動軸10が径方向に変位し得る量の最大値の2分の1や4分の1の値とすることができる。
【0086】
(3)上記の実施形態では、ポンプ駆動軸10が、軸方向一方側が小径部10a、軸方向他方側が大径部10bとなる段付形状に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ポンプ駆動軸10が、外径の大きさが軸方向に一様に形成された構成とすることもできる。この場合、ポンプ駆動軸10における第一軸受51に対して径方向内側から当接する部分と、ポンプ駆動軸10における連通路Lの径方向内側を区画する部分とは、同一の径方向位置に位置することになる。
【0087】
(4)上記の実施形態では、クラッチケースCHの内部に形成される空間のうち、作動油室37を除いた大部分を占める空間である循環油室38が、基本的には常時油で満たされた状態となる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、クラッチケースCH内における作動油室37を除いた空間を、油が供給されるものの必ずしも油では満たされないような空間として構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合においては、クラッチケースCH内における作動油室37を除いた空間は、必ずしも油密状に区画する必要はない。
【0088】
(5)上記の実施形態では、第二ポンプ内流路L2が循環油路47と連通している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二ポンプ内流路L2が循環油路47以外の油路と連通する構成や、第二ポンプ内流路L2が循環油路47と連通せず、密閉される構成やドレンに排出される構成とすることもできる。
【0089】
(6)上記の実施形態では、溶接による接合部85が、ロータRoの内周面よりも径方向外側に位置する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、接合部85がロータRoの内周面よりも径方向内側に位置する構成とすることもできる。また、上記の実施形態では、一方側径方向延在部45と軸方向延在部49とが、溶接により接合されて一体化されている場合を例として説明したが、一方側径方向延在部45と軸方向延在部49とを、溶接以外の固定方法(締結部材による締結固定、かしめ構造による固定等)により一体化する構成とすることも可能である。
【0090】
(7)上記の実施形態では、クラッチケースCHが、入力軸I及び中間軸Mの内の中間軸Mに駆動連結されている場合を例として説明したが、クラッチケースCHが、入力軸I及び中間軸Mの内の入力軸Iに駆動連結されている構成とすることもできる。この場合、クラッチケースCHと一体回転するクラッチドラム26がクラッチCLの入力側部材となり、中間軸Mに駆動連結されるクラッチハブ21がクラッチCLの出力側部材となる。
【0091】
(8)上記の実施形態では、オイルポンプ18が内接型のギヤポンプである場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、オイルポンプ18を外接型のギヤポンプやベーンポンプ等の内接型ギヤポンプ以外の構成のオイルポンプとすることもできる。これらの場合においても、オイルポンプのポンプ室内にロータが中間軸Mと同軸配置されるように構成することができ、当該ロータが本発明における「ポンプロータ」となる。
【0092】
(9)上記の実施形態では、回転電機MGのロータRoが、軸方向延在部49の外周面に接して固定される場合を例として説明したが、回転電機MGのロータRoが、クラッチケースCHを構成するその他の部材(すなわち、一方側径方向延在部45や他方側径方向延在部41)により支持される構成とすることも可能である。
【0093】
(10)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、内燃機関に駆動連結される第一軸と、変速機構に駆動連結される第二軸と、第一軸と第二軸とを選択的に駆動連結するクラッチと、回転電機と、クラッチ及び回転電機を収容するケースと、を備えたハイブリッド駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1:ハイブリッド駆動装置
2:ケース
8:ポンプケース
10:ポンプ駆動軸
10a:小径部
10b:大径部
18:オイルポンプ
18a:ポンプ室
18b:インナロータ(ポンプロータ)
41:他方側径方向延在部
45:一方側径方向延在部
47:循環油路(供給油路)
49:軸方向延在部
51:第一軸受
51a:外輪
51b:内輪
51c:転動体
52:第二軸受
85:接合部
90a:仕切り壁
90c:駆動軸挿通孔
91a:区画壁
CL:クラッチ
CH:クラッチケース
E:内燃機関
I:入力軸(第一軸)
L:流通路
L1:第一ポンプ内流路(ポンプ内流路)
