説明

バニリンアセタール類およびそれを含有する感覚刺激剤組成物

【課題】優れた辛味・温感効果を有し、かつ冷感増強効果に優れたバニリンアセタール類およびこれを含む感覚刺激剤組成物並びに該感覚刺激剤組成物が配合された香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物あるいは医薬品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】一般式(1):


(式中、Rは、水素原子、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至9のアルキル基、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至8のアルコキシ基である。)
で表されるバニリンアセタール類は、優れた辛味・温感効果を有し、かつ冷感増強効果を示す。感覚刺激剤組成物は、この一般式(1)で表されるバニリンアセタール類を少なくとも1種含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バニリンアセタール類、該バニリンアセタール類を含有する感覚刺激剤組成物に関する。さらに、本発明は、これら感覚刺激剤組成物を含有する、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒトの皮膚や口腔、鼻、喉に対して刺激的な感覚(辛味感)や温かい感覚(温感)を与える物質、いわゆる感覚刺激剤は、歯磨剤、菓子(例えば、チューインガム、キャンディー等)、たばこ、パップ剤、入浴剤、化粧料などに使用されている。これら辛味感や温感を与える化合物として、例えば一般式(2):
【0003】
【化3】

(式中、Rは、炭素数1乃至6のアルキル基を表す。なおMeはメチル基を表し、以下の一般式でも同様である。)
【0004】
で表されるバニリルアルコール誘導体(以下、VEと記載する場合もある。)が知られており、この化合物が強い辛味・温感効果を有すること(例えば、特許文献1参照)、またメントールの冷感効果を増強すること(例えば、特許文献2参照)の開示もなされている。
【特許文献1】特開昭57−9729号公報
【特許文献2】特開昭57−82308号公報
【0005】
しかし、これらVEは強い辛味・温感効果を有するものの、塩基性条件下で着色し易く、更には経時的に着色や香質変化が生じ易い等の問題があり、製品への配合には制限があった。また、VEは製造上、バニリンの還元、エーテル化など工程が煩雑であることから、製造が容易で、しかも効果の優れた感覚刺激剤の提供が望まれている。
【0006】
一方、従来、バニリンアセタール化合物として、バニリンプロピレングリコールアセタールが知られている(例えば、特許文献3参照)が、頭髪化粧料香料の一例として例示されているにすぎず、感覚刺激効果に関しては未知であった。また、バニリンアセタール化合物であるバニリン2,3−ブタンジオールアセタールを香料として使用することも知られている(例えば、特許文献4参照)が、この化合物についても感覚刺激効果については知られていない。
【特許文献3】特開2003−137758号公報
【特許文献4】特開2001−2673号公報
【0007】
さらに、一般式(3):
【化4】

(式中、R1は、水素原子、水酸基又は低級アルコキシ基を示し、R2およびR3は、同一又は異なり、それぞれ水素原子、水酸基、低級アルコキシ基を示すか、又はR2およびR3が共に結合してメチレンジオキシ基を示す。)
【0008】
で表される4−(1−メントキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソランおよびその誘導体が感覚刺激剤として公知文献に開示されている(例えば、特許文献5参照)が、その効果は決して十分とはいえず、より優れた辛味・温感効果、および冷感増強効果を有する化合物が望まれている。
【特許文献5】特開平8−225564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来辛味・温感効果を有し、またこれらに加え冷感増強効果を有する感覚刺激剤は知られているが、従来公知の感覚刺激剤は、使用条件あるいは経時により着色や香質変化が生じるなどの問題、製造工程が煩雑である問題、辛味・温感効果およびその持続性などの問題、さらには冷感増強効果に関する問題などを有するもので、これらの問題を解決することが望まれている。
【0010】
従って、本発明の目的は、上記従来の問題を有さない感覚刺激剤およびこれを含む感覚刺激剤組成物を提供すること、より具体的には、安定性に優れ、また、優れた辛味・温感効果を有し、かつ冷感増強効果に優れた感覚刺激剤およびこれを含む感覚刺激剤組成物を提供すること、さらにはこれら感覚刺激剤あるいは感覚刺激剤組成物を含有する香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品およびその製造方法を提供することである。
また、本発明は、感覚刺激剤として好ましい新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべくバニリンから誘導される各種の化合物の辛味感や温感効果について鋭意検討したところ、下記一般式(1)で表されるバニリンアセタール類が、辛味感や温感効果が強く、さらにその持続性に優れ、感覚刺激剤として有用であること、また、冷感剤に加えた場合には、冷感増強効果が付与され、しかもその合成も簡単で、得られた化合物の安定性も優れているという知見を得て本発明を成したものである。
【0012】
即ち、本発明は次の1〜11に記載のとおりのものである。
1. 一般式(1):
【化5】