L2:第二ポンプ内流路(区画壁側ポンプ内流路)
M:中間軸(第二軸)
MG:回転電機
Ro:ロータ
TM:変速機構
φa:小径部の径
φb:大径部の径
φc:駆動軸挿通孔の内周面の径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される第一軸と、変速機構に駆動連結される第二軸と、前記第一軸と前記第二軸とを選択的に駆動連結するクラッチと、回転電機と、前記クラッチ及び前記回転電機を収容するケースと、を備えたハイブリッド駆動装置であって、
前記第一軸及び前記第二軸の何れか一方に駆動連結されると共に前記クラッチを収容するクラッチケースと、
前記ケースに固定されると共に内部にポンプ室を形成するポンプケースと、前記ポンプ室内に回転可能に配置されるポンプロータとを備え、前記クラッチケースと同軸状に当該クラッチケースに対して軸方向一方側に配置されるオイルポンプと、
前記クラッチケースを軸方向一方側で前記ケースに対して径方向に支持する第一軸受と、
前記クラッチケースを軸方向他方側で前記ケースに対して径方向に支持する第二軸受と、を備え、
前記回転電機のロータは、前記クラッチケースにより支持され、
前記第一軸受は、外輪、内輪、及び前記外輪と前記内輪との間に介在する転動体を備え、
前記クラッチケースは、軸方向一方側へ延びて前記ポンプロータに駆動連結されるポンプ駆動軸を備え、
前記ポンプ駆動軸は、前記第一軸受及び前記ポンプケースを介して前記ケースに支持され、
前記ポンプケースは、前記第一軸受と前記ポンプロータとの間を仕切る仕切り壁を備え、
前記仕切り壁は、前記ポンプ駆動軸が挿通される駆動軸挿通孔を備え、
前記ポンプ駆動軸の外周面と前記駆動軸挿通孔の内周面との間の空隙が、前記ポンプ室から前記第一軸受へ流れる油の流通路とされ、
前記流通路が、油の流量を制限する絞り部として機能するように、当該流通路内における前記ポンプ駆動軸の外周面の径と前記駆動軸挿通孔の内周面の径との差である流通路径差が設定されているハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記流通路径差が、前記第一軸受により支持された前記ポンプ駆動軸が径方向に変位し得る量の最大値より大きく設定されていると共に、
前記流通路の流路断面積が、前記仕切り壁と前記ポンプロータとの隙間により形成されて前記流通路に連通するポンプ内流路の流路断面積より小さくなるように、前記流通路径差が設定されている請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記ポンプ駆動軸は、軸方向一方側が小径部、軸方向他方側が大径部となる段付形状に形成されるとともに、前記駆動軸挿通孔の内周面が前記小径部の外周面と対向するように配置され、
前記第一軸受は、前記大径部の外周面に接して配置され、
前記大径部の径と前記小径部の径との差をポンプ軸段差幅とし、
前記流通路径差は、前記第一軸受により支持された前記ポンプ駆動軸が径方向に変位し得る量の最大値より大きく、前記ポンプ軸段差幅より小さい値に設定されている請求項1又は2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記ポンプ駆動軸は、前記クラッチに油を供給するための供給油路を内部に備え、
前記ポンプケースは、前記ポンプロータに対して軸方向における前記仕切り壁とは反対側に配置されて前記ポンプ室の軸方向一方側を区画する区画壁を備え、
前記区画壁と前記ポンプロータとの隙間により形成される区画壁側ポンプ内流路が、前記供給油路と連通している請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記クラッチケースは、前記クラッチの軸方向一方側に配置されて径方向に延びるとともに径方向内側端部に前記ポンプ駆動軸が設けられている一方側径方向延在部と、前記クラッチの軸方向他方側に配置されて径方向に延びる他方側径方向延在部と、前記クラッチの径方向外側に配置されて軸方向に延びる円筒状の軸方向延在部と、を備え、
前記回転電機は、前記クラッチケースと同軸状に配置されるとともに、当該回転電機の前記ロータが、前記軸方向延在部の外周面に接して固定され、
前記他方側径方向延在部と前記軸方向延在部とは一体的に形成され、
前記一方側径方向延在部と前記軸方向延在部とは、溶接により接合されて一体化されており、
前記溶接による接合部は、前記ロータの内周面よりも径方向外側に位置する請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−213231(P2011−213231A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83055(P2010−83055)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】