(式中、Rは、水素原子、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至9のアルキル基、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至8のアルコキシ基である。)
で表されるバニリンアセタール類の1種以上を含有することを特徴とする感覚刺激剤組成物。
【0013】
2. 上記感覚刺激剤組成物が辛味剤組成物であることを特徴とする上記第1項に記載の感覚刺激剤組成物。
【0014】
3. 上記感覚刺激剤組成物が温感剤組成物であることを特徴とする上記第1項に記載の感覚刺激剤組成物。
【0015】
4. 冷感物質から選ばれる1種以上の成分を併用したことを特徴とする上記第1項乃至第3項のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物。
【0016】
5. 冷感物質が、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−l−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−l−メントキシエタン−1−オール、3−l−メントキシプロパン−1−オール、4−l−メントキシブタン−1−オール、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、乳酸メンチル、メントングリセリンケタール、2−(2−l−メンチルオキシエチル)エタノール、グリオキシル酸メンチル、1−(2−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル)エタノン、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミド、2−ピロリドン−5−カルボン酸メンチル、コハク酸モノメンチル、コハク酸モノメンチルのアルカリ金属塩およびコハク酸モノメンチルのアルカリ土類金属塩であることを特徴とする上記第4項に記載の感覚刺激剤組成物。
【0017】
6. 一般式(1)のバニリンアセタール類に含まれない感覚刺激剤から選ばれる1種以上の成分を併用したことを特徴とする上記第1項乃至第5項のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物。
【0018】
7. 一般式(1)のバニリンアセタール類に含まれない感覚刺激剤が、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、カプサイシン、ジンゲロール、バニリルブチルエーテル、バニリルブチルエーテル酢酸エステル、4−(l−メントキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メトキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール−I、サンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリンおよびスピラントールの1種以上であることを特徴とする上記第6項に記載の感覚刺激剤組成物。
【0019】
8. 上記第1項乃至第7項に記載のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物が、0.0001〜90質量%配合されてなることを特徴とする香料組成物。
【0020】
9. 上記第1項乃至第7項に記載のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物が、0.0001〜20質量%配合されてなることを特徴とする、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品。
【0021】
10. 上記第1項乃至第7項記載のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物を、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品に添加することを特徴とする香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の製造方法。
11. 一般式(1’):
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R’は、直鎖状または分岐していてもよい炭素数4乃至9のアルキル基、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至8のアルコキシ基である。)
で表されるバニリンアセタール類。
【発明の効果】
【0024】
本発明のバニリンアセタール類は、合成が簡単であり、辛味感や温感効果が強く、さらにその持続性に優れ、感覚刺激剤として有用であること、また、冷感剤に加えた場合には、冷感増強効果が付与され、各種の飲食品、口腔用組成物、化粧品などに配合することにより、これらの製品に辛味感や温感効果、冷感増強効果を付与することができ、かつその持続性に優れている。さらに人体に対して好ましくない皮膚刺激感をほとんど生じないという優れた特性を発揮する。また保存中にも着色せず安定性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明の感覚刺激剤組成物は、前記一般式(1)で示されるバニリンアセタール類を含むものであり、組成に応じ、例えば辛味剤組成物、温感剤組成物、冷感剤組成物などとして機能するものである。そして、本発明の一般式(1)で示されるバニリンアセタール類は、辛味感や温感効果が強く、さらにその持続性に優れ、また冷感増強効果にも優れた化合物であることから、これを単独で使用する場合においても、結果として各種製品に辛味感や温感効果、冷感増強効果などの感覚刺激を与える場合には、本明細書においては感覚刺激剤組成物という。
【0026】
本発明の感覚刺激剤組成物に含有される前記一般式(1)で示される感覚刺激剤化合物中、Rは水素原子、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至9のアルキル基、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至8のアルコキシ基であるが、一般式(1)のRにおいて、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至9のアルキル基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。また、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至8のアルコキシ基としては、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
本発明の一般式(1)で示されるバニリンアセタール類を具体的に例示すれば、例えばバニリン−1,2−プロピレングリコールアセタール、バニリン−1,2−ブチレングリコールアセタール、バニリン−1,2−ペンチレングリコールアセタール、バニリン−1,2−ヘキシレングリコールアセタール、バニリン−1,2−ヘプチレングリコールアセタール、バニリン−1,2−オキシレングリコールアセタール、バニリン−1,2−ノニレングリコールアセタール、バニリン−1,2−デシレングリコールアセタール、バニリン−1,2−ウンデシレングリコールアセタール、バニリン−1−メトキシグリセロールアセタール、バニリン−1−エトキシグリセロールアセタール、バニリン−1−プロポキシグリセロールアセタール、バニリン−1−ブトキシグリセロールアセタール、バニリン−1−ペントキシグリセロールアセタール、バニリン−1−ヘキシルオキシグリセロールアセタール、バニリン−1−(2−エチル)ヘキシルオキシグリセロールアセタール、バニリン−1−ヘプチルオキシグリセロールアセタール、バニリン−1−オクチルオキシグリセロールアセタール等を挙げることができる。そして、一般式(1)のバニリンアセタール類中、好ましいものとしては、バニリン−1,2−ブチレングリコールアセタール、バニリン−1,2−ヘキシレングリコールアセタール、バニリン−1−メトキシグリセロールアセタール、バニリン−1−ブトキシグリセロールアセタール、バニリン−1−(2−エチル)ヘキシルオキシグリセロールアセタール等が挙げられる。
【0028】
一方、一般式(1)において、Rが水素原子および炭素数1乃至3のアルキル基である場合が除かれた、本発明の一般式(1’)で示されるバニリンアセタール類は、従来知られていない新規な化合物である。一般式(1’)中のR’における直鎖状または分岐していてもよい炭素数4乃至9のアルキル基、および直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至8のアルコキシ基の例並びにバニリンアセタール類の例としては、上記一般式(1)で示したものと同様なものが挙げられる。なお、一般式(1)において、1,3−ジオキソラン環の4位の炭素原子は不斉炭素原子であるため、一般式(1)で表されるバニリンアセタール類は光学活性体あるいはラセミ体が形成可能である。本発明においては、一般式(1)で表されるバニリンアセタール類は、これら光学活性体であっても、ラセミ体であってもよく、いずれの場合をも含むものである。
【0029】
一般式(1’)を包含する一般式(1)で示されるバニリンアセタール類は、例えば次の反応式に従って合成することができる。
【化7】

(式中、Rの定義は上記と同様である。)
【0030】
すなわち、一般式(1)の化合物は、一般式(I)で示されるグリコール類とバニリン(II)とを、酸性物質の存在下で反応させ、脱水縮合させることにより容易に製造することができる。
【0031】
上記合成法において使用される酸性物質としては、ブレンステッド酸やルイス酸などの各種の酸性物質が挙げられ、具体的には、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、硫酸などのスルホン酸類;トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などのパーハロゲノ酢酸;塩化第二鉄、塩化亜鉛、塩化第二スズなどのルイス酸等が挙げられる。好ましい酸性物質としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸などが挙げられる。そのうちでも、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸は汎用性があり、反応の選択性および収率が高いことからより好ましい。これらの酸性物質は1種又は2種以上使用することもできるが、1種を使用することが好ましい。
【0032】
本反応は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類、へキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン炭化水素類などが挙げられる。これらは単独で用いても、また二種以上の混合溶液として用いてもよい。溶媒として好ましくは芳香族炭化水素類、そのうちでも、トルエン、キシレンなどが、汎用性があり、反応の選択性および収率が高いことからより好ましい。
【0033】
また、これらの溶媒の使用量は、特に制限はないが、原料化合物(基質)に対して、約0.1〜10倍容量、好ましくは約0.5〜3倍容量の範囲である。また、本反応に用いられる酸性物質の量は、原料化合物(基質)1重量に対して、好ましくは0.1〜10重量%程度、より好ましくは0.5〜5重量%程度の範囲で使用されるが、この範囲に限定されるものではない。反応温度は、50〜200℃程度、好ましくは使用する溶媒の沸点程度の範囲が採用され、前記の温度を保ちながら約1〜50時間、好ましくは1〜10時間で反応させることによって、反応を円滑に行うことができる。上記の反応によって得られた反応液から、反応終了後、溶媒を減圧下留去する。得られた残留物を減圧蒸留することにより、本発明のバニリンアセタール類を製造することが出来る。
【0034】
このようにして得ることができる本発明の一般式(1)のバニリンアセタール類は、強く、持続性のある辛味感や温感効果を有し、そのまま単独で感覚刺激剤として利用することができる。
【0035】
本発明により得られるバニリンアセタール類は、製品の種類、使用目的などにより、その適用範囲や適用方法を適宜変える必要があるが、香料組成物に対しては、通常0.0001〜90質量%配合されることが好ましく、また飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品などの製品の全組成に対しては、約1×10-7質量%以上、通常、0.0001乃至20質量%、特に0.001乃至5質量%配合されることが好ましい。
【0036】
また、本発明の感覚刺激剤組成物は、冷感物質から選ばれる1種以上の成分を併合することにより、冷感強度を高めた感覚刺激剤組成物を調製することが出来る。
【0037】
冷感物質としては、例えば、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−l−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−l−メントキシエタン−1−オール、3−l−メントキシプロパン−1−オール、4−l−メントキシブタン−1−オール、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、乳酸メンチル、メントングリセリンケタール、2−(2−l−メンチルオキシエチル)エタノール、グリオキシル酸メンチル、1−(2−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル)エタノン、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミド、2−ピロリドン−5−カルボン酸メンチル、コハク酸モノメンチル、コハク酸モノメンチルのアルカリ金属塩およびコハク酸モノメンチルのアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。これらは一種または2種以上を適宜配合して用いることができる。
【0038】
本発明のバニリンアセタール類と冷感物質とは、本発明の効果を損なわない範囲において任意の割合で持いることができるが、バニリンアセタール類とこれに含まれない冷感物質の好ましい使用割合は質量比で1:99〜70:30の範囲であることが好ましい。本発明のバニリンアセタール類と冷感剤との配合比は、冷感効果を目的とする場合においては、バニリンアセタール類は配合にすることより辛味・温感効果が付与されない範囲であればよく、通常、冷感物質の総量に対して、0.001〜0.95倍量、好ましくは0.01〜0.5倍量の配合量とされる。この場合、本発明の感覚刺激剤組成物において、冷感物質に上記割合でバニリンアセタール類が添加されることにより、冷感効果の更なる向上が見られ、冷感効果が増大する。
【0039】
また、辛味・温感効果を目的とする場合においては、冷感物質の配合により冷感効果が付与されない範囲であればよく、通常、バニリンアセタール類の総量に対して、0.001〜0.95倍量、好ましくは0.01〜0.5倍量の配合量とされる。
【0040】
本発明の感覚刺激剤組成物には、本発明の一般式(1)で表されるバニリンアセタール類を含まない他の感覚刺激剤を併用することができる。
【0041】
他の感覚刺激剤としては、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、カプサイシン、ジンゲロール、バニリルブチルエーテル、バニリルブチルエーテル酢酸エステル、4−(l−メントキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メトキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール−I、サンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリン、およびスピラントール等を挙げることができる。これらは一種または2種以上を適宜配合して用いることができる。
【0042】
本発明のバニリンアセタール類とそれを含まない他の感覚刺激剤との配合比は、冷感効果を目的とする場合においては、温感物質は温感物質の配合により温感効果が付与されない範囲であればよく、通常、冷感剤組成物の総量に対して、0.001〜0.95倍量、好ましくは0.01〜0.5倍量の配合量とされる。
【0043】
また、本発明においては、上記感覚刺激剤組成物を香料組成物中にまず配合して、感覚刺激剤組成物含有香料組成物(本発明の香料組成物)とし、この感覚刺激剤組成物含有香料組成物を製品に配合することもできる。このとき、バニリンアセタール類、それ以外の感覚刺激剤、冷感物質とを別々に香料組成物に添加するようにしてもよい。
【0044】
本発明の感覚刺激剤組成物と共に含有し得る他の香料成分としては、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油、動物性香料などを挙げることができ、例えば非特許文献1に記載されているような広範な種類の香料成分を使用することができる。そのうちでも代表的なものとしては、例えば、α−ピネン、リモネン、cis−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール、スチラリルアセテート、オイゲノール、ジヒドロジャスモン酸メチル、ローズオキサイド、リナロール、ベンズアルデヒド、ムスコン、ムスクT(高砂香料工業株式会社)、テサロン(高砂香料工業株式会社)などを挙げることができる。
【非特許文献1】周知・慣用技術集(香料)第I部、平成11年1月29日、特許庁発行
【0045】
本発明の感覚刺激剤組成物含有香料組成物における感覚刺激剤組成の含有量は、一緒に調合する香料やその他の成分の種類、感覚刺激剤組成物含有香料組成物の使用目的などにより調整することができる。例えば、香粧品用の香料組成物では、一般に、香料組成物の全質量に対して、感覚刺激剤組成物の含有量が0.001〜50質量%、特に0.01〜20質量%であることが好ましい。また、飲食品用の香料組成物では、香料組成物の全質量に対して、感覚刺激剤組成物の含有量が、一般に0.0001〜50質量%が好ましく、0.001〜30質量%であることがより好ましい。
【0046】
感覚刺激剤組成物を含有する本発明の感覚刺激剤組成物含有香料組成物は、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている他の香料保留剤の1種または2種以上を含有していてもよい。その場合の他の香料保留剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有することができる。
【0047】
本発明の感覚刺激剤組成物は、上述のように、感覚刺激剤組成物単独で、または感覚刺激剤組成物を含有する感覚刺激剤組成物含有香料組成物にして、各種製品に対して感覚刺激を付与するために用いられる。本発明の感覚刺激剤組成物自体或いは感覚刺激剤組成物を含有する感覚刺激剤組成物含有香料組成物によって感覚刺激を付与することのできる製品としては、例えば、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物、医薬品などを挙げることができる。
【0048】
本発明の感覚刺激剤組成物およびそれを含有する感覚刺激剤組成物含有香料組成物によって感覚刺激を付与することのできるこれら製品について、以下に具体的に説明する。まず、飲食品の具体例としては、何ら限定されるものではないが、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類の如き飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類の如き冷菓類;ゼリー、プリンなどのデザート類;ケーキ、クッキー、チョコレート、チューインガムなどの洋菓子類;饅頭、羊羹、ウイロウなどの和菓子類;ジャム類;キャンディー類;パン類;緑茶、ウーロン茶、紅茶、柿の葉茶、カミツレ茶、クマザサ茶、桑茶、ドクダミ茶、プアール茶、マテ茶、ルイボス茶、ギムネマ茶、グアバ茶、コーヒー、ココアの如き茶飲料または嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープの如きスープ類;風味調味料;各種インスタント飲料乃至食品類;各種スナック食品類;口腔用品などを挙げることができる。
【0049】
また、本発明の感覚刺激剤組成物およびそれを含有する感覚刺激剤組成物含有香料組成物によって香気付けすることのできる香粧品または日用・雑貨品としては、例えば、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤、たばこ、その他の雑貨類などを挙げることができる。
【0050】
これら香粧品または日用・雑貨品を更に具体的に示すと、
・フレグランス製品としては、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなど;
【0051】
・基礎化粧品としては、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落としなど;
・仕上げ化粧品としては、ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバーなど;
【0052】
・頭髪化粧品としては、ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアースティック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤など;
を挙げることができる。
【0053】
・日焼け化粧品としては、サンタン製品、サンスクリーン製品など;
・薬用化粧品としては、制汗剤、アフターシェービングローションおよびジェル、パーマネントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料などを挙げることができ;
・ヘアケア製品としては、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパックなど;
【0054】
・石鹸としては、化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸など;
・身体洗浄剤としては、ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープなど;
・浴用剤としては、入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド等)、フォームバス(バブルバス等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブなど;
・洗剤としては、衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸など;を挙げることができる。
【0055】
・柔軟仕上げ剤としては、ソフナー、ファーニチアケアーなど;
・洗浄剤としては、クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤など;
・台所用洗剤としては、台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤など;
・漂白剤としては、酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤等)、光学的漂白剤など;
・エアゾール剤としては、スプレータイプ、パウダースプレーなど;
・消臭・芳香剤としては、固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプなど;
・雑貨としては、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなど;
を挙げることができる。
【0056】
・口腔用組成物としては、例えば、歯磨き、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類など;
・医薬品類としては、パップ剤、軟膏剤の如き皮膚外用剤、内服剤など;
を挙げることができる。
【0057】
本発明の感覚刺激剤組成物およびそれを含有する感覚刺激剤組成物含有香組成物を上記したような各種の製品の感覚刺激の付与に用いる場合は、感覚刺激を付与する製品の種類や製品の最終形態(例えば液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミスト状、エアゾール状などの製品形態)に応じて、感覚刺激剤組成物或いはそれを含有する感覚刺激剤組成物含有香料組成物を、直接製品に添加または付与してもよいし;感覚刺激剤組成物或いはそれを含有する感覚刺激剤組成物含有香料組成物を、例えば、アルコール類、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類に溶解して液体状にして添加または付与してもよいし;アラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤など)を用いて可溶化或いは乳化分散させ、可溶化状或いは分散状にして添加または付与してもよいし;アラビアガム等の天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの賦形剤を用いて被膜形成せしめ、粉末状にして添加または付与してもよいし;カプセル化剤で処理してマイクロカプセルにして添加または付与してもよい。
【0058】
さらに、サイクロデキストリンなどの包接剤に包接して、感覚刺激剤組成物或いはそれを含有する感覚刺激剤組成物含有香料組成物を安定化すると共に徐放性にして用いてもよい。
【0059】
感覚刺激付けを行う際の製品への感覚刺激剤組成物の添加量又は付与量は、製品の種類や形態、製品に求められる感覚刺激付け効果や作用などに応じて適宜調整することができる。一般的には製品の質量に対して、感覚刺激剤組成物の添加量又は付与量が、約1×10-7〜0.1質量%程度であることが好ましく、1×10-6〜0.01質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものでなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0061】
なお、実施例中での生成物の測定に用いた機器装置類は次の通りである。
(1)プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR);
機器:ブルッカー社製「DRX−500」(500MHz)
内部標準物質:テトラメチルシラン
(2)赤外吸収スペクトル(IR);
機器:ニコレー社製「AVATER 360FT−IR」
測定方法:フィルム法
(3)質量スペクトル(MS);
機器:株式会社日立製作所製「M−80B質量分析計」(イオン化電圧:20eV)
(4)ガスクロマトグラム(転換率の測定);
機器:ヒューレットパッカード社製「HP−5890A」
カラム:ヒューレットパッカード社製「HP−5」(30m×0.32mm×0.25μm)
【0062】
実施例1〔バニリン−1,2−ヘキシレングリコールアセタール(化合物A)の合成〕
【化8】

【0063】
容量300mlの反応フラスコに温度計、Dean−Stalk管および環流管を付し、これにバニリン25.0g(分子量152.14、164.31mmol)、ヘキシレングリコール21.36g(分子量118.18、180.74mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物150mg(分子量190.22、789μmol)およびトルエン150mlを入れ、窒素気流下、油浴温140℃で加熱環流した。生じてくる水をDean−Stalk管から除去しながら環流を続け、4.5時間加熱することで原料の消失がガスクロマトグラムで確認された。得られた反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液中にクエンチし、トルエンで抽出、食塩水で洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去、減圧蒸留することによって、目的とするバニリン−1−ブトキシグリセロールアセタール(分子量252.31)が無色透明油状物として得られた。収量39.73g(157.47mmol)、純度100%(異性体比54.3:43.7)、収率95.8%、沸点127〜129℃(9〜15Pa)。
【0064】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、δ)ppm:0.90〜0.94(m,3H)、1.32〜1.42(m,2H)、1.52〜1.62(m,2H)、3.46〜3.57(m,2H)、3.51〜3.66(m,2H)、3.80〜3.99(m,1H)、4.07〜4.28(m,1H)、4.33〜4.45(m,1H)、3.80〜3.99(m,1H)、5.76〜5.86(m,2H)、6.88〜6.92(m,1H)、6.96〜7.02(m,2H).
【0065】
IRcm-1:3501、3077、2961、2873、1657、1472、1455、1414、1369、1259、1171、1093、1032、992、899.
【0066】
MS(m/e):200(M-)、183、167、157、145、128、110、95、85、83、73、55、43、29。
【0067】
実施例2〔バニリン−1,2−ブチレングリコールアセタール(化合物B)の合成〕
【化9】

【0068】
容量300mlの反応フラスコに温度計、Dean−Stalk管および環流管を付し、これにバニリン30.0g(分子量152.15、197.17mmol)、1,2−ブチレングリコール19.55g(分子量90.12、216.89mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物150mg(分子量190.22、789μmol)およびトルエン150mlを入れ、窒素気流下、油浴温135℃で加熱環流した。生じてくる水をDean−Stalk管から除去しながら環流を続け、4時間加熱することで原料の消失がガスクロマトグラムで確認された。得られた反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液中にクエンチし、トルエンで抽出、食塩水で洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去、減圧蒸留することによって、目的とするバニリン−1,2−ブチレングリコールアセタールが無色透明油状物として得られた。収量41.70g、(分子量224.26、185.93mmol)、純度100%(異性体比53.7:46.3)、収率94.3%、沸点127〜129℃(30〜32Pa)。
【0069】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、δ)ppm:0.99〜1.05(m,3H)、1.56〜1.83(m,2H)、3.63(t,J=7.1Hz,0.4H)、3.71(t,J=7.1Hz,0.6H)、3.92(s,3H)、4.09(t,J=7.1Hz,0.6H)、4.12〜4.21(m,1H)、4.24〜4.30(m,0.4H)、5.67〜5.69(m,1H)、5.75(s,0.6H)、5.84(s,0.4H)、6.89〜6.93(m,1H)、6.97〜7.03(m,2H).
【0070】
IR(薄膜)cm-1:3412、2966、2879、1611、1519、1464、1436、1405、1370、1277、1241、1165、1078、1032、956、860、823、779.
【0071】
MS(m/e):224(M+)、207,195、169、165、151、137、124、101、93、81、65、55、39.
【0072】
実施例3〔バニリン−1−ブトキシグリセロールアセタール(化合物C)の合成〕
【化10】

【0073】
容量300mlの反応フラスコに温度計、Dean−Stalk管および環流管を付し、これにバニリン25.0g(分子量152.14、164.31mmol)、1−ブトキシグリセロール24.35g(分子量148.20、164.31mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物150mg(分子量190.22、789μmol)およびトルエン150mlを入れ、窒素気流下、油浴温140℃で加熱環流した。生じてくる水をDean−Stalk管から除去しながら環流を続け、5時間加熱することで原料の消失がガスクロマトグラムで確認された。得られた反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液中にクエンチし、トルエンで抽出、食塩水で洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去、減圧蒸留することによって、目的とするバニリン−1−ブトキシグリセロールアセタールが無色透明油状物として得られた。収量43.76g、(分子量282.34、155.99mmol)、純度100%(異性体比54.3:43.7)、収率94.3%、沸点143〜152℃(4.0Pa)。
【0074】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、δ)ppm:0.90〜0.94(m,3H)、1.32〜1.42(m,2H)、1.52〜1.62(m,2H)、3.46〜3.57(m,3H)、3.60〜3.66(m,1H)、3.83(t,J=7.0Hz,0.4H)、3.90(s、3H)、3.95(t,J=7.0Hz,0.6H)、4.08(t,J=7.0Hz,0.6H)、4.25(t,J=7.0Hz,0.4H)、4.33〜4.43(m,1H)、5.67〜5.70(m,1H)、5.74(s,0.6H)、5.85(s,0.4H)、6.88〜6.92(m,1H)、6.96〜7.02(m,2H).
【0075】
IR(薄膜)cm-1:3416、2957、2870、1611、1519、1464、1374、1277、1241、1164、1118、1034、969、860、822、778、717.
【0076】
MS(m/e):282(M+)、195、168、159、151、137、124、109、93、81、57、41.
【0077】
実施例4〔バニリン−1−(2−エチル)ヘキシルオキシグリセロールアセタール(化合物D)の合成〕
【化11】

【0078】
容量300mlの反応フラスコに温度計、Dean−Stalk管および環流管を付し、これにバニリン20.0g(分子量152.14、131.46mmol)、1−(2−エチル)ヘキシルオキシグリセロール26.86g(分子量204.31、131.46mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物150mg(分子量190.22、789μmol)およびトルエン150mlを入れ、窒素気流下、油浴温140℃で加熱環流した。生じてくる水をDean−Stalk管から除去しながら環流を続け、5時間加熱することで原料の消失がガスクロマトグラムで確認された。得られた反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液中にクエンチし、トルエンで抽出、食塩水で洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去、減圧蒸留することによって、目的とするバニリン−1−(2−エチル)ヘキシルオキシグリセロールアセタールが無色透明油状物として得られた。収量40.89g、(分子量338.45、120.81mmol)、純度100%(異性体比53.2:44.1)、収率91.9%、沸点163〜167℃(10〜14Pa)。
【0079】
1H−NMR(500MHz、CDCl3、δ)ppm:0.82〜0.95(m,6H)、1.20〜1.48(m,10H)、3.30〜3.42(m,2H)、3.46〜3.52(m,0.5H)、3.52〜3.57(m,0.5H)、3.86(t,J=6.8Hz,0.5H)、3.90(s,3H)、3.94〜4.00(m,0.5H)、4.25(t,J=7.0Hz,0.5H)、4.32〜4.43(m,1H)、5.64〜5.67(m,1H)、5.74(s,0.5H)、5.84(s,0.5H)、6.87〜6.92(m,1H)、6.95〜7.02(m,2H).
【0080】
IR(薄膜)cm-1:3420、2929、1611、1519、1464、1376、1276、1241、1164、1104、1035、969、860、820、778.
【0081】
MS(m/e):338(M+)、321、307、239、225、215、195、168、151、137、124、103、93、71、57、43、41.
【0082】
実施例5〔官能評価1〕
実施例1および実施例3で得られた化合物Aおよび化合物Cについて、10人の5年以上経験した専門パネラーにより、10ppm水溶液での口中評価を行い、下記の評価基準に基づき温感・辛味の即効性および強度評価を行った。比較化合物として、4−(l−メトキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン(特許文献5に記載の化合物:比較化合物A)を使用した。結果を表1に示す。表中の結果は10人のパネラーの平均値を示す。
【0083】
<即効性の評価基準>
◎: 非常に速い
○: 速い
△: やや遅い
×: 非常に遅い
【0084】
<強度の評価基準>
5: 非常に強い
4: 強い
3: 弱い
2: 非常に弱い
1: 感じない
【0085】
【表1】

【0086】
化合物A、化合物Cおよび比較化合物Aは何れも匂いは殆どなく、口腔内で強い辛味・温感効果を有していた。また、皮膚でも強い温感刺激効果を有するものであった。
【0087】
合成例〔表2−1及び表2−2の化合物1〜12及び化合物16の合成〕
下記の「アセタールの一般的合成法」に従って、表2−1及び表2−2に挙げられた化合物1〜12及び化合物16のアセタール類を合成した。
(アセタールの一般的合成法)
アリールアルデヒド類150mmolと、ジオール類200mmolおよび、パラトルエンスルホン酸一水和物150mg、トルエン150mlを入れ、窒素気流下で油浴温140℃で加熱環流した。生じてくる水をDean−Stalk管から除去しながら環流を続け、5時間加熱することで、ほぼ原料の消失がガスクロマトグラムで確認できる。得られた反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液中にクエンチし、トルエンで抽出、食塩水で洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去、その後得られたクルードを減圧蒸留または再結晶することによって、目的とするバニリン類のアセタールを得た。
【0088】
実施例6〔官能評価2〕
化合物A〜Dを含む表2に示された化合物1〜17について、実施例5と同様の方法により、それらの口腔内における辛味・温感効果を比較した。評価は下記4段階で表記した。結果を表2−1および表2−2に示す。
◎;非常に効果が高い
○;効果が高い
△;効果は認めるものの低い
×;効果なし若しくは殆ど効果なし
【0089】
【表2】

【0090】

【0091】
上記表2−1および表2−2から明らかなように、本発明化合物(化合物11、13−17)は比較化合物(化合物1−10、12)と比較して優れた辛味・温感効果を有していた。
【0092】
実施例7〔皮膚化粧料〕
下記に示す成分をホモミキサーを用いて混合し、これに精製水を加えて100質量部とし、皮膚化粧料を調製した。得られた化粧料を20〜40歳の一般パネラー10名に、肌に直接塗布した後、タオルでふき取ってもらい、使用感を評価してもらった。その結果、10名全員が、本実施例の皮膚化粧料は温感を有しかつ温感効果を持続したと回答した。
【0093】
<皮膚化粧料処方>
(成 分) (配合量)
タルク 10.0
カオリン 2.0
シリコーンパウダー 10.0
化合物A 1.0
グリセリン 10.0
シリコーン油 8.0
ワセリン 2.0
スクワラン 1.0
コレステリルイソステアレート 0.5
セラミド−2 0.1
ホホバ油 1.0
エタノール 10.0
フローラル系香料 0.5
エチルパラベン 0.3
精製水 残 部
合 計 100.0
【0094】
実施例8〔粉末型入浴剤〕
下記に示す成分の粉末型の入浴剤を、定法に従い調製した(配合量は質量部)。得られた入浴剤を浴槽に30g入れ、20〜40歳の一般パネラー10名に、入浴後の使用感を評価してもらった。その結果、10名全員が、このものは温感を有しかつ温感効果を持続したと回答した。
【0095】
<粉末型入浴剤処方>
(成 分) (配合量)
化合物B 1.0
オクタン酸セチル 3.0
バニリルブチルエーテル酢酸エステル 0.5
ホホバ油 2.0
POE(6)ステアリルエーテル 1.2
コレステリルヘミコハク酸エステル 1.0
POE(9)オレイルエーテル 0.8
デキストリン 20.0
シトラス系香料 適 量
色素 適 量
炭酸水素ナトリウム 10.0
無水硫酸ナトリウム 残 部
合 計 100.0
【0096】
実施例9〔錠剤型入浴剤〕
下記に示す成分の錠剤型の入浴剤を、定法に従い調製した(配合量は質量部)。得られた入浴剤を浴槽に50g入れ、20〜40歳の一般パネラー10名に、入浴後の使用感を評価してもらった。その結果、10名全員が、このものは温感を有しかつ温感効果を持続したと回答した。
【0097】
<粉末入浴剤処方>
(成 分) (配合量)
化合物C 1.0
オクタン酸セチル 3.0
ホホバ油 2.0
POE(6)ステアリルエーテル 1.2
コレステリルヘミコハク酸エステル 1.0
フマル酸 35.0
POE(9)オレイルエーテル 0.8
デキストリン 20.0
シトラス系香料 適 量
色素 適 量
炭酸ナトリウム 18.0
炭酸水素ナトリウム 残 部
合 計 100.0
【0098】
実施例10〔チュウインガム〕
下記に示す成分のチュウインガムを、定法に従い調製した(配合量は質量部)。得られたチュウインガム3gを5分間噛み、20〜40歳の一般パネラー10名に、温感効果および刺激感を評価してもらった。その結果、10名全員が、このものは1時間後においても喉が温かく、弱い刺激感を有していると回答した。
【0099】
<チュウインガム処方>
(成 分) (配合量)
化合物A 0.005
3−l−メントキシ−1,2−プロパンジオール 0.005
ガムベース 21.0
粉糖 残 部
水飴 11.4
クエン酸 0.8
ミント系香料 0.7
合 計 100.0
【0100】
実施例11〔マウスウオッシュ〕
下記に示す成分のマウスウオッシュを、定法に従い調製した(配合量は質量部)。得られたマウスウオッシュ10mlを10秒間口に含んで洗口し、温感効果および刺激感を評価してもらった。パネラーは、20〜40歳の一般パネラー10名とした。その結果、10名全員が、このものは、1時間後においても喉が温かく、弱い刺激感を有していると回答した。
【0101】
<マウスウオッシュ処方>
(成 分) (配合量)
化合物B 0.005
3−l−メントキシ−1,2−プロパンジオール 0.005
95%エタノール 5.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 2.0
グリセリン 10.0
安息香酸ナトリウム 0.05
精製水 残 部
シトラス系香料 0.1
合 計 100.0
【0102】
実施例12〔透明シャンプー〕
下記処方に従い、透明シャンプーを調製した(配合量は質量部)。20〜40歳の一般パネラー10名に、得られた透明シャンプー5gを用いて洗髪してもらい、冷感効果および冷感の持続感を評価してもらった。その結果、10名全員が、このものは、冷感を有しかつ冷感効果を持続したと回答した。
【0103】
<透明シャンプー処方>
(成 分) (配合量)
ポリクオタニウム−10 10.0
ラウレス硫酸Na(30%水溶液) 300.0
ラウロイルサルコシンNa(30%水溶液) 50.0
コカミドプロペンベタイン 100.0
コカミドジエタノールアミド 40.0
1,3−ブチレングリコール 20.0
クエン酸 3.0
メチルパラベン 2.0
プロピルパラベン 0.5
エデト酸二ナトリウム 1.0
l−メントール 6.3
2−(2−l−メンチルオキシエチル)エタノール 0.6
化合物D 0.1
シトラス系香料 3.0
精製水 残 部
合 計 1000.0
【0104】
実施例13〔歯磨剤〕
下記処方に従い、歯磨剤を調製した。(配合量は質量部)。20〜40歳の一般パネラー10名に、得られた歯磨剤3gを用いて歯を磨いてもらい、冷感効果および冷感の持続感を評価してもらった。その結果、10名全員が、このものは、冷感を有しかつ冷感効果を持続したと回答した。
【0105】
<歯磨剤処方>
(成 分) (配合量)
l−メントール 0.25
2−(2−l−メンチルオキシエチル)エタノール 0.20
リン酸水素カルシウム(2水和物) 50.00
グリセリン 25.00
ラウリル硫酸ナトリウム 1.40
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.50
サッカリンナトリウム 0.20
安息香酸ナトリウム 0.10
ストロベリーフレーバー(化合物A20質量%含有) 1.00
(高砂香料工業株式会社製)
精製水 残 部
合 計 100.00
【0106】
実施例14〔タバコ用香味組成物〕
下記処方に従い、タバコ用香味組成物を調製した。この化合物Dを加えたタバコ用香味組成物を市販タバコに0.1%付香したところ、煙に軽さが出るとともに、メントールの清涼感が強調された。
【0107】
<タバコ用香味組成物処方>
(成 分) (質量(g))
メントール 2.00
バニリン 1.40
化合物D 0.10
ヘリオトロピン 2.00
エチルオキシハイドレート 0.80
酪酸エチル 0.25
吉草酸エチル 0.25
リナロール 0.30
ゲラニオール 0.40
アネトール 1.60
γ−バレロラクトン 0.80
セダーウッドオイル 2.30
カモミオイル 0.20
フェンネルオイル 0.20
フラネオール 1.00
エチルアルコール 残 部
合 計 100.00


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、Rは、水素原子、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至9のアルキル基、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至8のアルコキシ基である。)
で表されるバニリンアセタール類の1種以上を含有することを特徴とする感覚刺激剤組成物。
【請求項2】
感覚刺激剤組成物が辛味剤組成物であることを特徴とする請求項1記載の感覚刺激剤組成物。
【請求項3】
感覚刺激剤組成物が温感剤組成物であることを特徴とする請求項1記載の感覚刺激剤組成物。
【請求項4】
冷感物質から選ばれる1種以上の成分を併用したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物。
【請求項5】
冷感物質が、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−l−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−l−メントキシエタン−1−オール、3−l−メントキシプロパン−1−オール、4−l−メントキシブタン−1−オール、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、乳酸メンチル、メントングリセリンケタール、2−(2−l−メンチルオキシエチル)エタノール、グリオキシル酸メンチル、1−(2−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル)エタノン、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミド、2−ピロリドン−5−カルボン酸メンチル、コハク酸モノメンチル、コハク酸モノメンチルのアルカリ金属塩およびコハク酸モノメンチルのアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項4に記載の感覚刺激剤組成物。
【請求項6】
一般式(1)のバニリンアセタール類に含まれない感覚刺激剤から選ばれる1種以上の成分を併用したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物。
【請求項7】
一般式(1)のバニリンアセタール類に含まれない感覚刺激剤が、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、カプサイシン、ジンゲロール、バニリルブチルエーテル、バニリルブチルエーテル酢酸エステル、4−(l−メントキシメチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メントキシメチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(l−メトキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サンショール−I、サンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリンおよびスピラントールの1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の感覚刺激剤組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7記載のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物が、0.0001〜90質量%配合されてなることを特徴とする香料組成物。
【請求項9】
請求項1乃至7記載のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物が、0.0001〜20質量%配合されてなることを特徴とする、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品。
【請求項10】
請求項1乃至7記載のいずれかに記載の感覚刺激剤組成物を、香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品に添加することを特徴とする香料組成物、飲食品、香粧品、日用・雑貨品、口腔用組成物または医薬品の製造方法。
【請求項11】
一般式(1’):
【化2】

(式中、R’は、直鎖状または分岐していてもよい炭素数4乃至9のアルキル基、直鎖状または分岐していてもよい炭素数1乃至8のアルコキシ基である。)
で表されるバニリンアセタール類。

【公開番号】特開2007−15953(P2007−15953A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197205(P2005−197205)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】